(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090393
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置及び乗り物
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20240627BHJP
G02B 17/00 20060101ALI20240627BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240627BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B17/00
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206277
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(72)【発明者】
【氏名】川合 健
【テーマコード(参考)】
2H087
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H087KA00
2H087RA45
2H087TA04
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA46
3D344AA19
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】所望の傾斜角度で虚像を表示させることができるヘッドアップディスプレイ装置及び乗り物を提供する。
【解決手段】ヘッドアップディスプレイ装置100は、画像Gを表示し、表示した画像Gに対応する表示光Lを放射する光放射面11と、表示光Lをウインドシールド201に向けて反射させる凹面鏡30と、を備え、式「S=10.7×Mh+(-8.32)×Mv+(-0.0187)×Wh+(-0.000995)×Wv+0.345×Wi+(-3.52)×Ci+3.90×Dv」で示される指標Sが90以上に設定されている。MhとMvは光軸位置における画像Gに対する虚像Vの横方向と縦方向の拡大倍率であり、WhとWvはウインドシールドの光軸到達位置の横方向と縦方向の曲率半径であり、Wiはウインドシールドへの光軸の入射角度であり、Ciは凹面鏡への光軸の入射角度であり、Dvは光放射面の法線と表示光の光軸との成す角度である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示光をウインドシールドに向けて放射することにより虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
画像を表示し、表示した画像に対応する表示光を放射する光放射面と、
表示光を前記ウインドシールドに向けて反射させる凹面鏡と、を備え、
下記の式1で示される指標Sが90以上に設定されている、
ヘッドアップディスプレイ装置。
S=10.7×Mh+(-8.32)×Mv+(-0.0187)×Wh+(-0.000995)×Wv+0.345×Wi+(-3.52)×Ci+3.90×Dv・・・(式1)
Mh:表示光の光軸位置における画像に対する虚像の横方向の拡大倍率[-]
Mv:表示光の光軸位置における画像に対する虚像の縦方向の拡大倍率[-]
Wh:ウインドシールドにおける表示光の光軸が到達する位置の横方向の曲率半径[mm]
Wv:ウインドシールドにおける表示光の光軸が到達する位置の縦方向の曲率半径[mm]
Wi:ウインドシールドへの表示光の光軸の入射角度[deg]
Ci:凹面鏡への表示光の光軸の入射角度[deg]
Dv:横方向から見た光放射面の法線と光放射面から放射される表示光の光軸との成す角度[deg]
【請求項2】
前記光放射面から前記ウインドシールドまでの前記表示光の光路を折り曲げるように配置される単数又は複数の平面鏡を備える、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイ装置が搭載される乗り物であって、
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、前記乗り物が走行する路面に平行となる角度で虚像を表示する、
乗り物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイ装置及び乗り物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、液晶表示装置の表示面を光源部の出射面に対して所定のチルト角だけ傾けることにより虚像を傾けて表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
虚像の傾斜角度の調整にあたっては、実際にはチルト角以外のパラメータも影響しており、どのようなパラメータがどのように傾斜角度に影響を及ぼすかが不明であった。このため、所望の傾斜角度で虚像を表示させることは困難であった。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、所望の傾斜角度で虚像を表示させることができるヘッドアップディスプレイ装置及び乗り物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の第1の観点に係るヘッドアップディスプレイ装置は、表示光をウインドシールドに向けて放射することにより虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、画像を表示し、表示した画像に対応する表示光を放射する光放射面と、表示光を前記ウインドシールドに向けて反射させる凹面鏡と、を備え、下記の式1で示される指標Sが90以上に設定されている。
S=10.7×Mh+(-8.32)×Mv+(-0.0187)×Wh+(-0.000995)×Wv+0.345×Wi+(-3.52)×Ci+3.90×Dv・・・(式1)
Mh:表示光の光軸位置における画像に対する虚像の横方向の拡大倍率[-]
Mv:表示光の光軸位置における画像に対する虚像の縦方向の拡大倍率[-]
Wh:ウインドシールドにおける表示光の光軸が到達する位置の横方向の曲率半径[mm]
Wv:ウインドシールドにおける表示光の光軸が到達する位置の縦方向の曲率半径[mm]
Wi:ウインドシールドへの表示光の光軸の入射角度[deg]
Ci:凹面鏡への表示光の光軸の入射角度[deg]
Dv:横方向から見た光放射面の法線と光放射面から放射される表示光の光軸との成す角度[deg]
上記目的を達成するため、本開示の第2の観点に係る乗り物には前記ヘッドアップディスプレイ装置が搭載され、前記ヘッドアップディスプレイ装置は、前記乗り物が走行する路面に平行となる角度で虚像を表示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、所望の傾斜角度で虚像を表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の概略図である。
【
図2】機種毎のパラメータ値及び係数を示す表である。
【
図3】機種毎の指標及び傾斜角度等を示す表である。
【
図4】機種毎の指標と虚像の深さの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置及び乗り物について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置100は、車両200のダッシュボード内に設置される。ヘッドアップディスプレイ装置100は、車両200のウインドシールド201に向けて像を表す表示光Lを出射する。ウインドシールド201は、合わせガラス等の透光材からなり、車幅方向(横方向)と高さ方向(縦方向)それぞれの方向に互いに異なる曲率でカーブした湾曲板状をなす。表示光Lはウインドシールド201で反射して視認者1(主に車両200の運転者)に到達する。これにより、虚像Vが視認者1により視認可能に表示される。
【0010】
ヘッドアップディスプレイ装置100は、表示部10と、凹面鏡30と、筐体60と、を備える。
【0011】
筐体60は、非透光性の樹脂又は金属で形成されるとともに、中空の略直方体をなす。筐体60には、ウインドシールド201に対向する位置に開口部が形成されている。筐体60は、開口部61を塞ぐ窓部62を備える。窓部62は、表示光Lが透過するアクリル等の透光性の樹脂からなる。筐体60内には、表示部10と凹面鏡30が収納されている。
【0012】
表示部10は、ディスプレイ12と、ディスプレイ12を照明する照明装置13と、を備える。照明装置13は、照明光ILを放射する複数のLED(Light Emitting Diode)を備える。ディスプレイ12は、TFT(Thin Film Transistor)型の液晶表示パネルであり、矩形板状をなす。ディスプレイ12は、照明装置13からの照明光ILを受けて表示光Lを光放射面11から放射する。光放射面11には、虚像Vに対応する画像Gが表示されている。画像Gは、虚像Vの縦横サイズを縮小させつつ歪み補正がかけられた像からなる。光放射面11は、照明光ILに対して非直交となる向きで、本例では、凹面鏡30の反射面31に対して光放射面11の上端部Quが光放射面11の下端部Qbよりも距離が近くなる向きで設けられている。
なお、表示部10は、これに限らず、MEMS(Micro Electro Mechanical System)、DMD(Digital Micro mirror Device)又は有機EL(Electro-Luminescence)パネルを備える構成であってもよい。
【0013】
凹面鏡30は、表示部10からの表示光Lをウインドシールド201に向けて拡大させつつ反射させる反射面31を有する。反射面31は、車幅方向から見て、凹状に湾曲して形成されている。
【0014】
ヘッドアップディスプレイ装置100により表示される虚像Vは傾斜角度θで傾斜している。傾斜角度θは、基準線Lsに対して虚像V(正確には、虚像Vの表示可能領域)の中心位置Pcから上端部Puへ延びる線分が成す角度により規定される。基準線Lsは、ウインドシールド201にて反射した表示光Lの進行方向に直交する方向に沿って延び、虚像Vの中心位置Pcを起点として上側へ延びる線である。虚像Vは、虚像Vの下端部Pbが視認者1に近く、かつ、虚像Vの上端部Puが視認者1から遠くなるように、傾斜している。虚像Vの下端部Pbは光放射面11の上端部Quに光学的に対応しており、虚像Vの上端部Puは光放射面11の下端部Qbに光学的に対応している。虚像Vの縦画角は3degである。縦画角は、視認者1の視点と虚像Vの上端部Puを結ぶ線分と視認者1の視点と虚像Vの下端部Pbを結ぶ線分が成す角度である。
虚像Vの深さLは、ウインドシールド201にて反射した表示光Lの進行方向に沿う上端部Puと下端部Pbの間の距離で規定される。
【0015】
虚像Vが傾斜する原理は、主に、光放射面11の面方向の位置に応じて表示光Lの光路長に差が生じ、この差により拡大倍率が異なることにある。例えば、光放射面11の下端部Qbを起点とした光路長は、光放射面11の上端部Quを起点とした光路長よりも長い。このため、下端部Qbに対応する虚像Vの上端部Puは、上端部Quに対応する虚像Vの下端部Pbに比べて、視認者1から遠くに表示され、かつ、像の倍率が高くなる。
【0016】
本願発明者らは、光路長の差(拡大倍率の違い)を生み出す要因として、下記のパラメータ値(Mh、Mv、Wh、Wv、Wi、Ci、Dv)を調整する必要があることに想到した。
Mh:表示光Lの光軸位置における画像Gに対する虚像Vの横方向の拡大倍率[-]
Mv:表示光Lの光軸位置における画像Gに対する虚像Vの縦方向の拡大倍率[-]
Wh:ウインドシールド201における表示光Lの光軸が到達する位置の横方向の曲率半径[mm]
Wv:ウインドシールド201における表示光Lの光軸が到達する位置の縦方向の曲率半径[mm]
Wi:ウインドシールド201への表示光Lの光軸の入射角度[deg]
Ci:凹面鏡30への表示光Lの光軸の入射角度[deg]
Dv:横方向から見た光放射面11の法線と光放射面11から放射される表示光Lの光軸との成す角度[deg]
【0017】
画像Gに対する虚像Vの拡大倍率は、上述のように画像Gと虚像Vの面方向の位置により異なる。このため、拡大倍率Mh,Mvは、画像Gと虚像Vの中心位置(光軸位置)の倍率を基準としている。縦方向(高さ方向に沿う方向)の拡大倍率Mvが大きくなるにつれて、光放射面11上に表される画像Gが縦方向に大きく引き延ばされて虚像Vとして表示される。横方向(車幅方向)の拡大倍率Mhが大きくなるにつれて、画像Gが横方向に大きく引き延ばされて虚像Vとして表示される。
【0018】
横方向の曲率半径Whは、表示光Lの光軸が反射する反射点でのウインドシールド201の横方向の曲率を示し、カーブが緩やかになるほど曲率半径Whが大きくなる。
縦方向の曲率半径Wvは、表示光Lの光軸が反射する反射点でのウインドシールド201の縦方向の曲率を示し、カーブが緩やかになるほど曲率半径Wvが大きくなる。
なお、表示光Lの光軸は、表示光Lの進行方向に対して垂直な表示光Lの切断面において中心を通過する光線であり、
図1では表示光Lとして光軸のみを線状に示している。
【0019】
入射角度Wiは、凹面鏡30からの表示光Lをウインドシールド201が視認者1に向けて反射する際の表示光Lの光軸の入射角度である。
入射角度Ciは、光放射面11からの表示光Lを凹面鏡30がウインドシールド201に向けて反射する際の表示光Lの光軸の入射角度である。
角度Dvは、光放射面11の法線に沿って光放射面11の中心位置から延びる空間ベクトルと光放射面11から放射される表示光Lの光軸に沿って延びる空間ベクトルそれぞれを、車両前後方向と高さ方向に沿う被投射面に投射することで得られた被投射面上の2つのベクトルが成す角度である。角度Dvは、照明装置13の光源基板(図示略)に対するディスプレイ12のチルト角度と同一角度となる。
【0020】
そして、本願発明者らは、下記の式1で導出される指標Sが90以上(S≧90)となることにより、所望の傾き、すなわち、虚像Vが路面に沿う傾きが得られることに想到した。
S=10.7×Mh+(-8.32)×Mv+(-0.0187)×Wh+(-0.000995)×Wv+0.345×Wi+(-3.52)×Ci+3.90×Dv・・・(式1)
指標Sは、虚像Vの倒れやすさを示す評価指標であり、指標Sが大きくなるほど、視認者1から見て倒れた状態の虚像Vが得られる。
本実施形態のヘッドアップディスプレイ装置100は、指標Sが90以上となるように構成されている。
【0021】
ここで、上記式1の導出方法について説明する。
まず、
図2に示すように、パラメータ値(Mh、Mv、Wh、Wv、Wi、Ci、Dv)がそれぞれ異なる機種No.1~17のヘッドアップディスプレイ装置を用意する。機種No.1~17は、何れも縦画角=3degである。
機種No.1~17は、既存の機種ではなく、新規の機種であり、特に、角度Dvが40deg以上である点が既存の機種には見られない。機種No.1~17では、光学設計上の最適化条件として、表示距離(視認者1の視点から虚像Vまでの距離)=4m~8m、深さ(Depth)=4m、傾斜角度θ=85degといった虚像Vの傾斜に関する条件を与えておらず、従来と同等の像品質の範囲内で、虚像Vの中心が5.3m先に結像することが指定されている。
この条件下で、所望の傾斜角度(85.5deg)、所望の表示距離(4~8m)となるかを計測した。
機種No.1~17の設計結果から、所望の表示距離である4-8m(深さ4m)に対して、
図3に示すように、深さが2.54~4.60m、傾斜角度θが83.47~85.94degの結果が得られた。
なお、
図3において、VID(Virtual Image Distance)は表示距離を意味する。VID1は視認者1の視点から虚像Vの下端部Pbまでの距離である。VID2は視認者1の視点から虚像Vの中心位置Pcまでの距離である。VID3は視認者1の視点から虚像Vの上端部Puまでの距離である。
【0022】
次に、機種No.1~17のうち、傾斜角度θが所望の傾斜角度(85.5deg)に最も近い機種No.13のターゲット指標Tを100とする。また、機種No.13以外の他機種のターゲット指標Tを、下記の式2で定める。
T=100×他機種の虚像の深さ/機種No.13の虚像の深さ・・・(式2)
機種No.13の虚像の深さは、3.95mである。
ここで、指標Sは、下記の式3で示すように、各パラメータ値(Mh、Mv、Wh、Wv、Wi、Ci、Dv)それぞれに未知の係数A~Gを掛けることにより求められる。
S=A×Mh+B×Mv+C×Wh+D×Wv+E×Wi+F×Ci+G×Dv・・・(式3)
各機種No.1~17の評価指標Sがターゲット指標Tに対応するように係数A~Gが定まることが好ましい。そこで、誤差Δ=S-Tとし、Δの二乗和が最小となる係数A~Gをソルバー機能で算出することにより、
図2の上部に示すように、係数A~Gが算出される。
すなわち、係数A~Gは、以下のように算出される。
A=10.652
B=-8.324
C=-0.0187
D=-0.000995
E=0.345
F=-3.521
G=3.902
算出された係数A~Gの数値を有効数字3桁としたうえで、上記式3に代入することにより、上記式1が得られる。
正の値となる係数A,E,Gが掛けられるMh、Wi、Dvは大きいほど、指標Sが大きくなる。また、負の値となる係数B~D,Fが掛けられるMv、Wh、Wv、Ciは大きいほど、指標Sが小さくなる。
【0023】
次に、指標Sが90以上である(S≧90)ことを条件とした理由について説明する。
車両に搭載されたヘッドアップディスプレイ装置が表示する虚像の一般的な見下ろし角度は、0~5deg程度である。そのため、道路と平行な虚像Vの表示を得るためには、虚像Vは少なくとも85deg以上の傾斜が必要であると言える。
なお、見下ろし角度とは、視認者の視点から虚像の中心位置を通過する線分が水平面に対して成す角度である。
【0024】
傾斜角度θと指標Sの関係は、機種No.1~17の17パターンの結果から近似直線で表すと、下記の式4のようになる。
θ=0.0474×S+80.70・・・(式4)
上記の式4を使って、傾斜角度θが85deg以上となる指標Sを求めると、指標S=90.7となる。小数点第一位を切り捨てることにより指標Sが90となる。
よって、指標Sが90以上の場合であれば、0~5degの見下ろし角度において、視認者1から見て路面と略平行な4-8mの傾斜虚像を得ることができることが判明した。
【0025】
図4は、機種No.1~17毎に、指標Sと深さ(Depth)Lをプロットして線分で結んだグラフである。このグラフにより、指標Sは、深さLと相関関係があり、評価指標として適切であることがわかる。
【0026】
機種No.1~8においては指標Sが90未満となり、虚像Vが倒れづらく、視認者1から見て路面と略平行な傾斜虚像を得ることは困難である。
機種No.9~17においては指標Sが90以上となり、視認者1から見て路面と略平行な傾斜虚像を得ることができる。
機種No.9~17においては、各パラメータ値の範囲は以下のようになっている。
Mh=14.1~16.7
Mv=12.1~16.0
Wh=2192~3798
Wv=4618~10138
Wi=60.3~64.9
Ci=21.5~26.5
Dv=40~46
S=96~112
【0027】
指標Sの下限は90に設定したが、指標Sの上限は設定されない。この理由は、傾斜角度θは、構造上、過度に大きくなりづらく、仮に傾斜角度θが所望の傾斜角度よりも大きくなったとしても、例えば角度Dvを小さくすること等により、傾斜角度θを小さくすることは容易である。よって、指標Sの上限を設定する必要性は乏しい。
なお、本例に限らず、指標S=90.7の小数点第一位を四捨五入することにより指標Sが91となるため、指標Sが91以上(S≧91)であることがヘッドアップディスプレイ装置100の構成条件であってもよい。
【0028】
ヘッドアップディスプレイ装置100は、機種No.9~17の何れかであってもよいし、指標Sが90又は91以上である構成条件を満たす、機種No.9~17と異なるパラメータ値を持つものであってもよい。
【0029】
(効果)
以上、説明した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)ヘッドアップディスプレイ装置100は、表示光Lをウインドシールド201に向けて放射することにより虚像Vを表示する。ヘッドアップディスプレイ装置100は、画像Gを表示し、表示した画像Gに対応する表示光Lを放射する光放射面11と、表示光Lをウインドシールド201に向けて反射させる凹面鏡30と、を備え、下記の式1で示される指標Sが90以上に設定されている。
S=10.7×Mh+(-8.32)×Mv+(-0.0187)×Wh+(-0.000995)×Wv+0.345×Wi+(-3.52)×Ci+3.90×Dv・・・(式1)
Mh:表示光Lの光軸位置における画像Gに対する虚像Vの横方向(視認者1を基準とした左右方向)の拡大倍率[-]
Mv:表示光Lの光軸位置における画像Gに対する虚像Vの縦方向(視認者1を基準とした上下方向)の拡大倍率[-]
Wh:ウインドシールド201における表示光Lの光軸が到達する位置の横方向の曲率半径[mm]
Wv:ウインドシールド201における表示光Lの光軸が到達する位置の縦方向の曲率半径[mm]
Wi:ウインドシールド201への表示光Lの光軸の入射角度[deg]
Ci:凹面鏡30への表示光Lの光軸の入射角度[deg]
Dv:横方向から見た光放射面11の法線と光放射面11から放射される表示光Lの光軸との成す角度[deg]
この構成によれば、虚像Vが視認者1から見て倒れづらいことが抑制されるため、所望の傾斜角度で虚像Vを表示させることができる。
(2)ヘッドアップディスプレイ装置100が搭載される乗り物の一例である車両200であって、ヘッドアップディスプレイ装置100は、車両200が走行する路面に平行となる角度で虚像Vを表示する。
この構成によれば、路面に平行となる角度で虚像Vを表示させることができる。
【0030】
なお、本開示は以上実施形態及び図面によって限定されるものではない。本開示の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0031】
(変形例)
上記実施形態において、ヘッドアップディスプレイ装置100は、光放射面11からウインドシールド201までの表示光Lの光路を折り曲げるように配置される単数又は複数の平面鏡を備えていてもよい。例えば、単数の平面鏡は、光放射面11からの表示光Lを凹面鏡30の反射面31に向けて反射するように構成されてもよい。
【0032】
上記実施形態では、ヘッドアップディスプレイ装置100は車両200に搭載されていたが、車両200以外の乗り物に搭載されていてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 視認者
10 表示部
11 光放射面
12 ディスプレイ
13 照明装置
30 凹面鏡
31 反射面
60 筐体
61 開口部
62 窓部
100 ヘッドアップディスプレイ装置
200 車両
201 ウインドシールド
θ 傾斜角度
G 画像
L 表示光
S 指標
T ターゲット指標
V 虚像
IL 照明光
Pb,Qb 下端部
Pu,Qu 上端部
Pc 中心位置
Mh,Mv 拡大倍率
Wi,Ci 入射角度
Dv 角度
Ls 基準線
Wh,Wv 曲率半径