(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090395
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】画像記録装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 21/00 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
B41J21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206281
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】中野 靖大
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】大橋 雅司
(72)【発明者】
【氏名】次村 浩一
(72)【発明者】
【氏名】中村 直行
(72)【発明者】
【氏名】疇地 悠
【テーマコード(参考)】
2C187
【Fターム(参考)】
2C187AC01
2C187AC02
2C187AC08
2C187AE07
2C187AG01
2C187AG05
2C187BF11
2C187BF41
2C187BH27
2C187DB11
2C187DB27
(57)【要約】
【課題】縁無し記録において画像を適切に拡大することで余白の発生や画像の欠損を抑制する。
【解決手段】縁無し記録において、用紙長Lが所定長Lx以下の場合(S1:YES)は、第1拡大処理(S2)においてはみ出し幅Wを比較的大きい第1値(2.5mm)とする。用紙長Lが所定長Lx以下でない場合(S1:NO)は、第2拡大処理(S4)においてはみ出し幅Wを比較的小さい第2値(0.5mm)とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
媒体に画像を記録する記録部と、
媒体の記録対象領域の縁に余白のない縁無し記録を実行可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、前記縁無し記録において、
前記記録対象領域からはみ出たはみ出し領域を有するサイズに前記画像を拡大する拡大処理と、
前記搬送部及び前記記録部により、前記拡大処理により拡大された前記画像を前記記録対象領域に記録させる記録処理と、を実行し、
前記拡大処理は、前記はみ出し領域の前記搬送方向と直交する直交方向の長さであるはみ出し幅を第1値とする第1拡大処理、及び、前記はみ出し幅を前記第1値よりも小さい第2値とする第2拡大処理を含み、
前記制御部は、前記縁無し記録において、
媒体の前記搬送方向の長さである媒体長が所定長以下であるか否かを判断する第1判断処理をさらに実行し、
前記第1判断処理において前記媒体長が前記所定長以下であると判断した場合、前記第1拡大処理を実行し、
前記第1判断処理において前記媒体長が前記所定長以下でないと判断した場合、前記第2拡大処理を実行することを特徴とする、画像記録装置。
【請求項2】
前記拡大処理は、前記はみ出し幅を前記第2値よりも大きい第3値とする第3拡大処理を含み、
前記制御部は、
前記第1判断処理において前記媒体長が前記所定長以下でないと判断した場合、前記第2拡大処理を実行する前に、前記搬送部による搬送に対する媒体の抵抗である搬送抵抗が所定値以下であるか否かを判断する第2判断処理を実行し、
前記第2判断処理において前記搬送抵抗が前記所定値以下であると判断した場合、前記第2拡大処理を実行し、
前記第2判断処理において前記搬送抵抗が前記所定値以下でないと判断した場合、前記第3拡大処理を実行することを特徴とする、請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第2拡大処理において、前記搬送方向及び前記直交方向に同じ拡大率で前記画像を拡大し、前記はみ出し領域の前記搬送方向の長さであるはみ出し長を前記第2値よりも大きい第4値とすることを特徴とする、請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第2拡大処理の後、前記記録処理の前に、前記はみ出し長が閾値未満であるか否かを判断する第3判断処理を実行し、
前記第3判断処理において前記はみ出し長が閾値未満であると判断した場合、前記はみ出し領域を構成する画像を前記搬送方向に引き延ばすことにより、前記はみ出し長を前記第4値よりも大きくすることを特徴とする、請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第2拡大処理の後、前記記録処理の前に、前記はみ出し長が閾値未満であるか否かを判断する第3判断処理を実行し、
前記第3判断処理において前記はみ出し長が閾値未満であると判断した場合、前記画像の拡大率を前記第2拡大処理における前記拡大率よりも大きくすることにより、前記はみ出し長を前記第4値よりも大きくすることを特徴とする、請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記記録処理において、
媒体の前記搬送方向の上流端が前記記録部の記録位置を通過したか否かを判断する第4判断処理を実行し、
前記第4判断処理において前記上流端が前記記録位置を通過したと判断した場合、前記記録部による記録を終了させることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項7】
媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、媒体に画像を記録する記録部と、を備えた画像記録装置を制御する制御方法であって、
媒体の記録対象領域の縁に余白のない縁無し記録において、
前記記録対象領域からはみ出たはみ出し領域を有するサイズに前記画像を拡大する拡大処理と、
前記搬送部及び前記記録部により、前記拡大処理により拡大された前記画像を前記記録対象領域に記録させる記録処理と、を実行し、
前記拡大処理は、前記はみ出し領域の前記搬送方向と直交する直交方向の長さであるはみ出し幅を第1値とする第1拡大処理、及び、前記はみ出し幅を前記第1値よりも小さい第2値とする第2拡大処理を含み、
媒体の前記搬送方向の長さである媒体長が所定長以下であるか否かを判断する第1判断処理をさらに実行し、
前記第1判断処理において前記媒体長が前記所定長以下であると判断した場合、前記第1拡大処理を実行し、
前記第1判断処理において前記媒体長が前記所定長以下でないと判断した場合、前記第2拡大処理を実行することを特徴とする、制御方法。
【請求項8】
媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、媒体に画像を記録する記録部と、を備えた画像記録装置を、
媒体の記録対象領域の縁に余白のない縁無し記録において、
前記記録対象領域からはみ出たはみ出し領域を有するサイズに前記画像を拡大する拡大手段、及び、
前記搬送部及び前記記録部により、前記拡大手段により拡大された前記画像を前記記録対象領域に記録させる記録手段、として機能させ、
前記拡大手段は、前記はみ出し領域の前記搬送方向と直交する直交方向の長さであるはみ出し幅を第1値とする第1拡大手段、及び、前記はみ出し幅を前記第1値よりも小さい第2値とする第2拡大手段を含み、
前記画像記録装置を、媒体の前記搬送方向の長さである媒体長が所定長以下であるか否かを判断する第1判断手段としてさらに機能させ、
前記第1判断手段によって前記媒体長が前記所定長以下であると判断された場合、前記画像記録装置を前記第1拡大手段として機能させ、
前記第1判断手段によって前記媒体長が前記所定長以下でないと判断された場合、前記画像記録装置を前記第2拡大手段として機能させることを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に画像を記録する画像記録装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロール紙(媒体)を用いてフチなし印刷(縁無し記録)を行うためのプリントシステム(画像記録装置)が開示されている。当該プリントシステムは、使用するロール紙の幅サイズを特定する手段と、ロール紙の幅サイズと入力画像のアスペクト比からフチなし印刷するための用紙サイズを算出する手段と、ロール紙の幅サイズに合わせて入力画像を拡大・縮小する手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、縁無し記録において、媒体の幅に応じて画像を拡大する。しかしながら、媒体の搬送方向の長さ(媒体長)によらず、媒体の幅に応じて画像を拡大すると、以下のような問題が生じ得る。
【0005】
幅が互いに同じである、第1媒体と、第1媒体よりも媒体長が長い第2媒体とで、同じ拡大率で(例えば、記録対象領域からはみ出たはみ出し領域の幅が0.5mmになるように)画像を拡大すると、媒体長が短い第1媒体においては、画像の拡大率が小さいことで、搬送誤差によって、媒体における記録対象領域の縁に余白が生じ得る。
【0006】
幅が互いに同じである、第3媒体と、第3媒体よりも媒体長が長い第4媒体とで、同じ拡大率で(例えば、記録対象領域からはみ出たはみ出し領域の幅が2.5mmになるように)画像を拡大すると、媒体長が長い第4媒体においては、画像の拡大率が大きいことで、はみ出し領域のサイズが過大になり、画像の欠損が大きくなる。
【0007】
本発明の目的は、縁無し記録において画像を適切に拡大することで余白の発生や画像の欠損を抑制可能な画像記録装置、その制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る画像記録装置は、媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、媒体に画像を記録する記録部と、媒体の記録対象領域の縁に余白のない縁無し記録を実行可能な制御部と、を備え、前記制御部は、前記縁無し記録において、前記記録対象領域からはみ出たはみ出し領域を有するサイズに前記画像を拡大する拡大処理と、前記搬送部及び前記記録部により、前記拡大処理により拡大された前記画像を前記記録対象領域に記録させる記録処理と、を実行し、前記拡大処理は、前記はみ出し領域の前記搬送方向と直交する直交方向の長さであるはみ出し幅を第1値とする第1拡大処理、及び、前記はみ出し幅を前記第1値よりも小さい第2値とする第2拡大処理を含み、前記制御部は、前記縁無し記録において、媒体の前記搬送方向の長さである媒体長が所定長以下であるか否かを判断する第1判断処理をさらに実行し、前記第1判断処理において前記媒体長が前記所定長以下であると判断した場合、前記第1拡大処理を実行し、前記第1判断処理において前記媒体長が前記所定長以下でないと判断した場合、前記第2拡大処理を実行することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る制御方法は、媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、媒体に画像を記録する記録部と、を備えた画像記録装置を制御する制御方法であって、媒体の記録対象領域の縁に余白のない縁無し記録において、前記記録対象領域からはみ出たはみ出し領域を有するサイズに前記画像を拡大する拡大処理と、前記搬送部及び前記記録部により、前記拡大処理により拡大された前記画像を前記記録対象領域に記録させる記録処理と、を実行し、前記拡大処理は、前記はみ出し領域の前記搬送方向と直交する直交方向の長さであるはみ出し幅を第1値とする第1拡大処理、及び、前記はみ出し幅を前記第1値よりも小さい第2値とする第2拡大処理を含み、媒体の前記搬送方向の長さである媒体長が所定長以下であるか否かを判断する第1判断処理をさらに実行し、前記第1判断処理において前記媒体長が前記所定長以下であると判断した場合、前記第1拡大処理を実行し、前記第1判断処理において前記媒体長が前記所定長以下でないと判断した場合、前記第2拡大処理を実行することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るプログラムは、媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、媒体に画像を記録する記録部と、を備えた画像記録装置を、媒体の記録対象領域の縁に余白のない縁無し記録において、前記記録対象領域からはみ出たはみ出し領域を有するサイズに前記画像を拡大する拡大手段、及び、前記搬送部及び前記記録部により、前記拡大手段により拡大された前記画像を前記記録対象領域に記録させる記録手段、として機能させ、前記拡大手段は、前記はみ出し領域の前記搬送方向と直交する直交方向の長さであるはみ出し幅を第1値とする第1拡大手段、及び、前記はみ出し幅を前記第1値よりも小さい第2値とする第2拡大手段を含み、前記画像記録装置を、媒体の前記搬送方向の長さである媒体長が所定長以下であるか否かを判断する第1判断手段としてさらに機能させ、前記第1判断手段によって前記媒体長が前記所定長以下であると判断された場合、前記画像記録装置を前記第1拡大手段として機能させ、前記第1判断手段によって前記媒体長が前記所定長以下でないと判断された場合、前記画像記録装置を前記第2拡大手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、縁無し記録において、媒体長が所定長未満の場合は、はみ出し幅を大きくすることで、余白の発生を抑制できる。媒体長が所定長以上の場合は、はみ出し幅を小さくすることで、画像の欠損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタの側面図である。
【
図2】
図1のプリンタの給紙トレイにおいて、ロール紙を取り外し、カット紙を収容した状態を示す側面図である。
【
図3】
図1のプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1のプリンタのCPUが実行するプログラムを示すフロー図である。
【
図5】
図3に示す記録処理のサブルーチンを示すフロー図である。
【
図6】短尺な用紙に対する拡大処理を示す模式図である。
【
図7】長尺な用紙に対する拡大処理を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
先ず、
図1及び
図2を参照し、本発明の第1実施形態に係るプリンタ100(画像記録装置)の全体構成について説明する。なお、
図1及び
図2に示す上下方向、前後方向及び左右方向を、プリンタ100の上下方向、前後方向及び左右方向とする。上下方向、前後方向及び左右方向は、互いに直交する。
【0014】
プリンタ100は、筐体100aと、給紙トレイ1と、搬送部3と、カッター機構4と、ヘッド5と、プラテン6と、用紙センサ7と、排紙トレイ8と、制御装置10とを含む。
【0015】
排紙トレイ8は、筐体100aの上部の前方の側壁で構成され、筐体100aに対して開閉可能である。
【0016】
給紙トレイ1は、上方に開口した箱形状を有し、筐体100aの下部に着脱可能である。給紙トレイ1は、筐体100aに対して後から前に向かう方向に移動することで、筐体100aから引き出され、筐体100aに対して前から後に向かう方向に移動することで、筐体100aに装着される。
【0017】
給紙トレイ1は、ロール紙R(
図1参照)を収容可能なロール紙収容部1rと、カット紙Pc(
図2参照)を収容可能なカット紙収容部1cとを有する。
【0018】
ロール紙R(
図1参照)は、円筒状の芯部材Rcの外周面に長尺の用紙P(本発明の「媒体」)がロール状に巻回されたものである。ロール紙Rは、その回転軸Rx(芯部材Rcの中心軸)が左右方向に沿った状態で、ロール紙収容部1rに収容され、2つのローラ11,12に支持される。
【0019】
カット紙Pc(
図2参照)は、搬送方向Aの長さがロール紙Rを構成する用紙よりも短くかつ搬送経路Cにおける給送ローラ3aから中間ローラ対3bまでの長さよりも長い用紙P(本発明の「媒体」)である。カット紙収容部1cは、給紙トレイ1内におけるロール紙収容部1rの後方の空間であり、上下方向に積層された複数のカット紙Pcを収容可能である。
【0020】
なお、プリンタ100において、ロール紙Rを使用する場合はカット紙収容部1cからカット紙Pcが取り除かれ(
図1参照)、カット紙Pcを使用する場合はロール紙収容部1rからロール紙Rが取り除かれる(
図2参照)。
【0021】
搬送部3は、給送ローラ3a、中間ローラ対3b、搬送ローラ対3c、排紙ローラ対3d及びガイド3g1,3g2を含む。搬送部3により、用紙Pは、ロール紙収容部1r及びカット紙収容部1cのいずれかから、当該収容部1r,1cからヘッド5の下方を通って排紙トレイ8に向かう搬送経路Cに沿って、搬送方向Aに搬送される。
【0022】
給送ローラ3aは、カット紙収容部1cの上方にあり、給紙トレイ1の底面に近づくように付勢されている。給送ローラ3aは、搬送モータ3m(
図3参照)の駆動により回転する駆動ローラである。中間ローラ対3b、搬送ローラ対3c及び排紙ローラ対3dは、それぞれ、搬送モータ3mの駆動により回転する駆動ローラと、駆動ローラに連れ回る従動ローラとを含む。
【0023】
図1に示すように、ロール紙Rがロール紙収容部1rに収容された状態において、制御装置10の制御により搬送モータ3m(
図3参照)が駆動され、給送ローラ3aが回転すると、ロール紙Rが矢印方向Bに回転し、ロール紙Rから巻き解かれた用紙Pが中間ローラ対3bに向けて給送される。そして、中間ローラ対3b、搬送ローラ対3c及び排紙ローラ対3dが用紙Pを挟持しつつ回転することで、用紙Pが搬送経路Cに沿って搬送方向Aに搬送される。
【0024】
図2に示すように、カット紙Pcがカット紙収容部1cに収容された状態において、制御装置10の制御により搬送モータ3m(
図3参照)が駆動され、給送ローラ3aが回転すると、カット紙収容部1cに収容された複数のカット紙Pcのうち最も上方にあるカット紙Pcは、搬送経路Cに沿って搬送方向Aに搬送される。
【0025】
ガイド3g1は、搬送経路Cにおいて給送ローラ3aと中間ローラ対3bとの間に配置されており、給送ローラ3aにより給送された用紙Pを中間ローラ対3bへと案内する。ガイド3g1は、給紙トレイ1の側壁で構成されている。
【0026】
ガイド3g2は、搬送経路Cにおいて中間ローラ対3bと搬送ローラ対3cとの間に配置されており、中間ローラ対3bにより搬送された用紙Pを搬送ローラ対3cへと案内する。ガイド3g2は、搬送経路Cを挟むように配置された一対の板状部材で構成されている。
【0027】
カッター機構4は、搬送経路Cを挟むように配置された一対の回転刃を含む。制御装置10の制御によりカッターモータ4m(
図3参照)が駆動されると、一対の回転刃が回転し、ロール紙Rから巻き解かれた用紙Pが左右方向に切断される。
【0028】
ヘッド5は、搬送経路Cにおいて搬送ローラ対3cと排紙ローラ対3dとの間に配置されている。ヘッド5は、本発明の「記録部」に該当し、下面に形成された複数のノズルと、ドライバIC5m(
図3参照)とを含む。搬送部3によって搬送された用紙Pが、プラテン6に支持されながらヘッド5の下方を通過するときに、制御装置10の制御によりドライバIC5m(
図3参照)が駆動されると、ノズルからインクが吐出され、用紙Pに画像が記録される。なお、ヘッド5は、位置が固定された状態でノズルからインクを吐出するライン式、及び、左右方向に移動しつつノズルからインクを吐出するシリアル式のいずれでもよい。
【0029】
プラテン6は、搬送経路Cにおいて搬送ローラ対3cと排紙ローラ対3dとの間であって、ヘッド5の下方に配置されている。
【0030】
用紙センサ7は、搬送経路Cにおいて搬送ローラ対3cとヘッド5との間に配置されている。用紙センサ7は、例えば光学式センサであって、用紙Pの検知信号を制御装置10に送信する。
【0031】
制御装置10は、
図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)10aと、ROM(Read Only Memory)10bと、RAM(Random Access Memory)10cとを有する。ROM10bには、CPU10aが各種動作を制御するためのプログラムやデータが格納されている。RAM10cは、CPU10aがプログラムを実行する際に用いるデータを一時的に記憶する。CPU10aは、外部装置(PC200、プリンタ100に接続された外部メモリ等)から受信した記録指令(画像データを含む。)に基づいて、ROM10bやRAM10cに記憶されているプログラムやデータにしたがい、記録処理等を実行する。CPU10aが、本発明の「制御部」に該当する。
【0032】
記録処理において、CPU10aは、搬送モータ3m、カッターモータ4m及びドライバIC5mを制御する。このとき、ロール紙Rから巻き解かれた用紙Pは、搬送部3により搬送方向Aに搬送され、カッター機構4により所定の長さに切断され、ヘッド5のノズルからのインク吐出により画像が記録される。カット紙Pcは、カッター機構4により切断されることなく、搬送部3により搬送方向Aに搬送され、ヘッド5のノズルからのインク吐出により画像が記録される。画像が記録された用紙Pは、筐体100aに対して開いた状態の排紙トレイ8に受容される。
【0033】
なお、CPU10aは、記録指令に基づいて、用紙Pの記録対象領域X(
図6及び
図7参照)の縁に余白のない「縁無し記録」と、用紙Pの記録対象領域Xの縁に余白のある「縁有り記録」とを、選択的に実行可能である。
【0034】
記録対象領域Xは、カット紙Pc(カッター機構4により切断されない用紙P)の場合は用紙Pの全域であり、ロール紙R(カッター機構4により切断される用紙P)の場合は切断後の用紙Pの領域である。また、例えば排紙トレイ8に受容された用紙Pをユーザが手動で切断することを想定している場合、記録対象領域Xは、ユーザによる切断後の用紙Pの領域をいう。切断は、用紙Pの搬送方向Aの長さを調整する切断(左右方向に沿った切断)、及び、用紙Pの左右方向の長さを調整する切断(搬送方向Aに沿った切断)のいずれでもよい。左右方向は、搬送方向Aと直交する方向であり、本発明の「直交方向D」に該当する。
【0035】
次いで、
図4~
図7を参照し、縁無し記録について説明する。
【0036】
縁無し記録において、CPU10aは、先ず、
図4に示すように、用紙長(用紙Pの搬送方向Aの長さL:
図6及び
図7参照)が所定長Lx以下であるか否かを判断する(S1:YES)。ロール紙Rの場合、用紙長Lは、切断後の用紙Pの搬送方向Aの長さである。
【0037】
用紙長Lが所定長Lx以下であると判断した場合(S1:YES)、CPU10aは、後述する第1拡大処理を実行する(S2)。
【0038】
用紙長Lが所定長Lx以下でないと判断した場合(S1:NO)、CPU10aは、搬送抵抗Iが所定値Ix以下であるか否かを判断する(S3:第2判断処理)。
【0039】
搬送抵抗Iは、搬送部3による搬送に対する用紙Pの抵抗であり、用紙Pの種類(光沢紙、硬さ等)、用紙Pの配置(縦目又は横目)、搬送部3の構成(搬送部3に含まれるガイド3g1,3g2の表面粗さ)等によって定まる。用紙Pが光沢紙である場合や、用紙Pが硬いほど、搬送抵抗Iが大きくなる。縦目とは、用紙Pの繊維の向きが搬送方向Aと平行な配置をいう。横目とは、用紙Pの繊維の向きが直交方向Dと平行な配置をいう。横目の方が縦目よりも搬送抵抗Iが大きくなる。また、ガイド3g1,3g2の表面粗さが大きいほど、搬送抵抗Iが大きくなる。
【0040】
搬送モータ3mの駆動力が一定の条件において、搬送抵抗Iが大きいほど、搬送量が小さくなり、用紙Pの後端(搬送方向Aの上流端)に余白が生じ易くなる。
【0041】
搬送抵抗Iが所定値Ix以下であると判断した場合(S3:YES)、CPU10aは、後述する第2拡大処理を実行する(S4)。
【0042】
搬送抵抗Iが所定値Ix以下でないと判断した場合(S3:NO)、CPU10aは、後述する第3拡大処理を実行する(S5)。
【0043】
第1~第3拡大処理は、記録対象領域Xからはみ出たはみ出し領域Yを有するサイズに画像を拡大する処理である。例えば第1~第3拡大処理は、
図6及び
図7において、実線で囲まれた記録対象領域Xのサイズから、はみ出し領域Yを有する破線で囲まれた領域のサイズに、拡大する処理である。
【0044】
第1拡大処理は、はみ出し領域Yの直交方向Dの長さ(はみ出し幅W)を2.5mm(本発明の「第1値」)とする処理である(
図6参照)。
【0045】
第2拡大処理は、はみ出し領域Yの直交方向Dの長さ(はみ出し幅W)を0.5mm(本発明の「第2値」)とする処理である(
図7参照)。
【0046】
第3拡大処理は、はみ出し領域Yの直交方向Dの長さ(はみ出し幅W)を1.5mm(本発明の「第3値」)とする処理である。
【0047】
第1~第3拡大処理のそれぞれにおいて、CPU10aは、搬送方向A及び直交方向Dに同じ拡大率で画像を拡大し、はみ出し領域Yの搬送方向Aの長さ(はみ出し長N)をはみ出し幅Wよりも大きい値とする。例えば第2拡大処理において、CPU10aは、はみ出し幅Wを0.5mmとし、はみ出し長Nを2.5mm(本発明の「第4値」)とする。
【0048】
S4の後、CPU10aは、はみ出し長Nが閾値Nx未満であるか否かを判断する(S6:第3判断処理)。閾値Nxは、搬送誤差を考慮した値である。はみ出し長Nが閾値Nx未満であると、搬送誤差によって用紙Pの後端に余白が生じ得る。
【0049】
はみ出し長Nが閾値Nx未満であると判断した場合(S6:YES)、CPU10aは、はみ出し領域Yを構成する画像を搬送方向Aに引き延ばすことにより、はみ出し長Nを初期値(第4値:2.5mm)よりも大きくする(S7)。例えば、用紙Pの後端部分に記録される画像のパターンを繰り返すことで、画像を搬送方向Aに引き延ばす。
【0050】
S2の後、S5の後、S7の後、又は、はみ出し長Nが閾値Nx未満でないと判断した場合(S6:NO)、CPU10aは、記録処理(S8)を実行し、当該プログラムを終了する。記録処理(S8)において、CPU10aは、搬送モータ3m及びドライバIC5mにより、拡大処理により拡大された画像を用紙Pの記録対象領域Xに記録させる。
【0051】
記録処理(S8)において、CPU10aは、
図5に示すように、用紙Pの後端がヘッド5の記録位置を通過したか否かを判断する(S21:第4判断処理)。CPU10aは、用紙センサ7(
図1~
図3参照)から受信した検知信号に基づいて、S21の判断を行う。記録位置は、ヘッド5におけるノズルが設けられた領域に該当する。
【0052】
用紙Pの後端がヘッド5の記録位置を通過したと判断した場合(S21:YES)、CPU10aは、ヘッド5のノズルからのインク吐出(ヘッド5による記録)を終了させ(S22)、当該ルーチンを終了する。用紙Pは、搬送部3により搬送され、筐体100aに対して開いた状態の排紙トレイ8に受容される。
【0053】
以上に述べたように、本実施形態によれば、縁無し記録において、用紙長Lが所定長Lx以下の場合(S1:YES)は、第1拡大処理(S2)においてはみ出し幅Wを比較的大きい第1値(2.5mm)とする(
図6参照)。これにより、余白の発生を抑制できる。用紙長Lが所定長Lx以下でない場合(S1:NO)は、第2拡大処理(S4)においてはみ出し幅Wを比較的小さい第2値(0.5mm)とする(
図7参照)。これにより、画像の欠損を抑制できる。
【0054】
搬送モータ3mの駆動力が一定の条件において、搬送抵抗Iが大きいほど、搬送量が小さくなり、用紙Pの後端に余白が生じ易くなる。そこで本実施形態では、用紙長Lが所定長Lx以下でない場合(S1:NO)に、一律に第2拡大処理(はみ出し幅Wを比較的小さい第2値(0.5mm)とする処理:S4)を行うのではなく、搬送抵抗Iが大きい場合(S3:NO)は、第3拡大処理(はみ出し幅Wを第2値よりも大きい第3値(1.5mm)とする処理:S5)を行う。これにより、余白の発生を抑制できる。
【0055】
搬送方向A及び直交方向Dに同じ拡大率で画像を拡大すると、はみ出し幅Wよりもはみ出し長Nが大きくなる(
図6及び
図7参照)。特に、
図7に示すように用紙長Lが長いと、はみ出し長Nが大きくなる。はみ出し長Nが長いと、プラテン6に吐出されるインクの量が多くなり、プラテン6が汚れてしまう。また、インクが無駄に消費されてしまう。当該問題を抑制するため、はみ出し長Nを短くすることが考えられるが、はみ出し長Nを短くすると、搬送誤差によって余白が生じ得る。そこで本実施形態では、第2拡大処理(
図7参照)において、搬送方向A及び直交方向Dに同じ拡大率で画像を拡大し、はみ出し長Nをはみ出し幅Wよりも大きくする。換言すると、上記問題を抑制するためにはみ出し長Nを短くすることを行わない。これにより、搬送誤差によって余白が生じることを抑制できる。
【0056】
はみ出し長Nが閾値Nx未満の場合、搬送誤差によって余白が生じ得る。そこで本実施形態では、はみ出し長Nが閾値Nx未満の場合(S6:YES)に、はみ出し領域Yを構成する画像を搬送方向Aに引き延ばすことにより、はみ出し長Nを初期値(第4値:2.5mm)よりも大きくする(S7)。これにより、搬送誤差によって余白が生じることを抑制できる。
【0057】
用紙Pの後端が記録位置を通過したタイミングにおいて画像データが残っている場合、残りの画像データに基づいて記録処理を続行すると、プラテン6にインクが吐出され、プラテン6がインクで汚れてしまう。また、インクが無駄に消費されてしまう。そこで本実施形態では、用紙Pの後端がヘッド5の記録位置を通過した場合(S21:YES)、ヘッド5のノズルからのインク吐出(ヘッド5による記録)を終了させる(S22)。これにより、上記問題を抑制できる。
【0058】
<第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
【0059】
本実施形態は、CPU10aが実行する縁無し記録におけるステップS7(
図4参照)の内容が第1実施形態と異なり、その他は第1実施形態と同じである。
【0060】
第1実施形態では、S7において、はみ出し領域Yを構成する画像を搬送方向Aに引き延ばすことにより、はみ出し長Nを初期値(第4値:2.5mm)よりも大きくする。これに対し、本実施形態では、画像の拡大率を大きくすることで、はみ出し長Nを初期値(第4値:2.5mm)よりも大きくする。これにより、搬送誤差によって余白が生じることを抑制できる。
【0061】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0062】
上述の実施形態では、第3値(第3拡大処理S5におけるはみ出し幅W=1.5mm)
が第1値(第1拡大処理S2におけるはみ出し幅W=2.5mm)と異なるが、第3値が第1値と同じであってもよい。第3値が第1値と同じ場合、
図4において搬送抵抗Iが所定値Ix以下でないとき(S3:NO)、第1拡大処理(S2)を実行してよい。
【0063】
上述の実施形態では、第4値(はみ出し長N=2.5mm)が第1値(第1拡大処理S2におけるはみ出し幅W=2.5mm)と同じであるが、第4値が第1値と異なってもよい。
【0064】
媒体は、用紙に限定されず、例えば、布、樹脂部材等であってもよい。
【0065】
記録部は、インク以外の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)を媒体に対して吐出することで媒体に画像を記録してもよい。また、記録部は、液体吐出方式に限定されず、レーザー方式、熱転写方式等であってもよい。
【0066】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。
【0067】
本発明に係るプログラムは、フレキシブルディスク等のリムーバブル型記録媒体やハードディスク等の固定型記録媒体に記録して配布可能である他、通信回線を介して配布可能である。
【符号の説明】
【0068】
3 搬送部
5 ヘッド(記録部)
10a CPU(制御部)
100 プリンタ(画像記録装置)
A 搬送方向
D 直交方向
P 用紙(媒体)
Pc カット紙
R ロール紙
X 記録対象領域
Y はみ出し領域