(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090397
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】鉄塔解体方法、クランプ治具、端部閉鎖治具、及び仮固定治具
(51)【国際特許分類】
E04H 12/10 20060101AFI20240627BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
E04H12/10 Z
E04G23/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206285
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】520307713
【氏名又は名称】関西電力送配電株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000213909
【氏名又は名称】朝日航洋株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503404338
【氏名又は名称】株式会社エフテック
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】橋本 光一朗
(72)【発明者】
【氏名】矢野 正康
(72)【発明者】
【氏名】稲村 道宏
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA07
2E176AA11
2E176DD64
(57)【要約】
【課題】上側セグメントを下側セグメントから容易且つ安全に分離させて撤去できる鉄塔解体方法、鉄塔解体用のクランプ治具、端部閉鎖治具、及び仮固定治具を提供する。
【解決手段】クランプ治具装着工程K21で、上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)のフランジ部16a(2),18a(2)同士を、クランプ治具62で挟持させた状態する。クランプ治具装着工程K21の後のポストピン装着工程K23で、縦ボルト30を取り外して上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)のボルト固定を解除し、縦ボルト30が取り外されて上下方向に連通しているボルト孔20(2),22(2)に、ポストピン100を上側から挿入し、ピン部100aをボルト孔22(2)の下側に突出させ、係止部100bをボルト孔20(2)の上側の周縁部に支持させる。クランプ治具取り外し工程K26及び吊りワイヤ接続工程K31の後の吊り上げ撤去工程K33で、上側セグメント12を吊り上げ手段36で吊り上げて撤去する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側セグメントと下側セグメントを有し、前記上側セグメントの一構成部材である上側主柱材の端部及び前記下側セグメントの一構成部材である下側主柱材の端部にボルト孔が各々設けられ、互いの前記ボルト孔を上下方向に連通させて縦ボルトを通し、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部同士をボルト固定することによって、前記上側セグメントと下側セグメントが連結されている鉄塔を、前記上側セグメントを前記下側セグメントから分離させることによって解体する鉄塔解体方法において、
2つの挟持面で対象物を挟持する着脱式のクランプ治具を準備するクランプ治具準備工程と、
前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部同士を、前記クランプ治具で挟持させた状態するクランプ治具装着工程と、
前記クランプ治具装着工程の後、前記縦ボルトを取り外すことによって前記上側主柱材及び前記下側主柱材のボルト固定を解除して、前記上側主柱材と前記下側主柱材とが前記クランプ治具で仮固定された状態にするとともに、
前記縦ボルトが取り外されて上下方向に連通している前記ボルト孔に、当該ボルト孔を通過できる太さのピン部及び当該ボルト孔を通過できない大きさの係止部を有したポストピンを上側から挿入し、前記ピン部を前記ボルト孔の下側に突出させ、前記係止部を前記ボルト孔の上側の周縁部に支持させる作業を行う、
又は、前記縦ボルトが取り外されて上下方向に連通している前記ボルト孔に、当該ボルト孔を通過できる太さのピン部を有したポストピンを挿入し、前記ピン部を前記ボルト孔の上側に突出させ、前記ボルト孔の下側に位置する基端部を前記下側主柱材に固定する作業を行うポストピン装着工程と、
前記ポストピン装着工程の後、前記クランプ治具を取り外し、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部同士の仮固定を解除するクランプ治具取り外し工程と、
吊り上げ手段に設けた吊りワイヤを前記上側セグメントに接続する吊りワイヤ接続工程と、
前記クランプ治具取り外し工程及び前記吊りワイヤ接続工程の後、前記上側セグメントを前記吊り上げ手段で吊り上げて撤去する吊り上げ撤去工程とを行うことを特徴とする鉄塔解体方法。
【請求項2】
前記クランプ治具取り外し工程及び前記吊りワイヤ接続工程の後、吊り上げ撤去工程の前に、前記吊り上げ手段で前記上側セグメントを僅かに吊り上げて前記上側セグメントの重量を確認する重量確認工程を行う請求項1記載の鉄塔解体方法。
【請求項3】
前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部同士が複数の前記ボルト孔を用いて各々ボルト固定されている場合に、
縦部材とその両端部から横向きに延びて互いに対向する第一及び第二の横部材とを有し、前記第一及び第二の横部材の先端部に、互いに連通する第一及び第二の透孔が一対に形成されたコ型本体部材と、前記第一及び第二の透孔にゆとりを持って挿通されるピン部材と、前記ピン部材の上端部分に着脱される位置決め部材とで構成され、前記ピン部材の上端部分を前記第一の透孔から上向きに突出させ、前記ピン部材の下端部分を前記第二透孔から下向きに突出させ、前記ピン部材の前記上端部分に前記位置決め部材が取り付けられて前記ピン部材が前記コ型本体部材に対して位置決めされるコ型金具を用意するコ型金具準備工程と、
前記ポストピン装着工程と並行して行われる工程であって、前記コ型本体部材の前記第一の横部材及び前記第二の横部材の間に前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部を配して前記縦ボルトが取り外された前記ボルト孔と前記第一及び第二の透孔とを連通させて前記ピン部材を挿通し、前記ピン部材の前記上端部分に前記位置決め部材を取り付けて前記コ型金具を組み立て状態とし、当該コ型金具によって、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部同士の離間可能な距離の最大値を規定するコ型金具装着工程と、
前記重量確認工程の後、吊り上げ撤去工程の前に行われる工程であって、前記ピン部材から前記位置決め部材を取り外して前記ピン部材及び前記コ型本体部材を分離させ、前記コ型金具を前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部から取り外すコ型金具取り外し工程とを行う請求項2記載の鉄塔解体方法。
【請求項4】
前記上側主柱材及び前記下側主柱材は、筒状本体部の開口端に外向きのフランジ部が一体に形成された部材であり、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の前記端部となる前記フランジ部に、前記ボルト孔が形成されている請求項1乃至3のいずれか記載の鉄塔解体方法。
【請求項5】
前記上側主柱材及び前記下側主柱材は、前記筒状本体部の内側に補強用の充填剤が充填された充填剤入り鋼管材である請求項4記載の鉄塔解体方法。
【請求項6】
前記上側主柱材に着脱可能な基体と、前記上側主柱材の開口端を閉鎖可能な大きさに形成された板状のシャッタと、前記基体に取り付けられて前記シャッタの端部を軸支し、前記シャッタを、前記開口端を閉鎖する位置から開放する位置まで移動可能にするシャッタ支持機構と、前記基体に取り付けられ、前記シャッタを、前記開口端を閉鎖する位置に向けて付勢する付勢手段とを備えた端部閉鎖治具を準備する端部閉鎖治具準備工程と、
前記クランプ治具取り外し工程を行う前に、前記端部閉鎖治具の前記基体を前記上側主柱材に固定し、前記シャッタを前記付勢手段の付勢に抗して前記開口端を開放する位置に移動させ、前記シャッタの端部を前記下側主柱材の前記フランジ部の外周面に係止させる端部閉鎖治具装着工程とを行う請求項5記載の鉄塔解体方法。
【請求項7】
上側セグメントと下側セグメントを有し、前記上側セグメントの一構成部材である上側主柱材の端部及び前記下側セグメントの一構成部材である下側主柱材の端部にボルト孔が各々設けられ、互いの前記ボルト孔を連通させてボルトを通し、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部同士をボルト固定することによって、前記上側セグメントと下側セグメントが連結されている鉄塔を、前記上側セグメントを前記下側セグメントから分離させることによって解体する時に使用されるクランプ治具であって、
可動部材、固定部材、第一のリンク部材及び第二のリンク部材を備え、
前記可動部材は、Z軸正方向側に可動挟持面が形成された可動クランプ部と、前記可動クランプ部の側端部からZ軸正方向に延びる長尺なロッド部とで構成され、前記ロッド部のZ軸正方向側の端部に第一の軸着部が配置されており、
前記固定部材は、Z軸負方向側の、前記可動挟持面に対向する位置に固定挟持面が形成された固定クランプ部と、前記固定クランプ部の、前記固定挟持面と反対側の面からZ軸正方向に延びる所定長さの本体部と、前記固定クランプ部又は前記本体部の側方に位置し、Z軸方向に貫通するガイド孔を有し、前記ガイド孔内に前記ロッド部が挿入され、前記ロッド部をZ軸正負方向にスライド可能に支持するロッド案内部とで構成され、前記本体部のZ軸正方向側の端部の、前記ロッド部の軸線を延長した位置又はその近傍に第二の軸着部が配置されており、
前記第一のリンク部材は、一端部が前記第一の軸着部に回動可能に接続されたリンク本体部と、前記リンク本体部の他端部に延設された操作レバーとで構成されており、
前記第二のリンク部材は、一端部が前記第二の軸着部に回動可能に接続され、他端部が前記第一リンク部材の、前記第二の軸着部よりも前記操作レバーに近い位置に配置された第三の軸着部に回動可能に接続されており、
前記操作レバーを操作して前記リンク本体部をZ軸と交差する方向に倒すと、前記第二のリンク部材及び前記可動部材が変位して、前記可動挟持面がZ軸負方向に移動し、
ボルト固定された前記上側主柱材の端部及び前記下側主柱材の端部を前記固定挟持面及び前記可動挟持面の間に配し、前記操作レバーを操作して前記リンク本体部をZ軸正方向に引き上げると、前記第二のリンク部材及び前記可動部材が変位して、前記可動挟持面がZ軸正方向に移動し、前記第三の軸着部が前記ロッド部の軸線を延長した位置又はその近傍に達すると、前記第二のリンク部材が前記第二の軸着部の構成部材に係止され、前記固定挟持面に対する前記可動挟持面の位置が固定され、
前記操作レバーを操作して前記リンク本体部をZ軸と交差する方向に倒すと、前記可動挟持面の位置の固定が解除されることを特徴とするクランプ治具。
【請求項8】
上側セグメントの一構成部材である上側主柱材と下側セグメントの一構成部材である下側主柱材とを相互に固定することによって、前記上側セグメントと前記下側セグメントが連結されている鉄塔であって、前記上側主柱材及び前記下側主柱材は、筒状本体部の開口端に外向きのフランジ部が一体に形成され、前記筒状本体部の内側に補強用の充填剤が充填された充填剤入り鋼管材であり、前記フランジ部同士を対向させ相互に固定することによって、前記上側セグメントと下側セグメントが連結されている前記鉄塔を、前記上側セグメントを前記下側セグメントから分離させることによって解体する鉄塔解体方法において、
前記上側主柱材に着脱可能な基体と、前記上側主柱材の前記開口端を閉鎖可能な大きさに形成された板状のシャッタと、前記基体に取り付けられて前記シャッタの端部を軸支し、前記シャッタを、前記開口端を閉鎖する位置から開放する位置まで移動可能にするシャッタ支持機構と、前記基体に取り付けられ、前記シャッタを、前記開口端を閉鎖する位置に向けて付勢する付勢手段とを備えた端部閉鎖治具を準備する端部閉鎖治具準備工程と、
前記端部閉鎖治具の前記基体を前記上側主柱材に固定し、前記シャッタを前記付勢手段の付勢に抗して前記開口端を開放する位置に移動させ、前記シャッタの端部を前記下側主柱材の前記フランジ部の外周面に係止させる端部閉鎖治具装着工程と、
吊り上げ手段に設けた吊りワイヤを前記上側セグメントに接続する吊りワイヤ接続工程と、
前記吊りワイヤ接続工程の後、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の前記フランジ部同士の固定を解除する固定解除工程と、
前記端部閉鎖治具装着工程及び前記固定解除工程の後、前記上側セグメントを前記吊り上げ手段で吊り上げて撤去する吊り上げ撤去工程とを備えることを特徴とする鉄塔解体方法。
【請求項9】
上側セグメントの一構成部材である上側主柱材と下側セグメントの一構成部材である下側主柱材とを相互に固定することによって、前記上側セグメントと前記下側セグメントが連結されている鉄塔であって、前記上側主柱材及び前記下側主柱材は、筒状本体部の開口端に外向きのフランジ部が一体に形成され、前記筒状本体部の内側に補強用の充填剤が充填された充填剤入り鋼管材であり、前記フランジ部同士を対向させ相互に固定することによって、前記上側セグメントと下側セグメントが連結されている前記鉄塔を、前記上側セグメントを前記下側セグメントから分離させることによって解体する時に使用される端部閉鎖治具であって、
前記上側主柱材に着脱可能な基体と、前記上側主柱材の前記開口端を閉鎖可能な大きさに形成された板状のシャッタと、前記基体に取り付けられて前記シャッタの端部を軸支し、前記シャッタを、前記開口端を閉鎖する位置から開放する位置まで移動可能にするシャッタ支持機構と、前記基体に取り付けられ、前記シャッタを、前記開口端を閉鎖する位置に向けて付勢する付勢手段とを備え、
解体前の前記鉄塔に装着する時は、前記基体を前記上側主柱材に固定し、前記シャッタを前記付勢手段の付勢に抗して前記開口端を開放する位置に移動させ、前記シャッタの端部を前記下側主柱材の前記フランジ部の外周面に係止させることによって装着され、
前記上側セグメントが前記下側セグメントから分離すると、前記シャッタの端部の係止が解除され、前記付勢手段の付勢によって、前記上側主柱材の前前記開口端を閉鎖する位置に自動的に移動することを特徴とする端部閉鎖治具。
【請求項10】
前記シャッタ支持機構は、前記上側セグメントが前記下側セグメントから分離した後、前記付勢手段に付勢されて移動した前記シャッタを、前記上側主柱材の前記開口端を閉鎖する位置に保持させるストッパ部材を備える請求項9記載の端部閉鎖治具。
【請求項11】
上側セグメントと下側セグメントを有し、前記上側セグメントの一構成部材である上側主柱材の端部及び前記下側セグメントの一構成部材である下側主柱材の端部に複数のボルト孔が各々設けられ、対応する前記ボルト孔を横方向に連通させて横ボルトを通し、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部同士をボルト固定することによって、前記上側セグメントと下側セグメントが連結されている鉄塔を、前記上側セグメントを前記下側セグメントから分離させることによって解体する鉄塔解体方法において、
互いに交差して連続する第一及び第二の側面を有した本体部材と、前記本体部材に取り付けられた所定長さのピンであって、基端部が前記本体部材の前記第一の側面の近傍に揺動可能に軸支され、当該基端部と反対側の差し込み部が、前記第一の側面から外向きに突出した状態で変位可能な可動ピンとを備えた仮固定治具を準備する仮固定治具準備工程と、
前記横ボルトを取り外し、当該横ボルトが取り外されて横方向に連通している前記ボルト孔に、前記仮固定治具の前記可動ピンの前記差し込み部を挿入し、前記本体部材の前記第一の側面を前記ボルト孔の周縁部に当接させ、前記上側主柱材と前記下側主柱材とが前記仮固定治具により仮固定された状態にする仮固定治具装着工程と、
吊り上げ手段に設けた吊りワイヤを前記上側セグメントに接続する吊りワイヤ接続工程と、
前記仮固定治具装着工程の後、前記仮固定治具の前記本体部材の特定部位を引っ張る操作を行い、第一及び第二の側面が交差する角部を支点にして前記第一の側面を前記ボルト孔の周縁部から斜めに離間させることによって、前記可動ピンの前記差し込み部を前記ボルト孔から引き抜き、前記上側主柱材の前記下側主柱材に対する仮固定を解除する仮固定治具取り外し工程と、
前記吊りワイヤ接続工程及び前記仮固定治具取り外し工程の後、前記上側セグメントを前記吊り上げ手段で吊り上げて撤去する吊り上げ撤去工程とを備えることを特徴とする鉄塔解体方法。
【請求項12】
前記吊りワイヤ接続工程の後、前記上側主柱材と前記下側主柱材とが前記仮固定治具により仮固定され、前記上側セグメントが前記仮固定治具の前記可動ピンを軸に回動可能な状態で、前記吊り上げ手段で前記上側セグメントを僅かに吊り上げて前記上側セグメントの重量を確認する重量確認工程を行う請求項11記載の鉄塔解体方法。
【請求項13】
前記仮固定治具装着工程の前に、又は前記仮固定治具装着工程と並行して行う工程であって、前記横ボルトを取り外す前に、前記上側主柱材の端部と前記下側主柱材の端部との隙間に、前記上側主柱材の前記ボルト孔と前記下側主柱材の前記ボルト孔との位置ずれを防止するためのクサビ部材を装着するクサビ部材装着工程を行う請求項11又は12記載の鉄塔解体方法。
【請求項14】
上側セグメントと下側セグメントを有し、前記上側セグメントの一構成部材である上側主柱材の端部及び前記下側セグメントの一構成部材である下側主柱材の端部に複数のボルト孔が各々設けられ、互いの前記ボルト孔同士を横方向に連通させて横ボルトを通し、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部同士をボルト固定することによって、前記上側セグメントと下側セグメントが連結されている鉄塔を、前記上側セグメントを前記下側セグメントから分離させて解体する時に使用される仮固定治具であって、
互いに交差して連続する第一及び第二の側面を有した本体部材と、前記本体部材に取り付けられた所定長さのピンであって、基端部が前記本体部材の前記第一の側面の近傍に揺動可能に軸支され、当該基端部と反対側の差し込み部が、前記第一の側面から外向きに突出した状態で変位可能な可動ピンとを備え、
前記横ボルトを取り外し、当該横ボルトが取り外されて横方向に連通している前記ボルト孔に、前記可動ピンの前記差し込み部を挿入し、前記本体部材の前記第一の側面を一方の前記ボルト孔の周縁部に当接させることによって、前記上側主柱材と前記下側主柱材とが仮固定された状態になり、
この仮固定された状態で、前記本体部材の特定部分を引っ張る操作を行い、第一及び第二の側面が交差する角部を支点にして前記第一の側面を前記ボルト孔の周縁部から斜めに離間させることによって、前記可動ピンの前記差し込み部が前記ボルト孔から引き抜かれ、前記上側主柱材と前記下側主柱材との仮固定が解除されることを特徴とする仮固定治具。
【請求項15】
前記可動ピンは、前記本体部材に対して揺動可能に軸支され、且つ自己の中心軸周りに回転自在なスイベル式に支持されており、前記本体部材には、前記ボルト孔の周縁部に当接させた状態で当該ボルト孔の周縁部を吸引又は吸着し、前記本体部材が位置ずれするのを抑える磁石が設けられている請求項14記載の仮固定治具。
【請求項16】
上側セグメントの一構成部材である上側主柱材と下側セグメントの一構成部材である下側主柱材とを相互に固定することによって、前記上側セグメントと前記下側セグメントが連結されている鉄塔であって、前記上側主柱材及び前記下側主柱材は、筒状本体部の開口端に外向きのフランジ部が一体に形成された部材であり、前記フランジ部にボルト孔が各々設けられ、互いの前記ボルト孔を横方向に連通させて横ボルトを通し、前記フランジ部同士をボルト固定することによって、前記上側セグメントと下側セグメントが連結されている前記鉄塔を、前記上側セグメントを前記下側セグメントから分離させることによって解体する鉄塔解体方法において、
先端に環状部が設けられたガイドワイヤと、前記ガイドワイヤを引っ張るための引っ張り装置と、前記上側主柱材に固定される本体部分を有し、前記本体部分の一側面に、互いに対向する2つの係止板が立設され、2つの前記係止板の内側に挿通孔が各々設けられて連通しているY型金具と、前記係止板の前記挿通孔を通過できない大きさの基部と通過できる太さの係止用ピン部とを有したワイヤ係止ピン部材と、前記係止用ピン部の先端部分に着脱可能な係止用ピン部抜け止め部材とを備えたガイドワイヤ装置を準備するガイドワイヤ装置準備工程と、
前記Y型金具の前記本体部分を前記上側主柱材に固定し、前記ガイドワイヤの前記環状部を前記2つの前記係止板の間に配した状態で、前記ワイヤ係止ピン部材の前記係止用ピン部を、一方の前記係止板の前記挿通孔、前記ガイドワイヤの前記環状部、他方の前記係止板の前記挿通孔に順に通し、他方の前記係止板の前記挿通孔から突出する前記係止用ピン部の先端部分に前記係止用ピン部抜け止め部材を装着することによって前記ガイドワイヤを前記Y型金具に接続するとともに、前記引っ張り装置を前記下側主柱材に取り付け、前記引っ張り装置を動作させて前記ガイドワイヤを引っ張り、前記上側主柱材の前記フランジ部が前記下側主柱材の前記フランジ部に押し当てられる方向に付勢された状態にするガイドワイヤ装置設置工程と、
2つの挟持面で対象物を挟持する着脱式のクランプ治具を準備するクランプ治具準備工程と、
前記上側主柱材及び前記下側主柱材の前記フランジ部同士を、前記クランプ治具で挟持させた状態するクランプ治具装着工程と、
前記ガイドワイヤ装置設置工程及び前記クランプ治具装着工程の後、前記横ボルトを取り外し、さらに前記クランプ治具を取り外すことによって、前記上側主柱材及び前記下側主柱材が前記ガイドワイヤ装置で仮固定された状態にするクランプ治具取り外し工程と、
吊り上げ手段に設けた吊りワイヤを前記上側セグメントに接続する吊りワイヤ接続工程と、 前記クランプ治具取り外し工程及び前記吊りワイヤ接続工程の後、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の前記フランジ部同士が前記ガイドワイヤ装置の付勢により位置決めされ、前記上側セグメントが前記フランジ部の位置の軸に回動可能な状態で、前記吊り上げ手段で前記上側セグメントを僅かに吊り上げて前記上側セグメントの重量を確認する重量確認工程と、 前記重量確認工程の後、前記ガイドワイヤ装置の前記係止用ピン部抜け止め部材を取り外し、前記ワイヤ係止ピン部材の前記係止用ピン部を前記Y型金具から引き抜くことによって、前記ガイドワイヤを前記Y型金具から離脱させるガイドワイヤ取り外し工程と、
前記ガイドワイヤ取り外し工程の後、前記上側セグメントを前記吊り上げ手段で吊り上げて撤去する吊り上げ撤去工程とを行うことを特徴とする鉄塔解体方法。
【請求項17】
前記上側主柱材及び前記下側主柱材は、前記筒状本体部の内側に補強用の充填剤が充填された充填剤入り鋼管材である請求項16記載の鉄塔解体方法。
【請求項18】
前記上側主柱材に着脱可能な基体と、前記上側主柱材の開口端を閉鎖可能な大きさに形成された板状のシャッタと、前記基体に取り付けられて前記シャッタの端部を軸支し、前記シャッタを、前記開口端を閉鎖する位置から開放する位置まで移動可能にするシャッタ支持機構と、前記基体に取り付けられ、前記シャッタを、前記開口端を閉鎖する位置に向けて付勢する付勢手段とを備えた端部閉鎖治具を準備する端部閉鎖治具準備工程と、
前記クランプ治具取り外し工程を行う前に、前記端部閉鎖治具の前記基体を前記上側主柱材に固定し、前記シャッタを前記付勢手段の付勢に抗して前記開口端を開放する位置に移動させ、前記シャッタの端部を前記下側主柱材の前記フランジ部の外周面に係止させる端部閉鎖治具装着工程とを行う請求項17記載の鉄塔解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線架設用の鉄塔をヘリコプタやクレーン等の吊り上げ手段を使用して解体する鉄塔解体方法、鉄塔解体用のクランプ治具、端部閉鎖治具、及び仮固定治具に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔解体方法の1つとして、鉄塔の特定部分(以下、上側セグメントと称する)をその他の部分(以下、下側セグメントと称する)から分離させ、上側セグメントを吊り上げて別の場所に移送する方法がある。
【0003】
一般的な鉄塔は、上側セグメント及び下側セグメントが、上側セグメントの一構成部材である上側主柱材の端部と下側セグメントの一構成部材である下側主柱材の端部にボルト孔を設け、互いのボルト孔を連通させてボルトを通し、端部同士をボルト固定することによって連結されている。したがって、上側セグメントを下側セグメントから分離させる作業は、まず、ボルト固定されている端部に仮固定手段を装着した状態でボルト固定を解除し、その後、仮固定手段による仮固定を解除し、吊り上げ手段で吊り上げて分離させるという手順で行われる。
【0004】
なお、上側セグメントは、下側セグメントの上方に位置している場合が多いが、下側セグメントの側方に位置している場合もある。したがって、「上側」「下側」という表記は、互いの位置関係を厳密に表しているわけではない。
【0005】
従来から、上側セグメントを下側セグメントから分離させる作業を円滑に行うための作業手順や仮固定手段が複数提案されている。例えば、特許文献1に開示された鉄塔解体方法では、仮固定手段として支持部材及び連結治具を用意し(特許文献1の
図6~
図10を参照)、まず、支持部材を下側主柱材の上端部に取り付けて上側主柱材の下端部を支持可能な状態にし、連通しているボルト孔からボルトを引き抜いてボルト固定を解除し、そのボルト孔に連結治具の軸部材を差し込み、軸部材の先端部に抜け止めピンを装着して仮固定の状態にする。その後、連結治具による仮固定を解除する時は、軸部材から抜け止めピンを取り外す操作を行う。抜け止めピンが取り外されると、連結治具に内蔵されたコイルバネの付勢力が軸部材に作用して軸部材が自動的にボルト孔から抜け出し、連結治具による仮固定が解除される。そして、吊り上げ手段で上側セグメントを吊り上げて、下側セグメントから分離させる。
【0006】
特許文献2に開示された鉄塔解体工法は、上側及び下側主柱材がL型鋼材である場合の工法であって、仮固定手段として受け金具及び仮止めクランプを用意し(特許文献2の
図5、
図6、
図8を参照)、まず、受け金具を下側主柱材の上端部に取り付けて上側主柱材の下端部を支持可能な状態にし、連通しているボルト孔からボルトを引き抜いてボルト固定を解除し、上側主柱材及び受け金具のストッパを仮止めクランプ(いわゆるC型クランプ)で挟み付けて仮固定の状態にする。その後、仮止めクランプによる仮固定を解除する時は、仮止めクランプの操作レバーを回転させる操作を行い、締め付けを徐々に緩めることによって仮固定を解除する。そして、吊り上げ手段で上側セグメントを吊り上げて、下側セグメントから分離させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-139608号公報
【特許文献2】特開2006-266032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の鉄塔解体方法は、連結治具による仮固定を解除する時、2つのボルト孔に差し込まれた軸部材を、軸部材にコイルバネの付勢力を作用させることによって引き抜くという構成になっている。しかし、連結治具を装着する時の作業性を考えるとコイルバネの付勢力はあまり強くできないため、連結治具による仮固定を解錠する時、軸部材がスムーズに抜けないことがあり、改善が求められていた。
【0009】
特許文献2の鉄塔解体工法の場合、主柱材がL型鋼材であることが条件である。したがって、特許文献2の図面に記載された仮固定手段(受け金具、仮止めクランプ)は、主柱材がL型鋼材であることを前提とした構造になっており、L型鋼材以外の主柱材には使用しにくい。また、仮止めクランプによる仮固定を解除する時は、仮止めクランプの操作レバーを何回も回転させなければならず、高所で作業を行う作業者にとって負担になる。
【0010】
また、近年、主柱材として鋼管材が使用されるケースが増えている。鋼管材とは、鋼材で成る筒状本体部の開口端に外向きのフランジ部が一体に形成されたものである。また、鉄塔の強度や耐久性をさらに向上させるため、鋼管材の筒状本体部の内側にコンクリートを充填したコンクリート充填鋼管材が使用される場合もある。特許文献1,2に記載された鉄塔は、主柱材として鋼管材を使用したものではない。
【0011】
上側主柱材及び下側主柱材がコンクリート充填鋼管材の場合、端部であるフランジ部同士を対向させて相互に固定することによって接続されている。そのため、フランジ部同士の固定を単純に解除して上側主柱材を下側主柱材から分離させると、移送中に上側主柱材の中のコンクリートの破片等が脱落して地上に落下するおそれがあり、何らかの方法で安全を確保することが課題になる。しかしながら、効果的で実用性が高い解決手段は未だ開発されておらず、特許文献1,2にも有効な解決手段は記載されていない。
【0012】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、上側セグメントを下側セグメントから容易且つ安全に分離させて撤去できる、ヘリコプタやクレーン等の吊り上げ手段を使用して解体する鉄塔解体方法、及びこれに適した各種治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、上側セグメントと下側セグメントを有し、前記上側セグメントの一構成部材である上側主柱材の端部及び前記下側セグメントの一構成部材である下側主柱材の端部にボルト孔が各々設けられ、互いの前記ボルト孔を上下方向に連通させて縦ボルトを通し、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部同士をボルト固定することによって、前記上側セグメントと下側セグメントが連結されている鉄塔を、前記上側セグメントを前記下側セグメントから分離させることによって解体する鉄塔解体方法であって、
2つの挟持面で対象物を挟持する着脱式のクランプ治具を準備するクランプ治具準備工程と、
前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部同士を、前記クランプ治具で挟持させた状態するクランプ治具装着工程と、
前記クランプ治具装着工程の後、前記縦ボルトを取り外すことによって前記上側主柱材及び前記下側主柱材のボルト固定を解除して、前記上側主柱材と前記下側主柱材とが前記クランプ治具で仮固定された状態にするとともに、
前記縦ボルトが取り外されて上下方向に連通している前記ボルト孔に、当該ボルト孔を通過できる太さのピン部及び当該ボルト孔を通過できない大きさの係止部を有したポストピンを上側から挿入し、前記ピン部を前記ボルト孔の下側に突出させ、前記係止部を前記ボルト孔の上側の周縁部に支持させる作業を行う、
又は、前記縦ボルトが取り外されて上下方向に連通している前記ボルト孔に、当該ボルト孔を通過できる太さのピン部を有したポストピンを挿入し、前記ピン部を前記ボルト孔の上側に突出させ、前記ボルト孔の下側に位置する基端部を前記下側主柱材に固定する作業を行うポストピン装着工程と、
前記ポストピン装着工程の後、前記クランプ治具を取り外し、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部同士の仮固定を解除するクランプ治具取り外し工程と、
吊り上げ手段に設けた吊りワイヤを前記上側セグメントに接続する吊りワイヤ接続工程と、
前記クランプ治具取り外し工程及び前記吊りワイヤ接続工程の後、前記上側セグメントを前記吊り上げ手段で吊り上げて撤去する吊り上げ撤去工程とを行う鉄塔解体方法である。
【0014】
前記クランプ治具取り外し工程及び前記吊りワイヤ接続工程の後、吊り上げ撤去工程の前に、前記吊り上げ手段で前記上側セグメントを僅かに吊り上げて前記上側セグメントの重量を確認する重量確認工程を行う構成にすることが好ましい。
【0015】
前記重量確認工程を行う場合に、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部同士が複数の前記ボルト孔を用いて各々ボルト固定されている場合に、
縦部材とその両端部から横向きに延びて互いに対向する第一及び第二の横部材とを有し、前記第一及び第二の横部材の先端部に、互いに連通する第一及び第二の透孔が一対に形成されたコ型本体部材と、前記第一及び第二の透孔にゆとりを持って挿通されるピン部材と、前記ピン部材の上端部分に着脱される位置決め部材とで構成され、前記ピン部材の上端部分を前記第一の透孔から上向きに突出させ、前記ピン部材の下端部分を前記第二透孔から下向きに突出させ、前記ピン部材の前記上端部分に前記位置決め部材が取り付けられて前記ピン部材が前記コ型本体部材に対して位置決めされるコ型金具を用意するコ型金具準備工程と、
前記ポストピン装着工程と並行して行われる工程であって、前記コ型本体部材の前記第一の横部材及び前記第二の横部材の間に前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部を配して前記縦ボルトが取り外された前記ボルト孔と前記第一及び第二の透孔とを連通させて前記ピン部材を挿通し、前記ピン部材の前記上端部分に前記位置決め部材を取り付けて前記コ型金具を組み立て状態とし、当該コ型金具によって、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部同士の離間可能な距離の最大値を規定するコ型金具装着工程と、
前記重量確認工程の後、吊り上げ撤去工程の前に行われる工程であって、前記ピン部材から前記位置決め部材を取り外して前記ピン部材及び前記コ型本体部材を分離させ、前記コ型金具を前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部から取り外すコ型金具取り外し工程とを行うことが好ましい。
【0016】
前記上側主柱材及び前記下側主柱材は、筒状本体部の開口端に外向きのフランジ部が一体に形成された部材であり、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の前記端部となる前記フランジ部に、前記ボルト孔が形成されているものであってもよい。また、前記上側主柱材及び前記下側主柱材は、前記筒状本体部の内側に補強用の充填剤が充填された充填剤入り鋼管材であってもよい。
【0017】
その場合、前記上側主柱材に着脱可能な基体と、前記上側主柱材の開口端を閉鎖可能な大きさに形成された板状のシャッタと、前記基体に取り付けられて前記シャッタの端部を軸支し、前記シャッタを、前記開口端を閉鎖する位置から開放する位置まで移動可能にするシャッタ支持機構と、前記基体に取り付けられ、前記シャッタを、前記開口端を閉鎖する位置に向けて付勢する付勢手段とを備えた端部閉鎖治具を準備する端部閉鎖治具準備工程と、
前記クランプ治具取り外し工程を行う前に、前記端部閉鎖治具の前記基体を前記上側主柱材に固定し、前記シャッタを前記付勢手段の付勢に抗して前記開口端を開放する位置に移動させ、前記シャッタの端部を前記下側主柱材の前記フランジ部の外周面に係止させる端部閉鎖治具装着工程とを行うことが好ましい。
【0018】
また、本発明は、上側セグメントと下側セグメントを有し、前記上側セグメントの一構成部材である上側主柱材の端部及び前記下側セグメントの一構成部材である下側主柱材の端部にボルト孔が各々設けられ、互いの前記ボルト孔を連通させてボルトを通し、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部同士をボルト固定することによって、前記上側セグメントと下側セグメントが連結されている鉄塔を、前記上側セグメントを前記下側セグメントから分離させることによって解体する時に使用されるクランプ治具であって、可動部材、固定部材、第一のリンク部材及び第二のリンク部材を備え、
前記可動部材は、Z軸正方向側に可動挟持面が形成された可動クランプ部と、前記可動クランプ部の側端部からZ軸正方向に延びる長尺なロッド部とで構成され、前記ロッド部のZ軸正方向側の端部に第一の軸着部が配置されており、
前記固定部材は、Z軸負方向側の、前記可動挟持面に対向する位置に固定挟持面が形成された固定クランプ部と、前記固定クランプ部の、前記固定挟持面と反対側の面からZ軸正方向に延びる所定長さの本体部と、前記固定クランプ部又は前記本体部の側方に位置し、Z軸方向に貫通するガイド孔を有し、前記ガイド孔内に前記ロッド部が挿入され、前記ロッド部をZ軸正負方向にスライド可能に支持するロッド案内部とで構成され、前記本体部のZ軸正方向側の端部の、前記ロッド部の軸線を延長した位置又はその近傍に第二の軸着部が配置されており、
前記第一のリンク部材は、一端部が前記第一の軸着部に回動可能に接続されたリンク本体部と、前記リンク本体部の他端部に延設された操作レバーとで構成されており、
前記第二のリンク部材は、一端部が前記第二の軸着部に回動可能に接続され、他端部が前記第一リンク部材の、前記第二の軸着部よりも前記操作レバーに近い位置に配置された第三の軸着部に回動可能に接続されており、
前記操作レバーを操作して前記リンク本体部をZ軸と交差する方向に倒すと、前記第二のリンク部材及び前記可動部材が変位して、前記可動挟持面がZ軸負方向に移動し、ボルト固定された前記上側主柱材の端部及び前記下側主柱材の端部を前記固定挟持面及び前記可動挟持面の間に配し、前記操作レバーを操作して前記リンク本体部をZ軸正方向に引き上げると、前記第二のリンク部材及び前記可動部材が変位して、前記可動挟持面がZ軸正方向に移動し、前記第三の軸着部が前記ロッド部の軸線を延長した位置又はその近傍に達すると、前記第二のリンク部材が前記第二の軸着部の構成部材に係止され、前記固定挟持面に対する前記可動挟持面の位置が固定され、前記操作レバーを操作して前記リンク本体部をZ軸と交差する方向に倒すと、前記可動挟持面の位置の固定が解除されるクランプ治具である。
【0019】
前記可動クランプ部には、ネジ部がZ軸正方向に配され、前記ネジ部の先端面が前記可動挟持面となる調節ボルトが設けられ、前記調節ボルトを回転させることによって前記可動挟持面のZ軸方向の位置を可変調節できる構成にすることが好ましい。また、前記挟持状態を解除する時に、前記操作レバーを離れた場所で操作するための遠隔操作具が設けられていることが好ましい。さらに、特定の部位を前記下側セグメントに接続するための落下防止用接続具が設けられていることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、上側セグメントの一構成部材である上側主柱材と下側セグメントの一構成部材である下側主柱材とを相互に固定することによって、前記上側セグメントと前記下側セグメントが連結されている鉄塔であって、前記上側主柱材及び前記下側主柱材は、筒状本体部の開口端に外向きのフランジ部が一体に形成され、前記筒状本体部の内側に補強用の充填剤が充填された充填剤入り鋼管材であり、前記フランジ部同士を対向させ相互に固定することによって、前記上側セグメントと下側セグメントが連結されている前記鉄塔を、前記上側セグメントを前記下側セグメントから分離させることによって解体する鉄塔解体方法にであって、
前記上側主柱材に着脱可能な基体と、前記上側主柱材の前記開口端を閉鎖可能な大きさに形成された板状のシャッタと、前記基体に取り付けられて前記シャッタの端部を軸支し、前記シャッタを、前記開口端を閉鎖する位置から開放する位置まで移動可能にするシャッタ支持機構と、前記基体に取り付けられ、前記シャッタを、前記開口端を閉鎖する位置に向けて付勢する付勢手段とを備えた端部閉鎖治具を準備する端部閉鎖治具準備工程と、
前記端部閉鎖治具の前記基体を前記上側主柱材に固定し、前記シャッタを前記付勢手段の付勢に抗して前記開口端を開放する位置に移動させ、前記シャッタの端部を前記下側主柱材の前記フランジ部の外周面に係止させる端部閉鎖治具装着工程と、
吊り上げ手段に設けた吊りワイヤを前記上側セグメントに接続する吊りワイヤ接続工程と、
前記吊りワイヤ接続工程の後、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の前記フランジ部同士の固定を解除する固定解除工程と、
前記端部閉鎖治具装着工程及び前記固定解除工程の後、前記上側セグメントを前記吊り上げ手段で吊り上げて撤去する吊り上げ撤去工程とを備える鉄塔解体方法である。
【0021】
また、本発明は、上側セグメントの一構成部材である上側主柱材と下側セグメントの一構成部材である下側主柱材とを相互に固定することによって、前記上側セグメントと前記下側セグメントが連結されている鉄塔であって、前記上側主柱材及び前記下側主柱材は、筒状本体部の開口端に外向きのフランジ部が一体に形成され、前記筒状本体部の内側に補強用の充填剤が充填された充填剤入り鋼管材であり、前記フランジ部同士を対向させ相互に固定することによって、前記上側セグメント及び下側セグメントが連結されている前記鉄塔を、前記上側セグメントを前記下側セグメントから分離させることによって解体する時に使用される端部閉鎖治具であって、
前記上側主柱材に着脱可能な基体と、前記上側主柱材の前記開口端を閉鎖可能な大きさに形成された板状のシャッタと、前記基体に取り付けられて前記シャッタの端部を軸支し、前記シャッタを、前記開口端を閉鎖する位置から開放する位置まで移動可能にするシャッタ支持機構と、前記基体に取り付けられ、前記シャッタを、前記開口端を閉鎖する位置に向けて付勢する付勢手段とを備え、
解体前の前記鉄塔に装着する時は、前記基体を前記上側主柱材に固定し、前記シャッタを前記付勢手段の付勢に抗して前記開口端を開放する位置に移動させ、前記シャッタの端部を前記下側主柱材の前記フランジ部の外周面に係止させることによって装着され、
前記上側セグメントが前記下側セグメントから分離すると、前記シャッタの端部の係止が解除され、前記付勢手段の付勢によって、前記上側主柱材の前前記開口端を閉鎖する位置に自動的に移動する端部閉鎖治具である。
【0022】
前記シャッタ支持機構は、前記上側セグメントが前記下側セグメントから分離した後、前記付勢手段に付勢されて移動した前記シャッタを前記上側主柱材の前記開口端を閉鎖する位置に保持させるストッパ部材を備える構成にしてもよい。
【0023】
また、本発明は、上側セグメントと下側セグメントを有し、前記上側セグメントの一構成部材である上側主柱材の端部及び前記下側セグメントの一構成部材である下側主柱材の端部に複数のボルト孔が各々設けられ、対応する前記ボルト孔を横方向に連通させて横ボルトを通し、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部同士をボルト固定することによって、前記上側セグメントと下側セグメントが連結されている鉄塔を、前記上側セグメントを前記下側セグメントから分離させることによって解体する鉄塔解体方法であって、
互いに交差して連続する第一及び第二の側面を有した本体部材と、前記本体部材に取り付けられた所定長さのピンであって、基端部が前記本体部材の前記第一の側面の近傍に揺動可能に軸支され、当該基端部と反対側の差し込み部が、前記第一の側面から外向きに突出した状態で変位可能な可動ピンとを備えた仮固定治具を準備する仮固定治具準備工程と、
前記横ボルトを取り外し、当該横ボルトが取り外されて横方向に連通している前記ボルト孔に、前記仮固定治具の前記可動ピンの前記差し込み部を挿入し、前記本体部材の前記第一の側面を前記ボルト孔の周縁部に当接させ、前記上側主柱材と前記下側主柱材とが前記仮固定治具により仮固定された状態にする仮固定治具装着工程と、
吊り上げ手段に設けた吊りワイヤを前記上側セグメントに接続する吊りワイヤ接続工程と、
前記仮固定治具装着工程の後、前記仮固定治具の前記本体部材の特定部位を引っ張る操作を行い、第一及び第二の側面が交差する角部を支点にして前記第一の側面を前記ボルト孔の周縁部から斜めに離間させることによって、前記可動ピンの前記差し込み部を前記ボルト孔から引き抜き、前記上側主柱材の前記下側主柱材に対する仮固定を解除する仮固定治具取り外し工程と、
前記吊りワイヤ接続工程及び前記仮固定治具取り外し工程の後、前記上側セグメントを前記吊り上げ手段で吊り上げて撤去する吊り上げ撤去工程とを備える鉄塔解体方法である。
【0024】
前記吊りワイヤ接続工程の後、前記上側主柱材と前記下側主柱材とが前記仮固定治具により仮固定され、前記上側セグメントが前記仮固定治具の前記可動ピンを軸に回動可能な状態で、前記吊り上げ手段で前記上側セグメントを僅かに吊り上げて前記上側セグメントの重量を確認する重量確認工程を行う構成にすることが好ましい。
【0025】
前記仮固定治具装着工程の前に、又は前記仮固定治具装着工程と並行して行う工程であって、前記横ボルトを取り外す前に、前記上側主柱材の端部と前記下側主柱材の端部との隙間に、前記上側主柱材の前記ボルト孔と前記下側主柱材の前記ボルト孔との位置ずれを防止するためのクサビ部材を装着するクサビ部材装着工程を行う構成にしてもよい。
【0026】
また、本発明は、上側セグメントと下側セグメントを有し、前記上側セグメントの一構成部材である上側主柱材の端部及び前記下側セグメントの一構成部材である下側主柱材の端部に複数のボルト孔が各々設けられ、互いの前記ボルト孔同士を横方向に連通させて横ボルトを通し、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の端部同士をボルト固定することによって、前記上側セグメントと下側セグメントが連結されている鉄塔を、前記上側セグメントを前記下側セグメントから分離させて解体する時に使用される仮固定治具であって、
互いに交差して連続する第一及び第二の側面を有した本体部材と、前記本体部材に取り付けられた所定長さのピンであって、基端部が前記本体部材の前記第一の側面の近傍に揺動可能に軸支され、当該基端部と反対側の差し込み部が、前記第一の側面から外向きに突出した状態で変位可能な可動ピンとを備え、
前記横ボルトを取り外し、当該横ボルトが取り外されて横方向に連通している前記ボルト孔に、前記可動ピンの前記差し込み部を挿入し、前記本体部材の前記第一の側面を一方の前記ボルト孔の周縁部に当接させることによって、前記上側主柱材と前記下側主柱材とが仮固定された状態になり、
この仮固定された状態で、前記本体部材の特定部分を引っ張る操作を行い、第一及び第二の側面が交差する角部を支点にして前記第一の側面を前記ボルト孔の周縁部から斜めに離間させることによって、前記可動ピンの前記差し込み部が前記ボルト孔から引き抜かれ、前記上側主柱材と前記下側主柱材との仮固定が解除される仮固定治具である。
【0027】
前記可動ピンは、前記本体部材に対して揺動可能に軸支され、且つ自己の中心軸周りに回転可能なスイベル式に支持されていることが好ましい。さらに、前記本体部材には、前記ボルト孔の周縁部に当接させた状態で当該ボルト孔の周縁部を吸引又は吸着し、前記本体部材を前記可動ピンの中心軸周りに回動するのを阻止する磁石が設けられていることが好ましい。
【0028】
また、本発明は、上側セグメントの一構成部材である上側主柱材と下側セグメントの一構成部材である下側主柱材とを相互に固定することによって、前記上側セグメントと前記下側セグメントが連結されている鉄塔であって、前記上側主柱材及び前記下側主柱材は、筒状本体部の開口端に外向きのフランジ部が一体に形成された部材であり、前記フランジ部にボルト孔が各々設けられ、互いの前記ボルト孔を横方向に連通させて横ボルトを通し、前記フランジ部同士をボルト固定することによって、前記上側セグメントと下側セグメントが連結されている前記鉄塔を、前記上側セグメントを前記下側セグメントから分離させることによって解体する鉄塔解体方法であって、
先端に環状部が設けられたガイドワイヤと、前記ガイドワイヤを引っ張るための引っ張り装置と、前記上側主柱材に固定される本体部分を有し、前記本体部分の一側面に、互いに対向する2つの係止板が立設され、2つの前記係止板の内側に挿通孔が各々設けられて連通しているY型金具と、前記係止板の前記挿通孔を通過できない大きさの基部と通過できる太さの係止用ピン部とを有したワイヤ係止ピン部材と、前記係止用ピン部の先端部分に着脱可能な係止用ピン部抜け止め部材とを備えたガイドワイヤ装置を準備するガイドワイヤ装置準備工程と、
前記Y型金具の前記本体部分を前記上側主柱材に固定し、前記ガイドワイヤの前記環状部を前記2つの前記係止板の間に配した状態で、前記ワイヤ係止ピン部材の前記係止用ピン部を、一方の前記係止板の前記挿通孔、前記ガイドワイヤの前記環状部、他方の前記係止板の前記挿通孔に順に通し、他方の前記係止板の前記挿通孔から突出する前記係止用ピン部の先端部分に前記係止用ピン部抜け止め部材を装着することによって前記ガイドワイヤを前記Y型金具に接続するとともに、前記引っ張り装置を前記下側主柱材に取り付け、前記引っ張り装置を動作させて前記ガイドワイヤを引っ張り、前記上側主柱材の前記フランジ部が前記下側主柱材の前記フランジ部に押し当てられる方向に付勢された状態にするガイドワイヤ装置設置工程と、
2つの挟持面で対象物を挟持する着脱式のクランプ治具を準備するクランプ治具準備工程と、
前記上側主柱材及び前記下側主柱材の前記フランジ部同士を、前記クランプ治具で挟持させた状態するクランプ治具装着工程と、
前記ガイドワイヤ装置設置工程及び前記クランプ治具装着工程の後、前記横ボルトを取り外し、さらに前記クランプ治具を取り外すことによって、前記上側主柱材及び前記下側主柱材が前記ガイドワイヤ装置で仮固定された状態にするクランプ治具取り外し工程と、
吊り上げ手段に設けた吊りワイヤを前記上側セグメントに接続する吊りワイヤ接続工程と、
前記クランプ治具取り外し工程及び前記吊りワイヤ接続工程の後、前記上側主柱材及び前記下側主柱材の前記フランジ部同士が前記ガイドワイヤ装置の付勢により位置決めされ、前記上側セグメントが前記フランジ部の位置の軸に回動可能な状態で、前記吊り上げ手段で前記上側セグメントを僅かに吊り上げて前記上側セグメントの重量を確認する重量確認工程と、
前記重量確認工程の後、前記ガイドワイヤ装置の前記係止用ピン部抜け止め部材を取り外し、前記ワイヤ係止ピン部材の前記係止用ピン部を前記Y型金具から引き抜くことによって、前記ガイドワイヤを前記Y型金具から離脱させるガイドワイヤ取り外し工程と、
前記ガイドワイヤ取り外し工程の後、前記上側セグメントを前記吊り上げ手段で吊り上げて撤去する吊り上げ撤去工程とを行う鉄塔解体方法である。
【0029】
前記上側主柱材及び前記下側主柱材は、前記筒状本体部の内側に補強用の充填剤が充填された充填剤入り鋼管材であってもよい。
【0030】
この場合、前記上側主柱材に着脱可能な基体と、前記上側主柱材の開口端を閉鎖可能な大きさに形成された板状のシャッタと、前記基体に取り付けられて前記シャッタの端部を軸支し、前記シャッタを、前記開口端を閉鎖する位置から開放する位置まで移動可能にするシャッタ支持機構と、前記基体に取り付けられ、前記シャッタを、前記開口端を閉鎖する位置に向けて付勢する付勢手段とを備えた端部閉鎖治具を準備する端部閉鎖治具準備工程と、
前記クランプ治具取り外し工程を行う前に、前記端部閉鎖治具の前記基体を前記上側主柱材に固定し、前記シャッタを前記付勢手段の付勢に抗して前記開口端を開放する位置に移動させ、前記シャッタの端部を前記下側主柱材の前記フランジ部の外周面に係止させる端部閉鎖治具装着工程とを行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明のクランプ治具は、独特な構造により、上側及び下側主柱材の端部同士を強い力でしっかり挟持することができる。また、クランプ治具による仮固定は、操作レバーを揺動させることによって簡単に解除できるので、高所で作業する作業者の負担を軽減することができ、操作レバーを安全な場所で遠隔操作することも可能になる。
【0032】
本発明の鉄塔解体方法の中の、クランプ治具とポストピンとを使用した解体方法は、従来にない独特なもので、ヘリコプタ等で上側セグメントを吊り上げる上で、非常に安全性が高いものである。また、この解体方法は、汎用性が高く、上側セグメント及び下側セグメントがL型鋼材以外の主柱材が上下方向にボルト固定されている場合にも適用することができ、特に、筒状本体部の開口端に外向きのフランジ部が一体に形成された鋼管材(コンクリート等の充填剤が充填された充填剤入り鋼管材を含む)のフランジ部同士が上下方向にボルト固定されている場合に好適な方法である。
【0033】
本発明の鉄塔解体方法の中の、端部閉鎖治具を使用した解体方法は、従来にない独特なものであり、充填剤入り鋼管材で成る上側主柱材から充填剤が脱落するのを効果的に防止することができ、作業の安全を確保することができる。しかも、端部閉鎖治具は、構造が非常にシンプルで、現場での設置も容易である。
【0034】
本発明の仮固定治具は、テコの原理を利用した独特な構造の治具であり、上側主柱材及び下側主柱材を固定している横ボルトを取り外し、横ボルトが取り外されて連通しているボルト孔に可動ピンを差し込んで仮固定した後、仮固定を解除する時に、非常に簡単な操作でスムーズに可動ピンを引き抜くことができるので、高所で作業する作業者の負担を軽減することができる。また、本発明の仮固定治具は、構造がシンプルで安価に製作することができ、汎用性も非常に高いものである。
【0035】
本発明の鉄塔解体方法の中の、仮固定治具を使用した解体方法は、上記の優れた性能の仮固定治具を使用することによって、鉄塔解体の作業を効率よく安全に行うことができる。
【0036】
本発明の鉄塔解体方法の中の、ガイドワイヤ装置を使用した解体方法は、2つの鋼管材が横方向にボルト固定されている場合に好適で独特な方法であり、鉄塔解体の作業を効率よく安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明が適用される解体前の鉄塔を示す正面図(a)、鉄塔の特定部分(上側セグメント)を他の部分(下側セグメント)から分離させて移送する様子を示す正面図(b)である。
【
図2】
図1(a)に示す解体前の鉄塔の、第一の実施形態の鉄塔解体方法を使用して解体される上側セグメント及び下側セグメントの連結部分を拡大した正面図である。
【
図3】
図2のA部をさらに拡大した正面図(a)と左側面図(b)である。
【
図4】
図2のB部をさらに拡大した正面図(a)と平面図(b)である。
【
図5】第一の実施形態の鉄塔解体方法の流れを示すフローチャートである。
【
図6】第一の実施形態の鉄塔解体方法で使用する仮固定治具(本発明の仮固定治具の一実施形態)を示す正面図、及び互いに異なる方向から見た2つの側面図である。
【
図7】仮固定治具装着工程とクサビ部材装着工程の内容を示す図である。
【
図8】第一の実施形態の鉄塔解体方法で使用するクランプ治具(本発明のクランプ治具の一実施形態)の操作方法と動作を示す正面図(a)~(c)である。
【
図9】
図8のクランプ治具の構成部材である可動部材を示す左側面図(a)、正面図(b)、右側面図(c)、底面図(d)、P1-P1断面図(e)である。
【
図10】
図8のクランプ治具の構成部材である固定部材を示す左側面図(a)、正面図(b)、右側面図(c)、底面図(d)、P2-P2断面図(e)である。
【
図11】
図8のクランプ治具の構成部材である第一のリンク部材を示す平面図及び正面図(a)、第二のリンク部材を示す正面図及び右側面図(b)、3つの軸孔ガイドリングを示す正面図及び平面図(c)である。
【
図12】
図8のクランプ治具の第一、第二及び第三の軸着部を示す正面図(a)、P3-P3断面図(b)、P4-P4断面図(c)である。
【
図13】第一の実施形態の鉄塔解体方法で使用するポストピンを示す正面図(a)、使用方法を示す正面図(b)、(c)である。
【
図14】第一の実施形態の鉄塔解体方法で使用する端部閉鎖治具(本発明の端部閉鎖治具の一実施形態)が上側主柱材及び下側主柱材に装着された状態を示す正面図(a)と平面図(b)である。
【
図15】重量確認工程を行った時の上側セグメントの動作を示す正面図である。
【
図16】
図14の端部閉鎖治具が作動した状態を示す正面図(a)と底面図(b)である。
【
図17】仮固定治具取り外し工程の内容を示す図である。
【
図18】第一の実施形態の鉄塔解体方法の中の、ポストピン及びクランプ治具を用いた解体方法が適用可能な鉄塔の構造(上側主柱材及び下側主柱材の連結部分の構造)の他の例を示す正面図(a)、C部を拡大した図(b)である。
【
図19】第一の実施形態の鉄塔解体方法の中の、ポストピン及びクランプ治具を用いた解体方法が使用できない鉄塔の構造(上側主柱材及び下側主柱材の連結部分の構造)の例を示す正面図(a)、D部を拡大した図(b)である。
【
図20】第一の実施形態の鉄塔解体方法の中の、ポストピン及びクランプ治具を用いた解体方法が適用可能な鉄塔の構造(上側主柱材及び下側主柱材の連結部分の構造)の他の例を示す正面図(a)、重量確認工程を行った時の上側セグメント及びポストピンの動作を示す正面図(b)である。
【
図21】
図14に示す端部閉鎖治具の一変形例を示す図であって、変形例の端部閉鎖治具が上側主柱材及び下側主柱材に装着された状態を示す正面図(a)と底面図(b)である。
【
図22】
図21の端部閉鎖治具が作動した状態を示す正面図(a)と底面図(b)である
【
図23】
図13(b)、(c)とは異なるポストピンの使用方法を示す正面図(a)~(c)である。
【
図24】
図5に示す鉄塔解体方法の一変形例を示すフローチャートである。
【
図25】
図24に示す鉄塔解体方法で使用するコ型金具の構成部材を示す正面図(a)、重量確認工程を行った時のコ型金具の動作を示す正面図(b)、(c)である。
【
図26】本発明の鉄塔解体方法の中の、仮固定治具を用いた解体方法が適用可能な鉄塔の構造(上側主柱材及び下側主柱材の連結部分の構造)の他の例を示す正面図である。
【
図27】
図26のE部を拡大した正面図(a)と平面図(b)である。
【
図28】
図26のF部を拡大した正面図(a)と平面図(b)である。
【
図29】
図26の鉄塔に適用される鉄塔解体方法(
図5に示す鉄塔解体方法の変形例)を示すフローチャートである。
【
図30】
図26の鉄塔に対して重量確認工程を行った時の上側セグメントの動作を示す正面図である。
【
図31】
図6の仮固定治具の変形例を示す正面図及び側面図である。
【
図32】
図1(a)に示す解体前の鉄塔の、第二の実施形態の鉄塔解体方法を使用して解体される上側セグメント及び下側セグメントの連結部分を拡大した正面図である。
【
図33】第二の実施形態の鉄塔解体方法の流れを示すフローチャートである。
【
図34】ガイドワイヤ装置装着工程の内容を示す図である。
【
図35】ガイドワイヤ装置のY型金具にガイドワイヤが接続されている部分を拡大した正面図(a)及び右側面図(b)、各部材を分解した右側面図(c)である。
【
図36】重量確認工程を行った時の上側セグメントの動作を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
<<<本発明の第一の実施形態>>>
以下、本発明の鉄塔解体方法の第一の実施形態、クランプ治具、端部閉鎖治具及び仮固定治具の一実施形態について、
図1~
図17に基づいて説明する。
図1(a)は、解体対象の鉄塔10の解体前の状態を示しており、この実施形態の鉄塔解体方法では、
図1(b)に示すように、鉄塔10の特定部分(上側セグメント12)を他の部分(下側セグメント14)から分離させ、ヘリコプタ等の吊り上げ手段36で吊り上げて移送する。吊り上げ手段36は、ヘリコプタ以外にクレーン等の吊り上げ装置を含む。
【0039】
まず、鉄塔10の解体前の状態、特に、上側セグメント12及び下側セグメント14の連結部分の構造について説明する。
図2に示すように、上側セグメント12は、長尺な鋼材で成る上側主柱材16(1),16(2)を有し、下側セグメント14は長尺な鋼材で成る下側主柱材18(1),18(2)を有し、上側主柱材16(1)が下側主柱材18(1)に連結され、上側主柱材16(2)が下側主柱材18(2)に連結されている。
【0040】
上側主柱材16(1)は、
図3(a)、(b)に示すように、下側の一端に、略平行に下向きに延びる2枚の鋼板で成る端部16a(1)を有し、端部16a(1)の中央部に、複数のボルト孔20(1)が貫通形成されている。下側主柱材18(1)は、上面の途中の位置に、上向きに延びる1枚の鋼板で成る端部18a(1)を有し、複数のボルト孔22(1)が貫通形成されている。そして、端部16a(1)の間に端部18a(1)を配し、ボルト孔20(1)とボルト孔22(1)を横方向に連通させて横ボルト24を通し、横ボルト24の先端部に横ナット26を締め込み、横ボルト24及び横ナット26で端部16a(1),18a(1)がボルト固定されている。なお、端部16a(1),18a(1)は、ボルト孔20(1)と20(1)の位置調整を行う時に遊びが必要になるので、ボルト固定された状態で、端部16a(1)の根元部分と端部18aの先端部分との間に、一定の隙間28が形成される。
【0041】
上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)は、高い強度と耐久性を備えた充填剤入り鋼管材が使用されている。充填剤入り鋼管材は、鋼材で成る筒状本体部(16b(2),18b(2))の開口端に外向きのフランジ部(16a(2),18a(2))が一体に形成され、筒状本体部(16b(2),18b(2))の内側にコンクリート等の補強用の充填剤(16c(2),18c(2))を充填したものである。
【0042】
図4(a)、(b)に示すように、上側主柱材16(2)の端部であるフランジ部16a(2)には、複数のボルト孔20(2)が貫通形成され、下側主柱材18(2)の端部であるフランジ部18a(2)にも複数のボルト孔22(2)が貫通形成されている。そして、フランジ部16a(2)の下面をフランジ部18a(2)上面に当接させ、ボルト孔20(2)とボルト孔22(2)を上下方向に連通させて縦ボルト30を通し、縦ボルト30の先端部に縦ナット32を締め込み、縦ボルト30及び縦ナット32でフランジ部16a(2),18a(2)がボルト固定されている。
【0043】
なお、
図2(鉄塔10の正面図)では、上側セグメント12と下側セグメント14がA部とB部の2箇所で連結されているように見えるが、実際は、もう1組の上側主柱材16(1),16(2)及び下側主柱材18(1),18(2)が紙面の奥側に重なるように設けられており、上側セグメント12と下側セグメント14は、合計4箇所で連結されている。
【0044】
また、
図2は、
図1(a)に示す鉄塔10の特定部分を拡大した絵なので、上側セグメント12に受けワイヤ34を取り付けてあるが、受けワイヤ34は、通常の鉄塔(解体の予定がない稼働中の鉄塔)に取り付けてあるものではない。詳しくは後で説明するが、受けワイヤ34は、ヘリコプタ等の吊り上げ手段36から降ろされた吊りワイヤ36aのフック36bを接続するためのワイヤであり、
図5に示すフローチャートの中の、吊りワイヤ接続工程K31の中で取り付けられることになる。
【0045】
次に、この実施形態の鉄塔解体方法の第一の実施形態について、
図5のフローチャートに基づいて説明する。
図5に示す各工程の中で、工程K11~K14は、上側主柱材16(1)及び下側主柱材18(1)の連結部分であるA部に関連する作業であり、工程K21~K26は、上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)の連結部分であるB部に関連する作業であり、その他の工程K31~K33は、上側セグメント12の吊り上げに関連する作業である。以下、各工程の内容を順に説明する。
【0046】
<仮固定治具準備工程K11>
仮固定治具準備工程K11では、A部を安全に分離させるため、本発明の仮固定治具の一実施形態である仮固定治具38を準備する。仮固定治具38は、
図6に示すように、外形が略V字形の本体部材40を備えている。本体部材40は、互いに同外形に形成された2つのV字板42と、2つのV字板42を所定の間隔を空けて対向させる3つのスペーサ44と、これらの部材を一体に組み付けるための3組のネジ部材46とで構成される。本体部材40は、角部40aで交差して互いに連続する第一及び第二の側面40b,40cを備えている(V字板42の側端面が第一及び第二の側面40b,40cとなる)。
【0047】
本体部材40には、所定長さの可動ピン48が取り付けられている。可動ピン48は、基端部が本体部材40の第一の側面40bの近傍に配置された軸部材50によって揺動可能に軸支され、基端部と反対側の差し込み部48aが、第一の側面40bから外向きに突出した状態で変位可能になっている。
【0048】
その他、仮固定治具38には、可動ピン48の差し込み部48aの先端部分に着脱可能な抜け止めピン52(抜け止め部材)が設けられている。抜け止めピン52は、
図7に示すように、差し込み部48aの先端部分を直径方向に貫通する透孔48bに挿通可能なピンである。また、抜け止めピン52以外に、抜け止めピン52を離れた場所で引き抜くための紐部材等である引き抜き具56と、本体部材40を遠隔操作するための紐部材等である引っ張り具58と、本体部材40を下側セグメント14に接続するための紐部材等である落下防止用接続具60とが設けられている。仮固定治具38の使い方や動作については、後の工程を説明する中で述べる。
【0049】
<仮固定治具装着工程K12/クサビ部材装着工程K13>
仮固定治具装着工程K12では、
図3(a)に示す複数の横ボルト24の中の1つ(例えば、
図3(b)の最も上側の横ボルト24)を取り外し、
図7に示すように、横ボルト24が取り外されて横方向に連通しているボルト孔20(1),22(1)に、仮固定治具38の可動ピン48の差し込み部48aを深く挿入する。そして、本体部材40の第一の側面40bをボルト孔20(1),22(1)の周縁部に当接させ、差し込み部48aの先端部分の透孔48bに抜け止めピン52を差し込んで差し込み部48aを抜け止めし、さらに残りの横ボルト24を全て取り外す。これで、上側主柱材16(1)と下側主柱材18(1)とが仮固定治具38で仮固定された状態になる。そして、落下防止用接続具60を下側セグメント14の適宜の位置に接続し、仮固定治具装着工程K12を終了する。
【0050】
クサビ部材装着工程K13は、所定サイズのクサビ部材54を用意し、
図7に示すように、上側主柱材16(1)の端部16a(1)と下側主柱材18(1)の端部18a(1)との隙間28に差し込む工程である。これによって、上側主柱材16(1)はクサビ部材54を介して下側主柱材18(1)に支持された状態になり、ボルト孔20(1),22(1)の位置がずれるのを防止することができる。クサビ装着工程K13は、上記の手順で仮固定治具装着工程K12を行うとすれば、仮固定治具装着工程K12の途中の、残りの横ボルト24を全て取り外す前の適宜のタイミングに行えば良いが、仮固定治具装着工程K12の前に行っても良い。
【0051】
<クランプ治具準備工程K21>
クランプ治具準備工程K21では、B部を安全に分離させるため、本発明のクランプ治具の一実施形態であるクランプ治具62を準備する。クランプ治具62は、2つの挟持面の間で対象物を挟持する着脱式の治具であり、
図8に示すように、可動部材64、固定部材66、第一のリンク部材68及び第二のリンク部材70で構成され、これらがネジ部材等を用いて一体に組み付けられている。
【0052】
可動部材64は、
図9(a)~(e)に示す矢印方向であるZ軸正方向側の端部に、可動挟持面72aが形成された可動クランプ部72と、可動クランプ部72の側端部からZ軸正方向に延びる長尺なロッド部74とで構成される。ロッド部74のZ軸正方向側の端部には、軸孔74aが貫通形成されている。また、可動クランプ部72には、可動挟持面72aのZ軸方向の位置を微調整するための調節ボルト76が設けられている。調節ボルト76は、ネジ部76aがZ軸方向に移動可能に支持され、ネジ部76aの先端部分が可動クランプ部72の上面より突出しており、この先端部分の端面が可動挟持面72aとなる。したがって、調節ボルト76を操作することによって、可動挟持面72aのZ軸方向の位置を調節することができる。この調節ボルト76は必要なければ無くすことも可能であり、その場合は、可動クランプ部72の上面が可動挟持面72aとなる。
【0053】
固定部材66は、
図10(a)~(e)に示す矢印方向とは反対のZ軸負方向側の端部に、固定挟持面78aが形成された固定クランプ部78と、固定クランプ部78の、固定挟持面78aと反対側の面からZ軸正方向に延びる所定長さの2つの板状部材で成る本体部80と、固定クランプ部78の側端部に位置し、Z軸方向に貫通するガイド孔82aを有したロッド案内部82とで構成される。本体部80のZ軸正方向側の端部の、ガイド孔82aの中心軸を延長した位置又はその近傍に、軸孔80aが貫通形成されている。
【0054】
第一のリンク部材68は、
図11(a)に示すように、互いに対向する2つの板材で成るリンク本体部84と、リンク本体部84の一端部に延設された操作レバー86と有し、これらがネジ部材88で一体に組み付けられている。リンク本体部84の、操作レバー86と反対側の端部には軸孔84aが貫通形成され、軸孔84aの、操作レバー86に近い位置に、軸孔84bが貫通形成されている。
【0055】
第二のリンク部材70は、
図11(b)に示すように、鈍角の略V字形に形成された板材であり、一端部に軸孔70aが貫通形成され、他端部に軸孔70bが形成され、V字形の内側中央部に、弧状の切り欠き70cが設けられている。
【0056】
その他、可動部材64、固定部材66、第一のリンク部材68及び第二のリンク部材70を一体に組み付ける時、
図11(c)に示す3つの軸孔ガイドリング90(1),90(2),90(3)と、3種類のネジ部材92(1),92(2),92(3)が使用される。
【0057】
これらの部材をクランプ治具62に組み立てると、
図8(a)に示すように、可動部材64は、ロッド部74が固定部材66のロッド案内部82のガイド孔82aの中に挿通されて可動挟持面78aが固定挟持面78に対向し、ロッド部74がZ軸正負方向にスライド可能に支持される。
【0058】
第一のリンク部材68の一端部は、固定部材80の本体部80の一端部に、第二の軸着部94(2)を介して回動可能に接続される。具体的には、
図12(a)、(b)に示すように、2つの本体部80の間に2つのリンク本体部84が配置され、軸孔80a,84aを連通させた中に軸孔ガイドリング90(2)が挿入され、軸孔80a,84aの各内壁面が軸孔ガイドリング90(2)の外周面に摺動可能に支持される。そして、ネジ部材92(2)が軸孔ガイドリング90(2)の中に挿通され、軸孔ガイドリング90(2)の両端に締め付け固定され、第二の軸着部94(2)が形成される。
【0059】
第二のリンク部材70の一端部は、第一のリンク部材68の、第二の軸着部94(2)よりも操作レバー86に近い位置に、第三の軸着部94(3)を介して回動可能に接続される。具体的には、
図12(a)、(b)に示すように、2つのリンク本体部84の間に第二のリンク部材70が配置され、軸孔70b,84bを連通させた中に軸孔ガイドリング90(3)が挿入され、軸孔70b,84bの各内壁面が軸孔ガイドリング90(3)の外周面に摺動可能に支持される。そして、ネジ部材92(3)が軸孔ガイドリング90(3)の中に挿通され、軸孔ガイドリング90(3)の両端部に締め付け固定され、第三の軸着部94(3)が形成される。
【0060】
第二のリンク部材70の他端部は、可動部材64の一端部に、第一の軸着部94(1)を介して回動可能に接続される。具体的には、
図12(a)、(c)に示すように、ロッド部74の先端部の間に第二のリンク部材70が配置され、軸孔70a,74aを連通させた中に軸孔ガイドリング90(1)が挿入され、軸孔70a,74aの各内壁面が軸孔ガイドリング90(1)の外周面に摺動可能に支持される。そして、ネジ部材92(1)が軸孔ガイドリング90(1)の中に挿通され、軸孔ガイドリング90(1)の両端部に締め付け固定され、第一の軸着部94(1)が形成される。
【0061】
その他、
図8(a)に示すように、クランプ治具62には、クランプ治具62の操作レバー86を遠隔操作するための紐部材等である遠隔操作具96と、クランプ治具62の特定の部位(ここでは、操作レバー86)を下側セグメント14に接続するための紐部材等である落下防止用接続具98とが設けられている。クランプ治具62の使い方や動作については、後の工程を説明する中で述べる。
【0062】
<クランプ治具装着工程K22>
クランプ治具装着工程K22では、
図4(a)に示す上側及び下側主柱材16(2),18(2)のフランジ部16a(2),18a(2)をクランプ治具62で挟持させた状態にする。クランプ治具62の装着は、次のような手順で行う。
【0063】
まず、
図8(a)に示すように、クランプ治具62の操作レバー86を操作してリンク本体部84をZ軸と交差する方向に倒す。すると、第二のリンク部材70及び可動部材64が変位して可動挟持面72aがZ軸負方向に移動し、固定挟持面78aと可動挟持面72aとが大きく離間する。
【0064】
この状態で、固定挟持面78aを端部16a(2)の上面に当接させ、フランジ部16a(2),18a(2)を固定挟持面78a及び可動挟持面72aの間に配し、
図8(b)に示すように、操作レバー86を操作してリンク本体部84をZ軸正方向に引き上げる。すると、第二のリンク部材70及び可動部材64が変位して、可動挟持面72aがZ軸正方向に移動する。そして、第三の軸着部94(3)がロッド部74の軸線を延長した位置又はその近傍に達すると、第二のリンク部材70の切り欠き70cの中に第二の軸着部94(2)の軸孔ガイドリング90(2)が係合する。これにより、第二のリンク部材70が第二の軸着部94(2)に係止され、固定挟持面78aに対する可動挟持面72aの位置が固定される。
【0065】
図8(b)の状態で、フランジ部16a(2),18a(2)は、2つの挟持面78a,72aによって強く挟持されていない。そこで、
図8(c)に示すように、調節ボルト76を締め付けることによって可動挟持面72aを固定挟持面78aの方向に移動させ、フランジ部16a(2),18a(2)を強く挟持させる。そして、落下防止用接続具98を下側セグメント14の適宜の位置に接続して、クランプ治具装着工程K22を終了する。
【0066】
<ポストピン装着工程K23>
ポストピン装着工程K23では、まず、
図4に示す複数の縦ボルト30を取り外すことによって上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)のボルト固定を解除し、上側主柱材16(2)と下側主柱材18(2)とがクランプ治具62だけで仮固定された状態にする。そして、
図13(a)、(b)に示すように、縦ボルト30が取り外されて上下方向に連通するボルト孔20(2),22(2)の中に、ポストピン100を装着する。
【0067】
ポストピン100は、ボルト孔20(2),22(2)を通過できる太さのピン部100aとボルト孔20(2),22(2)を通過できない大きさの係止部100bとを備えた部材であり、ボルト孔20(2),22(2)にポストピン100を上側から挿入し、ピン部100aをボルト孔22(2)の下側に突出させ、係止部100bをボルト孔20(2)の上側の周縁部に支持させる。ポストピン100は、クランプ治具62が取り外された後、上側主柱材16(2)を下側主柱材18(2)に対して横方向に位置決めするための部材であり、詳しくは後で説明する。
【0068】
なお、ポストピン100は、後述する端部閉鎖治具102の一部としても機能するため、ここでは、ポストピン100を、
図4(b)に示すフランジ部16a(2)の、直径方向に対向する2箇所に装着する。
【0069】
<端部閉鎖治具準備工程K24/端部閉鎖治具装着工程K25>
端部閉鎖治具準備工程K24では、上側及び下側主柱材16(2),18(2)の連結部分であるB部を分離させた時に、上側主柱材16(2)の中の充填剤16c(2)が脱落するのを防止するため、本発明の端部閉鎖治具の一実施形態である端部閉鎖治具102を準備する。
【0070】
端部閉鎖治具102は、
図14(a)、(b)に示すように、基体104、シャッタ106、シャッタ支持機構108及び付勢手段110とで構成される。なお、
図14(a)では、基体104及びその周辺部の構造を見やすくするため、付勢手段110及びその周辺の部材を記載していない。この端部閉鎖治具102は、端部閉鎖治具準備工程K24で個々のパーツ(又は一部が組み付けられたパーツ)が準備され、端部閉鎖治具装着工程K25を行う中で組み立てられることになる。
【0071】
基体104は、上側主柱材16(2)に着脱可能に固定される部材であって、端部閉鎖治具102の本体となる部材である。基体104は、平板部104aと、平板部104aの端部から起立する固定部104bとを備え、平板部104aが上側主柱材16(2)のフランジ部16a(2)の上面に載置され、固定部104(b)を上側主柱材16(2)の筒状本体部16b(2)の側面に当接させ、ベルト状の締結具112等を用いてしっかり固定される。また、平板部104aは、固定部104bと反対側の端部が外向きに膨出し、この膨出した部分に、外向きに延びる棒部材104cが一体に設けられている。
【0072】
シャッタ106は、筒状本体部16b(2)の開口端を閉鎖可能な大きさの略楕円形状の板材であり、一端部がシャッタ支持機構108により支持される。シャッタ106の両端部には、片方の側端部から内向きに延びる所定幅のスリット106aが一対に設けられ、さらに、一端部に、外向きに延びる棒部材106bが一体に設けられている。
【0073】
シャッタ支持機構108は、基体104に取り付けられてシャッタ106の一端部を軸支し、シャッタ106を、筒状本体部16b(2)の開口端を閉鎖する位置から開放する位置まで移動可能にする機構である。具体的には、基体104の平板部104aの下面側に取り付けられてシャッタ106の一端部を軸支する軸部材108aと、シャッタ106の閉鎖位置を規定する2つのストッパ部材とで構成される。
【0074】
図14(a)、(b)に示すように、このシャッタ支持機構108の場合、ポストピン装着工程K23で装着したポストピン100がストッパ部材となる。そのため、ポストピン装着工程K23では、2つのポストピン100の中の1つを、基体104の平板部104aに設けた貫通孔を通じてボルト孔20(2),22(2)に挿入することになる。
【0075】
軸部材108aに支持されたシャッタ106は、基体104が上側主柱材16(2)に固定された状態で、正面視で下側主柱材18(2)のフランジ部18a(2)の高さに配置され、平面視でフランジ部16a(2),18a(2)の側方に配置される。
【0076】
付勢手段110は、基体104に取り付けられて、シャッタ106を、筒状本体部16b(2)の開口端を閉鎖する位置に向けて付勢する部材で、ここでは、引張コイルばねを使用する。付勢手段110は、一端部が基体104の棒部材104bの先端部に取り付けられ、他端部がシャッタ106の棒部材106bの先端部に取り付けられる。したがって、付勢手段110を装着すると、シャッタ106は、軸部材108aの周りを平面視で反時計回りに回動させる向きに付勢され、側端面がフランジ部18a(2)の外周面に強く押し当てられて係止される。なお、図面は、シャッタ106が平面視で反時計回りに付勢される構造になっているが、反対方向(時計回り)に付勢される構造にすることも可能である。
【0077】
このように、端部閉鎖治具102は、端部閉鎖治具準備工程K24で個々のパーツ(又は一部が組み付けられたパーツ)が準備され、端部閉鎖治具装着工程K25を行う中で組み立てられる。また、上記のように、ストッパ部材として動作するポストピン100は、基体104を上側主柱材16(2)に取り付けた後、基体104の平板部104aの貫通孔を通じてボルト孔20(2),22(2)に挿入する必要があるので、上記のポストピン装着工程K23は、端部閉鎖治具装着工程K25と並行して行うことになる。
【0078】
なお、
図14(a)、(b)は、端部閉鎖治具102が作動する前の状態(端部閉鎖治具装着工程K25及びポストピン装着工程K23が終了した時の状態)を示しており、ポストピン100は、この時点でストッパ部材として動作していない。ポストピン100のストッパ部材としての動作については、後の工程を説明する中で述べる。
【0079】
<クランプ治具取り外し工程K26>
クランプ治具取り外し工程K26は、ポストピン装着工程K23及び端部閉鎖治具装着工程K25の後に行う工程であり、先のクランプ治具装着工程K22で装着したクランプ治具62(
図8(c)のクランプ治具62)を取り外し、上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)の端部同士の仮固定を解除する工程である。
【0080】
クランプ治具62を取り外す時は、少し離れた安全な場所にいる作業者が、遠隔操作具96を用いて操作レバー86を操作し、リンク本体部84をZ軸と交差する方向に倒すことによって、第二の軸着部94(2)による第二のリンク部材70の係止を解除する。すると、
図8(a)に示すように、可動挟持面72aが固定挟持面78aから離れる方向に移動してクランプ治具62が脱落し、上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)の仮固定が解除される。脱落したクランプ治具62は、落下防止用接続具98で下側セグメント14に接続されているので、地上に落下することなく保持される。
【0081】
クランプ治具62による仮固定が解除されても、上側主柱材16(2)は、下側主柱材18(2)に下方から支持され、ポストピン100によって横方向に位置決めされているので、そのままの状態に保持される。したがって、端部閉鎖治具102は作動せず、
図14(a)、(b)に示す状態に保持される。
【0082】
なお、この実施形態では、クランプ治具取り外し工程K26を端部閉鎖治具装着工程K25の後に行っているが、端部閉鎖治具装着工程K25の前に行うことも可能である。しかし、端部閉鎖治具装着工程K25を行う作業者の安全確保に万全を期すためには、
図5に示すように、クランプ治具取り外し工程K26は、端部閉鎖治具装着工程K25の後に行うことが好ましい。
【0083】
<吊りワイヤ接続工程K31>
吊りワイヤ接続工程K31は、吊り上げ手段36から降ろされた吊りワイヤ36aを上側セグメント12に接続する工程である。例えば
図2に示すように、上側セグメント12の特定部位に受けワイヤ34を接続し、受けワイヤ34に吊りワイヤ36aの先端のフック36bを引っ掛ける作業を行う。
【0084】
なお、吊りワイヤ36aを上側セグメント12に接続する手段は特に限定されず、フック36b及び受けワイヤ34以外の別の手段を使用してもよい。また、吊りワイヤ接続工程K31は、A部に関連する工程K11~K13や、B部に関連する工程K21~K26とは直接関係しないので、作業者にとって都合がよい適宜のタイミングで行うことができる。作業者の安全確保に万全を期すためには、吊りワイヤ接続工程K31は、クランプ治具取り外し工程K26の前に行うことが好ましい。
【0085】
<重量確認工程K32>
重量確認工程K32は、仮固定治具装着工程K12、クサビ部材装着工程K13、クランプ治具取り外し工程K26、端部閉鎖治具装着工程K25及び吊りワイヤ接続工程K31の後に行う工程であり、吊り上げ手段36で上側セグメント12を僅かに吊り上げて上側セグメント12の重量を確認する工程である。
【0086】
重量確認工程K32を行う時、上側主柱材16(1)及び下側主柱材18(1)の連結部分であるA部は、仮固定治具38で仮固定された状態(
図7)になっている。また、上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)の連結部分であるB部は、ポストピン100が装着され(
図13(b))、端部閉鎖治具102が装着され(
図14)、クランプ治具62が既に取り外された状態になっている。
【0087】
この状態で、吊り上げ手段36が上側セグメント12を僅かに吊り上げると、
図15に示すように、上側セグメント12が仮固定治具38の可動ピン48を軸にして回動し、上側主柱材16(2)のフランジ部16a(2)が下側主柱材18(2)のフランジ部18a(2)の上方に僅かに浮き上がる。したがって、吊り上げ手段36は、適宜の重量検知手段を使用して、上側セグメント12の重量が許容範囲であるかどうか(吊り上げ手段36が吊り上げ可能な重量であるかどうか)を確認することができる。
【0088】
このとき、ポストピン100は、
図13(c)に示すように、フランジ部16a(2)と一緒に上昇し、フランジ部18a(2)のボルト孔22(2)から少し引き抜かれるが、完全には抜けずにボルト孔22(2)の中に留まっている。
【0089】
また、端部閉鎖治具102は、上側主柱材16(2)のフランジ部16a(2)と一緒に上昇する。すると、シャッタ106の高さ位置がフランジ部18a(2)よりも高くなって、端部閉鎖治具102が作動する。つまり、シャッタ106の側端面がフランジ部18a(2)の外周面に係止されなくなるので、
図16(a)、(b)に示すように、シャッタ106が付勢手段110に付勢されて、軸部材108aの周りを底面視で時計回りに回動する。そして、ストッパ部材であるポストピン100の側周面にスリット106aの最深部が係止される位置まで瞬時に移動し、付勢手段110の付勢力によってこの位置に保持される。これで、上側主柱材16(2)の筒状本体部16b(2)の開口端がシャッタ106によって閉鎖され、中の充填剤16c(2)が脱落するのが防止される。
【0090】
上側セグメント12の重量を確認すると、吊り上げ手段36は、上側セグメント12を吊り上げる動作を止めて荷下げする。上側セグメント12は、僅かに吊り上げられた状態で、ポストピン100によって横方向に位置決めされているので、吊り上げ前の位置に安全に戻ることができる。また、シャッタ106が上側主柱材16(2)の端部を閉鎖する位置に移動しているが、上側セグメント12が吊り上げ前の位置に戻る動作の妨げにはならない。
なお、重量確認工程K32を行った結果、上側セグメント12の重量が許容範囲であることが確認できた時は次の工程に進むことができるが、許容範囲を超えていると確認された時は、以降の工程を中止し、安全確保の処置を行った後、状況の確認や対策の検討を行うことになる。
【0091】
<仮固定治具取り外し工程K14>
仮固定治具取り外し工程K14は、上側主柱材16(1)及び下側主柱材18(1)の連結部分であるA部の仮固定治具38による仮固定を解除する工程である。具体的には、
図17に示すように、まず、少し離れた安全な場所にいる作業者が、引き抜き具56を操作して抜け止めピン52を引き抜き、可動ピン48の差し込み部48aの抜け止めを解除する。その後、引っ張り具58を操作して仮固定治具38の本体部材40の端部を引っ張り、第一及び第二の側面40b,40cが交差する角部40aを支点にして、第一の側面40bをボルト孔22(1)の周縁部から斜めに離間させる。すると、可動ピン48は、軸部材50周りに回動して軸線が横方向に保持され、差し込み部48aをボルト孔20(1),22(1)からスムーズに引き抜くことができる。
【0092】
差し込み部48aが完全に引き抜かれて仮固定治具38が脱落すると、上側主柱材16(1)の、下側主柱材18(1)に対する仮固定が解除され、上側主柱材16(1)がクサビ部材54を介して下側主柱材18(1)に支持された状態になる。脱落した仮固定治具38は、落下防止用接続具60で下側セグメント14に接続されているので、地上に落下することなく保持される。
【0093】
<吊り上げ撤去工程K33>
吊り上げ撤去工程K33は、上側セグメント12を吊り上げ手段36で吊り上げて別の場所に撤去する工程である。吊り上げ撤去工程K33を行う時、上側主柱材16(1)及び下側主柱材18(1)の連結部分であるA部は、仮固定治具38による仮固定が解除され、上側主柱材16(1)がクサビ部材54を介して下側主柱材18(1)に支持された状態(
図17)になっている。また、上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)の連結部分であるB部は、ポストピン100が装着され(
図13(b))、端部閉鎖治具102が作動し(
図16)、クランプ治具62が既に取り外された状態になっている。
【0094】
したがって、上側セグメント12を大きく吊り上げると、A部は問題なく分離し、B部についても、ポストピン100がフランジ部16a(2)と一緒に上昇し、ポストピン100のピン部100aがフランジ部18a(2)のボルト孔22(2)からスムーズに引き抜かれ、問題なく分離する。
【0095】
以上説明したように、この実施形態のクランプ治具62は、独特な構造により、上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)のフランジ部16a(2),18a(2)同士を強い力でしっかり挟持することができる。また、クランプ治具62による仮固定は、操作レバー86を約1/4回転させることによって簡単に解除できるので、高所で作業する作業者の負担を軽減することができ、しかも操作レバー86を安全な場所で遠隔操作することができる。
【0096】
また、第一の実施形態の鉄塔解体方法は、クランプ治具62及びポストピン100を使用し、さらに仮固定治具38及び端部閉鎖治具102を使用した独特な解体方法であり、非常に安全性が高く、鉄塔解体の作業を効率よく安全に行うことができる。
【0097】
クランプ治具62及びポストピン100を使用する工程(工程K21~K23,K26)は汎用性が高く、上記の上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)のように、充填剤入り鋼管材(充填剤が充填されていない鋼管材を含む)のフランジ部同士が上下方向にボルト固定されている場合の他、L型鋼材で成る主柱材の端部同士が上下方向にボルト固定されている場合にも適用することができる。
【0098】
また、端部閉鎖治具102を使用することによって、充填剤入り鋼管材で成る上側主柱材16(2)から充填剤16c(2)が脱落するのを効果的に防止することができ、作業の安全を確保することができる。しかも、端部閉鎖治具102は、構造が非常にシンプルで、現場での設置も容易である。
【0099】
仮固定治具38は、テコの原理を利用した独特な構造の治具であり、上側主柱材16(1)及び下側主柱材18(1)を固定している横ボルト24を取り外し、ボルト孔20(1),22(1)に可動ピン48を差し込んで仮固定した後、仮固定を解除する時に、非常に単純な操作により可動ピン48をスムーズに引き抜くことができ、高所で作業する作業者の負担を軽減することができる。しかも、構造がシンプルで安価に製作することができ、汎用性も非常に高いものである。
【0100】
さらに、仮固定治具38やポストピン100の独特な構造により、上記の重量確認工程K32をスムーズに行うことが可能になる。また、重量確認工程K32で上側セグメント12の重量が許容範囲を超えていると確認された場合、以降の工程を中止して安全を確保することが重要になるところ、仮固定治具38やポストピン100を使用することによって、容易且つ確実に安全を確保することができる。
【0101】
また、仮固定治具38及びクランプ治具62は、少し離れた安全な場所にいる使用者が遠隔操作用の部材(引き抜き具56、引っ張り具58、遠隔操作具96等)を用いて容易に操作できる構造であり、端部閉鎖治具102は、使用者の操作が不要(自動的に作動する)なので、作業者の安全確保に大きく寄与することができる。
【0102】
<<<第一の実施形態の変形例など>>>
次に、上述した第一の実施形態の変形例と適用可能な範囲について、
図18~
図31に基づいて説明する。
【0103】
<<クランプ治具、ポストピン、端部閉鎖治具及びこれを用いた鉄塔解体方法に関する変形例など>>
本発明の鉄塔解体方法の中の、クランプ治具及びポストピンを使用した解体方法は、上記実施形態に限定されるものではない。
図4(a)、(b)に示す上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)は、フランジ部16a(2),18a(2)のボルト孔20(2),22(2)がほぼ鉛直方向に連通し、縦ボルト30でボルト固定されているが、クランプ治具及びポストピンを使用した解体方法は、ボルト孔20(2),22(2)の連通方向が厳密に鉛直方向でなくても、「上下方向」であれば適用することができる。
【0104】
例えば、
図18に示す上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)の連結部分であるC部は、ボルト孔20(2),22(2)の連通方向が少し傾いているが、上述したポストピン装着工程K23を支障なく行うことができ、クランプ治具取り外し工程K26や重量確認工程K32を行った時、ポストピン100によって上側主柱材16(2)が適切に横方向に位置決めされ、吊り上げ撤去工程K33を行う時、ポストピン100をフランジ部18a(2)のボルト孔22(2)からスムーズに引き抜くことができる。したがって、
図18に示すボルト孔20(2),22(2)の連通方向は「上下方向」に該当し、クランプ治具及びポストピンを使用した解体方法を適用することができる。
【0105】
一方、
図19に示す上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)の連結部分であるD部は、ボルト孔20(2),22(2)の連通方向がほぼ水平方向なので、仮にポストピン装着工程K23を行うことができたとしても、クランプ治具取り外し工程K26や重量確認工程K32を行った時、ポストピン100によって上側主柱材16(2)が横方向に位置決めされず、吊り上げ撤去工程K33を行う時、ポストピン100をフランジ部18a(2)のボルト孔22(2)からスムーズに引き抜くことができない。したがって、
図19に示すボルト孔20(2),22(2)の連通方向は「上下方向」に該当せず、クランプ治具及びポストピンを使用した解体方法は適用することができない。
【0106】
ただし、本発明のクランプ治具は、
図19に示すD部を別の鉄塔解体方法で分離させる場合でも、条件が合えば使用することができる。つまり、その鉄塔解体方法が、ボルト固定を解除する前にフランジ部16a(2),18a(2)を別の方法で仮固定し、ボルト固定を解除した後、仮固定を解除するという流れであれば、本発明のクランプ治具を有効活用することができる。
【0107】
図18、
図19に示すC部及びD部に適した鉄塔解体方法については、本発明の鉄塔解体方法の第二の実施形態として後で説明する。
【0108】
上記の端部閉鎖治具102は、上側主柱材16(2)が充填剤入り鋼管材の場合に有効な治具であり、上側主柱材16(2)の筒状本体部16b(2)の内部に充填剤16c(2)が充填されていない場合は、端子閉鎖治具102を使用する必要がない。したがって、
図5に示すフローチャートの中の「B部に関連する工程(工程K11~K14)」の中の端部閉鎖治具準備工程及び装着工程K24,K25は省略することができる。
【0109】
また、
図20(a)に示すように、上側セグメント12と下側セグメント14との連結部分が、全て
図4(a)、(b)に示すB部のような形態(上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)の端部16a(2),18a(2)が複数の縦ボルト30でボルト固定されている)になっている場合、本発明の鉄塔解体方法を使用することができる。この場合、
図5に示すフローチャートの中の「A部に関連する工程(K11~K14)」を省略し、「B部に関連する工程(K21~K26)」を各連結部分に対して実行することになる。そして、クランプ治具取り外し工程K26や重量確認工程K32を行った時は、
図13(c)に示すように、各上側主柱材16(2)がポストピン100によって適切に横方向に位置決めされ、吊り上げ撤去工程K33を行った時も、ポストピン100を各フランジ部18a(2)のボルト孔22(2)からスムーズに引き抜くことができる。
【0110】
本発明のクランプ治具は、上記実施形態に限定されず、個々の構成部材(可動部材、固定部材、第一のリンク部材及び第二のリンク部材)の形状や大きさは、クランプ治具62と同様の動作が可能な範囲で、自由に変更することができる。
【0111】
本発明の端部閉鎖治具は、上記実施形態に限定されるものではない。上記の端部閉鎖治具102の場合、重量確認工程K32が終了した時点で(シャッタ106が上側主柱材16(2)の開口端を閉鎖する位置にある時)、付勢手段110がシャッタ106を付勢し続けることによって、シャッタ106が元の位置に戻ろうとする動作を阻止している。しかし、構造設計上、付勢手段110による付勢を継続させることが難しい時は、端部閉鎖治具102の一変形例である端部閉鎖治具102xを使用するとよい。以下、端部閉鎖治具102xの、端部閉鎖治具102と異なる点(特徴的な相違点)を、
図21、
図22に基づいて説明する。
【0112】
端部閉鎖治具102xは、基体104の平板部104aの側端部に、外向きに突出する幅狭な突出部104dが延設され、突出部104dのほぼ中央に、上下方向に貫通する透孔104eが形成されている。また、ストッパ部材であるポストピン100に加え、新規なストッパ部材114が追加されている。ストッパ部材114は、中空の筐体114aと、基端部が筐体114aの内部に収容され先端部が筐体114aの下面側の開口から突没する可動ピン114bと、一端部が筐体114aに固定され他端部で可動ピン114bの基端部を下向きに付勢するバネ部材114cとで構成される。筐体114aは、下面側の開口が突出部104dの透孔104eに連通する位置に配され、突出部104dの上面にしっかりと固定されている。さらに、シャッタ106は、平板部104aと重なる位置の側端部に、外向きに突出する幅広な係止部106cが延設されているという特徴がある。
【0113】
その他、端子閉鎖治具102との相違点として、シャッタ106のスリット106aが2箇所から1箇所に変更されているという点が挙げられるが、これは、実質的な機能や動作を変化させるものではない。
【0114】
図21(a)、(b)に示すように、端部閉鎖治具装着工程K25が終了した時点で(シャッタ106が上側主柱材16(2)の開口端を開放する位置にある時)、ストッパ部材114の可動ピン114bは、基端部が筐体114aの中の深い位置に退避し、先端部がシャッタ106の係止部106cの上面に摺動可能に係止された状態となる。この状態で、可動ピン106cは、シャッタ106が軸部材108a周りに回転しようとする動作を妨げることはない。
【0115】
そして、
図22(a)、(b)に示すように、重量確認工程K32が終了した時点で(シャッタ106が上側主柱材16(2)の開口端を閉鎖する位置に移動した時)、可動ピン114bの先端部がシャッタ106の係止部106cの上面に係止されなくなり、バネ部材114cに付勢されて下向きに大きく突出する。これで、シャッタ106が元の位置に戻ろうとしても、係止部106cの側端面が可動ピン114bの側周面に係止されて戻ることができなくなる。このように、端部閉鎖治具102xの場合、付勢手段110がシャッタ106を付勢し続けなくても、シャッタ106を確実に閉鎖位置に保持させることができる。
【0116】
その他、端子閉鎖治具102,102xには設けていないが、シャッタ106が開放位置から閉鎖位置に正常に移動して保持されたことを検出し、そのことを目立つように表示する手段(例えば、旗やリボン等を出現させる手段)を付設することが好ましい。これによって、作業者が離れた場所にいても、治具の動作状況を容易に認識することができる。また、ストッパ部材であるポストピン100の動作を安定させるため、当該ポストピン100の係止部100bを基体104の平板部104aに溶接等の方法で固定しておいてもよい。また、端子閉鎖治具102,102xの場合、基体104を上側主柱材16(2)に固定する時、ベルト状の締結具112を用いて固定しているが、さらにターンバックル等の金属部材も併用してより強固に固定することが好ましい。
【0117】
本発明の鉄塔解体方法の中の、クランプ治具及びポストピンを使用した解体方法に関し、上記のポストピン装着工程K23は、
図13(b)、(c)を基に説明したように、縦ボルト30が取り外されて上下方向に連通しているボルト孔20(2),22(2)にポストピン100を上側から挿入し、ピン部100aをボルト孔22(2)の下側に突出させ、係止部100bをボルト孔20(2)の上側の周縁部に支持させるとした。別の方法として、
図23(a)~(c)に示すように、上下方向に連通しているボルト孔20(2),22(2)に、ポストピン100のピン部100aを下側から挿入し、ピン部100aをボルト孔22(1)の上側に突出させ、ボルト孔22(2)の下側に位置する係止部100bを、固定具134を用いて下側主柱材18(2)に固定するようにしてもよく、ほぼ同様の作用効果が得られる。
【0118】
固定具134は、例えば、下側主柱材18(2)の筒状本体部18b(2)の周面に締め付け固定されたバンド134aと、バンド134の端部に固定された三角パレート134bと、ポストピン100の係止部100bと三角プレートとを連結するターンバックル134cとで構成するとよい。
【0119】
図13(b)、(c)のようにポストピン100を装着する場合、装着する作業は容易であるが、上側セグメント12を吊り上げ撤去して地面に降ろす時、ポストピン100のピン部100aが地面に当たって折れ曲がったり破損したりして再利用できなくなることがある。これに対して、
図23(a)~(c)のようにポストピン100を装着すれば、上側セグメント12を吊り上げ撤去した時にポストピン100が下側セグメント14に残るので、残ったポストピン100を取り外して再利用できるという利点がある。
【0120】
なお、
図23に示す方法でポストピン100を装着する場合、ポストピン100の係止部100b(ボルト孔20(2),22(2)を通過できない大きさの基端部)があると、ポストピン100を固定する時に、ピン部100aの上下方向の位置出しが容易になるという利点がある。もし、別の方法で位置出しを行うことができれば、ポストピン100全体をボルト孔20(2),22(2)を通過できる太さにしてもよい。
【0121】
本発明の鉄塔解体方法の中の、クランプ治具及びポストピンを使用した解体方法に関し、
図5のフローチャートの中の重量確認工程K32を行う時、上側セグメント12を少しだけ吊り上げることになるが、その吊り上げ量は、ポストピン100がフランジ部18a(2)のボルト孔22(2)から抜け出てしまわないように、上手く調節する必要がある。もし、ポストピンが抜け出てしまうことが懸念される時は、
図24に示すように、さらに3つの工程K27~K29を追加するとよい。以下、工程K27~K29(コ型金具準備工程K27、コ型金具装着工程K28及びコ型金具取り外し工程K29)の内容を順に説明する。
【0122】
<コ型金具準備工程K27>、
コ型金具準備工程K27では、独特な構造のコ型金具115を準備する。コ型金具115は、
図25(a)に示すように、コ型本体部材116とピン部材124を備えている。コ型本体部材116は、縦部材118と、その両端部から横向きに延びて互いに対向する第一及び第二の横部材120,122とで構成される。第一及び第二の横部材120,122の各先端部には、互いに連通する第一及び第二の透孔120a,122aが一対に形成されている。
【0123】
ピン部材124は、中空の筐体124aと、基端部分が筐体124aの下面側の開口から短く突出し、上側部分が筐体114aの下面側の開口から長く突出している可動ピン124bと、一端部が筐体114aに固定され他端部で可動ピン124bを基端部分の方向に付勢するバネ部材124cとで構成される。可動ピン124bの上端部分は、第一及び第二の透孔120a,122aの内側にゆとりを持って挿通可能な太さである。
【0124】
その他、コ型金具115には、可動ピン124bの上端部分に着脱可能な位置決めピン126(位置決め部材)が設けられている。位置決めピン126は、可動ピン124bの上端部分を直径方向に貫通する透孔124dに挿通可能な小形のピンである。さらに、コ型本体部材116及びピン部材124(可動ピン124bの基端部分)には、これらを下側セグメント14に接続するための紐部材等である落下防止用接続具128,130が各々設けられ、位置決めピン126には、これを離れた場所で引き抜くための紐部材等である引き抜き具132が設けられている。コ型金具115の使い方や動作については、後の工程K28,K29を説明する中で述べる。
【0125】
<コ型金具装着工程K28>
コ型金具装着工程K28は、クランプ治具装着工程K22の後、ポストピン装着工程K23と並行して行われる工程である。コ型金具装着工程K23では、まず、
図4に示す複数の縦ボルト30を取り外すことによって上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)のボルト固定を解除し、上側主柱材16(2)と下側主柱材18(2)とがクランプ治具62だけで仮固定された状態にする。そして、
図25(b)に示すように、縦ボルト30が取り外されて上下方向に連通する特定のボルト孔20(2),22(2)の中にポストピン100を装着し、他のボルト孔20(2),22(2)にコ型金具115を装着する。
【0126】
コ型金具115を装着する時は、まず、コ型本体部材116の第一の横部材120及び第二の横部材122の間に上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)のフランジ部16a(2),18a(2)を配し、縦ボルト30が取り外されたボルト孔20(2),22(2)と第一及び第二の透孔120a,122aとを上下方向に連通させる。そして、可動ピン124bを第二の透孔122aの側から挿通し、可動ピン124bの上端部分を第一の透孔120aから上向きに突出させる。さらに、可動ピン124bの基端部分をバネ部材124cの付勢に抗して押し上げ、透孔124dを第一の透孔120aの上方に露出させてピン部材124を差し込み、可動ピン124bを抜け止めする。これでコ型金具115が装着された状態(コ型金具115の組み立て状態)となり、第一の横部材120の下面がフランジ部16a(2)の上面に当接して支持される。コ型金具115は、重量確認工程K32が行われた時、
図25(c)に示すように、上側セグメント12の吊り上げ量の最大値(フランジ部16a(2)と18a(2)の離間可能距離の最大値)を、第一の横部材120と第二の横部材122との間隔によって規定し、ポストピン100がフランジ部18a(2)のボルト孔22(2)から抜け出してしまうのを防止する働きをする。
【0127】
<コ型金具取り外し工程K29>
コ型金具取り外し工程K29は、重量確認工程K32の後、吊り上げ撤去工程K33の前に、コ型金具115を取り外す工程である。コ型金具115を取り外す時は、まず、少し離れた安全な場所にいる作業者が、引き抜き具132を操作して位置決めピン126を引き抜き、可動ピン124bの抜け止めを解除する。可動ピン124bの、抜け止めが解錠されると、可動ピン124bがバネ部材124cの付勢力を受けて下向きに移動してコ型本体部116から脱落し、コ型本体部116もフランジ部16a(2),18a(2)から脱落するので、後の吊り上げ撤去工程K33を支障なく行うことができる。脱落したコ型本体部材116及びピン部材124は、落下防止用接続具128,130で下側セグメント14に接続されているので、地上に落下することなく保持される。
【0128】
このように、上記の3つの工程K27~K29を追加することによって、重量確認工程K32を行う時に、ポストピン100が不意にフランジ部18a(2)のボルト孔22(2)から抜け出てしまうのを容易に且つ確実に防止することができる。
【0129】
その他、本発明のクランプ治具及び端部閉鎖治具は、高所での作業が行われる鉄塔解体の用途に好適であるが、条件が合えば、橋梁や建築物の施工又は解体等の他の用途にも使用することできる。
【0130】
<<仮固定治具及びこれを用いた鉄塔解体方法に関する変形例など>>
本発明の鉄塔解体方法の中の、仮固定治具を用いた解体方法は、上記実施形態に限定されるものではない。
図3(a)、(b)に示す上側主柱材16(1)及び下側主柱材18(1)は、フランジ部16a(1),18a(1)のボルト孔20(1),22(1)がほぼ水平方向に連通し、横ボルト24でボルト固定されているが、仮固定治具を用いた解体方法は、ボルト孔20(1),22(1))の連通方向が厳密に水平でなくても、「横方向」であれば適用することができる。つまり、ボルト孔20(1),22(1)の連通方向が少し傾いている場合でも、仮固定治具38を上記の要領で使用した時に、仮固定治具38が適切に機能できる範囲の傾きであれば、そのボルト孔20(1),22(1)の連通方向は「横方向」に該当し、仮固定治具を用いた解体方法を適用することができる。
【0131】
また、
図26~
図28に示すように、上側主柱材12及び下側セグメント14の連結部分であるE部とF部の両方が、
図3に示すA部のような形態(上側主柱材16(1)及び下側主柱材18(1)の端部16a(1),18a(1)が複数の横ボルト24でボルト固定されている)になっている場合も、仮固定治具を用いた解体方法を使用することができる。この場合、解体作業は
図29に示す手順で行うとよい。
【0132】
まず、上側に位置するE部に対して、上記の仮固定治具準備工程K11及び仮固定治具装着工程K12を順に行い、下側に位置するF部に対して、上記の仮固定治具準備工程K11、仮固定治具装着工程K12及び仮固定治具取り外し工程K14を順に行う。このE部とF部は、上側セグメント12全体の構造から見て、クサビ部材54を装着する必要はないと考えられるので、クサビ部材装着工程K13は実施しない。クサビ装着工程K13は、状況に応じて実施するかどうかを判断すればよい。
【0133】
そして、上記の吊りワイヤ接続工程K31を行った後、重量確認工程K32を行う。重量確認工程K32を行う時、E部は、仮固定治具38で仮固定された状態(
図7)になっており、F部は、仮固定治具38による仮固定が解除された状態(
図17)になっている。
【0134】
この状態で、吊り上げ手段36が上側セグメント12を僅かに吊り上げると、
図30に示すように、上側セグメント12がC部の仮固定治具38の可動ピン48を軸にして回動し、F部の上側主柱材16(1)がF部の下側主柱材18(1)から離れて支持されなくなる。したがって、吊り上げ手段36は、適宜の重量検知手段を使用して、上側セグメント12の重量が許容範囲であるかどうかを確認することができる。
【0135】
重量確認工程K32を行って問題がなければ、E部に対して仮固定治具取り外し工程K14を行い、吊り上げ撤去工程K33を行って上側セグメント12を撤去する。このように、上側主柱材12及び下側セグメント14の連結部分が、全て
図3に示すA部のような形態になっている場合も、仮固定治具を用いた解体方法を使用することができる。
【0136】
本発明の仮固定治具は、上記実施形態に限定されるものではない。仮固定治取り外し工程K14において、ボルト孔20(1),22(1)から可動ピン48(差し込み部48a)をスムーズに引き抜くためには、工程K14を行っている途中、本体部材40が最初にセットした状態から不意に位置ずれしないことが求められる。本体部材40が位置ずれすると、テコの原理を効果的に利用できなくなるからである。そのため、例えば
図31に示す変形例の仮固定治具38xのように、軸部材50の構造を、可動ピン48の基端部を本体部材40に対して揺動可能に軸支しつつ、自己の中心軸周りに回転可能にするスイベル機構50aを介して支持する構造にすることが好ましい。これによって、可動ピン48が中心軸周りに回動した時でも、本体部材40にその回転力が作用しなくなり、本体部材40が一緒に回動してしまうのを防止することができる。同様に、本体部材40の第一の側面40bの近傍に、ボルト孔22(1)の周縁部を吸引又は吸着し、本体部材40が位置ずれするのを抑える磁石40dを設けることが好ましい。
【0137】
その他、仮固定治具の個々の構成部材(本体部材及び可動ピン)の形状や大きさは、上記の仮固定治具38又は38xと同様の動作が可能な範囲で、自由に変更することができる。また、本発明の仮固定治具は、高所での作業が行われる鉄塔解体の用途に好適であるが、条件が合えば、橋梁や建築物の施工又は解体等の他の用途にも使用することできる。
【0138】
<<<本発明の第二の実施形態(ガイドワイヤを用いた工法)>>>
次に、本発明の鉄塔解体方法の第二の実施形態について、
図32~
図35に基づいて説明する。ここで、上述した第一の実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0139】
図32は、第二の実施形態の鉄塔解体方法を使用して解体される上側セグメント12及び下側セグメント14の解体前の状態を示しており、上側セグメント12と下側セグメント14は、C部とD部とで接続されている。
【0140】
C部は、
図18(a)、(b)に示すC部と同じ構造であり、充填剤入り鋼管材である上側主柱材16(2)のフランジ部16a(2)を下側主柱材18(2)のフランジ部18a(2)当接させ、ボルト孔20(2)とボルト孔22(2)を上下方向に連通させて縦ボルト30を通し、縦ボルト30の先端部に縦ナット32を締め込み、縦ボルト30及び縦ナット32でフランジ部16a(2),18a(2)がボルト固定されている。
【0141】
D部は、
図19(a)、(b)に示すD部と同じ構造であり、充填剤入り鋼管材である上側主柱材16(2)のフランジ部16a(2)を下側主柱材18(2)のフランジ部18a(2)に当接させ、ボルト孔20(2)とボルト孔22(2)を横方向に連通させて横ボルト24を通し、横ボルト24の先端部に横ナット26を締め込み、横ボルト24及び横ナット26でフランジ部16a(2),18a(2)がボルト固定されている。
【0142】
次に、第二の実施形態の鉄塔解体方法について、
図33のフローチャートに基づいて説明する。
図33に示す各工程の中で、工程K21~K29はC部に関連する作業、工程K41~K48はD部に関連する作業、その他の工程K31~K33は、上側セグメント12の吊り上げに関連する作業である。以下、各工程の内容を順に説明する。
【0143】
<工程K21~K28>
工程K21~K28は、重量確認工程K32の前にC部に対して行う工程であり、
図24の中のクランプ治具準備工程K21、クランプ治具装着工程K22、ポストピン装着工程K23、端部閉鎖治具準備工程K24、端部閉鎖治具装着工程K25、コ型金具準備工程K28、クランプ治具取り外し工程K26と同様の内容である。
【0144】
<ガイドワイヤ装置準備工程K41/ガイドワイヤ装置設置工程K42>
ガイドワイヤ装置準備工程K41では、D部を安全に分離させるため、
図34、
図35に示すガイドワイヤ装置136を準備する。ガイドワイヤ装置136は、先端に環状部138aが設けられたガイドワイヤ138と、ガイドワイヤ138を引っ張るためのウインチ等である引っ張り装置140とを備え、さらに、独特な部材であるY型金具142、ワイヤ係止ピン部材144及び抜け止めピン146(係止用ピン部抜け止め部材)を備えている。
【0145】
Y型金具142は、上側主柱材16(2)に固定される本体部分148を有し、本体部分148の一側面に、互いに対向する2つの係止板150,152が立設された部材で、係止板150,152の内側に挿通孔150a,152aが各々設けられて連通している。ワイヤ係止ピン部材144は、係止板150,152の挿通孔150a,152aを通過できない大きさの基部154と、ゆとりを持って通過できる太さの係止用ピン部156とを有した部材である。抜け止めピン146は、係止用ピン部156の先端部分を直径方向に貫通する透孔156aに挿通可能で着脱可能な部材である。
【0146】
その他、ガイドワイヤ装置136には、抜け止めピン146を離れた場所で引き抜くための紐部材等である引き抜き具158と、ワイヤ係止ピン部材144を下側セグメント14に接続するための紐部材等である落下防止用接続具160とが設けられている。
【0147】
ガイドワイヤ装置設置工程K42では、まず、Y型金具142の本体部分148を上側主柱材16(2)に固定する。固定方法は自由であるが、例えば、上側主柱材16(2)の筒状本体部18b(2)の周面にバンド162を締め付け固定し、バンド162から側方に突出しているバンド固定部162aに、本体部分148をボルト固定する構造にするとよい。
【0148】
次に、ガイドワイヤ138の環状部138aを2つの係止板150,152の間に配した状態で、ワイヤ係止ピン部材144の係止用ピン部156を、係止板150の挿通孔150a、ガイドワイヤ130の環状部138a、係止板152の挿通孔152aに順に通し、挿通孔152aから突出する係止用ピン部156の先端部分の透孔156aに抜け止めピン146を差し込むことによって、ガイドワイヤ138をY型金具142に接続する。そして、引っ張り装置140を下側主柱材18(2)に取り付けるとともに、引っ張り装置40を動作させてガイドワイヤ138を引っ張り、上側主柱材16(2)のフランジ部16a(2)が下側主柱材18(2)のフランジ部18b(2)に押し当てられる方向に付勢された状態にする。
【0149】
<工程K43~工程K47>
D部に対して行うクランプ治具準備工程K43、クランプ治具装着工程K44、端部閉鎖治具準備工程K45及び端部閉鎖治具装着工程K46は、
図24の中のクランプ治具準備工程K21、クランプ治具装着工程K22、端部閉鎖治具準備工程K24及び端部閉鎖治具装着工程K25と同様の内容である。
【0150】
なお、D部については、ポストピン装着工程を行わない点に注意する。上記の端部閉鎖治具102,102xは、ポストピン100がストッパ部材として動作する構成になっている。ストッパ部材とは、上側セグメント12が下側セグメント14から分離した後、付勢手段110に付勢されて移動したシャッタ106を、上側主柱材16(2)の開口端を閉鎖する位置に保持させる部材のことである。したがって、D部の端部閉鎖治具は、上記の端部閉鎖治具102,102xを少し改造し、ポストピンとは別のストッパ部材を付設すればよい。
【0151】
<クランプ治具取り外し工程K47>
D部に対して行うクランプ治具取り外し工程K47は、ガイドワイヤ装置設置工程K42、クランプ治具装着工程K44及び端部閉鎖治具装着工程K46の後に行う工程であり、横ボルト24を取り外し、さらにクランプ治具62を取り外すことによって、上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)がガイドワイヤ装置136で仮固定された状態にする。
【0152】
なお、この実施形態では、クランプ治具取り外し工程K47を端部閉鎖治具装着工程K46の後に行っているが、条件が合えば、端部閉鎖治具装着工程K46の前に行うことも可能である。しかし、端部閉鎖治具装着工程K46を行う作業者の安全確保に万全を期すためには、
図33に示すように、クランプ治具取り外し工程K44は、端部閉鎖治具装着工程K46の後に行うことが好ましい。
【0153】
<吊りワイヤ接続工程K31>
吊りワイヤ接続工程K31は、
図24の中の吊りワイヤ接続工程K31と同じ内容である。吊りワイヤ接続工程K31は、C部に関連する工程K21~KK26や、D部に関連する工程K41~K47とは直接関係しないので、作業者にとって都合がよい適宜のタイミングで行うことができる。しかし、作業者の安全確保に万全を期すためには、クランプ治具取り外し工程K26,K47の前に行うことが好ましい。
【0154】
<重量確認工程K32>
重量確認工程K32は、
図24の中の重量確認工程K32と同じ内容である。重量確認工程K32を行う時、C部は、ポストピン100及びコ型金具115が装着され(
図25(b))、端部閉鎖治具102が装着され(
図14)、クランプ治具62が既に取り外された状態になっている。また、D部は、ガイドワイヤ装置136が設置され、端部閉鎖治具102が装着され(
図14)、クランプ治具62が取り外された状態になっている。
【0155】
この状態で、吊り上げ手段36が上側セグメント12を僅かに吊り上げると、
図36に示すように、上側セグメント12が、ガイドワイヤ装置136で連結されているD部(フランジ部16a(1),18a(2)の位置)を軸にして回動し、C部のフランジ部16a(2)がフランジ部18a(2)の上方に僅かに浮き上がる。したがって、吊り上げ手段36は、適宜の重量検知手段を使用して、上側セグメント12の重量が許容範囲であるかどうか(吊り上げ手段36が吊り上げ可能な重量であるかどうか)を確認することができる。
【0156】
このとき、C部のポストピン100は、
図25(c)に示すように、フランジ部16a(2)と一緒に上昇し、フランジ部18a(2)のボルト孔22(2)から少し引き抜かれるが、完全には抜けずにボルト孔22(2)の中に留まる。そして、C部の端部閉鎖治具102のシャッタ106が作動し、上側主柱材16(2)の筒状本体部16b(2)の開口端がシャッタ106によって閉鎖され、中の充填剤16c(2)が脱落するのが防止される。
【0157】
また、重量確認工程K32を行うと、D部のフランジ部16a(2)とフランジ部18a(2)との間にも隙間が発生するので、D部の端部閉鎖治具102のシャッタ106が作動し、上側主柱材16(2)の筒状本体部16b(2)の開口端がシャッタ106によって閉鎖され、中の充填剤16c(2)が脱落するのが防止される。
【0158】
ただし、D部の端部閉鎖治具102は、D部に対するクランプ治具取り外し工程K44を行った時に作動するケースも想定される。クランプ治具取り外し工程K44を行った時に、ガイドワイヤ装置136の引っ張り力に抗してフランジ部16a(2)とフランジ部18a(2)との間に隙間が発生する場合があるからである。D部の端部閉鎖治具102が作動するタイミングは、クランプ治具取り外し工程K44の時と重量確認工程K32の時のどちらでもよく、各工程を支障なく実施することができる。
【0159】
上側セグメント12の重量を確認すると、吊り上げ手段36は、上側セグメント12を吊り上げる動作を止めて荷下げする。上側セグメント12のC部は、僅かに吊り上げられた状態で、ポストピン100によって横方向に位置決めされているので、吊り上げ前の位置に安全に戻ることができる。また、上側セグメント12のD部は、ガイドワイヤ装置136の引っ張り装置140により引っ張られ、吊り上げ前の位置に安全に戻ることができる。
【0160】
なお、重量確認工程K32を行った結果、上側セグメント12の重量が許容範囲であることが確認できた時は次の工程に進むことができるが、許容範囲を超えていると確認された時は、以降の工程を中止し、安全確保の処置を行った後、状況の確認や対策の検討を行うことになる。
【0161】
<コ型金具取り外し工程K29/ガイドワイヤ装置取り外し工程K48>
重量確認工程K32の後、C部に対してコ型金具取り外し工程K29を行い、D部に対してガイドワイヤ装置取り外し工程K48を行う。コ型金具取り外し工程K29は、
図24の中のコ型金具取り外し工程K29と同じ内容である。
【0162】
ガイドワイヤ装置取り外し工程K48は、
図35(b)に示す状態から、ガイドワイヤ138とY型金具142との接続を解除する作業を行う。まず、引っ張り装置140を停止させ、少し離れた安全な場所にいる作業者が、引き抜き具158を操作して抜け止めピン146を引き抜き、ワイヤ係止ピン部材144の係止用ピン部156の抜け止めを解除する。すると、ワイヤ係止ピン部材144が自重で下向きに移動して係止用ピン部156がY型金具142から脱落し、ガイドワイヤ138がY型金具142から離脱する。脱落したワイヤ係止ピン部材144は、落下防止用接続具160で下側セグメント14に接続されているので、地上に落下することなく保持される。
【0163】
なお、抜け止めピン146を引き抜いて係止用ピン部156の抜け止めを解除した後、ワイヤ係止ピン部材144が自重で脱落できない場合、少し離れた安全な場所にいる作業者が落下防止用接続部160を操作し、ワイヤ係止ピン部材144をY型金具142から脱落させるようにしてもよい。
【0164】
<吊り上げ撤去工程K33>
吊り上げ撤去工程K33は、
図24の中の吊り上げ撤去工程K33と同じ内容である。吊り上げ撤去工程K33を行う時、C部の上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)は、ポストピン100が装着され、端部閉鎖治具102が作動し、コ型金具115及びクランプ治具62が取り外された状態になっている。また、D部の上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)は、ガイドワイヤ138がY型金具142から離脱し、端部閉鎖治具102が作動し、クランプ治具62が取り外された状態になっている。したがって、吊り上げ手段36で上側セグメント12を大きく吊り上げると、D部は問題なく分離し、C部についても、ポストピン100がフランジ部16a(2)と一緒に上昇し、ポストピン100のピン部100aがフランジ部18a(2)のボルト孔22(2)からスムーズに引き抜かれ、問題なく分離する。
【0165】
以上説明したように、第二の実施形態の鉄塔解体方法は、鋼管材で成る上側主柱材及び下側主柱材のフランジ部同士が横方向にボルト固定されている箇所の解体に好適な方法である。そして、独特なガイドワイヤ装置準備工程K41、ガイドワイヤ装着設置工程K42及びガイドワイヤ取り外し工程K48を行うので、非常に安全性が高く、鉄塔解体の作業を効率よく安全に行うことができる。
【0166】
さらに、ガイドワイヤ装置136やポストピン100の独特な構造により、上記の重量確認工程K32をスムーズに行うことが可能になる。また、重量確認工程K32で上側セグメント12の重量が許容範囲を超えていると確認された場合、以降の工程を中止して安全を確保することが重要になるところ、ガイドワイヤ装置136やポストピン100を使用することによって、容易且つ確実に安全を確保することができる。
【0167】
また、ガイドワイヤ装置136やクランプ治具62は、少し離れた安全な場所にいる使用者が遠隔操作用の部材(ガイドワイヤ138、引き抜き具158、遠隔操作具96等)を用いて容易に操作できる構造であり、端部閉鎖治具102については、使用者の操作が不要(自動的に作動する)なので、作業者の安全確保に大きく寄与することができる。
【0168】
<<<第二の実施形態の変形例など>>>
本発明の鉄塔解体方法の中の、ガイドワイヤ装置を使用した解体方法は、上記の第二の実施形態に限定されるものではない。例えば、
図34に示すD部の上側主柱材16(2)及び下側主柱材18(2)は、フランジ部16a(2),18a(2)のボルト孔20(1),22(1)がほぼ水平方向に連通し、横ボルト24でボルト固定されているが、ボルト孔20(2),22(2)の連通方向が厳密に水平でなくても、「横方向」であれば適用することができる。つまり、ボルト孔20(2),22(2)の連通方向が少し傾いている場合でも、ガイドワイヤ装置136を上記の要領で使用した時に、ガイドワイヤ装置136が適切に機能できる範囲の傾きであれば、そのボルト孔20(2),22(2)の連通方向は「横方向」に該当し、ガイドワイヤ装置を用いた解体方法を適用することができる。
【0169】
また、D部は、上側主柱材16(2)及び下側主柱材19(2)が横方向に連続している部分なので、吊り上げ撤去工程K33で上側セグメント12を撤去する時、上側主柱材16(2)の端部が端部閉鎖治具102で閉鎖されていなくても、充填剤16c(2)が脱落しない可能性がある。したがって、充填剤16c(2)が脱落する心配がない時は、
図33の中の、D部に対する端部閉鎖治具準備工程K45及び端部閉鎖治具装着工程K46は、省略することができる。
【符号の説明】
【0170】
10 鉄塔
12 上側セグメント
14 下側セグメント
16(1) 上側主柱材
16a(1) 端部
16(2) 上側主柱材(充填剤入り鋼管材)
16a(2) フランジ部(上側主柱材の端部)
16b(2) 筒状本体部
16c(2) 補強用の充填剤
18(1) 下側主柱材
18a(1) 端部
18(2) 下側主柱材(充填剤入り鋼管材)
18a(2) フランジ部(下側主柱材の端部)
18b(2) 筒状本体部
18c(2) 補強用の充填剤
20(1),20(2),22(1),22(2) ボルト孔
24 横ボルト
28 隙間
30 縦ボルト
34 受けワイヤ
36 吊り上げ手段
36a 吊りワイヤ
38,38x 仮固定治具
40 本体部材
40a 角部
40b 第一の側面
40c 第二の側面
40d 磁石
48 可動ピン
48a 差し込み部
48b 透孔
52 抜け止めピン(抜け止め部材)
54 クサビ部材
56 引き抜き具
58 引っ張り具
60 落下防止用接続具
62 クランプ治具
64 可動部材
66 固定部材
68 第一のリンク部材
70 第二のリンク部材
72 可動クランプ部
72a 可動挟持面
74 ロッド部
76 調節ボルト
76a ネジ部
78 固定クランプ部
78a 固定挟持面
80 本体部
82 ロッド案内部
82a ガイド孔
84 リンク本体部
86 操作レバー
94(1) 第一の軸着部
94(2) 第二の軸着部
94(3) 第三の軸着部
96 遠隔操作具
98 落下防止用接続具
100 ポストピン
100a ピン部
100b 係止部
102 端部閉鎖治具
104 基体
106 シャッタ
108 シャッタ支持機構
110 付勢手段
114 ストッパ部材
115 コ型金具
116 コ型本体部材
120 第一の横部材
120a 第一の透孔
122 第二の横部材
122a 第二の透孔
124 ピン部材
126 位置決めピン(位置決め部材)
136 ガイドワイヤ装置
138 ガイドワイヤ
138a 環状部
140 引っ張り装置
142 Y型金具
144 ワイヤ係止ピン部材
146 抜け止めピン(係止用ピン部抜け止め部材)
148 本体部分
150,152 係止板
150a,152a 挿通孔
154 基部
156 係止用ピン部
156a 透孔
158 引き抜き具
160 落下防止用接続具
K11 仮固定治具準備工程
K12 仮固定治具装着工程
K13 クサビ部材装着工程
K14 仮固定治具取り外し工程
K21 クランプ治具準備工程
K22 クランプ治具装着工程
K23 ポストピン装着工程
K24 端部閉鎖治具準備工程
K25 端部閉鎖治具装着工程
K26 クランプ治具取り外し工程
K27 コ型金具準備工程
K28 コ型金具装着工程
K29 コ型金具取り外し工程
K31 吊りワイヤ接続工程
K32 重量確認工程
K33 吊り上げ撤去工程
K41 ガイドワイヤ装置準備工程
K42 ガイドワイヤ装置設置工程
K43 クランプ治具準備工程
K44 クランプ治具装着工程
K45 端部閉鎖治具準備工程
K46 端部閉鎖治具装着工程
K47 クランプ治具取り外し工程
K48 ガイドワイヤ装置取り外し工程