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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090403
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】釣竿および釣糸ガイド
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/04 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A01K87/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206292
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 魁
(72)【発明者】
【氏名】松本 聖比古
(72)【発明者】
【氏名】恐田 欣幸
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AA05
2B019AC00
2B019BA01
2B019BA03
2B019BA08
(57)【要約】
【課題】釣竿本体に対する釣糸ガイドの確実な固定を容易且つ安価に行うことができる釣竿を提供すること。
【解決手段】釣竿本体11にガイド取付部41が設けられ、このガイド取付部41に溝42が設けられる。溝42は、釣竿本体11の軸方向に延びる。溝42の底面45は、平面である。釣糸ガイド15は、取付脚25を備える。取付脚25は、矩形の板状に形成される。取付脚25の下面30は、平面である。この下面30は、前記底面45と面接触する。取付脚25の上面29は、湾曲面であり、釣竿本体11の径方向の外側に膨らむ。この上面29は、前記溝42から突出している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿本体と、
前記釣竿本体に取り付けられる釣糸ガイドと、を備え、
前記釣竿本体の外周面は、前記釣糸ガイドが接する第1平面を有し、
前記釣糸ガイドは、前記第1平面と接する第2平面を有する、釣竿。
【請求項2】
前記釣糸ガイドは、前記釣竿本体に取り付けられる取付脚を有し、
前記第2平面は、前記取付脚に設けられる、請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記取付脚は、前記第2平面に対して前記釣竿本体の径方向の反対側に外面を有し、
前記外面は、前記径方向外側に向けて延びる凸形状を有する、請求項2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記外面は湾曲面である、請求項3に記載の釣竿。
【請求項5】
前記外面は、前記釣竿本体の周方向に延びる第1溝を有する、請求項3または4に記載の釣竿。
【請求項6】
前記外周面は、前記釣竿本体の軸方向に延びる第2溝を有し、
前記第1平面は、前記第2溝に設けられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の釣竿。
【請求項7】
前記釣竿本体の所定位置にガイド取付部が形成され、
前記第2溝は、前記ガイド取付部に設けられる、請求項6に記載の釣竿。
【請求項8】
前記ガイド取付部は、前記釣竿本体を構成する材料よりも弾性率が低い樹脂を含む、請求項7に記載の釣竿。
【請求項9】
前記第2溝は、
底面と、
前記底面と所定の接続角度で接続される側壁面と、を有する、請求項6に記載の釣竿。
【請求項10】
前記接続角度は、直角または鈍角である、請求項9に記載の釣竿。
【請求項11】
前記取付脚は、前記釣竿本体の径方向外側に向けて前記第2溝から突出する、請求項6に記載の釣竿。
【請求項12】
外周面に第1平面を有する釣竿本体を備える釣竿に取り付けられる釣糸ガイドであって、
前記第1平面と接する第2平面を有する、釣糸ガイド。
【請求項13】
釣糸ガイドが取り付けられる釣竿本体を備え、
前記釣竿本体の外周面は、前記釣糸ガイドが接する第1平面を有する、釣竿。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、釣竿の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
釣糸リールが装着される釣竿は、釣竿本体、釣糸リールを保持するリールシートおよび複数の釣糸ガイドを備える。各釣糸ガイドは、釣竿本体の竿軸方向に沿って所定の間隔で配置され、釣糸リールから繰り出された釣糸は、各釣糸ガイドに支持される。実釣において、釣糸ガイドは、キャスティング時に釣糸を滑らかに送り出すと共に、リーリング時に釣糸を確実に支持する必要があるため、釣竿本体に対して確実に固定されることが要請される(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された釣竿では、釣糸ガイドは、板状の固定補助具を介して釣竿本体に固定される。この固定補助具に凹部が設けられており、この凹部に釣糸ガイドの脚が嵌め合わされる。この状態で、固定用糸が固定補助具および前記脚と共に釣竿本体に巻き付けられ、釣糸ガイドが釣竿本体の所定位置に固定される。この固定用糸を安定させ、前記脚の装着部分の表面を仕上げるため、樹脂がコーティングされる。
【0004】
このように、釣糸ガイドが前記固定補助具を介して釣竿本体に固定されるから、たとえば大型の魚がヒットした状態でのリーリングにおいて、前記脚に引張力のほか曲げモーメントが作用した場合であっても、釣糸ガイドが釣竿本体に対して変位(位置ずれ等)することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-132558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記固定用補助具を介して前記脚が釣竿本体に取り付けられるから、この釣竿本体、前記脚および固定用補助具に巻き付けられた固定用糸の外形は、大きく歪んだ円形となる。そのため、釣竿としての外観が損なわれるという問題がある。加えて、前記板状の固定用補助具が採用されることから、部品点数が増加し、釣竿の組み立てが煩雑となり、釣竿の製造コストが上昇するという問題もある。その一方で、前記固定補助具が省略され、前記脚が直接に釣竿本体に固定されれば、前記固定用糸の外形は円形に近づくから、前記問題は、そもそも発生しないかのように思われる。
【0007】
ところで、通常、釣竿の外径は、竿先に向けて徐々に細くなり、外形の曲率は一定ではない。したがって、釣糸ガイドの脚が直接に釣竿本体に取り付けられる場合に、前記脚が安定して釣竿本体に固定されるためには、前記脚の形状が前記釣竿本体の仕様、すなわち外形の曲率に合わせて個別に設計される必要がある。しかしながら、そのような対応は、釣糸ガイドの製造コストの面から妥当ではない。
【0008】
本発明はかかる背景のもとになされたものであって、その目的は、釣竿本体に対する釣糸ガイドの確実な固定を容易且つ安価に行うことができる釣竿を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 前記課題を解決するために、本件発明の第1側面の釣竿は、釣竿本体と、前記釣竿本体に取り付けられる釣糸ガイドと、を備える。前記釣竿本体の外周面は、前記釣糸ガイドが接する第1平面を有し、前記釣糸ガイドは、前記第1平面と接する第2平面を有する。
【0010】
この発明によれば、第2平面を備えた釣糸ガイドが第1平面を備えた釣竿本体に直接に取り付けられる。このとき、前記第1平面が前記第2平面と面接触することになるので、釣糸ガイドは安定して釣竿本体に固定される。しかも、釣糸ガイドが釣竿本体に固定されるために、たとえば固定用糸が前記釣糸ガイドに巻き付けられる場合、この固定用糸の外縁に生じる歪みが抑えられる。その結果、釣竿の外観が損なわれることがなく、しかも、従来に比べて部品点数が削減され、釣竿の製造コストが抑えられる。
【0011】
(2) 本件発明の第1側面にしたがう第2側面の釣竿においては、前記釣糸ガイドは、前記釣竿本体に取り付けられる取付脚を有し、前記第2平面は、前記取付脚に設けられる。
【0012】
この構成では、釣糸ガイドの取付脚に前記第2平面が設けられる。すなわち、この取付脚が前記釣竿本体の第1平面に安定して確実に固定される。
【0013】
(3) 本件発明の第2側面にしたがう第3側面の釣竿においては、前記取付脚は、前記第2平面に対して前記釣竿本体の径方向の反対側に外面を有する。この外面は、前記径方向外側に向けて延びる凸形状を有する。
【0014】
この構成では、前記取付脚が釣竿本体に取り付けられると、前記外面は、釣竿本体の径方向の反対側に位置し、且つ釣竿本体の径方向外側に膨らむ。したがって、前記取付脚が釣竿本体に固定されるべく、前記取付脚に固定用糸が巻き付けられると、この固定用糸の外周縁の形状は円に近づく。すなわち、前記固定用糸の外周縁に生じる歪みがより抑えられ、釣竿の外観が向上する。
【0015】
(4) 本件発明の第3側面にしたがう第4側面の釣竿においては、前記外面は湾曲面である。
【0016】
この構成では、前記固定用糸の外縁の形状は前記湾曲面に倣って湾曲するから、より円に近づく。
【0017】
(5) 本件発明の第3側面または第4側面にしたがう第5側面の釣竿においては、前記外面は、前記釣竿本体の周方向に延びる第1溝を有する。
【0018】
この構成では、前記取付脚が釣竿本体に固定されるべく、前記固定用糸が採用された場合、この固定用糸が前記第1溝に沿って巻き付けられる。これにより、前記固定用糸が整列して前記取付脚に巻き付くから、釣糸ガイドがより強固に釣竿本体に固定される。しかも、前記固定用糸の外縁の形状がより円に近づき、釣竿の外観を向上させる。
【0019】
(6) 本件発明の第1側面から第5側面のいずれか一つにしたがう第6側面の釣竿においては、前記外周面は、前記釣竿本体の軸方向に延びる第2溝を有し、前記第1平面は、前記第2溝に設けられる。
【0020】
この構成では、釣糸ガイドが釣竿本体に直接に取り付けられる際に、前記釣糸ガイドは、釣竿本体に設けられた第2溝と係合する。これにより、釣糸ガイドは、より安定して釣竿本体に固定される。
【0021】
(7) 本件発明の第6側面にしたがう第7側面の釣竿においては、前記釣竿本体の所定位置にガイド取付部が形成され、前記第2溝は、前記ガイド取付部に設けられる。
【0022】
この構成では、前記第2溝が前記ガイド取付部に形成されるから、前記第2溝の設計の自由度が向上する。これにより、釣糸ガイドの取付脚の形状に対応した第2溝の設計が可能となる。
【0023】
(8) 本件発明の第7側面にしたがう第8側面の釣竿においては、前記ガイド取付部は、前記釣竿本体を構成する材料よりも弾性率が低い樹脂を含む。
【0024】
この構成では、前記ガイド取付部が設けられることにより釣竿本体の剛性が局部的に高くなるが、前記ガイド取付部を構成する材料の弾性率が相対的に低い場合は、前記剛性の局部的な増加が抑制される。
【0025】
(9) 本件発明の第6側面から第8側面のいずれか一つにしたがう第9側面の釣竿においては、前記第2溝は、底面と、前記底面と所定の接続角度で接続される側壁面と、を有する。
【0026】
(10)本件発明の第9側面にしたがう第10側面の釣竿においては、前記接続角度は、直角または鈍角である。
【0027】
この構成では、前記側壁面が前記取付脚を前記釣竿本体の周方向に位置決めすることができる。
【0028】
(11)本件発明の第6側面から第10側面のいずれか一つにしたがう第11側面の釣竿においては、前記取付脚は、前記釣竿本体の径方向外側に向けて前記第2溝から突出する。
【0029】
この構成では、釣糸ガイドの取付脚が前記第2溝から突出しているので、前記固定用糸が前記取付脚に巻き付けられると、前記取付脚は確実に釣竿本体に固定される。
【0030】
(12)前記課題を解決するために、本件発明の第12側面の釣糸ガイドは、外周面に第1平面を有する釣竿本体を備える釣竿に取り付けられる釣糸ガイドであって、前記第1平面と接する第2平面を有する。
【0031】
この発明によれば、釣糸ガイドが釣竿本体に取り付けられた状態で、釣糸ガイドの第2平面が釣竿本体の第1平面と直接に接するので、釣糸ガイドは安定して釣竿本体に固定される。しかも、釣糸ガイドが釣竿本体に固定されるために、たとえば固定用糸が前記釣糸ガイドに巻き付けられる場合、この固定用糸の外縁に生じる歪みが抑えられる。その結果、釣竿の外観が損なわれることがない。しかも、従来に比べて部品点数が削減され、釣竿の製造コストが抑えられる。
【0032】
(13)前記課題を解決するために、本件発明の第13側面の釣竿は、釣糸ガイドが取り付けられる釣竿本体を備え、前記釣竿本体の外周面は、前記釣糸ガイドが接する第1平面を有する。
【0033】
この発明によれば、釣糸ガイドは、第1平面を備えた釣竿本体に直接に取り付けられる。このとき、釣糸ガイドは、前記第1平面と面接触することにより、安定して釣竿本体に固定される。しかも、釣糸ガイドが釣竿本体に固定されるために、たとえば固定用糸が前記釣糸ガイドに巻き付けられる場合、前記釣糸ガイドが前記第1平面と面接触するため、前記固定用糸の外縁に生じる歪みが抑えられる。その結果、釣竿の外観が損なわれることがなく、しかも、従来に比べて部品点数が削減され、釣竿の製造コストが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿10の正面図である。
図2図2は、釣竿10の要部拡大斜視図である。
図3図3は、釣竿10に設けられた釣糸ガイド15の斜視図である。
図4図4は、釣竿本体11の要部拡大斜視図である。
図5図5は、図2におけるV-V断面図である。
図6図6は、図5における要部拡大図である。
図7図7は、本発明の一実施形態の第1変形例に係る釣竿本体11と釣糸ガイド15との取付構造を示す図である。
図8図8は、本発明の一実施形態の第2変形例に係る釣竿本体11と釣糸ガイド15との取付構造を示す図である。
図9図9は、本実施形態の第3変形例に係る釣糸ガイド55の斜視図である。
図10図10は、本発明の一実施形態の第4変形例に係る釣糸ガイド60の要部断面図である。
図11図11は、本発明の一実施形態の第4変形例に係る釣糸ガイド60の要部断面図である。
図12図12は、本実施形態の第5変形例に係る釣糸ガイド70の斜視図である。
図13図13は、本実施形態の第5変形例に係る釣糸ガイド70の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係る釣竿の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0036】
1.釣竿の構成
【0037】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿10の正面図である。
【0038】
この釣竿10は、釣竿本体11と、その後端部を支持するグリップ12と、釣竿本体11に設けられた複数の釣糸ガイド13~20とを備えている。グリップ12は、リールシート21を備えており、図示されていない釣糸リールは、このリールシート21に固定されるようになっている。
【0039】
釣竿本体11は、本実施形態では単一の棒状部材からなる。釣竿本体11の後端部は、グリップ12の内部に前方から後方に向かって(同図において左から右に向かって)挿通され、両者が互いに固定されている。釣竿本体11は、既知の要領で成形される。すなわち、炭素繊維により強化された樹脂シート(プリプレグ)が所定形状に裁断され、これが筒状に巻回された後に熱処理が施されることにより、円筒状の竿管が焼成される。本実施形態では、釣竿本体11は、単一の竿管によりいわゆるワンピースタイプとして構成されているが、本発明は、かかる仕様の釣竿本体11に限定して適用されるものではなく、複数の竿管が接続されることによって釣竿本体11が構成されるタイプのものであってもよい。
【0040】
同図が示すように、複数の釣糸ガイド13~20は、釣竿本体11に対して予め設計された所定の位置に取り付けられている。釣糸ガイド20は、いわゆるトップガイドと称され、釣竿本体11の先端に設けられる。釣糸リールがリールシート21に固定され、この釣糸リールから繰り出された釣糸は、釣糸ガイド13~20に順に挿通される。本実施形態に係る釣竿10の特徴とするところは、各釣糸ガイド13~20と釣竿本体11との取付構造である。
【0041】
図2は、釣竿10の要部拡大斜視図であり、釣糸ガイド15が釣竿本体11に取り付けられた状態を示している。図3は、釣糸ガイド15の斜視図である。
【0042】
釣糸ガイド15は、ガイドフレーム22及びガイドリング23を備えている。ガイドリング23の構造および材料は既知である。ガイドリング23は、本実施形態では円環状に形成され、釣糸が挿通される糸挿通孔を有している。もっとも、ガイドリング23の外形形状は特に限定されるものではなく、前記糸挿通孔が設けられていれば、外形形状は楕円形や長円形等であってもよい。ガイドリング23は耐摩耗性に優れた、種々の硬質材料からなり、典型的にはSiC(シリコンカーバイト)に代表されるセラミックや、各種の金属材料が使用される。金属材料としては、たとえばチタン合金が好適である。
【0043】
ガイドフレーム22は既知の材料からなり、樹脂あるいは金属により構成されている。この樹脂は、典型的にはカーボン繊維やガラス繊維等の強化繊維含浸樹脂が採用され、金属としては、チタン合金やステンレス合金、アルミニウム合金等が採用され得る。ガイドフレーム22は、本実施形態ではL字状に形成されており、リング装着部24及び取付脚25を備えている。
【0044】
図3が示すように、取付脚25は、矩形の板状に形成されている。取付脚25の幅26、肉厚27および長さ28は、それぞれ、2.8mm、1.0mmおよび10.0mmに設定されている。もっとも、幅26は、0.5mm~5.0mm、肉厚27は、0.5mm~3.0mmおよび長さ28は、5.0mm~30.0mmの範囲で設定される。本実施形態では、取付脚25の上面29(特許請求の範囲に記載された「外面」に相当)は湾曲しており、下面30(特許請求の範囲に記載された「第2平面」に相当)は平坦な面である。
【0045】
図2が示すように、取付脚25が釣竿本体11に取り付けられた状態で、前記下面30は釣竿本体11の外周面31と接する。前記上面29は、前記下面30に対して釣竿本体11の径方向の反対側に位置する。図3が示すように、この上面29は湾曲している。具体的には、前記上面29は、前記下面30と反対側に凸形状となるように、すなわち釣竿本体11の径方向の外側に向けて凸形状となるように湾曲している。本実施形態では、前記肉厚27は、取付脚25の最小寸法を意味し、前記上面29が湾曲することにより、取付脚25の最大寸法は、前記肉厚27よりも大きくなる。
【0046】
ただし、前記上面29は、前記下面30と反対側に凸形状であれば湾曲面に限定されるものではないし、前記下面30と同様に平坦な面であってもよい。本実施形態では、取付脚25は、矩形の板状に形成されているが、取付脚25の外形形状は特に限定されず、前記肉厚27(すなわち、前記下面30と上面29との距離)が前記範囲の寸法に設定されていればよい。
【0047】
図3が示すように、リング装着部24は、保持部32および連結部33を有し、これらは一体的に形成されている。保持部32は円環状に形成され、この保持部32の内側にガイドリング23が嵌め込まれている。ガイドリング23は、接着剤により保持部32に接着されてもよい。連結部33は、2本の棒状部材34、35からなる。これらは、保持部32と取付脚25との間に掛け渡されている。各棒状部材34、35の一端は、保持部32の径方向の両側に接続され、各棒状部材34、35の他端は、取付脚25の端部に接続されている。これにより、ガイドリング23は、取付脚25に対して所定の位置に、すなわち釣竿本体11に対して所定の位置に配置される。なお、本実施形態では、リング装着部24が前記保持部32及び連結部33を備えるが、ガイドリング23が前記所定の位置に配置されるのであれば、リング装着部24の構造は特に限定されるものではない。
【0048】
図4は、釣竿本体11の要部拡大斜視図である。
【0049】
同図が示すように、釣竿本体11は、ガイド取付部41を備えている。このガイド取付部41は、釣竿本体11の所定の位置、すなわち前記釣糸ガイド15が取り付けられる位置に形成されている。ガイド取付部41は、既知の方法により形成される。すなわち、たとえば、いわゆるカーボンテープ(テープ状に形成されたプリプレグ)が釣竿本体11の焼成時に前記所定の位置に巻き付けられ、前記熱処理が施される。これにより、釣竿本体11の外径は、前記所定の位置において部分的に大きくなる。本実施形態では、前記カーボンテープは、典型的には炭素繊維により強化された樹脂を含むが、この樹脂は、繊維により強化されていないものでもよい。本実施形態では、前記カーボンテープにより形成されるガイド取付部41の弾性率、すなわち、ガイド取付部41を構成する樹脂の弾性率は、釣竿本体11を構成する材料の弾性率よりも低い。
【0050】
釣竿本体11が焼成された後に、前記ガイド取付部41に溝42(特許請求の範囲に記載された「第2溝」に相当)が設けられる。この溝42は、釣竿本体11の外周面31(本実施形態では、ガイド取付部41の外周面)に設けられる。具体的には、前記ガイド取付部41の外周面31に切削加工が施される。具体的には、釣竿本体11の中心軸43に沿う方向44(特許請求の範囲に記載された「軸方向」に相当)に、前記外周面31が削られることにより、溝42が形成される。
【0051】
溝42は、底面45(特許請求の範囲に記載された「第1平面」に相当)と、側壁面46、47とを有する。本実施形態では、底面45の形状は矩形である。側壁面46及び側壁面47は、底面45の縁部(前記方向44に沿う縁部)に連続しており、この底面45に対して直交している。このため、側壁面46及び側壁面47は、同図が示すように、釣竿本体11の径方向に沿って対向している。側壁面46、47の形状は、細長の矩形である。なお、本実施形態では、前記底面45の形状は矩形であるが、これに限定されるものではなく、底面45が平坦な面であればよい。本実施形態では、前記底面45の法線が釣竿本体11の中心軸43と直交するが、両者が直交しないように前記底面45が形成されていてもよい。
【0052】
溝42の幅48は、本実施形態では3.0mmに設定されている。もっとも、この幅48は、前記釣糸ガイド15の取付脚25の幅26に対応して0.7mm~5.2mmに設定される。要するに、前記取付脚25が溝42内に嵌め込まれるように前記幅48が設定されればよい。溝42の深さ(前記側壁面の高さ)49は、本実施形態では0.5mmに設定されている。ただし、この深さ49は、前記釣糸ガイド15の取付脚25の肉厚27に対応して0.2mm~1.5mmに設定される。本実施形態では、前記溝42の深さ49は、前記取付脚25の肉厚27の最大値より小さくなるように設定されるが、これに限定されるものではない。溝42の長さ50は、本実施形態では10.2mmに設定されている。もっとも、この長さ50は、前記釣糸ガイド15の取付脚25の長さ28に対応して5.2mm~30.2mmに設定される。要するに、溝42の長さ50は、前記取付脚25の長さ28以上であればよい。本実施形態では、溝42は前記ガイド取付部41の全体に亘って設けられているが、溝42の一部に溝42が設けられていてもよい。
【0053】
図5は、図2におけるV-V断面図である。図6は、図5における要部拡大図である。
【0054】
前記釣竿10の組立工程において、釣竿本体11に釣糸ガイド15が設けられる。釣竿本体11に設けられた溝42の形状が前記のとおりであるから(図4参照)、釣糸ガイド15の取付脚25(図3参照)は、前記溝42に嵌め合わされる。図5及び図6が示すように、前記取付脚25の下面30は、前記溝42の底面45と面接触する。しかも、本実施形態では、溝42の幅48(図4参照)が取付脚25の幅26に対応しているので、取付脚25の側面51が溝42の側壁面46と接触し、取付脚25の側面52が溝の側壁面47と接触する。
【0055】
この状態で、固定用糸53が前記ガイド取付部41に巻き付けられる。この工程は従来と同様である。前記取付脚25は、固定用糸53によって前記ガイド取付部41に締結される。この固定用糸53は、樹脂カバー54により被覆される。樹脂カバー54は、紫外線硬化樹脂からなり、典型的には、紫外線硬化型塗料が採用され得る。この樹脂が前記固定用糸53の全体をガイド取付部41の周方向に囲繞し、前記取付脚25及び固定用糸53は、樹脂カバー54に埋設された状態となる。樹脂カバー54の肉厚は、本実施形態では2.5mmに設定されるが、0.5mm~5.0mmの範囲で適宜設計変更され得る。
【0056】
2.作用効果
【0057】
この釣竿10では、図6が示すように、釣竿本体11に設けられた前記底面45と、釣糸ガイド15の取付脚25の下面30とが面接触するので、釣糸ガイド15は釣竿本体11に直接接触し、安定して固定される。このように、釣竿本体11側に形成された平面(底面45)と釣糸ガイド15側に形成された平面(下面30)とが面接触するから、前記固定用糸53が前記取付脚25と共に釣竿本体11に巻き付けられた状態で、この固定用糸53の外縁に生じる歪みが抑えられる。その結果、釣竿10の外観が損なわれることがなく、しかも、従来のように釣糸ガイドと釣竿本体との間にアタッチメントが介在しないので、部品点数が削減され、コスト安価に釣竿10が構成される。
【0058】
本実施形態では、釣竿本体11と面接触する面(前記下面30)が、釣糸ガイド15の取付脚25に形成される。このため、この取付脚25が釣竿本体11のの外周面31、すなわち前記底面45に安定して接触する。したがって、釣糸ガイド15が釣竿本体11に確実に固定される。
【0059】
図6が示すように、本実施形態では、前記取付脚25の上面29は、前記下面30の反対側(釣竿本体11の径方向の反対側)に形成され、しかも、前記径方向外側に膨らんでいる。そのため、前記固定用糸53が取付脚25に巻き付けられると、この固定用糸53の外周縁の形状は円に近づく。したがって、この固定用糸53の外周縁に生じる歪みがより抑えられ、釣竿10の外観が向上する。加えて、前記上面29は湾曲面であるから、前記固定用糸53の外縁の形状は前記上面29に倣って湾曲し、より円に近づく。
【0060】
本実施形態では、釣竿本体11側に形成された前記底面45は、釣竿本体11に設けられた溝42の底面から構成される。すなわち、釣糸ガイド15が釣竿本体11に取り付けられる際に、釣糸ガイド15は、前記溝42と係合する。これにより、釣糸ガイド15は、より安定して釣竿本体11に固定される。
【0061】
しかも、釣竿本体11にガイド取付部41が形成され、これに前記溝42が加工されるから、溝42の設計の自由度が向上する。すなわち、釣糸ガイド15の取付脚25の形状に対応した溝42の設計が可能であり、釣糸ガイド15が一層安定して釣竿本体11に固定される。もっとも、前記ガイド取付部41が省略され、前記溝42が釣竿本体11の外周面31に直接に設けられていてもよい。
【0062】
本実施形態では、前記ガイド取付部41を構成する樹脂の弾性率が前記釣竿本体11を構成する材料の弾性率よりも低いから、前記ガイド取付部41が設けられたとしても、これにより釣竿本体11の剛性が局部的に極端に高くなることが抑えられる。
【0063】
本実施形態では、釣竿本体11に設けられた溝42の深さ49が、前記取付脚25の肉厚27の最大値より小さい。つまり、前記取付脚25の上面29が釣竿本体11の径方向外側に向けて前記溝42から突出する。これにより、前記取付脚25は、前記固定用糸53により釣竿本体11に確実に締結される。
【0064】
3.変形例
【0065】
図7は、本実施形態の第1変形例に係る釣竿本体11と釣糸ガイド15との取付構造を示す図である。図8は、本実施形態の第2変形例に係る釣竿本体11と釣糸ガイド15との取付構造を示す図である。
【0066】
第1変形例に係る釣竿本体11と釣糸ガイド15との取付構造(図7参照)が、本実施形態に係る釣竿本体11と釣糸ガイド15との取付構造(図6参照)と異なるところは、前記釣竿本体11に設けられた溝42の形状である。すなわち、前記実施形態に係る溝42では、前記底面45に対して前記側壁面46、47が直交しているのに対し、本変形例に係る溝42では、前記底面45に対して前記側壁面46、47は、所定の接続角度で接続されている。本変形例では、この接続角度は120°(degree)に設定されているが、この角度に限定されるものではなく、鈍角であればよい。これにより、前記取付脚25は、前記釣竿本体11の周方向に位置決めされる。また、第2変形例に係る釣竿本体11と釣糸ガイド15との取付構造では、前記接続角度は180°である。
【0067】
図9は、本実施形態の第3変形例に係る釣糸ガイド55の斜視図である。
【0068】
本変形例に係る釣糸ガイド55が前記実施形態に係る釣糸ガイド15(図3参照)と異なるところは、釣糸ガイド55の上面29に複数の細溝56(特許請求の範囲に記載された「第1溝」に相当)が設けられている点である。釣糸ガイド55のその他の構成については前記釣糸ガイド15と同様である。
【0069】
各細溝56は、前記取付脚25の幅26の方向に沿って延びており、長さ28の方向に並んでいる。この釣糸ガイド55が前記釣竿本体11に取り付けられると、前記細溝56は、前記釣竿本体11の周方向に沿って延びる。これにより、前記固定用糸53が前記取付脚25に巻き付けられると、前記細溝56と係合し、前記取付脚25の長さ28の方向に沿って整列する。したがって、釣糸ガイド55がより強固に釣竿本体11に固定される。加えて、固定用糸53が整列することにより、前記固定用糸53の外縁の形状がより円に近づき、釣竿10の外観を向上させる。
【0070】
図10および図11は、本実施形態の第4変形例に係る釣糸ガイド60の要部断面図である。これらの図は、取付脚61の断面形状を示している。
【0071】
図10が示すように、本変形例に係る釣糸ガイド60が前記実施形態に係る釣糸ガイド15(図3参照)と異なるところは、取付脚61の形状である。すなわち、釣糸ガイド15の取付脚25の上面29が湾曲面であるのに対し、前記取付脚61の上面62は、屈曲した平面からなり、前記取付脚61の下面30に対して釣竿本体11の径方向の外側に向けて凸形状となるように形成されている。同図では、2つの平面63、64が前記上面62を構成しており、同図において二点鎖線は、前記釣糸ガイド15の上面29の形状を示している。つまり、前記上面62の頂点(平面63、64の接続点および各平面63、64の端)は、前記二点鎖線上に位置する。もっとも、前記上面62の頂点が前記二点鎖線上に位置しなくてもよい。
【0072】
図11が示すように、前記取付脚61の上面62は、さらに多数の平面から構成されてもよい。同図では、前記上面62は、4つの平面65から平面67により構成されている。この場合も、前記上面62の頂点は、前記二点鎖線上に位置するが、前記上面62の頂点が前記二点鎖線上に位置しなくてもよいことは勿論である。
【0073】
図12および図13は、本実施形態の第5変形例に係る釣糸ガイド70の斜視図である。
【0074】
図12(b)は、同図(a)におけるB-矢視図である。図12が示すように、本変形例に係る釣糸ガイド70が前記実施形態に係る釣糸ガイド15(図3参照)と異なるところは、前記取付脚25を備えておらず、リング装着部71に平面72(特許請求の範囲に記載された「第2平面」に相当)が形成されている点である。すなわち、本変形例では、前記平面72が釣竿本体11側に設けられた前記底面45(図4参照)と面接触する。もっとも、この平面72は、前記第1変形例(図7参照)あるいは第2変形例(図8参照)で示された底面45にも適合する。
【0075】
図13が示すように、前記平面72にキー73が形成されていてもよい。同図が示すように、キー73は、断面が矩形の棒状に形成されている。キー73の下面74(特許請求の範囲に記載された「第2平面」に相当)が、前記底面45と面接触する。この場合、釣竿本体11側に設けられた溝42(図4参照)の内壁面形状は、キー73の外形に対応しているのが好ましい。
【0076】
なお、本実施形態および各変形例では、釣糸ガイド15と釣竿本体11との取付構造が示されたが、この取付構造は、すべての釣糸ガイド13~20に適用される。
【符号の説明】
【0077】
10・・・釣竿
11・・・釣竿本体
15・・・釣糸ガイド
22・・・ガイドフレーム
23・・・ガイドリング
24・・・リング装着部
25・・・取付脚
26・・・幅
27・・・肉厚
28・・・長さ
29・・・上面
30・・・下面
32・・・保持部
33・・・連結部
34・・・棒状部材
35・・・棒状部材
41・・・ガイド取付部
42・・・溝
43・・・中心軸
45・・・底面
46・・・側壁面
47・・・側壁面
48・・・幅
49・・・深さ
50・・・長さ
51・・・側面
52・・・側面
53・・・固定用糸
55・・・釣糸ガイド
56・・・細溝
60・・・釣糸ガイド
61・・・取付脚
62・・・上面
63・・・平面
64・・・平面
65・・・平面
66・・・平面
67・・・平面
70・・・釣糸ガイド
71・・・リング装着部
72・・・平面
73・・・キー
74・・・下面

図1
図2
図3
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図5
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図10
図11
図12
図13