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特開2024-90411センシング方法、タッチパネル駆動装置、タッチパネル装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090411
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】センシング方法、タッチパネル駆動装置、タッチパネル装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240627BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G06F3/041 512
G06F3/044 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206309
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505436106
【氏名又は名称】台湾双葉電子股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 正規
(72)【発明者】
【氏名】周 泰伊
(57)【要約】
【課題】タッチパネル表面に水が付着した場合でもタッチ検出性能の低下を抑制する。
【解決手段】タッチパネルに対し、順次、隣接する一対の送信信号線と隣接する一対の受信信号線を選択して安定化期間とセンシング期間の静電容量の変化量を検出する走査を行う第1センシングと、送信信号線と受信信号線の選択状態が第1センシングとは異なるとともにセンシング期間の受信信号線とグランド間の静電容量の変化を検出する走査を行う第2センシングを実行可能なタッチパネル駆動装置のセンシング方法である。第2センシングを行い、得られた検出信号の信号強度に応じた評価値を求め、評価値の時間軸変化に基づいて検出信号が水の影響によるものか否かを判定する。そして水の影響ではないと判定した場合に、第1センシングを行い、得られた検出信号に基づいて座標演算を行って検出情報を出力する。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルに対し、順次、隣接する一対の送信信号線と隣接する一対の受信信号線を選択して安定化期間とセンシング期間の静電容量の変化量を検出する走査を行う第1センシングと、前記送信信号線と前記受信信号線の選択状態が前記第1センシングとは異なるとともにセンシング期間の前記受信信号線とグランド間の静電容量の変化を検出する走査を行う第2センシングを実行可能なタッチパネル駆動装置のセンシング方法であって、
前記第2センシングを行い、得られた検出信号の信号強度に応じた評価値を求め、前記評価値の時間軸変化に基づいて検出信号が水の影響によるものか否かを判定する判定手順と、
検出信号が水の影響によるものではないと判定した場合に、前記第1センシングを行い、得られた検出信号に基づいて座標演算を行って検出情報を出力する第1演算手順と
が行われるセンシング方法。
【請求項2】
前記第2センシングは、前記送信信号線と前記受信信号線の一方を全て選択した状態で、他方について順次、隣接する一対の信号線を選択する走査であり、
前記評価値は、前記第2センシングで得られた個々の検出信号の変化量の絶対値の総和に相当する値である
請求項1に記載のセンシング方法。
【請求項3】
前記判定手順で検出信号が水の影響によるものと判定した場合は、前記第2センシングを行い、得られた検出信号がタッチ操作によるものか否かを判定し、タッチ操作によるものと判定した場合には得られた検出信号に基づいて座標演算を行って検出情報を出力し、タッチ操作によるものではないと判定した場合は、座標演算及び検出情報の出力を行わない第2演算手順とが行われる
請求項2に記載のセンシング方法。
【請求項4】
前記タッチパネル駆動装置は、前記第1センシングについて、信号検出感度の設定をノーマルモードと、前記ノーマルモードより高感度とされた高感度モードが選択可能とされ、
前記判定手順では、前記第2センシングで得られた検出信号の信号強度によって、低感度状態か否かの判定も行い、
前記第1演算手順では前記ノーマルモードで前記第1センシングを行い、
前記判定手順で低感度状態と判定した場合には、前記高感度モードで前記第1センシングを行い、得られた検出信号に基づいて座標演算を行って検出情報を出力する第3演算手順が行われる
請求項1又は請求項3に記載のセンシング方法。
【請求項5】
タッチパネルに対し、順次、隣接する一対の送信信号線と隣接する一対の受信信号線を選択して安定化期間とセンシング期間の静電容量の変化量を検出する走査を行う第1センシングと、前記送信信号線と前記受信信号線の選択状態が前記第1センシングとは異なるとともにセンシング期間の前記受信信号線とグランド間の静電容量の変化を検出する走査を行う第2センシングを実行可能なタッチパネル駆動装置であって、
前記第2センシングを行い、得られた検出信号の信号強度に応じた評価値を求め、前記評価値の時間軸変化に基づいて検出信号が水の影響によるものか否かを判定する処理と、検出信号が水の影響によるものではないと判定した場合に前記第1センシングを行い得られた検出信号に基づいて座標演算を行って検出情報を出力する処理を行う制御装置を備える
タッチパネル駆動装置。
【請求項6】
タッチパネルと、
前記タッチパネルに対し、順次、隣接する一対の送信信号線と隣接する一対の受信信号線を選択して安定化期間とセンシング期間の静電容量の変化量を検出する走査を行う第1センシングと、前記送信信号線と前記受信信号線の選択状態が前記第1センシングとは異なるとともにセンシング期間の前記受信信号線とグランド間の静電容量の変化を検出する走査を行う第2センシングを実行可能なタッチパネル駆動装置を備え、
前記タッチパネル駆動装置は、
前記第2センシングを行い、得られた検出信号の信号強度に応じた評価値を求め、前記評価値の時間軸変化に基づいて検出信号が水の影響によるものか否かを判定する処理と、検出信号が水の影響によるものではないと判定した場合に前記第1センシングを行い得られた検出信号に基づいて座標演算を行って検出情報を出力する処理を行う制御装置を備える
タッチパネル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタッチパネルのセンシング方法、タッチパネルを駆動するタッチパネル駆動装置、及びタッチパネルとその駆動装置を有するタッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルに関して各種の技術が知られており、下記特許文献1には同時に2組(一対の送信信号線と一対の受信信号線)の信号線(電極)のセンシングを行ってタッチ操作位置の検出を行うことで解像度を向上させるセンシング技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-219961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タッチパネルを農業用機械、建設用機械、産業機器などで使用する場合、タッチパネル表面に水が付着したときにも適切にタッチ位置検出ができることが求められる。
しかし、多量の水がタッチパネル表面に付着した場合にタッチ操作と誤判定することがある。例えばタッチパネルの検出感度を上げているような場合に、多量の水がタッチパネルに付着した瞬間の検出信号の強度と、指によるタッチ操作の場合の検出信号の強度が似ていることがあるためである。
【0005】
そこで本発明では、タッチパネル表面に水が付着する場合のある環境下でも精度の高いタッチ操作検出ができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るセンシング方法は、タッチパネルに対し、順次、隣接する一対の送信信号線と隣接する一対の受信信号線を選択して安定化期間とセンシング期間の静電容量の変化量を検出する走査を行う第1センシングと、前記送信信号線と前記受信信号線の選択状態が前記第1センシングとは異なるとともにセンシング期間の受信信号線とグランド間の静電容量の変化を検出する走査を行う第2センシングを実行可能なタッチパネル駆動装置のセンシング方法であって、前記第2センシングを行い、得られた検出信号の信号強度に応じた評価値を求め、前記評価値の時間軸変化に基づいて検出信号が水の影響によるものか否かを判定する判定手順と、検出信号が水の影響によるものではないと判定した場合に、前記第1センシングを行い、得られた検出信号に基づいて座標演算を行って検出情報を出力する第1演算手順とが行われるようにする。
タッチ操作の場合と水滴や多量の水による場合では、検出信号の信号強度が似通う場合があるため、評価値の時間軸変化により判定する。
【0007】
本発明に係るタッチパネル駆動装置、タッチパネル装置は、上記のセンシング方法を実行する装置であり、前記第2センシングを行い、得られた検出信号の信号強度に応じた評価値を求め、前記評価値の時間軸変化に基づいて検出信号が水の影響によるものか否かを判定する処理と、検出信号が水の影響によるものではないと判定した場合に前記第1センシングを行い得られた検出信号に基づいて座標演算を行って検出情報を出力する処理を行う制御装置を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第2センシングの際の信号強度の評価値の時間軸変化により水の影響の有無を判定することで、タッチ操作か水による影響かを精度良く判定できる。これにより水の影響がない場合に第1センシングを行うことで、水による誤検出を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態のタッチパネル及びタッチパネル駆動装置の構成のブロック図である。
図2】実施の形態のタッチパネルのセンシングのための構成の説明図である。
図3】実施の形態のタッチパネル駆動装置の送信回路及び受信回路の説明図である。
図4】実施の形態の受信回路の容量切り替えの構成の説明図である。
図5】実施の形態の走査に応じたタッチ信号検出のブロックの説明図である。
図6】実施の形態の一対の信号線の組に対するタッチ位置の説明図である。
図7】実施の形態のブロックにおける検出パターンの説明図である。
図8】実施の形態の第1センシングの説明図である。
図9】実施の形態の第2センシングの説明図である。
図10】実施の形態の第2センシングでの検出精度の説明図である。
図11】実施の形態の第1センシングでの検出精度の説明図である。
図12】実施の形態の第2センシングのフィンガータッチの際の信号変化の説明図である。
図13】実施の形態の第2センシングの多量の水が付着した際の信号変化の説明図である。
図14】実施の形態のセンシング処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を次の順序で説明する。
<1.タッチパネル装置の構成>
<2.第1センシングと第2センシング>
<3.処理例>
<4.実施の形態の効果及び変形例>
【0011】
<1.タッチパネル装置の構成>
実施の形態のタッチパネル装置1の構成例を図1に示す。
タッチパネル装置1は、各種機器においてユーザインターフェース装置として装着される。ここで各種機器とは、例えば電子機器、通信機器、情報処理装置、製造設備機器、工作機械、車両、航空機、建物設備機器、農業用機器、建設用機器、その他非常に多様な分野の機器が想定される。タッチパネル装置1は、これらの多様な機器製品においてユーザの操作入力に用いる操作入力デバイスとして採用される。
特に実施の形態のタッチパネル装置1は、水滴付着が生じた場合にも検出精度低下を抑えることができるため、屋外や、屋内であっても水の係る可能性のある場所で稼働する機器への装着に適している。
【0012】
図1ではタッチパネル装置1と製品側MCU(Micro Control Unit)90を示しているが、製品側MCU90とは、タッチパネル装置1が装着される機器における制御装置を示しているものである。タッチパネル装置1は製品側MCU90に対してユーザのタッチパネル操作の情報を供給する動作を行うことになる。
【0013】
タッチパネル装置1は、タッチパネル2と、タッチパネル駆動装置3を有する。タッチパネル駆動装置3はセンサIC(Integrated Circuit)4とMCU5を有する。
【0014】
このタッチパネル駆動装置3は、タッチパネル側接続端子部31を介してタッチパネル2と接続される。この接続を介してタッチパネル駆動装置3はタッチパネル2の駆動(センシング)を行う。
また操作入力デバイスとして機器に搭載される際には、タッチパネル駆動装置3は製品側接続端子部32を介して製品側MCU90と接続される。この接続によりタッチパネル駆動装置3は製品側MCU90にセンシングした操作情報を送信する。
【0015】
タッチパネル駆動装置3におけるセンサIC4は、送信回路41、受信回路42、マルチプレクサ43、インターフェース・レジスタ回路44、電源回路45を有する。
【0016】
センサIC4の送信回路41は、マルチプレクサ43によって選択されたタッチパネル2における端子に対して送信信号を出力する。また受信回路42は、マルチプレクサ43によって選択されたタッチパネル2における端子から信号を受信し、必要な比較処理等を行う。
【0017】
図2に送信回路41、受信回路42、マルチプレクサ43とタッチパネル2の接続状態を模式的に示す。
タッチパネル2は、タッチ面を形成するパネル平面に、n本のY電極21-1からY電極21-n、m本のX電極22-1からX電極22-mが配設される。
なおY電極21-1・・・21-n、X電極22-1・・・22-mの各電極を特に区別しない場合は、総称として「Y電極21」「X電極22」と表記する。
【0018】
なお本実施の形態では、第1センシング、第2センシングとして後述するように2つのセンシング方式を行うようにする。
第1センシングでは、Y電極21は送信側の電極、つまり送信信号線として用いられ、X電極22は受信側の電極、つまり受信信号線として用いられる。
第2センシングでは、Y電極21、X電極22は、それぞれ送信信号線として用いられることもあるし、受信信号線として用いられることもある。
【0019】
以下では、タッチパネル装置1の構成と共に第1センシングの説明をしていくが、その場合、Y電極21は送信信号線であり、X電極22は受信信号線となる。
【0020】
Y電極21-1・・・21-nと、X電極22-1・・・22-mは、図示するように交差して配設される場合もあれば、いわゆるシングルレイヤ構造として、交差が生じないように配設される場合もある。いずれにしてもY電極21とX電極22が配設される範囲内でタッチ操作面が形成され、タッチ操作時の容量変化により操作位置が検出される構造となる。
【0021】
図2ではY電極21とX電極22の間で生じる容量を一部のみ例示している(容量C22,C23,C32,C33)が、タッチ操作面の全体に、Y電極21とX電極22の間で生じる容量(例えば交差位置における容量)が存在し、タッチ操作により容量変化が生じた位置が受信回路42により検出されることとなる。
【0022】
送信回路41は、マルチプレクサ43により選択された送信信号線(Y電極21-1・・・21-n)に対して送信信号を出力する。本実施の形態では、マルチプレクサ43が各タイミングで2本ずつ隣接するY電極21を選択していく走査を行う。
受信回路42は、マルチプレクサ43により選択された受信信号線(X電極22-1・・・22-m)からの受信信号を受信する。本実施の形態では、マルチプレクサ43が各タイミングで2本ずつ隣接するX電極22を選択していく。
この送信回路41、受信回路42によるセンシング動作については後述する。
【0023】
図1に戻って説明する。センサIC4のインターフェース・レジスタ回路44には、送信回路41、マルチプレクサ43、受信回路42、電源回路45に対する各種の設定情報がMCU5によって書き込まれる。
送信回路41、マルチプレクサ43、受信回路42、電源回路45は、それぞれインターフェース・レジスタ回路44に記憶された設定情報によって動作が制御される。
またインターフェース・レジスタ回路44には、受信回路42により検出された検出値(説明上「RAW値」ともいう)を記憶し、MCU5が取得できるようにしている。
【0024】
電源回路45は、駆動電圧AVCC等を生成し、送信回路41、受信回路42に供給する。後述するが、送信回路41は駆動電圧AVCC等を用いたパルスをマルチプレクサ43によって選択された送信信号線(例えばY電極21)に印加する。
また受信回路42は、センシング動作の際に、マルチプレクサ43によって選択された受信信号線(例えばX電極22)に対して駆動電圧AVCC等を印加することも行う。
なお、図1で例示する駆動電圧AVCCとは、後述する駆動電圧AVCC1,AVCC2,AVCC3,AVCC4等の総称としている。
【0025】
MCU5はセンサIC4の設定、制御を行う。具体的にはMCU5はインターフェース・レジスタ回路44に対して必要な設定情報を書き込むことで、センサIC4の各部の動作を制御する。
またMCU5は受信回路42からのRAW値をインターフェース・レジスタ回路44から読み出すことで取得する。そしてMCU5は、RAW値を用いて座標計算を行い、ユーザのタッチ操作位置情報としての座標値を製品側MCU90に送信する処理を行う。
【0026】
図1ではMCU5におけるメモリ5Mとして、RAM領域、ROM領域、不揮発性記憶領域などを総括して示している。このメモリ5Mはインターフェース・レジスタ回路44に与える設定情報の記憶に用いられる。またメモリ5Mは、検出されたRAW値やそれに応じたタッチ操作位置情報としての座標値を一時的な記憶領域としても用いられる。
【0027】
また図1では、MCU5において判定制御部5a、検出演算部5bを示している。これらはMCU5においてプログラム(ファームウェア等)により実現される処理機能の一部であり、特に本実施の形態の処理のために設けられる機能を示している。
【0028】
判定制御部5aとはタッチパネル2に対して指による直接行うタッチ(以下「フィンガータッチ」ともいう)や、手にグローブをはめたままで行うタッチ(以下「グローブタッチ」ともいう)の判定や、水の付着の影響を判定するための処理制御を行う機能である。
【0029】
例えば判定制御部5aは、第1センシング、第2センシングの選択や、ノーマルモード、高感度モード、ウォーターモードのモード選択等を行う処理機能である。
ここでいうノーマルモード、高感度モードとは、受信回路42で設定されるタッチ信号強度に対するゲイン設定のモードであり、ノーマルモードとはノーマル感度としてのゲイン設定のモード、高感度モードとは高感度ゲイン設定のモードである。ノーマルモードは高感度モードよりも感度が低いものとされる。ウォーターモードは多量の水が付着していると判定した場合に実行されるモードである。
判定制御部5aは、タッチ操作に際して、いずれのモードが適切かを判定して選択制御を行う。
【0030】
検出演算部5bは、判定制御部5aが選択したモードの設定状態で行った走査により得られたRAW値に基づいて、タッチされた位置を示す情報を生成する処理機能である。すなわちRAW値を用いて座標計算を行い、ユーザのタッチ操作位置情報としての座標値を求める処理を行う。
【0031】
これら判定制御部5a及び検出演算部5bの機能により、後述の図14のような処理が行われる。
【0032】
以上の構成のタッチパネル装置1による第1センシングの動作について説明する。
まず図3によりタッチパネル2に対する送信回路41,受信回路42の動作を説明する。図ではタッチパネル2において2つの送信信号線(Y電極21-2、21-3)と、2つの受信信号線(X電極22-2、22-3)を示している。
【0033】
本実施の形態の第1センシングの場合、先の図2に示したようなY電極21、X電極22に対して、送信回路41と受信回路42が、それぞれ隣接する2本ずつ送信、受信を行っていくことでタッチ操作の検出を行うものとなる。つまり一対のY電極21と一対のX電極22の2本×2本を基本セルとして、順次セル単位で検出走査を行う。図3では、その1つのセルの部分を示していることになる。
【0034】
送信回路41は、2本のY電極21(図の場合ではY電極21-2とY電極21-3)に対して、ドライバ411,412から駆動電圧AVCC1を出力する。つまりドライバ411,412の出力である送信信号T+、T-がマルチプレクサ43によって選択されたY電極21-2,Y電極21-3に供給される。
なお駆動電圧AVCC1は、図1の電源回路45が生成する電圧である。
【0035】
この場合、送信回路41は、ドライバ411からの送信信号T+を図示のように、アイドル(Idle)期間をロウレベル(以下「Lレベル」と表記)とする。例えば0Vとする。そして続くアクティブ(Active)期間にはハイレベル(以下「Hレベル」と表記)とする。この場合、Hレベルの信号として具体的には駆動電圧AVCC1の印加を行う。
【0036】
また送信回路41は、もう一つのドライバ412からの送信信号T-は、アイドル期間をHレベル(駆動電圧AVCC1の印加)とし、続くアクティブ期間はLレベルとする。
ここで、アイドル期間は受信信号R+、R-の電位を安定させる期間であり、アクティブ期間は受信信号R+、R-の電位変化をセンシングする期間となる。
【0037】
このアイドル期間、アクティブ期間において、受信回路42はマルチプレクサ43によって選択された2つのX電極22(図の場合ではX電極22-3,X電極22-2)からの受信信号R+、R-を受信する。
【0038】
受信回路42は、コンパレータ421、基準容量部422、スイッチ423,425、計測用容量部424、演算制御部426、電圧選択部427,428を備えている。
2つの受信信号線(X電極22)からの受信信号R+、R-はコンパレータ421で受信される。コンパレータ421は、受信信号R+、R-の電位を比較して、その比較結果をHレベル又はLレベルで演算制御部426に出力する。
【0039】
基準容量部422を構成するコンデンサの一端には、電圧選択部427を介して、駆動電圧VSS、AVCC4、AVCC3、AVCC2のいずれかが印加される。これらの駆動電圧は、図1の電源回路45が生成する。
基準容量部422を構成するコンデンサの他端はスイッチ423の端子Taを介してコンパレータ421の+入力端子に接続されている。
【0040】
計測用容量部424を構成するコンデンサの一端には電圧選択部428を介して、駆動電圧VSS、AVCC4、AVCC3、AVCC2のいずれかが印加される。なお電圧選択部428では、電圧選択部427と同じ電圧が選択される。
計測用容量部424を構成するコンデンサの他端はスイッチ425の端子Taを介してコンパレータ421の-入力端子に接続されている。
【0041】
スイッチ423、425は、アイドル期間には端子Tiが選択される。従ってアイドル期間にはコンパレータ421の+入力端子(X電極22-3)、-入力端子(X電極22-2)がグランド接続され、受信信号R+、R-はグランド電位となる。
スイッチ423、425は、アクティブ期間には端子Taが選択される。従ってアクティブ期間にはコンパレータ421の+入力端子(X電極22-3)、-入力端子(X電極22-2)に駆動電圧AVCC(例えば駆動電圧AVCC2)が印加される。
【0042】
図3では当該セルが非タッチ状態の場合の受信信号R+、R-の波形を実線で示している。アイドル期間ではスイッチ423、425が端子Tiを選択していることで、受信信号R+、R-は、或る電位(グランド電位)で安定されている。
アクティブ期間となるとスイッチ423、425が端子Taを選択することで、X電極22-3,22-2に駆動電圧AVCC(例えば駆動電圧AVCC2)が印加される。これにより受信信号R+、R-の電位がΔV上昇する。非タッチの状態では、このΔVの電位上昇は、受信信号R+、R-共に発生する。
【0043】
一方、送信回路41側では、アクティブ期間となると、上述のように送信信号T+が立ち上がり、送信信号T-が立ち下がる。これにより、タッチ操作があった場合には、受信信号R+、R-の電位上昇の程度が変化する。
仮に容量C22に影響を与えるA1位置がタッチされた場合、受信信号R-の電位がアクティブ期間において破線で示すようにΔVHだけ上昇する。
また仮に容量C32が変化するA2位置がタッチされた場合、受信信号R-の電位がアクティブ期間において破線で示すΔVLだけ上昇する。
これらのように当該セルに対するタッチ操作位置に応じて、受信信号R-の電位変化量が受信信号R+の電位変化量(ΔV)よりも大きくなったり小さくなったりする。
コンパレータ421はこのような受信信号R+、R-を比較することになる。
【0044】
なお、このように変化する受信信号R+、R-の電位差分自体をRAW値(検出結果)として出力するようにしてもよいが、本実施の形態では受信回路42は、演算制御部426が受信信号R+、R-の電圧バランスがとれるように計測用容量部424の容量値の設定変更を行い、RAW値を得るようにしている。
【0045】
演算制御部426はスイッチ423,425のオン/オフ制御を行う。
また演算制御部426はビット信号BSにより計測用容量部424の容量値の切り替え制御を行う。
また演算制御部426はモード制御信号SSにより基準容量部422の容量値の切り替え制御を行うことで、タッチ信号の検出感度のモード設定を行うことができる。基準容量部422の容量は、走査時には固定値であるが、感度のモードの変更として切り替えが行われる。
【0046】
これら演算制御部426の処理は、インターフェース・レジスタ回路44に書き込まれた設定情報に従って行われる。即ちMCU5による動作設定に基づいて行われる。
また演算制御部426は、コンパレータ421の出力を監視し、RAW値を算出する。演算制御部426で算出されたRAW値はインターフェース・レジスタ回路44に書き込まれることでMCU5が取得可能とされる。
【0047】
以上の図3において可変容量コンデンサの記号で示した計測用容量部424は、例えば図4のように複数、この例では11個のコンデンサCM(コンデンサCM0からコンデンサCM10)と、11個のスイッチSW(スイッチSW0からスイッチSW10)を有して構成されている。また基準容量部422も、計測用容量部424と同様に11個のコンデンサCM(コンデンサCM20からコンデンサCM30)と、11個のスイッチSW(スイッチSW20からスイッチSW30)を有している。
なお「コンデンサCM」「スイッチSW」という表記は、これらのコンデンサ(CM0・・・CM30)やスイッチ(SW0・・・SW30)を総称する場合に用いる。
【0048】
この図4は、図3に示したスイッチ423,425が端子Taに接続された状態(アクティブ期間)での等価回路として示しており、スイッチ423,425の図示は省略している。
【0049】
計測用容量部424におけるコンデンサCM0とスイッチSW0、コンデンサCM1とスイッチSW1・・・コンデンサCM10とスイッチSW10はそれぞれ直列接続される。そして直列接続された11個のコンデンサCMとスイッチSWの組は、駆動電圧AVCC(例えば駆動電圧AVCC2)の電位とコンパレータ421の-入力端子の間に並列に接続されている。
従って、スイッチSW0からスイッチSW10のオン/オフにより、受信信号R-に影響を与える計測用容量部424の容量値を変更できる。この計測用容量部424における各スイッチSWのオン/オフはビット信号BSにより制御される。
またスイッチSW0からスイッチSW10は、それぞれ例えばFET(Field effect transistor)等のスイッチ素子を用いて構成されるが、1つのスイッチSWとして複数のスイッチ素子が設けられる場合もある。
【0050】
基準容量部422におけるコンデンサCM20とスイッチSW20、コンデンサCM21とスイッチSW21・・・コンデンサCM30とスイッチSW30も、それぞれ直列接続される。そして直列接続された11個のコンデンサCMとスイッチSWの組は、駆動電圧AVCC(例えば駆動電圧AVCC2)の電位とコンパレータ421の+入力端子の間に並列に接続されている。
従って、スイッチSW20からスイッチSW30のオン/オフにより、基準容量部422の容量値を変更できる構成である。この基準容量部422における各スイッチSWのオン/オフはモード制御信号SSにより制御される。スイッチSW20からスイッチSW30も、例えばFET等のスイッチ素子を用いて構成される。
【0051】
ここで、走査の際に、計測用容量部424では11ビットのビット信号BSのうちの8ビットにより容量値を256段階に変化させる例を考える。
図4の例では、計測用容量部424は11個のコンデンサCMとスイッチSWの組を備えている例としているが、例えば容量値を256段階に変化させる場合、8個の組があればよい。例えばビット信号BSの各ビットに対応して、スイッチSW0からスイッチSW7のそれぞれがオン/オフされるようにすれば、計測用容量部424における容量値を256段階に変化させることができる。ここで、11個の組を備えるのは、受信感度のモードを変更できるようにしたためである。
【0052】
また、基準容量部422は、256段階の中央値とした固定の容量値、例えば「128」に相当する容量値でよいため、1つのコンデンサCMで構成することが可能である。ところが図のように計測用容量部424と同様に11個の組を備えている目的の1つは、受信感度のモードの変更のためである。
【0053】
図4の上部に、ゲイン設定G0,G1,G2,G3を表記した。
ゲイン設定G0では、コンデンサCM20からコンデンサCM27が用いられる。
ゲイン設定G1では、コンデンサCM21からコンデンサCM28が用いられる。
ゲイン設定G2では、コンデンサCM22からコンデンサCM29が用いられる。
ゲイン設定G3では、コンデンサCM23からコンデンサCM30が用いられる。
【0054】
つまりゲイン設定G0,G1,G2,G3を変更することで、受信信号感度のモードを4段階に変更できる。
例えばゲイン設定G0では、基準容量部422はコンデンサCM20からコンデンサCM27を用いて「128」に相当する容量値を設定する。
実際にはモード制御信号SSとしては、スイッチSW20からスイッチSW30に対応する11ビットの信号であることが想定されるが、ゲイン設定G0の場合、モード制御信号SSにおけるスイッチSW28,SW29,SW30については常にオフ制御する論理値となる。そしてスイッチSW20からスイッチSW27に対応する各ビットが所定値に設定されることで、コンデンサCM20からコンデンサCM27を用いて「128」に相当する容量値とされる。なお、8個のコンデンサCMを用いることで、基準容量部422における容量値、即ち「128」に相当する容量値を調整することができる。
【0055】
同様に、例えばゲイン設定G1では、基準容量部422はコンデンサCM21からコンデンサCM28を用いて「128」に相当する容量値を設定する。またゲイン設定G2では、基準容量部422はコンデンサCM22からコンデンサCM29を用いて「128」に相当する容量値を設定し、ゲイン設定G3では、基準容量部422はコンデンサCM23からコンデンサCM30を用いて「128」に相当する容量値を設定する。
【0056】
このように受信感度を変更する各ゲイン設定に応じて、計測用容量部424も、コンデンサCMが次のように用いられる。
ゲイン設定G0のときはコンデンサCM0からコンデンサCM7が用いられる。
ゲイン設定G1のときはコンデンサCM1からコンデンサCM8が用いられる。
ゲイン設定G2のときはコンデンサCM2からコンデンサCM9が用いられる。
ゲイン設定G3のときはコンデンサCM3からコンデンサCM10が用いられる。
【0057】
例えばゲイン設定G0のときは、計測用容量部424はコンデンサCM0からコンデンサCM7を用いて容量値を256段階に変化させる。
実際にはビット信号BSは、スイッチSW0からスイッチSW10に対応する11ビットの信号であることが想定されるが、ゲイン設定G0の場合、ビット信号BSにおけるスイッチSW8,SW9,SW10に対応するビットは常にオフ制御する論理値となる。そしてスイッチSW0からスイッチSW7に対応する各ビットを変化させることで、コンデンサCM0からコンデンサCM7を用いて容量値を256段階に可変する。
【0058】
基準容量部422及び計測用容量部424における各コンデンサの容量値は、例えば次のようにされている。
コンデンサCM0,CM20は2fF(フェムトファラッド)、コンデンサCM1,CM21は4fF、コンデンサCM2,CM22は8fF、コンデンサCM3,CM23は16fF、コンデンサCM4,CM24は32fF、コンデンサCM5,CM25は64fF、コンデンサCM6,CM26は128fF、コンデンサCM7,CM27は256fF、コンデンサCM8,CM28は512fF、コンデンサCM9,CM29は1024fF、コンデンサCM10,CM30は2048fFである。
【0059】
なお図4では各コンデンサCMはそれぞれ1つのコンデンサにより構成しているが、コンデンサCMの全部又は一部は、複数のコンデンサにより構成され、合成容量が上記の容量値となるようにしてもよい。
【0060】
例えばゲイン設定G0の場合、コンデンサCM0からコンデンサCM7は、ビット信号BSの11ビットのうちで、ビット“0”からビット“7”の8ビットの値で選択される。コンデンサCM0及びスイッチSW0がビット“0”、コンデンサCM1及びスイッチSW1がビット“1”、・・・コンデンサCM7及びスイッチSW7がビット“7”として機能する。
そして、この8ビットの値として0(=「00000000」)から255(=「11111111」)の容量設定値が与えられる。容量設定値はMCU5がインターフェース・レジスタ回路44に書き込む設定情報の一つである。
受信回路42では、この8ビットの容量設定値に応じてスイッチSW0~SW7がオン/オフされる。即ちスイッチSW0~SW7は対応するビットが「0」であればオフ、「1」であればオンとなる。これにより計測用容量部424の全体の容量値が0fF~510fFの範囲で256段階に可変されることになる。
【0061】
一方、受信信号R+側の基準容量部422のコンデンサCM20からコンデンサCM27により設定される容量値、即ち「128」に相当する容量値は例えば256fFとされる。
【0062】
上述のように受信信号R-は、タッチの有無及び位置によってアクティブ期間の波形の電位上昇の程度が変わる。受信信号R+の波形上昇程度(ΔV)より大きくなったり小さくなったりする。
図4の構成では、計測用容量部424の容量設定値を変更していくことで受信信号R-の波形の電位上昇程度を変化させることができ、例えば受信信号R+と同等となる計測用容量部424の容量設定値を見つけ出すことができる。
【0063】
例えば図4の受信信号R-の破線で示す波形Sg1が初期状態であったとしたときに、計測用容量部424の容量を小さくすれば受信信号R-は波形Sg2のように波形Sg1より小さくなる。また、計測用容量部424の容量を大きくすれば受信信号R-は波形Sg3のように波形Sg1より大きくなる。
つまり、コンパレータ421で受信信号R+、R-の電圧レベルが同等となったときの計測用容量部424の容量設定値は、タッチによる受信信号R-の電圧変化に相当する値と等価となる。
【0064】
従って、コンパレータ421の出力をみながら計測用容量部424の容量設定値を順次変化させていき、受信信号R+、R-のアクティブ期間の電圧が同等となる容量設定値を探索する。すると探索された容量設定値を、タッチ操作のセンシング情報としてのRAW値とすることができる。
【0065】
以上はゲイン設定G0の例で説明したが、他のゲイン設定の場合もRAW値の検出方式を同様に考えることができる。つまり基準容量部422で「128」に相当する容量値の設定に用いる8個のコンデンサCMと、計測用容量部424で256段階の容量値変化に用いる8個のコンデンサCMが、ゲイン設定毎に上述のように異なるものとされる。
【0066】
ゲイン設定については、ゲイン設定G3、G2、G1、G0の順に従ってタッチ信号の検出を高感度化することができる。具体的には、ゲイン設定G3、G2、G1、G0の順に従って選択されるコンデンサCMの容量値は小さくなるため、1分解能当たりの電圧を細かく検出することができるようになる。そのため、より微小な静電容量(電圧)の変化を大きなRAW値の変化量として増幅して検出することが可能となる。例えば図4の例の場合、ゲイン設定を1段階、高感度側に切り替えると、RAW値の変化量としては2倍に増幅して検出できる。
【0067】
以上のような構成において、本実施の形態では、フィンガータッチとグローブタッチのいずれであっても精度のよいタッチ検出ができるようにしている。これは、ゲイン設定による受信感度モードを自動的に最適な状態に切り替えることで実現する。
【0068】
直接指でタッチするフィンガータッチの場合と、グローブをはめた状態でタッチするグローブタッチの場合とでは、タッチ信号強度に差が生じ、また、グローブでも種類、例えば布製や革製などの違いによってタッチ信号強度が大小異なる場合がある。このため、グローブタッチやフィンガータッチによって、適切な感度(ゲイン設定)が異なる。
【0069】
そのため本実施の形態では、タッチ操作の際の信号強度に応じて、ノーマル感度のゲイン設定のモード(「ノーマルモード」という)と、高感度のゲイン設定のモード(「高感度モード」という)を選択できるようにしている。
【0070】
ところで本実施の形態の第1センシングでは、セルサイズよりも細かい分解能でタッチ位置座標を求めることができる。
【0071】
図5A図5B図5Cにおけるマス目の1つは、上述のセル、即ち2つの送信信号線(Y電極21)と2つの受信信号線(X電極22)の組を示している。
4×4の16個のセルを1つのブロックBKとして示しているが、ブロックBKの各セルのRAW値を図5Dのように「a」から「p」で表すこととする。この「a」から「p」は、それぞれ各セルを走査したときのRAW値である。例えば、図5AのブロックBKについていえば、「a」は斜線を付したセルのRAW値となる。
【0072】
受信回路42においては、各セルについて、上述のように256段階の分解能でRAW値を検出する走査を行うが、MCU5では、各セルのRAW値から、タッチ位置座標を求める。
その場合、このブロックBKとする16個のセルの選択を図5A図5B図5Cのように順次切り替えながら、RAW値のパターンを判定する。
【0073】
図6には或る1つのセルと、そのセルに対するタッチ位置を「A」「B」「C」「D」として示している。
タッチ位置が「A」の場合、当該セルを含む16セルのブロックBKにおいて、図7のAパターンのRAW値が得られる。「+」はRAW値が128より大きい値、「-」はRAW値が128より小さい値となることを示している。なお「128」はRAW値が128付近にあることを意味する。容量変化のないセルのRAW値が常に厳密に「128」となるわけではなく、若干変動するためである。
同様にタッチ位置が図6の「B」「C」「D」のそれぞれの場合、当該セルを含むブロックBKにおけるRAW値のパターンが、図7のBパターン、Cパターン、Dパターンとなる。
このようなパターンを検出することで、MCU5では、セルサイズよりも細かい分解能でタッチ位置座標を求めることができる。
【0074】
<2.第1センシングと第2センシング>
第1センシングと第2センシングの違いについて説明する。第1センシングと第2センシングではX電極22とY電極21に対する走査方式が異なる。
第1センシングの走査については先にも触れたが、図8に模式的に示している。
【0075】
図8では実線が走査で選択中のY電極21とX電極22を示し、破線は選択されていないY電極21とX電極22を示している。
ある時点で、図のように送信信号線である一対のY電極21-1,21-2、受信信号線である一対のX電極22-1,22-2が選択されている。この状態で、図3図4で説明したようにアイドル期間とアクティブ期間の処理が行われ、RAW値の検出が行われる。
【0076】
次のタイミングでは、送信信号線がY電極21-2,21-3とされ、RAW値の検出が行われる。
次のタイミングでは、送信信号線がY電極21-3,21-4とされ、RAW値の検出が行われる。
その後、Y電極21-(n-1)、21-n(図2参照)が選択されてRAW値の検出が行われるまで、送信信号線の組が切り替えられていく。
【0077】
次のタイミングでは、送信信号線がY電極21-1,21-2に戻され、一方、受信信号線がX電極22-2,22-3に切り替えられる。その状態でRAW値の検出が行われる。
次のタイミングでは、送信信号線がY電極21-2,21-3とされ、RAW値の検出が行われる。つまり順次、Y電極21-(n-1)、21-nが選択されてRAW値の検出が行われるまで、送信信号線の組が切り替えられていく。
【0078】
以上のような切り替えが、受信信号線がX電極22-(m-1)、22-mの状態で、送信信号線がY電極21-1,21-2の組からY電極21-(n-1)、21-nの組に至るまで行われる。
【0079】
以上が1フレームの走査となる。
このように2本の送信信号線と2本の受信信号線が順次シフトしてスキャンが行われることで、1フレームではX電極22の組数とY電極21の組数を乗算した数のRAW値が検出される。
【0080】
図9A図9Bは第2センシングの動作を模式的に示している。
図9Aでは、全てのY電極21が実線で示されているが、これは全てのY電極21に送信信号T+が与えられている状態を示している。
【0081】
この状態で、受信信号線としてX電極22-1、22-2の組が選択され、図3図4で説明した動作で1回のRAW値の検出が行われる。
次のタイミングでは、受信信号線としてX電極22-2、22-3の組が選択され、1回のRAW値の検出が行われる。
これがX電極22-(m-1)、22-mの組が選択されるまで切り替えられる。
【0082】
続いて図9Bに示すように、全てのX電極22が実線で示されているが、これは全てのX電極22に送信信号T+が与えられている状態を示している。
つまり図9AのようにY電極21が送信信号線とされる状態から、X電極22が送信信号線とされる状態に切り替えられる。
なお、このような切り替えは、マルチプレクサ43(図2参照)が送信回路41,受信回路42と、Y電極21、X電極22の接続を切り替えることで実現できる。
【0083】
この状態で、受信信号線としてY電極21-1、21-2の組が選択され、図3図4で説明した動作で1回のRAW値の検出が行われる。
次のタイミングでは、受信信号線としてY電極21-2、21-3の組が選択され、1回のRAW値の検出が行われる。
これがY電極21-(n-1)、21-nの組が選択されるまで切り替えられる。
【0084】
以上で1フレームの走査となる。
このように2本の受信信号線が順次シフトしてスキャンが行われることで、1フレームではX電極22の組数とY電極21の組数を加算した数のRAW値が検出される。
従って第2センシングは第1センシングよりも1フレームの走査が短時間で実行可能となる。
【0085】
なお第2センシングの場合、一対の送信信号線に送信信号T+、T-が与えられるのではなく、全ての送信信号線に送信信号T+が与えられる。
また図3に示したアイドル期間とアクティブ期間のような信号レベルの逆転は行わずに、図9Cのように、RAW値検出のためのセンシング期間に送信信号T+はHレベルを継続する。送信信号T+は、受信信号線の切り替わりのタイミングでLレベルとなるのみである。
【0086】
この第2センシングは、いわゆる自己容量方式と言え、受信回路42は、受信信号線とグランドの間の静電容量の変化によりRAW値を検出することになる。水滴が付着しても、わずかな水滴でグランドと接続されていなければ受信信号線とグランド間の静電容量に変化はない。
一方、指で触ると、人体はグランドと接続されているので、受信信号線とグランド間の静電容量に変化が生じることになる。従って、指で触った場合を、水滴が付着した場合と切り分けられる。
【0087】
これに対して第1センシングは相互静電容量方式であり、送信信号線と受信信号線の間の静電容量の変化を検出する。
つまり第1センシングは、2本の送信信号線(Y電極21)の論理を逆にした信号波形を、アイドル期間はLレベルとHレベルの波形、アクティブ期間はHレベルとLレベルの波形に入れ替えてスキャンを行い、アイドル期間からアクティブ期間の受信信号線の差分をとり信号変化量としてRAW値を検出する方式である。
この場合に、水滴が付着すると、水滴により静電容量が増加するため、検出値が変化する。また指で触ると、指が静電容量を減少させるため検出値が変化することになる。
【0088】
第1センシングと第2センシングでは、第2センシングの方が1フレームのセンシングを高速化できるが、タッチ検出精度は第1センシングの方が高い。
第2センシングの場合、上記の走査方式のため、タッチパネル面上で複数箇所をタッチした場合には、座標を絞りきれない場合があるためである。
図10には、X電極22よるX座標値(X0,X1,X2,X3)とY電極21よるY座標値(Y0,Y1,Y2,Y3)を例示している。
この場合に図のように指で座標(X2,Y0)(X1,Y3)の2箇所をタッチしたとする。するとタッチの検知結果としてX座標値でX1,X2が検出され、Y座標値でY0,Y3が検出される。これにより図示の4箇所が接触位置として推定されてしまう。
【0089】
一方、第1センシングの場合は、図11に示すように、タッチの検知結果として座標(X2,Y0)(X1,Y3)の2箇所が正しく接触位置として検出される。従って、上述のノーマルモードや高感度モードでは、第1センシングを用いることが望ましい。
【0090】
<3.処理例>
以上の第1センシングと第2センシングを用いた具体的な処理例を説明する。
先に第1センシングでのノーマルモードや高感度モードについて述べたが、センシングの際には、ノーマルモードと高感度モードのうちで適切なモードを自動的に選択して、タッチ位置検出を行うことで、フィンガータッチであってもグローブタッチであっても適切にタッチ位置検出できる。
【0091】
このためには、タッチ信号強度に閾値を設け、閾値以上の場合はノーマルモード、閾値未満の場合には高感度モードを選択するようにすることが考えられる。
例えば実際のタッチ検出のスキャンに先立って、第1センシングの高感度モードでスキャンを行い、そのときのタッチ信号強度を検出して、モード選択を行う。
【0092】
ところが多量の水がタッチパネル2に付着した場合、多量の水をフィンガータッチと誤認識する場合がある。理由は、多量の水がタッチパネル2に付着した瞬間の信号強度とフィンガータッチの場合の信号強度が酷似しているためである。
また、フィンガータッチと誤認識し、ノーマルモードとしてしまうと、水による信号強度がノーマルモードのフィンガータッチ判定の閾値を超え、タッチ反応が発生し、誤反応、誤動作が発生するおそれがある。
【0093】
そこで本実施の形態では、まずモード判定のためのスキャンには第2センシングを用いることとする。これにより少量の水(水滴等)であればタッチ反応が生じない。
但し多量の水がかかった瞬間や流水、或いはその上でタッチしたような場合は誤判定の可能性が残る。次の理由による。
第2センシングのスキャン中は、選択されない受信信号線はグランド電位に設定されている。多量の水が付着した受信信号線は、水によって隣接する受信信号線(グランド電位)との容量結合が強まる。よって、多量の水が付着した部分のセルの静電容量の変化が大きくなってしまう。これによって、多量の水の付着によりタッチのような反応が得られる場合が生じる。
そこで第2センシングでの信号強度に応じた評価値を求め、その評価値と上昇速度(傾き)から多量の水か指かを識別することとする。
【0094】
信号強度に応じた評価値とは、第2センシングで検出された個々のRAW値(静電容量の変化量)の2乗の総和とする。
例えば1フレームのスキャンでX電極22の組数とY電極21の組数を加算した数のRAW値が得られるため、その各RAW値を2乗して総和を求める。2乗するのは変化量を絶対値として捉えるためである。
【0095】
通常のフィンガータッチの場合の評価値の変化を図12に示し、多量の水がかかったときの評価値の変化を図13に示している。図12図13の縦軸は評価値、横軸はスキャンのフレームであり、1フレームの走査毎の評価値の変化を時系列で表している。
【0096】
図12のようにフィンガータッチがあった場合は、比較的、評価値の上昇が急峻となる。一方図13のように、多量の水がかかった場合は、評価値の上昇速度がフィンガータッチと比較してかなり遅い。これは、水がタッチパネル2に付着したときには水の面積が小さいが、その後、水が流れて面積が徐々に広がるため、評価値も徐々に上昇すると考えられる。
従って破線矢印で示す様な評価値の上昇の傾きを閾値と比較することで、フィンガータッチと多量の水とを区別できる。
【0097】
傾きによるフィンガータッチか水かの判定は、例えば各スキャンフレームの際に過去数フレーム分の評価値の移動平均値を算出し、前フレーム時点の移動平均値と、今回の移動平均値の差分が閾値以上となったか否か、などとして行えばよい。
【0098】
タッチパネル駆動装置3におけるMCU5の具体的な処理例を図14に示す。
図14はMCU5において判定制御部5a、検出演算部5bの機能により実行される処理例である。図14の処理は、タッチパネル2による操作検出の終了(例えば電源オフ)となるまで繰り返される。
【0099】
MCU5はステップS101でモード判定のために、第2センシングとしてのスキャン制御を行う。即ちMCU5は送信回路41、受信回路42に第2センシングを指示して走査を実行させる。これにより第2センシングが実行され、MCU5は走査の結果として、今回のフレームの各セルのRAW値を取得する。
【0100】
MCU5はこの場合のRAW値に基づいて評価値を演算し、有意な値が得られれば、タッチ操作か或いは多量の水の影響が生じていると判定できる。
なお、このステップS101の第2センシングは、図9A図9Bの走査で1フレームとするが、例えば図9Aの走査のみ、或いは図9Bの走査のみを1フレームの第2センシングとして実行してもよい。タッチ位置の座標検出を目的としないためである。
【0101】
ステップS101の第2センシングで操作の可能性を示す有意なRAW値が得られなければ、タッチ操作は行われていないと判定して、MCU5はステップS102からステップS101に戻り、次のフレームのスキャンを行う。
タッチ操作が行われていない場合に加え、第2センシングであるため若干の水滴が付着しているような場合も有意なRAW値が検出されないでステップS101に戻ることになる。
【0102】
フィンガータッチやグローブタッチが行われた場合や多量の水がかかった場合は、ステップS101の第2センシングにより、ある程度の有意なRAW値が検出される。その場合は、MCU5はステップS102からステップS103に進み、今回のフレームでの評価値が閾値th1を越えているか否かを判定する。
閾値th1は、フィンガータッチとグローブタッチを判定するための値として設定されている。
【0103】
MCU5は、評価値が閾値th1以下であった場合は、グローブタッチが行われたと判定し、ステップS107に進んで高感度モードを選択して実際のタッチ位置判定のための走査制御を行う。即ちMCU5は送信回路41、受信回路42に第1センシングの高感度モードによる走査を実行させる。受信回路42はこれに応じて、例えばゲイン設定G0のモードで各セルの走査を行う。この走査の結果としてMCU5は各セルのRAW値を取得する。
【0104】
そしてMCU5は取得した各セルのRAW値を用いてステップS111で感知されたセルのパターン検出(図7参照)を行い、ステップS112でパターンに基づいて座標演算処理を行ってタッチ位置を特定し、ステップS113で座標レポートを製品側MCU90に出力する。
【0105】
ステップS103で評価値が閾値th1を越えていた場合は、MCU5はステップS104に進む。この場合は、フィンガータッチか多量の水の影響による有意なRAW値としての信号検出の可能性がある。そこでMCU5は評価値の傾きの大小を判定する。例えば上述のように移動平均値の差分が所定の閾値以上であるか否かを判定する。この閾値は図12図13のような傾きの差を区別するために設定された値である。
【0106】
傾きが大と判定した場合は、MCU5はフィンガータッチと判定してステップS105に進み、ノーマルモードを選択して実際のタッチ位置判定のための走査制御を行う。即ちMCU5は送信回路41、受信回路42に第1センシングのノーマルモードによる走査を実行させる。受信回路42はこれに応じて、例えばゲイン設定G2のモードで各セルの走査を行う。この走査の結果としてMCU5は各セルのRAW値を取得する。
【0107】
そしてMCU5は取得した各セルのRAW値を用いてステップS108で感知されたセルのパターン検出を行い、ステップS112でパターンに基づいて座標演算処理を行ってタッチ位置を特定し、ステップS113で座標レポートを製品側MCU90に出力する。
【0108】
ステップS104で傾きが小と判定した場合は、MCU5は多量の水による影響があったと判定する。この場合、多量の水が付着したパネル面で、ユーザがタッチ操作を行った場合と、タッチ操作が行われていないのにある程度の信号強度が検出された場合がある。
そこでMCU5はステップS106に進み、ウォーターモードを選択してタッチ位置判定のための走査制御を行う。即ちMCU5は送信回路41、受信回路42に第2センシングによる走査を実行させる。これにより第2センシングが実行され、MCU5は走査の結果として、今回のフレームの各セルのRAW値を取得する。
【0109】
なお、このステップS106のウォーターモードでの第2センシングは、図9A図9Bの走査で1フレームとする。タッチ位置の座標検出を行うためである。
【0110】
第2センシングでは、本来は水滴では受信信号線とグランド間の静電容量の変化は生じないか或いは小さい。しかし水の付着があっても実際にユーザがタッチしていた場合や、多量の水により受信信号線を介したグランドとの接続が生じ容量結合が強まる場合は、静電容量の比較的大きい変化が検出される。
そこで、第2センシングによって、静電容量の変化によってタッチ操作に応じたRAW値が検出された場合は、MCU5はステップS109で感知されたセルのパターン検出を行う。
【0111】
ウォーターモードでは、第2センシングで取得されたRAW値パターンによってタッチ操作か多量の水による影響かを区別する。タッチ操作の場合は、「128」より大きいRAW値(+)と「128」より小さいRAW値(-)が隣り合って検出される。例えば隣接するセルで「+」「+」「-」「-」という並びとなるパターンである。
一方で、多量の水の場合は、「128」より大きいRAW値(+)と「128」より小さいRAW値(-)の間に、「128」のRAW値が入る。例えば隣接するセルで「+」「128」「-」「-」という並びとなるパターンである。
MCU5はこのようなパターンの違いにより、タッチか多量の水かを判定する。
【0112】
MCU5は、タッチ操作としてのパターンが検知された場合は、実際のタッチ操作があったとしてステップS110からステップS112に進み、座標演算処理を行ってタッチ位置を特定する。そしてMCU5はステップS113で座標レポートを製品側MCU90に出力する。
【0113】
一方、静電容量の変化を感知したセルのパターンとして、多量の水と判定した場合は、多量の水による影響とし、ステップS110からステップS101に戻る。つまり座標演算処理及び座標レポートの処理を行わない。これにより誤検出を回避する。
【0114】
以上の処理によりMCU5は、第2センシングによって得られる評価値の信号強度によってノーマルモードと高感度モードのうちで適切なモードを選択し、さらに評価値の傾きによって、ノーマルモードとウォーターモードを選択するスキャン制御を行うことになる。
【0115】
<4.実施の形態の効果及び変形例>
以上の実施の形態で説明したタッチパネル装置1、タッチパネル駆動装置3において行われるセンシング方法によれば、次のような効果が得られる。
【0116】
実施の形態では、タッチパネル2に対し、順次、隣接する一対の送信信号線と隣接する一対の受信信号線を選択して安定化期間とセンシング期間の静電容量の変化量を検出する走査を行う第1センシングと、送信信号線と受信信号線の選択状態が第1センシングとは異なるとともにセンシング期間の受信信号線とグランド間の静電容量の変化を検出する走査を行う第2センシングを実行可能なタッチパネル駆動装置3を示した。そして、タッチパネル駆動装置3は、第2センシングを行い、得られた検出信号の信号強度に応じた評価値を求め、評価値の時間軸変化に基づいて検出信号が水の影響によるものか否かを判定する判定手順(図14のステップS101からS104)と、検出信号が水の影響によるものではないと判定した場合に、第1センシングを行い、得られた検出信号に基づいて座標演算を行って検出情報を出力する第1演算手順(ステップS105、S108、S112、S113)とが行われるものとした。
【0117】
評価値の時間軸変化により、フィンガータッチとしてのタッチ操作と、水の影響を判定できることにより、多量の水がタッチパネル2に付着したような場合でも、誤検出を防止できるようになり、タッチパネルの検出性能を向上させることができる。
【0118】
即ち、評価値の時間軸変化によりフィンガータッチと多量の水や流水の影響がある場合とを識別することで、実行するセンシングモードの判定の正確性が向上する。これにより流水や多量の水がかかったときを除いてノーマルモードとすることができるため、誤反応が発生することを防止できる。
またこのようなモード判定のために第2センシングを用いることによって、状態検知およびモード判定時の時間短縮や処理データ量の縮小化ができる。
【0119】
実施の形態の第2センシングは、送信信号線と受信信号線の一方を全て選択した状態で、他方について順次、隣接する一対の信号線を選択する走査であり、評価値は、第2センシングで得られた個々の検出信号の変化量の絶対値の総和に相当する値とした。例として評価値は、第2センシングで得られた個々の検出信号の変化量の2乗の総和の値であるとした。
このような第2センシングによっては、水滴感知の変化が少なく、フィンガータッチに対する感知の変化が大きいものとなる。従って1フレームの走査において、+方向、-方向の信号変化の絶対値の総和で信号強度に相当する評価値を求める。
この評価値の時間軸変化によってタッチ操作と、水の影響を判定できる。
【0120】
実施の形態では、判定手順で検出信号が水の影響によるものと判定した場合は、ウォーターモードとして第2センシングを行う。そして得られた検出信号がタッチ操作によるものか否かを判定し、タッチ操作によるものと判定した場合には得られた検出信号に基づいて座標演算を行って検出情報を出力し、タッチ操作によるものではないと判定した場合は、座標演算及び検出情報の出力を行わない第2演算手順(ステップS106、S109、S110、S112、S113)が行われるものとした。
多量の水の影響を受ける場合でも、水のみの場合と、水がある上からフィンガータッチが行われる場合がある。そこでこの場合は第2センシングを行う。第2センシングは、水に対する感知の変化が少なく、フィンガータッチに対する感知の変化が大きいので、タッチ操作があった場合に、水のある環境でも指の位置(座標)を正確に特定できる。また、多量の水の影響と判定した場合は、座標演算及び検出情報の出力を行わないことで、不要な処理が行われることを回避するとともに、水による誤検出を回避できる。
【0121】
実施の形態では、タッチパネル駆動装置3は、第1センシングについて、信号検出感度の設定をノーマルモードと、より高感度とされた高感度モードが選択可能とされ、判定手順では、第2センシングで得られた検出信号の信号強度によって、低感度状態か否かの判定も行い、第1演算手順ではノーマルモードで第1センシングを行い、判定手順で低感度状態と判定した場合は、高感度モードで第1センシングを行い、得られた検出信号に基づいて座標演算を行って検出情報を出力する第3演算手順(ステップS107、S111、S112、S113)がさらに行われるものとした。
これによりグローブタッチにも対応して、精度の良いタッチ検出を行うことができるようになる。
さらに、第2センシングにおける信号の上昇速度と強度の両方を用いて条件判定することによって、指、グローブ、水滴、多量の水の4つの状態を識別することも可能となる。
【0122】
なお実施の形態のタッチパネル装置1では、実際にパネル面に触れるタッチ操作を行うものとして説明したが、本発明はタッチと同等の操作を行う、いわゆるホバーセンシング(非接触近接操作)に対応するタッチパネル装置も含むものであり、その場合も、上記同様のセンシング手法を適用できる。即ち本発明及び実施の形態でいう「タッチ」とは、非接触近接操作状態も含む。
【符号の説明】
【0123】
1 タッチパネル装置
2 タッチパネル
3 タッチパネル駆動装置
4 センサIC
5 MCU
5a 判定制御部
5b 検出演算部
5M メモリ
21 Y電極
22 X電極
41 送信回路
42 受信回路
43 マルチプレクサ
44 インターフェース・レジスタ回路、
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