(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090416
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ズームレンズおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 15/16 20060101AFI20240627BHJP
G02B 15/167 20060101ALI20240627BHJP
G02B 15/20 20060101ALI20240627BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20240627BHJP
【FI】
G02B15/16
G02B15/167
G02B15/20
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206320
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】時田 知樹
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087MA14
2H087MA18
2H087NA07
2H087NA14
2H087PA08
2H087PA10
2H087PA11
2H087PA17
2H087PA18
2H087PB08
2H087PB11
2H087PB12
2H087QA02
2H087QA06
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA32
2H087QA37
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA36
2H087RA44
2H087SA14
2H087SA16
2H087SA19
2H087SA20
2H087SA24
2H087SA26
2H087SA30
2H087SA32
2H087SA44
2H087SA46
2H087SA50
2H087SA52
2H087SA55
2H087SA56
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA72
2H087SA75
2H087SA76
2H087SB04
2H087SB14
2H087SB16
2H087SB23
2H087SB24
2H087SB25
2H087SB32
2H087SB42
(57)【要約】
【課題】高い光学性能と軽量の防振群を含む小型のズームレンズを提供する。
【解決手段】ズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された複数のレンズ群として、負の第1レンズ群L1と、正の第2レンズ群L2と、後群を構成する少なくとも1つのレンズ群とを有する。ズーミングに際して、第1レンズ群は不動であり、第2レンズ群は移動する。第2レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された第1部分群L2aと第2部分群L2bを有する。第2部分群は、防振に際して光軸に直交する方向に移動する。第1レンズ群の焦点距離をf1、第2レンズ群の焦点距離をf2、広角端におけるバックフォーカスをBfw、ズームレンズの広角端における焦点距離をfwとするとき、-1.50≦f1/f2≦-0.30、0.10≦Bfw/fw≦0.85なる条件を満足する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に配置された複数のレンズ群として、負の屈折力の第1レンズ群と、正の屈折力の第2レンズ群と、後群を構成する少なくとも1つのレンズ群とを有し、広角端と望遠端との間のズーミングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化するズームレンズであって、
ズーミングに際して、前記第1レンズ群は不動であり、前記第2レンズ群は移動し、
前記第2レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された第1部分群と第2部分群を有し、
前記第2部分群は、防振に際して光軸に直交する方向に移動し、
前記第1レンズ群の焦点距離をf1、前記第2レンズ群の焦点距離をf2、広角端におけるバックフォーカスをBfw、前記ズームレンズの広角端における焦点距離をfwとするとき、
-1.50≦f1/f2≦-0.30
0.10≦Bfw/fw≦0.85
なる条件を満足することを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
前記第2レンズ群における最も物体側のレンズの焦点距離をf21とするとき、
-1.65≦f21/f1≦-0.50
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記第2部分群の焦点距離をf2bとするとき、
1.00≦|f2b/fw|≦3.00
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項4】
望遠端における前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の光軸上の間隔をD12t、前記ズームレンズの光学全長をTTLとするとき、
0.005≦D12t/TTL≦0.023
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記ズームレンズの光学全長をTTL、前記ズームレンズの望遠端における焦点距離をftとするとき、
1.00≦TTL/ft≦3.50
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項6】
-2.00≦f1/fw≦-1.00
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項7】
0.80≦f2/fw≦4.00
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項8】
前記第2レンズ群における最も物体側のレンズの焦点距離をf21とするとき、
0.80≦f21/fw≦2.90
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項9】
前記第2レンズ群における最も物体側のレンズのシェイプファクターをχ21とするとき、
-2.00≦χ21≦-0.50
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項10】
前記第1レンズ群は、負の屈折力の2つのレンズと正の屈折力の1つのレンズを少なくとも含むことを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項11】
前記第1レンズ群は、最も物体側に、物体側へ凸面を向けた負メニスカスレンズを含むことを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項12】
前記第2レンズ群は、開口絞りを有し、
ズーミングに際して前記第2レンズ群と前記開口絞りが一体で移動することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項13】
前記第2レンズ群は、3つ以上5つ以下のレンズにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項14】
前記第1部分群は、2つ以下の光学要素で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項15】
フォーカシングに際して、前記後群に含まれる全てのレンズ群または一部のレンズ群が移動することを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項16】
ズーミングに際して、前記ズームレンズにおける最も像側に配置されたレンズ群は不動であることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載のズームレンズを有することを特徴とする光学機器。
【請求項18】
前記ズームレンズにより形成される光学像を光電変換する撮像素子を有することを特徴とする請求項17に記載の光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、放送用カメラ、銀塩フィルム用カメラおよび監視用カメラ等の撮像装置に好適なズームレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
広角で高い光学性能を有し、高速ズーミングが可能なズームレンズとして、物体側から像側へ順に配置された、ズーミングに際して不動(固定)の負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、後群とを有するものがある。また、ズームレンズには、第1レンズ群以外の軽量なレンズ群を光軸に直交する方向に移動させて像振れを補正する防振機能を有するものがある。
【0003】
特許文献1には、物体側から順に配置された負、正、正および負の屈折力を有するレンズ群により構成され、ズーミングに際して第1レンズ群が固定で、第2レンズ群等のレンズ群の少なくとも一部を防振群とするズームレンズが実施例5に開示されている。また特許文献2には、物体側から順に配置された負、正、正および負の屈折力を有するレンズ群により構成され、ズーミングに際して第1レンズ群が固定で、第2レンズ群等のレンズ群を防振群とするズームレンズが実施例6に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-61184号公報
【特許文献2】特開平8-248312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1レンズ群が固定で第2レンズ群が防振群であるズームレンズにおいて、ズーム全域で高い光学性能を有しつつ、光学系の小型化と防振群の軽量化を実現するためには、第1レンズ群と第2レンズ群の焦点距離やバックフォーカスの設定が重要となる。特許文献1に開示されたズームレンズでは、第2レンズ群の焦点距離が第1レンズ群に対して短すぎるため、ズーミングに際しての球面収差や非点収差変動が大きい。また特許文献2のズームレンズでは、バックフォーカスが長すぎて、光学全長の短縮が困難である。しかも、防振群が第2レンズ群全体であるために、防振群の軽量化が困難である。
【0006】
本発明は、広角であり、ズーム全域で高い光学性能を有し、防振群を軽量化した小型のズームレンズを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としてのズームレンズは、物体側から像側へ順に配置された複数のレンズ群として、負の屈折力の第1レンズ群と、正の屈折力の第2レンズ群と、後群を構成する少なくとも1つのレンズ群とを有し、広角端と望遠端との間のズーミングに際して隣り合うレンズ群の間隔が変化する。ズーミングに際して、第1レンズ群は不動であり、第2レンズ群は移動する。第2レンズ群は、物体側から像側へ順に配置された第1部分群と第2部分群を有し、第2部分群は、防振に際して光軸に直交する方向に移動する。第1レンズ群の焦点距離をf1、第2レンズ群の焦点距離をf2、広角端におけるバックフォーカスをBfw、ズームレンズの広角端における焦点距離をfwとするとき、
-1.50≦f1/f2≦-0.30
0.10≦Bfw/fw≦0.85
なる条件を満足することを特徴とする。なお、上記ズームレンズを有する光学機器も、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、広角であり、ズーム全域で高い光学性能を有し、防振群を軽量化した小型のズームレンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1、
図4、
図7、
図10、
図13および
図16はそれぞれ、実施例1~6(数値例1~6)のズームレンズL0の(A)広角端および(B)望遠端での無限遠合焦状態における断面を示している。各実施例のズームレンズL0は、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、放送用カメラ、銀塩フィルム用カメラおよび監視用カメラ等の撮像装置に一体型レンズまたは交換レンズとして用いられる。 各図において、左側が物体側、右側が像側である。
【0012】
各実施例のズームレンズL0は、複数のレンズ群を有する。レンズ群とは、広角端と望遠端との間でのズーミングに際して一体に移動する又は不動の1つ又は複数のレンズのまとまりである。各実施例のズームレンズL0では、ズームレンズに際して、隣り合うレンズ群間の間隔が変化する。また、広角端と望遠端はそれぞれ、ズーミングに際して移動するレンズ群が光軸上を機構上または制御上、移動可能な範囲の両端に位置したときの最大画角(最短焦点距離)と最小画角(最大焦点距離)のズーム状態を示す。レンズ群は、開口絞りを含んでいてもよい。
【0013】
各図において、Liはレンズ群のうち物体側から数えてi番目(iは自然数)のレンズ群としての第iレンズ群を表す。Lia、Lib、Licは第iレンズ群内における物体側から数えて1番目、2番目および3番目の部分群を表す。
【0014】
SPは開口絞りを表し、IPは像面を表す。像面IPには、CCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)の撮像面や、銀塩フィルムのフィルム面(感光面)が配置される。
【0015】
各図において、ズーミングに際して移動するレンズ群の下には、広角端から望遠端へのズーミングに際しての移動軌跡を実線矢印で示している。また、フォーカシングに際して移動するレンズ群の上には、無限遠から至近へのフォーカシングに際しての移動方向を点線矢印で示している。さらに像振れ補正(防振)に際して光軸に対して直交する方向に移動するレンズ群の上には、その移動方向を実線両矢印で示している。
【0016】
次に、実施例1~6のズームレンズL0に共通する事項について説明する。各実施例のズームレンズL0は、物体側から像側へ順に配置された、負の屈折力を有する第1レンズ群L1と、正の屈折力を有する第2レンズ群L2と、1つ以上のレンズ群を含む後群からなる。このような構成とすることで、広角端での焦点距離を短く(すなわち広角化)しつつ、ズーム全域において高い光学性能を得ることが容易となる。
【0017】
各実施例のズームレンズL0において、ズーミングに際して、第1レンズ群L1は像面に対して不動(固定)である。レンズ径が大きな第1レンズ群L1をズーミングに際して固定することにより、レンズ群の駆動機構を簡素化して高速ズーミングを可能としている。
【0018】
第2レンズ群L2は、物体側から像側へ順に配置された第2aレンズ群(第1部分群)L2aと第2bレンズ群(第2部分群)L2bを有し、第2bレンズ群L2bを光軸に直交する方向に移動させることで防振を行う。第2bレンズ群L2bを防振群とすることで、防振群を軽量化することが容易となる。なお、防振群が光軸に直交する方向に移動するとは、光軸に直交する面内で移動する場合に限られず、光軸上の点を中心として回転することで移動方向が光軸に直交する方向の成分を有する場合も含まれる。また、第2レンズ群L2は、第2bレンズ群L2bより像側に1つ以上の部分群を有していてもよい。
【0019】
各実施例のズームレンズL0は、以下の式(1)で示す条件を満足する。
【0020】
-1.50≦f1/f2≦-0.30 (1)
式(1)は、第1レンズ群L1の焦点距離f1と第2レンズ群L2の焦点距離f2に関する条件を示している。f1をf2に対して適切に設定することで、ズームレンズL0の光学全長を短縮するとともに防振群を軽量化することが容易となる。光学全長は、ズームレンズの最も物体側のレンズ面から像面までの光軸上の距離である。f1/f2が式(1)の上限値を上回るように第1レンズ群L1の焦点距離f1が長くなりすぎると、ズームレンズL0の広角端での焦点距離を短くすることが困難となるため、好ましくない。また、f1/f2が式(1)の上限値を上回るように第2レンズ群L2の焦点距離f2が短くなりすぎると、ズーミングに際して球面収差および非点収差の変動が大きくなり、ズーム全域で高い光学性能を得ることが困難となるため、好ましくない。一方、f1/f2が式(1)の下限値を下回るように第1レンズ群L1の焦点距離f1が短くなりすぎると、第2レンズ群L2のレンズ径が大きくなり、防振群の軽量化や高速ズームミングが困難になるため、好ましくない。また、f1/f2が式(1)の下限値を下回るように第2レンズ群L2の焦点距離f2が長くなりすぎると、ズーミングに際しての第2レンズ群L2の移動量が大きくなって、ズームレンズL0の小型化が困難になったる。しかも、防振群の屈折力を強くしにくくなって、防振時に良好な光学性能を得ることが困難となるため、好ましくない。
【0021】
また、各実施例のズームレンズL0は、以下の式(2)で示す条件を満足する。
【0022】
0.10≦Bfw/fw≦0.85 (2)
式(2)は、広角端におけるバックフォーカスBfwと広角端でのズームレンズの焦点距離fwに関する条件を示している。Bfwに対してfwを適切に設定することで、ズームレンズの光学全長を短縮することが容易となる。バックフォーカスBfwは、ズームレンズL0の最も像側のレンズ面である最終レンズ面から像面までの距離の空気換算値である。
【0023】
Bfw/fwが式(2)の上限値を上回るように広角端でのバックフォーカスBfwが大きすぎると、ズームレンズL0の光学全長の短縮が困難となるため、好ましくない。また、Bfw/fwが式(2)の下限値を下回るように広角端でのバックフォーカスBfwが小さすぎると、後群に入射する軸上光線の高さが低くなって後群での収差補正効果が減少し、特に望遠端におけるコマ収差の補正が困難となるため、好ましくない。
【0024】
以上の式(1)、(2)の条件を満足する各実施例のズームレンズL0は、広角であり、ズーム全域で高い光学性能を有し、全体として小型で、軽量化された防振群を有し、高速ズームレンズが可能である。
【0025】
各実施例のズームレンズL0は、以下の構成を有することが好ましい。第1レンズ群L1は、負の屈折力を有する2つのレンズと正の屈折力を有する1つのレンズを少なくとも有することが好ましい。第1レンズ群L1に負レンズを2つ以上配置することで、パワーを分散させることによる諸収差の補正に有利となる。また、第1レンズ群L1に正レンズを配置することで、諸収差の補正、特に軸上色収差の補正が容易となる。
【0026】
第1レンズ群L1は、最も物体側に、物体側へ凸面を向けた負メニスカスレンズを有することが望ましい。これにより、諸収差の補正、特に球面収差と非点収差の補正が容易となる。
【0027】
第2レンズ群L2は開口絞りSPを有し、ズーミングに際して第2レンズ群L2と開口絞りSPが一体に移動することが好ましい。これにより、開口絞りSPの前後での収差補正のバランスを適正化することが容易となり、ズーム全域で高い光学性能を得ることが可能となる。
【0028】
第2レンズ群L2は、3つ以上5つ以下のレンズで構成されることが好ましい。第2レンズ群L2が2つ以下のレンズで構成されると、ズーミングに際しての収差変動、特に球面収差と非点収差の変動の抑制が困難となる。また、第2レンズ群L2が6つ以上のレンズで構成されると、第2レンズ群L2をズーミングに際して移動させる場合に高速ズーミングが困難となるため、好ましくない。
【0029】
第2aレンズ群L2aは、2つ以下の光学要素で構成されることが好ましい。光学要素とは、単レンズ又は単一の接合レンズを意味する。これにより、第2レンズ群L2を軽量化することが容易となり、高速ズーミングが可能となる。
【0030】
後群に含まれる全てのレンズ群または一部のレンズ群を移動させてフォーカシングを行うことが望ましい。比較的レンズ径が小さな後群内にフォーカス群を配置することで、その駆動機構を簡素化することができ、ズームレンズの小型化が容易となる。
【0031】
各実施例のズームレンズL0において、第2レンズ群L2の最も物体側に配置されたレンズの焦点距離をf21、第2bレンズ群L2bの焦点距離をf2b、望遠端における第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の光軸上での間隔をD12tとする。また、ズームレンズL0の光学全長をTTL、望遠端におけるズームレンズL0の焦点距離をft、第2レンズ群L2の最も物体側に配置されたレンズのシェイプファクターをχ21とする。この場合に、各実施例のズームレンズL0は、以下の式(3)~(10)で示す条件のうち少なくとも1つを満足することが好ましい。
【0032】
-1.65≦f21/f1≦-0.50 (3)
1.00≦|f2b/fw|≦3.00 (4)
0.005≦D12t/TTL≦0.023 (5)
1.00≦TTL/ft≦3.50 (6)
-2.00≦f1/fw≦-1.00 (7)
0.80≦f2/fw≦4.00 (8)
0.80≦f21/fw≦2.90 (9)
-2.00≦χ21≦-0.50 (10)
式(3)は、第2レンズ群L2の最も物体側に配置されたレンズの焦点距離f21と第1レンズ群L1の焦点距離f1に関する条件を示している。f21をf1に対して適切に設定することで、防振群である第2bレンズ群L2bの軽量化が容易になる。f21/f1が式(3)の下限値を下回るようにf21が長くなりすぎると、第2レンズ群L2の最も物体側に配置されたレンズの屈折力が弱くなりすぎる。その結果、第2bレンズ群L2bのレンズ径を小さくすることが困難となり、防振群の軽量化が困難になるため、好ましくない。また、f21/f1が式(3)の下限値を下回るようにf1が短くなりすぎると、第2レンズ群L2全体のレンズ径が大きくなり、防振群の軽量化が困難になるため、好ましくない。f21/f1が式(3)の上限値を上回るようにf21が短くなりすぎると、ズーミングに際しての諸収差の変動を抑制するためにレンズ数が増加して、高速ズーミングが困難となるため、好ましくない。また、f21/f1が式(3)の上限値を上回るようにf1が長くなりすぎると、広角端での焦点距離を短くすることが困難となるため、好ましくない。
【0033】
式(4)は、第2bレンズ群L2bの焦点距離f2bとズームレンズの広角端での焦点距離fwに関する条件を示している。f2bを適切に設定することで、防振時に良好な光学性能が得られるとともに、防振群を軽量化することが可能となる。|f2b/fw|が式(4)の下限値を下回るようにf2bが短くなりすぎると、第2bレンズ群L2bの屈折力が強くなりすぎて、ズーミングに際しての収差変動を抑制するために第2bレンズ群L2bのレンズ数が増加する。これにより防振群の軽量化が困難となるため、好ましくない。|f2b/fw|が式(4)の上限値を上回るように第2bレンズ群L2bの焦点距離f2bが長くなりすぎると、防振時における防振群の移動量が大きくなりすぎて、防振時に良好な光学性能を得ることが困難になるため、好ましくない。
【0034】
式(5)は、望遠端における第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の間隔D12tとズームレンズの光学全長TTLに関する条件を示している。D12tを適切に設定することで、ズームレンズの小型化と防振群を軽量化が容易になる。D12t/TTLが式(5)の下限値を下回るようにD12tが短くなりすぎると、製造誤差を考慮した際に望遠端での第1レンズ群L1と第2レンズ群L2の間隔を十分に確保することが困難となる。その結果、望遠端で、これらのレンズ群同士が干渉する可能性が生じるため、好ましくない。D12t/TTLが式(5)の上限値を上回るようにD12tが長くなりすぎると、ズームレンズの光学全長の短縮が困難となる。また、第2レンズ群に入射する軸上光線の高さが高くなり、第2レンズ群L2のレンズ径が大きくなる。したがって、ズームレンズの小型化と防振群の軽量化が困難となるため、好ましくない。
【0035】
式(6)は、ズームレンズの光学全長TTLと望遠端での焦点距離ftに関する条件を示している。光学全長TTLを適切に設定することで、ズームレンズの小型化が容易になる。TTL/ftが式(6)の下限値を下回るように光学全長TTLが短くなりすぎると、各レンズ群の屈折力が強くなりすぎて、ズーミングに際しての収差変動の抑制が困難になる。そしてこれを補正するために、各レンズ群のレンズ数が増加し、高速ズーミングが困難になるため、好ましくない。TTL/ftが式(6)の上限値を上回るようにTTLが長くなりすぎると、ズームレンズの小型化が困難となるため、好ましくない。
【0036】
式(7)は、第1レンズ群L1の焦点距離f1とズームレンズの広角端おける焦点距離fwに関する条件を示している。焦点距離f1を適切に設定することで、広角端での焦点距離を短くしつつ、ズームレンズの小型化が容易になる。f1/fwが式(7)の下限値を下回るように第1レンズ群L1の焦点距離f1が短くなりすぎると、第1レンズ群L1の屈折力が強くなりすぎて、第2レンズ群L2のレンズ径が大きくなる。その結果、防振群の軽量化が困難になるため、好ましくない。f1/fwが式(7)の上限値を上回るように第1レンズ群L1の焦点距離f1が長くなりすぎると、広角端での焦点距離を短くすることが困難となるため、好ましくない。
【0037】
式(8)は、第2レンズ群L2の焦点距離f2とズームレンズの広角端における焦点距離fwに関する条件を示している。焦点距離f2に対するfwの比を適切に設定することで、ズームレンズの小型化が容易になる。f2/fwが式(8)の下限値を下回るように第2レンズ群L2の焦点距離f2が短くなりすぎると、第2レンズ群L2の屈折力が強くなりすぎて、ズーミングに際しての収差変動の抑制が困難になる。そしてこれを補正するために第2レンズ群L2のレンズ数が増加して第2レンズ群L2の軽量化が困難になり、高速ズーミングが容易でなくなるため、好ましくない。また、f2/fwが式(8)の上限値を上回るように第2レンズ群L2の焦点距離f2が長くなりすぎると、ズーミングに際しての第2レンズ群L2の移動量が大きくなり、ズームレンズの小型化が困難になるため、好ましくない。しかも、防振群の屈折力を強くしにくくなり、防振時に良好な光学性能を得ることが困難となるため、好ましくない。
【0038】
式(9)は、第2レンズ群L2において最も物体側に配置されたレンズの焦点距離f21とズームレンズの広角端での焦点距離fwに関する条件を示している。f21をfwに対して適切に設定することで、防振群である第2bレンズ群L2bの軽量化が容易になる。f21/fwが式(9)の下限値を下回るようにf21が短くなりすぎると、ズーミングに際しての諸収差の変動を抑制するためにレンズ数が増加し、高速ズーミングが困難となるため、好ましくない。また、f21/fwが式(9)の上限値を上回るようにf21が長くなりすぎると、第2レンズ群L2の最も物体側に配置されたレンズの屈折力が弱くなりすぎて第2bレンズ群L2bのレンズ径を小さくすることが困難となる。その結果、防振群の軽量化が困難になるため、好ましくない。
【0039】
式(10)は、第2レンズ群L2において最も物体側に配置されたレンズのシェイプファクターχ21に関する条件を示している。χ21を適切に設定することで、ズーム全域において球面収差と非点収差の補正が容易になる。χ21は、第2レンズ群L2の最も物体側に配置されたレンズの物体側のレンズ面の曲率半径をR21、同レンズの像側のレンズ面の曲率半径をR22とするとき、以下のように定義される値である。
【0040】
χ21=(R21+R22)/(R21-R22)
χ21が式(10)の下限値を下回ったり上限値を上回ったりすると、第2レンズ群L2の最も物体側に配置されたレンズで発生する球面収差および非点収差の補正が困難になる。そしてこれを補正するために第2レンズ群L2のレンズ数が増加し、高速ズーミングが困難となるため、好ましくない。
【0041】
なお、式(1)~(10)の数値範囲を以下のようにすると、より好ましい。
【0042】
-1.40≦f1/f2≦-0.40 (1a)
0.20≦Bfw/fw≦0.80 (2a)
-1.60≦f21/f1≦-0.70 (3a)
1.50≦|f2b/fw|≦2.80 (4a)
0.0070≦D12t/TTL≦0.0225 (5a)
2.00≦TTL/ft≦3.00 (6a)
-1.80≦f1/fw≦-1.10 (7a)
0.90≦f2/fw≦3.00 (8a)
0.90≦f21/fw≦2.50 (9a)
-1.80≦χ21≦-0.60 (10a)
また、式(1)~(10)の数値範囲を以下のようにすると、さらに好ましい。
【0043】
-1.35≦f1/f2≦-0.50 (1b)
0.30≦Bfw/fw≦0.77 (2b)
-1.59≦f21/f1≦-0.90 (3b)
1.70≦|f2b/fw|≦2.50 (4b)
0.009≦D12t/TTL≦0.022 (5b)
2.40≦TTL/ft≦2.70 (6b)
-1.50≦f1/fw≦-1.26 (7b)
1.00≦f2/fw≦2.30 (8b)
1.20≦f21/fw≦2.10 (9b)
-1.70≦χ21≦-0.80 (10b)
以下、各実施例のズームレンズの具体的構成について説明する。
【実施例0044】
図1に示す実施例1のズームレンズL0は、物体側から像側へ順に配置された、負の屈折力の第1レンズ群L1と、正の屈折力の第2レンズ群L2と、負の屈折力の第3レンズ群L3および正の屈折力の第4レンズ群L4を含む後群とにより構成されている。第2レンズ群L2は、第2aレンズ群L2a、第2bレンズ群L2bおよび第2cレンズ群L2cを有する。第2aレンズ群L2aは、開口絞りSPを含む。
【0045】
広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群L1および第4レンズ群L4は固定であり、第2レンズ群L2および第3レンズ群L3が物体側へ移動する。無限遠から至近へのフォーカシングに際して第3レンズ群L3が像側へ移動する。防振に際して、第2bレンズ群L2bが光軸に直交する方向に移動する。
【0046】
[数値例1]は、実施例1に対応する具体的な数値例を示している。数値例の面データにおいて、面番号mは物体側から数えた光学面の順番を示し、r(mm)は各光学面の曲率半径を示す。d(mm)は第m面と第(m+1)面間の光軸上の間隔を示す。ndは第m面と第(m+1)面間の光学材料のd線における屈折率、νdは該光学材料のアッベ数を示している。アッベ数νdは、フラウンホーファ線のd線(587.56nm)、F線(486.13nm)およびC線(656.27nm)における屈折率をそれぞれ、Nd、NFおよびNCとするとき、
νd=(Nd-1)/(NF-NC)
で表される。
【0047】
なお、d(mm)、焦点距離(mm)、Fナンバーおよび近軸計算による半画角(°)は全てズームレンズが無限遠物体に合焦した状態での値である。前述したように、バックフォーカスBFは最終レンズ面から像面までの距離(空気換算値)である。レンズ全長は、ズームレンズの最も物体側のレンズ面である第1レンズ面から最終レンズ面までの光軸上の距離にバックフォーカスを加えた値であり、光学全長TTLに相当する。
【0048】
面番号の右側に付された「*」は、そのレンズ面が非球面形状を有することを示す。非球面形状は、光の進行方向を正とし、Xを光軸方向での面頂点からの変位量、hを光軸と直交する方向での光軸からの高さ、Rを近軸曲率半径、Kを円錐定数、A4、A6、A8、A10、A12をそれぞれの次数の非球面係数とするとき、以下の式で表される。
【0049】
x=(h2/R)/[1+{1-(1+K)(h/R)2}1/2+A4×h4+A6×h6+A8×h8+A10×h10+A12×h12
円錐定数および非球面係数における「e±XX」は「×10±XX」を意味している。
【0050】
図2は、数値例1のズームレンズの無限遠合焦状態における(A)広角端と(B)望遠端での縦収差(球面収差、非点収差、歪曲および色収差)を示している。球面収差図においてFnoはFナンバーであり、d線(波長587.56nm)とg線(波長435.835nm)における球面収差量を示している。非点収差図においてSはサジタル像面、Mはメリディオナル像面を示している。歪曲収差図においてg線におけるけ歪曲収差量を示している。色収差図はg線における倍率色収差量を示している。ωは近軸計算による半画角(°)である。
【0051】
図3は、数値例1のズームレンズの無限遠合焦状態における(A)広角端と(B)望遠端での横収差を示している。上から順に像高の10割、8割、7割、5割および中心(像高0)でのd線における横収差を示している。破線はd線におけるサジタル像面、実線はd線におけるメリディオナル像面を示している。
【0052】
数値例1における前述した式(1)~(10)の条件に対応する値を表1および表2にまとめて示す。
広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群L1および第4レンズ群L4は固定であり、第2レンズ群L2および第3レンズ群L3が物体側へ移動する。無限遠から至近へのフォーカシングに際して第3bレンズ群L3bが像側へ移動する。防振に際して、第2bレンズ群L2bが光軸に直交する方向に移動する。