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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090417
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/24 20060101AFI20240627BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F16H25/24 B
F16H25/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206322
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 嘉人
(72)【発明者】
【氏名】田中 一宇
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA01
3J062AB06
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA13
3J062CD04
3J062CD22
3J062CD54
(57)【要約】
【課題】ねじ軸の短縮化を回避しつつ、ナットの短縮化を図ることができるアクチュエータを提供する。
【解決手段】本開示のアクチュエータは、モータと、遊星歯車機構と、ねじ軸、ナット、及び複数のボールを有するボールねじ装置を備える。遊星歯車機構は、ねじ軸と同軸上に配置され、環状を成す入力軸と、入力軸と一体に回転するサンギヤと、入力軸を中心に環状を成すリングギヤと、サンギヤとリングギヤとの間に配置され、サンギヤとリングギヤのそれぞれと歯合するプラネタリギヤと、ねじ軸と同軸上に配置され、ナットの回転運動を伝達する環状のキャリアと、キャリアとプラネタリギヤを貫通し、プラネタリギヤを回転自在に支持する伝達軸と、キャリアを回転自在に支持する軸受と、を有している。ねじ軸と平行な軸方向の長さは、ねじ軸よりも前記ナットの方が小さい。入力軸の内径とキャリアの内径は、ねじ軸の外径より大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
遊星歯車機構と、
ねじ軸、ナット、及び複数のボールを有するボールねじ装置と、
を備え、
前記遊星歯車機構は、
前記ねじ軸と同軸上に配置され、環状を成す入力軸と、
前記入力軸と一体に回転するサンギヤと、
前記入力軸を中心に環状を成すリングギヤと、
前記サンギヤと前記リングギヤとの間に配置され、前記サンギヤと前記リングギヤのそれぞれと歯合する複数のプラネタリギヤと、
前記ねじ軸と同軸上に配置され、前記ナットに回転運動を伝達する環状のキャリアと、
前記キャリアと前記プラネタリギヤを貫通し、前記プラネタリギヤを回転自在に支持する複数の伝達軸と、
前記キャリアを回転自在に支持する軸受と、
を有し、
前記ねじ軸と平行な軸方向の長さは、前記ねじ軸よりも前記ナットの方が小さく、
前記入力軸の内径と前記キャリアの内径は、前記ねじ軸の外径より大きい
アクチュエータ。
【請求項2】
前記ナットは、径方向外側に突出する環状のフランジを有し、
前記フランジは、前記キャリアを構成している
請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記ねじ軸は、前記軸方向の一端部がピストンと連結し、
前記フランジは、前記ナットの外周面において前記軸方向の他端部に配置されている
請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記ねじ軸は、前記軸方向の一端部がピストンと連結し、
前記フランジは、前記ナットの外周面において前記軸方向の一端部に配置されている
請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記ねじ軸は、前記軸方向の一端部がピストンと連結し、
前記フランジは、前記ナットの外周面において前記軸方向の中央部に配置されている
請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記ナットと前記キャリアは、別体に形成されている
請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記ナットは、円筒状を成し、内周面に内周軌道面が設けられたナット本体を有し、
前記入力軸と前記ナット本体は、前記軸方向に隣り合って配置されている
請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記入力軸の内径は、前記ナット本体の外径よりも小さい
請求項7に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記軸受は、
外輪と、
前記外輪と前記キャリアの外周面との間に配置される軸受用ボールと、
を有し、
前記キャリアの外周面には、前記軸受用ボールが転動する外周軌道面が形成されている
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項10】
前記軸受は、
外輪と、
前記外輪と前記キャリアの外周面との間に配置される軸受用ボールと、
前記キャリアの外周面に嵌合する内輪と、
を有している
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータは、モータと、回転運動を減速させる遊星歯車機構と、回転運動を直線運動に変換するボールねじ装置と、を備えている。下記特許文献のアクチュエータでは、ナットに回転運動が伝達される。また、ナットの内部の一端から他端までねじ軸が収容されている。モータが駆動すると、ねじ軸が前進し、ナットの一端から突出するねじ軸の突出量が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3208164号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献のアクチュエータによれば、ねじ軸が前進すると、ナットの内周面のうち軸方向の中央部から他端までの範囲は、ねじ軸と対向しない。つまり、ナットの軸方向の中央部から他端までの範囲は、ボールを介してねじ軸を支持することができない。このため、ナットの軸方向の中央部から他端までの範囲は、ねじ軸を収容しているだけであり、ナットが長尺化している。そして、ナットの長尺化は、アクチュエータの大型化を招き、好ましくない。
【0005】
また、ナットは、ナットの他端部が軸受によって支持されている。よって、ねじ軸の先端部にラジアル荷重が作用すると、ナットは、ナットの他端側を支点として傾き易い構造となっている。また、ナットが長尺化していると、ナットに作用するモーメント荷重が大きくなる。よって、このようなモーメント荷重を低減させるためにも、ナットの短縮化が望まれている。
【0006】
一方で、ナットを短縮化すると、ナット内に収容されるねじ軸の長さも短くなる。よって、ねじ軸のストローク長も小さくなってしまう。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、ねじ軸の短縮化を回避しつつ、ナットの短縮化を図ることができるアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係るアクチュエータは、モータと、遊星歯車機構と、ボールねじ装置と、を備えている。ボールねじ装置は、ねじ軸、ナット、及び複数のボールを有している。前記遊星歯車機構は、前記ねじ軸と同軸上に配置され、環状を成す入力軸と、前記入力軸と一体に回転するサンギヤと、前記入力軸を中心に環状を成すリングギヤと、前記サンギヤと前記リングギヤとの間に配置され、前記サンギヤと前記リングギヤのそれぞれと歯合する複数のプラネタリギヤと、前記ねじ軸と同軸上に配置され、前記ナットに回転運動を伝達する環状のキャリアと、前記キャリアと前記プラネタリギヤを貫通し、前記プラネタリギヤを回転自在に支持する複数の伝達軸と、前記キャリアを回転自在に支持する軸受と、を有している。前記ねじ軸と平行な軸方向の長さは、前記ねじ軸よりも前記ナットの方が小さい。前記入力軸の内径と前記キャリアの内径は、前記ねじ軸の外径より大きい。
【0009】
本開示のナットは、ねじ軸よりも短く、短縮化が図られている。また、本開示の入力軸とキャリアは、環状を成している。よって、入力軸とキャリアをナットの軸方向に配置した場合、入力軸とキャリアの内部にねじ軸を配置することができる。また、環状を成しているため、入力軸とキャリアをナットの外周側に配置することも可能である。よって、ナットの他端(後退側の端)からねじ軸が突出した状態でねじ軸をナット内に収容できる。このように、ねじ軸を短縮化する必要がない。以上から、ねじ軸を短縮化することなく、ナットの短縮化を図るができる。
【0010】
また、前記するアクチュエータの好ましい態様として、前記ナットは、径方向外側に突出する環状のフランジを有している。前記フランジは、前記キャリアを構成している。
【0011】
前記構成によれば、部品点数が削減する。
【0012】
また、前記するアクチュエータの前記ねじ軸は、前記軸方向の一端部がピストンと連結している。前記フランジは、前記ナットの外周面において前記軸方向の他端部に配置されてもよい。
【0013】
また、前記するアクチュエータの好ましい態様として、前記ねじ軸は、前記軸方向の一端部がピストンと連結している。前記フランジは、前記ナットの外周面において前記軸方向の一端部に配置されている。
【0014】
前記構成によれば、フランジとねじ軸の一端部との距離が小さくなり、ナットに作用するモーメント荷重が低減する。よって、軸受のモーメント荷重に対する負荷容量を小さくすることができ、軸受の小型化を図れる。
【0015】
また、前記するアクチュエータの好ましい態様として、前記ねじ軸は、前記軸方向の一端部がピストンと連結している。前記フランジは、前記ナットの外周面において前記軸方向の中央部に配置されている。
【0016】
前記構成によれば、フランジとナットの一端部との距離が小さくなり、ナットに作用するモーメント荷重が低減する。よって、軸受のモーメント荷重に対する負荷容量を小さくすることができ、軸受の小型化を図れる。
【0017】
また、前記するアクチュエータの前記ナットと前記キャリアは、別体に形成されてもよい。
【0018】
また、前記するアクチュエータの前記ナットは、円筒状を成し、内周面に内周軌道面が設けられたナット本体を有し、前記入力軸と前記ナット本体は、前記軸方向に隣り合って配置されてもよい。
【0019】
また、前記するアクチュエータの前記入力軸の内径は、前記ナット本体の外径よりも小さくてもよい。
【0020】
また、前記するアクチュエータの好ましい態様として、前記軸受は、外輪と、前記外輪と前記キャリアの外周面との間に配置される軸受用ボールと、を有している。前記キャリアの外周面には、前記軸受用ボールが転動する外周軌道面が形成されている。
【0021】
前記構成によれば、部品点数が削減する。
【0022】
また、前記するアクチュエータの前記軸受は、外輪と、前記外輪と前記キャリアの外周面との間に配置される軸受用ボールと、前記キャリアの外周面に嵌合する内輪と、を有してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本開示のアクチュエータによれば、ねじ軸の短縮化を回避しつつ、ナットの短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施形態のブレーキキャリパーであって作動前の状態を軸方向に切った断面図である。
図2図2は、実施形態のブレーキキャリパーであって作動後の状態を軸方向に切った断面図である。
図3図3は、変形例1のブレーキキャリパーを軸方向に切った断面図である。
図4図4は、変形例2のブレーキキャリパーを軸方向に切った断面図である。
図5図5は、変形例3のブレーキキャリパーを軸方向に切った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示を実施するための形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明で記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0026】
図1は、実施形態のブレーキキャリパーであって作動前の状態を軸方向に切った断面図である。実施形態では、本開示のアクチュエータがブレーキキャリパーに適用された例を挙げて説明する。なお、本開示のアクチュエータは、実施形態に示すブレーキキャリパー以外に、ブレーキブースタなど、その他の装置に適用してもよい。
【0027】
図1に示すように、実施形態のブレーキキャリパー100は、図示しない車輪と供回りするブレーキディスク101を2つのブレーキパッド102(図1では1つのみ図示)で挟み、車輪に制動力を与える装置である。ブレーキキャリパー100は、ブレーキディスク101と、2つのブレーキパッド102と、ブレーキパッド102を作動させるアクチュエータ103と、を備えている。
【0028】
アクチュエータ103は、ハウジング110と、モータ120と、遊星歯車機構1と、ボールねじ装置20と、ピストン30と、を備えている。以下、ボールねじ装置20のねじ軸22の中心軸Oと平行な方向を軸方向と称する。また、軸方向において、ボールねじ装置20から視てブレーキディスク101が配置される方向を第1方向X1と称し、第1方向X1の反対方向を第2方向X2と称する。
【0029】
モータ120は、ハウジング110の内周面に固定されたステータ121と、ステータ121の内周側に配置されたロータ122と、ロータ122の内周側に配置された出力軸123と、を備えている。ステータ121とロータ122と出力軸123は、それぞれ、中心軸Oを中心に同心円状に配置されている。出力軸123の外周側にロータ122が嵌合している。ステータ121に電力が供給されて回転磁界が発生し、ロータ122及び出力軸123が中心軸Oを中心に回転する。また、出力軸123は、円筒状を成している。
【0030】
遊星歯車機構1は、入力軸2と、サンギヤ3と、リングギヤ4と、複数のプラネタリギヤ5と、複数の伝達軸6と、軸受7を備えている。
【0031】
入力軸2は、環状(円筒状)の部品である。入力軸2は、中心軸Oと同軸上に配置されている。入力軸2の第2方向X2の端部は、出力軸123と連続している。入力軸2の外周面であって第1方向X1の端部には、サンギヤ3が設けられている。つまり、出力軸123と入力軸2とサンギヤ3は、同一材料により一体に形成されている。
【0032】
リングギヤ4は、中心軸Oを中心に環状を成す内歯車である。リングギヤ4の外周面は、ハウジング110に嵌合している。プラネタリギヤ5は、サンギヤ3とリングギヤ4の間に配置され、サンギヤ3とリングギヤ4のそれぞれに歯合している。プラネタリギヤ5は、伝達軸6に貫通されている。
【0033】
ボールねじ装置20は、ナット21と、ねじ軸22と、複数のボール23と、を備えている。
【0034】
ナット21は、ナット本体24と、フランジ25と、を有している。ナット本体24は、中心軸Oを中心に円筒状を成している。また、ナット本体24の内周面には、内周軌道面24aと、循環部であるS字溝面24bと、が設けられている。ナット本体24は、入力軸2に対し、第1方向X1に配置されている。つまり、ナット本体24と入力軸2とは、軸方向に隣り合って配置されている。
【0035】
フランジ25は、ナット本体24の第2方向X2の端部から径方向外側に突出し、環状を成している。フランジ25の外周面には、外周軌道面25aが形成されている。フランジ25の外周側には、軸受7が配置されている。軸受7は、外輪7aと、複数のボール7bと、を有している。外輪7aの内周面には、内周軌道面7cが設けられている。複数のボール7bは、フランジ25の外周軌道面25aと外輪7aの内周軌道面7cとの間に配置されている。これにより、ナット21は、軸受7を介して回転自在にハウジング110に支持されている。また、フランジ25の外周部は、軸受7の内輪を構成し、部品点数が削減している。
【0036】
また、軸受7の外輪7aの第2方向X2の側面は、リングギヤ4と当接している。リングギヤ4と外輪7aは、ハウジング110に設けられた段差面8と止め輪115に挟まれ、軸方向の位置ずれが規制されている。
【0037】
また、フランジ25は、伝達軸6に貫通されている。そして、プラネタリギヤ5は、伝達軸6を中心に回転自在にフランジ25に支持されている。これにより、遊星歯車機構1により減速された回転運動がフランジ25に入力され、ナット21が中心軸Oを中心に回転する。また、フランジ25は、遊星歯車機構1のキヤリアを構成し、部品点数が削減している。
【0038】
ねじ軸22は、雄スプライン部26と、雄スプライン部26から第2方向X2に延在するねじ軸本体27と、を備えている。ねじ軸本体27の外周面には、螺旋方向に延在する外周軌道面27aが設けられている。複数のボール23は、ナット21の内周軌道面24aとねじ軸22の外周軌道面27aとの間に配置されている。
【0039】
ピストン30は、ブレーキパッド102を押圧する押圧部31と、押圧部31の第2方向X2に設けられた雌スプライン孔32と、押圧部31の外周部から第2方向X2に延びる円筒状の円筒部33と、を有している。
【0040】
雌スプライン孔32には、ねじ軸22の雄スプライン部26が挿入され、スプライン嵌合している。よって、ピストン30とねじ軸22は、相対回転しないように規制されている。また、円筒部33の外周面には、図示しない回り止め突起が設けられている。回り止め突起は、ハウジング110の内周面110aに設けられたガイド溝(不図示)に挿入されている。このガイド溝は、軸方向に延在している。これにより、ピストン30及びねじ軸22は、回転不能かつ軸方向に移動可能にハウジング110に支持されている。
【0041】
円筒部33の外周面とハウジング110の内周面110aとの間に、微小の隙間(不図示)が設けられている。よって、ピストン30は、軸方向に移動する際、ハウジング110の内周面110aを摺動するように支持されている。
【0042】
また、本実施形態の各構成の寸法に関し、ねじ軸本体27の外径(ねじ山の外径)はr1である。フランジ25(キャリア)は、ナット本体24の外周面に形成されているため、フランジ25(キャリア)の内径は、当然にねじ軸本体27の外径r1よりも大きい。入力軸2の内径と出力軸123の内径は、同じr2となっている。この入力軸2と出力軸123の内径r2は、ナット本体24の内径と略同じであり、ねじ軸本体27の外径r1よりも大きい。また、入力軸2と出力軸123の内径r2は、ナット本体24の外径r3よりも小さい。よって、入力軸2と出力軸123の大型化が回避されている。また、入力軸入力軸2と出力軸123の内周側にナット本体24を配置できないようになっている。
【0043】
また、ねじ軸本体27の軸方向の長さL1は、ナット本体24(ナット21)の軸方向の長さL2よりも大きい。ブレーキキャリパー100の作動前、ねじ軸本体27の第1方向X1の端面27bにおける軸方向の位置は、ナット本体24の第1方向X1の端面24cと略同じとなっている。よって、ねじ軸本体27の一部は、ナット本体24の内部に収容されている。また、ねじ軸本体27の残部は、ナット本体24から第2方向X2に突出し、入力軸2の内部と、出力軸123の内部と、に収容されている。
【0044】
そして、モータ120が駆動すると、入力軸2及びサンギヤ3が中心軸Oを中心に回転する。そして、プラネタリギヤ5は、伝達軸6を中心に回転(自転)しながら、中心軸Oを中心に回転(公転)する。これにより、フランジ25(ナット21)が中心軸Oを中心に回転する。また、ナット21の回転速度は、入力軸2の回転速度よりも減速している。
【0045】
図2は、実施形態のブレーキキャリパーであって作動後の状態を軸方向に切った断面図である。図2に示すように、ナット21の回転によりねじ軸22が第1方向X1に移動(前進)する。これにより、ピストン30の押圧部31がブレーキパッド102を第1方向X1に押圧する。また、ブレーキパッド102がブレーキディスク101に押し付けられる。さらに、ピストン30が第1方向X1に移動すると、ブレーキディスク101は、軸方向両側に配置されるブレーキパッド102に挟持され、車輪(不図示)に制動力が付与される。
【0046】
以上、実施形態のアクチュエータ103によれば、ナット21の軸方向の長さL2は、ねじ軸本体27の軸方向の長さL1よりも小さい。よって、ナット21が短縮化し、アクチュエータ103も軸方向に小型化している。また、ナット21の短縮化によりナット21が軽量化している。よって、ボールねじ装置20の作動性も向上している。
【0047】
また、押圧部31は、ブレーキパッド102からラジアル荷重(図2の矢印Aを参照)を受ける。これにより、ナット21には、支点Pとしたモーメント荷重が作用する。なお、支点Pは、軸受7の軸方向の中央部と、中心軸Oと、の交点である。また、本実施形態では、フランジ25がナット本体24の第2方向X2の端部に設けられ、支点Pがナット本体24のうち第2方向X2寄りとなっている。
【0048】
本実施形態では、ナット21が短縮化し、ラジアル荷重が作用する押圧部31と支点P1との距離L3が短い。よって、ナット21に作用するモーメント荷重が低減している。このため、本実施形態の軸受7は、モーメント荷重に対する負荷容量が小さいもの、言い換えると小型化されたものが使用され、アクチュエータ103の小型化に寄与している。
【0049】
また、ねじ軸本体27(ねじ軸22)の軸方向の長さL1は、ナット本体24(ナット21)の軸方向の長さL2よりも大きい。本実施形態では、ねじ軸本体27は、ナット本体24(ナット21)と入力軸2と出力軸123の内部に収容されている。よって、ねじ軸本体27は短縮化されておらず、ねじ軸22のストローク長の短縮化が回避されている。
【0050】
以上、実施形態のアクチュエータ103は、モータ120と、遊星歯車機構1と、ボールねじ装置20と、を備える。ボールねじ装置20は、ナット21、ねじ軸22、及び複数のボール23を有する。遊星歯車機構1は、ねじ軸22と同軸上に配置され、環状を成す入力軸2と、入力軸2と一体に回転するサンギヤ3と、入力軸2を中心に環状を成すリングギヤ4と、サンギヤ3とリングギヤ4との間に配置され、サンギヤ3とリングギヤ4のそれぞれと歯合する複数のプラネタリギヤ5と、ねじ軸22と同軸上に配置され、ナット21に回転運動を伝達する環状のキャリアと、キャリアとプラネタリギヤ5を貫通し、プラネタリギヤ5を回転自在に支持する伝達軸6と、キャリアを回転自在に支持する軸受7と、を有している。ねじ軸22と平行な軸方向の長さは、ねじ軸22(ねじ軸本体27)よりもナット21(ナット本体24)の方が小さい。入力軸2の内径r2とフランジ25の内径(キャリアの内径)は、ねじ軸22の外径r1より大きい。
【0051】
実施形態によれば、ねじ軸22の短縮化を回避しつつ、ナット21の短縮化を図ることができる。
【0052】
また、実施形態のナット21は、径方向外側に突出する環状のフランジ25を有している。フランジ25は、キャリアを構成している。
【0053】
本実施形態によれば、キャリアを別途用意する必要がなく、部品点数が削減する。
【0054】
また、実施形態の軸受7は、外輪7aと、外輪7aとキャリア(フランジ25)の外周面との間に配置されるボール(軸受用ボール)7bと、を有している。キャリアの外周面には、ボール(軸受用ボール)7bが転動する外周軌道面25aが形成されている。
【0055】
本実施形態によれば、内輪を別途用意する必要がなく、部品点数が削減する。
【0056】
以上、実施形態のアクチュエータ103について説明したが、本開示は、実施形態で説明した例に限定されない。例えば、本開示の入力軸2は、サンギヤ3や出力軸123と別部品(別体)であってもよい。つまり、本開示は、入力軸2がサンギヤ3を貫通し固定されたものであってもよい。また、本開示のキャリアは、ナット21と別部品(別体)であってもよい。なお、キャリアとナット21を別部品とした場合、ナット21は、フランジ25が不要となる。また、本開示の軸受7は、キャリアと別部品(別体)の内輪を備えていてもよい。
【0057】
図3は、変形例1のブレーキキャリパーを軸方向に切った断面図である。また、本開示は、図3に示す変形例1のアクチュエータ103Aのように、出力軸123Aが中実であってもよい。この変形例1のアクチュエータ103Aであっても、実施形態のアクチュエータ103と同じように、ねじ軸22の短縮化を回避しつつ、ナット21の短縮化を図ることができるからである。
【0058】
また、本実施形態のボールねじ装置20において、ボール70を循環させる循環部としてS字溝面24bを挙げているが、本開示は、コマ、デフレクタ(エンドデフレクタ、ミドルデフレクタ)、チューブなどであってもよい。
【0059】
また、本開示のフランジ(キャリア)25の軸方向の位置は、ナット本体24の第2方向X2の端部でなくてもよい。以下、フランジ(キャリア)25の軸方向の位置を変更した変形例2と変形例3を説明する。
【0060】
図4は、変形例2のブレーキキャリパーを軸方向に切った断面図である。変形例2のアクチュエータ103Bは、フランジ25Bがナット本体24Bの軸方向の中央部に配置されている点で、実施形態と相違する。このナット21Bによれば、軸受7の軸方向の中央部と中心軸Oとの交点である支点P1は、ナット本体24Bの軸方向の中央部に配置される。よって、押圧部31と支点P1との距離L4は、実施形態の押圧部31と支点P1との距離L3よりも短い。よって、ナット21Bに作用するモーメント荷重を低減させることができる。
【0061】
図5は、変形例3のブレーキキャリパーを軸方向に切った断面図である。変形例3のアクチュエータ103Cは、フランジ25Cがナット本体24Cの第1方向X1の端部に配置されている点で、実施形態と相違する。このナット21Cによれば、軸受7の軸方向の中央部と中心軸Oとの交点である支点P2は、ナット本体24Cの第1方向X1の端部寄りに配置される。よって、押圧部31と支点P2との距離L5は、実施形態の距離L3及び変形例2の距離L4よりも短い。よって、ナット21Cに作用するモーメント荷重をさらに低減させることができる。
【0062】
なお、本開示は、以下のような構成の組み合わせであってもよい。
(1)
モータと、
遊星歯車機構と、
ねじ軸、ナット、及び複数のボールを有するボールねじ装置と、
を備え、
前記遊星歯車機構は、
前記ねじ軸と同軸上に配置され、環状を成す入力軸と、
前記入力軸と一体に回転するサンギヤと、
前記入力軸を中心に環状を成すリングギヤと、
前記サンギヤと前記リングギヤとの間に配置され、前記サンギヤと前記リングギヤのそれぞれと歯合する複数のプラネタリギヤと、
前記ねじ軸と同軸上に配置され、前記ナットに回転運動を伝達する環状のキャリアと、
前記キャリアと前記プラネタリギヤを貫通し、前記プラネタリギヤを回転自在に支持する複数の伝達軸と、
前記キャリアを回転自在に支持する軸受と、
を有し、
前記ねじ軸と平行な軸方向の長さは、前記ねじ軸よりも前記ナットの方が小さく、
前記入力軸の内径と前記キャリアの内径は、前記ねじ軸の外径より大きい
アクチュエータ。
(2)
前記ナットは、径方向外側に突出する環状のフランジを有し、
前記フランジは、前記キャリアを構成している
(1)に記載のアクチュエータ。
(3)
前記ねじ軸は、前記軸方向の一端部がピストンと連結し、
前記フランジは、前記ナットの外周面において前記軸方向の他端部に配置されている
(2)に記載のアクチュエータ。
(4)
前記ねじ軸は、前記軸方向の一端部がピストンと連結し、
前記フランジは、前記ナットの外周面において前記軸方向の一端部に配置されている
(2)に記載のアクチュエータ。
(5)
前記ねじ軸は、前記軸方向の一端部がピストンと連結し、
前記フランジは、前記ナットの外周面において前記軸方向の中央部に配置されている
(2)に記載のアクチュエータ。
(6)
前記ナットと前記キャリアは、別体に形成されている
(1)から(5)のいずれか1つに記載のアクチュエータ。
(7)
前記ナットは、円筒状を成し、内周面に内周軌道面が設けられたナット本体を有し、
前記入力軸と前記ナット本体は、前記軸方向に隣り合って配置されている
(1)から(6)のいずれか1つに記載のアクチュエータ。
(8)
前記入力軸の内径は、前記ナット本体の外径よりも小さい
(7)に記載のアクチュエータ。
(9)
前記軸受は、
外輪と、
前記外輪と前記キャリアの外周面との間に配置される軸受用ボールと、
を有し、
前記キャリアの外周面には、前記軸受用ボールが転動する外周軌道面が形成されている
(1)から(8)のいずれか1つに記載のアクチュエータ。
(10)
前記軸受は、
外輪と、
前記外輪と前記キャリアの外周面との間に配置される軸受用ボールと、
前記キャリアの外周面に嵌合する内輪と、
を有している
(1)から(8)のいずれか1つに記載のアクチュエータ。
【符号の説明】
【0063】
1 遊星歯車機構
2 入力軸
3 サンギヤ
4 リングギヤ
5 プラネタリギヤ
6 伝達軸
7 軸受
20 ボールねじ装置
21、21B、21C ナット
22 ねじ軸
23 ボール
24、24B、24C ナット本体
25、25B、25C フランジ
26 雄スプライン部
27 ねじ軸本体
30 ピストン
31 押圧部
32 雌スプライン孔
100 ブレーキキャリパー
101 ブレーキディスク
102 ブレーキパッド
103、103A、103B、103C アクチュエータ
110 ハウジング
120 モータ
123、123A 出力軸
図1
図2
図3
図4
図5