(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090424
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】資源循環装置
(51)【国際特許分類】
C10J 3/46 20060101AFI20240627BHJP
C10J 3/48 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C10J3/46 M
C10J3/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206338
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】釜田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】阿部 剛士
(72)【発明者】
【氏名】富岡 佑介
(72)【発明者】
【氏名】壽川 徹
(57)【要約】
【課題】ケイ酸植物由来のバイオマスを原料として、適切にガス化反応を促進することで、質の高い各種の工業用原料を得ることができる資源循環装置を提供する。
【解決手段】ケイ酸植物由来のバイオマスを原料として供給する原料供給機構と、水蒸気と酸素含有ガスの混合ガスを供給する第1ガス供給機構と、混合ガスにより形成される噴流床で原料を流動させてガス化する第1領域と、第1領域で生成されたガスが流入する第2領域とが、ガスの流れ方向に沿って上下方向に配列されて形成される竪型の反応炉と、第2領域に流入するガスに酸素含有ガスを供給する第2ガス供給機構と、を備え、第2ガス供給機構は、鉛直方向に対して反応炉の中心側下方に向けて傾斜する第1ノズルと、鉛直方向に対して反応炉の反中心側下方に向けて傾斜する第2ノズルを含み、第1ノズルと第2ノズルは反応炉の内壁に沿って環状に配されている資源循環装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸植物由来のバイオマスを原料として供給する原料供給機構と、
水蒸気と酸素含有ガスの混合ガスを供給する第1ガス供給機構と、
前記第1ガス供給機構から供給された前記混合ガスにより形成される噴流床で前記原料を流動させてガス化する第1領域と、前記第1領域で生成された前記ガスが流入する第2領域とが、前記ガスの流れ方向に沿って上下方向に配列されて形成される竪型の反応炉と、
前記第2領域に流入する前記ガスに酸素含有ガスを供給する第2ガス供給機構と、
を備えている資源循環装置であって、
前記第2ガス供給機構は、鉛直方向に対して前記反応炉の中心側下方に向けて傾斜する第1ノズルと、鉛直方向に対して前記反応炉の反中心側下方に向けて傾斜する第2ノズルを含み、前記第1ノズルと前記第2ノズルは前記反応炉の内壁に沿って環状に配されている資源循環装置。
【請求項2】
前記第1ノズルは鉛直方向に対して前記反応炉の中心側下方に第1傾斜角度θ1で傾斜し、前記第2ノズルは鉛直方向に対して前記反応炉の反中心側下方に第2傾斜角度θ2で傾斜し、前記第2傾斜角度θ2は、前記第1傾斜角度θ1より小さな値に設定されている請求項1記載の資源循環装置。
【請求項3】
前記反応炉は、前記第1領域の内径より前記第2領域の内径が大となるように形成されるとともに、前記第1領域と前記第2領域との間に次第に拡径する拡径部が形成され、
前記第2ガス供給機構は、前記第2ノズルから前記酸素含有ガスが前記拡径部に向けて噴出されるように、前記第2領域に配置されている請求項2記載の資源循環装置。
【請求項4】
前記第1傾斜角度θ1は35°≦θ1≦55°の範囲に設定され、前記第2傾斜角度θ2は0°<θ2≦22°の範囲に設定されている請求項3記載の資源循環装置。
【請求項5】
前記第2ガス供給機構は、前記反応炉の内壁に沿って配される環状のヘッダー管を備え、前記ヘッダー管に前記第1ノズルと前記第2ノズルが形成されている請求項3記載の資源循環装置。
【請求項6】
前記第1ノズルから供給される酸素含有ガスの供給量と、前記第2ノズルから供給される酸素含有ガスの供給量とが調整可能に構成されている請求項3記載の資源循環装置。
【請求項7】
前記第2領域に熱交換器が設けられ、前記第2ガス供給機構は前記熱交換器の下方に設置されている請求項3記載の資源循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ酸植物由来のバイオマスから、各種の工業用原料となる非晶質シリカを製造し、或いは水性ガス反応などを利用して合成ガスを製造する資源循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、循環型社会の形成に資する設備として、ケイ酸植物由来のバイオマスを原料として再生するガス化炉が提案されている。当該ガス化炉は、バイオマス供給部と、水蒸気供給部と、前記水蒸気供給部から供給される水蒸気により形成される噴流床で前記バイオマス供給部から供給されたバイオマスを流動させる第1領域と、前記第1領域で生成されたガスが流入する第2領域とが、ガスの流れ方向に沿って上下方向に配列されて形成される反応塔と、前記反応塔の前記第1領域および第2領域の夫々に酸素ガスを供給する複数の酸素ガス供給部と、各酸素ガス供給部からのガス供給量を調整する供給量調整機構と、を備えている。
【0003】
特許文献1には、ケイ酸植物由来のバイオマスを原料として、エネルギー回収するとともに純度の高い高品質なシリカを得ることができる非晶質シリカの製造装置が提案されている。当該製造装置も、バイオマスを水蒸気により流動させて水性ガス反応および水性ガスシフト反応させるガス化炉を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-190887号公報
【特許文献2】特開2020-040861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したガス化炉は、何れもケイ酸植物由来のバイオマスを原料として供給する原料供給機構と、水蒸気と酸素含有ガスを供給する第1ガス供給機構と、前記第1ガス供給機構から供給され前記ガスにより形成される噴流床で前記原料を流動させてガス化する第1領域と、前記第1領域で生成された前記ガスが流入する第2領域とが、前記ガスの流れ方向に沿って上下方向に配列されて形成される反応炉と、前記第2領域に流入する前記ガスに酸素含有ガスを供給する第2ガス供給機構と、を備えている。
【0006】
そして、第2ガス供給機構として、第2領域の側壁からガス供給管を挿入して、その先端に備えたノズルから酸素含有ガスを噴出させるように構成され、第2領域の中心部から下方に向けて酸素含有ガスを噴出させるノズルや、側壁から中心部に向けて酸素含有ガスを噴出させるノズルや、側壁から内壁に向けて旋回流を発生させるように傾斜配置したノズルなどが開示されている。
【0007】
上述の特許文献に記載されたガス化炉は、第1領域から第2領域に流れるガス量が比較的少ない規模の小さな炉であったため、第2ガス供給機構としての機能に特段の問題は生じていなかった。
【0008】
しかし、そのような従来のガス化炉より規模の大きなガス化炉を構築する場合には、第1領域から第2領域に流れるガスに対して、効果的に均一に酸素含有ガスを供給するという観点で、従来の第2ガス供給機構では十分ではなく、第2領域に流入するガスに対して酸素含有ガスの供給状態がばらつくために、流入ガスに対する組成の調整が困難になるという問題や、第1領域で十分に水性ガス反応が進まずに、燃え残りとなった微小なバイオマス片が第2領域を通過して排出されるという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、ケイ酸植物由来のバイオマスを原料として、適切にガス化反応を促進することで、質の高い各種の工業用原料を得ることができる資源循環装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明による資源循環装置の第一の特徴構成は、ケイ酸植物由来のバイオマスを原料として供給する原料供給機構と、水蒸気と酸素含有ガスの混合ガスを供給する第1ガス供給機構と、前記第1ガス供給機構から供給された前記混合ガスにより形成される噴流床で前記原料を流動させてガス化する第1領域と、前記第1領域で生成された前記ガスが流入する第2領域とが、前記ガスの流れ方向に沿って上下方向に配列されて形成される竪型の反応炉と、前記第2領域に流入する前記ガスに酸素含有ガスを供給する第2ガス供給機構と、を備えている資源循環装置であって、前記第2ガス供給機構は、鉛直方向に対して前記反応炉の中心側下方に向けて傾斜する第1ノズルと、鉛直方向に対して前記反応炉の反中心側下方に向けて傾斜する第2ノズルを含み、前記第1ノズルと前記第2ノズルは前記反応炉の内壁に沿って環状に配されている点にある。
【0011】
原料供給機構から供給されたバイオマスが、反応炉の第1領域で混合ガスにより形成される噴流床で生じる水性ガス反応などによりガス化されつつ第2領域に流下する。このとき、第2領域に乱流状態で流入するガスに対して、第2ガス供給機構から酸素含有ガスが供給され、未燃のバイオマス片がガス化され、ガス化された成分の組成が調整される。例えば一酸化炭素が二酸化炭素に完全燃焼される。このような第2ガス供給機構から供給される酸素含有ガスは、反応炉の内壁に沿って環状に配される第1ノズルから反応炉の中心側下方に向けて噴出され、同じく反応炉の内壁に沿って環状に配される第2ノズルから反応炉の反中心側下方、つまり直近の側壁に向けて噴出される。その結果、第1領域から第2領域に流入するガスのうち側壁に沿って流れるガスに対して、第2ノズルから供給される酸素含有ガスとの混合が促進され、第1領域から第2領域に流入するガスのうち側壁から離れた中央部側に流れるガスに対して第1ノズルから供給される酸素含有ガスとの混合が促進され、全体として効果的に酸素含有ガスとの攪拌混合を促進することができ、適切にガス成分の組成の調整ができるようになる。
【0012】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記第1ノズルは鉛直方向に対して前記反応炉の中心側下方に第1傾斜角度θ1で傾斜し、前記第2ノズルは鉛直方向に対して前記反応炉の反中心側下方に第2傾斜角度θ2で傾斜し、前記第2傾斜角度θ2は前記第1傾斜角度θ1より小さな値に設定されている点にある。
【0013】
第1ノズルから噴射される酸素含有ガスを、第1領域から第2領域に流入するガスのうち側壁から離れた中央部側に流れる広範囲のガスに対して効果的に供給して攪拌促進するためには、第1傾斜角度θ1を相対的に大きな値に設定することが必要になる。第2ノズルから噴射される酸素含有ガスを、第1領域から第2領域に流入するガスのうち側壁に沿って流れる狭範囲のガスに対して効果的に供給して攪拌促進するためには、第2傾斜角度θ2を相対的に小さな値に設定することが必要になる。第2傾斜角度θ2を第1傾斜角度θ1より小さな値に設定することで、第1領域から第2領域に流入するガスの全てに対して酸素含有ガスを効果的に供給して攪拌促進することができる。
【0014】
同第三の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、前記反応炉は、前記第1領域の内径より前記第2領域の内径が大となるように形成されるとともに、前記第1領域と前記第2領域との間に次第に拡径する拡径部が形成され、前記第2ガス供給機構は、前記第2ノズルから前記酸素含有ガスが前記拡径部に向けて噴出されるように、前記第2領域に配置されている点にある。
【0015】
第1領域の内径より第2領域の内径が大となるように形成され、第1領域と第2領域との間に次第に拡径する拡径部が形成されることで、第1領域で発生したガスが第2領域に流入する際に流速が低下して、一部が第1領域に戻る循環流が形成される。その結果、未燃焼物の第2領域への流入が抑制されるのである。このような環境で、第2ノズルから噴射される酸素含有ガスが第2領域側から拡径部に向けて供給されることで、拡径部の内壁に沿って流れるガスに効率的に酸素含有ガスが供給される。
【0016】
同第四の特徴構成は、上述した第三の特徴構成に加えて、前記第1傾斜角度θ1は35°≦θ1≦55°の範囲に設定され、前記第2傾斜角度θ2は0°<θ2≦22°の範囲に設定されている点にある。
【0017】
第1傾斜角度θ1および第2傾斜角度θ2を上述の範囲に設定することで、全体として効果的に酸素含有ガスとの攪拌混合を促進することができ、適切にガス成分の組成の調整ができるようになる。
【0018】
同第五の特徴構成は、上述した第三の特徴構成に加えて、前記第2ガス供給機構は、前記反応炉の内壁に沿って配される環状のヘッダー管を備え、前記ヘッダー管に前記第1ノズルと前記第2ノズルが形成されている点にある。
【0019】
反応炉の内壁に沿って環状のヘッダー管を配することで、第1ノズルと第2ノズルを効果的にヘッダー管に配列することができる。
【0020】
同第六の特徴構成は、上述した第三の特徴構成に加えて、前記第1ノズルから供給される酸素含有ガスの供給量と、前記第2ノズルから供給される酸素含有ガスの供給量とが調整可能に構成されている点にある。
【0021】
バイオマスの組成や第1ガス供給機構から供給される混合ガスの流量によって生じるガス流の流動状態や流量に変動がある場合でも、第1ノズルと第2ノズルの酸素含有ガスの供給量が調整可能であれば第2ガス供給機構の汎用性が高まる。
【0022】
同第七の特徴構成は、上述した第三の特徴構成に加えて、前記第2領域に熱交換器が設けられ、前記第2ガス供給機構は前記熱交換器の下方に設置されている点にある。
【0023】
熱交換器より上流側で酸素含有ガスを攪拌混合させてガス成分の組成が調整できるようになり、熱交換器による熱の交換効率も上昇する。
【発明の効果】
【0024】
以上説明した通り、本発明によれば、ケイ酸植物由来のバイオマスを原料として、適切に各種の工業用原料を得ることができる資源循環装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明による資源循環装置の一例を示し、非晶質シリカの製造装置の説明図である。
【
図2】(a)は熱処理が主に燃焼反応となる場合の第1ガス供給機構の平面視の説明図であり、(b)は同第1ガス供給機構の要部断面図である。
【
図3】(a)は熱処理が主にガス化反応となる場合の第1ガス供給機構の平面視の説明図であり、(b)は同第1ガス供給機構の要部断面図である。
【
図4】(a)は第2ガス供給機構の底面図であり、
図4(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図5】非晶質シリカの製造装置に備えた制御装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明による資源循環装置を非晶質シリカの製造装置に適用した例を説明する。
図1には、資源循環装置の一例である非晶質シリカの製造装置1が示されている。非晶質シリカの製造装置1は、竪型の反応炉2と、反応炉2にケイ酸植物由来のバイオマスを原料として供給する原料供給機構4と、反応炉2に水蒸気と酸素含有ガスの混合ガスを供給する第1ガス供給機構3と、を備えている。
【0027】
反応炉2の底部には、バイオマスの流動媒体となる珪砂が充填されている。原料供給機構4から供給されたバイオマスは、第1ガス供給機構3から供給された混合ガスにより形成される噴流床9で珪砂とともに流動され、高温の水蒸気と酸素の間で生じる燃焼反応または水性ガス反応によりガス化および温度調整する第1領域R1と、第1領域R1で生成されたガスが流入する第2領域R2とが、ガスの流れ方向に沿って下方から上方に向けて形成されている。
【0028】
反応炉2は、断面が円形の筒状体で構成され、第1領域R1の内径より第2領域R2の内径が大となるように形成され、第1領域R1と第2領域R2との間に第1領域R1から第2領域R2に向けて次第に拡径する拡径部REが形成され、第2領域R2の頂部2Aに排気口2Bが形成されている。本実施形態では、第1領域R1の内径が第2領域R2の内径の75%に設定され、バイオマスの処理量が10トン/日に設定されている。
【0029】
第2領域R2に流入するガスに酸素含有ガスを供給する第2ガス供給機構6がさらに設けられ、第1領域R1から第2領域R2に流入するガスに含まれる一酸化炭素ガスなどの未燃ガスが、第2領域R2で完全燃焼されて排気口2Bから炉外に流出される。
【0030】
原料供給機構4は、筒状のケーシングと筒状のケーシングに収容されたスクリュー羽根とを備えたスクリューコンベア機構で構成され、ケーシングの先端側が反応炉2の拡径部REより下方の側壁にフランジ接続されている。図示していないが、ケーシングの基端側には原料定量供給機構を備えたホッパーが設けられている。
【0031】
ホッパーに充填されたバイオマスは、原料定量供給機構によりスクリューコンベア機構に定量供給され、ケーシング内をスクリュー羽根で圧密に搬送されて反応炉2に投入される。バイオマスとして、農家で生産された籾米が籾摺りされた後に生じる大量の籾殻が用いられる。
【0032】
第1ガス供給機構3は、反応炉2の下部側方に配置されたヘッダー管30と、ヘッダー管30に互いに平行な姿勢で接続された断面が円形の複数本の散気管31を備えて構成される。ヘッダー管30には、空気供給管32および蒸気供給管33が接続され、空気および水蒸気の混合ガスがヘッダー管30を介して各散気管31に供給される。水蒸気として、飽和水蒸気または過熱水蒸気が用いられる。
【0033】
第1ガス供給機構3から供給される混合ガスにより反応炉2の下部で珪砂が流動する噴流床9が形成される。当該噴流床9で原料となる籾殻が珪砂により攪拌されながら混合ガスにより熱処理および温度調整されて、残留灰としての非晶質シリカが生成される。熱処理には、籾殻に含まれる炭素成分が酸素と結合する燃焼反応と、籾殻に含まれる炭素成分が水蒸気と反応して一酸化炭素と水素が生じる吸熱反応であるガス化反応が含まれる。
【0034】
反応炉2のうち拡径部REより下方の第1領域R1で熱処理されて生じた燃焼排ガスは、微粉体となった非晶質シリカとともに炉内を上昇して、第2領域R2に備えた第2ガス供給機構6から供給される酸素含有ガスにより、燃焼排ガスに含まれる一酸化炭素が完全燃焼されて、反応炉2の排気口2Bに接続された排気管10から排出される。なお、第1領域R1で生じた燃焼ガスの流速は、拡径部REを通過する際に低下するため、熱処理が不十分な籾殻の一部は自らの重量により、または第2ガス供給機構6から供給される酸素含有ガスの流れにより下方に落下する。第2ガス供給機構6については、後に詳述する。
【0035】
排気管10から燃焼排ガスとともに排出された非晶質シリカは、サイクロン7に導かれて燃焼排ガスと分離して回収され、非晶質シリカが分離された後の燃焼排ガスは、二次燃焼設備8で二次燃焼された後に大気放出される。
【0036】
[熱処理状態調節機構の構成]
上述した非晶質シリカの製造装置1には、熱処理状態調節機構Aを備えている。熱処理状態調節機構Aは、反応炉2に供給された原料の熱処理条件を調節する機構であり、同一の製造装置1でありながらも、原料を主に燃焼反応させるか、主にガス化反応させるかを切り替えることで、生成される非晶質シリカ中に含まれる炭素の割合を調整する機構である。
【0037】
原料に含まれる炭素などの不純物を十分に燃焼させる燃焼反応が主に起こるように熱処理状態調節機構Aを調節することで、純度の高い非晶質の白色シリカが得られる。また、原料に含まれる炭素などの不純物が残存する状態で主にガス化反応が起こるように熱処理状態調節機構Aを調節することで、非晶質の黒色シリカが得られる。
【0038】
本願明細書中において、白色シリカとは、非晶質シリカ中に含まれる炭素の割合が5重量%未満であり、外見が白色または白っぽい非晶質シリカを指し、黒色シリカとは、非晶質シリカ中に含まれる炭素の割合が5重量%を超え、外見が黒色または黒っぽい非晶質シリカのことを指すものとする。
【0039】
白色シリカは、白色の化粧品原料、吸着剤、白色の塗料や樹脂などの添加剤といった工業用材料、作物へのシリカ付与のための肥料など農業用材料に有効利用され、黒色シリカは、黒色の化粧品原料、吸着剤、黒色の塗料や樹脂などの添加剤、タイヤの添加在といった工業用材料、作物へのシリカおよび炭素付与のための肥料など農業用材料に有効利用される。
【0040】
熱処理状態調節機構Aは、第1ガス供給機構3から供給される酸素含有ガスの原料の供給量に対する比率を調節する酸素含有ガス比調節機構(本実施形態では酸素含有ガスとして空気が用いられるので空気比調節機構となる。)と、第1ガス供給機構3から供給されるガスの総量、供給位置、供給分布の少なくとも何れか一つを調整することにより、反応炉2の内部に形成される原料の流動状態を調節する流動状態調節機構と、を含む。
【0041】
ガスの総量を増加させることにより原料の流動状態が激しくなり、ガスの総量を減少させることにより原料の流動状態が穏やかになる。ガスの供給位置となるノズルの分布を密に調節することにより、原料とガスとの接触機会が均一な状態となるように原料を攪拌することができ、ガスの供給位置となるノズルの分布を粗に調節することにより、原料とガスとの接触機会が不均一な状態となるように原料を攪拌することができる。ガスの供給分布を密に調節することにより、原料とガスとの接触機会が均一な状態となるように原料を攪拌することができ、ガスの供給分布を粗に調節することにより、原料とガスとの接触機会が不均一な状態となるように原料を攪拌することができる。例えば、ガスの供給位置の分布が同じであっても、各ノズルから噴出されるガス供給量を個々に異ならせることによってガスの供給分布を調節することができる。
【0042】
図2(a),
図2(b)には、反応炉2で主に燃焼反応を生起させて白色シリカを得るための第1ガス供給機構3(3A)が示され、
図3(a),
図3(b)には、反応炉2で主にガス化反応を生起させて黒色シリカを得るための第1ガス供給機構3(3B)が示されている。上述したように、第1ガス供給機構3(3A,3B)は、反応炉2の下部側方に配置されたヘッダー管30と、ヘッダー管30に互いに平行な姿勢で接続された複数本の散気管31を備えている。ヘッダー管30には、空気供給管32および蒸気供給管33が接続され、空気および蒸気の混合ガスがヘッダー管30を介して各散気管31に供給される。
【0043】
各散気管31は、反応炉2の下部周壁に沿う断面弧状のアタッチメント31Fに支持されている。アタッチメント31Fは、反応炉2の下部側壁に形成された弧状の切欠きを覆う形状に形成され、各散気管31の先端側を反応炉2に進入させた状態でアタッチメント31Fを反応炉2の側壁に固定することにより、複数本の散気管31が互いに並行姿勢で反応炉2に固定される。
【0044】
図2(a),
図2(b)に示すように、燃焼反応用の第1ガス供給機構3(3A)を構成する散気管31は、原料供給機構4から供給された籾殻が、反応炉2の軸心に直交する任意の平面内で局所的に高温領域が生じることなく均一に撹拌および燃焼するように、小径かつ多数本で構成されている。
【0045】
図3(a),
図3(b)に示すように、ガス化反応用の第1ガス供給機構3(3B)を構成する散気管31は、原料供給機構4から供給された籾殻が、反応炉2の軸心に直交する任意の平面内で不均一に流動することで大きな撹拌効果が得られるように、大径かつ少数本で構成されている。
【0046】
つまり、第1ガス供給機構3(3A,3B)により流動状態調節機構が構成され、第1ガス供給機構3A,3Bの何れを用いるかにより籾殻の流動状態が調節されることになり、主に燃焼反応させるか、主にガス化反応させるかを切り替えることができる。第1ガス供給機構3Aを第1ガス供給機構3Bに交換することで、原料を主に燃焼反応させることができ、第1ガス供給機構3Bを第1ガス供給機構3Aに交換することで、原料を主にガス化反応させることができる。
【0047】
換言すると、流動状態調節機構は、原料を主に燃焼反応させるべく第1ガス供給機構3によるガスの供給位置の分布を密にしてガスとの接触機会が均一な状態で原料を攪拌する第1流動状態と、原料を主にガス化反応させるべく第1ガス供給機構3によるガスの供給位置の分布を粗にしてガスとの接触機会が不均一な状態で原料を攪拌する第2流動状態との何れかに調節可能に構成されている。
【0048】
第1流動状態では、第1ガス供給機構3から供給されるガスの供給位置の分布が密となり、ガスが原料に均一に供給されるようになり、良好な燃焼反応が促進され、第2流動状態では、第1ガス供給機構3から供給されるガスの供給位置の分布が粗となり、ガスの上昇流に伴って原料が上昇する領域とガスが供給されずに原料が下降する領域とが生成されるようになり、良好なガス化反応が促進される。
【0049】
第1流動状態では、第1ガス供給機構3から供給される平面視における空気の供給位置の分布が密となり、流動層およびその上方空間で籾殻が均一に流動して空気との安定した接触機会が得られ、良好な燃焼反応が促進される。第2流動状態では、第1ガス供給機構3から供給される平面視における空気の供給位置の分布が粗となり、空気が供給されて籾殻に対して大きな上昇流が生じる領域と、空気が供給されずに籾殻に対して下降流が生じる領域とが生成され、流動層およびその上方空間で籾殻の上昇と下降が不均一な状態で繰り返される攪拌効果により、良好なガス化反応が促進される。
【0050】
以上の説明では、流動状態を調節するためにガスの供給位置の分布を調整する例を説明したが、流動状態を調節するためには、ガスの総量、供給位置、供給分布の少なくとも何れか一つを調整すればよく、ガスの総量、供給位置、供給分布の何れかまたは全てを組み合わせて調節することも可能である。
【0051】
図1に戻り、ヘッダー管30に接続された空気供給管32には、コンプレッサやブロワファンから供給される圧縮空気が供給され、空気供給管32に備えたバルブ32V(ダンパでもよい。)によりその供給量が調節される。また、ヘッダー管30に接続された蒸気供給管33には、二次燃焼設備8に備えた熱交換器で生成された過熱蒸気または反応炉2に備えた熱交換器である熱回収機構5で生成された過熱蒸気が供給され、蒸気供給管33に備えたバルブ33V(ダンパでもよい。)によりその供給量が調節される。符号34は、蒸気の流量計である。
【0052】
バルブ32Vが空気比調節機構として機能し、原料供給機構4から供給された籾殻に対する空気比を調節することで、籾殻を燃焼反応させるかガス化反応させるかの何れかに調節することができる。
【0053】
空気比調節機構は、籾殻を主に燃焼反応させるべく籾殻に対する理論空気比が1より大きな値となる第1の範囲と、籾殻を主にガス化反応させるべく理論空気比1未満の値となる第2の範囲との何れかに調節する機構である。
【0054】
籾殻に対する空気比を、理論空気比である1より大きな値となる第1の範囲に調節することで、籾殻を良好に燃焼反応させることができ、理論空気比である1未満の値となる第2の範囲に調節することで、籾殻を良好にガス化反応させることができる。
【0055】
第1の範囲は、空気比が1.3以上1.7以下の範囲であることが好ましい。空気比が1.3未満であると、シリカに炭素成分が残存して高品質の白色シリカが得られず、空気比が1.7より大きくなると、余剰空気による持ち出し熱量が多くなり、燃焼温度が低下して良好な燃焼状態を維持できない。また、第2の範囲は、空気比が0.2以上0.5以下の範囲であることが好ましい。空気比が0.2未満であると、熱分解が促進されず、空気比が0.5より大きくなると、炭素の一部が燃焼して良好な黒色シリカが得られない。
【0056】
なお、酸素含有ガスとして酸素富化空気など、空気以外のガスを用いる場合には、酸素含有ガス比調節機構を介して、原料に対する酸素含有ガスの比率が空気比換算して理論空気比1より大きな値となる第1の範囲に調節することで、原料である籾殻を良好に燃焼反応させることができ、原料に対する酸素含有ガスの比率が空気比換算して理論空気比1未満の値となる第2の範囲に調節することで、原料である籾殻を良好にガス化反応させることができる。酸素富化空気を用いる場合は、ガス量が減少するため、ガス供給機構から供給されるガスの総量を調整することにより、原料の流動状態を調節してもよい。
【0057】
同様に、第1の範囲は1.3以上1.7以下の範囲であることが好ましく、第2の範囲は0.2以上0.5以下の範囲であることが好ましい。
【0058】
第1ガス供給機構3として、
図2(a),
図2(b)に示す燃焼反応用の第1ガス供給機構3(3A)を用いることにより、白色の非晶質シリカを得る製造装置1が実現できる。制御装置(
図5参照。)により、空気比が1.3以上1.7以下の範囲に入るようにバルブ32Vの開度が調節され、反応炉2の拡径部REより下方の第1領域R1での温度が400℃~600℃の範囲に調節される。また反応炉2の拡径部より上方の第2領域R2での温度が750℃~850℃までの範囲に入るように、後述するバルブ6Vを介して第2ガス供給機構6からの供給空気量、およびバルブ5Vを介して熱回収機構5による熱回収量が調節される。そのために、熱回収機構5の下流側および上流側に設置された第1の温度センサTH1および第2の温度センサTH2の出力が制御装置に入力されている。
【0059】
この時の燃焼反応は、以下の反応式により表される。
C+O2 → CO2
CO+(1/2)・O2 → CO2
【0060】
第1ガス供給機構3として、
図3(a),
図3(b)に示すガス化反応用の第1ガス供給機構3(3A)を用いることにより、黒色の非晶質シリカを得る製造装置1が実現できる。制御装置(
図5参照。)により、空気比が0.2以上0.5以下の範囲に入るようにバルブ32Vの開度が調節され、反応炉2の第1領域R1での温度が500℃~600℃の範囲に、また第2領域での温度が700℃~800℃までの範囲に入るように後述するバルブ6Vを介して第2ガス供給機構6からの供給空気量などが調節される。このとき蒸気供給管33に供給される蒸気は、二次燃焼設備8に備えた熱交換器で生成された過熱蒸気が使用される。
【0061】
この時のガス化反応は、主に水性ガス反応である。水性ガス反応とは、次式に示すように、500℃以上の高温環境下でバイオマスである固体炭素Cと水蒸気H2Oとから一酸化炭素COと水素H2が生成される吸熱反応をいう。蒸気に加えて少量の空気を反応炉2に供給することで、籾殻の一部の燃焼により必要な反応熱が与えられ、かつ、炉内温度が500℃以上の高温環境下に保持される。なお、第2ガス供給機構6により供給される酸素含有ガスにより一酸化炭素は完全燃焼される。
C+H2O → CO+H2
CO+(1/2)・O2 → CO2
【0062】
本実施形態では、蒸気供給管33から圧力1MPa以下で、温度120℃~160℃の過熱蒸気が供給される。
反応炉2に供給される蒸気は、原料の初期加熱のため、水性ガス反応や燃焼反応によるシリカの比表面積の上昇などを含む賦活化のため、またその後の燃焼反応による炉内の雰囲気温度の異常な上昇の抑制のために用いられ、バルブ33Vによりその供給量が適切に調節される。主に水性ガス反応させる場合は、水蒸気の比率を高めて賦活化を促進させ、酸素含有ガスは炉内温度を保持できる最少量を供給する。主に燃焼反応させる場合は、酸素含有ガスの比率を高めて燃焼反応を促進させ、水蒸気は燃焼反応による局所高温場の生成を抑制する効果を有している。
【0063】
[第2ガス供給機構の構成]
図1および
図4(a),(b)に示すように、第2ガス供給機構6は、反応炉2の炉頂部2Aに備えた排気口2Bから下方に向けて設置された給気管6Aと、給気管6Aの下端に連結された断面が円形の環状のヘッダー管6Bとで構成され、ヘッダー管6Bに、複数の第1ノズルN1と複数の第2ノズルN2が、其々所定のピッチで環状に配列するように形成されている。給気管6Aには、流量調整用のバルブ6Vが設置されている。ヘッダー管6Bは、熱交換器5の直下で第2領域R2に設置されている。
【0064】
炉頂部2Aは反応炉2の側壁に対して着脱可能にフランジ接続され、側壁から炉頂部2Aを取り外すことで、反応炉2の内部から熱交換器5と第2ガス供給機構6を取り出してメンテナンスし、その後、再度反応炉2の内部に設置することができるように構成されている。
【0065】
第1ノズルN1と第2ノズルN2は、環状のヘッダー管6Bの中心O1と其々のノズルの形成位置とを含む鉛直面上で、ヘッダー管6Bの断面の中心O2を通る鉛直線Vに対して其々所定の傾斜角度θ1、θ2だけ傾斜するように形成された開口で構成されている。
【0066】
そのため、第1ノズルN1から、鉛直線Vに対して反応炉2の中心側下方に向けて第1傾斜角度θ1の方向に酸素含有ガスが噴射され、第2ノズルN2から、鉛直線Vに対して反応炉2の反中心側下方、つまり直近の内壁下方に向けて第2傾斜角度θ2の方向に酸素含有ガスが噴射される。そして、第2傾斜角度θ2は第1傾斜角度θ1より小さな値に設定されている。なお、其々の開口に筒状体を突出するように設置し、その筒状体により第1ノズルN1と第2ノズルN2を構成してもよい。
【0067】
反応炉2の第1領域R1から第2領域R2に流入するガスのうち拡径部REの側壁(内壁)に沿って流れるガスG2に対して、第2ノズルN2から供給される酸素含有ガスとの混合が促進される。反応炉2の第1領域R1から第2領域R2に流入するガスのうち拡径部REの側壁(内壁)から離れた中央部側に流れるガスG1に対して第1ノズルN1から供給される酸素含有ガスとの混合が促進される。ともに、第2領域R2に流入するガスに含まれる未燃焼のバイオマス片を第1領域R1に向けて落下させ、全体として効果的に酸素含有ガスとの攪拌混合を促進することができるようになる。
【0068】
第2ノズルN2から噴射される酸素含有ガスが第2領域R2側から拡径部REに向けて供給されることで、拡径部REの内壁に沿って流れるガスに効率的に酸素含有ガスが供給される。
【0069】
ヘッダー管6Bの径、つまりヘッダー管6Bの中心O1からヘッダー管6Bの断面の中心O2までの径は、反応炉2の径に応じて適宜設定することができ、第2領域R2の径の60~90%の範囲に設定されることが好ましい。
【0070】
また、第1ノズルN1と第2ノズルN2は、中心O1から其々10°の間隔で36個ずつ形成され、第1ノズルN1と第2ノズルN2の間隔は中心O1から5°の間隔で形成されている。第1ノズルN1と第2ノズルN2の開口径は其々5mmに設定されている。
【0071】
ヘッダー管6Bの径は、少なくとも第1領域R1の径以上で第2領域R2の径未満の値に設定されることが好ましい。また、ヘッダー管6Bの断面の径は、ヘッダー管6Bの径の5~10%程度の値であることが好ましい。ヘッダー管6Bの断面の径が大き過ぎると、第2領域R2に流入するガスの流れを妨げることになるからである。
【0072】
第1傾斜角度θ1は35°≦θ1≦55°の範囲に設定されることが好ましく、40°≦θ1≦50°の範囲に設定されることがより好ましい。また、第2傾斜角度θ2は0°<θ2≦22°の範囲に設定されていることが好ましく、10°<θ2≦17.5°の範囲に設定されていることがさらに好ましい。第1傾斜角度θ1および第2傾斜角度θ2を上述の範囲に設定することで、全体として効果的に酸素含有ガスとの攪拌混合を促進することができ、適切にガス成分の組成の調整ができるようになる。
【0073】
さらに、第1ノズルN1から供給される酸素含有ガスの供給量と、第2ノズルN2から供給される酸素含有ガスの供給量とが調整可能に構成されていることが好ましい。上述した熱処理状態調節機構Aによる調節状態により、第1領域R1から第2領域R2に流れるガスの状態が変化する場合でも良好に魁皇することができるようになる。例えば、第1ノズルN1と第2ノズルN2の開口径を異ならせることにより実現できる。また、第1ノズルN1用のヘッダー管と第2ノズルN2用のヘッダー管を別々に設けて、其々のヘッダー管に接続される給気管に備えたバルブ6Vの開度を個別に調節するように構成してもよい。
【0074】
バイオマスの組成や第1ガス供給機構3から供給される混合ガスの流量によって生じるガス流の流動状態や流量に変動がある場合でも、第1ノズルN1と第2ノズルN2の酸素含有ガスの供給量が調整可能であれば第2ガス供給機構の汎用性が高まる。
【0075】
図5には、非晶質シリカの製造装置1を制御する制御装置Cの構成が示されている。制御装置Cには、第1の温度センサTH1、第2の温度センサTH2、蒸気流量計34、二次燃焼設備8に備えたボイラから出力される蒸気の温度を検出する蒸気温度センサTH3などのセンサの値が入力されるとともに、熱処理状態調節機構により調節された熱処理状態が主に燃焼反応を促すものであるのか、主にガス化反応を促すものであるのかの識別信号が入力されている。
【0076】
制御装置Cは、熱処理状態調節機構により調節された熱処理状態が主に燃焼反応である場合には、反応炉2の第1領域の燃焼温度が500℃~600℃に入るように、第2の温度センサTH2の値に基づいて、バルブ32Vの開度を調節するとともにバルブ6Vの開度を調節して第2ガス供給機構6からの給気量を調節し、併せてバルブ33Vの開度を調節する。さらに、第1の温度センサTH1の値に基づいて、反応炉2の第2領域R2の燃焼温度が750℃~800℃に入るように、すなわち、非晶質シリカが結晶化する相転移温度域より低い温度となるように、バルブ5Vの開度を調節して熱回収機構5に供給するボイラ水の流量を調節する。
【0077】
制御装置Cは、熱処理状態調節機構により調節された熱処理状態が主にガス化反応である場合には、第2の温度センサTH2の値に基づいて、反応炉2の第1領域R1の燃焼温度が500℃~600℃に入るように、また第1の温度センサTH1の値に基づいて、第2領域R2の燃焼温度が700℃~800℃に入るように、バルブ32Vの開度を調節するとともに第2ガス供給機構6からの給気量を調節し、併せてバルブ33Vの開度を調節する。
【0078】
このとき、第2領域R2の燃焼温度が800℃を超えることが無ければ、熱回収機構5に供給するボイラ水の流量を調節する必要はない。第2の温度センサTH2は、第1領域R1の温度がモニタできる位置であればよく、熱回収機構5より上流側であれば、第1領域R1または第2領域R2の何れに設置されていてもよい。
【0079】
本実施形態では、バイオマスとして籾殻が用いられるが、本発明の適用対象は籾殻に限るものではなく、稲わら、麦わら、竹、トウモロコシ、サトウキビ、薄、トクサなどケイ酸植物由来のバイオマスを用いることも可能になる。
【0080】
上述した実施形態では、第1ガス供給機構3が、水蒸気と酸素含有ガスの一例である空気の混合ガスを供給するように構成された例を説明したが、上述した酸素含有ガス比調節機構および流動状態調節機構の各構成を備えていれば、水蒸気と酸素含有ガスを其々個別に供給するように構成してもよい。
【0081】
原料をガスと良好に接触させるためには、珪砂の粒径は0.05mmから2mmの範囲であることが好ましい。また、反応炉2の内部で原料をガスと接触させながら熱処理できれば、反応炉2の内部に珪砂を投入することが必須ではない。
【0082】
以上、資源循環装置として非晶質シリカの製造装置を説明したが、特許文献1に挙げたような、稲わら、もみ殻、木くず等の非可食原料をガス化炉に投入して水性ガス反応によりガス化し、得られたガスをFT合成により液体燃料化するようなプランにおけるガス化炉に本発明の資源循環装置を適用して、述した第2ガス供給機構を組込むことで、水素ガスと一酸化炭素ガスの比率H2/COを調整してもよい。
【0083】
上述した第2ガス供給機構の具体的構造を検証するシミュレーションを行なった結果を説明する。
汎用熱流体解析ソフトFluent ver.18.0を使用して、上述した実施形態で説明した非晶質シリカの製造装置に対応する実機スケールの三次元熱流体解析モデルに基づいて、バイオマスの処理量10トン/日を達成しながら、反応炉からの流出ガスの一酸化炭素ガス濃度が指定の目標量(ここでは、60ppm)を達成可能な第2ガス供給機構の構造、具体的に第1傾斜角度θ1、第2傾斜角度θ2の適正値を、渦度を評価指標としてシミュレーションした。
【0084】
解析モデルのメッシュ数は約355万であり、乱流モデルにはRealizable k‐εモデル、輻射にはDOモデルを使用した。
図2の第1領域R1流通後のガスをサンプリングし、その成分分析の結果から可燃分であるH
2(水素)、CH
4(メタン)、C
2H
4(エチレン)、CO(一酸化炭素)、C(炭素)の量を求めた。これらの可燃分の燃焼は、汎用ソフトの有限速度/渦消散モデルにより、下式でモデル化した。
H
2 + 1/2O
2 → H
2O
CH
4 + 2O
2 → CO
2 + 2H
2O
C
2H
4 + 2O
2 → 2CO
2 + 2H
2O
CO+ 1/2O
2 → CO
2
C + O
2 → CO
2
【0085】
その結果、
図8に示すような結果が得られ、実炉の検証結果と整合性が確認された。即ち、第1傾斜角度θ1=45°の場合では、第2傾斜角度θ2の値が、0°<θ2≦22°の範囲に設定されていることが好ましく、10°<θ2≦17.5°の範囲に設定されていることがさらに好ましいことが判明した。
【0086】
以上の説明は、本発明による資源循環装置の一具体例に過ぎず、当該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、また各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0087】
1:非晶質シリカの製造装置
2:反応炉
3:第1ガス供給機構
30:ヘッダー管
31:散気管
32:空気供給管
32V:バルブ
33:蒸気供給管
33V:バルブ
4:原料供給機構
5:熱回収機構
6:第2ガス供給機構
6A:給気管
6B:ヘッダー管
6V:バルブ
N1:第1ノズル
N2:第2ノズル
7:サイクロン
8:二次燃焼設備
9:噴流床
10:排気管
A:熱処理状態調節機構