(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090428
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両、プログラム及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/04 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
B60W30/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206342
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕之
(72)【発明者】
【氏名】天野 真輝
(72)【発明者】
【氏名】服部 達哉
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA19
3D241BA49
3D241BB21
3D241BB22
3D241BC01
3D241CA01
3D241CA18
3D241CC01
3D241CC09
3D241CE09
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DB13Z
3D241DB15Z
3D241DB16Z
3D241DB46Z
3D241DB47Z
3D241DC45Z
(57)【要約】
【課題】様々な積載物を積載する車両において、傾斜路走行時における転倒を防止可能な車両制御装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、取得部と、算出部と、出力部とを備える。取得部は、車両の姿勢に関するパラメータを取得する。算出部は、パラメータと、車両の質量とに基づいて、車両に作用するモーメントを算出する。算出部は、モーメントと、所定の算出式とに基づいて、車両が具備する各車輪にかかる輪荷重の差分の増大を抑制する制御量を算出する。出力部は、制御量に応じて、車両を制御する制御信号を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両制御装置であって、
取得部と、算出部と、出力部とを備え、
前記取得部は、車両の姿勢に関するパラメータを取得し、
前記算出部は、前記パラメータと、前記車両の質量とに基づいて、前記車両に作用するモーメントを算出し、
前記算出部は、前記モーメントと、所定の算出式とに基づいて、前記車両が具備する各車輪にかかる輪荷重の差分の増大を抑制する制御量を算出し、
前記出力部は、前記制御量に応じて、前記車両を制御する制御信号を出力する、
車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記モーメントは、前記車両に生じる慣性力及び重力、に関するモーメントを含む、
車両制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記算出部は、前記車両の重心位置を算出し、
前記算出部は、前記重心位置と、前記質量とに基づいて、前記重心位置における慣性に関する慣性値を算出し、
前記算出部は、前記慣性値と、前記モーメントと、前記算出式とに基づいて、前記制御量を算出する、
車両制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記取得部は、前記車両の3軸周りの角速度及び角加速度の少なくとも一方を取得し、
前記算出部は、前記角速度及び前記角加速度の少なくとも一方と、前記モーメントと、前記算出式とに基づいて、前記制御量を算出する、
車両制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記取得部は、前記車両の加速度である第1加速度を取得し、
前記算出部は、前記第1加速度と、前記パラメータとに基づいて、前記第1加速度を補正した第2加速度を算出し、
前記算出部は、前記第2加速度と、前記質量とに基づいて、前記モーメントを算出する、
車両制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両制御装置において、
前記第1加速度は、前記車両の3軸における加速度である、
車両制御装置。
【請求項7】
請求項5に記載の車両制御装置において、
前記第2加速度は、前記パラメータから算出される前記車両の傾斜方向と、前記パラメータから算出される重力加速度とに基づいた成分に関する方向成分を前記第1加速度に適用して、前記第1加速度を補正したものである、
車両制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記取得部は、前記パラメータを連続的に取得し、
前記算出部は、連続的に取得された前記パラメータと、前記車両の質量とに基づいて、前記モーメントを連続的に算出し、
前記算出部は、連続的に算出された前記モーメントと、前記算出式とに基づいて、前記制御量を時系列で連続的に算出し、
前記出力部は、連続的に算出された前記制御量に応じて、前記制御信号を時系列で連続的に出力する、
車両制御装置。
【請求項9】
車両であって、
検出部と、請求項1から8までの何れか1項に記載の車両制御装置とを備え、
前記検出部は、前記車両の運動に関する情報を検出し、
前記車両制御装置は、検出された前記情報を受信する、
車両。
【請求項10】
プログラムであって、
請求項1から8までの何れか1項に記載の車両制御装置の各部としてコンピュータを機能させる、
プログラム。
【請求項11】
車両制御方法であって、
請求項1から8までの何れか1項に記載の車両制御装置の各部により実行される処理を、各工程として備える、
車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両、プログラム及び車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、転倒回避装置が開示されている。
【0003】
この転倒回避装置は、少なくとも1つの車輪におけるブレーキ力の低下手段を有する車両のブレーキ過程における転倒の回避装置において、車両の傾斜角の決定手段が設けられており、ブレーキ力の低下手段が、傾斜角の関数として作動可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された装置では、様々な積載物を積載する車両において、傾斜路走行時における転倒を防止することができなかった。
【0006】
本発明では上記事情を鑑み、様々な積載物を積載する車両において、傾斜路走行時における転倒を防止可能な車両制御装置を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、取得部と、算出部と、出力部とを備える。取得部は、車両の姿勢に関するパラメータを取得する。算出部は、パラメータと、車両の質量とに基づいて、車両に作用するモーメントを算出する。算出部は、モーメントと、所定の算出式とに基づいて、車両が具備する各車輪にかかる輪荷重の差分の増大を抑制する制御量を算出する。出力部は、制御量に応じて、車両を制御する制御信号を出力する。
【0008】
このような態様によれば、様々な積載物を積載する車両において、傾斜路走行時における転倒を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】車両600のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】車両制御装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】車両制御装置100(制御部110)によって実現される機能を示すブロック図である。
【
図5】制御量演算部32による処理を説明するための図である。
【
図6】地上座標系に対する車両座標系及びタイヤ座標系を示す図である。
【
図7】積載物602のリフト高さの違いによる慣性主軸の違いを概略的に示したイメージ図である。
【
図8】傾斜角Θの傾斜路を直進登坂中の車両600を示す図である。
【
図9】傾斜角Θの傾斜路を横切って走行中の車両600を示す図である。
【
図10】4輪の車両600を用いて、車両制御装置100によって実行される前後転倒防止制御で実行される情報処理の流れを示すアクティビティ図である。
【
図11】4輪の車両600を用いて、車両制御装置100によって実行される前後転倒防止制御で実行される情報処理の流れを示すアクティビティ図である。
【
図12】車両制御装置100(制御部110)によって実現される機能を示すブロック図である。
【
図13】制御量演算部320による処理を説明するための図である。
【
図14】4輪の車両600を用いて、車両制御装置100によって実行される横転防止制御で実行される情報処理の流れを示すアクティビティ図である。
【
図15】4輪の車両600を用いて、車両制御装置100によって実行される横転防止制御で実行される情報処理の流れを示すアクティビティ図である。
【
図16】3輪の車両600を用いて、車両制御装置100によって実行される前後転倒防止制御で実行される情報処理の流れを示すアクティビティ図である。
【
図17】3輪の車両600を用いて、車両制御装置100によって実行される前後転倒防止制御で実行される情報処理の流れを示すアクティビティ図である。
【
図18】3輪の車両600を用いて、車両制御装置100によって実行される横転防止制御で実行される情報処理の流れを示すアクティビティ図である。
【
図19】3輪の車両600を用いて、車両制御装置100によって実行される横転防止制御で実行される情報処理の流れを示すアクティビティ図である。
【
図20】3輪の車両600を用いて、傾斜路(下り坂)を直進走行させて制動を行った状態を示す図である。
【
図21】前後転倒防止制御を行った場合と行わなかった場合の波形データを示す図である。
【
図22】3輪の車両600を用いて、傾斜路を走行させて前進左旋回を行わせた状態を示す図である。
【
図23】横転防止制御を行った場合と行わなかった場合の波形データを示す図である。
【
図24】前後転倒防止制御と横転防止制御とを組み合わせた機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の第1実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。なお、第1実施形態と第2実施形態とを合わせて、本実施形態という場合がある。
【0011】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0012】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0013】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0014】
1.ハードウェア構成
第1節では、本実施形態のハードウェア構成について説明する。
【0015】
1-1.車両600
図1は、車両600の構成を示す概略図である。車両600は、車体601、積載物602、フォーク603、アウターマスト604、インナーマスト605、タイヤ前輪606、タイヤ後輪607及びIMU200を備えるものとする。ここでは、IMU200は、極めて軽量であるため、車両600の重心に影響を与えないものとして考える。
図1では、各構成部位の重心位置に、重心位置を示すマークを示し、各構成部位の符号の末尾に「A」を付加した符号で示している。なお、重心位置を示す円の大きさは、各構成部位の大小を概略的に表している。なお、以下において、積載物602を含む車両600を「車両全体600」ともいう。
【0016】
第1実施形態では、重心に変動を与える要素を含む車両600の一例として、上下に稼働可能なフォーク603に積載物602を積載して走行する、前後左右4つの車輪を備え、前輪駆動、後輪操舵のフォークリフトについて、各輪荷重を推定する場合について説明する。また、第1実施形態では、車両600の前後加速度、横加速度、ロール角速度、ピッチ角速度、ヨー角速度、姿勢角を含む車両挙動が計測されることを前提とする。また、第1実施形態では、積載物602の質量、リフト高さ、フォーク603に対する積載物602の積載位置が検知できることを前提条件とする。
【0017】
図2は、車両600のハードウェア構成を示すブロック図である。車両600は、車両制御装置100と、検出部とを備える。検出部は、IMU200と、圧力センサ300と、エンコーダ400と、操作量センサ500とが該当しうる。車両制御装置100には、IMU200と、圧力センサ300と、エンコーダ400と、操作量センサ500とが接続されている。
【0018】
各検出部は、車両600の運動に関する情報を検出する。車両制御装置100は、各検出部で検出された情報を受信する。車両600は、積載物602を様々な状態で積載して走行する車両、例えば、フォークリフト、トラック、バス等が該当しうる。本実施形態では、車両600をフォークリフトとして説明する。ここでは、IMU200、圧力センサ300、エンコーダ400及び操作量センサ500についてさらに説明する。
【0019】
IMU200は、Inertial Measurement Unitの略であり、上述したように、車両600の任意の位置に配置され、車両座標系の3軸の各軸周りの角速度、及び各軸方向の加速度を検出し、検出値を出力する。
【0020】
圧力センサ300は、積載物602が積載されるフォーク603の積載面全面に設けられる。圧力センサ300は、例えばシート状のセンサであり、積載面の各位置にかかった圧力を検出し、検出値を出力する。
【0021】
エンコーダ400は、インナーマスト605を上下させるための荷揚げ油圧モータの回転角を検出し、検出値を出力する。
【0022】
操作量センサ500は、アクセルペダル踏み込み量、ブレーキペダル踏み込み量、及び操舵角の各々を検出し、検出値を出力する。
【0023】
1-2.車両制御装置100
図3は、車両制御装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。車両制御装置100は、制御部110と、記憶部120と、表示部130と、入力部140と、通信部150とを有し、これらの構成要素が車両制御装置100の内部において通信バス160を介して電気的に接続されている。各構成要素についてさらに説明する。
【0024】
制御部110は、車両制御装置100に関連する全体動作の処理・制御を行う。制御部110は、例えば、不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部110は、記憶部120に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、車両制御装置100に係る種々の機能を実現する。すなわち、記憶部120に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例である制御部110によって具体的に実現されることで、制御部110に含まれる各機能部として実行されうる。これらについては、第2節においてさらに詳述する。なお、制御部110は単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部110を有するように実施してもよい。またそれらの組み合わせであってもよい。
【0025】
記憶部120は、車両制御装置100の情報処理に必要な様々な情報を記憶する。これは、例えば、制御部110によって実行される車両制御装置100に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。また、これらの組み合わせであってもよい。
【0026】
表示部130は、車両制御装置100の筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。表示部130は、ユーザが操作可能なグラフィカルユーザインターフェース(Graphical User Interface:GUI)の画面を表示する。これは例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイ等が該当しうる。
【0027】
入力部140は、車両制御装置100の筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。例えば、入力部140は、表示部130と一体となってタッチパネルとして実施されてもよい。タッチパネルであれば、ユーザは、タップ操作、スワイプ操作等を入力することができる。もちろん、タッチパネルに代えて、スイッチボタン、マウス、QWERTキーボード等を採用してもよい。すなわち、入力部140は、ユーザによってなされた操作入力を受け付ける。当該入力は、命令信号として、通信バス160を介して制御部110に転送される。そして、制御部110は、必要に応じて所定の制御や演算を実行しうる。
【0028】
通信部150は、USB、IEEE1394、Thunderbolt(登録商標)、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいものの、無線LANネットワーク通信、5G/LTE/3G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等を必要に応じて含めてもよい。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。すなわち、車両制御装置100は、通信部150を介して、各構成要素と種々の情報を通信する。
【0029】
2.機能構成
第2節では、本実施形態の機能構成について説明する。前述の通り、記憶部120に記憶されているソフトウェアによる情報処理がハードウェアの一例である制御部110によって具体的に実現されることで、制御部110に含まれる各機能部として実行されうる。
【0030】
図4は、車両制御装置100(制御部110)によって実現される機能を示すブロック図である。具体的には、車両制御装置100(制御部110)は、操作量取得部10と、制御パラメータ変更部12と、輪荷重変動算出部14と、閾値記憶部16と、第1閾値比較部18と、輪荷重差判定部20と、第2閾値比較部22と、制御選択部24と、転倒防止制御部26と、制御量切替部28と、制駆動力指令値設定部30と、制駆動力発生部37とを備える。転倒防止制御部26は、制御量演算部32と、制駆動力算出部34と、ローパスフィルタ処理部36とを備える。閾値記憶部16は、記憶部120によって実現される機能部である。また、制御部110の機能部は、輪荷重取得部38、記憶部120、及びIMU200と接続されている。
【0031】
換言すると、車両制御装置100(制御部110)は、取得部と、算出部と、出力部とを備える。
図4に示す各機能部は、取得部、算出部、又は出力部に明確に区別される必要はなく、複数の機能を有するものであってもよい。
【0032】
操作量取得部10は、ドライバの操舵、アクセル、ブレーキ(含回生)の各操作量及びドライバ操作に基づく前記車両の駆動輪の制動力及び駆動力の制御量FDRV(i)を取得する。具体的には、ドライバの操舵、アクセル、ブレーキ(含回生)の各操作量を取得するとともに、それに基づき決定される左右輪の制動力又は駆動力の制御量FDRV(i)を取得する。ただし、添え字iは、各輪の識別子であり、FL輪:i=1、FR輪:i=2である。なお、後述では、RL輪:i=3、RR輪:i=4についても使用する。
【0033】
制御パラメータ変更部12は、車両600が停止状態における各輪についての輪荷重、及び左右輪の輪荷重の差を取得する。制御パラメータ変更部12は、取得した車両制御装置100が停止状態における各輪についての輪荷重に応じ、後述する制御量演算部32の車両座標系における重心位置、重心高、慣性値等を変更する。
【0034】
輪荷重変動算出部14は、取得した車両600の現時点における各輪の輪荷重から、取得した車両600の停止状態における各輪荷重を差し引いて、各輪の輪荷重変動を算出する。ここで、輪荷重変動算出部14は、車両挙動に基づく輪荷重変動の推定値を用いてもよい。
【0035】
閾値記憶部16は、車両600が停止状態における各輪についての輪荷重、及び左右輪の輪荷重の差を取得する。閾値記憶部16は、取得した、車両600が停止状態における各輪についての輪荷重、及び左右輪の輪荷重の差に応じて、各輪の輪荷重に関する第1閾値及び第2閾値、前輪の左右輪の輪荷重の差に関する第3閾値、及び後輪の左右輪の輪荷重の差に関する第4閾値を設定し、記憶する。
【0036】
ここで、第1閾値は、各輪についての転倒防止制御の開始を判断するための開始判断閾値であり、第2閾値は、各輪についての転倒防止制御の終了を判断するための終了判断閾値である。第2閾値は第1閾値よりも大きな値に設定される。例えば、閾値記憶部16は、各輪荷重検出値の30%を各輪の第1閾値に設定し、各輪荷重検出値の40%を各輪の第2閾値に設定し、第3閾値を、前左右輪荷重の和の平均の30%、第4閾値を後左右輪荷重の和との平均の30%に設定してもよい。第1閾値、第2閾値、第3閾値、及び第4閾値は、具体的には例えば、10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0037】
閾値記憶部16は、設定した各輪の第1閾値、各輪の第2閾値、第3閾値、及び第4閾値を記憶している。
【0038】
第1閾値比較部18は、各輪について、輪荷重検出値と第1閾値とを比較し、少なくとも1つの輪荷重検出値が第1閾値未満であるか否かを判定する。少なくとも1つの輪荷重検出値が第1閾値未満であれば、輪荷重差判定部20により、左右輪の荷重差が閾値未満であるか否かを判定し、左右輪の荷重差が閾値未満であれば、制御選択部24により、前後転倒防止制御が開始される。
【0039】
制御選択部24は、第1閾値比較部18により、少なくとも1つの輪荷重検出値が第1閾値未満であると判定されると、前輪の左右輪の輪荷重の差の、第3閾値との比較結果、又は後輪の左右輪の輪荷重の差の、第4閾値との比較結果に応じて、前後転倒防止制御を開始する。
【0040】
具体的には、次の(1)~(3)の全てを満たす場合、車両600の駆動輪の制動力又は駆動力を制御する前後転倒防止制御を開始する。(1)少なくとも1つの輪荷重検出値が、第1閾値未満であること、(2)第1閾値未満となる輪荷重検出値が、前輪のものであること、(3)前輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第3閾値未満であること。
【0041】
また、次の(1)~(3)の全てを満たす場合も、車両600の駆動輪の制動力又は駆動力を制御する前後転倒防止制御を開始する。(1)少なくとも1つの輪荷重検出値が、第1閾値未満であること、(2)第1閾値未満となる輪荷重検出値が、後輪のものであること、(3)後輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第4閾値未満であること。
【0042】
第2閾値比較部22は、各輪について、輪荷重検出値と第2閾値とを比較し、全ての輪荷重検出値が第2閾値より大きいか否かを判定する。全ての輪荷重検出値が第2閾値より大きい場合には、転倒防止制御を終了する。
【0043】
転倒防止制御部26は、車両全体600の重心周りの慣性値(慣性テンソル)と、取得された各輪についての輪荷重変動と、運動状態の検出値とを用い、駆動輪の制動力又は駆動力を制御する際の制御量を算出する。
【0044】
具体的には、転倒防止制御部26は、制御量演算部32、制駆動力算出部34及びローパスフィルタ処理部36を備えている。
【0045】
制御量演算部32は、車両全体600の重心周りの慣性値(慣性テンソル)と、取得された各輪についての輪荷重変動と、運動状態の検出値とを用い、ピッチモーメント制御量PMを算出する。
【0046】
図5は、制御量演算部32による処理を説明するための図である。
【0047】
制駆動力算出部34は、ピッチモーメント制御量PMが得られるように、前輪の左右輪の制動力又は駆動力の制御量F
FL、F
FRを求める。
図5に示すDirは前進、後進を示すフラグであり、前進は「+1」、後進は「-1」である。また、ピッチモーメント制御量PMを、重心高h
CGで除してタイヤ制駆動力に変換し、さらに1/2で除して左右輪のタイヤ制駆動力(F
FL、F
FR)に分配する。
【0048】
制御量切替部28は、前後転倒防止制御を開始した場合には、転倒防止制御部26により得られた制動力又は駆動力の制御量FFL、FFRを出力する。また、制御量切替部28は、前後転倒防止制御を終了した場合には、操作量取得部10によって取得された制動力又は駆動力の制御量FDRV(i)を出力する。
【0049】
ローパスフィルタ処理部36は、前後転倒防止制御有り無しの切り替えによる制駆動力の急変を抑えるため、ローパスフィルタ処理を行う。
【0050】
制駆動力指令値設定部30は、ローパスフィルタ処理部36によって出力された制動力又は駆動力の制御量FFL、FFRを、左右輪の制動力又は駆動力の指令値FLFX、FRFXとして設定する。
【0051】
制駆動力発生部37は、制駆動力指令値設定部30から受信した設定信号に基づいて、駆動輪の左右輪の制動力又は駆動力の指令値FLFX、FRFXを発生させる。
【0052】
3.原理
第3節では、第1実施形態の原理について説明する。
【0053】
図6(A)は、地上座標系に対する車両座標系を示す図である。車両座標系において、車両600の前後方向がx軸方向、車両600の横方向(幅方向)がy軸方向、車両600の鉛直方向がz軸方向である。また、
図6(B)はタイヤ座標系を示す図である。タイヤ前輪606、タイヤ後輪607において、タイヤ前後方向がx軸方向、タイヤ横方向(幅方向)がy軸方向、鉛直方向がz軸方向である。ここで、地上座標系、車両座標系、及びタイヤ座標系は、いずれも右手系とする。
【0054】
フォークリフトは乗用車とは異なり、質量の大きな積載物を様々なリフト高さで持ち上げた状態で走行する。また、積載物の積載位置が、フォークリフトの重心位置に対してy方向(フォークリフトの横方向)にずれる場合もある。このような積載物の積載状態によって、ロール、ピッチ、及びヨーの各回転軸(3軸)に対して、慣性主軸が変化する。そこで、第1実施形態では、慣性モーメント係数及び慣性乗積を、積載物の積載状態に応じて設定する。
【0055】
図7は、積載物602のリフト高さの違いによる慣性主軸の違いを概略的に示したイメージ図である。
図7(A)のように、積載物602を積載したリフトの高さが低い場合と、
図7(B)のように、リフトの高さが高い場合とでは、慣性主軸が変化する。
【0056】
図7に示すような積載物602の積載状態の違いに対応するため、
図6、及び下記(1)~(3)式に示す車両の6自由度モデルを用いて、車両運動を記述する。なお、(1)式は車両600の回転運動、(2)式は車両600の並進運動、(3)式は地上座標系(
図6中のxe、ye、zeの座標系)に対する車両座標系(
図6中のx、y、zの座標系)の姿勢の更新を表した式である。
【0057】
【0058】
(1)~(3)式において、P、Q、及びRはロール、ピッチ、及びヨーの各角速度[rad/s]、Lv、Mv、及びNvはロール、ピッチ、及びヨーの各モーメント[Nm]である。また、U、V、及びWは車両座標系におけるx、y、及びz軸の各方向の速度[m/s]、φ、θ、及びψは地上座標系に対する車両座標系の姿勢角[rad]である。また、Xv、Yv、及びZvは車両600に作用する前後力、横力、及び上下力[N]である。また、Jallはx、y、及びz軸の各方向の慣性モーメント係数及び慣性乗積から成る慣性テンソル[kg・m2]、Mallは積載物及び車両質量を合わせた総質量[kg]である。なお、慣性テンソルは、請求項の「慣性値」に相当する。
【0059】
図8は、傾斜角Θの傾斜路を直進登坂中の車両600を示す図である。
図9は、傾斜角Θの傾斜路を横切って走行中の車両600を示す図である。
図8及び
図9に、(1)式のロールモーメントL
v、ピッチモーメントM
v、及びヨーモーメントN
vの各々に関わる作用力を示す。
図8のA点はピッチ回転中心であり、静止時の車両全体600の重心を通る鉛直線と地上面とが交わる点としている。
図9のB点はロール回転中心であり、静止時の車両全体600の重心を通るロール軸と地上面とが交わる点としている。
【0060】
CGallは車両全体600の重心、GxCG及びGyCGは車両全体600の重心CGallにおける前後加速度及び横加速度[m/s2]、gは重力加速度[m/s2]である。また、ΔFLz、ΔFRz、ΔRLz、及びΔRRzは前後左右各輪の輪荷重の変動分[N]、図示しないFLFxt、及びFRFxtは前左右輪の前後駆動力FLFx、FRFxによるタイヤ座標系でのタイヤ前後力[N]であり、FLFyt、FRFyt、RLFyt、及びRRFytはドライバ操舵時の車両運動により生じるタイヤ座標系での各輪のタイヤ横力[N]である。また、hCGは地上面とCGallとのz軸方向の距離(重心高)[m]、hRは地上面とA点とのz軸方向の距離(ロールセンタ)[m]、tl及びtrはCGallに対する左右各輪のy軸方向の距離[m]、lf及びlrはCGallに対する前後各輪のx軸方向の距離[m]である。
【0061】
第1実施形態では、(1)式の車両の回転運動に関わる部分を利用する。(1)式の慣性テンソルJallの設定について説明する。
【0062】
下記(4)式に慣性テンソルJallの構成を示す。(4)式右辺において、対角項が慣性モーメント係数、非対角項が慣性乗積である。
【0063】
【0064】
(4)式において、添え字jは各構成部位を特定する変数であり、Nは構成部位の総数、mjは構成部位jの質量である。車両全体600の重心CGallの位置(xCG,yCG,zCG)は、積載物602の質量、リフト高さ、フォーク603に対する積載物602の積載位置を用いて算出することができる。(4)式において、Δxj、Δyj、及びΔzjは車両全体600の重心CGallの位置600Aと、構成部位jの重心の位置(xj,yj,zj)601A、602A、603A、604A、605A、606A、607Aの各々との各軸方向の差分であり、下記(5)式により算出される。
【0065】
【0066】
(4)式中のJ
A及びJ
Bは
図8及び
図9のA点及びB点の各々からみた慣性の補正値であり、下記(6)式及び(7)式で表す。
【0067】
【0068】
図8では、地上座標系、及び車両座標系は右手系とし、地上座標系に対して車両ピッチ角θが負方向についた様子を表している。傾斜路でのIMU200の検出値は、車両の前後力F
xによる前後加速度に対して、車両ピッチ角θの重力加速度成分が差し引かれて示される。
図8の車両ピッチ角θが負値であるため、次の(8)式の前後加速度G
xCG'が検出される。ここでG
xCG'の「'」は、重力加速度の姿勢角成分を持つセンサ値であることを表す。すなわち、取得部は、車両600の加速度である第1加速度を取得する。
【0069】
【0070】
ただし、Fxは車両座標系における前左右輪の前後駆動力FLFx、FRFxの和であり、Mallは積載物を含む車両全体600の質量である。また、(8)右辺第2項におけるg・sinθは車両ロール角φ、車両ピッチ角θ、車両ヨー角ψの姿勢角行列とベクトル[0 0 g]T(Tは転置)より得られる車両座標系x軸方向の重力加速度成分である。前後加速度を用いて前後力Fxを算出するためには、GxCG'をg・sinθで補正する必要がある。車両ピッチ角θの重力加速度成分が車両600を後進させる方向に作用することから、作用力は次の(9)式及び(10)式となる。
【0071】
【0072】
前後力の負値が前後慣性力となるため、車両座標系x軸方向の前後慣性力と重力項を合わせたモーメントMは次の(11)式となる。
【0073】
【0074】
以下、ピッチ角加速度Q・を抑制するピッチモーメントMvの算出手順を以下に説明する。ピッチモーメントMvは、(12)式で表される。
【0075】
【0076】
(12)式は、(11)式によるモーメントM、前後輪の輪荷重変動によるモーメント、前後転倒防止のピッチモーメント制御量PMを用いて表している。IMU(Inertial Measurement Unit)200が車両600の任意位置に取り付けられている場合、GxCGは後述の式に基づき重心位置の加速度に変換された値を使用する。
【0077】
(4)、(12)式を(1)式の2行目に代入し、展開すると次式となる。傾斜路でのピッチ角加速度Q・の増大を抑制するため、姿勢角に応じた制御モーメント(KP・Mall・g・sinθ・hCG)を追加する。Kpは調整用の係数である。
【0078】
【0079】
ピッチ角加速度Q・を0とするPMは、(13)式の左辺のJyy・Q・を0として変形し次式で得られる。
【0080】
【0081】
ピッチ運動を抑制するため、(14)式で得られたPMに対し次式のように符号を付与する。
【0082】
【0083】
(8)式~(15)式による算出処理は、次のように換言可能である。算出部は、車両600の姿勢に関するパラメータと、車両600の質量とに基づいて、車両600に作用するモーメントを算出する。ここで、車両600に作用するモーメントは、車両600に生じる慣性力及び重力、に関するモーメントを含む。算出部は、第1加速度と、車両600の姿勢に関するパラメータとに基づいて、第1加速度を補正した第2加速度を算出する。第1加速度は、車両600の3軸における加速度である。第2加速度は、車両600の姿勢に関するパラメータから算出される車両600の傾斜方向と、車両600の姿勢に関するパラメータから算出される重力加速度とに基づいた成分に関する方向成分を第1加速度に適用して、第1加速度を補正したものである。算出部は、第2加速度と、重力加速度と、車両600の質量とに基づいて、車両600に作用するモーメントを算出する。算出部は、車両600に作用するモーメントと、所定の算出式とに基づいて、車両600が具備する各車輪にかかる輪荷重の差分の増大を抑制する制御量を算出する。
【0084】
上記、任意位置のIMU200で計測された加速度(GxIMU,GyIMU,GzIMU)を、重心位置の加速度(GxCG,GyCG,GzCG)に変換する方法を説明する。式(16)~(24)はその変換式である。式中、「×」は外積を表す。
【0085】
【0086】
ただし、xIMU、yIMU、zIMUはIMU位置、Tは転置を表す。
【0087】
以上説明した原理のように、制御量演算部32は、車両全体600の重心周りの慣性値と、取得された各輪についての輪荷重変動と、運動状態の検出値とを用い、(14)、(15)式に従って、ピッチモーメント制御量PMを算出する。
【0088】
4.情報処理方法
第4節では、前述した車両制御装置100の情報処理方法について説明する。この情報処理方法は、具体的には車両制御方法として実行される。この車両制御方法は、車両制御装置100の各部により実行される処理を、各工程として備える。すなわち、この車両制御方法は、取得工程と、算出工程と、出力工程とを備える。取得工程では、車両600の姿勢に関するパラメータを取得する。算出工程では、当該パラメータと、車両600の質量とに基づいて、車両600に作用するモーメントを算出する。算出工程では、当該モーメントと、所定の算出式とに基づいて、車両600が具備する各車輪にかかる輪荷重の差分の増大を抑制する制御量を算出する。出力工程では、当該制御量に応じて、車両600を制御する制御信号を出力する。
【0089】
図10及び
図11は、車両制御装置100によって実行される情報処理の流れを示すアクティビティ図である。以下、このアクティビティ図の各アクティビティに沿って、説明するものとする。ここで、車両600は、傾斜路を走行するものとする。
【0090】
制御部110は、車両ロール角φの閾値A、車両ピッチ角θの閾値Bを設定する(アクティビティA108)。閾値A及び閾値Bは、微小な値とし、例えば、0.5°と設定されてもよい。具体的には例えば、0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,1.1,1.2,1.3,1.4,1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,2,2.1,2.2,2.3,2.4,2.5,2.6,2.7,2.8,2.9,3,3.1,3.2,3.3,3.4,3.5,3.6,3.7,3.8,3.9,4,4.1,4.2,4.3,4.4,4.5,4.6,4.7,4.8,4.9,5°であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。アクティビティA108では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、閾値A、閾値Bに関する設定処理を行う。(2)制御部110は、設定処理された閾値A、閾値Bを記憶部120に記憶させる。
【0091】
続いて、制御部110は、車両ロール角φ、車両ピッチ角θを取得する(アクティビティA109)。車両600の車両ロール角φ、車両ピッチ角θは、請求項のパラメータに相当する。アクティビティA109では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)通信部150は、IMU200から出力された検出値を受け取る。(2)制御部110は、当該検出値から、車両600の車両ロール角φ、車両ピッチ角θを取得する。(3)制御部110は、取得された車両ロール角φ、車両ピッチ角θを記憶部120に記憶させる。換言すると、取得部は、車両600の姿勢に関するパラメータを取得する。
【0092】
制御部110は、車両600が停止状態であるか否かを判定する(アクティビティA110)。車両600が停止状態であると判定されると、制御部110は、アクティビティA111の処理に移行する。一方、車両600が停止状態ではないと判定されると、制御部110は、アクティビティA116の処理に移行する。アクティビティA110では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)通信部150は、IMU200から、車両600の運動状態に関する情報を受信する。(2)制御部110は、判定処理を実行し、受信された情報に基づいて、車両600が停止状態であるか否かを判定する。
【0093】
続いて、制御部110は、車両ロール角φの絶対値、車両ピッチ角θの絶対値を、各々閾値A、閾値Bと比較し、閾値未満であれば平坦路と判定する(アクティビティ111)。平坦路と判定されると、制御部110は、アクティビティ112の処理に移行する。一方、車両600が平坦路でないと判定されると、制御部110は、アクティビティA108の処理に移行する。アクティビティA111では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された、車両ロール角φ、車両ピッチ角θ、閾値A、閾値Bを読み出す。(2)制御部110は、車両ロール角φ、車両ピッチ角θの絶対値に対して、閾値A、閾値Bに基づき判定処理を実行し、車両600は平坦路にあるか否かを判定する。
【0094】
続いて、制御部110は、車両600の各輪の輪荷重に関する情報を取得する(アクティビティA112)。すなわち、制御パラメータ変更部12及び閾値記憶部16は、車両600が停止状態における各輪についての輪荷重、及び左右輪の輪荷重の差を取得する。アクティビティA112では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)通信部150は、輪荷重取得部38から、輪荷重に関する情報を受信する。(2)制御部110は、取得処理を実行し、受信された情報に基づいて、各輪についての輪荷重、及び前後輪各々の左右輪の輪荷重の差を取得する。(3)制御部110は、各輪についての輪荷重に関する情報、及び前後輪各々の左右輪の輪荷重の差に関する情報を記憶部120に記憶させる。
【0095】
続いて、制御部110は、第1閾値、第2閾値、第3閾値、及び第4閾値の各閾値を設定する(アクティビティA114)。ここで、第1閾値及び第2閾値は、各輪の輪荷重に関する閾値を示す。第3閾値は、前輪の左右輪の輪荷重の差に関する閾値を示す。第4閾値は、後輪の左右輪の輪荷重の差に関する閾値を示す。アクティビティA114では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された、各輪についての輪荷重に関する情報、及び前後輪各々の左右輪の輪荷重の差に関する情報を読み出す。(2)制御部110は、設定処理を実行し、上記各閾値を設定する。(3)制御部110は、設定された各閾値に関する情報を閾値記憶部16に記憶させる。
【0096】
続いて、制御部110は、ドライバの操作指令に基づいて、駆動左右輪の制動力及び駆動力の制御量FDRV(i)を取得する(アクティビティA116)。アクティビティA116では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)通信部150は、ドライバの操作指令に関する情報を受信する。(2)制御部110は、取得処理を実行し、受信された情報に基づいて、上記制御量FDRV(i)を取得する。(3)制御部110は、取得された制御量FDRV(i)を記憶部120に記憶させる。
【0097】
続いて、制御部110は、車両600の運動状態として、ロール角速度P、ピッチ角速度Q、ヨー角速度R、及び前後加速度GxCGを取得する(アクティビティA118)。アクティビティA118では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)通信部150は、IMU200から、車両600の運動状態に関する情報を受信する。(2)制御部110は、取得処理を実行し、受信された情報に基づいて、ロール角速度P、ピッチ角速度Q、ヨー角速度R、及び前後加速度GxCGを取得する。(3)制御部110は、取得された各情報を記憶部120に記憶させる。換言すると、取得部は、車両の3軸周りの角速度及び角加速度の少なくとも一方を取得する。
【0098】
続いて、制御部110は、係数Kpを設定する(アクティビティA122)。係数Kpは、2以上の任意の正値であればよく、例えば、車両600の特性によって設定されてもよい。具体的には例えば、2,3,4,5,6,7,8,9,10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。アクティビティA122では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された係数Kpに関する情報を読み出す。(2)制御部110は、設定処理を実行し、係数Kpを設定する。(3)制御部110は、設定された係数Kpを記憶部120に記憶させる。
【0099】
続いて、制御部110は、車両600の各輪についての輪荷重を取得する(アクティビティA124)。アクティビティA124では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)通信部150は、輪荷重取得部38から、車両600の各輪についての輪荷重に関する情報を受信する。(2)制御部110は、受信された情報を記憶部120に記憶させる。
【0100】
続いて、制御部110は、車両全体600の重心周りの慣性値を算出する(アクティビティA126)。アクティビティA126では、例えば、次の4段階の情報処理が実行される。(1)通信部150は、圧力センサ300から、車両600に積載された積載物602の積載状態を取得する。(2)制御部110は、算出処理を実行し、取得された積載状態に基づいて、車両全体600の重心位置を算出する。(3)制御部110は、さらに算出処理を実行し、算出された重心位置に基づいて、車両全体600の重心周りの慣性値を算出する。(4)制御部110は、算出された慣性値を記憶部120に記憶させる。換言すると、算出部は、車両600の重心位置を算出する。算出部は、算出された重心位置と、車両全体600の質量とに基づいて、算出された重心位置における慣性に関する慣性値を算出する。
【0101】
続いて、制御部110は、車両600の各輪について、いずれかの輪荷重が第2閾値未満であるか否かを判定する(アクティビティA128)。いずれかの輪荷重が第2閾値未満である場合、制御部110は、アクティビティA130の処理に移行する。一方、全ての輪荷重が第2閾値以上である場合、制御部110は、転倒防止制御を終了すると判定し、アクティビティA146の処理に移行する。アクティビティA128では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された、各輪の輪荷重に関する情報を読み出す。(2)制御部110は、閾値記憶部16に記憶された第2閾値を読み出す。(3)制御部110は、判定処理を実行し、各輪の輪荷重と第2閾値との大小関係を判定する。
【0102】
続いて、制御部110は、車両600の各輪について、少なくとも1つの輪荷重が第1閾値未満であるか否かを判定する(アクティビティA130)。少なくとも1つの輪荷重が第1閾値未満である場合、制御部110は、転倒防止制御を開始すると判定し、アクティビティA132の処理に移行する。一方、全ての輪荷重が第1閾値以上である場合、制御部110は、アクティビティA144の処理に移行する。アクティビティA130では、例えば、次の4段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された、各輪の輪荷重に関する情報を読み出す。(2)制御部110は、閾値記憶部16に記憶された第1閾値を読み出す。(3)制御部110は、判定処理を実行し、各輪の輪荷重と第1閾値との大小関係を判定する。(4)制御部110は、当該判定の結果を記憶部120に記憶させる。
【0103】
続いて、制御部110は、第1閾値未満となる輪荷重が、前輪のものであるか否かを判定する(アクティビティA132)。第1閾値未満となる輪荷重が、前輪のものである場合、制御部110は、アクティビティA134の処理に移行する。一方、第1閾値未満となる輪荷重が、後輪のものである場合、制御部110は、アクティビティA136の処理に移行する。アクティビティA132では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された、アクティビティA130の判定結果を読み出す。(2)制御部110は、判定処理を実行し、第1閾値未満となる輪荷重が、前輪のものであるか否かを判定する。
【0104】
続いて、制御部110は、前輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第3閾値未満であるか否かを判定する(アクティビティA134)。前輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第3閾値未満である場合、制御部110は、アクティビティA138の処理に移行する。一方、前輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第3閾値以上である場合、制御部110は、アクティビティA146の処理に移行する。アクティビティA134では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された、前輪の左右輪の輪荷重に関する情報を読み出す。(2)制御部110は、閾値記憶部16に記憶された第3閾値に関する情報を読み出す。(3)制御部110は、判定処理を実行し、前輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第3閾値未満であるか否かを判定する。
【0105】
続いて、制御部110は、後輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第4閾値未満であるか否かを判定する(アクティビティA136)。後輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第4閾値未満である場合、制御部110は、アクティビティA138の処理に移行する。一方、後輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第4閾値以上である場合には、制御部110は、アクティビティA146の処理に移行する。アクティビティA136では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された、後輪の左右輪の輪荷重に関する情報を読み出す。(2)制御部110は、閾値記憶部16に記憶された第4閾値に関する情報を読み出す。(3)制御部110は、判定処理を実行し、後輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第4閾値未満であるか否かを判定する。
【0106】
続いて、制御部110は、ピッチモーメント制御量PMを算出するとともに、前輪の左右輪の制動力又は駆動力の制御量FFL、FFRを算出する(アクティビティA138)。アクティビティA138では、例えば、次の4段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された、アクティビティA109及びアクティビティA118からA126で取得又は算出された各情報を読み出す。(2)制御部110は、算出処理を実行し、ピッチモーメント制御量PMを算出する。(3)制御部110は、さらに算出処理を実行し、前輪の左右輪の制動力又は駆動力の制御量FFL、FFRを算出する。(4)制御部110は、算出された制御量FFL、FFRを記憶部120に記憶させる。
【0107】
続いて、制御部110は、算出された制御量FFL、FFRを、前後駆動力FLFx、FRFxとして設定する(アクティビティA140)。アクティビティA140では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された制御量FFL、FFRを読み出す。(2)制御部110は、設定処理を実行し、制御量FFL、FFRを、前後駆動力FLFx、FRFxとして設定する。(3)制御部110は、前後駆動力FLFx、FRFxを記憶部120に記憶させる。
【0108】
続いて、制御部110は、転倒防止制御が開始されたことを示すフラグFLAGに1を設定する(アクティビティA142)。アクティビティA142では、例えば、次の情報処理が実行される。制御部110は、記憶部120に記憶されたFLAGを1に設定する。
【0109】
続いて、制御部110は、FLAG=1であるか否かを判定する(アクティビティA144)。FLAG=1である場合には、制御部110は、転倒防止制御が開始されていると判定し、アクティビティA138の処理に移行する。一方、FLAG=1でない場合には、制御部110は、転倒防止制御が開始されていないと判定し、アクティビティA146の処理に移行する。アクティビティA144では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶されたFLAGの情報を読み出す。(2)制御部110は、判定処理を実行し、FLAG=1であるか否かを判定する。
【0110】
続いて、制御部110は、取得された制動力又は駆動力の制御量FDRV(i)を、前後駆動力FLFx、FRFxとして設定する(アクティビティA146)。アクティビティA146では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された制御量FDRV(i)に関する情報を読み出す。(2)制御部110は、設定処理を実行し、取得された制動力又は駆動力の制御量FDRV(i)を、前後駆動力FLFx、FRFxとして設定する。(3)制御部110は、設定された前後駆動力FLFx、FRFxを記憶部120に記憶させる。
【0111】
続いて、制御部110は、転倒防止制御が終了されることを示すFLAGに0を設定する(アクティビティA148)。アクティビティA148では、例えば、次の情報処理が実行される。制御部110は、記憶部120に記憶されたFLAGを0に設定する。
【0112】
続いて、制御部110は、アクティビティA140又はA146で得られた前後駆動力FLFx、FRFxを、左右輪の制動力又は駆動力の指令値として設定するとともに、駆動輪の左右輪の制動力又は駆動力の指令値を出力する(アクティビティA150)。アクティビティA150では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された前後駆動力FLFx、FRFxを読み出す。(2)制御部110は、設定処理を実行し、左右輪の制動力又は駆動力の指令値として前後駆動力FLFx、FRFxを設定する。(3)制御部110は、さらに出力処理を実行し、設定された指令値(前後駆動力FLFx、FRFx)を出力する(発生させる)。換言すると、出力部は、上記制御量に応じて、車両600を制御する制御信号(指令値)を出力する。
【0113】
続いて、制御部110は、アクティビティA116の処理に移行する。すなわち、車両600が走行している間、制御部110は、アクティビティA116からアクティビティA150の処理を繰り返し実行する。換言すると、取得部は、車両600の姿勢に関するパラメータを連続的に取得する。算出部は、連続的に取得されたパラメータと、車両600の質量とに基づいて、車両600に作用するモーメントを連続的に算出する。算出部は、連続的に算出されたモーメントと、所定の算出式とに基づいて、車両600が具備する各車輪にかかる輪荷重の差分の増大を抑制する制御量を時系列で連続的に算出する。出力部は、連続的に算出された制御量に応じて、制御信号を時系列で連続的に出力する。
【0114】
以上の情報処理(特に算出処理)を換言すると、算出部は、車両600の重心位置における慣性に関する慣性値と、車両に作用するモーメントと、所定の算出式とに基づいて、車両600が具備する各車輪にかかる輪荷重の差分の増大を抑制する制御量を算出する。また、算出部は、角速度及び角加速度の少なくとも一方と、車両に作用するモーメントと、所定の算出式とに基づいて、上記制御量を算出する。
【0115】
第1実施形態によれば、様々な積載物を積載する車両において、傾斜路走行時における前後方向への転倒を防止することができる。
【0116】
5.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る車両制御装置について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。第2実施形態では、横転防止制御を行う点が、第1実施形態と異なっている。
【0117】
図12は、車両制御装置100(制御部110)によって実現される機能を示すブロック図である。車両制御装置100(制御部110)は、ドライバ操舵時の車両運動により生じるタイヤ座標系での各輪のタイヤ横力を検出するタイヤ横力取得部50を備えている。
【0118】
転倒防止制御部260は、車両全体600の重心周りの慣性値と、取得された各輪についての輪荷重変動と、運動状態の検出値と、タイヤ座標系における前輪のタイヤ前後力の検出値FLFxt、FRFxt及びドライバ操舵時の車両挙動により生じたタイヤ座標系における各輪のタイヤ横力の検出値FLFyt、FRFyt、RLFyt、RRFytより、操舵角を用いて車両座標系に変換した各輪のタイヤ前後力、及びタイヤ横力とを用い、駆動輪の制動力又は駆動力を制御する際の制御量を算出する。転倒防止制御部260は、制御量演算部320、制駆動力算出部340及びローパスフィルタ処理部36を備えている。
【0119】
制御量演算部320及び制駆動力算出部340は、車両全体600の重心周りの慣性値と、取得された各輪についての輪荷重変動と、運動状態の検出値と、タイヤ座標系における前輪のタイヤ前後力の検出値FLFxt、FRFxt及びドライバ操舵時の車両挙動により生じたタイヤ座標系における各輪のタイヤ横力の検出値FLFyt、FRFyt、RLFyt、RRFytより、操舵角を用いて車両座標系に変換した各輪のタイヤ前後力、及びタイヤ横力とを用い、ヨーモーメント制御量YMを算出する。
【0120】
図13は、制御量演算部320による処理を説明するための図である。
【0121】
制御量演算部320は、ヨーモーメント制御量YMが得られるように、前輪の左右輪の制動力又は駆動力の制御量F
FL、F
FRを求める。
図13(A)(B)のDirは前進、後進を示すフラグで、前進は「+1」、後進は「-1」である。また、右旋回時には、
図13(A)に示すように、ヨーモーメント制御量YMを、左右輪の間の距離であるTrで除してタイヤ制駆動力に変換し、さらに右輪に対して「0」、左輪に対して「-2」を乗算して左右輪のタイヤ制駆動力を求める。また、左旋回時には、
図13(B)に示すように、ヨーモーメント制御量YMを、左右輪の間の距離であるTrで除してタイヤ制駆動力に変換し、さらに右輪に対して「2」、左輪に対して「0」を乗算して左右輪のタイヤ制駆動力を求める。
【0122】
ここで、ヨーモーメント制御量YMを算出する原理を説明する。
【0123】
第2実施形態は、横転防止制御に関するものである。第1実施形態と同様に、前輪駆動、後輪操舵による4輪フォークリフトを対象とし、輪荷重、ロール角速度P、ピッチ角速度Q、ヨー角速度R、及び横加速度Gyの計測を前提とする。
【0124】
第2実施形態では、下記のようにロール角加速度P・の抑制をヨーモーメントNvにより行う。上記式(1)の1行目にはNvが含まれていないため、式(1)の3行目を整理してヨー角加速度R・を括りだし、1行目のR・に代入することでロール角加速度P・をヨーモーメントNvで制御できるようにする。
【0125】
ここで、傾斜角Θの傾斜路を横切って走行中の車両600を示す図である
図9を用いて説明する。車両600が傾斜路を横切り、車両ロール角φを生じた場合、検出値は、横力F
yによる横加速度に対して、車両ロール角φ及び車両ピッチ角θの重力加速度成分が差し引かれる。
図9の車両ロール角φは正値であるため、次の(25)式の横加速度G
yCG'が検出される。
【0126】
【0127】
ただし、Fyはドライバ操舵時の車両挙動により生じた各輪のタイヤ横力FLFyt、FRFyt、RLFyt、及びRRFytの車両座標系における横力の和であり、(25)式の右辺第2項におけるg・sinφ・cosθは車両ロール角φ、車両ピッチ角θ、車両ヨー角ψの姿勢角行列とベクトル[0 0 g]T(Tは転置)より得られる車両座標系y軸方向の重力加速度成分である。横加速度を用いて横力Fyを算出するためには、GyCG'をg・sinφ・cosθで補正する必要がある。また、車両ロール角φ、車両ピッチ角θの各重力加速度成分が車両座標系yvの負方向に作用することから、作用力は次の(26)式及び(27)式となる。
【0128】
【0129】
続いて、横力F
yの負値が横方向の慣性力となるため、
図9の車両座標系y軸方向の慣性力と重力項とを合わせたモーメントLは次の(28)式となる。
【0130】
【0131】
(4)式を(1)式に代入し、3行目を展開すると次式となる。
【0132】
【0133】
続いて、(29)式を変形し、R・を括りだすと次式となる。
【0134】
【0135】
続いて、(30)式を(1)式の1行目に代入して次式のように整理する。
【0136】
【0137】
続いて、ロール角加速度P・を0とするヨーモーメントNvをNv
*とし、(31)式の左辺を0として次式で得られる。
【0138】
【0139】
(32)式中のロールモーメントLvは、(28)式によるモーメントL、タイヤばね(上下ばね)反力の変化分(輪荷重変動)によるモーメントの和により、(33)式で表される。
【0140】
【数20】
ただし、(28)式のモーメントLは車両ロール角φを増大させる方向のモーメントであるため、(33)式においては符号を反転している。
【0141】
(31)式のLvを(33)式のLvに置き換える。続いて、傾斜路でのロール角加速度P・の増大を抑制するため、姿勢角に応じた制御モーメント「KR・Mall・g・sinφ・cosθ・(hCG-hR)」を追加する。KRは調整用の係数である。
【0142】
【0143】
ドライバの操舵、アクセル、ブレーキ等、ドライバ操作中に横転防止制御を行った場合、車両座標系における各輪の前後駆動力FLFx、FRFx、RLFx、RRFx及び横力FLFy,FRFy,RLFy,RRFyによるモーメントと、制御時はヨーモーメント制御量YMとの和が車両600に加わる。そこで、両者の和をNv
*として(35)式が得られる。
【0144】
【0145】
(34)、(35)式より、ドライバ操作中にロール角加速度P・を0とするヨーモーメント制御量YMは、次式で得られる。
【0146】
【0147】
YMを用いてヨー運動を抑制するため、式(36)で得られたYMに対し次式のように符号を付与する。
【0148】
【0149】
(25)式~(37)式による算出処理は、次のように換言可能である。算出部は、車両600の姿勢に関するパラメータと、車両600の質量とに基づいて、車両600に作用するモーメントを算出する。ここで、車両600に作用するモーメントは、車両600に生じる慣性力及び重力、に関するモーメントを含む。算出部は、第1加速度と、車両600の姿勢に関するパラメータとに基づいて、第1加速度を補正した第2加速度を算出する。第1加速度は、車両600の3軸における加速度である。第2加速度は、車両600の姿勢に関するパラメータから算出される車両600の傾斜方向と、車両600の姿勢に関するパラメータから算出される重力加速度とに基づいた成分に関する方向成分を第1加速度に適用して、第1加速度を補正したものである。算出部は、第2加速度と、重力加速度と、車両600の質量とに基づいて、車両600に作用するモーメントを算出する。算出部は、車両600に作用するモーメントと、所定の算出式とに基づいて、車両600が具備する各車輪にかかる輪荷重の差分の増大を抑制する制御量を算出する。
【0150】
図14及び
図15は、車両制御装置100によって実行される情報処理の流れを示すアクティビティ図である。第1実施形態と同様のアクティビティは、同一のアクティビティ符号を付与し、その説明を省略する。
【0151】
制御部110は、係数KRを設定する(アクティビティA222)。係数KRは、2以上の任意の正値であればよく、例えば、車両600の特性によって設定されてもよい。具体的には例えば、2,3,4,5,6,7,8,9,10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。アクティビティA222では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された係数KRに関する情報を読み出す。(2)制御部110は、設定処理を実行し、係数KRを設定する。(3)制御部110は、設定された係数KRを記憶部120に記憶させる。
【0152】
続いて、制御部110は、前輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第3閾値以上であるか否かを判定する(アクティビティA234)。前輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第3閾値以上である場合、制御部110は、アクティビティA238の処理に移行する。一方、前輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第3閾値未満である場合、制御部110は、アクティビティA146の処理に移行する。アクティビティA234では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された、前輪の左右輪の輪荷重に関する情報を読み出す。(2)制御部110は、閾値記憶部16に記憶された第3閾値に関する情報を読み出す。(3)制御部110は、判定処理を実行し、前輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第3閾値以上であるか否かを判定する。
【0153】
続いて、制御部110は、後輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第4閾値以上であるか否かを判定する(アクティビティA236)。後輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第4閾値以上である場合、制御部110は、アクティビティA238の処理に移行する。一方、後輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第4閾値未満である場合には、制御部110は、アクティビティA146の処理に移行する。アクティビティA236では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された、後輪の左右輪の輪荷重に関する情報を読み出す。(2)制御部110は、閾値記憶部16に記憶された第4閾値に関する情報を読み出す。(3)制御部110は、判定処理を実行し、後輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第4閾値以上であるか否かを判定する。
【0154】
続いて、制御部110は、ヨーモーメント制御量YMを算出するとともに、前輪の左右輪の制動力又は駆動力の制御量FFL、FFRを算出する(アクティビティA238)。アクティビティA238では、例えば、次の4段階の情報処理が実行される。(1)制御部110は、記憶部120に記憶された、アクティビティA109及びアクティビティA118からA126で取得又は算出された各情報を読み出す。(2)制御部110は、算出処理を実行し、ヨーモーメント制御量YMを算出する。(3)制御部110は、さらに算出処理を実行し、前輪の左右輪の制動力又は駆動力の制御量FFL、FFRを算出する。(4)制御部110は、算出された制御量FFL、FFRを記憶部120に記憶させる。
【0155】
7.第3実施形態
第1実施形態及び第2実施形態は、4輪フォークリフトの場合であり、第3実施形態では、後輪軸中央に1輪のみを配した前輪駆動、後輪操舵の3輪フォークリフトの場合について、変更点のみ説明する。後輪が1輪となることにより下記に関して置き換わる。
【0156】
後左右輪毎の前後駆動力RLFx,RRFxは両者の和RFxとして(38)式となる。
【0157】
【0158】
後左右輪毎のタイヤ横力RLFy,RRFyは両者の和RFyとして(39)式となる。
【0159】
【0160】
後左右輪毎の輪荷重変動ΔRLz、ΔRRzは両者の和ΔRzとして(40)式となる。
【0161】
【0162】
(40)式の変更に伴い、(12)~(14)式のΔRLz+ΔRRzは全てΔRzに置き換わる。(14)式の制御量PMは(41)式となる。
【0163】
【0164】
また、後左右輪が後輪軸中央に配置される結果、後輪のtl、trは0となり(39)式より(35)式は(42)式となる。
【0165】
【0166】
同様に、後輪のtl、trは0であること及び(39)、(40)式より、(36)式の制御量YMは(43)式となる。
【0167】
【0168】
図16及び
図17は、3輪フォークリフトの前後転倒防止制御に対応するアクティビティ図である。また、
図18及び
図19は、3輪フォークリフトの横転防止制御に対応するアクティビティ図である。第4閾値は、後輪の左右輪の輪荷重の差に対する閾値であることから、3輪フォークリフトでは、第4閾値は削除される。したがって、
図16及び
図18におけるアクティビティA314では、第1閾値~第3閾値までの設定となる。
【0169】
6.実験例1
図20は、3輪の車両600を用いて、傾斜路(下り坂)を直進走行させて制動を行った状態を示す図である。ここで、
図20に示す車両600の具体的な挙動を、以下の(1)~(5)に沿って説明する。
【0170】
(1)車両600の制御部は、平坦路において駆動輪にトルクを与える。車両600は、傾斜路(下り坂)に向かって発進し、徐々に車速が上昇した。(2)車両600は、下り坂に直進進入した。このとき、車両600の車両ピッチ角θは略Θとなり、さらに車速が上昇した。(3)車両600の制御部は、制動処理を開始した。このとき、車両600の車速が減少し、車両ピッチ角θが増大した。(4)車両600の後輪の輪荷重が低下し、前後転倒防止制御を開始した。(5)前後転倒防止制御なしの場合、車両600の後輪の輪荷重がさらに低下し続け、後輪の荷重が抜けた。一方、前後転倒防止制御ありの場合、車両600の制動トルクが弱まり、前後への転倒が回避されて停車した。
【0171】
図21は、転倒防止制御を行った場合と行わなかった場合の波形データを示す図である。
図21では、公知のシミュレータを使用して、
図20における車両600の挙動に合わせて、車両600の各情報(舵角、トルク、車両姿勢角、上下変位、車速、前後加速度、ピッチ角速度、各輪荷重)をシミュレーションした。なお、(13)式及び(14)式における係数K
pを「4」に設定した。
図21に示すように、前後転倒防止制御を行った場合は、後輪の荷重低下が抑えられており、転倒(荷重抜け)が回避された。
【0172】
7.実験例2
図22は、3輪の車両600を用いて、傾斜路を走行させて前進左旋回を行わせた状態を示す図である。ここで、
図22に示す車両600の具体的な挙動を、以下の(1)~(5)に沿って説明する。
【0173】
(1)車両600の制御部は、平坦路において駆動輪にトルクを与える。車両600は、傾斜路(下り坂)に向かって発進し、徐々に車速が上昇した。(2)車両600は、下り坂に直進進入した。このとき、車両600の車両ピッチ角θは略Θとなり、車速がさらに上昇した。(3)車両600は、操舵により前進左旋回を開始した。このとき、車両600の車両ロール角φが増加し、車両ピッチ角θが減少した。(4)車両600の前輪左側(FL)の輪荷重が低下し、横転防止制御を開始した。(5)横転防止制御なしの場合、車両600のFL輪荷重がさらに低下し続け、FLの荷重が抜けた。一方、横転防止制御ありの場合、車両600の制動トルクが印加され、横転が回避されて停車した。
【0174】
図23は、転倒防止制御を行った場合と行わなかった場合の波形データを示す図である。
図23では、公知のシミュレータを使用して、
図22における車両600の挙動に合わせて、車両600の各情報(舵角、トルク、車両姿勢角、ヨー姿勢角、上下変位、車速、前後加速度、横加速度、ロール角速度、ヨー角速度、各輪荷重)をシミュレーションした。なお、(35)式及び(37)式における係数K
Rを「4」に設定した。
図23に示すように、横転防止制御を行った場合は、FLの荷重低下が抑えられており、転倒(荷重抜け)が回避された。
【0175】
第2実施形態によれば、様々な積載物を積載する車両において、傾斜路走行時における横方向への転倒を防止することができる。
【0176】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0177】
8.変形例
本実施形態の態様は、プログラムであってもよい。このプログラムは、車両制御装置100の各部としてコンピュータを機能させる。
【0178】
制御部110は、各種データ及び各種情報について記憶部120に書き出し処理(記憶処理)及び読み出し処理をしているが、これに限られず、例えば、制御部110内のレジスタやキャッシュメモリ等を使用して、各アクティビティの情報処理を実行してもよい。
【0179】
例えば、上記の第1実施形態で説明した前後転倒防止制御と、上記の第2実施形態で説明した横転防止制御とを組み合わせてもよい。
図24は、前後転倒防止制御と横転防止制御とを組み合わせた機能ブロック図である。車両制御装置100(制御部110)は、輪荷重取得部38、閾値記憶部16、第1閾値比較部18、第2閾値比較部22、輪荷重差判定部20、前後転倒防止制御部800及び横転防止制御部900を備える。前後転倒防止制御部800は、
図4に示す各機能部(第1実施形態に係る各機能部)を備えてもよい。横転防止制御部900は、
図12に示す各機能部(第2実施形態に係る各機能部)を備えてもよい。
【0180】
また、本実施形態では、フォークリフトを制御対象とする場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、積載物を積載可能な車両であれば、フォークリフト以外を対象としてもよい。例えば、積載物の積載状態に応じて車両重量が変動するトラック、トレーラ、バスに搭載される車両制御装置に、本発明を適用してもよい。
【0181】
9.その他
次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0182】
(1)車両制御装置であって、取得部と、算出部と、出力部とを備え、前記取得部は、車両の姿勢に関するパラメータを取得し、前記算出部は、前記パラメータと、前記車両の質量とに基づいて、前記車両に作用するモーメントを算出し、前記算出部は、前記モーメントと、所定の算出式とに基づいて、前記車両が具備する各車輪にかかる輪荷重の差分の増大を抑制する制御量を算出し、前記出力部は、前記制御量に応じて、前記車両を制御する制御信号を出力する、車両制御装置。
【0183】
このような態様によれば、様々な積載物を積載する車両において、傾斜路走行時における転倒を防止することができる。
【0184】
(2)上記(1)に記載の車両制御装置において、前記モーメントは、前記車両に生じる慣性力及び重力、に関するモーメントを含む、車両制御装置。
【0185】
このような態様によれば、傾斜路走行時に特有なモーメントに関する情報を用いることで、傾斜路走行時における車両の転倒をより確実に防止することができる。
【0186】
(3)上記(1)又は(2)に記載の車両制御装置において、前記算出部は、前記車両の重心位置を算出し、前記算出部は、前記重心位置と、前記質量とに基づいて、前記重心位置における慣性に関する慣性値を算出し、前記算出部は、前記慣性値と、前記モーメントと、前記算出式とに基づいて、前記制御量を算出する、車両制御装置。
【0187】
このような態様によれば、車両の慣性値に関する情報を用いることで、傾斜路走行時における車両の転倒をより確実に防止することができる。
【0188】
(4)上記(1)から(3)までの何れか1つに記載の車両制御装置において、前記取得部は、前記車両の3軸周りの角速度及び角加速度の少なくとも一方を取得し、前記算出部は、前記角速度及び前記角加速度の少なくとも一方と、前記モーメントと、前記算出式とに基づいて、前記制御量を算出する、車両制御装置。
【0189】
このような態様によれば、車両の3軸周りの角速度及び角加速度の少なくとも一方に関する情報を用いることで、傾斜路走行時における車両の転倒をより確実に防止することができる。
【0190】
(5)上記(1)から(4)までの何れか1つに記載の車両制御装置において、前記取得部は、前記車両の加速度である第1加速度を取得し、前記算出部は、前記第1加速度と、前記パラメータとに基づいて、前記第1加速度を補正した第2加速度を算出し、前記算出部は、前記第2加速度と、前記質量とに基づいて、前記モーメントを算出する、車両制御装置。
【0191】
このような態様によれば、傾斜路走行時に特有な補正処理を実行することで、傾斜路走行時における車両の転倒をより確実に防止することができる。
【0192】
(6)上記(5)に記載の車両制御装置において、前記第1加速度は、前記車両の3軸における加速度である、車両制御装置。
【0193】
このような態様によれば、車両の3軸における加速度を用いることで、傾斜路走行時における車両の転倒をより確実に防止することができる。
【0194】
(7)上記(5)又は(6)に記載の車両制御装置において、前記第2加速度は、前記パラメータから算出される前記車両の傾斜方向と、前記パラメータから算出される重力加速度とに基づいた成分に関する方向成分を前記第1加速度に適用して、前記第1加速度を補正したものである、車両制御装置。
【0195】
このような態様によれば、傾斜路走行時に特有な補正処理を、車両の3軸における加速度に適用することで、傾斜路走行時における車両の転倒をより確実に防止することができる。
【0196】
(8)上記(1)から(7)までの何れか1つに記載の車両制御装置において、前記取得部は、前記パラメータを連続的に取得し、前記算出部は、連続的に取得された前記パラメータと、前記車両の質量とに基づいて、前記モーメントを連続的に算出し、前記算出部は、連続的に算出された前記モーメントと、前記算出式とに基づいて、前記制御量を時系列で連続的に算出し、前記出力部は、連続的に算出された前記制御量に応じて、前記制御信号を時系列で連続的に出力する、車両制御装置。
【0197】
このような態様によれば、傾斜路走行時において車両を制御するための制御量を、時系列で連続的に算出することができる。したがって、傾斜路走行時における車両の転倒をより確実に防止することができる。
【0198】
(9)車両であって、検出部と、上記(1)から(8)までの何れか1つに記載の車両制御装置とを備え、前記検出部は、前記車両の運動に関する情報を検出し、前記車両制御装置は、検出された前記情報を受信する、車両。
【0199】
このような態様によれば、本実施形態の車両制御装置を車両に好適に実装することができる。
【0200】
(10)プログラムであって、上記(1)から(8)までの何れか1つに記載の車両制御装置の各部としてコンピュータを機能させる、プログラム。
【0201】
このような態様によれば、様々な積載物を積載する車両において、傾斜路走行時における転倒を防止することができる。
【0202】
(11)車両制御方法であって、上記(1)から(8)までの何れか1つに記載の車両制御装置の各部により実行される処理を、各工程として備える、車両制御方法。
【0203】
このような態様によれば、様々な積載物を積載する車両において、傾斜路走行時における転倒を防止することができる。
もちろん、この限りではない。
【符号の説明】
【0204】
10 :操作量取得部
12 :制御パラメータ変更部
14 :輪荷重変動算出部
16 :閾値記憶部
18 :第1閾値比較部
20 :輪荷重差判定部
22 :第2閾値比較部
24 :制御選択部
26 :転倒防止制御部
28 :制御量切替部
30 :制駆動力指令値設定部
32 :制御量演算部
34 :制駆動力算出部
36 :ローパスフィルタ処理部
37 :制駆動力発生部
38 :輪荷重取得部
50 :タイヤ横力取得部
100 :車両制御装置
110 :制御部
111 :アクティビティ
112 :アクティビティ
120 :記憶部
130 :表示部
140 :入力部
150 :通信部
160 :通信バス
260 :転倒防止制御部
300 :圧力センサ
320 :制御量演算部
340 :制駆動力算出部
400 :エンコーダ
500 :操作量センサ
600 :車両
601 :車体
602 :積載物
603 :フォーク
604 :アウターマスト
605 :インナーマスト
606 :タイヤ前輪
607 :タイヤ後輪
800 :転倒防止制御部
900 :横転防止制御部