(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090443
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】圧電デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 3/02 20060101AFI20240627BHJP
H03H 9/10 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H03H3/02 B
H03H9/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206360
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺西 昭
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC04
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE18
5J108GG03
5J108KK03
5J108MM04
(57)【要約】
【課題】小型かつ薄い圧電片を用いた圧電振動子や圧電発振器に対して好適な接着構造を有した圧電デバイスを提供する。
【解決手段】圧電デバイス10では、圧電振動片11と容器13との接続を以下の接着構造で行ってある。容器13の第1接着パッド13ca及び第2接着パッド13cbのうち、引出電極11dが対向している接着パッド13に対しては、当該接着パッドと引出電極との間に下側導電性接着剤17aを設け、第1接着パッド及び第2接着パッドのうち、反対面引き回し部11eが対向している接着パッドに対しては、圧電片11aを挟んだ反対面の引出電極側から圧電片の第1の片13cの側面を経由して接着パッド13caに至っている上側導電性接着剤17bを設けて、当該接着を行ってある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面形状が四角形状で厚み滑りモードで振動する圧電片と、この圧電片の表裏に設けた励振用電極と、各励振用電極から前記圧電片の第1の辺に引き出してある引出電極と、この引出電極に接続していて前記圧電片の前記引出電極とは反対面に設けた反対面引き回し部と、前記引出電極に対応する位置に設けた第1接着パッド及び第2接着パッドを有する容器と、前記圧電片を前記第1接着パッド及び第2接着パッドに接続している導電性接着剤と、を備える圧電デバイスにおいて、
前記第1接着パッド及び第2接着パッドのうち、前記引出電極が対向している接着パッドに対しては、当該接着パッドと前記引出電極との間に下側導電性接着剤を設けてあり、
前記第1接着パッド及び第2接着パッドのうち、前記反対面引き回し部が対向している接着パッドに対しては、前記圧電片を挟んだ反対面の引出電極側から前記圧電片の前記第1片の側面を経由して当該接着パッドに至っている上側導電性接着剤を設けてあること、を特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
平面形状が四角形状で厚み滑りモードで振動する圧電片と、この圧電片の表裏に設けた励振用電極と、各励振用電極から前記圧電片の第1の辺に引き出してある引出電極と、この引出電極に接続していて前記圧電片の前記引出電極とは反対面に設けた反対面引き回し部と、前記引出電極に対応する位置に設けた第1接着パッド及び第2接着パッドを有する容器と、前記圧電片を前記第1接着パッド及び第2接着パッドに接続している導電性接着剤と、を備える圧電デバイスを製造するに当たり、
前記圧電片の前記容器に接続する面における、引出電極と反対面引き回し部との位置を検出する工程と、
前記位置検出において検出した前記引出電極及び前記反対面引き回し部が、前記第1接着パッド及び第2接着パッドのどちらに対向するかを判定する工程と、
前記判定工程において前記引出電極に対向すると判定された当該接着パッドに導電性接着剤を塗布する第1塗布工程と、
前記第1塗布工程が済んだ後に、前記圧電片を前記第1及び第2接着パッドを含む面に置く工程と、
前記圧電片を置いた後に、前記圧電片の表面上の前記引出電極から前記圧電片の前記第1の辺の側面を経由して当該引出電極に前記圧電片を挟んで対向している接着パッドに至る導電性接着剤を塗布する第2塗布工程と、
を含むことを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項3】
平面形状が四角形状で厚み滑りモードで振動する圧電片と、この圧電片の表裏に設けた励振用電極と、各励振用電極から前記圧電片の第1の辺に引き出してある引出電極と、この引出電極に接続していて前記圧電片の前記引出電極とは反対面に設けた反対面引き回し部と、前記引出電極に対応する位置に設けた第1接着パッド及び第2接着パッドを有する容器と、前記圧電片を前記第1接着パッド及び第2接着パッドに接続している導電性接着剤と、を備える圧電デバイスにおいて、
前記第1接着パッド及び第2接着パッドのうち、前記引出電極が対向している接着パッドに対しては、当該接着パッドと前記引出電極との間に第1導電性接着剤を設けてあり、
前記第1接着パッド及び第2接着パッドのうち、前記反対面引き回し部が対向している接着パッドに対しては、前記第1導電性接着剤に比べて少ない塗布量の第2導電性接着剤を設けてあることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項4】
平面形状が四角形状で厚み滑りモードで振動する圧電片と、この圧電片の表裏に設けた励振用電極と、各励振用電極から前記圧電片の第1の辺に引き出してある引出電極と、この引出電極に接続していて前記圧電片の前記引出電極とは反対面に設けた反対面引き回し部と、前記引出電極に対応する位置に設けた第1接着パッド及び第2接着パッドを有する容器と、前記圧電片を前記第1接着パッド及び第2接着パッドに接続している導電性接着剤と、を備える圧電デバイスを製造するに当たり、
前記圧電片の前記容器に接続する面における、引出電極と反対面引き回し部との位置を検出する工程と、
前記位置検出において検出した前記引出電極及び前記反対面引き回し部が、前記第1接着パッド及び第2接着パッドのどちらに対向するかを判定する工程と、
前記判定工程において前記引出電極に対向すると判定された当該接着パッドに第1導電性接着剤を塗布し、かつ、前記反対面引き回し部に対向すると判定された当該接着パッドに、前記第1導電性接着剤より少ない量の第2導電性接着剤を塗布する工程と、
前記第1及び第2導電性接着剤の塗布が済んだ後に、前記圧電片を前記第1及び第2接着パッドを含む面に置く工程と、を含むことを特徴と圧電デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記第2導電性接着剤の塗布量は、前記第1導電性接着の塗布量の3分の2から4分の1の範囲の量であることを特徴とする請求項4に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記圧電デバイスは、前記容器の外形サイズで言って、長辺が1.2mm程度、短辺が1.0mm程度である、1210サイズ以下のものであることを特徴とする請求項1又は3に記載の圧電デバイス。
【請求項7】
前記圧電デバイスは、前記容器の外形サイズで言って、長辺が1.2mm程度、短辺が1.0mm程度である、1210サイズ以下のものであることを特徴とする請求項2又は4に記載の圧電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶、圧電セラミック等の圧電材料を用いた振動子、発振器等の圧電デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電デバイスの代表的なものとして水晶振動子や水晶発振器がある。その一例が、例えば特許文献1に記載されている。
図5は、特許文献1に開示されている水晶振動子50を説明する分解斜視図である。この水晶振動子50は、水晶振動片51と、容器53と、蓋部材55と、を備えている。
水晶振動片51は、平面視で四角形状のATカットの水晶片51aと、その表裏面にそれぞれ設けた励振用電極51bと、励振用電極51bから水晶片51aの1つの辺の両端付近に引き出された引出電極51cと、を備えている。さらに水晶片51aは、前記水晶片51aの引出電極51cとは反対面に、各引出電極51cに接続している引き回し部51d(以下、反対面引き回し部51dともいう)を備えている。反対面引き回し部51dを設けている理由は、水晶振動片51の2つの主面のうちのどちらの面が容器53に対向した場合でも、導電性接着剤(後述する)との接続を容易にするためである。
【0003】
容器53は、水晶振動片51を実装する凹部53aと、凹部53aを囲う土手部53bと、凹部53aの底面の一端に設けた接着パッド53cと、容器53の外部底面に設けた外部接続端子53dと、を備えている。接着パッド53c及び外部接続端子53dは、図示しないビア配線等によって接続されている。蓋部材55は、容器53の土手部53bに接合されて、水晶振動片51を気密封止している。
特許文献1に開示された水晶振動子50の場合、接着パッド53cと水晶振動片51との間に絶縁性接着剤57を設け、かつ、水晶振動片51の上面から接着パッド53cに至る導電性接着剤59を設けるという2種の接着剤によって、水晶振動片51を容器53に実装している。これによって、水晶振動片51の容器53に対する接着強度を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電子機器の小型化に伴い、水晶振動子に対しても小型化の要求が益々高まっている。また、通信周波数の高周波化に伴い、厚み滑りモードで振動する水晶片の厚みも益々薄くなっている。従って、小型かつ薄い水晶振動片を用いた水晶振動子や水晶発振器等の圧電デバイスの要求が、今後益々高まる。水晶振動片51(
図5参照)が小型化されるに伴い、励振用電極51bと反対面引き回し部51dとの間の間隙Δy(
図5参照)、すなわち絶縁領域の幅Δyは、益々狭くなる。従って、導電性接着剤による励振用電極51bと反対面引き回し部51dとの短絡の危険性は高まる。また、水晶振動片51が小型化されるに伴い、水晶振動片51の質量も小さくなる。
このような事情を考慮すると、水晶振動片と容器との接着強度を確保できるのであれば、小型かつ薄い水晶振動片を容器に接着するための新たな発想の接着構造の出現が望まれる。
この出願は上記の点に鑑みなされたものであり、従って、この発明の目的は、小型かつ薄い圧電片を用いた圧電振動子や圧電発振器に対して好適な接着構造を有した圧電デバイスとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的の達成を図るため、この出願の圧電デバイスの第1発明によれば、平面形状が四角形状で厚み滑りモードで振動する圧電片と、この圧電片の表裏に設けた励振用電極と、各励振用電極から前記圧電片の第1の辺に引き出してある引出電極と、この引出電極に接続していて前記圧電片の前記引出電極とは反対面に設けた引き回し部(以下、「反対面引き回し部」とも言う)と、前記引出電極に対応する位置に設けた第1接着パッド及び第2接着パッドを有する容器と、前記圧電片を前記第1接着パッド及び第2接着パッドに接続している導電性接着剤と、を備える圧電デバイスにおいて、
前記第1接着パッド及び第2接着パッドのうち、前記引出電極が対向している接着パッドに対しては、当該接着パッドと前記引出電極との間に導電性接着剤(以下、「下側導電性接着剤」とも言う)を設けてあり、
前記第1接着パッド及び第2接着パッドのうち、前記反対面引き回し部が対向している接着パッドに対しては、前記圧電片を挟んだ反対面の引出電極側から前記圧電片の前記第1片の側面を経由して当該接着パッドに至っている導電性接着剤(以下、「上側導電性接着剤」とも言う)を設けてあること、を特徴とする。
【0007】
また、この出願の圧電デバイスの製造方法の第1発明によれば、平面形状が四角形状で厚み滑りモードで振動する圧電片と、この圧電片の表裏に設けた励振用電極と、各励振用電極から前記圧電片の第1の辺に引き出してある引出電極と、この引出電極に接続していて前記圧電片の前記引出電極とは反対面に設けた引き回し部(以下、「反対面引き回し部」とも言う)と、前記引出電極に対応する位置に設けた第1接着パッド及び第2接着パッドを有する容器と、前記圧電片を前記第1接着パッド及び第2接着パッドに接続している導電性接着剤と、を備える圧電デバイス(すなわち第1発明の圧電デバイス)を製造するに当たり、
前記圧電片の前記容器に接続する面における、引出電極及び反対面引き回し部の位置を検出する工程と、
前記位置検出において検出した前記引出電極及び前記反対面引き回し部が、前記第1接着パッド及び第2接着パッドのどちらに対向するかを判定する工程と、
前記判定工程において前記引出電極に対向すると判定された当該接着パッドに導電性接着剤を塗布する第1塗布工程と、
前記第1塗布工程が済んだ後に、前記圧電片を前記容器の前記第1及び第2接着パッドを含む面に置く工程と、
前記圧電片を置いた後に、前記圧電片の表面上の前記引出電極から前記圧電片の前記第1の辺の側面を経由して当該引出電極に前記圧電片を挟んで対向している接着パッドに至る導電性接着剤を塗布する第2塗布工程と、
を含むことを特徴とする。
【0008】
また、この出願の圧電デバイスの第2発明によれば、平面形状が四角形状で厚み滑りモードで振動する圧電片と、この圧電片の表裏に設けた励振用電極と、各励振用電極から前記圧電片の第1の辺に引き出してある引出電極と、この引出電極に接続していて前記圧電片の前記引出電極とは反対面に設けた引き回し部(以下、「反対面引き回し部」とも言う)と、前記引出電極に対応する位置に設けた第1接着パッド及び第2接着パッドを有する容器と、前記圧電片を前記第1接着パッド及び第2接着パッドに接続している導電性接着剤と、を備える圧電デバイスにおいて、
前記第1接着パッド及び第2接着パッドのうち、前記引出電極が対向している接着パッドに対しては、当該接着パッドと前記引出電極との間に導電性接着剤(以下、「第1導電性接着剤」とも言う)を設けてあり、
前記第1接着パッド及び第2接着パッドのうち、前記反対面引き回し部が対向している接着パッドに対しては、前記第1導電性接着剤に比べて少ない塗布量の導電性接着剤(以下、「第2導電性接着剤」とも言う)を設けてあることを特徴とする。
【0009】
また、この出願の圧電デバイスの製造方法の第2発明によれば、平面形状が四角形状で厚み滑りモードで振動する圧電片と、この圧電片の表裏に設けた励振用電極と、各励振用電極から前記圧電片の第1の辺に引き出してある引出電極と、この引出電極に接続していて前記圧電片の前記引出電極とは反対面に設けた引き回し部(以下、「反対面引き回し部」とも言う)と、前記引出電極に対応する位置に設けた第1接着パッド及び第2接着パッドを有する容器と、前記圧電片を前記第1接着パッド及び第2接着パッドに接続している導電性接着剤と、を備える圧電デバイス(すなわち第2発明の圧電デバイス)を製造するに当たり、
前記圧電片の前記容器に接続する面における、引出電極と反対面引き回し部との位置を検出する工程と、
前記位置検出において検出した前記引出電極及び前記反対面引き回し部が、前記第1接着パッド及び第2接着パッドのどちらに対向するかを判定する工程と、
前記判定工程において前記引出電極に対向すると判定された当該接着パッドに導電性接着剤(第1導電性接着剤)を塗布し、かつ、前記反対面引き回し部に対向すると判定された当該接着パッドに、前記第1導電性接着剤より少ない量の導電性接着剤(第2導電性接着剤)を塗布する工程と、
前記第1及び第2導電性接着剤の塗布が済んだ後に、前記圧電片を前記第1及び第2接着パッドを含む面に置く工程と、を含むことを特徴とする。
なお、圧電デバイスの第2発明及び圧電デバイスの製造方法の第2発明を実施するに当たり、第2導電性接着剤の塗布量は、第1導電性接着の塗布量の3分の2から3分の1の範囲から選ばれる量が良く、より好ましくは、半分から4分の1の範囲から選ばれる量が良い。このように少量にすることで、第2導電性接着剤が反対面引き回し部と励振用電極との間を短絡することを防止し易いからである。また、第2導電性接着剤がこのような少量であっても、対象とする圧電片が小型かつ薄い圧電片であれば、第1導電性接着剤と協働して接着強度を確保できる。
【0010】
なお、圧電デバイスの第1発明及び第2発明、並びに、圧電デバイスの製造方法の第1発明及び第2発明それぞれを実施するに当たり、圧電デバイスは、容器の外形サイズで言って、長辺が1.2mm程度、短辺が1.0mm程度である、いわゆる1210サイズ以下のものであることが好ましい。このような小型のサイズの圧電デバイスは、使用される圧電片の大きさが小さくかつ薄いため、この出願の各発明で主張する接着構造であっても、必要な接着強度が得られるからである。
また、上記の圧電デバイス及びその製造方法の各発明でいう導電性接着剤は、シリコーン系の導電性接着剤、エポキシ系の導電性接着剤、イミド系の導電接着剤等の種々のものを用いることが出来るが、応力の小さい点等の理由を重視すればシリコーン系の導電性接着剤が良く、耐熱性を要求する点等を重視すればイミド系の導電接着剤が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
圧電デバイスの第1発明によれば、圧電片は、引出電極が対向する接着パッドに対し下側導電性接着剤によって面接着の状態で強固に接着してあり、反対面引き回し部が対向する接着パッドに対し上側導電性接着剤によって補助的に接着してある。このような変則的な接着構造ではあるが、小型かつ薄い圧電片に対しては必要十分な接着が行える。また、反対面引き回し部が接着パッドに対向する箇所は、上側導電性接着剤によって接着を確保しているので、反対面引き回し部と励振用電極との間隙Δy(
図1(B)、(C)等参照)が狭い場合でも、この間隙に導電性接着剤は極めて及び難いから、反対面引き回し部と励振用電極とが導電性接着剤によって短絡することを防止できる。
また、圧電デバイスの第2発明によれば、圧電片は、引出電極が対向する接着パッドに対し第1導電性接着剤によって面接着の状態で強固に接着してあり、反対面引き回し部が対向する接着パッドに対し第1導電性接着剤より塗布量が少ない第2導電性接着剤によって補助的に接着してある。このような変則的な接着構造ではあるが、小型かつ薄い圧電片に対しては必要十分な接着が行える。また、反対面引き回し部が接着パッドに対向する箇所は、塗布量が少ない第2導電性接着剤によって接着を確保しているので、反対面引き回し部と励振用電極との間隙Δy(
図3(B)、(C)等参照)が狭い場合でも、この間隙に導電性接着剤は極めて及び難いから、反対面引き回し部と励振用電極とが導電性接着剤によって短絡することを防止できる。
また、圧電デバイスの製造方法の第1発明によれば、第1発明の圧電デバイスを容易に製造でき、圧電デバイスの製造方法の第2発明によれば、第2発明の圧電デバイスを容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】圧電デバイスの第1発明の実施形態(圧電デバイス10)を説明するための図である。
【
図2】圧電デバイスの製造方法の第1発明の実施形態(圧電デバイス10を製造する好ましい製法)を説明するための図である。
【
図3】圧電デバイスの第2発明の実施形態(圧電デバイス30)を説明するための図である。
【
図4】圧電デバイスの製造方法の第2発明の実施形態(圧電デバイス30を製造する好ましい製法)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照してこの出願の圧電デバイスの各発明及び圧電デバイスの製造方法の各発明の実施形態について説明する。なお、説明に用いる各図はこれらの発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。また、説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の説明中で述べる形状、寸法、材質等はこの発明の範囲内の好適例に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0014】
1. 圧電デバイスの第1発明の実施形態
図1は第1発明の実施形態の圧電デバイス10の説明図である。特に、
図1(A)は、圧電デバイス10を、一部を切り欠いて示した斜視図、
図1(B)は、圧電デバイス10の、
図1(A)中のP-P線に沿って切った部分的な断面図、
図1(C)は、圧電デバイス10の、
図1(A)中のQ-Q線に沿って切った部分的な断面図である。
【0015】
この圧電デバイス10は、圧電振動片11と、容器13と、蓋部材15とを備えている。圧電振動片11は、平面視で四角形状であって、かつ、厚み滑りモード振動する圧電片11aと、圧電片11aの表裏面にそれぞれ設けた励振用電極11bと、励振用電極11bから圧電片11aの1つの辺11cの両端に引き出された引出電極11dと、を備える。さらに、圧電振動片11は、各引出電極11dに接続していて、1つの辺11cの側面から圧電片11aの反対面に引き回してある反対面引き回し部11eを、備えている。なお、反対面引き回し部11eを設けている理由は、圧電振動片11の2つの主面のうちのどちらの面が容器13に対向した場合でも、後述する導電性接着剤との接続を容易にするためである。
【0016】
圧電片11aは、種々の圧電材料片で構成でき、この実施形態の場合は、ATカットの水晶片で構成してある。
容器13は、圧電振動片11を実装する凹部13aと、凹部13aを囲う土手部13bと、凹部13aの底面の一端に設けた第1接着パッド13ca及び第2接着パッド13cbと、容器13の外部底面に設けた外部接続端子13dと、を備えている。第1及び第2接着パッド13ca、13cbと、外部接続端子13dとは、図示しないビア配線等によって接続されている。容器13は、例えばセラミックパッケージによって構成できる。
蓋部材15は、容器13の土手部13bに接合されて、圧電振動片11を気密封止するもので、例えば金属製のものである。
【0017】
さらに、この圧電デバイス10は、第1接着パッド13ca及び第2接着パッド13cbのうち、引出電極11dが対向している接着パッド(
図1の例では第2接着パッド13cb)に対しては、当該接着パッド13cbと引出電極11d(11da)との間に下側導電性接着剤17aを設けてある。また、第1接着パッド13ca及び第2接着パッド13cbのうち、反対面引き回し部11eが対向している接着パッド(
図1の例では第1接着パッド11ca)に対しては、圧電片11aを挟んだ反対面の引出電極11daから圧電片11aの第1の辺11cの側面を経由して第1接着パッド13caに至っている上側導電性接着剤17bを設けてある。
【0018】
従って、この圧電デバイス10の場合、圧電振動片11と容器13との接着は、下側導電性接着剤17aによって強固に行われ(
図1(B)参照)、上側導電性接着剤17bによって補助的に行われる(
図1(C)参照)。このように変則的な接着構造であるが、圧電片11aが小型かつ薄いものであれば、所望の接着強度を確保できる。
然も、第2接着パッド13cb側においては、当該パッドと引出電極11daとの間に下側導電性接着剤を設け、第1接着パッド11ca側においては、上側導電性接着剤17bを設けることで、圧電振動片11は容器13に接続されるので、反対面引き回し部と励振用電極との間の間隙Δy(絶縁領域)に、導電性接着剤が及ぶ可能性は極めて低くなるため、反対面引き回し部11eと励振用電極11bとが短絡することを防止できる。
なお、この圧電デバイス10は、容器13の外形の長辺寸法Laが1.2mm程度以下、かつ、短辺寸法Lbが1.0mm程度以下のもの、いわゆる1210サイズ以下のものであることが好ましい。従って、圧電片11aの外形寸法も、この1210サイズの容器に収まる大きさであり、例えば長辺寸法が0.9mm程度、短辺寸法が0.7mm程度であることが好ましい。また、圧電片11aの厚さは、圧電振動片11に要求される発振周波数に応じた厚さであるが、典型的には数10μm以下であることが好ましい。
このように小型の圧電デバイスに収容できる圧電片は、小型かつ軽量であるため、上記の接着構造であっても目的の接着強度を確保できるからである。
【0019】
2. 圧電デバイスの製造方法の第1発明
次に、圧電デバイスの製造方法の第1発明の実施形態として、上記した第1発明の圧電
デバイス10を製造する例を、
図2(A)~(C)に示す製造工程図を参照して説明する。
平面形状が四角形状で厚み滑りモードで振動する圧電振動片11としてATカットの水晶振動片11を用意する。次に、この水晶振動片11を、周知の水晶振動片搭載装置21の水晶振動片吸着機構21aによってピックアップし、さらにこのピックアップした水晶振動片11を、水晶振動片搭載装置21の画像認識装置21bによって画像認識する(
図2(A))。この画像認識において、水晶振動片11の容器13に接続する面における、引出電極11d(11da)(
図1(B)参照)と反対面引き回し部11e(
図1(C)参照)との位置を検出する。
【0020】
次に、上記位置検出において検出した、引出電極及び反対面引き回し部が、容器13の第1接着パッド13ca及び第2接着パッド13cbのどちらに対向するかを判定する。この判定は、例えば、容器13に対し別の画像認識装置で第1接着パッド13ca及び第2接着パッド13cbの位置を認識し、その認識結果と、上記の引出電極及び反対面引き回し部の位置の認識結果とに基づき、例えば水晶振動片搭載装置21に備わるアルゴリズムによって行う等の任意好適な手段によって行う。
次に、前記判定工程において引出電極に対向すると判定された当該接着パッド(
図2(B)の例では第2接着パッド13cb)に導電性接着剤を塗布する。すなわち第1塗布工程を実施する(
図2(B)参照)。
【0021】
第1塗布工程が済んだ後、水晶振動片11を、容器13の第1及び第2接着パッドを含む面に、水晶振動片搭載装置21によって、置く(
図2(C))。そして、水晶振動片11を置いた後に、水晶振動片11の表面上の引出電極から水晶振動片の第1の辺の側面を経由して反対面の接着パッド(
図2(C)の場合、第1接着パッド13ca)に至る導電性接着剤17bを、塗布する。すなわち第2塗布工程を実施する(
図2(C))。
次に、導電性接着剤17a、17bを硬化する処理をし、さらに所定の周波数調整を実施し、さらに蓋部材15(
図1参照)を容器に接合して水晶振動片11を気密封止することによって、圧電デバイス10が完成する。
【0022】
3.圧電デバイスの第2発明
次に、圧電デバイスの第2発明の実施形態について説明する。
図3は第2発明の実施形態の圧電デバイス30の説明図である。特に、
図3(A)は、圧電デバイス30を、一部を切り欠いて示した斜視図、
図3(B)は、圧電デバイス30の、
図3(A)中のP-P線に沿って切った部分的な断面図、
図3(C)は、圧電デバイス30の、
図3(A)中のQ-Q線に沿って切った部分的な断面図である。
【0023】
圧電デバイス30の、第1発明の圧電デバイス10との相違点は、導電性接着剤の塗布位置である。すなわち、圧電デバイス30の場合、第1接着パッド13ca及び第2接着パッド13cbのうち、引出電極が対向している接着パッド(
図3の例では第2接着パッド13cb)に対しては、当該接着パッドと引出電極との間に第1導電性接着剤31aを設けてある。また、第1接着パッド13ca及び第2接着パッド13cbのうち、反対面引き回し部が対向している接着パッド(
図3の例では第1接着パッド13ca)に対しては、当該接着パッドと引出電極との間に、第1導電性接着剤31aに比べて塗布量が少ない第2導電性接着剤31bを設けてある。
【0024】
従って、この圧電デバイス30の場合、圧電振動片11と容器13との接着は、第1導電性接着剤31aによって強固に行われ(
図3(B)参照)、第2導電性接着剤31bによって補助的に行われる(
図3(C)参照)。このように変則的な接着構造であるが、圧電片11aが小型かつ薄いものであれば、所望の接着強度を確保できる。
然も、第2接着パッド13cb側においては、当該パッドと引出電極11daとの間に第1導電性接着剤31aを設け、第1接着パッド13ca側においては、第1導電性接着剤に比べて量が少ない第2導電性接着剤31bを設けて、圧電振動片11は容器13に接続されるので、反対面引き回し部と励振用電極との間の間隙(絶縁領域)に、導電性接着剤が及ぶ可能性は極めて低くなり、反対面引き回し部と励振用電極とが短絡することを防止できる。
【0025】
4. 圧電デバイスの製造方法の第2発明
次に、圧電デバイスの製造方法の第2発明の実施形態として、上記した第2発明の圧電デバイス30を製造する例を、
図4(A)~(C)に示す製造工程図を参照して説明する。
平面形状が四角形状で厚み滑りモードで振動する圧電振動片11としてATカットの水晶振動片11を用意する。次に、この水晶振動片11を、周知の水晶振動片搭載装置21の水晶振動片吸着機構21aによってピックアップし、さらにこのピックアップした水晶振動片11を、水晶振動片搭載装置21の画像認識装置21bによって画像認識する(
図4(A))。この画像認識において、水晶振動片11の容器13に接続する面における、引出電極11d(11da。
図3(B)参照)と反対面引き回し部(11e。
図3(C)参照)との位置を検出する。
【0026】
次に、上記位置検出において検出した、引出電極及び反対面引き回し部が、容器13の第1接着パッド13ca及び第2接着パッド13cbのどちらに対向するかを判定する。この判定は、例えば、容器13に対し別の画像認識装置で第1接着パッド13ca及び第2接着パッド13cbの位置を認識し、その認識結果と、上記の引出電極及び反対面引き回し部の位置の認識結果とに基づき、例えば水晶振動片搭載装置21に備わるアルゴリズムによって行う等の任意好適な手段によって行う。
次に、前記判定工程において引出電極に対向すると判定された当該接着パッド(
図4(B)の例では第2接着パッド13cb)に第1電性接着剤31aを塗布する。すなわち第1塗布工程を実施する(
図4(B)参照)。また、反対面引き回し部に対向すると判定された当該接着パッド(
図4(C)の例では第1接着パッド13ca)に、第1導電性接着剤31aより少ない量の第2導電性接着剤31bを塗布する(
図4(C))。
【0027】
次に、導電性接着剤31a、31bを硬化する処理をし、さらに所定の周波数調整を実施し、さらに蓋部材15(
図3参照)を容器に接合して水晶振動片11を気密封止することによって、圧電デバイス10が完成する。
【0028】
5. 他の実施形態
上述した実施形態では圧電片振動片として水晶振動片を用いる例を説明したが、圧電振動片は他の圧電材料、例えば圧電セラミック、ニオブ酸リチウム等を用いたものでも良い。また、圧電デバイスとして水晶振動子の例を示したが、圧電デバイスは水晶発振器でも良い。また、上述の実施形態では、容器は凹部を有する構造のもので、蓋部材は平板のものとしていたが、容器が平板状のもので、蓋部材が圧電片を内包する凹部を有したキャップ状のものでも良い。
【符号の説明】
【0029】
10:第1発明の圧電デバイス 11:圧電振動片(水晶振動片)
11a:圧電片(水晶片) 11b:励振用電極
11c:第1の辺
11d,11da,11db:引出電極 11e:反対面引き回し部
13:容器 13a:凹部
13b:土手部 13ca:第1接着パッド
13cb:第2接着パッド 15:蓋部材
17a:下側導電性接着剤 17b:上側導電性接着剤
Δy:励振用電極と反対面引き回し部との間の間隙(絶縁領域)
21:圧電振動片搭載機 21a:圧電振動片吸着機構
21b:画像認識装置
30:第2発明の圧電デバイス
31a:第1導電性接着剤
31b:第2導電性接着剤(第1導電性接着剤に比べて塗布量が少ないもの)