(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090444
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】汎用コンバインの脱穀装置
(51)【国際特許分類】
A01F 12/24 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A01F12/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206362
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】上加 郁朗
【テーマコード(参考)】
2B094
【Fターム(参考)】
2B094AA03
2B094AA11
2B094HA01
2B094HC09
2B094HD04
(57)【要約】
【課題】本発明は、汎用コンバインの脱穀装置で受網を強固にすると共に穀粒の選別が良好に行えるようにすることを課題とする。
【解決手段】脱穀装置4の扱室10と選別室20の間に受網12を設けた汎用コンバインにおいて、扱室10の前後に向かう幅のある支持枠70を設け、該支持枠70の左右に円弧状受網12を連結し、支持枠70の平面に選別孔71を設けたことを特徴とする汎用コンバインの脱穀装置とする。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置(4)の扱室(10)と選別室(20)の間に受網(12)を設けた汎用コンバインにおいて、扱室(10)の前後に向かう幅のある支持枠(70)を設け、該支持枠(70)の左右に円弧状受網(12)を連結し、支持枠(70)の平面に選別孔(71)を設けたことを特徴とする汎用コンバインの脱穀装置。
【請求項2】
支持枠(70)と受網(12)の連結部に扱室(10)内に向けて突出する扱材(72)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバインの脱穀装置。
【請求項3】
扱材(72)を刃先が扱胴(11)の円周方向に向かう切刃としたことを特徴とする請求項2に記載の汎用コンバインの脱穀装置。
【請求項4】
網を張った複数の網枠(12LF、LR、RF、RR)で受網(12)構成して支持枠(70)に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバインの脱穀装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用コンバインに搭載する脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用コンバインは、特開2016―187327号公報に記載されているように、穀粒を稔らせた穀稈を圃場から刈り取って、脱穀装置に投入して穀粒を脱穀分離してグレンタンクに溜めて脱穀済みの排桿は脱穀装置の後部から圃場に排出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
汎用コンバインの脱穀装置は、扱室に多量の穀稈を取り込み扱胴の扱歯で扱ぎ作用を行って受網から穀粒が選別室に落下して、選別された穀粒が収穫され、細断された穀稈は機体後部から機外へ排出される。このために穀粒と共に多くの稈屑が受網に落下するので、受網を広く強固に構成する必要がある。
【0005】
本発明は、汎用コンバインの脱穀装置で受網を強固にすると共に穀粒の選別が良好に行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0007】
請求項1の発明は、脱穀装置4の扱室10と選別室20の間に受網12を設けた汎用コンバインにおいて、扱室10の前後に向かう幅のある支持枠70を設け、該支持枠70の左右に円弧状受網12を連結し、支持枠70の平面に選別孔71を設けたことを特徴とする汎用コンバインの脱穀装置とする。
【0008】
請求項2の発明は、支持枠70と受網12の連結部に扱室10内に向けて突出する扱材72を設けたことを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバインの脱穀装置とする。
【0009】
請求項3の発明は、扱材72を刃先が扱胴11の円周方向に向かう切刃としたことを特徴とする請求項2に記載の汎用コンバインの脱穀装置とする。
【0010】
請求項4の発明は、網を張った複数の網枠12LF、LR、RF、RRで受網12構成して支持枠70に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の汎用コンバインの脱穀装置とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明で、脱穀装置4に投入された穀稈は扱胴11で穀粒が扱がれると共に細断されて穀粒が受網12を通して選別室20に落下するが、受網12が扱室10の前後に設ける幅のある支持枠70に連結支持されているために強固に稈屑と穀粒を受け、幅のある支持枠70の平面には選別孔71が設けられているために穀粒が支持枠70上に溜まることが無い。
【0012】
請求項2の発明で、受網12に設けた扱材72で穀稈が切り扱がれて穀粒の脱穀が促進され、脱穀負荷が軽減する。
【0013】
請求項3の発明で、扱材72が切刃であると穀稈の扱ぎ作用の抵抗が少なく、脱穀装置4の駆動負荷を軽減する。
【0014】
請求項4の発明で、受網12が複数の網枠12LF、LR、RF、RRの組み合わせて強固な構成になって扱室10での扱ぎ圧力に耐えると共に、網の部分的な破損ではその網枠のみを交換することで対応でき、メンテナンスが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態にかかるコンバインの正面図である。
【
図4】同上コンバインの脱穀装置の前後方向の縦断面図である。
【
図10】(A)、(B)、(C)支持枠の別実施例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~3に示すように、汎用コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を刈取収穫する刈取前処理装置3が設けられ、刈取前処理装置3の後方左側に収穫された穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取前処理装置3の後方右側に操縦者が搭乗する操縦部5が設けられている。操縦部5を囲むキャビン59の上面にソーラーパネル60を設け、日光で発電する電力をバッテリーに充電する。
【0017】
操縦部5の下側にエンジンを内装するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側に脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7の後側に穀粒を外部に排出する排出オーガ8が設けられている。
【0018】
刈取前処理装置3は、圃場の穀稈を起立させながら後側に搬送する搬送装置3Aと、搬送装置3Aの後側下部に搬送された穀稈の株元を切断する刈刃装置3Bと、搬送装置3Aの後側に搬送された穀稈を左側に寄せ集めるオーガ装置3Cと、寄せ集められた穀稈を脱穀装置4に搬送するフィーダハウス3Dから構成されている。
【0019】
図4に示すように、脱穀装置4は、穀稈を脱穀する扱室10と、脱穀された穀粒を選別する選別室20から形成されている。
【0020】
扱室10の前後壁には、フィーダハウス3Dから搬送されてくる穀稈を脱穀する扱胴11が架設され、扱胴11の下側には、扱胴11の外周下部に沿って半円弧形状に形成された受網12が設けられている。また、扱胴11の上部は、開閉可能な扱胴カバー13で覆われており、扱胴カバー13の内周部には、穀稈を扱室10の後部に案内する送塵板(図示省略)が設けられている。
【0021】
受網12は、
図8~12に示す如く、扱胴11の最下部で軸方向に並行に設ける支持枠70に受網12をボルトナット73で一体的に組み合わせて半円状に構成している。受網12は、網を枠板Wに円弧状に張った四つの左前網枠12LFと左後網枠12LRと右前網枠12RFと右後網枠12RRで構成してそれぞれをボルトナット73で連結し、左右中央は支持枠70にボルトナット73で取り付け、前後端を前支持枠75と後支持枠76に取り付けていて、脱穀装置4から取り外して各網枠12LF、LR、RF、RRを部分的に交換することも可能にしている。また、支持枠70は、
図10に示す横幅のある[型の帯鉄で、前後に長い角孔や長孔或いは丸穴からなる選別孔71を平面部に設けて、支持枠70上に載る穀粒を落下させる。
【0022】
なお、図では網枠12LF、12LR、12RF、12RRの枠板Wをそれぞれ網枠板12LW、12RWと表示している。
【0023】
なお、
図11には左前後網枠12LF、12LRと右前後網枠12LR、12RRと支持枠70の取付部に扱室10内に向かって突出する扱材72を挟んで取り付けている。扱材72は帯鉄であるが、刃先を扱胴11の回転方向に向かった切刃を取り付けると桿屑が切断されて脱穀負荷が軽減する。
【0024】
また、扱材72を上下反転して取り付け可能にすることで突出側が摩耗すると上下反転取付で対応でき、扱材72の突出高さは扱胴11の入口から出口に向かって順次高くすると脱穀負荷が軽減する。さらに、扱材72を帯鉄に棒材を突設した構成にすると扱ぎ抵抗を少なくして穀粒の損傷を少なく出来、その突出高さを収穫穀粒の種類の応じた変更が出来るようにしても良い。
【0025】
選別室20の上部には、扱室10から漏下してくる穀粒を選別処理する揺動選別装置21が設けられている。揺動選別装置21の下部には、前側から順に、揺動選別装置21に選別風を送風する唐箕25と、唐箕25の後方に選別風の送風方向を変更する風割26と、揺動選別装置21から漏下してくる穀粒をグレンタンク7に搬送する1番螺旋27と、揺動選別装置21の後部から漏下してくる枝梗等が付着した穀粒を揺動選別装置21の前部の選別棚に再搬送する2番螺旋28が設けられている。
【0026】
図5,6に示すように、扱胴11は、扱室10の前後壁に回転自在に架設される回転軸30と、回転軸30の前部に支持された円錐台形状のインペラ31とロータ32から形成されている。
【0027】
インペラ31は、円形状の前板40と、前板40よりも径が大きい円形状の後板41と、前板40と後板41の外周部を連結する側板42から形成されている。
【0028】
側板42の外周面には、インペラ31の前部に搬送された穀稈をインペラ31の後部に搬送する上下一対の搬送螺旋43が立設されている。これにより、インペラ31に移送されてきた穀稈をインペラ31の前部から後部に効率よく搬送してロータ32に移送することができる。
【0029】
搬送螺旋43の前面には、円周方向に所定角度を隔てて側板42と搬送螺旋43の前面下部を連結する略三角形状の補強リブ44が設けられている。これにより、搬送螺旋43の剛性を高めて、穀稈から搬送螺旋43に加わる負荷による搬送螺旋43の変形を抑制することができる。
【0030】
ロータ32は、前後方向に二分割されてインペラ31の後側に設けられた前ロータ32Aと、前ロータ32Aの後側に設けられた後ロータ32Bから形成されている。なお、前後方向に二分割せず一体として形成することもできる。
【0031】
前ロータ32Aは、インペラ31の後板41と回転軸30の中間部に設けられた中間板35の間に設けられ、後ロータ32Bは、回転軸30の中間板35と回転軸30の後板36の間に設けられている。なお、中間板35は、回転軸30の前後方向の中間部に設けられた左右方向の縦断面が六角形状の中間支持部材34の外周面に立設している。
【0032】
前ロータ32Aは、前後方向に延在する6本のバーフレーム50と、前後方向に延在する3本の前後フレーム51と、前後フレーム51に前後方向に所定の間隔を隔てて支持された外側リング52から形成されている。
【0033】
同様に、後ロータ32Bは、前後方向に延在する6本のバーフレーム50と、前後方向に延在する3本の前後フレーム51と、前後フレーム51に前後方向に所定の間隔を隔てて支持された外側リング52から形成されている。
【0034】
前ロータ32Aと後ロータ32Bは同一構造なので、以下では前ロータ32Aで説明する。
図7に示すように、前ロータ32Aの前後フレーム51の前部は、周方向に三分割された分割プレート53を介してインペラ31の後板41の後面に装着され、前後フレーム51の後部は、周方向に三分割された分割プレート54を介して回転軸30の中間板35の前面に装着されている。なお、矢印は回転方向を示している。
【0035】
分割プレート53の外周部は、後板41の外周部に沿うように円弧状に形成され、分割プレート53の内周部は、中間支持部材34の外周部に沿うように頂角が120度に形成された三角形状の切欠き部が形成されている。
【0036】
分割プレート53の外周部には、周方向に所定の間隔を隔ててバーフレーム50を挿通させる外周部が開口された円状の開口部53Aが2個形成されている。これにより、分割プレート53とバーフレーム50の連結を強固に行うことができ、分割プレート53の外周部の外側にバーフレーム50が延出するのを抑制することができる。
【0037】
同様に、分割プレート54の外周部は、中間板35の外周部に沿うように円弧状に形成され、分割プレート54の内周部は、中間支持部材34の外周部に沿うように頂角が120度に形成された三角形状の切欠き部が形成されている。
【0038】
分割プレート54の外周部には、周方向に所定の間隔を隔ててバーフレーム50を挿通させる外周部が開口された円状の開口部54Aが2個形成されている。これにより、分割プレート54とバーフレーム50の連結を強固に行うことができ、分割プレート54の外周部の外側にバーフレーム50が延出するのを抑制することができる。
【0039】
分割プレート53と分割プレート54の回転方向の上手部には前後方向に延在する上手前後フレーム55が架設され、分割プレート53と分割プレート54の回転方向の下手部には前後方向に延在する下手前後フレーム56が架設連結されている。
【0040】
上手前後フレーム55の左右方向の縦断面形状はL字状に形成され、上手前後フレーム55の外周部は回転方向の上手方向に延在して形成されている。また、下手前後フレーム56の左右方向の縦断面形状はL字状に形成され、下手前後フレーム56の外周部は回転方向の上手方向に延在して形成されている。
【0041】
前後フレーム51は、分割プレート53と分割プレート54の下手側に架設された下手前後フレーム56と、この分割プレート53と分割プレート54の回転方向の下手側に隣接する分割プレート53と分割プレート54の上手側に架設された上手前後フレーム55をボルト等の締結部材によって連結して形成し、下手前後フレーム56の外周部の外周面に上手前後フレーム55の外周部の内周面を重ね合わせて形成している。これにより、上手前後フレーム55と下手前後フレーム56の連結部に穀稈が絡み付くのを抑制することができる。
【0042】
図5と
図6に示す扱胴のツース杆58については、従来型の構成を示している。
【0043】
【0044】
外形リング52は、鋼棒を円弧状に曲げ形成した円環リング形状で、前後方向に隣り合う外形リング52に亘ってL字状に曲げたツース杆58(
図7参照)を外周の六箇所等間隔で三角状に突出させて一体に溶接している。このツース杆58の側面は螺旋方向に傾斜させて脱穀時に送り作用する。ツース杆58はロータ32の回転方向前側が急角度で起立し後側が緩傾斜としているが、前後同傾斜でも良い。
【符号の説明】
【0045】
4 脱穀装置
10 扱室
11 扱胴
12 受網
12LF、LR、RF、RR 網枠
20 選別室
70 支持枠
71 選別孔
72 扱杆