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  • 特開-ゴルフボール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090447
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A63B37/00 432
A63B37/00 552
A63B37/00 422
A63B37/00 412
A63B37/00 618
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206365
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 宏隆
(57)【要約】
【課題】X線画像機器等の検査装置を設ける必要がなく、ゴルフボールの生産過程において作業員の目視によりコアの偏芯が容易に確認できるゴルフボールを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、コアとカバーとの間に少なくとも1層の中間層が形成されるゴルフボールにおいて、上記コアのJIS Z 8722に基づくLab表示のL値(明度)が85以下であり、上記中間層を上記コアに被覆した球体(中間層被覆球体)のJIS Z 8722に基づくLab表示のL値(明度)が75以上であり、中間層の厚み1.0mmでの全光線透過率が1~50%であり、且つ、上記コアと上記中間層被覆球体との色差ΔEが10以上であることを特徴とするゴルフボールを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとカバーとの間に少なくとも1層の中間層が形成されるゴルフボールにおいて、上記コアのJIS Z 8722に基づくLab表示のL値(明度)が85以下であり、上記中間層を上記コアに被覆した球体(中間層被覆球体)のJIS Z 8722に基づくLab表示のL値(明度)が75以上であり、中間層の厚み1.0mmでの全光線透過率が1~50%であり、且つ、上記コアと上記中間層被覆球体との色差ΔEが10以上であることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
上記中間層の厚さが0.8~1.5mmである請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記コアのL値(明度)が80以下である請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記コアと上記中間層被覆球体との色差ΔEが20以上である請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項5】
上記中間層の厚み1.0mmでの全光線透過率が25%以上である請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項6】
上記中間層には硫酸バリウムを含有する請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項7】
上記硫酸バリウムの含有量は、上記中間層の材料全量の8~20質量%である請求項6記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアとカバーとの間に少なくとも1層の中間層が形成されるゴルフボールであり、更に詳述すると、低い明度のコアと一定の透過性を有する中間層とを具備することにより、コアの偏芯を容易に判別できるゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
最近のゴルフボールにおいて、コアを被覆するカバー(最外層)や中間層の被覆層については、ボールの打感や低スピン化の観点から、射出成形や圧縮成形を用いて多層化及び薄ゲージ化が進んでいる。被覆層の多層化及び薄ゲージの製法の技術が進むに伴い、被覆層のゲージの不均一性、即ち、偏芯が生じることが課題となっている。不均一なゴルフボールは重心位置が変わるので、ボールの直進性に大きな影響を与えてしまう。
【0003】
ボールを破壊しないで偏芯を検査する方法として、一般的には、超音波で厚みを見る方法やX線でボール内部を可視化する検査が行われている。例えば、特許文献1には、バリウムやビスマスでドープさせたポリマー材料を用い、X線画像機器によりX線を照射してボールの偏芯性を確認する技術が提案されている。同様に、特許文献2及び特許文献3には、X線でゴルフボールの偏芯検査を行う方法が記載されている。また、特許文献4~6には、X線に代わりテラヘルツ波をツーピースゴルフボールに照射して、該ゴルフボール内のコアの偏芯量を算出する方法などが提案されている。
【0004】
しかしながら、これら特許文献に記載された偏芯検査は、X線画像機器等の設備投資のコストが大きくなり、また、このような検査工程を設けることはゴルフボールの製造工程において生産性が悪いものであった。従って、ゴルフボールを製造する作業員がボールや中間層被覆球体等の中間生産物を目視しただけで偏芯性を容易に確認できるようにボール内部構成を改良することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-259083号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0042586号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0196956号明細書
【特許文献4】特開2016-65749号公報
【特許文献5】特開2019-132863号公報
【特許文献6】特開2021-63821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、X線画像機器等の検査装置を設ける必要がなく、ゴルフボールの生産過程において作業員の目視によりコアの偏芯が容易に確認できるゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、コアとカバーとの間に中間層が形成されたゴルフボールにおいて、コアと該コアと隣り合う中間層との両部材の材料と色調との関係を調整すること、具体的には、コアの表色をLab表示のL値(明度)で85以下と小さく設定し、中間層を全光線透過率が1~50%となるように半透明性に仕上げると共に、中間層をコアに被覆した球体(中間層被覆球体)の表色をLab表示のL値(明度)で75以上と高く設定し、且つ、コアと中間層被覆球体との色差ΔEを一定以上に大きいものとすることによって、作業員が目視で一見しただけでも、コアの偏芯性を容易に判別することができ、これにより、高価なX線画像装置等の検査装置を用いなくても偏芯性のないゴルフボールを確実に製造することができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
従って、本発明は、下記のゴルフボールを提供する。
1.コアとカバーとの間に少なくとも1層の中間層が形成されるゴルフボールにおいて、上記コアのJIS Z 8722に基づくLab表示のL値(明度)が85以下であり、上記中間層を上記コアに被覆した球体(中間層被覆球体)のJIS Z 8722に基づくLab表示のL値(明度)が75以上であり、中間層の厚み1.0mmでの全光線透過率が1~50%であり、且つ、上記コアと上記中間層被覆球体との色差ΔEが10以上であることを特徴とするゴルフボール。
2.上記中間層の厚さが0.8~1.5mmである上記1記載のゴルフボール。
3.上記コアのL値(明度)が80以下である上記1又は2記載のゴルフボール。
4.上記コアと上記中間層被覆球体との色差ΔEが20以上である上記1又は2記載のゴルフボール。
5.上記中間層の厚み1.0mmでの全光線透過率が25%以上である上記1又は2記載のゴルフボール。
6.上記中間層には硫酸バリウムを含有する上記1又は2記載のゴルフボール。
7.上記硫酸バリウムの含有量は、上記中間層の材料全量の8~20質量%である上記6記載のゴルフボール。
【発明の効果】
【0009】
本発明のゴルフボールによれば、ゴルフボールの製造過程において、作業員の目視により、コアの偏芯性を容易に判別することができ、検査装置を用いなくても偏芯性のないゴルフボールを作業性良く確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】中間層被覆球体におけるコアの偏芯の状態を説明するための概略図である。
【0011】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールは、コアとカバーと、これらの間に形成される中間層とを具備する。以下、上記の各層について詳述する。
【0012】
コアは単層のほか、複数層に形成することができる。コアの材料としては、公知のゴム材料や各種の樹脂材料を基材として用いることができる。コアをゴム材料で形成する場合、基材ゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴムの公知の基材ゴムを使用することができ、より具体的には、ポリブタジエン、特にシス構造を少なくとも40%以上有するシス-1,4-ポリブタジエンを主に使用することが推奨される。また、基材ゴム中には、所望により上述したポリブタジエンと共に、天然ゴム,ポリイソプレンゴム,スチレンブタジエンゴムなどを併用することができる。また、ポリブタジエンは、チタン系、コバルト系、ニッケル系、ネオジウム系等のチーグラー系触媒、コバルト及びニッケル等の金属触媒により合成することができる。
【0013】
上記の基材ゴムには、不飽和カルボン酸及びその金属塩等の共架橋剤,酸化亜鉛,硫酸バリウム,炭酸カルシウム等の無機充填剤、ジクミルパーオキサイドや1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物等を配合することができる。また、必要により、市販品の老化防止剤等を適宜添加することができる。
【0014】
また、後述するようにコアの表色を一定の低い明度になるように、上記の基材ゴムには、各種の顔料を配合することができる。この顔料としては、黒鉛,酸化チタン等の無機顔料や、キナクリンレッド,フタロシアンブルー,イソインドリンイエロー等の有機顔料を使用することができる。
【0015】
上記顔料の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.05質量部以上とすることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上である。また、顔料の配合量が1.0質量部より多すぎても、コアの表色を一定の低い明度にする効果があまりなくなる。
【0016】
上記コアは、上記各成分を含有するゴム組成物を加熱硬化させることにより製造することができる。例えば、バンバリーミキサーやロール等の混練機を用いて混練し、コア用金型を用いて圧縮成形又は射出成型し、有機過酸化物や共架橋剤が作用するのに十分な温度として、100~200℃、好ましくは140~180℃、10~40分の条件にて成形体を適宜加熱することにより、該成形体を硬化させて製造することができる。
【0017】
また、ゴム組成物に顔料を配合しない場合には、ゴム組成物を加熱硬化させてコアを得た後、該コアの表面に顔料を塗装してもよい。
【0018】
コアのL値(明度)は85以下であり、好ましくは80以下、より好ましくは70以下である。この値が小さすぎると、コアが暗く見えてしまい、コアの偏芯の有無の識別が困難となってしまう。コアを複数層に形成した場合、該コアのL値は外層コアのL値となる。
【0019】
上記のL値は、JIS Z8722の規格に基づいたLab表示のL値を意味する。L値(明度)は、色の明るさ度合いを示し、色味の情報を持たない。L値(明度)が高い場合は明るい色を意味し、低い場合は暗い色またはくすんだ色を意味する。これらの数値の測定方法は、公知の色差計を用いることができ、例えば、形式MSC-IS-2DH(スガ試験機(株)製)が挙げられる。以下、本明細書に記載において、L値は全て上記の意味である。
【0020】
上記コアの周囲には、コアを被覆する部材として、少なくとも1層の中間層とカバーを形成することができる。また、中間層が2層からなる場合は、各層は、内側から順に、包囲層、中間層及び最外層と称することがある。さらには、中間層が3層以上からなってもよく、その場合は、内側から順に、内側包囲層、外側包囲層、中間層及び最外層と称することがある。
【0021】
中間層は樹脂組成物により形成される。この樹脂組成物としては、従来からゴルフボール用材料として採用される樹脂を主材とする樹脂組成物が挙げられる。樹脂としては、例えば、アイオノマー系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーなどが例示される。特に、反発性と成型性の点から、アイオノマー系樹脂が好適である。
【0022】
上記樹脂組成物には、酸化チタン、各種の顔料、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の物質を配合することが好適である。これらの物質を樹脂組成物に配合することにより、中間層を半透明性に仕上げることができる。これらの物質のうち、中間層被覆球体の耐久性及び透過性の点から、硫酸バリウムを用いることが好適である。
【0023】
硫酸バリウムを用いる場合、硫酸バリウムの配合量は、樹脂組成物の全量の100質量%に対して8~20質量%の範囲であることが好適である。この配合量が上記範囲よりも多くなると、中間層の色が白濁化し、半透明性の維持が厳しくなる場合がある。一方、この配合量が上記範囲より少ないと、中間層の透明度が高くなり、色差による偏芯の検出が難しくなる。また、一般的には、コアの偏芯状態では、該コアを覆う中間層の薄い部分における耐久性が悪くなってしまう。このため、中間層部材の透過率を調整するために硫酸バリウムを添加するだけではなく、上記の偏芯が生じても硫酸バリウムの中間層への配合により、耐久性の低下を防止することができる。また、樹脂に色目を付ける目的で、顔料として、黒鉛,酸化チタン等の無機顔料や、キナクリンレッド,フタロシアンブルー,イソインドリンイエロー等の有機顔料を用いることができる。
【0024】
中間層の厚さは、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは1.2mm以上であり、上限値は、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1.3mm以下である。中間層が厚すぎると、該中間層の透過率が低くなり、中間層被覆球体の内部のコア自体の色が見え難くなる場合がある。一方、中間層が薄すぎると、透明度が高くなり、いずれの場合も色差による偏芯の検出が難しくなる。
【0025】
コアに中間層を被覆した球体(中間層被覆球体)のL値(明度)は75以上であり、好ましくは80以上、より好ましくは85以上である。この値が上記範囲よりも小さいと、中間層とコアとの境界の明確な識別が困難になり、偏芯検査の精度が悪くなる場合がある。
【0026】
また、中間層を半透明に呈するため、中間層の厚み1.0mmでの全光線透過率が1~50%であることを要する。この値が50%を超えると、即ち、中間層自体の透明性が高くなり、全体的に同じ色に見えてしまうため、偏芯の検出が困難になる。この全光線透過率は、JIS K-7361に準じて全光線透過率を測定する値である。例えば、日本電色工業(株)製の製品名「NDH5000」を用いて全光線透過率を測定することができる。なお、上記の中間層の全光線透過率の好ましい下限値は25%以上であり、より好ましくは30%以上である。
【0027】
更に、コアと、コアに中間層を被覆した球体(中間層被覆球体)との色差ΔEは10以上であることを要し、好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上であり、この値が大きいほど偏芯が検出しやすくなる。なお、上記の色差は、JIS Z8722の規格に基づいて、ΔE=〔(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)21/2
により算出することができる。
なお、上述したようにLは明度を表す。また、上記のa,bは色彩を表し、aは赤-緑方向、bは黄-青方向を表す。従って、a値が大きくなると赤味が強くなり、小さくなると緑味が強くなり、b値が大きくなると黄味が強くなり、小さくなると青味が強くなる傾向がある。
【0028】
カバーは樹脂組成物により形成される。この樹脂組成物としては、特に制限されないが、具体的には、アイオノマー樹脂、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、熱硬化性ポリウレタン、またはこれらの混合物を樹脂組成物の主成分として使用して形成することができる。また、カバーには、上記主成分の他に、他の熱可塑性エラストマーや、ポリイソシアネート化合物、脂肪酸又はその誘導体、塩基性無機金属化合物、充填剤などを添加することができる。
【0029】
上記樹脂組成物は、例えば、混練型(単軸又は)2軸押出機,バンバリー,ニーダー等の各種の混練機を用いて上述した各成分を混合することにより得ることができる。
【0030】
カバーの表面には、通常、1種類又は2種以上の多数のディンプルを形成することができ、そのディンプルの形状、直径、深さ、個数、占有表面積等は適宜選定される。
【0031】
ゴルフボールを作製する方法としては、特に限定されず、射出成型、圧縮成形などの公知の成型方法により成形して得ることができる。例えば、射出成形機の金型にコアをセットした状態で上述した中間層用樹脂組成物を供給し、コアに中間層を被覆した被覆球体(中間層被覆球体)を作製し、その後、別の射出成形機の金型に、中間層被覆球体をセットし、カバー用樹脂組成物を射出することによりカバーを被覆したゴルフボールを作製することができる。
【0032】
また、カバーの表面には塗料層を形成することができる。この場合、塗料層は塗料用組成物にて形成される。この塗料用組成物のベース樹脂としては、特に制限はないが、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂等が例示される。塗料層の耐久性の観点から、二液硬化型ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。また、塗料用組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等の各種の添加剤を適量で配合することができる。
【0033】
カバーの表面に上記の塗料を塗装する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができ、静電塗装、スプレーガン塗装、刷毛塗り等が採用されうる。
【0034】
本発明のゴルフボールの質量、直径等のボール規格はゴルフ規則に従って適宜設定することができる。
【実施例0035】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0036】
〔実施例1~3,比較例1~6〕
実施例及び比較例の各例に共通するコアとして、下記表1に示ゴム配合によりコア組成物を調整した後、153℃、19分間の条件で加硫を行い、直径38.7mmの9種類のコアを作製した。
【0037】
【表1】
【0038】
上記の配合についての詳細は下記のとおりである。
・ポリブタジエン:商品名「BR01」(JSR社製)
・有機過酸化物:ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」(日油社製)
・酸化亜鉛:商品名「三種酸化亜鉛」(堺化学工業社製)
・アクリル酸亜鉛:商品名「ZN-DA85S」(日本触媒社製)
・水:純粋(正起薬品工業社製)
・ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩:和光純薬工業社製
・製品名「レジノイエローGL-6-B」(黄色)レジノカラー工業社製(使用顔料はジスアゾイエロー)
・製品名「レジノレッドK」(赤色)レジノカラー工業社製(使用顔料はレーキレッド)
・製品名「レジノブルーKP-25」(青色)レジノカラー工業社製(使用顔料はフタロシアニンブルー)
【0039】
中間層被覆球体の形成
次に、中間層形成用の射出成形用金型を用いて、上記のコア表面の周囲に、表2に示す中間層の樹脂材料A~Fにより射出成形する。この射出成形用金型は、直径38.7mmのコアをキャビティの中心に配置した場合、厚さ1.2mmの中間層が形成されるように、キャビティの直径が41.1mmを有する。しかし、本実施例では、キャビティの中心からコアをずらして、図1に示すように、中間層を形成する空洞は、一方の片側T1が1.7mm、他方の片側T2が0.7mmの厚さとなるように、コアCを配置させて偏芯した中間層被覆球体Mを作製した。
【0040】
【表2】
【0041】
表2の材料の詳細は下記のとおりである。
「AM7318」三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
「ハイミラン1706」三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
【0042】
中間層材料の全光線透過率
中間層材料を成形して、上記表2に記載の板厚の樹脂シートを作成し、日本電色工業(株)製の製品名「NDH5000」のヘイズメーターにより全光線透過率を測定した。
【0043】
得られた各例のコア及びコアに中間層を被覆した球体(中間層被覆球体)について、下記の方法により色調、色差、及び偏芯時の色差を測定した。
【0044】
色調
各球体(コア及び中間層被覆球体)の色調については、色差計(型式MSC-IS、スガ試験機株式会社製)を用いて測定し、JIS Z8722のLab表色に基づき、明度(L値)、彩度(C値)を求めた。
なお、色差は、JIS Z8722の規格に基づいて、以下のように算出される。
ΔE=〔(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)21/2
【0045】
偏芯時の色差
図1に示すように、コアCの偏芯状態における中間層被覆球体Mの色差を求める。この測定方法は、図1の矢印P1の方向(厚い中間層T1が位置する側)における中間層被覆球体の色調と、図1の矢印P2の方向(薄い中間層T2が位置する側)における中間層被覆球体の色調とを測定し、その2か所を測定した際の明度の差ΔL及び色差ΔEを「偏芯時の色差」として表3~8に記した。
【0046】
得られた各例の中間層被覆球体について、下記の方法により偏芯検査を行った。各層の構成(コアと中間層との組み合わせ)及びその偏芯評価を表3~8に示す。
【0047】
偏心検査
コアに中間層を被覆した状態で評価を実施した。
上述したように、偏芯評価は、図1に示すように、厚さ1.2mmの中間層をコアに被覆する際に、意図的に厚さT(1.2mm)/T(1.2mm)からT1(1.7mm)/T2(0.7mm)に偏心させて中間層材料を射出成形した。作業員の目視により、下記の基準により偏芯の判定を行う。
[判定基準]
◎ 偏芯状態が良く分かる。
〇 偏芯状態が分かる。
△ 偏芯状態が分かり難い。
× 偏芯状態が全く分からない。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
【表5】
【0051】
【表6】
【0052】
【表7】
【0053】
【表8】
図1