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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090449
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】放射性同位元素製造装置
(51)【国際特許分類】
   G21K 3/00 20060101AFI20240627BHJP
   G21G 1/10 20060101ALI20240627BHJP
   G21K 5/08 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G21K3/00 W
G21G1/10
G21K5/08 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206367
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】永易 真好
(57)【要約】
【課題】複数の種類のターゲットを用いて放射性同位元素を製造する場合に、粒子線のエネルギーを容易に調整することができる放射性同位元素製造装置を提供する。
【解決手段】ディグレーダ保持部3は、対象ターゲット10Xに対する粒子線Bの照射経路の途中に配置される対象ディグレーダ40Xを切り換え可能である。ディグレーダ保持部3は、対象ターゲット10Xに照射される粒子線Bのエネルギーを当該対象ターゲット10Xの種類に対応したものとなるように、複数のディグレーダ40の中から選択して照射経路に配置することができる。粒子線Bは、照射経路の途中で対象ディグレーダ40Xによって適切なエネルギーとなるようにエネルギーを調整された状態で、対象ターゲット10Xに照射される。従って、ディグレーダ保持部3がディグレーダ40を切り換えるだけの簡単な動作で、粒子線Bのエネルギーの調整を行うことができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットへ粒子線を照射して放射性同位元素を製造する放射性同位元素製造装置であって、
複数の前記ターゲットを保持可能なターゲット保持部と、
前記粒子線のエネルギーを調整するディグレーダを保持可能なディグレーダ保持部と、を備え、
前記ターゲット保持部は、複数の前記ターゲットの中から、照射対象となる対象ターゲットを切り換え可能であり、
前記ディグレーダ保持部は、複数の前記ディグレーダの中から、前記対象ターゲットに対する前記粒子線の照射経路の途中に配置される対象ディグレーダを切り換え可能である、放射性同位元素製造装置。
【請求項2】
前記粒子線を照射する照射部を更に備え、
前記ディグレーダ保持部は、前記照射部に対して、複数の前記ディグレーダのうちの一つを前記対象ディグレーダとして配置できる、請求項1に記載の放射性同位元素製造装置。
【請求項3】
前記粒子線を照射する照射部を更に備え、
前記照射部は、前記ディグレーダ保持部に対して冷媒を供給可能な流路を有する、請求項1に記載の放射性同位元素製造装置。
【請求項4】
前記ターゲット保持部は、前記対象ディグレーダに対して押付推力を付与可能な押付機構を有する、請求項1に記載の放射性同位元素製造装置。
【請求項5】
前記ディグレーダ保持部は、前記対象ターゲットの形状及び構造の少なくとも一方の情報に基づいて、前記対象ディグレーダを選択して切り換える、請求項1に記載の放射性同位元素製造装置。
【請求項6】
前記ターゲット保持部は、第1の移動方向へ前記ターゲットを移動させることによって切り換えを行い、
前記ディグレーダ保持部は、前記第1の移動方向に沿う方向である第2の移動方向へ前記ディグレーダを移動させることによって切り換えを行う、請求項1に記載の放射性同位元素製造装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性同位元素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、ターゲットへ粒子線を照射することで、放射性同位元素(RI:Radio Isotope)を得る装置が知られている。このような放射性同位元素は、病院等でのPET検査(ポジトロン断層撮影検査)等に使用される放射性薬剤を製造するため用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-087461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、放射性同位元素製造装置では、多核種の放射性同位元素を製造するために、複数種類のターゲットを交換して用いる場合がある。このとき、ターゲットの種類に応じて、放射性同位元素の製造に必要な粒子線のエネルギーが異なる。粒子線のエネルギーを調整するためには、加速器側で照射される粒子線のエネルギー自体を調整する事が考えられるが、調整に手間がかかるという問題がある。また、ターゲットの上流側にディグレーダを配置して、粒子線のエネルギーを調整することが考えられるが、粒子線のエネルギーが固定されてしまい、複数種類のターゲットに対応することが難しいという問題がある。
【0005】
本発明は、複数の種類のターゲットを用いて放射性同位元素を製造する場合に、粒子線のエネルギーを容易に調整することができる放射性同位元素製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る放射性同位元素製造装置は、ターゲットへ粒子線を照射して放射性同位元素を製造する放射性同位元素製造装置であって、複数のターゲットを保持可能なターゲット保持部と、粒子線のエネルギーを調整するディグレーダを保持可能なディグレーダ保持部と、を備え、ターゲット保持部は、複数のターゲットの中から、照射対象となる対象ターゲットを切り換え可能であり、ディグレーダ保持部は、複数のディグレーダの中から、対象ターゲットに対する粒子線の照射経路の途中に配置される対象ディグレーダを切り換え可能である。
【0007】
本発明に係る放射性同位元素製造装置において、ターゲット保持部は、複数のターゲットの中から、照射対象となる対象ターゲットを切り換え可能である。そのため、ターゲット保持部が対象ターゲットの種類を切り換えることで、複数種類の放射性同位元素を製造することが可能となる。これに対し、ディグレーダ保持部は、複数のディグレーダの中から、対象ターゲットに対する粒子線の照射経路の途中に配置される対象ディグレーダを切り換え可能である。従って、ディグレーダ保持部は、対象ターゲットに照射される粒子線のエネルギーを当該対象ターゲットの種類に対応したものとなるように、複数のディグレーダの中から選択して照射経路に配置することができる。これにより、粒子線は、照射経路の途中で対象ディグレーダによって適切なエネルギーとなるようにエネルギーを調整された状態で、対象ターゲットに照射される。従って、ディグレーダ保持部がディグレーダを切り換えるだけの簡単な動作で、粒子線のエネルギーの調整を行うことができる。以上より、複数の種類のターゲットを用いて放射性同位元素を製造する場合に、粒子線のエネルギーを容易に調整することができる。
【0008】
放射性同位元素製造装置は、粒子線を照射する照射部を更に備え、ディグレーダ保持部は、照射部に対して、複数のディグレーダのうちの一つを対象ディグレーダとして配置できてよい。この場合、ディグレーダ保持部は、照射部に対して配置される対象ディグレーダを変更するだけで、容易に切り替えを行うことができる。従って、ディグレーダ保持部の構造を簡素にすることができる。
【0009】
放射性同位元素製造装置は、粒子線を照射する照射部を更に備え、照射部は、ディグレーダ保持部に対して冷媒を供給可能な流路を有してよい。この場合、ディグレーダ保持部は、各ディグレーダに対して独自の冷媒用の配管を設けなくとも、照射部側の流路を用いることができる。このため、放射性同位元素製造装置の冷却構造を簡素にすることができる。
【0010】
ターゲット保持部は、対象ディグレーダに対して押付推力を付与可能な押付機構を有してよい。この場合、ターゲット保持部が備えている押付機構の押付推力を、対象ディグレーダのシール性確保のための押し付けに流用することができる。従って、ディグレーダ保持部の専用の押付機構を省略することができ、省スペース化を図ることができる。
【0011】
ディグレーダ保持部は、対象ターゲットの形状及び構造の少なくとも一方の情報に基づいて、対象ディグレーダを選択して切り換えてよい。この場合、ディグレーダ保持部は、対象ターゲットに合わせて、自動的に適切な対象ディグレーダへ切り換えることができる。
【0012】
ターゲット保持部は、第1の移動方向へターゲットを移動させることによって切り換えを行い、ディグレーダ保持部は、第1の移動方向に沿う方向である第2の移動方向へディグレーダを移動させることによって切り換えを行ってよい。ディグレーダ保持部が、ターゲットとは異なる方向へディグレーダを移動させて切り替えを行う場合、ターゲットの移動のためのスペースと、ディグレーダを移動させるためのスペースを各々の方向について個々に確保する必要が生じる。これに対し、ディグレーダ保持部が、ターゲットの移動方向に沿ってディグレーダを移動させることで、確保すべきスペースを共通化することができる。これにより、省スペース化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の種類のターゲットを用いて放射性同位元素を製造する場合に、粒子線のエネルギーを容易に調整できる放射性同位元素製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る放射性同位元素製造装置を示す概略側面図である。
図2】放射性同位元素製造装置を示す概略平面図である。
図3】放射性同位元素製造装置を示す概略平面図である。
図4】放射性同位元素製造装置の拡大断面図である。
図5】他のディグレーダを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1は、放射性同位元素製造装置100を示す概略側面図である。図2は、放射性同位元素製造装置100を示す概略平面図である。放射性同位元素製造装置100は、ターゲット10へ粒子線Bを照射して放射性同位元素(RI:Radio Isotope)を製造する装置である。放射性同位元素製造装置100で製造されたRIは、例えば放射性同位元素標識化合物(RI化合物)である放射性薬剤(放射性医薬品を含む)の製造に用いられる。病院等のPET検査(陽電子断層撮影検査)に使用される放射性同位元素標識化合物としては、18F-FLT(フルオロチミジン)、18F-FMISO(フルオロソニダゾール)、11C-ラクロプライド等がある。
【0017】
放射性同位元素製造装置100は、照射装置1と、ターゲット保持部2と、ディグレーダ保持部3と、を備える。なお、放射性同位元素製造装置100の説明のために、XYZ座標系を設定する。X軸方向は、水平方向と平行な方向である。X軸方向における一方側(図1では紙面手前側)をX軸方向の正側とする。Y軸方向は、X軸方向と直交する方向であって、水平方向と平行な方向である。Y軸方向における一方側(図1では紙面左側)をY軸方向の正側とする。上下方向をZ軸方向とする。上側をZ軸方向における正側とする。
【0018】
図1に示すように、照射装置1は、荷電粒子線等の粒子線Bを照射する装置である。照射装置1は、上下方向に延びる壁部4の内部に、加速器(不図示)を有している。加速器として、サイクロトロン等が採用される。照射装置1は、壁部4の所定の高さ位置に、照射ポート6(照射部)を有している。照射ポート6は、加速器から輸送された粒子線Bを外部へ照射するための出射口である。粒子線Bの照射軸BLは、Y軸方向と平行に延びる。また、照射ポート6は、Y軸方向における正側から負側へ向かって粒子線Bを照射する。照射装置1は、位置が固定された一つの照射ポート6を有している(図2参照)。照射ポート6は、照射軸BLに沿って延びる内部空間6aを有し、Y軸方向の負側において開口している。内部空間6aは、粒子線Bの照射経路として機能する。粒子線Bは、開口部から出射される。
【0019】
ターゲット保持部2は、複数のターゲット10を保持可能な装置である。ターゲット保持部2は、複数のターゲット10の中から、照射対象となる対象ターゲット10Xを切り換え可能である(図2及び図3参照)。ディグレーダ保持部3は、照射ポート6に対して、複数のターゲット10のうちの一つを対象ターゲット10Xとして配置できる。ターゲット保持部2は、ターゲット10を保持する支持装置7と、ターゲットエクスチェンジャ8と、を備える。
【0020】
ターゲット10について説明する。ターゲットは、固体ターゲットであり、ターゲット基板及び材料層を備える。ターゲット10は、金属板で構成されるターゲット基板上に、ターゲット材料としての材料層が形成される。なお、材料層は、純度の高い金属の層に限らず、金属酸化物の層でもよい。材料層に粒子線Bが照射されることにより、照射された部分に微量の放射性同位元素が生成する。ターゲット基板の材料として、溶解液で溶解しない材料が採用され、例えば、Au、Ptなどが採用される。ターゲット基板は円板状に形成されてよいが、形状や厚さは特に限定されない。ターゲット材料である材料層の材料として、例えば、64Ni、89Y、100Mo、68Znなどが挙げられる。当該材料層に対応して生成される放射性同位元素として、64Cu、89Zr、99mTc、68Ga,15O,11C,1818F,13Nなどが挙げられる。
【0021】
支持装置7は、ターゲット10を支持する装置である。支持装置7は、ディグレーダを介して照射ポート6に連結される。本実施形態では、後述のようにターゲットエクスチェンジャ8が複数の支持装置7を取付可能である。従って、放射性同位元素製造装置100は、用途に応じて、複数の支持装置7を備えることができる。ここでは、放射性同位元素製造装置100が二つの支持装置7A,7Bを備えるものとする。ただし、本実施形態のターゲットエクスチェンジャ8は、三つの支持装置7を保持可能であるため、一つから四つの間で支持装置7の数(すなわちターゲットの数)を適宜調整してよい。また、ターゲットエクスチェンジャ8の取付可能数を増やすことで、更に支持装置7を増やしてもよい。
【0022】
ここで、図4を参照して、支持装置7の構成について詳細に説明する。図4は、対象ターゲット10Xを支持する支持装置7、及び対象ディグレーダ40Xが照射ポート6に図4に示すように、支持装置7は、略円筒状の形状を有する部材である。支持装置7の中心線CL1は、Y軸方向と平行に延びる。中心線CL1は、照射軸BLと平行に延び、照射軸BLと一致してよい。ただし、中心線CL1は、照射軸BLから僅かにずれていてもよい。支持装置7は、第1の部材11と、第2の部材12と、を備える。支持装置7は、長手方向、すなわちY軸方向における中途位置にて、第1の部材11と第2の部材12とに分割される。第1の部材11は、Y軸方向の正側、すなわち粒子線Bの照射方向における上流側に配置される。第2の部材12は、Y軸方向の負側、すなわち粒子線Bの照射方向における下流側に配置される。
【0023】
支持装置7は、第1の部材11及び第2の部材12でターゲット10を挟むことによって、ターゲット10を支持する。支持装置7は、中心線CL1に対して傾斜するようにターゲット10を支持する。ターゲット10の傾斜方向は特に限定されない。ここでは、ターゲット10は、Y軸方向の正側から負側へ向かうに従って上側(Z軸方向の正側)へ向かうように、傾斜している。ターゲット10は、第1の部材11のY軸方向における負側の端部の支持面と、第2の部材232のY軸方向における正側の端部の支持面との間で挟まれて支持される。
【0024】
第1の部材11は、Y軸方向の正側の端部にOリングが配置されたシール面11aを有する。第1の部材11は、中心線CLの位置で、Y軸方向に平行に延びる内部空間13を有する。内部空間13は、シール面11aからターゲット10の支持面まで貫通するように延びている。これにより、ターゲット10は、内部空間13に露出した状態となる。内部空間13は、粒子線Bをターゲット10まで導く照射経路として機能する。第2の部材12は、ターゲット10を冷却するための冷却構造として機能する。第2の部材12は、ターゲット10を支持する支持面に溝部14を有する。溝部14の内部空間では、ターゲット10の裏面が露出している。従って、溝部14へ供給された冷却媒体は、ターゲット10と接触して冷却を行う。
【0025】
図1に示すように、ターゲットエクスチェンジャ8は、ベースプレート20、第1スライドプレート21、第2スライドプレート22、第1駆動部23、第2駆動部24、及び押付機構25を備えている。ベースプレート20は、移動不能に固定された構造物である。ベースプレート20上面には、Y軸方向に延びるガイドレール20aが設けられている。第1スライドプレート21は、第1駆動部23と連結されて当該第1の駆動部23の駆動力により、ガイドレール20aに沿ってY軸方向に移動する。第1スライドプレート21には、X軸方向に沿って延びるガイドレール21aが設けられている。第2スライドプレート22は、XZ平面と平行に広がるホルダ26を有する。第2スライドプレート22は、第2駆動部24と連結されて当該第2駆動部24の駆動力により、ガイドレール21aに沿ってX軸方向に移動する。
【0026】
図2に示すように、ホルダ26は、支持装置7を保持するための四つの保持孔27を有し、これらの保持孔27に略円筒状の支持装置7がそれぞれ嵌め込まれて保持される。四つの保持孔27は、X軸方向に沿って並設されている。これにより、ホルダ26は、最大で四つの支持装置7を保持することができる。ターゲットエクスチェンジャ8は、第2駆動部24(図1参照)によってホルダ26をX軸方向へ移動させることで、支持したターゲット10を支持装置7ごと、X軸方向へ搬送することができる。ターゲットエクスチェンジャ8は、対象ターゲット10Xを支持した支持装置7を照射ポート6と対向する位置まで搬送する。このとき、ターゲットエクスチェンジャ8は、対象ターゲット10Xが照射軸BL上に配置されるように、当該対象ターゲット10Xを支持する支持装置7を照射ポート6と対向する位置まで移動する。
【0027】
図1及び図2に示すように、押付機構25は、対象ターゲット10Xを支持する支持装置7を対象ディグレーダ40Xと共に照射ポート6へ押し付ける押付推力を付与可能な機構である。これにより、押付機構25は、対象ディグレーダ40Xに対して押付推力を付与可能に構成される。ここでは、ターゲットエクスチェンジャ8は、押付機構25A,25Bを備える。押付機構25A,25Bは、第1スライドプレート21に連結された支持部材28と、Y軸方向に駆動軸を進退させるシリンダ29と、支持装置7を押し出す押し出し部材30と、を備える。押し出し部材30は、シリンダ29の駆動軸に設けられている。これにより、シリンダ29が押し出し部材30をY軸方向の正側に移動させることで、支持装置7が対象ディグレーダ40X及び照射ポート6に対して押し付けられる。図2に示すように、押付機構25Aは、支持装置7Aに対向する位置に設けられる。押付機構25Bは、支持装置7Bに対向する位置に設けられる。
【0028】
ディグレーダ保持部3は、複数のディグレーダ40を保持可能な装置である。ディグレーダ保持部3は、複数のディグレーダ40の中から、対象ターゲット10Xに対する粒子線Bの照射経路の途中に配置される対象ディグレーダ40Xを切り換え可能である(図2及び図3参照)。ディグレーダ保持部3は、照射ポート6に対して、複数のディグレーダ40のうちの一つを対象ディグレーダ40Xとして配置できる。ディグレーダ保持部3は、ディグレーダ40と、ディグレーダエクスチェンジャ60と、を備える。
【0029】
ディグレーダ40は、粒子線Bのエネルギーを調整する部材である。ディグレーダ40は、対象ターゲット10Xのターゲット種類に対して、適切なエネルギーの粒子線Bが照射されるように、粒子線Bのエネルギーを調整する。ディグレーダ40は、照射ポート6に連結される。本実施形態では、後述のようにディグレーダエクスチェンジャ60が複数のディグレーダ40を取付可能である。従って、放射性同位元素製造装置100は、用途に応じて、複数のディグレーダ40を備えることができる。ここでは、放射性同位元素製造装置100が三つのディグレーダ40A,40B,40Cを備えるものとする。ただし、本実施形態のディグレーダエクスチェンジャ60は、三つのディグレーダ40を保持可能であるため、一つから三つの間でディグレーダ40の数を適宜調整してよい。また、ディグレーダエクスチェンジャ60の取付可能数を増やすことで、更にディグレーダ40を増やしてもよい。
【0030】
ディグレーダ40について図4を参照して説明する。図4に示すように、ディグレーダ40は、減衰部材41と、支持部材42と、を備える。減衰部材41は、通過させた粒子線Bを減衰させる部材である。減衰部材41の材料として、例えば、A5052、グラファイト等が採用される。減衰部材41の厚みは特に限定されないが、45μm、90μmなどの厚みが採用される。ディグレーダ40は、所望の減衰量を得るために、減衰部材41の材料、減衰部材41の厚み、及び減衰部材41の枚数を適宜調整する。図4の例では、ディグレーダ40は、二枚の減衰部材41を有している。なお、図5(a)に示すように、一枚の減衰部材41を有するディグレーダ40を採用してよい。また、図5(b)に示すように、減衰部材41を有さないディグレーダ40を採用してよい。目的の放射性同位元素によっては、照射ポート6から出射した粒子線Bのエネルギーをそのまま用いる必要がある。このような場合は、ディグレーダ保持部3は、図5(b)に示すディグレーダ40を採用し、減衰されない粒子線Bがターゲット10に照射されるように調整する。このように、エネルギーを減衰させないディグレーダ40を選択することも、ディグレーダ40によるエネルギー調整の一態様に該当する。
【0031】
支持部材42は、減衰部材41を支持するための部材である。支持部材42は、略円筒状の形状を有する部材である。支持部材42の中心線CL2は、Y軸方向と平行に延びる。中心線CL2は、照射軸BLと平行に延び、照射軸BLと一致してよい。ただし、中心線CL2は、照射軸BLから僅かにずれていてもよい。支持部材42は、中心線CL2の位置で、Y軸方向に平行に延びる内部空間46を有する。内部空間46は、Y軸方向の正側のOリングを有するシール面42aから負側の受面42bまで貫通するように延びている。これにより、減衰部材41は、内部空間46に露出した状態となる。内部空間46は、粒子線Bをターゲット10まで導く照射経路として機能する。そのため、減衰部材41は、対象ターゲット10Xに対する粒子線Bの照射経路の途中に配置される。
【0032】
支持部材42は、二枚の減衰部材41を支持できるように、Y軸方向の正側から順に三つの環状部材43,44,45に分割されている。環状部材43,44が、上流側の減衰部材41を挟み込むように支持する。環状部材44,45が、下流側の減衰部材41を挟み込むように支持する。なお、図5(a)に示すように、一枚の減衰部材41を支持する支持部材42は、二つの環状部材43,47に分割されている。図5(b)に示すように、減衰部材41を有さない支持部材42は、一体の環状部材として構成されている。
【0033】
図4に示すように、ディグレーダ40が押付機構25(図1参照)によって、Y軸方向の正側への押付推力を付与された場合、支持部材42のY軸方向の正側のシール面42aが、照射ポート6のY軸方向の負側の受面6bに押し付けられてシールされる。また、支持装置7のシール面11aが支持部材42の受面42bに押し付けられてシールされる。これにより、粒子線Bの照射経路の真空が確保される。なお、押付機構25で押し付けられていない状態では、ディグレーダ40と照射ポート6との間には隙間ができる。従って、ディグレーダ40がX軸方向に移動しても、照射ポートと干渉することが回避される。
【0034】
ディグレーダ40の冷却構造について説明する。ディグレーダ40は、照射ポート6からの冷媒を流通させる流路50を有する。冷媒は特に限定されないが、ヘリウム等を用いてよい。流路50は、外周面から内部空間46へ向かって径方向へ貫通する流路51と、流路51からY軸方向の正側へ貫通する流路52と、を有する。流路52は、シール面42aにて開口する。なお、流路51は、外周側の端部において蓋で閉じられる。一方、照射ポート6は、ディグレーダ保持部3のディグレーダ40の流路50に対して冷媒を供給可能な流路54を有する。流路54は、外周面から内周側へ向かって径方向へ延びる流路56と、流路56からY軸方向の正側へ貫通する流路57と、を有する。流路57は、受面6bにて開口する。受面6bの流路57の開口部とシール面42aの流路52の開口部は、互いに連通する。また、押付機構25の押付推力により、隙間無く連通される。流路56は、外周側の端部において蓋で閉じられる。流路56には、照射ポート6の外部へ向かって延びる配管58が連通されている。これにより、配管58から供給された冷媒は、流路56,57を通って、シール面42aの開口部から流路52へ流れる。これにより、ディグレーダ40の流路50に供給された冷媒は、流路52,51を通って、内部空間46へ供給されることで、減衰部材41を冷却する。
【0035】
なお、図4に示す二枚の減衰部材41を有するディグレーダ40では、流路50に供給された冷媒は、流路51の端部において分岐部51a,51bで分岐し、内部空間46において上流側の減衰部材41及び、下流側の減衰部材41へそれぞれ向かう。このときの冷媒は、ターゲット10へは向かわない。一方、図5(a)に示す一枚の減衰部材41を有するディグレーダ40では、分岐部51aを通った冷媒は減衰部材41へ向かい、分岐部51bを通った冷媒はターゲット10へ向かう。そのため、流路50の冷媒によってターゲット10を冷却することができる。
【0036】
図1を参照して、ディグレーダエクスチェンジャ60について説明する。図1に示すように、ディグレーダエクスチェンジャ60は、ベース部61、スライダ62、駆動部63、ホルダ64を備えている。ベース部61は、移動不能に固定された構造物である。ベース部61は、照射装置1に固定されてもよい。ただし、ベース部61の固定構造は特に限定されない。ベース部61の側面には、X軸方向に延びるガイドレール66が設けられている。スライダ62は、連結部材67を介して駆動部63の可動部68と連結される。駆動部63は、X軸方向に延びてベース部61に固定された固定部69と、固定部69に沿ってX軸方向に移動する可動部68と、を備える。駆動部63は、例えばシリンダによって構成され、ロッドが固定部69となり、シリンダ本体部が可動部68となる。ホルダ64は、XZ平面と平行に広がり、下端部がスライダ62に接続されている。ホルダ64は、駆動部63の駆動力により、可動部68、連結部材67、及びスライダ62と共に、X軸方向へ移動する。
【0037】
図2に示すように、ホルダ64は、ディグレーダ40を保持するための三つの保持孔70を有し、これらの保持孔70に略円筒状のディグレーダ40がそれぞれ嵌め込まれて保持される。三つの保持孔70は、X軸方向に沿って並設されている。これにより、ホルダ64は、最大で三つのディグレーダ40を保持することができる。ディグレーダエクスチェンジャ60は、駆動部63(図1参照)によってホルダ64をX軸方向へ移動させることで、支持したディグレーダ40をX軸方向へ搬送することができる。ディグレーダエクスチェンジャ60は、対象ディグレーダ40Xを照射ポート6と対向する位置まで搬送する。このとき、ディグレーダエクスチェンジャ60は、対象ディグレーダ40Xが照射軸BL上に配置されるように、当該対象ディグレーダ40Xを照射ポート6と対向する位置まで移動する。
【0038】
前述のように、ターゲット保持部2は、第1の移動方向D1へターゲット10を移動させることによって切り換えを行う。これに対し、ディグレーダ保持部3は、第1の移動方向D1に沿う方向である第2の移動方向D2へディグレーダ40を移動させることによって切り替えを行う。本実施形態では、第1の移動方向D1はX軸方向であり、第2の移動方向D2は、X軸方向である。従って、第2の移動方向D2は、第1の移動方向D1と平行である。ただし、第2の移動方向D2は、第1の移動方向D1に対して完全に平行である必要はなく、第1の移動方向D1に対して若干傾斜していてもよい。
【0039】
ディグレーダ保持部3は、対象ターゲット10Xの形状及び構造の少なくとも一方の情報に基づいて、対象ディグレーダ40Xを選択して切り換えてよい。例えば、ターゲット10によっては、材料層が基板に対してメッキで形成されたり、フィルムの貼付で形成される場合などがあり、種類によって形状や構造が異なる場合がある。所望の放射性同位元素を製造するためには、対象ターゲット10Xの形状及び構造が、所定の条件を有している必要がある。また、対象ターゲット10Xの条件に応じて、照射する粒子線Bのエネルギーや冷却態様も所定の条件を満たす必要がある。よって、異なる放射性同位元素を製造する場合は、異なる条件を有するターゲット10を対象ターゲット10Xとして選択する必要があり、それに対応するディグレーダ40を選択する必要がある。従って、ユーザーの入力によって、製造する放射性同位元素が決定したら、ターゲット保持部2は、当該放射性同位元素を製造する条件を満たすターゲット10を対象ターゲット10Xとして選択し、照射ポート6の位置へ搬送する。そして、ディグレーダ保持部3は、選択された対象ターゲット10Xの条件に対応するディグレーダ40を対象ディグレーダ40Xとして選択し、照射ポート6の位置へ搬送する。
【0040】
例えば、対象ターゲット10Xのターゲット種類が、64Cuを製造するためのものである場合、粒子線Bのエネルギーを18MeVから12MeVへ減衰させるために、ディグレーダ保持部3は、図4に示す二枚の減衰部材41のディグレーダ40を選択すればよい。対象ターゲット10Xのターゲット種類が、89Zrを製造するためのものである場合、粒子線Bのエネルギーを18MeVから12MeVへ減衰させ、且つターゲット10側を流路50からの冷媒で冷却するために、ディグレーダ保持部3は、図5(a)に示す一枚の減衰部材41のディグレーダ40を選択すればよい。対象ターゲット10Xのターゲット種類が、15O,11C,1818F,13Nなどを製造するためのものである場合、粒子線Bのエネルギーを減衰させないために、ディグレーダ保持部3は、図5(b)に示す減衰部材41を有さないディグレーダ40を選択すればよい。なお、製造する放射性同位元素、対応するターゲット10の種類、及び用いるディグレーダ40の種類は、データテーブルとして記憶部に記憶してよい。
【0041】
図1及び図2に示す制御部80は、ターゲットエクスチェンジャ8及びディグレーダエクスチェンジャ60の各駆動部に対して制御信号を送信することで、ターゲットエクスチェンジャ8及びディグレーダエクスチェンジャ60の動作を制御する。制御部80は、ディグレーダ保持部3を制御して、対象ターゲット10Xの形状及び構造の少なくとも一方の情報に基づいて、対象ディグレーダ40を選択して切り換える制御を行ってよい。当該制御について、図2及び図3を参照して説明を行う。なお、説明のため、各ターゲット10及びディグレーダ40を次のように設定するものとする。支持装置7Aのターゲット10のターゲット種類は64Cuを製造するためのものである。支持装置7Bのターゲット10のターゲット種類は15Oを製造するためのものである。ディグレーダ40Aは、図4に示す二枚の減衰部材41のディグレーダ40である。ディグレーダ40Bは、図5(a)に示す一枚の減衰部材41のディグレーダ40である。ディグレーダ40Cは、図5(b)に示す減衰部材41を有さないディグレーダ40である。制御部80は、ホルダ26の各位置に保持されたターゲット10の情報、及びホルダ64の各位置に保持されたディグレーダ40の情報を記憶部に記憶している。
【0042】
まず、制御部80は、ディスプレイに製造可能な放射性同位元素の種類を表示する。ユーザーが64Cuを製造することを選択した場合、制御部80は、支持装置7Aのターゲット10を対象ターゲット10Xとして選択する。図2に示すように、制御部80は、ターゲット保持部2を制御して、照射ポート6に対向する位置に配置される支持装置7を他のものから支持装置7Aへ切り換える。次に、制御部80は、対象ターゲット10Xが64Cuを製造するための条件を有するものであることに基づき、ディグレーダ40Aを対象ディグレーダ40Xとして選択する。制御部80は、ディグレーダ保持部3を制御して、照射ポート6に対向する位置に配置されるディグレーダ40を他のものからディグレーダ40Aへ切り換える。制御部80は、押付機構25Aを制御して、支持装置7Aをディグレーダ40A及び照射ポート6へ押し付ける。そして、制御部80は、照射ポート6から対象ターゲット10Xへ粒子線Bを照射するように制御する。
【0043】
次に、ユーザーが15Oを製造することを選択した場合、制御部80は、支持装置7Bのターゲット10を対象ターゲット10Xとして選択する。図3に示すように、制御部80は、ターゲット保持部2を制御して、照射ポート6に対向する位置に配置される支持装置7を支持装置7Aから支持装置7Bへ切り換える。次に、制御部80は、対象ターゲット10Xが15Oを製造するための条件を有するものであることに基づき、ディグレーダ40Cを対象ディグレーダ40Xとして選択する。制御部80は、ディグレーダ保持部3を制御して、照射ポート6に対向する位置に配置されるディグレーダ40をディグレーダ40Aからディグレーダ40Cへ切り換える。制御部80は、押付機構25Bを制御して、支持装置7Bをディグレーダ40C及び照射ポート6へ押し付ける。そして、制御部80は、照射ポート6から対象ターゲット10Xへ粒子線Bを照射するように制御する。
【0044】
次に、本実施形態に係る放射性同位元素製造装置100の作用・効果について説明する。
【0045】
本実施形態に係る放射性同位元素製造装置100において、ターゲット保持部2は、複数のターゲット10の中から、照射対象となる対象ターゲット10Xを切り換え可能である。そのため、ターゲット保持部2が対象ターゲット10Xの種類を切り換えることで、複数種類の放射性同位元素を製造することが可能となる。これに対し、ディグレーダ保持部3は、複数のディグレーダ40の中から、対象ターゲット10Xに対する粒子線Bの照射経路の途中に配置される対象ディグレーダ40Xを切り換え可能である。従って、ディグレーダ保持部3は、対象ターゲット10Xに照射される粒子線Bのエネルギーを当該対象ターゲット10Xの種類に対応したものとなるように、複数のディグレーダ40の中から選択して照射経路に配置することができる。これにより、粒子線Bは、照射経路の途中で対象ディグレーダ40Xによって適切なエネルギーとなるようにエネルギーを調整された状態で、対象ターゲット10Xに照射される。従って、ディグレーダ保持部3がディグレーダ40を切り換えるだけの簡単な動作で、粒子線Bのエネルギーの調整を行うことができる。以上より、複数の種類のターゲット10を用いて放射性同位元素を製造する場合に、粒子線のエネルギーを容易に調整することができる。
【0046】
放射性同位元素製造装置100は、粒子線Bを照射する照射ポート6を更に備え、ディグレーダ保持部3は、照射ポート6に対して、複数のディグレーダ40のうちの一つを対象ディグレーダ40Xとして配置できてよい。この場合、ディグレーダ保持部3は、照射ポート6に対して配置される対象ディグレーダ40Xを変更するだけで、容易に切り替えを行うことができる。例えば、上述の実施形態では、ディグレーダ保持部3は、照射ポート6の手前側の位置で、X軸方向にディグレーダ40を移動させるだけのシンプルな構造である。このように、ディグレーダ保持部3の構造を簡素にすることができる。
【0047】
放射性同位元素製造装置100は、粒子線Bを照射する照射ポートを更に備え、照射ポート6は、ディグレーダ保持部3に対して冷媒を供給可能な流路54を有してよい。この場合、ディグレーダ保持部3は、各ディグレーダ40に対して独自の冷媒用の配管を設けなくとも、照射ポート6側の流路54を用いることができる。このため、放射性同位元素製造装置100の冷却構造を簡素にすることができる。また、冷却構造の配管脱着作業を行うときは、照射ポート6の配管を脱着すればよいだけであるため、作業時間を低減し、メンテナンス性を向上できる。
【0048】
ターゲット保持部2は、対象ディグレーダ40Xに対して押付推力を付与可能な押付機構25を有してよい。この場合、ターゲット保持部2が備えている押付機構25の押付推力を、対象ディグレーダ40Xのシール性確保のための押し付けに流用することができる。従って、ディグレーダ保持部3の専用の押付機構を省略することができ、省スペース化を図ることができる。
【0049】
ディグレーダ保持部3は、対象ターゲット10Xの形状及び構造の少なくとも一方の情報に基づいて、対象ディグレーダ40Xを選択して切り換えてよい。この場合、ディグレーダ保持部3は、対象ターゲット10Xに合わせて、自動的に適切な対象ディグレーダ40Xへ切り換えることができる。
【0050】
ターゲット保持部2は、第1の移動方向D1へターゲット10を移動させることによって切り換えを行い、ディグレーダ保持部3は、第1の移動方向D1に沿う方向である第2の移動方向D2へディグレーダ40を移動させることによって切り換えを行ってよい。ディグレーダ保持部3が、ターゲット10とは異なる方向へディグレーダを移動させて切り替えを行う場合、ターゲット10の移動のためのスペースと、ディグレーダ40を移動させるためのスペースを各々の方向について個々に確保する必要が生じる。これに対し、ディグレーダ保持部3が、ターゲット10の移動方向に沿ってディグレーダを移動させることで、確保すべきスペースを共通化することができる。上記実施形態では、ターゲット10及びディグレーダ40がX軸方向へ移動するため、上下方向へ構造が大型化することを抑制できる。これにより、省スペース化を図ることができる。
【0051】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0052】
例えば、上述の実施形態では、ディグレーダ保持部3は、照射ポート6に隣接する位置にてディグレーダ40を切り換えていた。ただし、ディグレーダ保持部3は、対象ターゲット10Xに対する照射経路のいずれかの位置でディグレーダ40を切り換えればよく、照射ポート6から離間した位置で切り替えを行ってもよい。
【0053】
また、ディグレーダ40及びターゲット10の移動方向はX軸方向に限定されず、上下方向であってもよく、回転方向に回転させて切り替えをおこなってもよい。回転させて切り換える場合、回転軸は上下方向に延びるものであっても、水平方向に延びるものであってもよい。また、ディグレーダ40とターゲット10が互いに異なる方向へ移動してもよい。
【0054】
[形態1]
ターゲットへ粒子線を照射して放射性同位元素を製造する放射性同位元素製造装置であって、
複数の前記ターゲットを保持可能なターゲット保持部と、
前記粒子線のエネルギーを調整するディグレーダを保持可能なディグレーダ保持部と、を備え、
前記ターゲット保持部は、複数の前記ターゲットの中から、照射対象となる対象ターゲットを切り換え可能であり、
前記ディグレーダ保持部は、複数の前記ディグレーダの中から、前記対象ターゲットに対する前記粒子線の照射経路の途中に配置される対象ディグレーダを切り換え可能である、放射性同位元素製造装置。
[形態2]
前記粒子線を照射する照射部を更に備え、
前記ディグレーダ保持部は、前記照射部に対して、複数の前記ディグレーダのうちの一つを前記対象ディグレーダとして配置できる、形態1に記載の放射性同位元素製造装置。
[形態3]
前記粒子線を照射する照射部を更に備え、
前記照射部は、前記ディグレーダ保持部に対して冷媒を供給可能な流路を有する、形態1又は2に記載の放射性同位元素製造装置。
[形態4]
前記ターゲット保持部は、前記対象ディグレーダに対して押付推力を付与可能な押付機構を有する、形態1~3の何れか一項に記載の放射性同位元素製造装置。
[形態5]
前記ディグレーダ保持部は、前記対象ターゲットの形状及び構造の少なくとも一方の情報に基づいて、前記対象ディグレーダを選択して切り換える、形態1~5の何れか一項に記載の放射性同位元素製造装置。
[形態6]
前記ターゲット保持部は、第1の移動方向へ前記ターゲットを移動させることによって切り換えを行い、
前記ディグレーダ保持部は、前記第1の移動方向に沿う方向である第2の移動方向へ前記ディグレーダを移動させることによって切り換えを行う、形態1~5の何れか一項に記載の放射性同位元素製造装置。
【符号の説明】
【0055】
2…ターゲット保持部、3…ディグレーダ保持部、6…照射ポート(照射部)、10…ターゲット、10X…対象ターゲット、25…押付機構、40…ディグレーダ、40X…対象ディグレーダ、54…流路、100…放射性同位元素製造装置。

図1
図2
図3
図4
図5