(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090450
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】累進屈折力レンズの設計方法及び製造方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/06 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
G02C7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206368
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】322010534
【氏名又は名称】東海光学ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 仁志
(72)【発明者】
【氏名】太田 恵介
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BD03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の累進面を合成する際に常に破綻なく合成でき、既存の累進屈折力レンズをベースに新しい設計パターンを提案する場合に、設計データの被提供者が特別な知見を持たなくても、積極的に新しい設計パターンを作り出して商品化することを可能とする累進屈折力レンズの設計方法及び製造方法を提供すること。
【解決手段】遠用領域から近用領域にかけて加入度が徐々に付加されていくように加入勾配が設定された累進面を備えた累進屈折力レンズの設計方法において、異なる収差分布となる複数の累進面を合成割合が一定となるように合成して1つの累進面を設計するようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ上方に配置された比較的遠方を見るための遠用領域と、前記遠用領域よりも下方に配置され前記遠用領域よりも大きな屈折力を有する近用領域と、これら領域の間に配置され屈折力が累進的に変化する累進領域を備え、前記遠用領域から前記近用領域にかけて加入度が徐々に付加されていくように加入勾配が設定された累進面を備えた累進屈折力レンズの設計方法において、
異なる収差分布となる複数の累進面の少なくともレンズ中央領域を合成割合が一定となるように合成して1つの累進面を設計するようにした累進屈折力レンズの設計方法。
【請求項2】
合成する対象となる複数の累進面の累進帯長は異なる長さのものを含むことを特徴とする請求項1に記載の累進屈折力レンズの設計方法。
【請求項3】
合成する対象となる複数の累進面は異なるインセット量のものを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の累進屈折力レンズの設計方法。
【請求項4】
複数の累進面を合成する際の合成割合は外挿的に行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の累進屈折力レンズの設計方法。
【請求項5】
複数の累進面を合成する際の合成割合は外挿的に行われることを特徴とする請求項3に記載の累進屈折力レンズの設計方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の累進屈折力レンズの設計方法によってレンズを製造することを特徴とする累進屈折力レンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老視補正用の眼鏡に使用される累進屈折力レンズの設計方法及び製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
老視に対する矯正用の眼鏡に累進屈折力レンズが使用されている。一般的に累進屈折力レンズは屈折力のそれぞれ異なる2つの屈折領域と、それら両領域の間で屈折力(度数)が累進的に変わる累進領域とを備えた複雑な累進面から形成されており、境目がなく1枚のレンズで遠くのものから近くのものまで見ることができるものである。ここに2つの領域とはレンズの比較的上方位置に設定された遠用領域と、レンズの比較的下方位置に設定された近用領域の2つの領域のことである。遠用領域と近用領域との移行帯である累進領域は滑らかかつ連続的に連結されている。
累進屈折力レンズの累進面はレンズごとに設計されるのが基本であるが、設計した累進屈折力レンズの非点収差を抑制したり、あるいは、既存の累進屈折力レンズをベースに新しい設計パターンを提案したりするというようなことがある。
「既存の累進屈折力レンズをベースに新しい設計パターンを提案する」とは、具体的には次のような場合である。例えば、「設計データを提供する会社」をA社とし「設計データを提供されてレンズを製造する会社」をB社とする。このようなビジネス形態においては、従来は一つの契約に対して一種類の設計データをやりとりするのみであった。すなわち、2種類なら2種類、5種類なら5種類ぶんの設計データをやりとりし、B社はA社から提供されたデータから選択したものを自社のレンズ商品として販売するという形態であった。しかし、提供されたデータ以外の新しい設計パターンをB社が積極的に作り出して販売するというビジネスモデルも考えられる。
既存の累進屈折力レンズを変更する公知の例として、例えば、特許文献1を挙げる。特許文献1には、ある基準とする累進屈折面に個人特有の視覚動作に対応させるためにその基準とする累進屈折面を修正することが開示されている。また、特許文献2には非点収差を抑制する目的で累進面と累減面のサグ合成により、累進的な合成面を得る製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-107239号公報
【特許文献2】特表2004-524582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら従来の累進面を修正する技術は実際には必ずしも非点収差が解消されるものではない。特許文献1では基準とする累進屈折面と修正サグとの関係で非点収差が増す可能性もある。また、特許文献2でも累進面と累減面の形状によっては合成することでかえって非点収差が増す可能性がある。つまり、合成後の設計に破綻が生じるケースがある。また、累進面と累進面の合成でも同様に非点収差が増す可能性がある。そのため、複数の累進面を合成する際に常に破綻なく合成できる合成手法が求められていた。
また、既存の累進屈折力レンズをベースに新しい設計パターンを提案する場合に、設計データの被提供者が特別な知見を持たなくても、積極的に新しい設計パターンを作り出して商品化することを可能とする方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために手段1では、レンズ上方に配置された比較的遠方を見るための遠用領域と、前記遠用領域よりも下方に配置され前記遠用領域よりも大きな屈折力を有する近用領域と、これら領域の間に配置され屈折力が累進的に変化する累進領域を備え、前記遠用領域から前記近用領域にかけて加入度が徐々に付加されていくように加入勾配が設定された累進面を備えた累進屈折力レンズの設計方法において、異なる収差分布となる複数の累進面の少なくともレンズ中央領域を合成割合が一定となるように合成して1つの累進面を設計するようにした。
このような手段によって、複数の累進面を合成することで従来にない新しい設計パターンの累進屈折力レンズを得ることができ、そのレンズの非点収差は合成前の単独で設計した累進面に比べて著しく増加することがない。また、これらのようにして複数の累進面を合成して得られる設計パターンの性能が好適な範囲に収まるので、これらのような手法によって合成した累進屈折力レンズの性能について一定の保証を与えることができる。
【0006】
上記において「加入度」は、累進屈折力レンズにおける遠用領域と近用領域との見え方の差であって、一般に次のように計算される。
加入度=
主子午線上の近用測定位置における平均度数(S+C/2)
-主子午線上の遠用測定位置における平均度数(S+C/2)
「複数の累進面の合成」とは、任意の累進面、例えば2つの異なる設計の累進面について、部分的な領域、あるいは全領域が両方の累進面の形状データに基づいて決定される。つまり、累進屈折力レンズについて基本となる累進面の設計を行い、それぞれ全領域の形状データを設計する。例えば、基準面からどのくらい切削加工するかのサグデータを決定することがよい。サグとは垂下量のことであり、基準となる面(平面または球面)からの垂直方向の変位量(単位は長さで通常はmmで表す)のことである。平面を基準にする場合は「絶対サグ量」とも言う。ここでは参照球面を基準としてレンズ形状を定義することを想定し、「球面を基準としたサグ量」とする。この場合の垂直方向というのは、レンズの中心で球面に接する平面に対して垂直とする。累進面を凹面側(眼球側)とする内面累進屈折力レンズでは、内面を削ってレンズがより薄くなる方向(凸面側に向かう方向)を+にとる。
サグデータとはすなわち基準となる面から削る垂下量のデータである。そして、合成する位置ごとに合成する例えば2つの形状データのサグ量を合成割合に基づいて配分してその位置のサグ量を決定する。レンズ全領域について2つの形状データのサグ量を合成割合に基づいてサグ量を算出し、その数値に基づいてレンズ面を加工する。3つ以上の異なる設計の累進面についても同様である。合成手法としてはこのようなサグ合成以外の公知の手法であってもよい。
「合成」とは異なる複数の累進面設計を任意の割合で実行する。合成手法は内挿補間でも外挿補間でもどちらでもよい。例えば、内挿補間であれば0:1~1:0の範囲内で合成する。また、例えば複数段階(たとえば3~5段階、あるいは0~100の101段階など)を用いるようにしてもよい。例えば設計Aそのもの、半々合成、設計Bそのものという3つのバリエーションを作れば、3段階から選択するタイプの商品をユーザーは選択することができる。合成割合は後述するインセット量にも及ぶ。
「少なくともレンズ中央領域を合成割合が一定となるように合成」とは、累進面同士の合成手法として合成割合が一定であれば合成しやすく収差も生じにくいからである。そのため、レンズ全域で合成割合が一定となることがよいが、特にレンズ中央領域での合成割合が一定であればよく、レンズとして重要ではない周辺領域においては合成割合が一定でなくともよい。レンズ中央領域とは遠用領域から近用領域にかけて視線が多く通る領域であって累進特性として累進帯長とインセットが設計に反映される部分となる。
合成の際の累進帯長を短く/長くする具体的な手法としては、レンズのX-Y座標においてXY平面の圧縮/伸長を行うようにすることがよい。但し、単に圧縮/伸長するだけでは加入度が変わってしまう。そのため、圧縮/伸長する際には同時にサグ方向の圧縮/伸長も行って、所定の加入度になるように調整することがよい。尚、伸長することで累進帯長を変更するのは楽であるが、圧縮することで累進帯長を変更するのは実務上は困難なことが多い。それは、圧縮する場合ではもともと使用していなかった周辺の領域がレンズ内部に加わってくるので、その領域の形状をあらかじめ整えておく必要があるためである。
【0007】
また手段2では、合成する対象となる複数の累進面の累進帯長は異なる長さのものを含むようにした。
累進帯長が異なる長さの設計同士を合成すると、その結果として収差がより増加する可能性がある。しかし、そのような場合であっても収差がより増加する恐れがないようにできる。そのためには、累進帯長が異なる長さの複数の設計について、収差分布を類似させたものを使用することがよい。そのようにすることにより、合成することで新たな設計パターンの可能性が増すこととなる。
また、新たな累進帯長の設計を作り出す際には、例えば2種類の累進帯長に基づいて様々な累進帯長の設計を合成することができ、1mm刻みではない累進帯長、例えば13.5mmというように「その人向け」に累進帯長をチューニングすることもできる。このように累進帯長に関して新たな設計パターンの可能性が増すことで前もって多くの設計データを用意せずにすむこととなる。
合成した累進面の累進帯長の長さは合成のベースとなった設計のいずれかの累進帯長と同じでもよく、合成のベースとなった設計のどの累進帯長の長さとも異なっていてもよい。「累進帯長は異なる長さのものを含む」とは、例えば合成する対象が2つであれば両者が互いに異なり、例えば3つ以上であれば少なくとも2つが累進帯長が異なる関係となるような場合である。
「累進帯長」は、累進帯の上端をフィッティングポイントの高さとした場合に、累進帯の下端、つまり加入度曲線を下方に真っすぐ延長したとき、そのレンズの公称の加入度数に到達する高さとなる。
【0008】
また手段3では、合成する対象となる複数の累進面は異なるインセット量のものを含むようにした。
インセット量が異なることから、合成することで収差がより増加する傾向となるような複数の累進面を合成する場合であるが、このような場合であっても合成することで新たな設計パターンの可能性が増すこととなる。
インセット量が異なるような設計同士を合成すると、その結果として収差がより増加する可能性がある。しかし、そのような場合であっても収差がより増加する恐れがないようにできる。そのためには、インセットの異なる複数の設計について、収差分布を類似させたものを使用することがよい。そのようにすることにより、合成することで新たな設計パターンの可能性が増すこととなる。
インセットとは、累進屈折力レンズにおいて、遠用視から近用視に視線が移動する際に眼が内側に輻輳することに伴って近用度数部分を鼻側に内寄せすることをいう。インセット量は、レンズの遠用度数・加入度のほか、頂点間距離・前傾角・そり角・近用視の距離等の条件によって決まる連続的な値である。
図21に示すように、上側の×が遠用アイポイント位置であり、下側の×が近用アイポイント位置である。インセットが与えられていなければ遠用アイポイント位置の垂線上に近用アイポイントは存在する。つまり、近用アイポイント位置が内側に移動した量がそのレンズのインセット量となる。
合成した後のインセット量は合成のベースとなった設計のいずれかのインセット量と同じでもよく、合成のベースとなった設計のどのインセット量とも異なっていてもよい。「複数の累進面は異なるインセット量のものを含む」とは、例えば合成する対象が2つであれば両者が互いに異なり、例えば3つ以上であれば少なくとも2つが累進帯長が異なる関係となるような場合である。
【0009】
また手段4では、複数の累進面を合成する際の合成割合は外挿的に行われるようにした。
これによって、ある設計の特徴を強く反映させるようにしたより特徴を強調した新たな設計パターンを提供することができる。
また手段5では、上記のような累進屈折力レンズの設計方法によってレンズを製造するようにした。
上記のような設計方法によってレンズを製造するためには、具体的には例えば次のように実行することがよい。コンピューターを内蔵した加工装置であるNC装置に加工データを入力してプログラムによって作業者がコンピューターを制御することでセミフィニッシュトブランクをサグデータに基づいて切削加工して累進屈折力レンズを得ることがよい。セミフィニッシュトブランクは外面が固定された球面または非球面(回転非対称な累進面を含む)とされ、内面をフリーフォーム加工することによって処方された度数・乱視・加入度を出す方式で行うことがよいがこれに限定されるものではない。例えば内面を固定したセミフィニッシュの外面を加工してもよいし、両面を加工する方式であってもよい。
また、あるいは、例えば作業者によってサグデータに基づいてNC装置で加工されたレンズ型に透明な樹脂(モノマー)を注入した後に、レンズ型を離型して硬化した累進屈折力レンズを得る。最終的にはこのようにして得られた累進屈折力レンズ(丸レンズと呼称される)を装用者の選択した眼鏡フレームにあわせて外周をカットする(このような状態の累進屈折力レンズは玉型レンズと呼称される)。
本願発明は以下の実施の形態に記載の構成に限定されない。各実施の形態や実施例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素と任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
【発明の効果】
【0010】
上記発明では、複数の累進面を合成することで従来にない新しい設計パターンの累進屈折力レンズを得ることができ、そのレンズの非点収差は合成前の単独で設計した累進面に比べて大きく増加することがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に用いる設計Aの累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図2】同じく実施例に用いる設計Bの累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図3】実施例に用いる設計Aの累進屈折力レンズの主子午線上の度数変化を示すグラフ。
【
図4】実施例に用いる設計Bの累進屈折力レンズの主子午線上の度数変化を示すグラフ。
【
図5】実施例1の累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図6】実施例1の累進屈折力レンズの主子午線上の度数変化を示すグラフ。
【
図7】実施例2の累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図8】実施例2の累進屈折力レンズの主子午線上の度数変化を示すグラフ。
【
図9】同じく実施例に用いる設計Cの累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図10】同じく実施例に用いる設計Dの累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図11】設計Cの累進屈折力レンズの主子午線上の度数変化を示すグラフ。
【
図12】設計Dの累進屈折力レンズの主子午線上の度数変化を示すグラフ。
【
図13】実施例3の累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図14】実施例3の累進屈折力レンズの主子午線上の度数変化を示すグラフ。
【
図15】実施例4の累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図16】実施例4の累進屈折力レンズの主子午線上の度数変化を示すグラフ。
【
図17】本発明の実施例に用いる設計Eの累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図18】実施例に用いる設計Eの累進屈折力レンズの主子午線上の度数変化を示すグラフ。
【
図19】実施例5の累進屈折力レンズの累進面の平均度数分布図と非点収差分布図。
【
図20】実施例5の累進屈折力レンズの主子午線上の度数変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面に基づいて説明する。
(1)実施の形態1
1-1 合成対象について
図1に示す設計Aは屈折率1.60、累進帯長12mm、インセット1.0mmとしてシミュレーションして再現したものである。
図2に示す設計Bは屈折率1.60、累進帯長13mm、インセット3.0mmとしてシミュレーションして再現したものである。設計Aと設計Bの累進屈折力レンズはフィッティングポイントを幾何中心から2mm上方、プリズム測定点は幾何中心とした。フィッティングポイントは、正面遠方を見る視線がレンズを通過する位置である。
図3及び
図4はそれぞれ設計A、設計Bの累進屈折力レンズの主子午線上の度数変化のグラフであり、横方向が幾何中心(X, Y) = (0.0, 0.0)からの距離(mm)で、縦方向が度数であり、以下の度数変化グラフも同様である。
【0013】
1-2 実施例
実施例1として設計Aと設計Bの累進屈折力レンズの累進面における非球面サグの量を、設計A:設計B=0.25:0.75の内挿補間で累進面(レンズ面)の全面にわたって一定割合で合成した。累進帯長12mm、インセット2.5mmとした。その結果を
図5及び
図6に示す。実施例1は設計Aとも設計Bとも異なるインセット量となるように合成され、非点収差は増加することなく好適に合成された。
【0014】
(2)実施の形態2
2-1 合成対象について
上記(1)と同じ設計A、設計Bを用いた。
2-2 実施例
実施例2として設計Aと設計Bの累進屈折力レンズを実施例1とは異なる合成割合となる設計A:設計B=0.50:0.50の内挿補間で累進面(レンズ面)の全面にわたって一定割合で合成した。累進帯長12mm、インセット2.0mmとした。その結果を
図5及び
図6に示す。実施例1は設計Aとも設計Bとも異なるインセット量となるように合成され、非点収差は増加することなく好適に合成された。
【0015】
(3)実施の形態3
3-1 合成対象について
図9及び
図11に示す設計Cは屈折率1.60、累進帯長16mm、インセット1.0mmとしてシミュレーションして再現したものである。
図10及び
図12に示す設計Dは屈折率1.60、累進帯長13mm、インセット3.0mmとしてシミュレーションして再現したものである。設計Cと設計Dの累進屈折力レンズはフィッティングポイントを幾何中心から2mm上方、プリズム測定点は幾何中心とした。フィッティングポイントは、正面遠方を見る視線がレンズを通過する位置である。
3-2 実施例
実施例3として設計Cと設計Dの累進屈折力レンズの累進面における非球面サグの量を、設計A:設計B=0.25:0.75の内挿補間で累進面(レンズ面)の全面にわたって一定割合で合成した。累進帯長16mm、インセット2.5mmとした。その結果を
図13及び
図14に示す。実施例3は設計Cとも設計Dとも異なるインセット量となるように合成され、非点収差は増加することなく好適に合成された。
【0016】
(4)実施の形態4
4-1 合成対象について
上記の1-2で説明した実施例1と3-2で説明した実施例3の設計を用いた。
4-2 実施例
実施例4として実施例1:実施例3=0.50:0.50の内挿補間で累進面(レンズ面)の全面にわたって一定割合で合成した。累進帯長14mm、インセット2.5mmとした。その結果を
図15及び
図16に示す。実施例4は実施例2とも実施例3とインセット量は同じで異なる累進帯長となるように合成され、非点収差は増加することなく好適に合成された。
【0017】
(5)実施の形態5
5-1 合成対象について
図17及び
図18に示す設計Eは屈折率1.60、累進帯長14mm、インセット2.0mmとしてシミュレーションして再現したものである。この設計Eと上記の2-2で説明した実施例2を用いた。
5-2 実施例
実施例5として設計E:実施例2=0.50:0.50の外挿補間で累進面(レンズ面)の全面にわたって一定割合で合成した。累進帯長14mm、インセット2.5mmとした。その結果を
図19及び
図20に示す。実施例4は実施例2とも実施例3とインセット量は同じで異なる累進帯長となるように合成され、非点収差は増加することなく好適に合成された。
【0018】
上記実施の形態は本発明の原理およびその概念を例示するための具体的な実施の形態として記載したにすぎない。つまり、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・上記の各実施の形態における実施例は一例である。上記以外の設計でインセットや累進帯長を変更して実施するようにしてもよい。
・上記では設計Aと設計B、設計Cと設計D、設計Fと設計Gとを合成するようにしたが、
これらを任意に選択して合成してもよい。また、これらを任意に選択して設計Eと合成してもよい。
・上記実施の形態では2つの異なる設計を合成する例を示したが、3つ以上の異なる設計を合成するようにしてもよい。つまり、例えば設計A~設計Gから任意に3つの設計を選択して合成するようにしてもよい。
・上記実施例では設計A~Dの累進帯長を12mmと16mmにし、合成した実施例も累進帯長を12mmと16mmで設計したが、他の累進帯長となるように(例えば、外挿合成で累進帯長11mmや17mmで)設計してもよい。