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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090460
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20240627BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B41J2/17 207
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206386
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】千野 走
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA27
2C056EB24
2C056EB29
2C056EC24
2C056FA10
2C056JC15
(57)【要約】
【課題】カバー部材に折れ等の変形癖が発生することを抑制できる液体吐出装置を提供する。
【解決手段】液体吐出装置は、媒体Mにインク等の液体を吐出する吐出部62と、吐出部62と対向する液体受け溝71を有する液体受け部73と、可撓性を有するカバー部材76が巻かれたロール体77と、を備える。カバー部材76は、ロール体77から引き出されることで、液体受け溝71の開口を閉塞する閉塞位置と、ロール体77に巻き取られることで、液体受け溝71の開口を開放する開放位置とに変位可能である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に液体を吐出する吐出部と、
前記吐出部と対向する液体受け溝を有する液体受け部と、
可撓性を有するカバー部材が巻かれたロール体と、
を備え、
前記カバー部材は、
前記ロール体から引き出されることで、前記液体受け溝の開口を閉塞する閉塞位置と、前記ロール体に巻き取られることで、前記液体受け溝の開口を開放する開放位置とに変位可能であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記ロール体の外周面を押圧する押さえ部を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記ロール体の外周面に接触することで前記カバー部材を清掃する清掃部を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記ロール体を回転可能に保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記ロール体から引き出される前記カバー部材の先端部を移動させる移動部と、
前記保持部の回転軸又は前記移動部に対して前記カバー部材の引出し及び巻取りのための駆動力を付与する駆動部と、
を備えることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記カバー部材は、前記媒体の幅方向に分割されていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記カバー部材は、前記媒体を加熱するヒーターを備えることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記カバー部材の表面状態を検出可能な検出部と、
報知部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記報知部に前記カバー部材の表面状態を報知させる制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体にインク等の液体を吐出する吐出部を備える液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、インク等の液体を媒体に向けて吐出することで、媒体に印刷を行う印刷装置(液体吐出装置の一例)が開示されている。
この印刷装置は、記録ヘッド(吐出部の一例)から媒体に吐出されたインクのうち媒体の裏側まで透過したのち垂れたインクを受ける溝状のインク受部(液体受け溝の一例)と、インク受部の開口を覆う可撓性を有する支持部材(カバー部材の一例)とを備える。支持部材は、鉛直方向において媒体とインク受部との間に配置される支持位置(閉塞位置の一例)と、支持位置から退避した退避位置(開放位置の一例)とに切り替えて配置可能である。支持部材は、支持位置に配置された状態で媒体を支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-130911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の印刷装置において、支持部材などのカバー部材は、退避位置(開放位置)に配置されたとき、両端部が近づいた位置に配置されるので、両端部の間の部分が垂れ下がっている。カバー部材が長時間に亘り垂れ下がっていると、その垂れ下がった下端部に折れ等の変形癖ができる場合がある。
【0005】
カバー部材に折れ等の変形癖ができると、液体受け溝を覆ったときにカバー部材が折れ等の変形癖で凹んだ部分の両側が凸状になるなど波打つ形状になり、この凸状の部分が媒体(メディア)を浮き上がらせる原因になる。媒体が浮き上がると、媒体の印刷位置がずれたり、媒体が記録ヘッドに接触したりするなどの不都合が発生するという課題がある。そのため、カバー部材が閉塞位置と開放位置との間で繰り返し切り替えられても、カバー部材に折れ等の変形癖が発生しにくい液体吐出装置が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する液体吐出装置は、媒体に液体を吐出する吐出部と、前記吐出部と対向する液体受け溝を有する液体受け部と、可撓性を有するカバー部材が巻かれたロール体と、を備え、前記カバー部材は、前記ロール体から引き出されることで、前記液体受け溝の開口を閉塞する閉塞位置と、前記ロール体に巻き取られることで、前記液体受け溝の開口を開放する開放位置とに変位可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態における液体吐出装置を示す模式正断面図である。
図2】液体吐出装置を示す模式側断面図である。
図3】第1実施例における吐出部、支持部及びカバーユニットを示す模式側断面図である。
図4】カバー部材が閉塞位置にある状態を示す模式側断面図である。
図5】カバー部材の閉塞位置を複数段階に設定可能な支持部及びカバーユニットを示す模式平面図である。
図6】カバー部材が閉塞位置にある状態を示す模式側断面図である。
図7】カバーユニットを示す一部破断した斜視図である。
図8】第2実施例の支持部及びカバーユニットを示す模式側断面図である。
図9】第3実施例の支持部及びカバーユニットを示す模式側断面図である。
図10】第4実施例の支持部及びカバーユニットを示す模式側断面図である。
図11】第5実施例の支持部及びカバーユニットを示す模式側断面図である。
図12】第5実施例の支持部及びカバーユニットを示す模式平面図である。
図13】第6実施例の支持部及びカバーユニットを示す模式平面図である。
図14】第7実施例における複数に分割されたカバー部材を示す模式平面図である。
図15】第8実施例におけるヒーターを有するカバー部材を示す模式平面図である。
図16】第9実施例におけるヒーターを有する分割式のカバー部材を示す模式平面図である。
図17】変更例の支持部及びカバーユニットを示す模式平面図である。
図18図17と異なる変更例の液体受け部及びカバーユニットを示す模式側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、液体吐出装置の実施形態について図面を参照して説明する。
図1図2では、液体吐出装置11が水平面上に置かれているものとして重力の方向をZ軸で示し、水平面に沿う方向をX軸とY軸で示す。X軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する。以下の説明では、X軸に沿う方向は、後述する吐出部62が走査される方向であるので、走査方向Xともいう。また、Z軸に沿う方向を鉛直方向Zともいう。Y軸に沿う方向は、媒体Mに印刷される印刷位置において媒体Mが搬送される搬送方向であるので、搬送方向Y1ともいう。また、X軸に沿う方向は、媒体Mの媒体Mの幅方向であるので、幅方向Xともいう。
【0009】
<液体吐出装置11の構成>
図1図2に示すように、液体吐出装置11は、媒体Mに液体の一例としてのインクを吐出する吐出部62を備える。液体吐出装置11は、吐出部62が媒体Mにインクを吐出することにより媒体Mに印刷するインクジェット方式の印刷装置である。液体吐出装置11は、例えば、長尺の布帛等の媒体Mに印刷を行う捺染装置である。捺染装置は、例えば、印刷データに基づいて吐出部62がインクを布帛等の媒体Mに吐出するデジタル式の捺染装置である。液体吐出装置11は、媒体Mを支持する支持部70を備える。また、液体吐出装置11は、吐出部62と対向する液体受け溝71を有する液体受け部73を備える。図1図2に示す例では、液体受け部73は、支持部70の一部として構成される。つまり、本実施形態の液体吐出装置11は、支持部70(プラテン)が液体受け溝71を有するガタープラテンタイプの捺染装置である。なお、液体受け部73は、支持部70とは別の部材により構成されてもよい。
【0010】
液体受け部73は、吐出部62と対向する部分に液体受け溝71を有する。つまり、液体受け部73は、吐出部62が印刷時に走査方向Xに移動する領域である印刷領域の下方に液体受け溝71を有する。液体受け溝71は、吐出部62から吐出されて媒体Mに着弾したインクのうち媒体Mを透過して裏面側に抜けたのち滴下するインク等の液体を受ける。媒体Mが薄い布帛である場合や、繊維の隙間が比較的大きい布帛である場合、インクが媒体Mの裏面側に抜けやすい。また、同じ種類の媒体Mでも、媒体Mの単位面積当たりに吐出されるインク量が多い場合には、インクが媒体Mの裏面側に抜けやすい。液体受け溝71は、吐出部62の印刷領域よりも走査方向X及び搬送方向Y1に少し広い開口を有する。そのため、吐出部62から媒体Mに向けて吐出されたインクのうち、媒体Mの表面に着弾してからその裏面側に抜けたインク、及び媒体Mに着弾することなくその外側に吐出されたインクは、液体受け溝71に溜まる。
【0011】
図1図2に示すように、液体吐出装置11は、柱梁構造を有する基台12と、基台12に支持されたハウジング13とを備えてもよい。液体吐出装置11は、媒体Mを搬送する搬送装置20と、媒体Mに印刷する印刷部60とを備える。搬送装置20及び印刷部60は基台12により支持されている。基台12は脚部14により床面に支持される。ハウジング13は、キャリッジ61及び吐出部62が印刷時に走査方向Xに移動する領域である走査領域を覆う。
【0012】
図2に示すように、搬送装置20は、媒体Mを図2に矢印で示す搬送方向D1に搬送する。媒体Mの搬送方向D1と直交する方向(図1では紙面と直交する方向)が幅方向Xであり、幅方向Xは、キャリッジ61が移動する走査方向Xでもある。本実施形態において、走査方向X及び搬送方向Yは互いに交差(例えば、直交)する方向であって、いずれも鉛直方向Zと交差(例えば、直交)する。なお、媒体Mの搬送方向D1は、図2における実線の矢印で示すように搬送経路上の位置に応じて変化する。
【0013】
図2に示すように、搬送装置20は、給送部21、搬送部22及び巻取部23を備える。給送部21は、第1ロール32から媒体Mを給送する。給送部21は、媒体Mをロール状に巻回した第1ロール32を回転可能に支持するロール体支持軸31と、第1ロール32を正逆回転させる動力を出力する給送モーター33とを備える。給送部21から給送された媒体Mは、例えば、円弧面状の案内面34に案内されることで搬送部22に給送される。
【0014】
搬送部22は、給送部21から給送された媒体Mを搬送方向Y1に沿って搬送する。搬送部22は、支持部70を搬送方向Y1に挟む上流側と下流側の各位置に、搬送ローラー対41と、ガイドローラー45とを備える。詳しくは、搬送ローラー対41は、支持部70に対して搬送方向Y1の上流側の位置に配置されている。ガイドローラー45は、支持部70に対して搬送方向Yの下流側の位置に配置されている。
【0015】
搬送ローラー対41は、給送部21から給送された媒体Mを搬送方向Y1に搬送する。搬送ローラー対41は、駆動ローラー42と従動ローラー43とが対をなすことで構成される。従動ローラー43は、駆動ローラー42に向かう方向に付勢されている。搬送部22は、搬送ローラー対41の駆動源である搬送モーター44を備える。搬送モーター44の動力で駆動ローラー42が回転することにより、媒体Mは搬送ローラー対41にニップ(挟持)された状態で搬送方向Y1の下流に送り出される。
【0016】
ガイドローラー45は、その上端が、搬送ローラー対41のニップ位置と略同じ高さに位置する。媒体Mは、搬送ローラー対41にニップされるとともに、ガイドローラー45の外周面を経由して巻取部23により巻き取られる。搬送ローラー対41の回転速度は、制御部100が搬送モーター44を速度制御することにより制御される。また、巻取部23が媒体Mを巻き取る巻取速度も制御部100により制御される。このため、媒体Mにおいて搬送ローラー対41とガイドローラー45との間の部分には所定の張力が付与される。この張力により、媒体Mは、搬送ローラー対41とガイドローラー45との間で略水平に延びた状態に保持される。ガイドローラー45は、印刷後の媒体Mを巻取部23へ案内する。なお、搬送部22は、搬送経路に沿って1つ又は複数の他のローラーを備えてもよい。
【0017】
巻取部23は、印刷後の媒体Mを巻き取る。給送部21から給送された媒体Mは搬送部22によって搬送され、液体受け溝71の上方に位置する印刷位置を通る過程で吐出部62から吐出されるインク滴により媒体Mに画像等が印刷される。
【0018】
巻取部23は、第2ロール52を回転可能に支持する回転支持軸51と、巻取部23の駆動源である巻取モーター53とを備える。巻取モーター53が駆動されることで、第2ロール52は印刷後の媒体Mを巻き取る。ガイドローラー45と巻取部23との間には、媒体Mに接触して媒体Mに張力を付与するテンションバー54が配置されている。巻取部23は、テンションバー54により張力が付与された媒体Mを第2ロール52に巻き取る。なお、テンションバー54は、一対のアーム55に支持されている。一対のアーム55は、その先端がテンションバー54の幅方向Xの両端部に連結されるとともに、その基端部が脚部14に対して回動可能に支持されている。
【0019】
図1図2に示すように、印刷部60は、前述の吐出部62を含む。本例の液体吐出装置11は、シリアル印刷方式である。シリアル印刷方式の場合、印刷部60は、吐出部62を搭載するキャリッジ61を備える。キャリッジ61は、媒体Mの搬送方向Yと交差する走査方向Xに往復移動する。印刷部60は、キャリッジ61が走査方向Xに往復移動するときに、その往動と復動のうち少なくとも一方で吐出部62から媒体Mに向かってインクを吐出する。
【0020】
吐出部62は、支持部70と対向する姿勢でキャリッジ61に搭載される。吐出部62は、支持部70に支持された媒体Mに向かって液体を吐出する。
印刷部60は、キャリッジ61及び吐出部62の他に、キャリッジ61を走査経路に沿って案内するガイド軸63と、キャリッジ61の駆動源であるキャリッジモーター67と、キャリッジモーター67の動力をキャリッジ61に伝達する動力伝達機構64とを備える。動力伝達機構64は、例えば、ベルト式動力伝達機構である。詳しくは、動力伝達機構64は、一対のプーリー65(図1参照)と、一対のプーリー65に巻き掛けられたタイミングベルト66とを備える。一方のプーリー65は、キャリッジモーター67の出力軸と連結されている。キャリッジ61は、タイミングベルト66の一部に固定されている。
【0021】
キャリッジ61は、キャリッジモーター67の駆動により、ガイド軸63に沿って走査方向Xに往復移動可能に構成される。吐出部62は、キャリッジ61が走査方向Xに移動する過程で、支持部70に支持された媒体Mに印刷する。シリアル印刷方式では、吐出部62が移動過程で液体を吐出することで行う1ライン(1走査)分の印刷を行う印刷動作と、搬送装置20が次の印刷位置まで媒体Mを搬送する搬送動作とを交互に行うことで、媒体Mに文字又は画像が印刷される。
【0022】
液体吐出装置11は、吐出部62をメンテナンスするメンテナンス装置16を備える。メンテナンス装置16は、非印刷時の待機位置である図1に二点鎖線で示すホーム位置にある吐出部62と対向する位置に配置されている。メンテナンス装置16は、吐出部62のノズル面62A(図3参照)と接触するキャッピング位置と、ノズル面62Aから離間する図1に示す退避位置との間を移動可能に構成されるキャップ17を備える。
【0023】
液体吐出装置11は、吐出部62にインク等の液体を供給する液体供給部(図示略)を備える。吐出部62は、液体供給部から供給されるインク等の液体を吐出するノズル62N(図3参照)を有する。液体収容部は、例えば、ユーザーにより着脱可能な状態で装着される液体カートリッジ又はユーザーによりインク等の液体が補充される液体タンクにより構成される。キャリッジ61には、液体供給部とチューブ(図示略)を通じて接続されている。インク等の液体は、チューブを通じて吐出部62に供給される。液体供給部は、例えば、カラーを構成する、シアン、マゼンタ、イエロー、黒を含む複数色のインクをそれぞれチューブを通じて吐出部62に供給する。なお、吐出部62は、印刷ヘッドともいう。
【0024】
支持部70には、液体受け溝71の開口を開閉可能なカバー部材76を有するカバーユニット75が取り付けられている。カバーユニット75は、カバー部材76を巻き取り可能な巻取方式である。このカバーユニット75の詳細な構成は、後述する。
【0025】
液体吐出装置11は、図1に示す搬送装置20及び印刷部60を制御する制御部100(図2参照)を備える。液体吐出装置11は、報知部の一例としての表示部15を有する。表示部15には、メニューや、ユーザーに液体吐出装置11の状態等を知らせる各種のメッセージ等が表示される。本例の表示部15は、カバー部材76の汚れ度合に応じたメンテナンスを促す旨のメッセージ等の表示にも使用される。なお、報知部は、表示部15に限定されず、例えば、音声発生部から音声を発生させることによってユーザーに各種情報を報知する構成であってもよいし、サーバ装置からスマートフォンなどの通信端末装置への通信を行うことでユーザーに各種情報を報知する構成であってもよい。
【0026】
図1図2に示すように、液体吐出装置11は、カバー部材76の表面状態を検出可能な検出部68を備える。制御部100は、検出部68の検出結果に基づいて、表示部15にカバー部材76の表面状態を報知させる。
【0027】
検出部68は、図1図2に示すように、例えば、キャリッジ61に設けられている。検出部68は、例えば、カメラ又はセンサーである。センサーは、イメージセンサーでもよい。検出部68は、カメラ又はイメージセンサーである場合、液体受け溝71の開口を覆う閉塞状態に引き出されたカバー部材76の表面を撮像する。すなわち、閉塞状態にあるカバー部材76の上方に媒体Mがない状態の下で、キャリッジ61を走査方向Xに移動させながら検出部68によりカバー部材76の表面を撮像する。このとき、カバー部材76の表面について走査方向Xの全域もしくは全域のうちの半分以上の代表的な領域が撮像される。代表的な領域は、例えば、カバー部材76の幅方向Xにおける中央部を含む一部の領域であってもよい。中央部は、幅サイズの異なる複数種の媒体Mが共通に通る領域であり、インクの吐出頻度の高い領域である。この代表的な領域に一定の閾値を超えて汚れが検出されると、制御部100はカバー部材76のメンテナンス時期であると判断する。このメンテナンス時期には、清掃時期と交換時期のうち少なくとも一方が含まれてもよい。清掃時期を規定する閾値を第1閾値とすると、この第1閾値よりも高い第2閾値を超える場合、あるいは清掃を行っても汚れ度合が第1閾値を超える場合は、カバー部材76又はカバーユニット75の交換時期になる。
【0028】
制御部100は、検出部68から撮像された画像データを取得してもよい。制御部100は、画像データを基に画像解析処理を行うことによりカバー部材76の汚れ度合を判定してもよい。制御部100は、汚れ度合が第1閾値を超える場合、表示部15に清掃等のメンテナンスを促す旨のメッセージ等を表示してもよい。制御部100は、清掃を行っても汚れ度合が第2閾値未満にならない場合(つまり第2閾値を超える場合)、表示部15にカバー部材76又はカバーユニット75の交換を促す旨のメッセージ等を表示してもよい。なお、第1閾値は、第2閾値よりも汚れ度合の大きな値である。
【0029】
液体吐出装置11の印刷方式は、シリアル印刷方式に限定されず、ライン印刷方式でもよい。ライン印刷方式である場合、吐出部62は、搬送装置20によって搬送される媒体Mの幅方向全域に一斉に液体を吐出可能な数のノズル62Nを有するラインヘッドにより構成される。ライン印刷方式の吐出部62が、搬送装置20によって所定の搬送速度で搬送される媒体Mに向かって幅全域に亘り液体を一斉に吐出することで、媒体Mに画像等を印刷する。
【0030】
<第1実施例>
次に、図3図4を参照して、第1実施例における支持部70及びカバーユニット75の詳細な構成を説明する。
【0031】
図3図4に示すように、支持部70は、吐出部62と対向する位置に配置されている。支持部70は、媒体Mを支持する支持面70A(図3参照)を有する。支持部70の上方を搬送される媒体Mは支持面70Aに支持される。
【0032】
吐出部62は、支持部70の支持面70Aに支持された媒体Mに対してインク等の液体を吐出することで、媒体Mに画像等を印刷する。媒体Mは、例えば、布帛である。媒体Mが布帛である場合、媒体Mに向かって吐出されたインク等の液体は、布帛の繊維間の隙間を通って媒体Mの裏面側に抜けやすい。例えば、支持部(プラテン)が、媒体Mにおいてインクが吐出される印刷領域の部分を裏面から支持する支持面を有するタイプである場合、媒体Mの裏面に抜けたインク等の液体が支持面を汚すことになる。この場合、支持面に支持される媒体Mの裏面がインク等の液体で汚れることになる。
【0033】
そのため、本実施形態では、インクが吐出される印刷領域と対応する部分に液体受け溝71を有するガタープラテンタイプの支持部70を採用する。液体受け溝71の開口は、吐出部62の印刷時の移動領域と対向する位置にあり、かつ吐出部62から液体が吐出される液体吐出領域を含む広さを有する。図3に示す例では、液体受け溝71は、搬送方向Y1において吐出部62の寸法LHよりも長い範囲に亘る広さの開口を有する。液体受け溝71には、印刷時に媒体Mに着弾したインクのうち媒体Mを透過して裏抜けしたのち滴下するなどした廃インク等の廃液Liが貯留される。
【0034】
図3図4に示すように、液体吐出装置11は、可撓性を有するカバー部材76が巻かれたロール体77を回転可能に保持する保持部78を備える。保持部78は、支持部70における液体受け溝71の内壁に配置されている。図3図4に示す例では、支持部70の内壁部のうち搬送方向Y1の上流側の部分が階段状のステップ部を有し、ステップ部の上面に保持部78が固定されている。保持部78の上端は、鉛直方向Zにおいて支持面70Aよりも下方に位置する。また、保持部78の上方は開放されている。
【0035】
図3図4に示すように、カバー部材76は、ロール体77から引き出されることで、液体受け溝71の開口を閉塞する閉塞位置と、ロール体77に巻き取られることで、液体受け溝71の開口を開放する開放位置とに変位可能である。すなわち、図3に示すように、カバー部材76は、ロール体77から引き出されることで、液体受け溝71の開口を閉塞する閉塞位置に変位可能である。また、図4に示すように、カバー部材76は、ロール体77に巻き取られることで、液体受け溝71の開口を開放する開放位置に変位可能である。
【0036】
カバー部材76は柔軟性がある部材が好ましい。例えば、カバー部材76は、ロールスクリーン、メッシュなどにより構成される。カバー部材76の材質は、ワイヤー等の可撓性が得られる形態であれば金属でもよいし、樹脂繊維に用いられる合成樹脂でもよい。また、ワイヤーや樹脂繊維で編んだメッシュや網目構造に限らず、合成樹脂製のシートでもよい。カバーユニット75は、カバー部材76の先端部に固定されたロッド状の把手79を有する。支持部70は、液体受け溝71よりも搬送方向Y1の下流位置に、カバー部材76を閉塞位置に引き出した際に保持するために把手79を引っ掛けることで係止する被係止部80を備える。
【0037】
媒体Mの裏面に抜けたインクは、滴下などして液体受け溝71に廃液Liとして貯留される。媒体Mは、液体受け溝71の開口と対応する部分において支持されていない。そのため、媒体Mは、支持部70の上面から少し離間する浮かせた状態で搬送される。裏面を支持されていない媒体Mは、張力が付与されていないと、垂れてしまう。垂れてしまうと、吐出部62から吐出されたインク等の液滴が所望の位置に着弾しなくなるドットの位置ずれの原因になる。そのため、搬送中の媒体Mは、垂れないように張力が付与される。そして、その張力によって、媒体Mは、支持部70の開口面よりも上方に少し浮いた状態で略水平の姿勢に保たれた状態で搬送される。このときの張力は、搬送ローラー対41の送り動作及び巻取部23の巻取動作の制御と、テンションバー54の張力付与機能とにより、適切な値に調整される。
【0038】
なお、引き出されたカバー部材76は、支持部70の開口面と同じか、開口面よりも少し低い高さに配置される。そのため、媒体Mは、カバー部材76の上面から少し上方に離間した浮いた状態で搬送される。図2図4等では、カバー部材76と媒体Mとの間の隙間を少し誇張して描いているが、その隙間は、例えば、0.1~5mmの範囲内の値である。そのため、比較的重量のある媒体Mは少し垂れてもカバー部材76により支持される。また、媒体Mと吐出部62のノズル面62Aとのギャップは、例えば、0.1~5mmの範囲内の値である。このギャップが狭いほど印刷位置精度は高くなるが、媒体Mと吐出部62のノズル面62Aとの接触を避けられる必要なギャップ値に設定される。
【0039】
図5図6に示すように、カバー部材76の引き出し量を調整可能とする構成でもよい。図5に示すように、支持部70の幅方向Xの両側端部には、カバー部材76の把手79の両端部を引っ掛ける凹部72が形成されている。図5図6に示す例では、凹部72は、保持部78と被係止部80との間に4つある。4つの凹部72及び被係止部80のうちユーザーが選択した1つに把手79を引っ掛けることで、カバー部材76の開口を覆う閉塞量が調整可能である。この例では、把手79を引っ掛ける位置によってカバー部材76が、液体受け溝71の開口面積のおよそ1/4、1/2、3/4、全てを覆う状態のうちから1つを選択可能である。つまり、閉塞位置は、液体受け溝71の開口の全てをカバー部材76が閉塞する位置に限らず、液体受け溝71の開口の一部をカバー部材76が閉塞する位置も含む。
【0040】
凹部72及び被係止部80は、把手79が引っ掛けられた状態においてカバー部材76が水平に位置し、かつカバー部材76が支持面70Aよりも下方の位置に配置されるように、その高さ位置が設定されている。このため、図6に示すように、閉塞位置にあるカバー部材76は、支持面70Aに支持される媒体Mの裏面よりもさらに下方に位置する。
【0041】
図7に示すように、保持部78は、回転軸781と、回転軸781を回転可能に支持する一対の円筒状のガイド部782とを有する。保持部78は、一対のガイド部782間に幅方向Xに延びる状態で架設された延設部783を有する。延設部783は、ロール体77の幅方向Xの長さよりも若干長く形成されている。延設部783は、カバー部材76が引き出される引出口784を有する。カバー部材76は、引出口784に挿通された状態で、その先端部に把手79が固定されている。把手79は、引出口784の開口よりもサイズが大きいので、延設部783が把手79の巻取方向側のストッパーとして機能する。
【0042】
延設部783は、ロール体77の周方向の一部を覆う。このため、ロール体77の周方向の他の一部は、幅方向Xの全域が外部に露出している。なお、ロール体77の外周面を露出させる必要がなければ、保持部78は、延設部783に替え、ロール体77を引出口784以外の部分で全周に亘り覆う円筒状のハウジングを有する構成でもよい。
【0043】
また、保持部78は、ガイド部782の内部にばね(図示略)を内蔵している。このばねはカバー部材76を巻取方向に付勢する。そのため、ユーザーは把手79を把持してばねの付勢力に抗してカバー部材76をロール体77から引き出す。また、ユーザーがカバー部材76を開放位置に戻すとき、カバー部材76は、ばねの付勢力によりロール体77に巻き取られる。なお、ばねは、ぜんまいばねや捩りコイルばね等であってもよい。
【0044】
<作用>
次に、液体吐出装置11におけるカバーユニット75の作用について説明する。
カバー部材76は、図3に示すようにロール体77に巻き取られた開放位置から、図4に示すようにロール体77から引き出されることで、液体受け溝71の開口を閉塞する閉塞位置に配置される。このようにカバー部材76が閉塞位置に配置された状態の下で、ユーザーは液体吐出装置11に対して媒体Mをセットする。セット作業中の媒体Mは、張力が付与されていない。その結果、媒体Mは支持部70の開口と対応する部分が垂れる場合がある。しかし、媒体Mの垂れた部分は、カバー部材76により支持される。この結果、セット作業中に媒体Mが弛んで垂れても、その垂れた部分が液体受け溝71に落ちることはない。よって、セット作業中に媒体Mが液体受け溝71内の廃インク等の廃液Liで汚れることが回避される。
【0045】
媒体Mがセットされると、媒体Mへの印刷が開始される。印刷中の媒体Mには張力が付与されているので、支持面70Aに支持された媒体Mはカバー部材76の上面から少し上方に離間した浮いた状態で搬送される。また、インクが媒体Mの裏面に抜け易い種類の媒体Mである場合や、インクが媒体Mの裏面に抜け易い印刷条件である場合、カバー部材76をインクで過度に汚さないために、ユーザーは、セット作業終了後、カバー部材76をロール体77に巻き取る。この場合、カバー部材76が液体受け溝71の開口を閉塞していない開放状態の下で、媒体Mに印刷される。つまり、液体受け溝71の開口が開放された状態の下で、媒体Mに印刷される。
【0046】
シリアル印刷方式である液体吐出装置11は、吐出部62が移動過程でインクを吐出する1ライン(1走査)分の印刷動作と、搬送装置20が次の印刷位置まで媒体Mを搬送する搬送動作とを交互に行うことで、媒体Mに文字又は画像が印刷される。例えば、インクが媒体Mの裏面に抜け易い種類の媒体Mである場合や、インクが媒体Mの裏面に抜け易い印刷条件である場合、カバー部材76が開放状態にあるので、カバー部材76をインクで過度に汚さずに済む。印刷後、媒体Mの裏面に抜けたインクは、液体受け溝71に回収される。
【0047】
例えば、インクが媒体Mの裏面に抜け難い種類の媒体Mである場合や、インクが媒体Mの裏面に抜け難い印刷条件である場合、カバー部材76が閉塞位置にあるまま、媒体Mへの印刷が行われる。張力が付与されているときの媒体Mの下方へ、例えば、0.1~5mmの範囲内の距離を離れた位置に、カバー部材76が配置されている。印刷中に媒体Mが仮に僅かに垂れても、媒体Mはカバー部材76により支持される。よって、媒体Mの印刷領域に相当する部分が垂れることに起因する印刷位置精度の低下が抑制される。
【0048】
印刷中にカバー部材76が閉塞位置に配置されていた場合、印刷が終わると、ユーザーは、把手79を例えば被係止部80から外してカバー部材76をロール体77に巻き取る。カバー部材76の巻取動作は、保持部78内のぜんまいばね等のばねの付勢力を利用して回転軸781が回転することで行われる。この巻取動作により、カバー部材76は、閉塞位置から開放位置へ切り替えられる。開放位置にあるとき、カバー部材76は、ロール体77に巻き取られた状態に保持される。このため、カバー部材76に折れ等の変形癖が発生しにくい。
【0049】
<カバー部材76のメンテナンスを促す報知>
液体吐出装置11は、閉塞状態にあるカバー部材76の上方に媒体Mがない状態の下で、キャリッジ61を走査方向Xに移動させながら検出部68によりカバー部材76の表面を撮像する。制御部100は、検出部68の検出結果に基づいて、表示部15にカバー部材76の表面状態を報知させる。詳しくは、制御部100は、検出部68が検出した汚れ度合が第1閾値を超えると、清掃時期である旨の情報(例えばメッセージ)を表示部15に表示することで、ユーザーに清掃を促す報知を行う。一方、検出部68が検出した汚れ度合が第2閾値を超える場合、あるいは清掃を行っても汚れ度合が第1閾値を超える場合は、カバー部材76又はカバーユニット75の交換時期になる。この場合、制御部100は、交換時期である旨の情報(例えばメッセージ)を表示部15に表示することで、ユーザーに交換時期に達したことを報知する。
【0050】
よって、第1実施例によれば、以下の効果が得られる。
(1)液体吐出装置11は、媒体Mにインクを吐出する吐出部62と、吐出部62と対向する液体受け溝71を有する液体受け部73と、可撓性を有するカバー部材76が巻かれたロール体77を回転可能に保持する保持部78と、を備える。カバー部材76は、ロール体77から引き出されることで、液体受け溝71の開口を閉塞する閉塞位置と、ロール体77に巻き取られることで、液体受け溝71の開口を開放する開放位置とに変位可能である。開放位置にあるときのカバー部材76が自重で垂れ下がる構成の場合、カバー部材76の垂れ下がった下端部に折れ等の変形癖が発生し易い。この構成によれば、開放位置にあるときのカバー部材76はロール状に巻き取られるので、自重で垂れ下がる構成に比べて、カバー部材76に折れ等の変形癖が発生することを抑制できる。
【0051】
(2)液体吐出装置11は、カバー部材76の表面状態を検出可能な検出部68と、報知部の一例としての表示部15と、検出部68の検出結果に基づいて、表示部15にカバー部材76の表面状態を報知させる制御部100と、を備える。この構成によれば、巻取式のカバー部材76で発生し得る課題として、カバー部材76にインクが付着して汚れたまま巻き取ることで汚れが溜まっていくことが挙げられる。カバー部材76の表面状態を検出する検出部68を設けることで、検出の結果、汚れが溜まっていたら表示部15にその旨を報知させることより、ユーザーにメンテナンス(清掃又は交換など)を促すことができる。
【0052】
<第2実施例>
次に、図8を参照して、支持部70及びカバーユニット75の第2実施例について説明する。なお、第2実施例を含む以降で説明する各実施例では、支持部70及びカバーユニット75の構成が、前記第1実施例と異なり、その他の液体吐出装置11の基本的な構成は、前記実施形態と同様である。
【0053】
図8に示す支持部70は、カバーユニット75を構成するロール体77及び保持部78の上方を覆う覆い部81を有する。把手79は、図8に示す状態において、搬送方向Y1の上流に向かって水平に延出する掛止部791と、鉛直方向Zの下方に延出する係止部792とを有する。カバー部材76が開放位置にある状態で、把手79の掛止部791は、覆い部81の搬送方向Y1の先端部に掛止される。また、カバー部材76が閉塞位置にある状態で、把手79の係止部792は、延出部82の上面に形成された凹状の被係止部82Aに係止される。
【0054】
この第2実施例では、ロール体77及び保持部78が、支持部70の覆い部81によって覆われている。このため、印刷中に吐出部62のノズル62Nから吐出されたインクのうち媒体Mの印刷に使用されず、浮遊や飛散などしたインク滴が、ロール体77及び保持部78に付着することが抑制される。例えば、ロール体77にインクが付着すると、その後、カバー部材76を引き出して使用する際にカバー部材76がインクで汚れている。この場合、媒体Mのセット作業時や、カバー部材76を閉塞位置に配置した状態で行う印刷時に、媒体Mがカバー部材76に接触しても媒体Mがインクで汚れることを回避できる。
【0055】
よって、第2実施例によれば、以下の効果が得られる。
(3)支持部70は、カバーユニット75を構成する保持部78又はロール体77の上方を覆う覆い部81を有する。保持部78又はロール体77に印刷中のインクが付着することを抑制できる。
【0056】
<第3実施例>
次に、図9を参照して、第3実施例の支持部70及びカバーユニット75の構成について説明する。
【0057】
図9に示すように、カバーユニット75は、ロール体77の外周面を押圧する押さえ部83を備える。カバーユニット75は、押さえ部83を付勢する弾性部材84を備える。押さえ部83は、弾性部材84の弾性力によってロール体77の外周面を押圧する。押さえ部83は、支持部70の内壁部に対して弾性部材84を介して支持されている。これにより、押さえ部83は、ロール体77に近づく方向に付勢された状態で、ロール体77の径方向に変位可能に設けられている。このため、押さえ部83は、ロール体77の巻き径が変化してもロール体77の外周面に対する押圧状態を維持できる。
【0058】
ユーザーは、カバー部材76を引き出す際は、押さえ部83とロール体77との摩擦抵抗に抗してカバー部材76をロール体77から引き出す。このため、ユーザーは、カバー部材76を引き出す力を加え過ぎても、カバー部材76は適度な引き出し速度に制限される。この結果、ユーザーは、カバー部材76を滑らかに引き出すことができる。例えば、ロール体77を高速回転させると、ロール体77に付着したインクが過大な遠心力により周囲に飛び散る可能性がある。しかし、カバー部材76は適度な引き出し速度に制限されるので、引き出す際にロール体77からインクが周囲に飛び散ることを抑制できる。
【0059】
さらに、押さえ部83が、ロール体77を押圧する力により、ロール体77の回転時にロール体77に付着したインクを絞り出したり掻き落としたりすることができる。これにより、カバー部材76に付着したインクがそのまま固化することを抑制できる。ロール体77として巻き取られたカバー部材76に付着しているインクが固化すると、カバー部材76を引き出せなくなる可能性がある。しかし、押さえ部83がカバー部材76の引き出し/巻取りの過程でカバー部材76からインクを除去するので、カバー部材76に付着したインクが仮に固化しても、カバー部材76の引き出し操作上の問題は発生しにくくなる。
【0060】
よって、第3実施例によれば、以下の効果が得られる。
(4)液体吐出装置11は、ロール体77の外周面を押圧する押さえ部83を備える。この構成によれば、押さえ部83によって、急激な力でカバー部材76が引き出されることを抑制できる。
【0061】
<第4実施例>
次に、図10を参照して、第4実施例における支持部70及びカバーユニット75の構成について説明する。
【0062】
図10に示すカバーユニット75は、ロール体77の外周面に接触することでカバー部材76を清掃する清掃部85を備える。清掃部85は、ロール体77からインクを絞り出したり掻き落としたりする清掃機能に適した形状を呈している。清掃部85は、第3実施例と同様に、押さえ部の一例としても機能する。清掃部85は、例えば、ブレード形状を呈する。清掃部85の一端部(先端部)は、ロール体77からのインクの絞り落としや掻き落としに適したブレード形状を呈する。清掃部85の他端は、鉛直方向Zにおいて液体受け溝71の上方に位置する。清掃部85は、ロール体77の幅方向Xの全域を押圧可能な幅を有し、且つ下に凸の緩やかな湾曲形状の板材よりなり、一端部(先端部)よりも他端部(基端部)の方が鉛直方向Zにおいて下方に位置する。
【0063】
そして、清掃部85は、図9に示す押さえ部83と同様に、弾性部材84の弾性力によってロール体77を押圧する。すなわち、清掃部85は、支持部70の内壁部に対して弾性部材84を介して支持されている。これにより、清掃部85は、ロール体77に近づく方向に付勢された状態で、ロール体77の径方向に変位可能に設けられている。このため、清掃部85は、ロール体77の巻き径が変化しても押圧状態を維持できる。
【0064】
清掃部85は、その上面と下面とにロール体77から絞り出したインク、あるいは掻き取ったインクを、液体受け溝71に案内する案内面85A,85Bを有する。図10に示す例では、清掃部85の上面が第1案内面85Aであり、清掃部85の下面が第2案内面85Bである。
【0065】
カバー部材76がロール体77から引き出される過程では、弾性部材84の付勢力で清掃部85がロール体77の外周面に押さえ付けられる。清掃部85によってロール体77からインクが絞り出されたり、掻き取られたりする。このインクは第1案内面85A上を流れることで液体受け溝71に案内される。また、カバー部材76がロール体77に巻き取られる過程では、弾性部材84の付勢力でロール体77の外周面に押さえ付けられた清掃部85によってロール体77からインクが絞り出されたり、掻き取られたりする。このインクは、第2案内面85Bを伝って流れることで、液体受け溝71に案内される。よって、清掃部85がロール体77から絞り出したインク又は掻き取ったインクを液体受け溝71により確実に案内することができる。
【0066】
よって、第4実施例によれば、以下の効果が得られる。
(5)ロール体77の外周面に接触することでカバー部材76を清掃する清掃部85を備える。この構成によれば、清掃部85によりカバー部材76を清掃することができる。カバー部材76がインクで汚れた状態で媒体Mがカバー部材76に支持される場合に起こりうる媒体Mへのインクの転写による汚れに起因する印刷ミスを低減できる。
【0067】
<第5実施例>
次に、図11図12を参照して、第5実施例について説明する。第5実施例は、カバー部材76の引出し及び巻取りを駆動源の動力で行う構成である。カバーユニット75は、カバー部材76の引出し及び巻取りのための動力を出力する駆動源の一例としてのモーター92を備える。以下、モーター92の駆動力でカバー部材76を動かす方式が異なる2つの実施例を説明する。モーター92の駆動力でロール体77を回転させる方式が図11図12に示す第5実施例である。
【0068】
図11図12に示すように、カバーユニット75は、保持部78の回転軸781に駆動力を付与する駆動部の一例としてのモーター92を備える。モーター92の出力軸92Aは、回転軸781の一端部に連結されている。カバーユニット75は、カバー部材76を開閉する方向に案内する駆動ユニット90を備える。駆動ユニット90は、移動部91と、前述のモーター92とを備える。移動部91は、ガイドロッド93、一対の可動部94、及び一対のレール95を備える。
【0069】
ガイドロッド93は、カバー部材76の先端部に、前記各実施例における把手79に替えて固定されている。一対の可動部94は、ガイドロッド93の幅方向Xの両端部に固定されている。一対のレール95は、支持部70において幅方向Xに液体受け溝71を挟んだ両側の側部上面に、搬送方向Y1に延設されている。一対の可動部94は、一対のレール95と係合し、レール95に沿って搬送方向Y1に往復移動可能に構成される。カバー部材76は、ロール体77から繰り出されるとさほど撓まずにその先端部を搬送方向Y1の下流へ移動させる程度の張りを有する材料及び形態に形成されている。カバー部材76は、例えば、ワイヤーや樹脂繊維で編まれたメッシュにより構成される。例えば、カバー部材76が柔軟性の高い布であると、ロール体77から繰り出しても撓んでしまってカバー部材76の先端を搬送方向Y1の下流に移動させることができない。布よりも剛性のあるメッシュ等であれば、ロール体77からの繰り出しによってカバー部材76の先端部を搬送方向Y1の下流に移動させることができる。
【0070】
制御部100が、モーター92を正転駆動させると、回転軸781が正転することでロール体77が正転する。すると、カバー部材76がロール体77から繰り出される。この結果、カバー部材76が図12に実線で示す開放位置から、図12に二点鎖線で示す閉塞位置まで移動する。
【0071】
また、制御部100が、モーター92を逆転駆動させると、回転軸781が逆転することでロール体77が逆転する。すると、カバー部材76がロール体77に巻き取られる。この結果、カバー部材76が図12に二点鎖線で示す閉塞位置から、図12に実線で示す開放位置まで移動する。
【0072】
よって、第5実施例によれば、以下の効果が得られる。
(6)液体吐出装置11は、ロール体77を回転可能に保持する保持部78と、保持部78に保持されたロール体77から引き出されるカバー部材76の先端部を移動させる移動部91と、保持部78の回転軸781に対して駆動力を付与する駆動部の一例としてのモーター92と、を備える。モーター92は、回転軸781に対して、カバー部材76の引出し及び巻取りのための駆動力を付与する。この構成によれば、モーター92が回転軸781に対してカバー部材76の引出し及び巻取りのための回転駆動力(トルク)を付与することで、カバー部材76の開閉を自動化できる。例えば、ユーザーが手動で幅広のカバー部材76を開閉する面倒な作業を無くすことができるうえ、手動の場合に起こりうる急激な力でカバー部材76が引き出されることを抑制できる。
【0073】
<第6実施例>
次に、図13を参照して、第6実施例について説明する。カバーユニット75は、カバー部材76の引出し及び巻取りのための動力を出力する駆動源の一例としてのモーター92を備える。第6実施例のカバーユニット75では、モーター92の駆動力を移動部91に付与することで、カバー部材76の先端部を移動させる方式である。
【0074】
図13に示すように、カバーユニット75は、モーター92と、駆動ユニット110とを備える。本実施例の駆動ユニット110は、移動部91と、モーター92の駆動力を移動部91に伝達する動力伝達機構96とを備える。移動部91の構成は、基本的に第5実施例と同様である。すなわち、移動部91は、ガイドロッド93と、一対の可動部94と、一対のレール95とを備える。
【0075】
動力伝達機構96は、一対のプーリー97と、一対のプーリー97に巻き掛けられたタイミングベルト98とを有する。一方の可動部94は、タイミングベルト98の一部に固定されている。また、一方のプーリー97は、モーター92の出力軸92Aと連結されている。
【0076】
制御部100が、モーター92を正転駆動させると、一対の可動部94が一対のレール95に沿って搬送方向Y1の下流に向かって移動する。これにより、ガイドロッド93が搬送方向Y1の下流に向かって移動する。この結果、カバー部材76は、図13に実線で示す開放位置から、図13に二点鎖線で示す閉塞位置まで移動する。
【0077】
また、制御部100が、モーター92を逆転駆動させると、一対の可動部94が一対のレール95に沿って搬送方向Y1の上流に向かって移動する。これにより、ガイドロッド93が搬送方向Y1の上流に向かって移動する。このとき、保持部78内の不図示のぜんまいばね等のばねの弾性力により、回転軸781は巻取方向に付勢される。この結果、カバー部材76は、図13に二点鎖線で示す閉塞位置から、図13に実線で示す開放位置まで移動する。
【0078】
よって、第6実施例によれば、以下の効果が得られる。
(7)液体吐出装置11は、ロール体77を回転可能に保持する保持部78と、保持部78に保持されたロール体77から引き出されるカバー部材76の先端部を移動させる移動部91と、移動部91に対して駆動力を付与する駆動部の一例としてのモーター92と、を備える。モーター92は、移動部91に対して、カバー部材76の引出し及び巻取りのための駆動力を付与する。この構成によれば、モーター92が移動部91に対してカバー部材76の引出し及び巻取りのために移動させる駆動力を付与することで、カバー部材76の開閉を自動化できる。例えば、ユーザーが手動で幅広のカバー部材76を開閉する面倒な作業を無くすことができるうえ、手動の場合に起こりうる急激な力でカバー部材76が引き出されることを抑制できる。
【0079】
<第7実施例>
次に、図14を参照して、第7実施例について説明する。第7実施例は、カバー部材76を複数に分割した例である。
【0080】
図14に示すように、カバー部材76は、媒体Mの幅方向Xに分割されてもよい。分割数をNとすると、カバー部材76は、幅方向XにN個(但し、Nは2以上の自然数)に分割されている。図14に示す例では、N=3である。すなわち、カバー部材76は、幅方向Xに3つのカバー部材76A~76Cに分割されている。ただし、分割数は3分割に限定されず、必要な数のN分割に設定してよい。例えば、N分割は、2分割、4分割、5分割、6分割以上であってもよい。
【0081】
支持部70には、N分割されたカバー部材76A~76Cと同数であるN個のカバーユニット75A~75Cが設けられる。カバー部材76を3つに分割したこの例では、支持部70には、3つのカバーユニット75A~75Cが設けられる。3つのカバーユニット75A~75Cは、カバー部材76A~76Cをそれぞれ個別に引き出すこと、及び個別に巻き取ることが可能である。複数のカバーユニット75A~75Cの構成は、第1実施形態のカバーユニット75と基本的に同様である。すなわち、カバーユニット75Aは、第1カバー部材76Aが巻き取られたロール体77Aと、ロール体77Aを回転可能に保持する保持部78Aとを備える。また、カバーユニット75Bは、第2カバー部材76Bが巻き取られたロール体77Bと、ロール体77Bを回転可能に保持する保持部78Bとを備える。さらに、カバーユニット75Cは、第3カバー部材76Cが巻き取られたロール体77Cと、ロール体77Cを回転可能に保持する保持部78Cとを備える。各カバー部材76A~76Cは、先端部に固定された把手79A~79Cを有する。
【0082】
図14に示す例では、幅方向Xの中央に位置する第1カバー部材76Aの幅が一番広く、第1カバー部材76Aに対して幅方向Xの両側に配置された第2カバー部材76B及び第3カバー部材76Cの各幅寸法は、第1カバー部材76Aの幅寸法よりも狭く設定されている。
【0083】
例えば、第1カバー部材76Aは、最大幅の媒体Mの幅寸法に合わせて幅寸法が設定されてもよい。第1カバー部材76Aは、その幅中心線が支持部70上を搬送される媒体Mの幅中心線に一致するように幅方向Xの位置決めされてもよい。この場合、第1カバー部材76Aが引き出されたときに配置される領域は、媒体Mの搬送領域と重複する。つまり、媒体Mが最大幅サイズであってもその直下のほぼ全域に亘り第1カバー部材76Aを配置できる。
【0084】
インクが裏抜けし易い媒体Mの場合、第1カバー部材76Aを開放位置に配置し、かつ第2カバー部材76B及び第3カバー部材76Cを閉塞位置に配置する。印刷中は、キャリッジ61が走査方向Xに移動する。このとき、キャリッジ61の風圧により発生した気流(風)が液体受け溝71を通って媒体Mの裏面側に入り込むと、媒体Mがばたつく。印刷中に媒体Mがばたつく(揺れる)と、吐出部62のノズル62Nから吐出されたインク滴の着弾位置が目標位置からずれ、印刷精度が低下する。
【0085】
この種の媒体Mのばたつきを抑える方法として、印刷中に、第2カバー部材76B及び第3カバー部材76Cを閉塞位置に配置する。第1カバー部材76Aについては、閉塞位置でも開放位置でもどちらでもよく、インクが裏抜けし易い媒体Mの場合は第1カバー部材76Aを開放位置に配置し、インクが裏抜けし難い媒体Mの場合は第1カバー部材76Aを閉塞位置に配置する。
【0086】
印刷中は、キャリッジ61が走査方向Xに移動する。このとき、キャリッジ61の風圧により発生した気流(風)は、閉塞位置にある第2カバー部材76B及び第3カバー部材76Cに遮られて液体受け溝71に入り込むことが抑制される。このため、気流が媒体Mの裏面側に潜り込んで媒体Mをばたつかせることが抑制される。媒体Mのばたつきが抑制されることから、吐出部62のノズル62Nから吐出された液滴(インク滴)の着弾位置が目標からずれにくくなる。よって、媒体Mのばたつきに起因する印刷精度の低下を抑制できる。この結果、媒体Mに印刷品質の高い印刷を行うことができる。
【0087】
また、複数のカバー部材76A~76Cの材質を幅方向Xの位置に応じて変えてもよい。例えば、中央の第1カバー部材76Aは、目の詰まっていない材質(メッシュ等)で構成することで、第1カバー部材76Aが液体受け溝71を覆う状態にあっても、インクが媒体Mから裏抜けした際に液体受け溝71にインクが落ちるようにする。
【0088】
両側のカバー部材76B,76Cは、目の詰まった材質で構成してもよい。これにより、カバー部材76B,76Cを閉塞位置に配置すれば、キャリッジ61が走査方向Xに移動するときにキャリッジ61の風圧により発生した気流が液体受け溝71内を通って媒体Mの裏側に回り込むことに起因する媒体Mのばたつきを抑制可能である。これにより、媒体Mに印刷品質の高い印刷を行うことができる。
【0089】
よって、第7実施例によれば、以下の効果が得られる。
(8)カバー部材76は、媒体Mの幅方向Xに分割されている。この構成によれば、分割された複数のカバー部材76A~76Cのうち液体受け溝71を覆いたい領域に相当するものを選択してロール体77から引き出すことで、液体受け溝71の開口を部分的に覆うことができる。例えば、シリアル式の液体吐出装置11である場合、キャリッジ61が移動するときの風圧で発生した気流が液体受け溝71を通って媒体Mの裏側に回り込むことに起因する媒体Mのばたつきを抑制できる。この結果、媒体Mに印刷品質の高い印刷を行うことができる。
【0090】
<第8実施例>
次に、図15を参照して、第8実施例について説明する。第8実施例は、カバー部材76がヒーター86を備える例である。
【0091】
図15に示すように、カバー部材76は、ヒーター86を備える。ヒーター86は、図15に示す例では、搬送方向Y1に延びる線状の形状のものが、幅方向Xに間隔を空けて複数配置されている。なお、ヒーター86の形状は、任意の形状を選択してよい。ヒーター86は、例えば、カバー部材76の表面又は裏面に螺旋状に配線されたヒーター線により構成されてもよいし、クランク状の配線部が複数繰り返される配線形状のヒーター線により構成されてもよい。ヒーター線は、カバー部材76のうち媒体Mと対向する領域に均一に配置されてもよい。また、ヒーター86の密度を幅方向Xの中央部が両端部よりも密になるように場所に応じてヒーター86の配線密度を変化させてもよい。このようにヒーター86の配線密度を均一又は中央部を密にすることで、媒体Mに付着するインクを均一に乾燥する。
【0092】
制御部100は、印刷条件情報や印刷データに基づき乾燥し難い印刷条件であるか否かを判定する。制御部100は、乾燥し難い印刷条件であると判定した場合、ヒーター86を通電して印刷中の媒体Mを加熱してもよい。また、制御部100は、媒体Mの種類又は他の印刷条件情報に基づきヒーター86の加熱温度を制御してもよい。制御部100は、例えば、媒体M(布帛)が熱に弱い繊維である場合、ヒーター86の加熱温度を低くし、媒体Mが熱に強い繊維である場合、ヒーター86の加熱温度を高くしてもよい。ここで、印刷データに基づいて印刷デューティーを取得し、印刷デューティーに応じてヒーター86を制御してもよい。なお、印刷デューティーとは、媒体Mの単位面積当たりの吐出部62のインク吐出量を、最大値を100%として比率で表われる数値(%)である。
【0093】
また、制御部100は、カバー部材76のうちすべてのヒーター86を常に通電することで、媒体Mを加熱してもよい。一方、制御部100は、カバー部材76のうち幅方向Xに媒体Mの領域内に位置するヒーター86を選択的に通電することで、媒体Mを加熱してもよい。これにより、媒体Mの加熱に必要な領域のみヒーター86で加熱することで、加熱による効果的な乾燥と消費電力の低減とを両立できる。
【0094】
よって、第8実施例によれば、以下の効果が得られる。
(9)カバー部材76は、媒体Mを加熱するヒーター86を備える。この構成によれば、カバー部材76が閉塞位置にあるとき、媒体Mに対して吐出部62と反対側に配置されるカバー部材76に備えられたヒーター86の熱によって、媒体Mに吐出されたインク等の液体の乾燥を促進させることができる。
【0095】
<第9実施例>
次に、図16を参照して、第9実施例について説明する。第9実施例は、第7実施例で説明した分割タイプのカバー部材76A~76Cにヒーター86を設けた例を示す。図16に示すように、分割タイプのカバー部材76A~76Cには、ヒーター86が単位面積当たりの配線密度が均一になるように設けられている。図16に示す例では、ヒーター86が幅方向Xに略等間隔に配置されている。ヒーター86の配線形状は、螺旋状やジグザグ状であってもよい。図16に示す例では、カバー部材76は、幅方向Xに3つのカバー部材76A~76Cに分割されているが、第7実施例と同様にN分割は、2分割、4分割、5分割、6分割以上など必要な数に設定してもよい。
【0096】
分割されたカバー部材76A~76Cごとにヒーター86のON/OFFを切り替え可能に構成される。制御部100は、幅方向Xにおいて媒体Mと重なるヒーター86をONにすることで、媒体Mに着弾したインクの乾燥を行う。また、制御部100は、媒体Mと重ならないヒーター86をOFFにすることで、吐出部62のノズル面62Aに熱を当ててしまうことを抑制する。
【0097】
よって、第9実施例によれば、以下の効果が得られる。
(9)分割されたカバー部材76A~76Cは、媒体Mを加熱するヒーター86を備える。この構成によれば、吐出部62からインクが吐出された媒体Mの乾燥を促進させることができる。また、分割された複数のカバー部材76A,76B,76Cのうちから選択して引き出すことで、液体受け溝71の開口を部分的に覆うことができる。例えば、シリアル式の液体吐出装置11である場合、キャリッジ61が移動するときの風圧に起因する媒体Mのばたつきを抑制できる。
【0098】
なお、上記実施形態は以下に示す変更例のような形態に変更することもできる。さらに、上記実施形態および以下に示す変更例を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできるし、以下に示す変更例同士を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできる。
【0099】
図17に示すように、カバー部材76は、幅方向Xに引出し及び巻取りが可能に構成されてもよい。支持部70には幅方向Xの一方側にカバーユニット75が配置される。把手79を把持してカバー部材76をロール体77から幅方向Xに引き出すことで、液体受け溝71の開口を開放する図17に実線で示す開放位置から、液体受け溝71の開口を閉塞する図17に二点鎖線で示す閉塞位置に切り替えられる。把手79は閉塞位置において、被係止部80又は凹部72(図5図6を参照)に引っ掛けられる。なお、この構成において、押さえ部83を有する構成、清掃部85を有する構成、カバー部材76を開閉する駆動部の一例としてのモーター92を有する構成、カバー部材76を幅方向Xに複数に分割する構成、カバー部材76がヒーター86を有する構成を採用してもよい。さらに、これらの構成のうち少なくとも2つを組み合わせた構成を採用してもよい。
【0100】
図18に示すように、液体受け部73は、媒体Mを支持する支持部70とは別体の構成であってもよい。例えば、液体受け部73は、基台12を構成するフレームに対して着脱可能なトレイであってもよい。また、図18に示すように、ロール体77を保持する保持部78は、液体受け部73の外側に配置されてもよい。この場合、保持部78は、液体受け部73の着脱を妨げない。
【0101】
図14図16に示される各実施例において、カバー部材76A~76Cは異なる摩擦係数で構成されてもよい。カバー部材76A~76Cが配置される場所により摩擦係数を変えることで、搬送精度やテンションばらつきを良化する。例えば、幅方向Xの中央に位置するカバー部材76Aの媒体Mに対する摩擦係数を、幅方向Xにカバー部材76Aを挟む両側のカバー部材76B,76Cの媒体Mに対する摩擦係数に対して、大きくするか、あるいは小さくする。両側のカバー部材76B,76Cの摩擦係数は、同じであってもよいし異なってもよい。
【0102】
・ロール体77及び保持部78を、液体受け溝71に対して搬送方向Y1の下流側に配置してもよい。この場合、カバー部材76は、搬送方向Y1の上流に向かって引き出され、搬送方向Y1の下流に向かって移動するときに巻き取られる。
【0103】
図14図16に示される各実施例において、複数のカバーユニット75A~75Cの各々が、駆動部の一例としてのモーター92を備えてもよい。各カバーユニット75A~75Cは、図11図12に示すように、モーター92の駆動力を回転軸781に付与する構成でもよい。また、各カバーユニット75A~75Cは、図13に示すように、モーター92の駆動力を移動部91に付与する構成でもよい。
【0104】
図10に示す清掃部85は、ロール体77の外周面以外の部分でカバー部材76に接触することで、カバー部材76を清掃する構成でもよい。清掃部85は、例えば、引出口784から引き出された部分のカバー部材76に引出口784の近傍で接触する構成でもよい。また、清掃部85は、押さえ部の機能を備えなくてもよい。この場合、液体吐出装置11は、清掃部85と押さえ部83とを別々に備えてもよい。
【0105】
・カバーユニット75の保持部78がラチェット機構を内蔵してもよい。ラチェット機構は、カバー部材76の引き出し動作を許容し、ぜんまいばね等のばねによるカバー部材76の巻取動作を規制する。この構成によれば、カバー部材76をその引き出し方向に任意の位置で止めることができる。例えば、図5図6に示すカバーユニット75と同様に、カバー部材76を液体受け溝71の開口の一部を閉塞する閉塞位置に配置でき、しかも凹部72や被係止部80を設ける必要がない。
【0106】
・駆動部は、モーター92に替えて、シリンダでもよい。シリンダは、例えば、電動シリンダ、エアシリンダ、又は油圧シリンダでもよい。
・ぜんまいばね等のばねによりカバー部材76をロール体77の巻取方向に付勢したが、手動で巻き取ってもよい。例えば、保持部78の側部に回転式のハンドルを設ける。ユーザーがハンドルを回転操作することで、カバー部材76をロール体77に巻き取る構成でもよい。
【0107】
・媒体Mは、布や不織布などの布帛に限定されず、用紙、合成樹脂製のフィルムや、ラミネート媒体などでもよい。
・液体吐出装置11は、捺染装置に限定されず、用紙に印刷するインクジェット式の印刷装置(プリンター)でもよい。例えば、紙繊維の隙間が比較的大きい紙や、インクの浸透性の高い紙に印刷する場合、紙に多量のインクを吐出する印刷を行う場合などにおいて、液体受け溝71を有する支持部70を備えるガタープラテンタイプの印刷装置を構成してもよい。そして、この種の印刷装置において、液体受け溝71の開口の一部又は全部を覆う目的で、巻取式のカバーユニット75を採用してもよい。
【0108】
以下、前記実施形態及び変更例から把握される技術思想を効果と共に記載する。
(A)液体吐出装置は、媒体に液体を吐出する吐出部と、前記吐出部と対向する液体受け溝を有する液体受け部と、可撓性を有するカバー部材が巻かれたロール体と、を備え、前記カバー部材は、前記ロール体から引き出されることで、前記液体受け溝の開口を閉塞する閉塞位置と、前記ロール体に巻き取られることで、前記液体受け溝の開口を開放する開放位置とに変位可能である。
【0109】
開放位置にあるときのカバー部材が自重で垂れ下がる構成の場合、カバー部材の垂れ下がった下端部に折れ等の変形癖が発生し易い。この構成によれば、開放位置にあるときのカバー部材はロール状に巻き取られるので、カバー部材が自重で垂れ下がる構成に比べて、カバー部材に折れ等の変形癖が発生することを抑制できる。
【0110】
(B)上記(A)に記載の液体吐出装置は、前記ロール体の外周面を押圧する押さえ部を備えてもよい。
この構成によれば、押さえ部によって、急激な力でカバー部材が引き出されることを抑制できる。
【0111】
(C)上記(A)又は(B)に記載の液体吐出装置は、前記ロール体の外周面に接触することで前記カバー部材を清掃する清掃部を備えてもよい。
この構成によれば、清掃部によりカバー部材を清掃することができる。カバー部材が液体で汚れた状態で媒体がカバー部材に支持される場合に起こりうる媒体への液体の転写による汚れに起因する印刷ミスを低減できる。
【0112】
(D)上記(A)~(C)のいずれか一つに記載の上記液体吐出装置は、前記ロール体を回転可能に保持する保持部と、前記保持部に保持された前記ロール体から引き出される前記カバー部材の先端部を移動させる移動部と、前記保持部の回転軸又は前記移動部に対して前記カバー部材の引出し及び巻取りのための駆動力を付与する駆動部と、を備えてもよい。
【0113】
この構成によれば、駆動部が回転軸に対してカバー部材の引出し及び巻取りのための回転駆動力(トルク)を付与すること、あるいは、移動部に対してカバー部材の引出し及び巻取りのために移動させる駆動力を付与することで、カバー部材の開閉を自動化できる。例えば、ユーザーが手動で幅広のカバー部材を開閉する面倒な作業を無くすことができるうえ、手動の場合に起こりうる急激な力でカバー部材が引き出されることを抑制できる。
【0114】
(E)上記(A)~(D)のいずれか一つに記載の液体吐出装置において、前記カバー部材は、前記媒体の幅方向に分割されていてもよい。
この構成によれば、分割された複数のカバー部材のうち液体受け溝を覆いたい領域に相当するものを選択してロール体から引き出すことで、液体受け溝の開口を部分的に覆うことができる。例えば、シリアル式の液体吐出装置である場合、キャリッジが移動するときの風圧で発生した気流が液体受け溝を通って媒体の裏側に回り込むことに起因する媒体のばたつきを抑制できる。この結果、媒体に印刷品質の高い印刷を行うことができる。
【0115】
(F)上記(A)~(E)のいずれか一つに記載の液体吐出装置において、前記カバー部材は、前記媒体を加熱するヒーターを備えてもよい。
この構成によれば、カバー部材が閉塞位置にあるとき、媒体に対して吐出部と反対側に配置されるカバー部材に備えられたヒーターの熱によって、媒体に吐出された液体の乾燥を促進させることができる。
【0116】
(G)上記(A)~(F)のいずれか一つに記載の液体吐出装置は、前記カバー部材の表面状態を検出可能な検出部と、報知部と、前記検出部の検出結果に基づいて、前記報知部に前記カバー部材の表面状態を報知させる制御部と、を備えてもよい。
【0117】
この構成によれば、巻取式のカバー部材で発生し得る課題として、カバー部材に液体が付着して汚れたまま巻き取ることで汚れが溜まっていくことが挙げられる。カバー部材の表面状態を検出する検出部を設けることで、検出の結果、汚れが溜まっていたら報知部にその旨を報知させることで、ユーザーにメンテナンス(清掃又は交換など)を促すことができる。
【符号の説明】
【0118】
11…液体吐出装置、12…支持台、13…ハウジング、14…脚部、16…メンテナンス装置、17…キャップ、20…搬送装置、21…給送部、22…搬送部、23…巻取部、31…ロール体支持軸、32…第1ロール、33…給送モーター、34…案内面、41…搬送ローラー対、42…駆動ローラー、43…従動ローラー、44…搬送モーター、45…ガイドローラー、51…巻取軸、52…第2ロール、53…巻取モーター、54…テンションバー、55…アーム、60…印刷部、61…キャリッジ、62…吐出部、62A…ノズル面、62N…ノズル、63…ガイド軸、64…動力伝達機構、65…プーリー、66…タイミングベルト、67…キャリッジモーター、68…検出部、70…支持部、70A…支持面、71…液体受け溝、73…液体受け部、75,75A~75C…カバーユニット、76,76A~76C…カバー部材、77,77A~77C…ロール体、78,78A~78C…保持部、781…回転軸、782…ガイド部、783…延設部、784…引出口、79,79A~79C…把手、80…被係止部、81…覆い部、82…延出部、83…押さえ部、84…弾性部材、85…押さえ部の一例としての清掃部、85A…第1案内面、85B…第2案内面、86…ヒーター、90…駆動ユニット、91…移動部、92…駆動部の一例としてのモーター、92A…出力軸、93…ガイドロッド、94…可動部、95…レール、96…動力伝達機構、97…プーリー、98…タイミングベルト、100…制御部、110…駆動ユニット、M…媒体、Li…廃液、X…幅方向、Y…搬送方向、Y1…印刷位置における搬送方向、D1…搬送方向、Z…鉛直方向。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9
図10
図11
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