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  • 特開-不織布ならびにこれを含む包装材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090462
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】不織布ならびにこれを含む包装材料
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/16 20060101AFI20240627BHJP
   D04H 3/14 20120101ALI20240627BHJP
   D04H 3/147 20120101ALI20240627BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
D04H3/16
D04H3/14
D04H3/147
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206395
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】生野 貴良
(72)【発明者】
【氏名】池尻 祐希
(72)【発明者】
【氏名】竹光 洋樹
【テーマコード(参考)】
3E086
4L047
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA19
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA27
3E086CA35
4L047AA13
4L047AA19
4L047AA21
4L047AA27
4L047BA08
4L047BB06
4L047BB09
4L047CA14
4L047CA19
4L047CC14
(57)【要約】
【課題】 リントが出にくく、手切れ性に優れる不織布を提供すること。
【解決手段】 熱可塑性樹脂を主成分とする繊維で構成されてなる不織布であって、不織布の断面を厚さ方向に均等に3分割した際の一方の表面側の部分の断面空隙率をr、中央の部分の断面空隙率をr、他方の表面側の部分の断面空隙率をrとしたとき、以下の式(1)~(4)を満たす、不織布。
0.03≦r≦0.10 ・・・(1)
<r≦0.30 ・・・(2)
0.30≦(r/r)<1.00 ・・・(3)
0.50≦(r/r)<1.00 ・・・(4)
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を主成分とする繊維で構成されてなる不織布であって、不織布の断面を厚さ方向に均等に3分割した際の一方の表面側の部分の断面空隙率をr、中央の部分の断面空隙率をr、他方の表面側の部分の断面空隙率をrとしたとき、以下の式(1)~(4)を満たす、不織布。
0.03≦r≦0.10 ・・・(1)
<r≦0.30 ・・・(2)
0.30≦(r/r)<1.00 ・・・(3)
0.50≦(r/r)<1.00 ・・・(4)
【請求項2】
見掛け密度が0.30g/cm以上0.90g/cm以下である、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記不織布の厚みが0.05mm以上0.15mm以下であり、かつ、前記不織布の目付が20g/m以上100g/m以下である、請求項1または2に記載の不織布。
【請求項4】
請求項1または2に記載の不織布を含む、包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リントが出にくく、1方向への手切れ性に優れる不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装材料は、医療用途、食品用途、衣料用途を中心に、幅広い用途で使用されている。そして、いずれの用途の包装材料にも、一般的には、主としてフィルム、抄紙基材、不織布が使用されている。これらの包装材料には、リント(糸くず)が出にくいことはもちろん、さらに、梱包しているときは破れにくく、一方で開梱する際には手でも破れるような引裂特性(手切れ性)を有することが求められる。
【0003】
このような包装材料として、例えば、特許文献1においては、鞘部の樹脂の融点が芯部の樹脂の融点よりも低い鞘芯構造糸を表層に配した合成樹脂繊維の不織布からなる滅菌用包装材料が提案されている。また、特許文献2においては、表面粗さ係数Raが特定の範囲である、連続長繊維不織布で構成される滅菌用包装材料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-206351号公報
【特許文献2】特開2019-172348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるような滅菌包材用包装材料は、鞘部の樹脂の融点が芯部の樹脂の融点よりも低い鞘芯構造糸を表層に配した合成繊維の不織布からなることで、一定の耐摩耗性を得ることができる。しかしながら、不織布の厚さ方向中央は熱による十分な融着がなされていないため、手切れ性は悪く、引き裂いた際に内部よりリントが発生するといった課題がある。また、特許文献2に開示されるような滅菌包材用不織布は、表面粗さRa値を特定の範囲とすることでピール特性の改善を試みたものである。しかし、当然のことながら、表面粗さRa値を特定の範囲とするだけでは滅菌包材に用いることはできず、実際には、一定の滅菌状態を維持するために、少なくとも不織布層を3層設ける構成とする必要がある。そうなると、中間に挿入される不織布層の特性上、十分に熱による融着をすることができないため、手切れ性に優れないという課題がある。
【0006】
そこで本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、リントが出にくく、手切れ性に優れる不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく、鋭意検討を重ねた結果、不織布の断面空隙率を一定の範囲とすることで、リントが出にくく、手切れ性に優れる不織布とできるという知見を得た。
【0008】
本発明は、これら知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
【0009】
[1] 熱可塑性樹脂を主成分とする繊維で構成されてなる不織布であって、不織布の断面を厚さ方向に均等に3分割した際の一方の表面側の部分の断面空隙率をr、中央の部分の断面空隙率をr、他方の表面側の部分の断面空隙率をrとしたとき、以下の式(1)~(4)を満たす、不織布
0.03≦r≦0.10 ・・・(1)
<r≦0.30 ・・・(2)
0.30≦(r/r)<1.00 ・・・(3)
0.50≦(r/r)<1.00 ・・・(4)。
【0010】
[2] 見掛け密度が0.30g/cm以上0.90g/cm以下である、前記[1]に記載の不織布。
【0011】
[3] 前記不織布の厚みが0.05mm以上0.15mm以下であり、かつ、前記不織布の目付が20g/m以上100g/m以下である、前記[1]または[2]に記載の不織布。
【0012】
[4] 前記[1]~[3]のいずれかに記載の不織布を含む、包装材料。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リントが出にくく、かつ、手切れ性に優れる不織布が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の不織布に係る断面空隙率の測定方法を説明する断面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の不織布は、熱可塑性樹脂を主成分とする繊維で構成されてなる不織布であって、不織布の断面を厚さ方向に均等に3分割した際の一方の表面側の部分の断面空隙率をr、中央の部分の断面空隙率をr、他方の表面側の部分の断面空隙率をrとしたとき、以下の式(1)~(4)を満たす
0.03≦r≦0.10 ・・・(1)
<r≦0.30 ・・・(2)
0.30≦(r/r)<1.00 ・・・(3)
0.50≦(r/r)<1.00 ・・・(4)
以下にその構成要素について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではなく、そして、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0016】
[熱可塑性樹脂を主成分とする繊維]
まず、本発明の不織布は、熱可塑性樹脂を主成分とする繊維で構成されてなる。ここで、本発明において「熱可塑性樹脂を主成分とする」とは、繊維全体の質量に対して、当該熱可塑性樹脂の質量が50質量%より多いことを指す。この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、あるいは、これらの混合物や共重合体等を挙げることができる。なかでも、ポリエステルが機械的強度や耐熱性、耐水性、耐薬品性等の耐久性に優れることから好ましく用いられる。
【0017】
ポリエステルは、酸成分とジオール成分とをモノマーとする高分子重合体である。本発明において、酸成分としては、テレフタル酸(オルト体)、イソフタル酸およびテレフタル酸等の芳香族カルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を用いることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール等を用いることができる。
【0018】
前記のポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等が挙げられる。また、後述する高融点重合体として用いられるポリエステルとしては、より融点が高く耐熱性に優れ、かつ、剛性にも優れた、ポリエチレンテレフタレート(PET)が最も好ましく用いられる。
【0019】
これらのポリエステルには、本発明の効果を損なわない範囲で、結晶核剤や艶消し剤、滑剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、金属酸化物、脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミド、そして、親水剤等の添加剤を添加することができる。なかでも、酸化チタン等の金属酸化物は、繊維の表面摩擦を低減し繊維同士の融着を防ぐことにより紡糸性を向上し、また不織布の熱ロールによる融着成形の際、熱伝導性を増すことにより不織布の融着性を向上させる効果がある。また、エチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪族ビスアミドおよび/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドは、熱ロールと不織布ウェブとの間の離型性を高め、搬送性を向上させる効果がある。
【0020】
本発明に係る繊維としては、高融点重合体の周りに当該高融点重合体の融点よりも低い融点を有する低融点重合体を配した複合繊維であることが好ましい。このような形態の複合繊維とすることにより、繊維が不織布内において強固に融着されやすくなり、その結果、不織布の表面の毛羽立ちを抑え、容易に平滑な表面を得ることができる。さらに、例えば、衣料向けの包装材料として用いた場合には、不織布を構成する繊維同士が、互いに強固に融着されることに加え、融点の異なる繊維同士を混繊させたものに比べて不織布における繊維同士の融着点の数も多くすることができるため、機械的強度をも向上することができ、かつ、リントの発生を抑えることができる。
【0021】
上記の高融点重合体の融点と低融点重合体の融点との間の差(以降、単に融点の差と略記することがある)としては、10℃以上140℃以下が好ましい。換言すれば、高融点重合体の融点よりも、10℃以上140℃以下の範囲で低い融点を有する低融点重合体であることが好ましい。融点の差を10℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上とすることで、各繊維間の融着性を高めることができる。また、140℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下とすることで、繊維のフィルム化を防ぐことができる。
【0022】
本発明における高融点重合体の融点は、160℃以上320℃以下の範囲であることが好ましい。好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上とすることにより、例えば、ティーバッグとして用いた場合において、熱が加わるような加工を行ったとしてもその形態が維持できるような、形態安定性に優れた不織布とすることができる。また、320℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下とすることにより、一般的なヒートシーラーにより加工することが可能な包装材料とすることができる。
【0023】
一方、上記複合繊維における低融点重合体の融点は、前記の融点の差を確保した上で、150℃以上310℃以下の範囲であることが好ましい。150℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは170℃以上とすることにより、不織布を粉末包装材料として使用する際、熱が加わるような加工を行ったとしてもその形態が維持できるような、形態安定性に優れた包装材料とすることができる。また、310℃以下、より好ましくは290℃以下、さらに好ましくは270℃以下とすることにより、繊維のフィルム化を抑制し、適度な通気性を有する包装材料とすることができる。
【0024】
なお、本発明において、熱可塑性樹脂の融点は、示差走査型熱量計(例えば、パーキンエルマー社製「DSC-2」型)を用い、昇温速度20℃/分、測定温度範囲30℃から350℃の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を当該熱可塑性樹脂の融点とする。また、示差走査型熱量計において融解吸熱曲線が極値を示さない樹脂については、ホットプレート上で加熱し、顕微鏡観察により樹脂が溶融した温度を融点とする。
【0025】
熱可塑性樹脂がポリエステルの場合、高融点重合体と低融点重合体の組み合わせ(以下、高融点重合体/低融点重合体の順に記載することがある)としては、例えば、PET/PBT、PET/PTT、PET/ポリ乳酸、そして、PET/共重合PET等の組み合わせを挙げることができる。これらの中でも、紡糸性に優れることからPET/共重合PETの組み合わせが好ましく用いられる。また、共重合PETの共重合成分としては、特に紡糸性に優れることから、イソフタル酸共重合PETが好ましく用いられる。
【0026】
複合繊維の複合形態については、例えば、同心芯鞘型、偏心芯鞘型および海島型等が挙げられ、なかでも、繊維同士を均一かつ強固に融着させることができることから同心芯鞘型のものが好ましい。さらに、その複合繊維の断面形状としては、円形断面、扁平断面、多角形断面、多葉断面および中空断面等の形状が挙げられる。なかでも、複合繊維の断面形状としては円形断面の形状のものを用いることが好ましい態様である。
【0027】
また、熱可塑性樹脂を主成分とする繊維が前記の複合繊維である場合における、高融点重合体と低融点重合体との含有比率は、質量比で90:10~60:40の範囲であることが好ましく、85:15~70:30の範囲がより好ましい態様である。高融点重合体を60質量%以上90質量%以下とすることにより、不織布の耐久性を優れたものとすることができる。一方、低融点重合体を10質量%以上40質量%以下とすることにより、不織布を構成する繊維同士が強固に融着され、機械的強度に優れた不織布とすることができる。
【0028】
[不織布]
本発明の不織布は、前記の繊維で構成されてなる不織布である。そして、この不織布の断面を厚さ方向に均等に3分割した際の一方の表面側の部分の断面空隙率をr、中央の部分の断面空隙率をr、他方の表面側の部分の断面空隙率をrとしたとき、以下の式(1)~(4)を満たす
0.03≦r≦0.10 ・・・(1)
<r≦0.30 ・・・(2)
0.30≦(r/r)<1.00 ・・・(3)
0.50≦(r/r)<1.00 ・・・(4)
この要件を満たす不織布であることで、機械的強度、具体的には引裂強度に優れ、手切れ性に優れた不織布とすることができる。
【0029】
特に、式(1)の下限について、0.03以上、好ましくは0.04以上であることで、表面が高密度で毛羽立ちの少ない不織布とすることができる。また、式(2)の上限について0.30以下、より好ましくは0.25以下とすることで包装材料として好適なリントのでない不織布とすることができる。そして、式(3)の上限について1.00以下、好ましくは、0.90以下、より好ましくは0.80以下とすることで、通気性を有した不織布を得ることができる。一方、式(4)の上限について、1.00未満、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.80以下であることで、一方の表面はヒートシール等の後加工に好適な不織布とすることができる。
【0030】
なお、本発明において、不織布の各部分の断面空隙率r、r、r(%)は、以下の方法によって測定・算出された値のことを指す。
(i)不織布から断面が観察できる小片サンプルを10個採取する。
(ii)採取した小片サンプルの断面を、走査型電子顕微鏡(SEM、例えば、株式会社キーエンス製「VHX-D500」など)を用いて、1000倍で写真を撮影する。
(iii)各小片サンプルの撮影した写真を、画像解析ソフト(例えば、「ImageJ」など)を用いるなどして図1に示すように不織布の断面について厚さ方向に均等に3分割し、一方の表面側から、断面領域1、断面領域2、断面領域3とする。。
(iv)(iii)で3分割した写真をグレースケール画像(8bit画像)とし、画素値の0~127が黒、128~255が白となるように閾値を設定し、二値化する。
(v)画像解析ソフト(例えば、「ImageJ」など)を用いて、白色の領域と黒色の領域の面積を求め、各断面領域全体(各断面領域における白色領域と黒色領域との合計面積)に対する黒色領域の面積の割合を、その断面領域における断面空隙率とする。つまり、断面領域1における断面空隙率が、前記の一方の表面側の部分の断面空隙率r(%)であり、断面領域2における断面空隙率が、前記の中央の部分の断面空隙率r(%)であり、断面領域3における断面空隙率が前記の他方の表面側の部分の断面空隙率r(%)とする。
(vi)10個の小片サンプルについて、同様に各部分の断面空隙率r、r、r(%)をそれぞれ算出し、それぞれについて、算術平均値(%)を算出し、小数点以下第1位で四捨五入する。
(vii)(vi)で得られたr、rについて、r>rとなった場合には、(vi)までで求められているr(%)を前記の一方の表面側の部分の断面空隙率r(%)とし、逆に、(vi)までで求められているr(%)を前記の他方の表面側の部分の断面空隙率r(%)とする。
【0031】
この断面空隙率(%)は、不織布を構成する繊維の形態を前記のような複合繊維とするなどしたり、繊維ウェブを融着させる際に使用するロールの温度や圧力の条件、その際の繊維ウェブにかかる張力などを後述するような範囲としたりすることによって、調整することができる。
【0032】
本発明に係る繊維の平均単繊維直径は、10.0μm以上26.0μm以下の範囲であることが好ましい。平均単繊維直径の範囲について、その下限が好ましくは10.0μm以上、より好ましくは10.5μm以上、さらに好ましくは11.0μm以上であることで、機械的強度に優れた不織布とすることができる。一方、前記の範囲について、その上限が好ましくは26.0μm以下、より好ましくは25.0μm以下、さらに好ましくは24.0μm以下とすることで不織布の均一性を向上させ、緻密な表面を有する包装材料用不織布とすることができ、例えばティーバッグとして使用した場合には、抽出ムラが少ない不織布とすることができる。
【0033】
本発明の不織布は、その厚みが0.05mm以上0.15mm以下であり、かつ、その目付が20g/m以上100g/m以下であることが好ましい。このようにすることで、通気性、強度物性に優れ、かつ一方向に対する手切れ性に優れる紙のような不織布となる。
【0034】
まず、本発明の不織布の厚みは、0.05mm以上0.15mm以下であることが好ましい。不織布の厚みの範囲について、その下限が好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.06mm以上であることで、フィルム化していない、紙のような不織布となる。一方、前記の範囲について、その上限が好ましくは0.15mm以下、より好ましくは0.14mm以下であることで、不織布の断面が緻密に融着された、強度物性に優れる不織布となる。
【0035】
なお、本発明において、不織布の厚みは、以下の方法によって測定、算出される値のことを指すものとする。
(i)直径10mmの加圧子を使用し、荷重10kPaで不織布の幅方向等間隔に1mあたり10点の厚さを0.01mm単位で測定する。
(ii)上記10点の平均値の小数点以下第三位を四捨五入し、不織布の厚み(mm)とし、以下の式で算出する。
【0036】
そして、本発明の不織布の目付は、20g/m以上100g/m以下であることが好ましい。不織布の目付の範囲について、その下限が好ましくは20g/m以上、より好ましくは25g/m以上、さらに好ましくは25g/m以上であることで、機械的強度に優れた包装材料用不織布とすることができる。一方、不織布の目付の範囲について、その上限が好ましくは100g/m以下、より好ましくは95g/m以下、さらに好ましくは90g/m以下であることで、繊維のフィルム化を抑制し、包装材料として最低限の通気性を有する、包装材料に好適な不織布とすることができる。
【0037】
なお、本発明において、不織布の目付は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量」に準拠して、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(i)25cm×25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3枚採取する。
(ii)標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量る。
(iii)その平均値を1m当たりの質量(g/m)で表し、小数点第1位で四捨五入する。
【0038】
本発明の不織布の見掛け密度は、0.30g/cm3以上0.90g/cm3以下であることが好ましい。不織布の見掛け密度の範囲について、その下限が好ましくは0.30g/cm3以上、より好ましくは0.35g/cm3以上であることで不織布の表面がより平滑なものとなり、機械的強度をより高めることができる。一方、不織布の見掛け密度の範囲について、その上限が好ましくは0.90g/cm3以下、より好ましくは0.75g/cm3以下であることで、不織布のフィルム化を抑制し、包装材料として最低限の通気性を有する、包装材料に好適な不織布を得ることができる。
【0039】
なお、本発明において不織布の見掛け密度は、以下の式によって求められる値(g/cm3)を小数点以下第3位で四捨五入して得られる値である。
【0040】
見掛け密度(g/cm3)=目付(g/m2)/厚み(mm)/1000
なお、上記の式の「目付(g/m)」、「厚み(mm)」は、前記の方法によって求められた不織布の目付、厚みの値を用いることとする。
【0041】
[不織布の製造方法]
本発明の不織布は、下記(a)~(e)の工程を順次施すことによって製造されることが好ましい。
(a)熱可塑性樹脂を紡糸口金から溶融押出し、紡出された該熱可塑性樹脂をエジェクターにより牽引、延伸して繊維を形成する工程。
(b)開繊板により該繊維の配列を規制し、移動するネットコンベアー上に堆積させ、不織ウェブを形成する工程。
(c)得られた不織ウェブを仮融着して、仮融着シートを形成する工程。
(d)得られた仮融着シートを予熱した後に、該仮融着シートを融着する工程。
以下に上記各工程について、さらに詳細を説明する。
【0042】
(a)熱可塑性樹脂を紡出する工程
まず、この工程では、前記の熱可塑性樹脂を紡糸口金から溶融押出する。特に、熱可塑性樹脂を主成分とする繊維として、高融点重合体の周りに当該高融点重合体の融点よりも低い融点を有する低融点重合体を配した複合繊維を用いる場合には、高融点重合体と、低融点重合体を、それぞれ融点以上、(融点+70℃)以下で溶融し、高融点重合体の周りに、その高融点重合体の融点に対して、10℃以上140℃以下低い融点を有する低融点重合体を配した複合繊維として、口金温度が融点以上、(融点+70℃)以下の紡糸口金で、その吐出孔から紡出することが好ましい。
【0043】
また、前記の紡糸口金の吐出孔の形状は、前記の繊維の断面形状に合わせ、円形、楕円形、多角形、多葉形、あるいは、これらの組み合わせの形状が挙げられる。なかでも、円形、楕円形の断面形状であることがより好ましい。例えば、円形の断面形状のものを用いたときには、効率的に繊維同士の接着点を得られ、熱圧着により繊維同士を強固に接着させることができる。また、楕円形の断面形状のものを用いたときには、見掛け密度をより向上させ、手切れ性を向上させることができる。
【0044】
そして、前記のように溶融押出し、紡出された該熱可塑性樹脂を、エジェクターにより牽引、延伸して繊維を形成する。この際、紡糸速度は、3000m/分以上6000m/分以下で牽引することが好ましい。
【0045】
(b)繊維ウェブを形成する工程
続いて、工程(a)において形成された繊維については、開繊板により該繊維の配列を規制する。具体的には、エジェクターにて吸引された繊維をエジェクターの下部に設けられたスリット状を有する開繊板から噴射させることが好ましい。
【0046】
そして、その繊維を移動するネットコンベアー上に堆積させることで繊維ウェブを形成することが好ましい。
【0047】
(c)仮融着シートを形成する工程
上記で得られた不織ウェブについて、本工程では、後続の予熱、融着する工程に先立ち、この不織ウェブを仮融着して、仮融着シートを形成する。具体的には、上下一対の加熱されたフラットロールにより融着させる方法が好ましく用いられる。上下一対の加熱されたフラットロールによる仮融着は、不織布の強度を向上させる点から最も好ましいものである。この仮融着する工程で得られる仮融着シートは、表面が毛羽立ちを有し、断面についても、容易に層間剥離するようなシートであり、この仮融着シートの状態を経て、予熱、融着させることで、初めて、断面空隙率を任意の値とした不織布を得ることができるようになるのである。
【0048】
これらの方法で用いられる「フラットロール」とは、ロールの表面に凹凸のない金属製ロールや弾性ロールのことであり、さらに、上下一対のフラットロールとは、金属製ロールと金属製ロールとを対にしたもの、あるいは、金属製ロールと弾性ロールを対にしたものなどのことである。ここで、弾性ロールとは、金属製ロールと比較して、弾性を有する材質からなるロールのことである。弾性ロールとしては、ペーパー製、コットン製、アラミドペーパー製などのいわゆるペーパーロール、あるいは、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂および硬質ゴム等や、これらの混合物からなる樹脂製ロールなどが挙げられる。
【0049】
この仮融着シートを形成する工程において、不織ウェブを加熱する温度、例えば、上下一対の加熱されたフラットロールを用いる場合の当該フラットロールの表面温度は、不織ウェブを構成する繊維の表面に存在する最も融点の低い熱可塑性樹脂の融点に対して60℃以上120℃以下低いことが好ましい。前記の表面温度を、好ましくは不織ウェブを構成する繊維の表面に存在する最も融点の低い熱可塑性樹脂の融点に対して60℃以上低く、より好ましくは70℃以上低くすることで、仮融着シートの強度を高めることができ、工程通過性に優れる不織布を得ることができる。一方、前記の表面温度を、好ましくは前記の融点に対して120℃以下低く、より好ましくは110℃以下低くすることによって、繊維の結晶化を最低限に留め、後述する融着工程において、より高い融着性を有する仮融着シートを得ることができる。
【0050】
また、例えば、上下一対の加熱されたフラットロールにより融着させる場合において、この一対のフラットロールの線圧は290N/cm以上890N/cm以下であることが好ましい。この一対のフラットロールの線圧を、好ましくは290N/cm以上、より好ましくは390N/cm以上とすることで、シートを搬送するうえで、十分な機械的強度を有する不織布を得ることができる。一方、前記の一対のフラットロールの線圧を890N/cm以下、より好ましくは790N/cm以下とすることで、過度の融着を防ぐことができる。
【0051】
(d)仮融着シートを融着する工程
さらに、(c)で得られた仮融着シートを予熱する。
【0052】
この予熱は、上下一対の加熱されたフラットロールにより予熱させる方法、あるいは、加熱された気体を仮融着シートに対して吹き付ける方法などが好ましい。この加熱された気体としては、加熱された窒素などの不活性ガス、加熱された空気、あるいは、スチームが挙げられる。特に、加熱された気体を仮融着シートに対して吹き付ける方法は、仮融着シート内部への予熱に優れ、仮融着シートを加圧しない方法であることから、繊維の結晶化を最低限に留めることができる。そのため、繊維の非晶領域を最大限に保持することができ、融着性を向上させる上で最も好ましいものである。
【0053】
例えば、加熱された気体を仮融着シートに対して吹き付ける方法の場合、この気体の温度は、仮融着シートを構成する繊維の表面に存在する最も融点の低い熱可塑性樹脂の融点に対して40℃以上130℃以下低いことが好ましい。前記の気体の温度を、好ましくは仮融着シートを構成する繊維の表面に存在する最も融点の低い熱可塑性樹脂の融点に対して40℃以上低く、より好ましくは50℃以上低くすることで、仮融着シート内部まで予熱し、後の融着工程で不織布断面をより緻密なものとすることができ、手切れ性に優れる不織布とすることができる。一方、前記の気体の温度を、前記の融点に対して130℃以下低く、より好ましくは110℃以下低くすることによって、繊維の結晶化を緩和させ、後の融着工程で見掛け密度を適度な値に調整しやすくなり、ヒートシール性に優れる不織布を得ることができる。
【0054】
加熱された気体を吹き付ける方法としては、例えば、パンチングメタル状のロールに仮融着シートを抱かせ、パンチングメタルを介して均一に加熱された気体を吹き付ける方法などが用いられる。
【0055】
加熱された気体の風速は8m/秒以上20m/秒以下とすることが好ましい。前記の加熱された気体の風速を好ましくは8m/秒以上、好ましくは10m/秒以上、より好ましくは12m/秒以上とすることで、仮融着シート内部まで十分な予熱がされ、融着工程で手切れ性の良い不織布を得ることができる。一方、前記の加熱された気体の風速を20m/秒以下、好ましくは18m/秒以下、より好ましくは16m/秒以下とすることでパンチングメタルでの整流化が可能となり、仮融着シートの予熱ムラを防ぐことができ、後の融着工程で不織布幅方向の融着差を減少させることができる。
【0056】
一方で、上下一対の加熱されたフラットロールによる予熱は、仮融着シートに均一な熱を与えることができ、不織布表面の融着性を向上させる上で最も優れた予熱方法である。この方法で用いられる「フラットロール」は、前記の(c)の工程で用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0057】
この仮融着シートを予熱する工程において、仮融着シートを加熱する温度、例えば、上下一対の加熱されたフラットロールを用いる場合の当該フラットロールの表面温度は、仮融着シートを構成する繊維の表面に存在する最も融点の低い熱可塑性樹脂の融点に対して80℃以上120℃以下低いことが好ましい。前記の表面温度を、好ましくは仮融着シートを構成する繊維の表面に存在する最も融点の低い熱可塑性樹脂の融点に対して80℃以上低く、より好ましくは90℃以上低くすることで、仮融着シートの過度な融着を防ぎ予熱することができ、、後の融着工程で不織布をより緻密なものとすることができる。一方、前記の表面温度を、好ましくは前記の融点に対して120℃以下低く、より好ましくは110℃以下低くすることによって、仮融着シート表面を十分に予熱し、後の融着工程でリントの発生がない不織布を得ることができる。
【0058】
また、例えば、上下一対の加熱されたフラットロールにより予熱する場合において、この一対のフラットロールの線圧は10N/cm以上50N/cm以下であることが好ましい。この一対のフラットロールの線圧を、好ましくは10N/cm以上、より好ましくは15N/cm以上とすることで、仮融着シート表面が十分に予熱した仮融着シート得ることができる。一方、前記の一対のフラットロールの線圧を50N/cm以下、より好ましくは40N/cm以下とすることで、仮融着シート内部まで十分に予熱した仮融着シートを得ることができる。
【0059】
そして、前記で予熱した仮融着シートを融着する。
【0060】
この融着は、上下一対の加熱されたフラットロールにより融着させる方法が好ましく、このようにすることで、仮融着シートを均一に加圧でき、シートの融着を十分なものとすることができる。特に、前記のフラットロールの上下の組み合わせは金属ロールと弾性ロールとを対にしたものが、不織布の手切れ性と包装材料とする場合における加工性とを両立させる上で、より好ましい。
【0061】
また、上記のフラットロールによる融着において、当該フラットロールの表面温度は、前記の予熱された仮融着シートを構成する繊維の表面に存在する最も融点の低い熱可塑性樹脂の融点と同じであるか、この融点に対して0℃以上50℃以下低いことが好ましい。前記の表面温度を、好ましくは前記の予熱された仮融着シートを構成する繊維の表面に存在する最も融点の低い熱可塑性樹脂の融点と同じであるか、この融点に対して0℃以上低く、より好ましくは5℃以上低くすることで、不織布の見掛け密度を飛躍的に向上させることができる。一方、前記の表面温度を、好ましくは前記の融点に対して50℃以下低く、より好ましくは40℃以下低くすることによって、不織布のフィルム化を防ぎ、引裂強力に優れる不織布を得ることができる。
【0062】
また、上記のフラットロールによる融着において、当該フラットロールの線圧は、290N/cm以上890N/cm以下であることが好ましい。前記の線圧を、好ましくは290N/cm以上、より好ましくは390N/cm以上とすることで、十分な機械的強度を有する不織布を得ることができる。一方、前記の線圧を、好ましくは890N/cm以下、より好ましくは790N/cm以下とすることで、シートがフィルム状になってしまうことを防ぐことができる。
【0063】
本発明の不織布の製造方法において、上記の工程(c)の仮融着する工程と、工程(d)の予熱、融着する工程とは、一つの製造ライン上で連続して行ってもよいし、工程(c)の仮融着する工程を施した後に一度巻き取り、その後、再度巻き出して、工程(d)の予熱、融着する工程を施すこともできる。
【0064】
[包装材料]
本発明に係る包装材料は、前記の不織布を含むものである。このようにすることで、手切れ性に優れ、リントの発生を抑制することができる。
【0065】
本発明の包装材料に内包される物品は特に限定されるものではなく、物品個々の包装(個装)にも、包装貨物の内部の包装(内装)にも、包装貨物の外部の包装(外装)にも用いることができるが、上記の特性から、特に個装に用いることが好ましい。また、用途としては、衣料用の包装材料、錠剤やカプセルといった形態の医薬品用の包装材料、そして、食品用の包装材料に用いることができる。
【0066】
また、この包装材料を用いる用途に合わせて、種々の形状にすることができ、例えば、食品用の包装材料であれば、袋体、中でもティーバックなどとすることができる。
【実施例0067】
次に、実施例に基づき本発明の不織布について具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0068】
[測定方法]
実施例で用いた評価方法とその測定条件について説明する。なお、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前記の方法に基づいて測定を行ったものである。
【0069】
(1)熱可塑性樹脂の融点(℃)
株式会社パーキンエルマー製の示差走査型熱量計「DSC-2型」を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を融点とした。
【0070】
(2)熱可塑性樹脂の固有粘度(IV)
熱可塑性樹脂の固有粘度(IV)は次の方法で測定した。
【0071】
オルソクロロフェノール100mLに対し試料8gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηを、下記式により求めた。
【0072】
η=η/η=(t×d)/(t×d
(ここで、ηはポリマー溶液の粘度、ηはオルソクロロフェノールの粘度、tは溶液の落下時間(秒)、dは溶液の密度(g/cm)、tはオルソクロロフェノールの落下時間(秒)、dはオルソクロロフェノールの密度(g/cm)をそれぞれ表す。)
次いで、相対粘度ηから、下記式により固有粘度(IV)を算出した
固有粘度(IV)=0.0242η+0.2634。
【0073】
(3)繊維の平均単繊維直径(μm)
繊維の平均単繊維直径は、走査型電子顕微鏡として、株式会社キーエンス製「VHX-D500」を用いて前記の方法で算出した。
【0074】
(4)不織布の断面空隙率(%)
不織布の断面空隙率は、走査型電子顕微鏡として、株式会社キーエンス製「VHX-D500」を用い、前記の方法で測定、算出した。
【0075】
(5)不織布の目付(g/m
不織布の目付は前記の方法で算出した。
【0076】
(6)不織布の厚み(mm)
不織布の厚みは、厚み計として、株式会社テクロック製「Teclock」(登録商標)SM-114」を使用し、前記の方法で測定、算出した。
【0077】
(7)不織布の見かけ密度(g/cm
不織布の見かけ密度は、前記の方法で算出した。
【0078】
(8)不織布の目付あたりの引裂強力(N/(g/m))
不織布の引裂強力は、JIS L1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」の「8.17 引裂強さ」の「A-1法(シングルタング法)」に準拠し、測定装置として、株式会社エー・アンド・デイ製テンシロン万能試験機「RTG-1250」を用いて測定を行い、算出した。なお、この測定によって得られた、たて方向の引裂強さ(N)とよこ方向の引裂強さ(N)の平均値をその不織布の引裂強力(N)とした。さらに、得られた引裂強力(N)を目付(g/m)で除した値(N/(g/m))を求め、小数点以下第3位を四捨五入して得られる値が0.10N/(g/m)以下の不織布を手切れ性に優れる不織布として評価した。
【0079】
(9)不織布表面の耐摩耗性(リントの出にくさ)
不織布のリントの出にくさについては、不織布表面の耐摩耗性を測定することで評価した。具体的には、株式会社安田精機製作所製学振型摩擦試験機「No.428」を使用し、測定を行った。不織布からランダムに長さ220mm、幅30mmの試験片を3つ採取し、摩耗試験を行う表面は、断面空隙率がより小さい側の表面として、荷重1.96Nで、摩耗速度30往復/分で1分間摩耗試験を実施し、摩耗試験後の見た目より以下の5段階で評価した。
・5:毛羽が全く出ていない状態
・4:ほとんど見えないが、一部が毛羽立っている状態
・3:毛羽立っており、一部で毛玉になっている状態
・2:全体的に、毛玉が目立つ状態
・1:全体的に、毛玉が目立ち、サンプルが破れ始めている状態。
【0080】
[使用した樹脂]
次に、実施例・比較例において使用した樹脂について、その詳細を記載する。
・ポリエステル系樹脂A:水分率50質量ppm以下に乾燥した、固有粘度(IV)が0.65で融点が260℃の、ポリエチレンテレフタレート(表1~4ではPETと表記した)。
・ポリエステル系樹脂B:水分率50質量ppm以下に乾燥した、固有粘度(IV)が0.64、イソフタル酸共重合率が11mol%で融点が230℃の、共重合ポリエチレンテレフタレート(表1~4ではCO-PETと表記した)。
【0081】
[実施例1]
(熱可塑性樹脂を紡出する工程)
前記のポリエステル系樹脂Aと前記のポリエステル系樹脂Bを、それぞれ295℃と280℃の温度で溶融させた。その後、ポリエステル系樹脂Aを芯成分とし、ポリエステル系樹脂Bを鞘成分として、口金温度が295℃で、芯:鞘=80:20の質量比率で、円形の吐出孔から紡出した。
【0082】
そして、溶融押出し、紡出されたポリエステル系樹脂A、Bを、紡糸速度4500m/分でエジェクターにより牽引、延伸して繊維を形成した。
【0083】
(繊維ウェブを形成する工程)
得られた繊維について、エジェクターにて吸引された繊維をエジェクターの下部に設けられたスリット状を有する開繊板から噴射させることで繊維配列を規制し、得られる不織布の目付が50.0g/mとなるように移動速度が調整されたネットコンベアー上に堆積させることで繊維ウェブを形成した。
【0084】
(仮融着シートを形成する工程)
得られた繊維ウェブについて、以下の構成からなる上下一対の加熱されたフラットロールによる仮融着を行うことで、仮融着シートを形成した。
・上ロール: 表面温度が135℃の、金属製フラットロール
・下ロール: 表面温度が135℃の、金属製フラットロール
・フラットロールの線圧: 686N/cm。
【0085】
(仮融着シートを融着する工程)
得られた仮融着シートに対し、パンチングメタル状のロールに仮融着シートを抱かせ、パンチングメタルを介して均一に150℃の空気を風速15m/秒で吹き付けることで予熱した。
【0086】
そして、予熱した仮融着シートを以下の構成からなる上下一対の加熱されたフラットロールを用いて融着した。
・上ロール: 表面温度が230℃の、金属製フラットロール
・下ロール: 表面温度が230℃の、金属製フラットロール
・フラットロールの線圧: 686N/cm。
得られた不織布の物性を表1に示す。
【0087】
[実施例2]
(仮融着シートを融着する工程)において、空気の温度が150℃であったところを130℃に変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で不織布を得た。得られた不織布の物性を表1に示す。
【0088】
[実施例3]
(仮融着シートを融着する工程)において、空気の温度が150℃であったところを120℃に変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で不織布を得た。得られた不織布の物性を表1に示す。
【0089】
[実施例4]
(仮融着シートを融着する工程)において、空気の温度が150℃であったところを100℃に変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で不織布を得た。得られた不織布の物性を表1に示す。
【0090】
[実施例5]
(繊維ウェブを形成する工程)において、得られる不織布の目付が50.0g/mとなるようにネットコンベアーの移動速度を調整していたところを、25.0g/m2となるようにネットコンベアーの移動速度を調整するように変更したこと、さらに、(仮融着シートを融着する工程)において、150℃の空気を風速15m/秒で吹き付けていたところ、180℃の空気を風速10m/秒で吹き付けるように変更したこと以外は実施例1と同じ条件で不織布を得た。得られた不織布の物性を表2に示す。
【0091】
[実施例6]
(繊維ウェブを形成する工程)において、得られる不織布の目付が50.0g/mとなるようにネットコンベアーの移動速度を調整していたところを、100.0g/m2となるようにネットコンベアーの移動速度を調整するように変更したこと、さらに、(仮融着シートを融着する工程)において、150℃の空気を風速15m/秒で吹き付けていたところ、180℃の空気を風速20m/秒で吹き付けるように変更したこと以外は実施例1と同じ条件で不織布を得た。得られた不織布の物性を表2に示す。
【0092】
[実施例7]
(仮融着シートを融着する工程)において、仮融着シートに対し、加熱された空気を吹き付けることで予熱していたところを、以下の構成からなる上下一対の加熱されたフラットロールを用いて予熱するように変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で不織布を得た。
・上ロール: 表面温度が120℃の、金属製フラットロール
・下ロール: 表面温度が120℃の、金属製フラットロール
・フラットロールの線圧: 30N/cm。
得られた不織布の物性を表2に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
[比較例1]
(仮融着シートを融着する工程)において、仮融着シートに対し、風速15m/秒で吹き付けていたところを風速5m/秒で予熱することに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で不織布を得た。得られた不織布の物性を表3に示す。
【0096】
[比較例2]
(仮融着シートを融着する工程)において、仮融着シートに対し、風速15m/秒で吹き付けていたところを風速25m/秒で予熱することに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で不織布を得た。不織布が一部フィルム化している状況であった。得られた不織布の物性を表3に示す。
【0097】
[比較例3]
(仮融着シートを融着する工程)において、空気の温度が150℃であったところを90℃に変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で不織布を得た。得られた不織布の物性を表3に示す。
【0098】
[比較例4]
(仮融着シートを融着する工程)において、空気の温度が150℃であったところを190℃に変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で不織布を得た。不織布が一部フィルム化している状況であった。得られた不織布の物性を表3に示す。
【0099】
[比較例5]
(仮融着シートを融着する工程)において、仮融着シートに対し、加熱された空気を吹き付けることで予熱していたところを、以下の構成からなる上下一対の加熱されたフラットロールを用いて予熱するように変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で不織布を得た。
・上ロール: 表面温度が120℃の、金属製フラットロール
・下ロール: 表面温度が120℃の、金属製フラットロール
・フラットロールの線圧: 5N/cm。
得られた不織布の物性を表4に示す。
【0100】
[比較例6]
(仮融着シートを融着する工程)において、仮融着シートに対し、加熱された空気を吹き付けることで予熱していたところを、以下の構成からなる上下一対の加熱されたフラットロールを用いて予熱するように変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で不織布を得た。
・上ロール: 表面温度が120℃の、金属製フラットロール
・下ロール: 表面温度が120℃の、金属製フラットロール
・フラットロールの線圧: 60N/cm。
得られた不織布の物性を表4に示す。
【0101】
[比較例7]
(仮融着シートを融着する工程)において、仮融着シートに対し、加熱された空気を吹き付けることで予熱していたところを、以下の構成からなる上下一対の加熱されたフラットロールを用いて予熱するように変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で不織布を得た。
・上ロール: 表面温度が160℃の、金属製フラットロール
・下ロール: 表面温度が160℃の、金属製フラットロール
・フラットロールの線圧: 30N/cm。
得られた不織布の物性を表4に示す。
【0102】
[比較例8]
(仮融着シートを融着する工程)において、仮融着シートに対し、加熱された空気を吹き付けることで予熱していたところを、以下の構成からなる上下一対の加熱されたフラットロールを用いて予熱するように変更したこと以外は、実施例1と同じ条件で不織布を得た。
・上ロール: 表面温度が90℃の、金属製フラットロール
・下ロール: 表面温度が90℃の、金属製フラットロール
・フラットロールの線圧: 30N/cm。
得られた不織布の物性を表4に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
得られた不織布の特性は表1、2に示したとおりであり、実施例1~7の不織布は、引裂強力が低く手切れ性に優れ、耐摩耗性があり、リントの出にくい包装材料として良好な特性を示したものであった。特に実施例3の不織布は、表面の耐摩耗性が高く、手切れ性にも優れる包装材料として好適に使用可能な不織布となった。
【0106】
一方で、比較例1~8の不織布は、引裂強力が高く、手切れ性に優れないもの(比較例1、3、5~8)や、リントが出やすくなっているもの(比較例1、3、5~8)や、一部不織布がフィルム化しているもの(比較例2、4)となった。
【符号の説明】
【0107】
1:不織布
11:断面領域1
12:断面領域2
13:断面領域3
図1