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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090467
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】表示制御装置及び表示制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20240627BHJP
   B60R 1/24 20220101ALI20240627BHJP
   B60R 1/20 20220101ALI20240627BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R1/24
B60R1/20 100
G06T1/00 330A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206406
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 直人
(72)【発明者】
【氏名】村上 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】古賀 昌史
【テーマコード(参考)】
5B057
5C054
【Fターム(参考)】
5B057AA16
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057DA16
5B057DB02
5B057DB09
5B057DC08
5C054FC12
5C054FD03
5C054FE01
5C054FE21
5C054HA30
(57)【要約】
【課題】表示部に表示させる画像の歪みを低減させることが可能な表示制御装置を提供する。
【解決手段】表示制御装置40は、車両の傾きに対する画像に撮影された路面の角度に関する傾斜情報を取得する傾斜情報取得部41と、自車両の周辺を撮影した撮像画像を取得する画像取得部421と、乗員の目の位置に関する情報を取得する視点検知部422と、傾斜情報に基づく路面の角度に基づいて、乗員の目の位置から車両の周辺を見た画像が表示されるように撮像画像を変換する基準となる基準面の角度を設定する基準面設定部423と、乗員の目の位置と基準面に基づいて、撮像画像を乗員の目の位置から車両の周辺を見た表示画像に変換する画像処理を実行する画像処理部424と、表示画像を表示部50に表示するよう制御する表示処理部425とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺を撮影した画像を取得する画像取得部と、
前記車両の傾きに対する前記画像に撮影された路面の角度に関する情報を取得する傾斜情報取得部と、
乗員の目の位置に関する情報を取得する視点検知部と、
前記路面の角度に基づいて、前記乗員の目の位置から前記車両の周辺を見た画像が表示されるように前記車両の周辺を撮影した画像を変換する基準となる基準面の角度を設定する基準面設定部と、
前記乗員の目の位置と前記基準面に基づいて、前記車両の周辺を撮影した画像を前記乗員の目の位置から前記車両の周辺を見た画像に変換する画像処理を実行する画像処理部と、
前記画像処理を実行した画像を表示部に表示するよう制御する表示処理部と、
を備える表示制御装置。
【請求項2】
前記基準面設定部は、前記路面の角度が所定の値以上のとき、前記車両に対する路面の角度で前記基準面の角度を設定する
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
障害物の位置を取得する障害物情報取得部と、前記路面の角度が所定の値以上であり、かつ前記路面に障害物があるとき、前記障害物の距離に応じて前記基準面の角度を、前記路面の角度に合わせるか、前記障害物の角度に合わせるかを決定する対象選択部と、を備える
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項4】
車両に搭載された表示制御装置の制御部によって実行される表示制御方法であって、
前記車両の周辺を撮影した画像を取得する画像取得工程と、
前記車両の傾きに対する前記画像に撮影された路面の角度に関する情報を取得する傾斜情報取得工程と、
乗員の目の位置に関する情報を取得する視点検知工程と、
前記路面の角度に基づいて、前記乗員の目の位置から前記車両の周辺を見た画像が表示されるように前記車両の周辺を撮影した画像を変換する基準となる基準面の角度を設定する基準面設定工程と、
前記乗員の目の位置と前記基準面に基づいて、前記車両の周辺を撮影した画像を前記乗員の目の位置から前記車両の周辺を見た画像に変換する画像処理を実行する画像処理工程と、
前記画像処理を実行した画像を表示部に表示するよう制御する表示処理工程と、
を含む表示制御方法。
【請求項5】
前記基準面設定工程は、前記路面の角度が所定の値以上のとき、前記車両に対する路面の角度で前記基準面の角度を設定する
請求項4に記載の表示制御方法。
【請求項6】
障害物の位置を取得する障害物情報取得工程と、前記路面の角度が所定の値以上であり、かつ前記路面に障害物があるとき、前記障害物の距離に応じて前記基準面の角度を、前記路面の角度に合わせるか、前記障害物の角度に合わせるかを決定する対象選択工程と、を有する
請求項4に記載の表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示制御装置及び表示制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたディスプレイ等の表示部に、あたかも表示部を透過して車外が見えるかのように、映像表示を行う装置が開示されている(例えば特許文献1参照。)。特許文献1に記載の装置は、地面に水平な基準面と、センサが検出した障害物の位置に対して地面に垂直な基準面を設定し、乗員の視点位置から地面に水平な基準面と垂直な基準面に車外を撮影した画像を投影する座標変換を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/00701号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両の前方の地面に傾斜がある場合、地面に水平な基準面と垂直な基準面に画像を投影すると、画像が歪んで変換される可能性があった。このように変換された画像は乗員に違和感を与えていた。
【0005】
そこで、本開示は、表示部に表示させる画像の歪みを低減させることが可能な表示制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本開示の表示制御装置は、車両の周辺を撮影した画像を取得する画像取得部と、前記車両の傾きに対する前記画像に撮影された路面の角度に関する情報を取得する傾斜情報取得部と、乗員の目の位置に関する情報を取得する視点検知部と、前記路面の角度に基づいて、前記乗員の目の位置から前記車両の周辺を見た画像が表示されるように前記車両の周辺を撮影した画像を変換する基準となる基準面の角度を設定する基準面設定部と、前記乗員の目の位置と前記基準面に基づいて、前記車両の周辺を撮影した画像を前記乗員の目の位置から前記車両の周辺を見た画像に変換する画像処理を実行する画像処理部と、前記画像処理を実行した画像を表示部に表示するよう制御する表示処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
このように構成された本開示の表示制御装置は、車両の周囲を撮影した画像中の路面の角度に応じて、基準面の角度を設定し、乗員の目の位置と基準面に基づいて、車両の周囲を撮影した画像を表示部に表示させる画像に変換している。このことにより、表示部に表示させる画像の歪みを低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る表示制御装置を備える表示制御システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
図2】従来技術により表示部に表示される表示画像と第1実施形態に係る表示制御システムにより表示部に表示される画像とを示す図である。
図3】傾斜情報取得部で取得される傾斜情報を説明するための図である。
図4】画像処理部で実行される第1の変換処理を説明するための図である。
図5】画像処理部で実行される第2の変換処理を説明するための図である。
図6】画像処理部で実行される第1の変換処理と、第2の変換処理を説明するための図である。
図7】第1実施形態に係る表示制御装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図8】第2実施形態に係る表示制御装置で実行される処理を説明するための図である。
図9】第3実施形態に係る表示制御装置で実行される処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
この開示の第1実施形態に係る表示制御装置は、図面に基づいて以下のように説明される。図1は、第1実施形態に係る表示制御装置40を備える表示制御システム100の概略構成を示す機能ブロック図である。この図1に示す表示制御装置40は、本開示に係る表示制御装置の一実施形態であり、本開示は本実施形態に限定されない。表示制御装置40は、自動車等の移動体に搭載されている。以下、本実施形態の表示制御装置40が搭載される移動体は、自車両と称されて説明される。
【0010】
表示制御システム100は、三次元距離センサ10と、撮像装置20と、乗員監視部30と、表示制御装置40と、表示部50と、投影モデルデータベース60(以下、「投影モデルDB60」という。)を備える。表示制御システム100は、乗員1(図2参照)であるドライバ等が表示部50を視認したときに、撮像装置20が撮影した自車両の周囲の撮像画像70(図4等参照)を、表示部50が透過したように見える表示画像52に変換し、表示部50に表示するシステムである。
【0011】
図2の紙面左図は、自車両の前方の路面が傾いているときに、従来技術により表示部50の表示領域51に表示される表示画像52である。紙面右図は、自車両の前方の路面が傾いているときに、本実施形態の表示制御システム100により表示される表示画像52を示す。従来技術は、撮像画像を地面に水平な基準面と地面に垂直な基準面に投影するように変換している。このため、自車両の前方に傾斜があったときに、表示画像52は歪んで変換されることがあり、これを視認する乗員1は違和感を覚えることがあった。これに対して、本実施形態の表示制御システム100は、車両の前方の傾斜に対応させて設定した基準面に撮像画像を投影するように変換することで、表示画像52の歪みを低減できる。
【0012】
三次元距離センサ10は、自車両の外部に設置され、自車両の周囲の物体の三次元情報(傾斜情報)を取得し、表示制御装置40に出力する。この三次元情報は、表示制御装置40により路面の角度に関する情報を算出するために用いられる。傾斜情報は、撮像装置20が撮影する画像に映る路面の角度を取得するための情報である。言い換えれば、傾斜情報は自車両の傾き(つまり、自車両がいる地面)に対する路面の角度を取得するための情報である。三次元距離センサ10は、例えば、三次元ライダー(LiDAR)が好適に用いられるが、傾斜情報を取得できる機器であればよく、三次元ライダーに限定されない。
【0013】
本実施形態の三次元距離センサ10は、図3に示すような自車両の周囲の路面等の三次元点群データ11を取得し、傾斜情報として表示制御装置40に出力する。図3に示される三次元点群データ11は、路面の三次元点群データ12と、路面に存在する物体(障害物)の三次元点群データ13を示している。この路面の三次元点群データ12から、自車両の前方の路面は上り坂になっていることが分かる。
【0014】
撮像装置20は、自車両の外部に設置され、自車両の周囲を撮影する。撮像装置20は、所定のプロトコルにしたがって、撮像画像70を表示制御装置40に出力する。撮像装置20は、本実施形態では自車両の前方に設置された前方カメラを含んでいる。なお、撮像装置20が前方カメラに限定されず、自車両の後方に設置された後方カメラ、自車両の左右前方、左右後方に設置された側方カメラ等を含むこともできる。
【0015】
乗員監視部30は、自車両に搭載されている。乗員監視部30は、車内カメラ31で撮影した画像に基づき、乗員1であるドライバの状態を監視する。乗員監視部30は、公知のものを用いることができる。車内カメラ31は、ドライバを含む自車両の車内を撮影するカメラであり、例えば表示部50の近傍に車内に向けて設けられる。また、乗員監視部30は、車内カメラ31で撮影した画像に基づき、公知の手法で乗員1の目の位置を検知し、取得した目の位置に関する情報(以下、「目の位置情報」という。)を、表示制御装置40に出力する。目の位置情報は、例えば、左右の目の中点の三次元座標、乗員1の利き目の三次元座標等とすることができる。
【0016】
表示制御装置40は、表示部50に表示させる表示画像52の作成及び表示に関する処理を実行する情報処理装置であり、図1に示すように、傾斜情報取得部41と、処理部(制御部)42と、記憶部43と、を備える。表示制御装置40は、例えば、CPU、GPU、RAM及びROM等の記憶装置を有するECUにより構成される。処理部42は、ECUが有するCPU等により主に構成され、ROMに格納された所定のプログラムをRAMに展開して実行することにより、表示制御装置40の全体の動作を制御する。記憶部43は、ECUが有する記憶装置により主に構成されるが、外部に設けられたサーバやデータベースを備えることもできる。
【0017】
なお、表示制御装置40は、一つのECUにより構成することもできるし、複数のECUにより構成し、後述の処理部42の各機能を分散させたり、記憶するデータを分散させたりもできる。また、表示制御装置40は、その機能の一部又は全部を、FPGA、ASICなどのハードウェアを用いて実現されることもできる。さらには、一つのECUが、表示制御装置40の機能だけでなく、撮像装置20を制御するカメラECUの機能、乗員監視部30の機能を備える構成とすることもできる。
【0018】
傾斜情報取得部41は、予め規定されたプロトコルにしたがって、三次元距離センサ10と表示制御装置40とを接続するためのハード環境を備える入力インターフェースである。傾斜情報取得部41は、三次元距離センサ10から自車両の前方の三次元点群データを取得し、傾斜情報として処理部42の基準面設定部423に出力する。
【0019】
処理部42は、表示制御装置40の全体の制御を行うとともに、傾斜情報取得部41から入力される三次元点群データ11と、撮像装置20から入力される撮像画像70と、乗員監視部30から入力される目の位置情報に基づき、表示画像52を生成して表示部50に表示させる。処理部42は、図1に実線で示されるように、画像取得部421、視点検知部422、基準面設定部423、画像処理部424及び表示処理部425として機能するが、この構成に限定されない。
【0020】
画像取得部421は、撮像装置20から自車両の周辺を撮影した撮像画像70を取得し、必要に応じて所定の処理を実行して画像処理部424に出力する。視点検知部422は、乗員監視部30から目の位置情報を取得し、必要に応じて所定の処理を実行して画像処理部424に出力する。
【0021】
本実施形態では、画像取得部421及び視点検知部422は、処理部42に備えられ、表示制御装置40が備える公知の入力インターフェースを通じて各情報を取得している。しかし、この構成に限定されず、画像取得部421及び視点検知部422は、入力インターフェースそのものであってもよく、撮像装置20又は乗員監視部30から取得した情報を単に基準面設定部423、画像処理部424に出力し、基準面設定部423、画像処理部424によって各情報に必要な処理が実行されるものでもよい。
【0022】
基準面設定部423は、傾斜情報取得部41から入力される三次元点群データ11に基づいて、公知の手法を用いて路面の角度を算出する。つまり、基準面設定部423は、自車両の傾きに対する、撮像画像70に撮影された路面の角度を取得する傾斜情報取得部としての機能をも備える。基準面設定部423は、基準面設定処理として、この路面の角度が、所定の値(例えば、1°、5°等)以上のとき、この角度を基準面の角度に設定する。次いで基準面設定部423は、この角度をキーとして投影モデルDB60にアクセスし、当該角度に対応する投影モデル(角度が同じか同等の角度を有する投影モデル)を取得する。
【0023】
一方、基準面設定部423は、路面の角度が所定の値未満であるとき、同じ角度(水平)とみなしうるので基準面設定処理を行わなくてもよい。この場合、前方の路面は自車両のいる路面と略同じ角度(水平)であるので、撮像画像70は、通常通り自車両に対して水平な水平モデル(地面モデル)を用いて変換される。また、路面が下り坂(角度がマイナス)である場合も考慮して、基準面設定部423は、路面の角度の絶対値が所定の値以上のとき、基準面設定処理を実行する構成とすることもできる。
【0024】
基準面設定部423は、取得した投影モデルを、基準面モデル71(図4等参照)に設定し、この基準面モデル71の情報を画像処理部424に出力する。基準面モデル71は、乗員1の目の位置から車両の周辺を見た画像が表示されるように、自車両の周辺を撮影した撮像画像70を変換する基準となる面である。
【0025】
この基準面モデル71は、路面の様々な複数の角度に対応して予め設定されて投影モデルDB60に記憶された複数の投影モデルから、路面の角度に応じて選択される。投影モデルは、自車両に対して水平な水平モデルと、自車両に対して垂直な垂直モデルとの間であって、所定の角度ごとに設けられた複数の投影モデルからなる。各投影モデルは、角度に応じた座標系と、その座標系で定義される基準面に基づいて撮像画像70を変換するために必要な情報を有する。
【0026】
画像処理部424は、視点検知部422から取得した乗員1の目の位置情報と基準面設定部423からの基準面モデル71に基づいて、撮像画像70を、乗員1の目の位置から自車両の周辺を見た画像(表示画像52)に変換する画像処理を実行する。より具体的には、画像処理部424は、撮像画像70の座標を、この撮像画像70の画像座標系から、基準面モデル71の座標系(以下、「基準面座標系」という。)に変換する第1の変換処理と、この基準面座標系の座標を、表示部50の座標系である表示座標系に変換する第2の変換処理を実行する。画像処理部424は、さらに、補正処理及び射影変換行列Mの算出処理、投影領域設定処理、射影変換行列Nの算出処理を実行する。
【0027】
画像処理部424は、補正処理として、画像取得部421から入力される撮像画像70に対して公知の手法を用いて撮像装置20が有するレンズの歪み(例えば、レンズの歪曲収差、色収差等)を補正する。なお、補正処理は、画像取得部421が実行し、補正処理後の撮像画像70を画像処理部424に出力する構成とすることもできる。
【0028】
画像処理部424は、第1の変換処理として、補正処理後の撮像画像70を、基準面座標系に設定された基準面に投影するように、画像座標系を基準面座標系に変換する。この第1の変換処理は、画像処理部424が予め算出し、記憶部43の変換情報記憶部432に記憶された射影変換行列Mを用いて行われる。射影変換行列Mは、投影モデルDB60に存在するすべての投影モデルに対して予め算出される。
【0029】
第1の変換処理は、図4図5を参照して以下のように説明される。図4の紙面上図は、補正処理後の撮像画像70を基準とする画像座標系であり、図4の紙面下図は基準面座標系である。画像座標系は、補正処理後の撮像画像70の左上隅を原点O(0,0)とする二次元の座標系である。Xa及びYaは互いに直交する軸であり、各軸の単位はピクセル(px)である。基準面座標系は、自車両の所定の位置を原点O(0,0,0)とする三次元の座標系であり、Xbは車幅方向(水平方向)に延びる軸、YbはXbと直交し基準面に対して垂直方向に延びる軸、ZbはXb及びYbと直交し車両の前方向に延びる軸であって基準面に沿って延びる軸である。Xb、Yb、Zbの各軸の単位はmmである。
【0030】
基準面座標系に設定される面は、基準面設定部423から入力される基準面モデル71が設定される。また、図5中に符号72で示される領域は、撮像画像70が、第1の変換処理によって基準面モデル71上にマッピングされた画像(以下「マッピング画像72」という。)を示す。また、図5中に符号73で示される領域は、撮像画像70がマッピングされない領域、つまり撮像装置20で撮影されない領域(以下、「非マッピング領域73」という。)である。なお、図5に仮想線で示す72は、自車両の傾きに対して角度が0°の路面、つまり自車両がいる路面に対応する地面モデル上にマッピングされるマッピング画像であり、角度を有する基準面モデル71のマッピング画像72との対比のため図示したものである。
【0031】
画像処理部424は、補正処理後の撮像画像70の各ピクセルの座標を、下記式(1)に代入して、基準面モデル71の座標に変換する。下記式(1)中、x及びyは画像座標系のx座標及びy座標であり、x及びzは基準面座標系のx座標及びz座標である。ここで、画像座標系の座標(x,y)を表す同次座標はaとされ、基準面座標系の座標(x、z)を表す同次座標はbとされる。同次座標aとbとの関係は、下記式(1)で表される。なお、値λは、同次座標bにおける倍率を示す。この値λがいずれの値をとっても(ただし値0を除く)、同次座標bは基準面座標系上で同一の座標を表す。
【0032】
【数1】
【0033】
画像処理部424は、この射影変換行列Mの算出処理を予め実行する。この算出手順は、図6の紙面左図及び中央図を参照して、以下のようにして算出することができる。図6に示されるa1、a2、a3、a4は、画像座標系における撮像画像70中で参照する参照点である。また、図6に示されるb1、b2、b3、b4は、基準面座標系における基準面モデル71において、上記画像座標系における参照点a1、a2、a3、a4に対応する参照点である、画像座標系の座標(x,y)を表す同次座標aと、基準面座標系の座標(x、z)を表す同次座標bとの関係は、上記式(1)で表すことができる。
【0034】
画像処理部424は、補正処理後の撮像画像70上で捉えられる点であって、基準面座標系における4つの参照点b1、b2、b3、b4を設定する。また、各参照点b1、b2、b3、b4の座標は、実測により特定されて画像処理部424に入力される。次に、画像処理部424は、補正処理後の撮像画像70の画像座標系における4つの参照点a1、a2、a3、a4の座標を特定する。
【0035】
画像処理部424は、以上のようにして特定した各参照点の座標を、上記式(1)に代入し、射影変換行列Mの各要素を含む連立方程式を解くことによって、射影変換行列Mを算出する。画像処理部424は、算出した射影変換行列Mを記憶部43の変換情報記憶部432に記憶する。
【0036】
投影領域設定処理は、図5を参照して、以下のように説明される。画像処理部424は、視点検知部422から入力される目の位置情報に基づく目の位置Tを基準として、投影面を表示部50としたときに、この表示部50の表示領域51に投影される基準面モデル71上の領域(投影領域74)を算出する。図5に示される参照点c1、c2、c3、c4で囲まれた領域が、表示部50の表示領域51である。この参照点c1~c4の位置情報、つまり座標は、予め記憶部43の位置情報記憶部431に記憶されている。基準面モデル71上の参照点b5,b6,b7,b8で囲まれた領域が、表示領域51に投影される投影領域74である。画像処理部424は、目の位置Tの座標、及び位置情報記憶部431から取得した点c1~c4の座標に基づいて、点b5~b8の座標を算出する。
【0037】
より具体的には、画像処理部424は、目の位置Tの座標T(Tx,Ty,Tz)と、表示領域51の四隅の参照点c1~c4の座標を用いて、目の位置Tと、参照点c1~c4とを各々結ぶ直線(図5の仮想線参照)を設定する。次いで、画像処理部424は、これらの直線と、基準面モデル71との交点(参照点)b5~b8を検出し、この交点b5~b8で囲まれる領域を、表示領域51に対応する投影領域74と認定し、各交点b5~b8の座標を算出する。
【0038】
射影変換行列Nの算出処理は、図6の紙面中央図と右図を参照して、以下のように説明される。図6の紙面右図は、表示部50の表示領域51を基準とする表示座標系である。表示座標系は、表示領域51の左上隅を原点O(0,0)とする二次元の座標系である。Xc及びYcは互いに直交する軸であり、各軸の単位はピクセル(px)である。
【0039】
基準面座標系における基準面モデル71上において、参照点b5、b6、b7、b8で囲まれる領域は、投影領域74とされ、基準面座標系の座標(x,z)を表す同次座標はbとされる。表示部50の表示座標系において、基準面座標系の各参照点b5、b6、b7、b8に対応する参照点は、c1、c2、c3、c4とされ、表示座標系の座標(x,y)を表す同次座標はcとされる。同次座標b、cの関係は、下記式(2)で表される。なお、値λは、同次座標cにおける倍率を示す。この値λがいずれの値をとっても(ただし値0を除く)、同次座標cは表示座標系上で同一の座標を表す。
【0040】
【数2】
【0041】
画像処理部424は、投影領域設定処理で算出した表示部50の表示座標系の参照点c1~c4の座標と、基準面座標系の参照点b5~b8の座標とを上記式(2)に代入し、射影変換行列Nの各要素を含む連立方程式を解くことで、射影変換行列Nを算出する。画像処理部424は、算出した射影変換行列Nを、記憶部43の変換情報記憶部432に記憶する。
【0042】
また、画像処理部424は、第2の変換処理として、上記算出処理で算出した射影変換行列Nを用いて、表示領域51の各ピクセルに対応する、マッピング画像72の投影領域74の各点の座標を上記式(2)に代入して、投影領域74の座標を表示座標系に変換する。このようにして、画像処理部424は、マッピング画像72上の投影領域74の画像に対応する表示画像52の画像データを生成する。画像処理部424は、生成した画像データを表示処理部425に出力する。
【0043】
表示処理部425は、画像処理部424から入力される画像データに基づいて、この画像データに対応する表示画像52を表示部50の表示領域51に表示させる。
【0044】
記憶部43は、表示制御装置40を動作させるための制御プログラム、処理部42における各種動作の際に用いられる各種データやパラメータを、一時的又は非一時的に格納する。また、前述したように、記憶部43の位置情報記憶部431は、表示領域51の四隅の参照点c1~c4の座標を、一時的又は非一時的に格納する。記憶部43の変換情報記憶部432は、第1の変換処理、第2の変換処理で各々用いられる射影変換行列M及び射影変換行列Nを、一時的又は非一時的に格納する。
【0045】
投影モデルDB60は、前述したように、様々な角度を持つ複数の投影モデルが予め記憶されている。投影モデルDB60は、本実施形態では表示制御装置40の外部に設けられたデータベースであるが、これに限定されず、表示制御装置40の記憶部43に設けることもできる。
【0046】
上述のような構成の第1実施形態に係る表示制御システム100の動作の一例は、図7のフローチャートを参照しながら、以下のように説明される。図7は、表示制御装置40の動作の一例を示しているが、表示制御装置40の動作は、この図7の動作に限定されない。また、図7に示す各ステップは、図7に示す順番で必ず実行されるものでもなく、適宜順番を入れ替えて実行することや、複数のステップを同時に実行することもできる。
【0047】
まず、ステップS1で、傾斜情報取得部41は、三次元距離センサ10から傾斜情報である三次元点群データ11を取得し、基準面設定部423に出力する。一方、ステップS2で、画像取得部421は、撮像装置20から撮像画像70を取得し、画像処理部424に出力する。また、ステップS3で、視点検知部422は、乗員監視部30から乗員1の目の位置情報を取得し、画像処理部424に出力する。
【0048】
次のステップS4で、基準面設定部423は、傾斜情報取得部41から入力される三次元点群データ11に基づいて路面の角度を算出し、基準面の角度を設定する。基準面設定部423は、この基準面の角度に基づき、投影モデルDB60にアクセスして、対応する投影モデルを取得し、基準面モデル71を設定し、画像処理部424に出力する。画像処理部424は、入力された基準面モデル71に基づいた射影変換行列Mを設定する。
【0049】
次のステップS5で、画像処理部424は、撮像画像70に対して、レンズの歪みを補正する補正処理を行う。次のステップS6で、画像処理部424は、変換情報記憶部432から取得した射影変換行列Mと前述の式(1)を用いて、補正処理後の撮像画像70の座標を、基準面座標系の座標に変換することで、マッピング画像72を生成する。
【0050】
次のステップS7で、画像処理部424は、視点検知部422から入力される目の位置Tを基準として、設定された基準面モデル71に応じて表示部50の表示領域51に投影されるマッピング画像72上の投影領域74を設定する。つまり、画像処理部424は、目の位置Tの座標、及び位置情報記憶部431に記憶された表示領域51の四隅の参照点c1~c4の座標、設定された基準面モデル71に基づいて、投影領域74を囲む参照点b5~b8の座標を算出する。次のステップS8で、画像処理部424は、表示座標系の参照点c1~c4の座標と、基準面座標系の参照点b5~b8の座標とを前述した式(2)に代入し、射影変換行列Nを算出する。
【0051】
次のステップS9で、画像処理部424は、投影領域74の各座標を前述の式(2)に代入して、表示座標系の座標に変換することで、表示領域51に表示する表示画像52の画像データを生成し、表示処理部425に出力する。
【0052】
そして、ステップS10で、表示処理部425は、画像処理部424から入力される画像データに基づいて、この画像データに対応する表示画像52を表示領域51に表示させる。これにより、図2の紙面右図に示されるように、表示領域51には、歪みが適切に低減された表示画像52が表示される。
【0053】
(第2実施形態)
この開示の第2実施形態に係る表示制御装置40及び表示制御システム100は、図1に示される第1実施形態に係る表示制御装置40及び表示制御システム100と、基準面設定部423の機能が異なること以外は、同じ基本構成を備えている。このため、第2実施形態において、第1実施形態と同じ構成及び機能の詳細な説明は、省略される。第1実施形態とは異なる第2実施形態の基準面設定部423の機能は、図8を参照して、以下のように説明される。
【0054】
第2実施形態の基準面設定部423は、傾斜情報取得部41から入力される三次元点群データ11のうち、乗員1の目の位置Tから、表示部50を見たときに表示領域51に表示される領域に対応する三次元点群データ11に限定して、路面の角度を算出する。この構成とした理由は、表示部50を透過して車外が見えるかのように、画像を表示するという目的の上では、表示領域51に表示される領域に対応する領域についてのみ角度を取得できればよいためである。
【0055】
図8に示される符号14は、表示部50の表示領域51の四隅の参照点に対応する三次元点群データ11上の参照点で囲まれた参照領域である。基準面設定部423は、この参照領域14の範囲内の三次元点群データ11に基づいて、基準面の角度を設定する。このとき、基準面設定部423は、参照領域14内に障害物の三次元点群データ13を検出したとき、この障害物の角度を取得してしまうのを回避するため、参照領域14内において障害物の三次元点群データ13を削除して、路面の三次元点群データ12のみから基準面の角度を設定する。
【0056】
そして、基準面設定部423は、この基準面の角度に基づき、投影モデルDB60にアクセスして基準面モデル71を設定し、画像処理部424に出力する。したがって、第2実施形態では、基準面設定部423は、自車両の前方の路面の角度をより高精度に取得でき、画像処理部424は、歪みがより適切に低減された表示画像52を生成できる。
【0057】
(第3実施形態)
この開示の第3実施形態に係る表示制御装置40及び表示制御システム100は、表示制御装置40の処理部42が、図1に破線で示す対象選択部426をさらに備えること以外は、図1に示される第1実施形態に係る表示制御装置40及び表示制御システム100と同じ基本構成を備えている。このため、第3実施形態において、第1実施形態と同じ構成及び機能の詳細な説明は、省略される。第1実施形態とは異なる構成及び機能は、図9を参照して、以下のように説明される。
【0058】
撮像画像70に路面と障害物の双方が撮影されているとき、表示部50に表示される表示画像52は、路面の歪みがないほうが好ましい場合と、障害物の歪みがないほうが好ましい場合がある。このため、第3実施形態では、路面の角度が所定の値以上であり、かつ路面に障害物があるとき、障害物の距離に応じて基準面の角度を、路面の角度又は障害物の角度のいずれかに対応させることができる。
【0059】
これを実現するため、第3実施形態では、傾斜情報取得部41は、三次元距離センサ10から入力された三次元点群データ11を、対象選択部426に出力する。対象選択部426は、傾斜情報取得部41から入力される三次元点群データ11に基づいて、路面の角度と、障害物の角度と、自車両から障害物までの距離を算出する。つまり、対象選択部426は、自車両の傾きに対する、撮像画像70に撮影された路面及び障害物の角度を取得する傾斜情報取得部、及び障害物の位置を取得する障害物情報取得部としての機能をも備える。
【0060】
次いで、対象選択部426は、対象選択処理として、障害物の距離が所定の値(例えば、1m、1.5m等)以下か否かを判定する。対象選択部426は、障害物の距離が所定の値以下のとき(図9の紙面上図参照)、障害物の角度を基準面の角度に設定する。表示画像52に障害物が写り込む可能性が高いためである。
【0061】
これに対して、対象選択部426は、障害物の距離が所定の値を超えているとき(図9の紙面下図参照)、路面の角度を基準面の角度に設定する。表示画像52に障害物が写り込む可能性が低いためである。図9の紙面上図は、仮想線で示す距離が所定の値以下の領域内に障害物が検出された状態を示す。図9の紙面下図は、仮想線で示す距離が所定の値以下の領域よりも遠い位置に障害物が検出された状態を示す。対象選択部426は、設定した基準面の角度を、基準面設定部423に出力する。
【0062】
基準面設定部423は、対象選択部426から入力された基準面の角度をキーとして、投影モデルDB60にアクセスして、当該角度に対応する投影モデルを取得し、基準面モデル71を設定して画像処理部424に出力する。以上の処理により、画像処理部424は、障害物の距離に応じて、路面の角度に対応した画像データ又は障害物の角度に対応した画像データを生成し、表示処理部425に出力する。表示処理部425は、入力された画像データに基づく表示画像52を表示部50に表示させる。
【0063】
したがって、障害物が比較的遠くに存在する場合は、表示部50には、路面の歪みが低減された表示画像52が表示され、乗員1は、路面の状態をより適切に把握できる。一方、障害物が比較的自車両の近くに存在する場合は、表示部50には、障害物の歪みが低減された表示画像52が表示され、乗員1は、障害物の存在や障害物までの距離をより適切に把握して、回避動作等をより適切に行える。
【0064】
以上説明したように、上記各実施形態の表示制御装置40は、乗員1の目の位置Tと、自車両の前方の路面の角度に基づいて設定された基準面モデル71に基づいて、自車両の周辺を撮影した撮像画像70を乗員1の目の位置Tから自車両の周辺を見た画像に変換している。このことにより、表示制御装置40は、表示部50に表示させる表示画像52の歪みを低減させることが可能となる。また、このような表示画像52は、フロントウィンドウを介して視認される風景とのつながりも適切である。したがって、自車両の前方に傾斜があったときでも、乗員1は、違和感を覚えることなく表示画像52を視認できる。
【0065】
また、上記各実施形態の基準面設定部423は、路面の角度が所定の値以上のとき、車両に対する路面の角度で基準面の角度を設定する構成とすることができる。この構成により、表示制御装置40は、路面が処置の値以上の角度で傾斜しているときのみ、上述したような処理を行えばよく、演算処理をより高速かつ、効率的に行える。
【0066】
また、上記第3実施形態の表示制御装置40は、障害物の位置を取得する障害物情報取得部(傾斜情報取得部41、対象選択部426)と、路面の角度が所定の値以上であり、かつ路面に障害物があるとき、障害物の距離に応じて基準面の角度を、路面の角度に合わせるか、障害物の角度に合わせるかを決定する対象選択部426を備える。そして、基準面設定部423は、選択された角度に基づいて、基準面の角度を設定する。したがって、第3実施形態の表示制御装置40は、障害物の有無と距離に応じて、路面の歪みがより低減された表示画像52、又は障害物の歪みがより低減された表示画像52を乗員1に提示でいる。このような表示画像52を視認することで、乗員1は、遠くの障害物に影響されることなく路面の状態を把握することや、目前にある障害物を把握することができる。
【0067】
以上、図面を参照して、本開示の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施形態に限らず、本開示の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本開示に含まれる。
【0068】
例えば、上記各実施形態の表示制御装置40は、撮像装置20の前方カメラが撮影した撮像画像70を、自車両の前方の路面の角度や障害物の角度に対応させて表示画像52に変換して表示部50に表示させているが、この構成に限定されない。例えば、この構成に代えて、又はこの構成に加えて、表示制御装置40は、後方カメラが撮影した撮像画像を、自車両の後方の路面の角度や障害物の角度に対応させて表示画像に変換して表示部50に表示させる構成とすることもできる。さらに表示制御装置40は、側方カメラで撮影した撮像画像を、自車両の斜め前方の路面の角度や障害物の角度に対応させて表示画像に変換して、いわゆるAピラーに設けた表示部に表示させる構成とすることもできる。このことにより、表示制御装置40は、後方を撮影した撮像画像や、側方を撮影した撮像画像の歪みを低減して表示部50に表示させることができ、乗員1は、後方や側方の路面や障害物を、違和感なく、より適切に把握できる。
【符号の説明】
【0069】
1 :乗員 40 :表示制御装置
41 :傾斜情報取得部 50 :表示部
421 :画像取得部 422 :視点検知部
423 :基準面設定部 424 :画像処理部
425 :表示処理部 426 :対象選択部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9