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特開2024-90471シートベルトリトラクタ及びシートベルト装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090471
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】シートベルトリトラクタ及びシートベルト装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/28 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
B60R22/28 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206411
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】大塚 晋作
(72)【発明者】
【氏名】陳 磊
(72)【発明者】
【氏名】三原 篤
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆章
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018DA07
(57)【要約】
【課題】エネルギー吸収荷重の設定自由度及びシートベルトリトラクタの設計自由度を向上することができる、シートベルトリトラクタ及びシートベルト装置を提供する。
【解決手段】シートベルトリトラクタ1は、乗員を拘束するウェビングを巻き取るスプール2と、スプール2を回転可能に収容するベースフレーム3と、スプール2に巻き取り力を付与するスプリングユニット4と、ベースフレーム3に係合してスプール2の回転を停止させるロック機構5と、ロック機構5の作動時にスプール2をウェビングの引き出し方向に回転させるエネルギー吸収部材6と、スプール2を挟んでロック機構5と反対側に配置され、スプール2のウェビングの引き出し方向の回転を規制するストッパ機構7と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員を拘束するウェビングを巻き取るスプールと、前記スプールを回転可能に収容するベースフレームと、前記ベースフレームに係合して前記スプールの回転を停止させるロック機構と、前記ロック機構の作動時に前記スプールを前記ウェビングの引き出し方向に回転させるエネルギー吸収部材と、を含むシートベルトリトラクタであって、
前記スプールを挟んで前記ロック機構と反対側に配置され、前記スプールの前記ウェビングの引き出し方向の回転を規制するストッパ機構を備える、
ことを特徴とするシートベルトリトラクタ。
【請求項2】
前記ストッパ機構は、前記ウェビングの引き出し量が所定の閾値を超えた場合に作動するように構成されている、請求項1に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項3】
前記シートベルトリトラクタは、前記スプールの回転数を検知する回転センサを備え、前記ストッパ機構は、前記回転センサの出力に基づく電気信号により作動するように構成されている、請求項1に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項4】
前記ストッパ機構は、前記スプールの端部に固定されるストッパベースと、前記スプールに対して相対回転可能に前記ストッパベースに配置されたストッパギアと、前記スプールの径方向に出没可能に前記ストッパベースに配置されたストッパパウルと、前記スプールと前記ストッパギアとの相対回転を生じさせるアクチュエータとを備える、請求項1に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項5】
前記アクチュエータは、ソレノイドにより前記ストッパギアの回転を規制するように構成されている、請求項4に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項6】
前記ソレノイドは、前記スプールの回転数を検知する回転センサの出力に基づく電気信号により作動するように構成されている、請求項5に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項7】
前記ストッパパウルは、前記ベースフレーム又は前記ベースフレームに固定されたプレートに形成された開口部の内縁に形成された係合歯に係合可能に構成されている、請求項4に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項8】
前記シートベルトリトラクタは、前記ストッパ機構及び前記回転センサを収容するリテーナを有する、請求項4に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項9】
前記シートベルトリトラクタは、前記スプールの回転を制御するスプール駆動機構を有する、請求項1に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載のシートベルトリトラクタを備えた、ことを特徴とするシートベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルトリトラクタ及びシートベルト装置に関し、特に、乗員を車両のシートに拘束するシートベルトリトラクタ及びシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、一般に、乗員が着座する腰掛部と乗員の背面に位置する背もたれ部とを備えたシートに乗員を拘束するシートベルト装置が設けられている。かかるシートベルト装置は、乗員を拘束するウェビングと、ウェビングの巻き取りを行うシートベルトリトラクタと、を備えている。
【0003】
また、シートベルトリトラクタは、ウェビングを巻き取るスプールと、該スプールを回転可能に収容するベースフレームと、前記スプールに巻き取り力を付与するスプリングユニットと、車両の急減速を検知するビークルセンサと、該ビークルセンサによって作動し前記スプールを前記ベースフレームに係合させるロック機構と、車両衝突時等の緊急時に前記ウェビングの弛みを除去するプリテンショナと、を備えていることが多い。
【0004】
例えば、特許文献1には、規制部材によりトーションバーの捩れ量を規制できると共に、スピンドル(スプール)とトレッドヘッド(ロック機構)との相対回転が停止されるトーションバーによるエネルギー吸収の終了間際で、ウェビング張力を増加させることができ、ウェビングの引き出し量に対するエネルギー吸収荷重の設定自由度を向上することができる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-089528号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、エネルギー吸収荷重の設定が規制部材の移動量によって制限されてしまう、規制部材がロック機構と同じ側に配置されており構造が複雑になってしまう等の問題がある。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、エネルギー吸収荷重の設定自由度及びシートベルトリトラクタの設計自由度を向上することができる、シートベルトリトラクタ及びシートベルト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、乗員を拘束するウェビングを巻き取るスプールと、前記スプールを回転可能に収容するベースフレームと、前記ベースフレームに係合して前記スプールの回転を停止させるロック機構と、前記ロック機構の作動時に前記スプールを前記ウェビングの引き出し方向に回転させるエネルギー吸収部材と、を含むシートベルトリトラクタであって、前記スプールを挟んで前記ロック機構と反対側に配置され、前記スプールの前記ウェビングの引き出し方向の回転を規制するストッパ機構を備える、ことを特徴とするシートベルトリトラクタが提供される。
【0009】
前記ストッパ機構は、前記ウェビングの引き出し量が所定の閾値を超えた場合に作動するように構成されていてもよい。
【0010】
前記シートベルトリトラクタは、前記スプールの回転数を検知する回転センサを備え、前記ストッパ機構は、前記回転センサの出力に基づく電気信号により作動するように構成されていてもよい。
【0011】
前記ストッパ機構は、前記スプールの端部に固定されるストッパベースと、前記スプールに対して相対回転可能に前記ストッパベースに配置されたストッパギアと、前記スプールの径方向に出没可能に前記ストッパベースに配置されたストッパパウルと、前記スプールと前記ストッパギアとの相対回転を生じさせるアクチュエータとを備えていてもよい。
【0012】
前記アクチュエータは、ソレノイドにより前記ストッパギアの回転を規制するように構成されていてもよい。
【0013】
前記ソレノイドは、前記スプールの回転数を検知する回転センサの出力に基づく電気信号により作動するように構成されていてもよい。
【0014】
前記ストッパパウルは、前記ベースフレーム又は前記ベースフレームに固定されたプレートに形成された開口部の内縁に形成された係合歯に係合可能に構成されていてもよい。
【0015】
前記シートベルトリトラクタは、前記ストッパ機構及び前記回転センサを収容するリテーナを有していてもよい。
【0016】
前記シートベルトリトラクタは、前記スプールの回転を制御するスプール駆動機構を有していてもよい。
【0017】
また、本発明によれば、上述した何れかの構成を有するシートベルトリトラクタを備えた、ことを特徴とするシートベルト装置が提供される。
【発明の効果】
【0018】
上述した本発明に係るシートベルトリトラクタ及びシートベルト装置によれば、前記エネルギー吸収部材による前記スプールの回転を規制するストッパ機構をロック機構と反対側に配置したことにより、シートベルトリトラクタの設計自由度を向上することができる。また、ストッパ機構をロック機構及びエネルギー吸収部材と切り離して配置したことにより、エネルギー吸収荷重の設定自由度を向上することができる。
【0019】
また、ストッパ機構を回転センサの出力に基づく電気信号により作動するように構成したことにより、エネルギー吸収荷重の設定自由度をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第一実施形態に係るシートベルトリトラクタを示す部品展開図である。
図2図1に示したシートベルトリトラクタの組立状態を示す部分斜視図である。
図3】ストッパ機構の作動フローを示す図である。
図4】ストッパ機構の作動状態の説明図であり、(A)は作動前の状態、(B)はアクチュエータの係合状態、を示している。
図5】ストッパ機構の作動状態の説明図であり、(A)はストッパパウルの移動状態、(B)はストッパパウルの係合状態、を示している。
図6】本発明の第二実施形態に係るシートベルトリトラクタを示す部品展開図である。
図7図6に示したシートベルトリトラクタの組立状態を示す部分斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係るシートベルト装置を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図1図8を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係るシートベルトリトラクタを示す部品展開図である。図2は、図1に示したシートベルトリトラクタの組立状態を示す部分斜視図である。なお、図1及び図2において、説明の便宜上、ウェビングの図を省略してある。
【0022】
本発明の第一実施形態に係るシートベルトリトラクタ1は、例えば、図1及び図2に示したように、乗員を拘束するウェビングを巻き取るスプール2と、スプール2を回転可能に収容するベースフレーム3と、スプール2に巻き取り力を付与するスプリングユニット4と、ベースフレーム3に係合してスプール2の回転を停止させるロック機構5と、ロック機構5の作動時にスプール2をウェビングの引き出し方向に回転させるエネルギー吸収部材6と、スプール2を挟んでロック機構5と反対側に配置され、スプール2のウェビングの引き出し方向の回転を規制するストッパ機構7と、を備えている。
【0023】
また、シートベルトリトラクタ1は、車両衝突時等の緊急時にウェビングの弛みを除去するプリテンショナ8を有していてもよい。プリテンショナ8は、例えば、ロック機構5に隣接するベースフレーム3の内側に配置される。なお、プリテンショナ8は、ロック機構5に隣接するベースフレーム3の外側に配置されていてもよいし、スプリングユニット4の内側に配置されていてもよい。
【0024】
スプール2は、ウェビングを巻き取る巻胴(ドラム)であり、例えば、一端はスプリングユニット4にストッパ機構7の構成部品(ストッパベース71)を介して回転可能に接続されており、他端はロック機構5の構成部品(ロッキングベース54)に接続されている。ロッキングベース54はリテーナカバー56に回転可能に支持されている。
【0025】
ベースフレーム3は、例えば、略角型C字形状の断面を有するフレーム構造体であり、スプール2の回転軸に平行な一対の平面部と、ロック機構5の構成部品を挿通する開口部31aを備えた側面部31と、を有している。また、側面部31と対峙する側面部には、ストッパ機構7の構成部品を挿通する開口部32aを備えたストッパプレート32が配置される。ストッパプレート32は、ベースフレーム3を構成する一対の平面部に固定される。
【0026】
開口部31aの内縁には、ロック機構5の構成部品(ロックパウル52)が係合する係合歯が形成されている。また、開口部32aの内縁には、ストッパ機構7の構成部品(ストッパパウル73)が係合する係合が形成されている。
【0027】
なお、ベースフレーム3の構造は、図示した構成に限定されるものではない。例えば、ベースフレーム3は、側面部31とストッパプレート32とを一体に構成した略角型U字形状の断面を有するフレーム構造体であってもよい。
【0028】
スプリングユニット4は、例えば、スプール2を巻き取り方向に付勢するゼンマイバネを内蔵している。スプリングユニット4は、例えば、ストッパ機構7の外側に配置される。
【0029】
ロック機構5は、車両衝突時等の緊急時にウェビングの引き出しを規制する機構である。ロック機構5は、例えば、スプール2に対して相対回転可能に同軸上に配置されたロックギア51と、ベースフレーム3と係合可能に配置されたロックパウル52と、ロックギア51に配置されスプール2とロックギア51との相対回転によりロックパウル52を移動させるフライホイール53と、スプール2とロックギア51との間に配置されたロッキングベース54と、車両の急減速を検知するビークルセンサ55と、ロック機構5の構成部品を収容するリテーナカバー56と、を備えている。なお、ロック機構5は図示した構成に限定されるものではない。
【0030】
ロッキングベース54は、スプール2の第一端部21に接続される略円盤形状の部品である。ロッキングベース54は、ベースフレーム3の開口部31aに挿通され、外周部が開口部31aの係合歯と対峙するように配置される。ロッキングベース54は、ロックパウル52を収容可能な厚さを有し、外周の一部にロックパウル52を収容可能な空間を有している。
【0031】
ロックパウル52は、ロッキングベース54に形成された旋回軸に回動可能に配置される第一端部52aと、第一端部52aを中心に旋回可能に構成された第二端部52bと、を備えている。第二端部52bは、ロックギア51に形成された案内溝51dに挿通されるピン52cと、ベースフレーム3の係合歯に係合可能な係合爪52dと、を備えている。
【0032】
ロックパウル52は、ロックギア51がスプール2(ロッキングベース54)に対して相対回転すると案内溝51dに沿ってピン52cが移動し、第二端部52bがロッキングベース54の側面から径方向に押し出され、係合爪52dがベースフレーム3の係合歯に係合する。この係合によりスプール2の回転がロックされウェビングの引き出しが規制される。なお、ロックパウル52の第二端部52bは、係合爪52dがロッキングベース54の側面から径方向外方に飛び出さないように、パウルスプリングにより径方向内方に付勢されている。
【0033】
ロックギア51は、例えば、ロッキングベース54に対面するように配置される円盤部51aと、円盤部51aの外縁に沿って外側に向かって立設された外周壁51bと、ロッキングベース54に形成された軸部に挿通される中心部51cと、を備えている。円盤部51aと外周壁51bとにより形成された空間にはフライホイール53が配置される。
【0034】
円盤部51aには、ロックパウル52のピン52cを案内する案内溝51d、フライホイール53を旋回可能に支持する旋回軸等が形成されている。外周壁51bの外周面には、ビークルセンサ55と係合可能な歯部51eが形成されている。
【0035】
フライホイール53は、ロックギア51の円盤部51a、外周壁51b及び中心部51cに囲まれた空間に挿入可能な形状に湾曲又は屈曲した形状を有している。また、ロックギア51には、フライホイール53を相対回転方向と反対方向に付勢するフックスプリングが配置されている。ウェビングが通常の引き出し速度よりも速い場合には、フライホイール53が揺動してリテーナカバー56に形成された内歯に係合する。
【0036】
ビークルセンサ55は、例えば、球形の質量体と、質量体の移動によって揺動されるセンサレバーと、を有している。車両衝突時等の緊急時にビークルセンサ55が作動した場合には、センサレバーがロックギア51の外周壁51bに形成された歯部51eに係合する。
【0037】
リテーナカバー56は、ロック機構5の構成部品(例えば、ロックギア51、ビークルセンサ55等)を収容する空間を備えたカバー部材である。リテーナカバー56は、ベースフレーム3の側面部31に固定される。なお、ベースフレーム3の側面部31にはビークルセンサ55を嵌合させる開口部31bが形成されていてもよい。
【0038】
フライホイール53又はビークルセンサ55の作動によりロックギア51の回転が規制されると、ロッキングベース54とロックギア51との間に相対回転が生じ、この相対回転に伴ってロックパウル52がロッキングベース54の側面部から径方向外方に突出される。ロックパウル52がベースフレーム3の開口部31aの係合歯に係合するとスプール2の第一端部21がベースフレーム3に拘束された状態となり、スプール2の回転がロックされウェビングの引き出しが規制される。
【0039】
エネルギー吸収部材6は、例えば、スプール2の中心部に形成された空洞に挿通されたトーションバーである。トーションバーは、ロック機構5の構成部品(ロッキングベース54)に固定される第一端部61と、ストッパ機構7の構成部品(ストッパベース)に固定される第二端部62と、第一端部61及び第二端部62を連結する軸部63と、を備えている。
【0040】
軸部63は、第一端部61と第二端部62との間に回転差による捩れ荷重が生じた場合に、所定の閾値を超える荷重が負荷されるまでは捩れないように構成されている。そして、軸部63に所定の閾値を超える捩れ荷重が生じた場合には、軸部63が捩れることによってスプール2が回転しウェビングが引き出される。
【0041】
なお、エネルギー吸収部材6は、ロック機構5の作動後にウェビングを引き出し可能な状態に遷移し得る構成であれば、図示したトーションバーに限定されるものではない。例えば、エネルギー吸収部材6は、シャフトとワイヤ状又はプレート状の塑性変形部材との組み合わせによって構成される構成であってもよい。
【0042】
ストッパ機構7は、例えば、スプール2の第二端部22に固定されるストッパベース71と、スプール2に対して相対回転可能にストッパベース71に配置されたストッパギア72と、スプール2の径方向に出没可能にストッパベース71に配置されたストッパパウル73と、スプール2とストッパギア72との相対回転を生じさせるアクチュエータ74と、スプール2の回転数を検知する回転センサ75と、ストッパ機構7の構成部品を収容するストッパリテーナ76と、を備えている。
【0043】
ストッパベース71は、ロック機構5が配置された側と反対側であるスプール2の第二端部22に接続される略円盤形状の部品である。スプール2の第二端部22には、ストッパベース71を固定する多角形状の凹部22aが形成されている。ストッパベース71のスプール2側の端部には凹部22aに嵌合する凸部が形成されている。ストッパベース71は、ストッパプレート32の開口部32aに挿通され、外周部が開口部32aの係合歯と対峙するように配置される。
【0044】
ストッパベース71は、ストッパパウル73を収容可能な厚さを有し、外周の一部にストッパパウル73を収容可能な空間を形成する凹部71aを有している。また、ストッパベース71の中心部にはスプリングユニット4側に延びる軸部71bを備えている。軸部71bはスプール2の回転軸と同軸上に配置される。
【0045】
ストッパギア72は、例えば、ストッパベース71に対面するように配置される円盤部72aと、円盤部72aの外縁に沿って外側に向かって立設された外周壁72bと、ストッパベース71の軸部71bに挿通される中心部72cと、を備えている。円盤部72aには、ストッパパウル73を案内する案内溝72dが形成されている。また、外周壁72bの外周面には、アクチュエータ74と係合可能な歯部72eが形成されている。
【0046】
ストッパパウル73は、ストッパベース71に形成された旋回軸に回動可能に配置される第一端部73aと、第一端部73aを中心に旋回可能に構成された第二端部73bと、を備えている。第二端部73bは、ストッパギア72に形成された案内溝72dに挿通されるピン73cと、ストッパプレート32の係合歯に係合可能な係合爪73dと、を備えている。
【0047】
ストッパパウル73は、ストッパギア72がスプール2(ストッパベース71)に対して相対回転すると案内溝72dに沿ってピン73cが移動し、第二端部73bがストッパベース71の側面から径方向に押し出され、係合爪73dがストッパプレート32の係合歯に係合する。この係合によりスプール2の回転がロックされウェビングの引き出しが規制される。なお、ストッパパウル73の第二端部73bは、係合爪73dがストッパベース71の側面から径方向外方に飛び出さないように、パウルスプリングにより径方向内方に付勢されている。
【0048】
アクチュエータ74は、ストッパギア72の外周壁72bの外周面に形成された歯部72eと対峙する位置に配置されている。アクチュエータ74は、例えば、ストッパギア72の歯部72eに対して接近又は離隔する爪部74aと、爪部74aを接近又は離隔させるソレノイド74bと、を備えている。
【0049】
ソレノイド74bは、回転センサ75の出力に基づく電気信号により作動するように構成されている。ソレノイド74bは、作動時に爪部74aをストッパギア72に接近させるように構成されている。爪部74aがストッパギア72の歯部72eに係合するとストッパギア72の回転が規制される。すなわち、アクチュエータ74は、ソレノイド74bによりストッパギア72の回転を規制するように構成されている。
【0050】
回転センサ75は、例えば、ストッパベース71の軸部71bに固定させる歯車形状のセンサギア75aと、センサギア75aと噛み合って回転する歯車機構を備えたマグネット板75bと、マグネット板75bの回転数を計測する計測部75cと、計測した回転数を制御装置(例えば、車両の電子制御装置等)に電気的に接続される端子75dと、を備えている。
【0051】
センサギア75aは、ストッパベース71を介してスプール2と同期して回転するように構成されている。マグネット板75bは、外周に沿ってS極とN極とが交互に配置されている。計測部75cは、マグネット板75bの磁極の変化を読み取ってスプール2の回転数を出力するエンコーダである。なお、回転センサ75は、スプール2の回転数を計測することができるセンサであれば図示した構成に限定されるものではない。
【0052】
ストッパリテーナ76は、ストッパ機構7の構成部品を収容する部品である。ストッパリテーナ76は、例えば、ストッパベース71及びストッパギア72を挿通する開口部76aと回転センサ75及びスプリングユニット4を収容する凹部76bと、アクチュエータ74を収容する空間と、を備えている。ストッパベース71の軸部71bは、先端がスプリングユニット4のコア部に接続される。
【0053】
ストッパリテーナ76は、ベースフレーム3又はストッパプレート32に固定される。また、ストッパリテーナ76の端面には、開口部76a及び凹部76bを封止するリテーナカバー77が配置される。また、ストッパプレート32にアクチュエータ74を固定するための開口部32bを有していてもよい。
【0054】
なお、ストッパリテーナ76及びリテーナカバー77は図示した構成に限定されるものではなく、ストッパ機構7の構成によって適宜変更可能である。また、図2に示した斜視図では、ストッパ機構7の組立状態をわかりやすくするために、ストッパリテーナ76及びリテーナカバー77の図を省略してある。
【0055】
ここで、図3は、ストッパ機構7の作動フローを示す図である。ストッパ機構7の作動フローは、ウェビング引き出し量を取得する第一工程Step1と、車両の衝突を検知したか否か確認する第二工程Step2と、ウェビング引き出し量が所定の第一閾値を超えているか否かを確認する第三工程Step3と、エネルギー吸収部材6が作動する第四工程Step4と、スプール2の回転数が所定の第二閾値を超えているか否か確認する第五工程Step5と、ストッパ機構7が作動する第六工程Step6と、を備えている。
【0056】
第一工程Step1は、乗員が乗車したときのウェビングの引き出し量を初期値として取得する工程である。
【0057】
第二工程Step2は、車両に搭載された衝突検知センサ(ビークルセンサ55を含む)により車両の衝突を検知する工程である。
【0058】
第三工程Step3は、第一工程Step1により取得されたウェビング引き出し量の初期値が所定の第一閾値を超えているか否かを判断する工程である。車両の衝突が発生する前からウェビングの引き出し量が多い場合には、車両衝突時にウェビングをそれ以上に引き出さないようにする。
【0059】
したがって、ウェビング引き出し量の初期値が所定の第一閾値を超えている場合(Yes)には、第四工程Step4及び第五工程Step5をスキップして第六工程Step6に移行し、ストッパ機構7を作動させてスプール2のウェビング引き出し方向の回転を規制する。ウェビング引き出し量の初期値が所定の第一閾値を超えていない場合(No)には、ウェビングを引き出す余裕が残っていることから第四工程Step4に移行する。
【0060】
第四工程Step4は、車両衝突後にロック機構5が作動してスプール2の回転が規制された状態でエネルギー吸収部材6が作動してウェビングを引き出す工程である。エネルギー吸収部材6がトーションバーである場合は、第四工程Step4はトーションバーが捩れる工程である。
【0061】
第五工程Step5は、エネルギー吸収部材6が作動後のウェビング引き出し量を監視する工程である。スプール2の回転数を計測することによりウェビング引き出し量を算出することができるため、スプール2の回転数を計測することはウェビング引き出し量を検出することと実質的に同義である。
【0062】
エネルギー吸収部材6が作動してウェビングの引き出し量が多くなった場合にはウェビングをそれ以上に引き出さないようにする必要がある。したがって、スプール2の回転数(すなわち、ウェビング引き出し量)が所定の第二閾値を超えている場合(Yes)には、第六工程Step6に移行し、ストッパ機構7を作動させてスプール2のウェビング引き出し方向の回転を規制する。
【0063】
また、スプール2の回転数(すなわち、ウェビング引き出し量)が所定の第二閾値を超えていない場合(No)には、ウェビングを引き出す余裕が残っていることからエネルギー吸収部材6の作動を継続する。
【0064】
第六工程Step6は、ウェビングの引き出し量が所定の閾値(第一閾値又は第二閾値)を超えた場合にストッパ機構7を作動させる工程である。第一閾値及び第二閾値は同じ数値に設定してもよいし、異なる数値に設定してもよい。
【0065】
次に、ストッパ機構7の作動について、図4(A)~図5(B)を参照しつつ説明する。ここで、図4は、ストッパ機構の作動状態の説明図であり、(A)は作動前の状態、(B)はアクチュエータの係合状態、を示している。図5は、ストッパ機構の作動状態の説明図であり、(A)はストッパパウルの移動状態、(B)はストッパパウルの係合状態、を示している。
【0066】
図4(A)に示したように、ストッパ機構7が作動していない通常時において、アクチュエータ74の爪部74aは、ストッパギア72の歯部72eから離隔した位置に待機している。
【0067】
図4(B)に示したように、回転センサ75の出力に基づいて車両の電子制御装置(ECU)からストッパ機構7を作動させる電気信号が送信されると、ソレノイド74bに電圧が印加されて作動し、爪部74aがストッパギア72の歯部72eに接近して係合することとなる。
【0068】
図5(A)に示したように、アクチュエータ74がストッパギア72に係合するとストッパギア72の回転が規制され、スプール2との間で相対回転を生じる。この相対回転によりストッパパウル73のピン73cがストッパギア72の案内溝72dに沿って移動する。
【0069】
ストッパギア72の案内溝72dは、ピン73cが始端(径方向内側の端部)に位置している場合にはストッパパウル73の係合爪73dがストッパベース71の枠内に収まるように構成されている。また、ストッパギア72の案内溝72dは、ピン73cが始端から終端(径方向外側の端部)に向かって移動するに連れて、ストッパパウル73の係合爪73dがストッパベース71の枠内からスプール2の径方向外方に突出するように構成されている。
【0070】
図5(B)に示したように、ピン73cが案内溝72dの終端に移動すると、ストッパパウル73の係合爪73dが開口部32aに形成された係合歯に係合する。ストッパパウル73がベースフレーム3に係合するとスプール2のウェビング引き出し方向の回転が規制される。なお、図5(B)では、説明の便宜上、ストッパギア72の図を省略してある。
【0071】
上述した第一実施形態に係るシートベルトリトラクタ1によれば、エネルギー吸収部材6によるスプール2の回転を規制するストッパ機構7をロック機構5と反対側に配置したことにより、シートベルトリトラクタ1の設計自由度を向上することができる。また、ストッパ機構7をロック機構5及びエネルギー吸収部材6と切り離して配置したことにより、エネルギー吸収荷重の設定自由度を向上することができる。
【0072】
また、ストッパ機構7を回転センサ75の出力に基づく電気信号により作動するように構成したことにより、エネルギー吸収荷重の設定自由度をより向上することができる。また、ロック機構5及びストッパ機構7によりスプール2の両端をベースフレーム3に係合させることにより、スプール2の回転を安定した状態で規制することができる。
【0073】
次に、本発明の第二実施形態に係るシートベルトリトラクタ1について、図6及び図7を参照しつつ説明する。ここで、図6は、本発明の第二実施形態に係るシートベルトリトラクタを示す部品展開図である。図7は、図6に示したシートベルトリトラクタの組立状態を示す部分斜視図である。
【0074】
なお、図6及び図7において、説明の便宜上、ウェビングの図を省略してある。また、図7に示した斜視図では、ストッパ機構7及びスプール駆動機構9の組立状態をわかりやすくするために、ストッパリテーナ76及びリテーナカバー77の図を省略してある。また、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0075】
図6及び図7に示した第二実施形態に係るシートベルトリトラクタ1は、スプール2の回転を制御するスプール駆動機構9を有している。スプール駆動機構9は、駆動源を構成する駆動モータ91と、センサギア75aに動力を伝達する歯車機構92と、を備えている。駆動モータ91の動力を歯車機構92を介してセンサギア75aに伝達することによりスプール2を任意のタイミングで任意の分量だけ回転させることができ、高精度な回転制御を実現することができる。
【0076】
なお、歯車機構92は、例えば、モータの駆動軸に連結されたピニオン、センサギア75aに噛み合う二段歯車、ピニオン及び二段歯車に噛み合う歯車等により構成される。また、スプール駆動機構9は図示した構成に限定されるものではない。
【0077】
スプール駆動機構9を有するシートベルトリトラクタ1は、スプール2の回転数を計測しながらスプール2の回転を制御する必要がある。したがって、ストッパ機構7とスプール駆動機構9とを併用することにより回転センサ75を共有化することができ、親和性に優れている。スプール駆動機構9以外の構成については、上述した第一実施形態と実質的に同じであるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、ストッパリテーナ76は、スプール駆動機構9を収容するように構成されていてもよい。
【0078】
次に、本発明の一実施形態に係るシートベルト装置について、図8を参照しつつ説明する。ここで、図8は、本発明の一実施形態に係るシートベルト装置を示す全体構成図である。なお、図8において、説明の便宜上、シートベルト装置以外の部品については、一点鎖線で図示している。
【0079】
図8に示した本実施形態に係るシートベルト装置100は、乗員を拘束するウェビングWと、ウェビングWの巻き取りを行うシートベルトリトラクタ1と、車体側に設けられウェビングWを案内するガイドアンカー101と、ウェビングWを車体側に固定するベルトアンカー102と、乗員が着座するシートSの側面に配置されたバックル103と、ウェビングWに配置されたトング104と、を備え、シートベルトリトラクタ1は、例えば、図1又は図6に示した構成を有している。
【0080】
以下、シートベルトリトラクタ1以外の構成部品について簡単に説明する。シートSは、例えば、乗員が着座する腰掛部S1と、乗員の背面に位置する背もたれ部S2と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト部S3と、を備えている。シートベルトリトラクタ1は、例えば、車体のBピラーPに内蔵される。
【0081】
また、一般に、バックル103は腰掛部S1の側面に配置されることが多く、ベルトアンカー102は腰掛部S1の下面に配置されることが多い。また、ガイドアンカー101は、BピラーPに配置されることが多い。そして、ウェビングWは、一端がベルトアンカー102に接続され、他端がガイドアンカー101を介してシートベルトリトラクタ1に接続されている。
【0082】
したがって、トング104をバックル103に嵌着させる場合、ウェビングWはガイドアンカー101の挿通孔を摺動しながらシートベルトリトラクタ1から引き出されることとなる。また、乗員がシートベルトを装着した場合や降車時にシートベルトを解除した場合には、シートベルトリトラクタ1のスプリングユニット4の作用により、ウェビングWは一定の負荷がかかるまで巻き取られる。
【0083】
上述した本実施形態に係るシートベルト装置100は、上述したシートベルトリトラクタ1を備えていることから、エネルギー吸収荷重の設定自由度及びシートベルトリトラクタ1の設計自由度を向上することができる。
【0084】
また、上述したシートベルト装置100は、車両の前部座席に配置されたシートSに適用した場合について説明しているが、シートベルト装置100は後部座席に配置されたシートSに適用するようにしてもよい。また、シートベルト装置100は、車両以外の乗物に使用されるシートベルト装置に適用してもよい。
【0085】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0086】
1 シートベルトリトラクタ
2 スプール
3 ベースフレーム
4 スプリングユニット
5 ロック機構
6 エネルギー吸収部材
7 ストッパ機構
8 プリテンショナ
9 スプール駆動機構
21 第一端部
22 第二端部
22a 凹部
31 側面部
31a,31b 開口部
32 ストッパプレート
32a,32b 開口部
51 ロックギア
51a 円盤部
51b 外周壁
51c 中心部
51d 案内溝
51e 歯部
52 ロックパウル
52a 第一端部
52b 第二端部
52c ピン
52d 係合爪
53 フライホイール
54 ロッキングベース
55 ビークルセンサ
56 リテーナカバー
61 第一端部
62 第二端部
63 軸部
71 ストッパベース
71a 凹部
71b 軸部
72 ストッパギア
72a 円盤部
72b 外周壁
72c 中心部
72d 案内溝
72e 歯部
73 ストッパパウル
73a 第一端部
73b 第二端部
73c ピン
73d 係合爪
74 アクチュエータ
74a 爪部
74b ソレノイド
75 回転センサ
75a センサギア
75b マグネット板
75c 計測部
75d 端子
76 ストッパリテーナ
76a 開口部
76b 凹部
77 リテーナカバー
91 駆動モータ
92 歯車機構
100 シートベルト装置
101 ガイドアンカー
102 ベルトアンカー
103 バックル
104 トング

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8