(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090478
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ブリーディング水除去促進方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20240627BHJP
E04G 21/06 20060101ALI20240627BHJP
E21D 11/10 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
E04G21/02 104
E04G21/06
E21D11/10 Z
E04G21/02 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206423
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000235543
【氏名又は名称】飛島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221615
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 祐子
(72)【発明者】
【氏名】筒井 隆規
(72)【発明者】
【氏名】折田 現太
【テーマコード(参考)】
2D155
2E172
【Fターム(参考)】
2D155CA03
2D155CA08
2D155KC06
2D155LA05
2E172AA05
2E172EA00
2E172FA01
(57)【要約】
【課題】ブリーディング水の蒸発を促進させて、仕上げ作業が着手可能となる時間を短縮させ、しかも、プラスチック収縮ひび割れが発生するなどの懸念を生じさせることなく、また、風の影響で表層の水分が逸散し水和反応が阻害されて耐久性の低下等が生じないブリーディング水除去促進方法を提供する。
【解決手段】本発明は、コンクリート打設後のブリーディング発生中に、前記打設したコンクリートの表面に向けて送風することにより打設したコンクリートのブリーディング水蒸発を促進させ、ブリーディング水の除去を促進することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート打設後のブリーディング発生中に、前記打設したコンクリートの表面に向けて送風することにより打設したコンクリートのブリーディング水蒸発を促進させ、ブリーディング水の除去を促進する、
ことを特徴とするブリーディング水除去促進方法。
【請求項2】
打設したコンクリートの表面をデュロメータC型を用いて貫入測定を行い、該貫入測定値が12.00になるまで送風を続ける、
ことを特徴とする請求項1記載のブリーディング水除去促進方法。
【請求項3】
前記打設したコンクリートの表面に向けて送風する際の風速は、11m/s以下である、
ことを特徴とする請求項1記載のブリーディング水除去促進方法。
【請求項4】
打設したコンクリートのブリーディング時水分蒸発量が1.5(l/m2/h)以下となるよう、コンクリート打設場所の気温及び相対湿度並びにコンクリート表面温度を考慮して送風の風速を選択し、選択した風速でコンクリート面に向けて送風する、
ことを特徴とする請求項1記載のブリーディング水除去促進方法。
【請求項5】
トンネルの内周面に複数の送風機を設置し、該送風機より所定の風速で前記コンクリートの表面に向けて送風することにより打設したコンクリートのブリーディング水の蒸発を促進させ、ブリーディング水の除去を促進する、
ことを特徴とする請求項1記載のブリーディング水除去促進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設の際に生ずるブリーディング水の除去促進方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
寒冷地において、特に冬季等気温が極端に低下する時期になると、コンクリート打設工事の際、打設したコンクリートの凝結が遅くなってしまう現象が起こる。また、ブリーディングの発生時間も長くなってしまい、特に打設後から仕上げ着手可能になるまでの時間が遅延し、ひいてはそれが構造物構築作業の作業遅延の要因ともなっていた。
【0003】
ここで、ブリーディングとは、コンクリートの混練の際に使用した水が、打設後に砂やセメント、骨材など重いものが沈下することにより分離して浮き上がる現象をいい、この浮き上がった水をブリーディング水という。
【0004】
そして、一般的には、ブリーディング水が引き終わる頃に仕上げ作業を行うことで平滑に施工でき、耐久性が向上すると言われている。そのため、気温が低下する時期のように凝結が遅くなると、その分、仕上げ作業着手可能になるまでの時間が遅延する。
【0005】
ここで、コンクリート打設後から仕上げ作業着手までの時間を早くする従来方法としては、例えば次の方法がある。
(a)コンクリート温度を高くする(打設時の養生を工夫する等)
(b)コンクリート配合を変える(凝結の早いセメントに変更など)
(c)凝結促進剤を添加する
【0006】
ただし、これらの方法では、コスト面や品質面、例えば養生コストのアップ、材料コストのアップ、および材料添加の労力がアップすること、並びに配合変更に伴う品質への影響などが懸念されるとの課題がある。
【0007】
一方で、ブリーディング水の除去を促進させるために、例えば過大な風速環境を生じさせて、コンクリート表層を急速に乾燥させる方策などを採用することでの課題解決が考えられる。しかし、このような方策をとると、プラスチック収縮ひび割れが発生するなどの懸念があった。また、風の影響で表層の水分が逸散し水和反応が阻害され、耐久性の低下等を生じさせるとの懸念があり、そのため、従来は、仕上げ作業までの間にコンクリートへ向けての送風は行わないものとされていたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記従来の課題に対処すべく創案されたものであって、本件発明者らは、コンクリートへ向けて送風しても、プラスチック収縮ひび割れを発生すさせず、また、風の影響で表層の水分が逸散し水和反応が阻害され、耐久性の低下等を生じさせずに、ブリーディング水除去を促進させて、仕上げ着手までの時間を短縮する方法を発明した。
【0010】
すなわち、コンクリートへ向けて送風する風速を制御などの操作を行うことにより、確実な仕上げ着手時間の短縮が実現できると共に、確実な仕上げ着手時間のコントロールやコンクリートの打設管理が行えるものとなったのである。
【0011】
よって、本発明は、ブリーディング水の蒸発を促進させて、仕上げ作業が着手可能となる時間を短縮させ、しかも、プラスチック収縮ひび割れが発生するなどの懸念を生じさせることなく、また、風の影響で表層の水分が逸散し水和反応が阻害されて耐久性の低下等が生じないブリーディング水除去促進方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
コンクリート打設後のブリーディング発生中に、前記打設したコンクリートの表面に向けて送風することにより打設したコンクリートのブリーディング水蒸発を促進させ、ブリーディング水の除去を促進する、
ことを特徴とし、
または、
打設したコンクリートの表面をデュロメータC型を用いて貫入測定を行い、該貫入測定値が12.00になるまで送風を続ける、
ことを特徴とし、
または、
前記打設したコンクリートの表面に向けて送風する際の風速は、11m/s以下である、
ことを特徴とし、
または、
打設したコンクリートのブリーディング時水分蒸発量が1.5(l/m2/h)以下となるよう、コンクリート打設場所の気温及び相対湿度並びにコンクリート表面温度を考慮して送風の風速を選択し、選択した風速でコンクリート面に向けて送風する、
ことを特徴とし、
または、
トンネルの内周面に複数の送風機を設置し、該送風機より所定の風速で前記コンクリートの表面に向けて送風することにより打設したコンクリートのブリーディング水の蒸発を促進させ、ブリーディング水の除去を促進する、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ブリーディング水の蒸発を促進させて、仕上げ作業が着手可能となる時間を短縮させることが出来、しかも、プラスチック収縮ひび割れが発生するなどを生じさせず、また、風の影響で表層の水分が逸散し水和反応が阻害されて耐久性の低下等が生じないブリーディング水除去促進方法を提供出来るとの優れた効果を奏する。
【0014】
すなわち、本発明では、前述した従来型技術的常識に反し、ブリーディング発生中にコンクリート表面に向けて送風することで、ブリーディング水の蒸発を促進させ、打設後から仕上げ作業開始までの時間を短縮するものである。
また、11m/s以下で、気温(環境温度)、相対湿度、コンクリート表面温度に基づき算出される水分蒸発量を1(l/m2/h)以下にすることで、ひび割れの発生やコンクリート品質の低下を防止できるものとなった。
【0015】
本発明では、従来と同じ品質(設計通り)で、作業時間を短縮・コントロールできるというメリットがある。
特に、屋内・トンネル坑内のような空気が循環しにくい環境や、寒冷地の冬季のような温度が低くコンクリートの凝結が遅くなる環境では、大きな効果を発揮する。
また、屋内・トンネル坑内での副次的な効果(送風による空調効果)として、夏季においては作業時の作業環境を改善(冷却効果をもたらす)でき、冬季においては熱を循環させて凍害の防止および養生温度の維持が可能となる。
尚、屋内やトンネル坑内での適用が特に効果的であるが、屋外でも実施可能であるため、コンクリート工事全般で適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】コンクリートの配合例を説明する説明図である。
【
図4】ブリーディング試験結果を説明する説明図である。
【
図5】デュロメータC型を用いた貫入抵抗値の測定による凝結時間試験結果を説明する説明図である。
【
図6】打設後の微細ひび割れ等の変状などを説明する説明図である。
【
図7】打設後の試験体外観経時変化を説明する説明図である。
【
図8】「プラスチック収縮ひび割れに関する考察」を説明する説明図(1)である。
【
図9】「プラスチック収縮ひび割れに関する考察」を説明する説明図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(本発明の概要)
本発明は、コンクリートの打設直後から、ブリーディング発生中のコンクリート表面へ向けて送風することで実施される。
コンクリート表面に向けて送風することによりブリーディング水を蒸発させてその除去を促進し、寒冷地で行う工事であってもコンクリート打設後からの仕上げ着手可能時間を短縮できる。
しかも、前記送風によりひび割れが発生せず、コンクリート品質も従来と同等レベルで確保できることが実験で確認できたのである。
【0018】
以下、本発明を図に示す実施例に基づき説明する。
まず、本件発明者らは本発明についての実験を行っているので
図1に基づいて本発明の実験概要につき説明する。
図1において、試験体2に向けて送風する送風機1には扇風機を使用できる。そして、送風機1から風を送風する試験体2は、所定配合のコンクリートを打設して形成した。試験体2のケースは箱状に形成し、そのケースの中にコンクリートを打設した。ケースの表面は開口して露出しており、打設したコンクリートの表面部が露出している。
【0019】
このコンクリートの露出面、すなわち、コンクリート表面に送風機1からの風を送風して当てるものとなる。そして、風が当たったコンクリートの表面からブリーディング水が蒸発するか否か検証した。
前記打設されたコンクリートの配合例としては、
図2に示すコンクリート配合が挙げられる。しかし、かかる配合に限定されるものではない。
【0020】
実験環境としては、室温15℃、相対湿度50%の環境で行った。しかし、この環境下に限定されるものではなく、室温が15℃でなくとも構わない。
試験体2のケースの寸法としては、497mm×360mm×180mm(B×D×H)の箱状ケースを使用した。また、送風機1での風速は0m/s、3.4m/s、7.2m/sの3つの風速で試験体2の表面に向けて送風し、実験を行った。
【0021】
そして、前記風速の違いによる前記試験体2内のコンクリートの諸性状を次の項目で検証した。
すなわち、試験項目としては、ブリーディング試験を行い、該試験によるブリーディング発生量、発生時間の確認を行った。
また、デュロメータC型を用いて貫入抵抗値の測定を行った。その目的は、仕上げ開始タイミングの検証、換言すれば仕上げ面のコンクリート表面「押さえ」のタイミング検証のためである。コンクリート表面に風を当てることにより、「押さえ」のタイミングが如何に短縮されるか検証した。
【0022】
ここで、コンクリート押さえは、コンクリートの表面を平坦にするだけでなく、仕上げ面のコンクリートを緻密にして強化することを目的としている。コンクリートは、材料を混合して練混ぜた直後からセメントの水和が始まり、打込み直後からブリーディング(打ち込んだコ ンクリート表面から練り混ぜ水の一部が上昇する現象Bleeding)が生じ始める。よって、ブリーディングが終わり、コンクリートの凝結以前の時点で、「押さえ」をする必要がある。
図5に示す様に、デュロメータC型を用いた貫入抵抗値の値が12.00になったときが押さえの実施時期とされるのである。風速の違いにより貫入抵抗値の値が12.00になるまでの時間が異なることが検証された。
【0023】
さらに、コンクリートの外観目視確認を行った。ブリーディングの発生度合い、ブリーディングが終了するタイミングを確認するためである。
なお、ブリーディング終了のタイミングを判断する方法としては、「JIS A1123 ブリーディングの試験方法」や「JCI-S-015-2018 小型容器によるコンクリートのブリーディング試験方法」がある。また、目視以外にも、特殊カメラによるコンクリート表面の反射強度により判断する方法等もある。そして、仕上げ作業着手可能となるタイミングは、デュロメータC型を用いた貫入抵抗値だけでなく、これらの方法により判断してもよい。
【0024】
また、表層硬度、コンクリート強度の確認のため、機械インピーダンス測定(材齢28日)を行った。さらに、耐久性の確認のため、透気試験(材齢28日以降)を行った。
【0025】
(試験結果)
1 ブリーディング試験、デュロメータによる貫入抵抗値の測定について
送風機2からの風速が増すと、ブリーディングの総量が減少し、ブリーディング終了時刻も早くなる傾向がみられた。
また、風速が大きいほど(ブリーディング総量が小さいほど)コンクリートの凝結時間が早い傾向がみられた。
【0026】
2 外観目視確認
風速0m/sでは,押さえ開始の硬さでブリーディング水が上面に残っていた。しかし、風速を与えて送風すると、押さえ開始の硬さでブリーディング水が上面に残ることはなかった。
また、押さえ実施時期まで風速のある風を当てても、打設したコンクリートにプラスチック収縮ひび割れ等の不具合は見られなかった。
【0027】
3 引掻き試験
打設3日後においても微細ひび割れ等の変状は見られなかった。
また、引掻き試験では、0m/sの条件で0.50mmであったが、風速3.4m/s、7.2m/sの条件では0.35mmで引掻き傷幅が小さく、表層の硬度が高いとの結果が得られた。
上記の結果から考察すると、コンクリートに所定風速の風を当てるとコンクリートに戻るはずの余剰水が蒸発し、もって、無風の場合と比べ、マクロ的に表層の水セメント比が小さくなり、表層硬度が増大したことが検証された。
【0028】
4 材齢28日での推定圧縮強度
風の有無、風速の違いによる長期圧縮強度への影響は見られなかった。よって、かかる結果から、風を当てることによるコンクリート強度への影響はほとんどないと検証できた。
【0029】
5 材齢28日以降での透気試験
風の有無、風速の違いによる透気係数への影響は見られなかった。よって、コンクリートに強制的に風を当てることによって、その耐久性への影響はほとんどないと検証できた。
【0030】
(実験による実証事項)
ブリーディング水発生中において、該ブリーディング面に向かって風を当てることで、ブリーディング水の蒸発を促進できるとともに、ブリーディング水の総量も低減できる。そして、風速が大きいほど、ブリーディング水の総量が減少し、ブリーディング終了時刻も早くなる傾向が確認できた(
図4参照)。
【0031】
また、デュロメータC型を用いた貫入抵抗値の測定による凝結時間の測定から風速が大きいほど(ブリーディング水総量が少ないほど)、コンクリートの凝結開始が早くなる傾向が確認できた(
図5参照)。
【0032】
図5から理解されるように、風速7.2msでは、コンクリート打設からの経過時間が417分で押さえ実施期間となる12.00の値に到達し、風速3.4msでは、コンクリート打設からの経過時間が440分で押さえ実施期間となる12.00の値に到達し、風速0msでは、コンクリート打設からの経過時間が470分で押さえ実施期間となる12.00の値に到達したことが認識できる。
【0033】
さらに、ブリーディング中に風を当てることで、前記ブリーディング面の表層硬度を向上させられることも確認できた。すなわち、打設3日後においても微細ひび割れ等の変状は見られなかったし、引掻き試験では、 0m/s の条件で0.50mmであったが、風速3.4m/s、7.2m/sの条件では0.35mmで引掻き傷幅が小さく、表層の硬度が高い結果となった(
図6参照)。
【0034】
ブリーディング発生中に風を当てることで、コンクリートに戻るはずの余剰水が蒸発し、無風の場合と比べ表層の水セメント比が小さくなり、表層硬度が増大したと考えられる。すなわち、前記の現象は、コンクリートに戻るはずの余剰水(水和反応しなかった水)が蒸発したことにより、ミクロ的に見て表層の水/セメント比が小さくなり(全体として(マクロ的に)は水/セメント比に影響なし)、強度が上昇したと考えられるのである。
【0035】
また、
図7に示す様に、押さえ実施時期まで風を当てても、プラスチック収縮ひび割れ等の不具合は見られなかった。さらに、風の有無や風速の違いによる長期圧縮強度への影響はみられず(材齢28日での推定圧縮強度測定)、風の有無や風速の違いによる透気係数(耐久性)への影響もなかった(材齢28日以降での透気試験)。
【0036】
(まとめ)
以上の実験により、コンクリート打設後からブリーディング終了までの間にコンクリート表面に向けて送風することで、ブリーディング水の蒸発を促進させて、仕上げ作業が着手可能となる時間を短縮させることが出来、しかも、
図7に示す様にプラスチック収縮ひび割れが発生するなどを生じさせず、また、風の影響で表層の水分が逸散し水和反応が阻害されて耐久性の低下等が生じないとの結果が得られた。
【0037】
また、風速が大きいほど、ブリーディング終了や凝結開始が早くなるため、コンクリート打設前に予めその工事現場で想定される条件にて風速とブリーディング終了・凝結開始の相関関係を把握しておくことで、実際の作業工程に合わせて仕上げ作業が着手可能となる時間をコントロールできる可能性がある。
【0038】
図8、
図9では、コンクリート打設工事を行う場所の気温、相対湿度、並びにコンクリート表面温度の値から、打設したコンクリートの水分蒸発量(l/m
2/h)がひび割れ危険性の範囲である1以上の値、あるいは1.5以上の値とならない範囲を実験により考察し、明示したものである。
【0039】
例えば、コンクリート打設工事を行う場所の気温が15℃で相対湿度が50%、コンクリートの表面温度が10乃至12℃の場合、
図8から理解されるように、風速が11m/sであっても水分蒸発量は1(l/m
2/h)以下となり、プラスチック収縮ひび割れが発生しないと考えられるのである。また、たとえ、水分蒸発量が1.5(l/m
2/h)以下であったとしてもプラスチック収縮ひび割れは発生しないと考えられる。
【0040】
さらに、
図9に示す様に、例えば、コンクリート打設工事を行う場所の気温が15℃で相対湿度が90%であっても、コンクリートの表面温度が10乃至12℃の場合においては、水分蒸発量は1(l/m
2/h)以下となり、プラスチック収縮ひび割れが発生しないと考えられるのである。特に、トンネル内でのコンクリート打設作業においては、トンネル内の湿度が90%になる場合が多々あり、その場合でもコンクリートの表面温度が15℃以下であれば、水分蒸発量がほぼゼロとなり、もってプラスチック収縮ひび割れが発生しないことが検証された。
【0041】
(現実の適用例)
本発明は上記のようにトンネル構築工事において、トンネル内周面にコンクリート打設を行う作業などに実施される。
この場合、寒冷地で行うトンネル構築工事ではトンネル内の湿度が約90%程度になる場合が多く、また、トンネル内の気温が15℃の場合、トンネル内周面の両側面及び上面に扇風機などで形成された送風機1をトンネルの長手方向に向かい、間隔をあけて複数個配置し、所定の風速(例えば11m/s以下)をもってトンネル内周面の両側面及び上面のコンクリート表面に風を当てれば、ブリーディング水を蒸発させることが出来、これにより、ブリーディング水の除去を促進できる、
【0042】
従って、トンネル工事であってもコンクリート打設後からの仕上げ着手可能時間を短縮できるとの大きな効果をもたらす。しかも、前記送風によりひび割れが発生せず、コンクリート品質も従来と同等レベルで確保できるのである。
【0043】
なお、本発明は、トンネル坑内や屋内の工事にて特に効果的であるが、これらの工事に限定されることなく、屋外の工事を含むコンクリート打設工事全般に適用可能である。
【0044】
また、本発明では、仕上げ作業着手可能時間を早くできるだけでなく、送風による空調効果により、夏季においては作業時の作業環境を改善(冷却)でき、冬季においては熱を循環させて凍害の防止および養生温度の維持が可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1 送風機
2 試験体