(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009048
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】車両用シート、椅子、及び加熱ユニット
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20240112BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20240112BHJP
A47C 27/00 20060101ALI20240112BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74 B
A47C7/74
A47C27/00 F
B60H1/22 611B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191638
(22)【出願日】2023-11-09
(62)【分割の表示】P 2020043464の分割
【原出願日】2020-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 東鉉
(72)【発明者】
【氏名】高月 涼太
(57)【要約】
【課題】着座者の快適性を向上させることが可能な車両用シート、椅子、及び加熱ユニットを提供する。
【解決手段】乗員の少なくとも臀部及び大腿部を支持するシートクッションと、前記シートクッションの前端部に設けられ、前記乗員の下半身において前記前端部に対応する部位が第1温度となるように加熱する第1加熱部、及び、前記シートクッションの後端部に設けられ、前記乗員の下半身において前記後端部に対応する部位が第2温度となるように加熱する第2加熱部を有する加熱部と、を備える車両用シート。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の少なくとも臀部及び大腿部を支持するシートクッションと、
前記シートクッションの前端部に設けられ、前記乗員の下半身において前記前端部に対応する部位が第1温度となるように加熱する第1加熱部、及び、
前記シートクッションの後端部に設けられ、前記乗員の下半身において前記後端部に対応する部位が第2温度となるように加熱する第2加熱部を有する加熱部と、
を備える車両用シート。
【請求項2】
前記第2温度は、前記第1温度以下とされている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記第1加熱部は、前記シートクッションの前記前端部において、上面側を加熱可能とされている請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記第1加熱部は、前記上面側から前記シートクッションの前面側にかけて加熱可能とされている請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記加熱部は、前記シートクッションの前後方向中間部に設けられ、前記第2温度以下の第3温度に設定される第3加熱部をさらに備える請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記第3加熱部は、前記シートクッションの前側加熱部と、後側加熱部とに分割されており、互いに異なる温度に設定可能とされている請求項5に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記加熱部は、通電により発熱する面状ヒータから構成される請求項1~6のいずれか1項に記載の車両用シート。
【請求項8】
前記面状ヒータは、連続した電熱線を有し、
前記電熱線の線密度に応じて発熱量が変化することにより、前記面状ヒータにおける温度が調整される請求項7に記載の車両用シート。
【請求項9】
着座者の少なくとも臀部及び大腿部を支持する座部と、
前記座部の前端部に設けられ、前記着座者の下半身において前記前端部に対応する部位が第1温度となるように加熱する第1加熱部、及び、前記座部の後端部に設けられ、前記着座者の下半身において前記後端部に対応する部位が第2温度となるように加熱する第2加熱部を有する加熱部とを備える椅子。
【請求項10】
着座者の少なくとも臀部及び大腿部を支持する座部に設置可能な加熱ユニットであって、
前記座部の前端部に対応する位置に設けられ、前記着座者の下半身において前記前端部に対応する部位が第1温度となるように加熱する第1加熱部、及び、前記座部の後端部に対応する位置に設けられ、前記着座者の下半身において前記後端部に対応する部位が第2温度となるように加熱する第2加熱部を有する加熱部と
を備える加熱ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート、椅子、及び加熱ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
シートバックのシート上下方向中間部及びシートクッションのシート前後方向中間部において着座乗員を温めることにより、着座乗員の疲労を軽減しようとする技術が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の技術では、着座乗員がシートに支持される部位のうち温められる対象となる部位は、比較的心臓に近くかつ静脈から遠い部分(言い換えれば皮膚から静脈が遠い部分)となっている。このため、上記特許文献1では、着座乗員の血液循環を改善するうえでは必ずしも高い効果が期待できず、着座乗員の疲労蓄積を抑制するといったシートにおける快適性という観点からは改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、着座者の疲労蓄積の抑制といった着座時の快適性を向上させることが可能な車両用シート、椅子、及び加熱ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、乗員の少なくとも臀部及び大腿部を支持するシートクッションと、上記シートクッションの前端部に設けられ、上記乗員の下半身において上記前端部に対応する部位が第1温度となるように加熱する第1加熱部、及び、上記シートクッションの後端部に設けられ、上記乗員の下半身において上記後端部に対応する部位が第2温度となるように加熱する第2加熱部を有する加熱部と、を備える車両用シートが提供される。
【0007】
上記第2温度は、上記第1温度以下とされてもよい。
【0008】
上記第1加熱部は、上記シートクッションの上記前端部において、上面側を加熱可能とされてもよい。
【0009】
上記第1加熱部は、上記上面側から上記シートクッションの前面側にかけて加熱可能とされてもよい。
【0010】
上記加熱部は、上記シートクッションの前後方向中間部に設けられ、上記第2温度以下の第3温度に設定される第3加熱部をさらに備えてもよい。
【0011】
上記第3加熱部は、上記シートクッションの前側加熱部と、後側加熱部とに分割されており、互いに異なる温度に設定可能とされてもよい。
【0012】
上記加熱部は、通電により発熱する面状ヒータから構成されてもよい。
【0013】
上記面状ヒータは、連続した電熱線を有し、上記電熱線の線密度に応じて発熱量が変化することにより、上記面状ヒータにおける温度が調整されてもよい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、着座者の少なくとも臀部及び大腿部を支持する座部と、上記座部の前端部に設けられ、上記着座者の下半身において上記前端部に対応する部位が第1温度となるように加熱する第1加熱部、及び、上記座部の後端部に設けられ、上記着座者の下半身において上記後端部に対応する部位が第2温度となるように加熱する第2加熱部を有する加熱部とを備える椅子が提供される。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、着座者の少なくとも臀部及び大腿部を支持する座部に設置可能な加熱ユニットであって、上記座部の前端部に対応する位置に設けられ、上記着座者の下半身において上記前端部に対応する部位が第1温度となるように加熱する第1加熱部、及び、上記座部の後端部に対応する位置に設けられ、上記着座者の下半身において上記後端部に対応する部位が第2温度となるように加熱する第2加熱部を有する加熱部とを備える加熱ユニットが提供される。
【発明の効果】
【0016】
以上、説明したように本発明によれば、着座者の快適性を向上させることが可能な車両用シート、椅子、及び加熱ユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用シートの構成例を示す側面図である。
【
図2】同実施形態に係るシートクッションの構成例を示す外観斜視図である。
【
図3】同実施形態に係る加熱部の加熱範囲の説明の用に供される図である。
【
図4】同実施形態に係る加熱部の加熱範囲の説明の用に供される図である。
【
図5】同実施形態に係る加熱部の構成例を示す平面図である。
【
図6】同実施形態に係る加熱部の構成例を示す前面図である。
【
図7】同実施形態の一の変形例に係るシートクッションの構成例を示す外観斜視図である。
【
図8】同実施形態の一の変形例に係る車両用シートの構成例を示す側面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る椅子の構成例を示す外観斜視図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係る加熱ユニットの構成例を示す側面図である。
【
図11】同実施形態に係る加熱ユニットの構成例を示す外観斜視図である。
【
図12】同実施形態に係る加熱ユニットの構成例を示す平面図である。
【
図13】実施例として、生体インピーダンスと経過時間の関係を示すグラフである。
【
図14】実施例として、下肢疲労感官能評価の試験結果を示すグラフである。
【
図15】実施例として、全体温感官能評価の試験結果を示すグラフである。
【
図16】実施例として、下肢快適性官能評価の試験結果を示すグラフである。
【
図17】実施例として、皮膚温度と経過時間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<<第1の実施位形態>>
<1.車両用シートの構成>
以下に添付図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
本実施形態に係る車両用シート10について
図1及び
図2を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRはシート前方側を示しており、矢印UPはシート上方側を示しており、矢印Wはシート幅方向を示している。
【0020】
図1を参照しながら、本実施形態に係る車両用シート10の概略構成について説明する。
図1には、本実施形態に係る車両用シート10が模式的な側面図で示されている。本実施形態に係る車両用シート10は、車両(例えば、自動車、又は電車等)に設置される。
図1に示すように、車両用シート10は、着座乗員P(以下、単に乗員と称する)の臀部及び大腿部を支持するシートクッション12と、乗員Pの背部を支持するシートバック14と、乗員Pの頭部を支持するヘッドレスト16と、を備えている。シートクッション12は、シートクッションフレーム(図示省略)にクッションパッド(図示省略)が取り付けられ、更にその表面をトリムが覆うことにより構成されている。このシートクッション12の内部には、加熱部20が設けられている。
【0021】
図2は、シートクッション12の外観斜視図である。
図2に示すように、シートクッション12には、加熱部20が設けられている。加熱部20は、シートクッション12の内部に設けられる。特に、加熱部20は、シートクッション12の内部において、座面(上面)側に設けられる。詳細は後述するが、加熱部20は、通電により発熱する面状ヒータであり、当該面状ヒータの面内方向が座面に沿うように設けられる。加熱部20は、乗員Pの下半身の一部を加熱可能とされている。以下に、
図3及び
図4を参照しながら、加熱部20による加熱範囲及び作用について説明する。
【0022】
<2.加熱部位と疲労低減作用の関係>
図3及び
図4は、本実施形態に係る加熱部20の加熱範囲の説明の用に供される図である。
図3に示すように、乗員Pの下半身において臀部~大腿部~膝関節の部位がシートクッション12に接触し得る。具体的には、臀部近傍に存在する腰仙関節点Sから大腿回転中心Dにかけての範囲、及び大腿回転中心Dから膝関節点Hにかけての範囲がシートクッション12に接触する。なお、大腿回転中心Dは、着座時のヒップポイントHPに相当する。
【0023】
ここで、人体に加わる温熱による効果として、血流循環の促進に伴う疲労低減効果が挙げられる。すなわち、温熱による血管拡張等によって、体内に蓄積した疲労物質を血中へ排出することで、疲労感の低減効果が得られる。さらに、
図4に示すように、乗員Pの下半身には比較的太い血管Kが存在している。特に、長時間の着座によって、この比較的太い血管Kが圧迫されたり、せん断力を受けたりすると血流が阻害され、疲労物質が蓄積されやすくなる。一方で、かかる下半身の部位において、比較的太い血管Kは、部分的に皮膚に近い位置に存在する。
【0024】
そこで、本発明者らが鋭意検討したところ、シートクッション12において、乗員Pの下半身の部位に応じた適切な加熱を行うことで、血流循環を促進し、疲労蓄積の抑制という快適性の向上効果が得られる車両用シート10を想到した。
【0025】
以下に、
図3で説明した乗員Pの下半身の部位と、シートクッション12の領域との対応について説明する。
図4に示すように、シートクッション12に着座した状態において、乗員Pの下半身とシートクッション12とが接触する範囲は、上記した臀部~大腿部~膝関節の部位に応じて、4つの範囲に分けられる。具体的には、
図4に示すように、先ず大腿回転中心D(すなわち、ヒップポイントHP)と膝関節点Hとの間の距離Lを等分したときの膝関節点H側の領域が、第1範囲R1とされる。第1範囲R1は、乗員Pの下半身における膝裏部分である。そして、大腿回転中心Dと膝関節点Hとの間の距離Lの中点から、大腿回転中心D側へ、距離Lの30%の距離に亘る範囲が、第2範囲R2とされる。第2範囲R2は、乗員Pの下半身における大腿部である。さらに、大腿回転中心Dと膝関節点Hとの間の距離Lにおいて、大腿回転中心D側の第1、第2範囲以外の範囲が、第3範囲R3とされる。第3範囲R3は、乗員Pの下半身における臀部である。そして、ヒップポイントHPから腰仙関節点Sに対応する位置までの範囲が、第4範囲R4とされる。第4範囲R4は、乗員Pの下半身における仙骨部分である。
【0026】
上記のように4つに区分される乗員Pの下半身の範囲に対応して、シートクッション12に設けられる加熱部20も4つの領域に区分される。すなわち、第1範囲R1である膝裏部分に対応する部分は、シートクッション12の前端部12Aである。また、第2範囲R2である大腿部に対応する部分は、シートクッション12の中間部12Cの内、前側部分12C1である。また、第3範囲R3である臀部に対応する部分は、シートクッション12の中間部12Cの内、後側部分12C2である。さらに、第4範囲R4である仙骨部分に対応する部分は、シートクッション12の後端部12Bである。
【0027】
ここで、発明者らがさらに鋭意検討したところ、人体の部位に応じて温熱に加えることで、疲労低減効果がより得られることが知見された。すなわち、比較的に皮膚に近い側に多くの血管が集中する膝裏部分では、加熱を集中的に行うことで、血流が促進される。また、比較的太い血管が多数存在する臀部においても、加熱を集中させることで、血流が促進される。また、臀部には、神経が集中しており、温度変化を感じやすいので、血流促進が生じ易い。
【0028】
<3.加熱部の構成>
そこで、本発明者らは上記知見を踏まえ、本実施形態に係る加熱部20を想到した。以下に本実施形態に係る加熱部20について説明する。加熱部20は、第1加熱部21と第2加熱部22とを有している。
図2に示すように、第1加熱部21は、シートクッション12の前端部12Aに設けられている。また、第2加熱部22は、シートクッション12の後端部12Bに設けられている。
【0029】
(第1加熱部)
第1加熱部21は、第1温度に設定されることで、乗員Pの下半身における第1範囲R1を加熱する。すなわち、第1加熱部21は、乗員Pの膝裏に相当する範囲を加熱する。
【0030】
第1温度は、一例として39~41℃である。なお、第1温度は、シートクッション12における第1加熱部21が設けられた位置に対応するトリム表面において、熱電対を用いて接触して測定した時の温度である。
【0031】
第1温度が、39~41℃とされることで、一般的な体温を37℃としたとき、高温加熱による不快感を乗員Pに生じさせ難くしながら、上記した温熱による血流促進効果を得ることができる。また、第1加熱部21が加熱する乗員Pの下半身における膝裏部分の範囲は、シートクッション12と接触する下半身の部位の内、血流促進効果が最も高い。そこで、第1温度を上記範囲に設定することで効果的な血流促進が実現される。
【0032】
(第2加熱部)
第2加熱部22は、シートクッション12の後端部12Bに設けられている。第2加熱部22は、第2温度に設定されることで、乗員Pの下半身における第4範囲R4を加熱する。すなわち、第2加熱部22は、乗員Pの仙骨部分に相当する範囲を加熱する。
【0033】
第2温度は、第1温度以下となる様に設定される。第2温度は、一例として37~39℃である。なお、第2温度の測定条件は、上記第1温度と同様である。第2温度が、37~39℃とされることで、一般的な体温を37℃としたとき、高温加熱による不快感を乗員Pに生じさせ難くしながら、上記した温熱による血流促進効果を得ることができる。
【0034】
さらに、第2加熱部22が加熱する乗員Pの下半身における仙骨部分に相当する範囲は、第1加熱部21が加熱する膝裏部分に相当する範囲の次に血流促進効果が高い。そこで、第2加熱部22による加熱温度を上記範囲に設定することで、血流促進効果を奏しながら、血流促進に寄与しない過度な加熱による不要なエネルギー消費を抑制できる。
【0035】
(第3加熱部)
図2に示すように、加熱部20は、さらに第3加熱部23を備えてもよい。第3加熱部23は、シートクッション12の前後方向における中間部20Cに設けられる。第3加熱部23は、第3温度に設定されることで、乗員Pの下半身における第2範囲R2及び第3範囲R3を加熱する。すなわち、第3加熱部23は、乗員Pの大腿部及び臀部に相当する範囲を加熱する。
【0036】
第3温度は、第2温度以下になるように設定される。第3温度は、一例として35~37℃である。なお、第3温度の測定条件は、上記第1及び第2温度と同様である。第3温度が、35~37℃とされることで、一般的な体温を37℃としたとき、高温加熱による不快感を乗員Pに生じさせ難くしながら、血流促進に多少寄与できる。さらに、第3温度が上記範囲に設定されることで、第1加熱部21及び第2加熱部22による加熱によって生じ得る、下半身の部位間の温度差を低減でき、乗員Pに不快感を生じさせることが抑制される。
【0037】
また、第3加熱部23は、シートクッション12の前後方向において、2つに区分されていてもよい。具体的には、第3加熱部23は、前側加熱部23Aと、後側加熱部23Bとに分割されていてもよい。ここで、「分割されている」とは、物理的に別体である趣旨を含み、さらに互いに独立して温度制御が可能な一体の加熱部であることを含む趣旨である。
【0038】
前側加熱部23Aは、乗員Pの下半身における第2範囲R2を加熱する。すなわち、前側加熱部23Aは、乗員Pの大腿部に相当する範囲を加熱する。また、後側加熱部23Bは、乗員Pの下半身における第3範囲R3を加熱する。すなわち、後側加熱部23Bは、乗員Pの下半身における臀部に相当する範囲を加熱する。
【0039】
前側加熱部23Aと後側加熱部23Bとは、互いに異なる温度に設定可能とされている。換言すれば、前側加熱部23Aと後側加熱部23Bとは、上記第3温度の範囲で、互いに異なる温度に設定されることで、乗員Pの下半身をそれぞれ加熱する。
【0040】
図5に示すように、加熱部20は、一例として、面状ヒータ20Aにより構成される。面状ヒータ20Aは、電熱線20A1を含んで形成され、通電に伴い電熱線20A1に生じるジュール熱を利用して発熱する、いわゆる抵抗加熱方式のヒータである。電熱線20A1は、図示しない電源に接続され、かかる電源から電力の供給を受けて発熱する。
図5に示すように、電熱線20A1は、面状ヒータ20A内に連続して配設されている。また、電熱線20A1は、
図5のように平面視したときの単位面積当たりの本数(線密度)がシートクッション12の領域ごとに変化するように、配設されている。
【0041】
具体的には、シートクッション12において、加熱部20の第1加熱部21及び第2加熱部22に相当する前端部12A及び後端部12Bでは、面状ヒータ20Aの電熱線20A1の線密度が多くなるように、電熱線20A1が配設されている。一方、シートクッション12において、第3加熱部23に相当する中間部12Cの前側部分12C1及び後側部分12C2では、電熱線20A1の線密度が少なくなるように配設されている。このように、加熱部20における加熱温度は、面状ヒータ20Aを形成する連続した電熱線20A1の線密度によって設定される。
【0042】
図5に示すように、加熱部20としての面状ヒータ20Aは、一枚の面状部材である。面状ヒータ20Aは、一例として、シートクッション12において、クッションパッドとワディング(いずれも図示省略)の間に配置される。なお、シートクッション12内において、面状ヒータ20Aの配置される位置は、特に限定されず、乗員Pの下半身を加熱して血流促進による疲労低減効果を奏することができればよい。例えば、面状ヒータ20Aは、ワディングとトリム(図示省略)の間に設けられてもよい。
【0043】
また、
図6に示すように、面状ヒータ20Aは、シートクッション12の前面部12Fに設けられる。すなわち、面状ヒータ20Aは、シートクッション12の上面及び前面を覆うように配置される。面状ヒータ20Aの電熱線20A1は、シートクッション12の上面から前面に亘って連続している。
【0044】
図1及び
図5に示すように、面状ヒータ20Aは、車載用ECU40(ECU;Electronic Control Unit、以下単に「ECU」と称する)に電気的に接続されて制御される。ECU40は、CPU、ROM、RAM、ストレージ及び通信インタフェースを有し、これらの各構成部は、バスを介して相互に通信可能に接続されている。また、ECU40は、機能構成として、制御部41(図中ではブロック化して図示)を有する。制御部41の機能構成は、CPUがROM又はストレージに記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。制御部41は、シートクッション12に乗員が着座している状態において、面状ヒータ20Aに供給する電力を制御する。これにより、加熱部20としての面状ヒータ20Aの発熱量が制御され、この結果、加熱部20における温度制御が実現される。また、制御部41は、コントローラ42から受け付けた信号に基づいて、面状ヒータ20Aを制御する。
【0045】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0046】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る車両用シート10は、シートクッション12の前端部12Aに設けられ、第1温度に設定される第1加熱部21、及び、後端部12Bに設けられ、第2温度に設定される第2加熱部22を有する加熱部20を備える。このため、シートクッション12において、乗員Pの下半身の部位に応じた位置に第1加熱部21及び第2加熱部22を配置し、さらに、それらが所定の温度に設定されることで、乗員Pの身体内の血流の循環が促進されて、疲労の蓄積が低減され、着座時の乗員Pの快適性が向上する。
【0047】
換言すれば、乗員Pの下半身の部位の内、血流促進に大きく寄与する膝裏部分に対応したシートクッション12の前端部12Aに第1加熱部21が設けられ、さらに血流促進に寄与する仙骨部分に対応したシートクッション12の後端部12Bに第2加熱部22が設けられる。これにより、乗員Pの下半身の所定の範囲が、所定の温度に加熱されるので、乗員Pの身体内の血流を効果的に促進できる。
【0048】
特に、車両用シート10が自動運転機能を有する車両に設置される場合、乗員Pは、途中の休憩等を挟まず、長時間乗車することが想定される。この場合、乗員Pの身体には、長時間の着座に伴う疲労が多く蓄積することが考えられる。本実施形態に係る車両用シート10では、かかる状況においても、第1加熱部21及び第2加熱部22からの温熱によって血流が促進され、疲労蓄積の低減効果が実現される。
【0049】
また、本実施形態では、第2加熱部22が設定される第2温度は、第1加熱部21の第1温度以下とされている。そのため、乗員Pの下半身において、膝裏部分の次に血流促進効果が高い仙骨部分に対応する後端部12Bに設けられた第2加熱部22が、第1加熱部21よりも同程度かそれより低い温度で、仙骨部分を温める。この結果、乗員Pの身体の血流促進効果が得られるとともに、過度な加熱による不快感を低減でき、また、加熱に要するエネルギーの省エネルギー化が実現される。
【0050】
また、本実施形態では、第1加熱部21は、シートクッション12の前端部12Aにおいて、上面側を加熱可能とされているので、乗員Pの下半身において、血流促進効果が特に得られ易い乗員Pの膝裏部分を効果的に加熱することができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、第1加熱部21は、前端部12Aの上面側から前面側にかけて加熱可能とされているので、乗員Pの下半身において、血流促進効果が特に得られ易い乗員Pの膝裏部分のより広い範囲を効果的に加熱できる
【0052】
また、本実施形態では、加熱部20は、シートクッション12の前後方向において中間部12Cに設けられ、第2加熱部22の第2温度以下の第3温度に設定される第3加熱部23が設けられている。第3加熱部23の加熱によって、乗員Pの下半身における血流促進効果が得られるとともに、シートクッション12の中間部12Cが、他の前端部12Aや後端部12Bと比較して低い温度である場合に乗員Pに生じ得る不快感が低減される。
【0053】
また、本実施形態では、第3加熱部23は、シートクッション12の前側加熱部23Aと、後側加熱部23Bとに分割されており、互いに異なる温度に設定可能とされている。このため、乗員Pの下半身の範囲により細かく対応した加熱が実現される。この結果、第3加熱部23による血流促進効果、及び、乗員Pの不快感の低減効果がより得られる。
【0054】
また、本実施形態では、加熱部20は、通電により発熱する面状ヒータ20Aであるので、簡素な構成で乗員Pに対する温熱による血流促進効果が得られる。このため、量産性、メンテンナンス性が向上する。また、面状ヒータ20Aであるので、温風ブロアやペルチェ素子を用いた加熱と比較して、低コストで加熱部20が実現される。
【0055】
また、本実施形態では、面状ヒータ20Aを形成する連続した電熱線20A1の線密度によって温度が設定される。このため、簡素な構成で加熱部20における温度の設定を実現できる。また、複数のヒータを組み合わせて、各ヒータに対して温度制御を行う場合と比較して、温度の設定が容易になる。
【0056】
なお、上記第1実施形態では、加熱部20が第1加熱部21、第2加熱部22、及び第3加熱部23を備える形態を例示したが、第3加熱部23が無くても本発明は成立する。すなわち、加熱部20が、第1加熱部21及び第2加熱部22のみを備える形態であってもよい。
【0057】
また、上記第1実施形態では、車両用シート10を挙げて説明したが、本発明はかかる例に限定されず、船舶、飛行機等に設けられる座席であってもよい。また、上記実施形態では、乗員Pが一名着座する独立した座席を示して説明したが、自動車の後部座席に採用されるベンチシートや、電車内に設けられるような複数乗員が並んで着座する連続した座席であってもよい。
【0058】
また、上記第1実施形態では、第1加熱部21が、前端部12Aの上面及び前面部12Fを加熱する形態例を挙げて説明したが、本発明はかかる例に限定されない。第1加熱部21は、乗員の膝裏部分の少なくとも一部を加熱できればよく、第1加熱部21は、前端部12Aの上面のみを加熱する構成であってもよいし、前面部12Fのみを加熱する構成であってもよい。
【0059】
(変形例)
次に、
図7及び
図8を参照しながら、上記第1実施形態に係る一の変形例について説明する。上記第1実施形態において、加熱部20としての面状ヒータ20Aが、シートクッション12の上面から前面部12Fに亘って設けられている形態例を挙げて説明したが、本変形例は、加熱部20としての面状ヒータ20Aが、前面部12Fと前端部12Aとの間の湾曲部12Rの途中まで設けられている点で、前述の第1実施形態と相違する。なお、本変形例において第1実施形態と対応する部材及び部分については、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略することがある。
【0060】
図7に示すように、本変形例において加熱部20は、シートクッション12の前端部12Aから、前端部12Aと前面部12Fとの間の途中まで設けられている。具体的には、
図7に示すように、加熱部20は、シートクッション12の前端部12Aと前面部12Fとの間に設けられた、湾曲部12Rの前端部12A側からの途中まで設けられている。ここで、湾曲部12Rとは、シートクッション12を側断面視(W方向を法線方向とする断面視)したとき、着座面(上面)側において、前端部12Aと前面部12Fとの間に存在する外形が曲線状となっている部位である。換言すれば、湾曲部12Rは、シートクッション12の前端部12Aの曲げ止まり点Yと、前面部12Fの曲げ止まり点Zとの間の部位である。湾曲部12Rは、前端部12Aとともに、乗員Pの膝裏部分に対応する。
【0061】
加熱部20は、湾曲部12Rの途中まで設けられている。具体的には、
図8に示すように、湾曲部12Rの外形の曲率半径RDの半径を有する仮想円Xにおいて、湾曲部12Rに相当する円弧部分の長さの半分まで加熱部20が設けられている。
【0062】
本変形例によれば、加熱部20が、乗員Pの膝裏部分に対応する湾曲部12Rに設けられているので、乗員Pの身体内の血流の循環が促進されて、疲労が低減され、乗員Pの疲労蓄積の低減効果がより得られる。また、湾曲部12Rは、シートクッション12に対する着座による負荷(変位、又は荷重)が生じ易い部位であるが、かかる部位において、加熱部20の設けられる範囲が制限されることで、加熱部20に生じる負荷が低減される。この結果、加熱部20の損傷が抑制され、コスト低減、又はメンテンナンス性の向上が実現される。
【0063】
<<第2の実施形態>>
次に、
図9を用いて本発明の第2実施形態に係る椅子100について説明する。本実施形態は、加熱部20が設けられる対象が、椅子100である点で、前述の第1実施形態と相違する。なお、第2実施形態に係る椅子100の説明において第1実施形態と対応する部材及び部分については、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略することがある。
【0064】
図9は、本実施形態に係る椅子100の外観斜視図である。椅子100は、一例として、いわゆるリラックスチェア(安楽椅子)である。椅子100は、座部112と、背もたれ部114とを有している。座部112は、着座者の大腿部及び臀部を支持する。椅子100の座部112には、
図9に示すように、加熱部20が設けられている。加熱部20は、第1加熱部21及び第2加熱部22を有している。第1加熱部21は、座部112の前端部112Aに設けられる。第1加熱部21は、第1温度に設定される。また、第2加熱部22は、座部112の後端部112Bに設けられる。第2加熱部22は、第2温度に設定される。
【0065】
本実施形態に係る椅子100では、上記第1実施形態と同様な作用効果が得られる。なお、本実施形態に係る椅子100は、リラックスチェアである形態例を示したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、椅子100は、オフィスチェア、ダイニングチェア、リクライニングチェア、マッサージチェア、スツール、ベンチ、又は座椅子等であってもよい。また、本実施形態に係る椅子100が設置される場所は、特に限定されず、一般家庭、オフィス、公共施設、又は映画館若しくは遊園地等のアミューズメント施設等であってもよい。
【0066】
<<第3の実施形態>>
次に、
図10~
図12を用いて本発明の第3実施形態に係る加熱ユニット200について説明する。本実施形態は、乗員Pの下半身に加熱する構成が加熱ユニット200として独立している点で、前述の第1及び第2実施形態と相違する。なお、第3実施形態に係る加熱ユニット200の説明において第1実施形態と対応する部材及び部分については、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略することがある。
【0067】
図10に示すように、加熱ユニット200は、座部に設置されて、乗員Pの下半身を加熱する加熱部としての機能を備える。例えば、加熱ユニット200は、座部としてのシートクッション12の上面に設置される。加熱ユニット200は、シートクッション12の前端部12Aに対応する位置に第1加熱部201を有し、シートクッション12に後端部12Bに対応する位置に第2加熱部202を有している。
【0068】
図11に示すように、加熱ユニット200は、一例として面状ヒータ200Aである。面状ヒータ200Aは、布状部材210によって覆われた電熱線200A1を有している。面状ヒータ200Aは、可撓性を有しており、これによって、座部の表面形状に合わせて加熱ユニット200が設置されることを実現している。また、加熱ユニット200は、内部の電熱線200A1と電気的に接続された電源コード部220を有している。かかる電源コード部220を介して、図示しない電源から加熱ユニット200に電力が供給される。
【0069】
図12に示すように、電熱線200A1の線密度は、加熱ユニット200において部分的に異なっている。これにより、加熱ユニット200における加熱温度が、部位に応じて異なるようにされている。具体的には、シートクッション12における前端部12A及び後端部12Bに対応する位置にそれぞれ設けられる、加熱ユニット200の第1加熱部201及び第2加熱部202では、面状ヒータ200Aの電熱線200A1の線密度が多くなるように、電熱線200A1が配設されている。
【0070】
本実施形態に係る加熱ユニット200では、第1及び第2実施形態と同様な着座者の疲労蓄積の低減を含めた快適性の向上効果が得られる。
【0071】
また、本実施形態では、加熱ユニット200が独立して存在するので、本発明の効果を奏さない座席、椅子等に対して、第1及び第2実施形態と同様な着座者の疲労蓄積の低減を含めた快適性の向上効果を持たせることができる。
【0072】
なお、本実施形態において、座部として車両用シートのシートクッション12を挙げて説明したが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、加熱ユニット200は、椅子の座部に設置されてもよい。さらに、加熱ユニット200は、座席や椅子に限らず、着座者が腰掛けることのできる場所、領域、又は部位に設置されてもよい。
【実施例0073】
本発明に係る車両用シート10、椅子100、及び加熱ユニット200について性能を評価するため、疲労感評価、官能評価及び温度測定試験を行った。以下に
図13~
図17を参照しながら、当該試験結果について説明する。
【0074】
疲労感評価試験としては、着座した状態での乗員に対する生体インピーダンス測定を行って評価した。官能評価試験としては、本発明に係る車両用シート10に乗員を着座させた後で、快適性等に関する複数段階でのアンケートを行って評価した。
【0075】
比較例は、シートクッション12において加熱部を有さない場合である。参考例は、シートクッション12において加熱部を有するものの、部位に応じて温度を変化させない場合である。
【0076】
実施例は、第1加熱部21を41℃、第2加熱部22を39℃、第3加熱部23の前側加熱部23A及び後側加熱部23Bを37℃として、加熱を行った場合である。
【0077】
図13に疲労感評価試験結果を示す。疲労感の評価指標として生体インピーダンスを測定した。
図13に示すように、比較例では、時間経過に伴って、生体インピーダンスが上昇しており、疲労物質が体内に多量に蓄積していくことが示された。また、参考例では、比較例と比較すれば、生体インピーダンスの上昇が抑えられているものの、時間経過に伴って生体インピーダンスは上昇した。一方、実施例では、10分程度経過しても生体インピーダンスの上昇みられなかった。その後、生体インピーダンスの上昇がみられたものの、30分を経過した以降は、ほぼ横ばいで推移した。また、60分経過時の生体インピーダンスは、比較例、参考例と比較してかなり低い値となった。このように、実施例では、生体インピーダンス測定結果から、乗員Pの身体内における疲労の蓄積が低減されることが示された。
【0078】
また、
図14~
図16に官能評価試験結果を示す。
図14は、着座開始後60分後に乗員に生じた下肢疲労感について、5段階評価でアンケート調査を行った結果である。1が最も疲労を感じなかった場合、5が最も疲労を感じた場合である。
図14に示すように、比較例及び参考例では、官能評価で、それぞれ5及び4となり、乗員が疲労を感じたという結果となった。一方、実施例では、官能評価で2となり、比較例及び参考例と比較して、乗員が感じる疲労が少ないことが示された。
【0079】
図15は、着座開始後60分後に乗員に生じた全体の温冷感について、アンケート調査を行った結果である。4がやや寒いと感じた場合、5がどちらでもない場合、6が温かいと感じた場合、7がちょうどよいと感じた場合、及び8がやや熱いと感じた場合である。
図15に示すように、比較例では、官能評価で3.5であり、乗員がやや寒いと感じたという結果となった。また、参考例では、官能評価で、7.5であり、乗員がやや熱いと感じたという結果となった。一方、実施例では、官能評価で、7であり、乗員がちょうどよいと感じたという結果となった。このように、本発明に係る車両用シート10では、加熱部20が乗員Pの下半身の部位に応じて、適切な範囲、温度で温めることから、乗員Pに熱すぎる、又は寒すぎるといった不快感を生じさせにくいことが示された。
【0080】
図16は、着座開始後60分後に乗員の下肢快適性について、5段階でアンケート調査を行った結果である。1が下肢快適性について最も悪い場合、5が最も良い場合である。
図16に示すように、比較例では、官能評価で、1となった。また、参考例では、官能評価で、3となった。一方、実施例では、官能評価で、4.5となり、比較例及び参考例と比較して、乗員の下肢快適性が良いことが示された。
【0081】
温度測定試験として、着座した状態の乗員の足の甲における温度を放射温度計によって測定した。
図17は、測定結果として皮膚温度の時間変化を示すグラフである。
図17に示すように、参考例では、加熱開始から10分程度は、多少温度上昇がみられたものの、その後、温度は低下していった。一方、実施例では、加熱開始から10分程度まで温度が上昇した。温度上昇幅は、1℃程度であり、比較例よりも多かった。また、10分経過後も温度低下は見られず、温度が維持された。このように、本発明に係る車両用シート10では、乗員Pの下半身の部位に応じて、適切な範囲、温度で温めることから血流促進され、足の甲という心臓から遠い身体の部位を温める効果を有することも示された。
【0082】
以上、本実施例によれば、乗員Pの下半身の部位に応じた適切な範囲、温度で加熱することで、乗員Pの疲労蓄積の低減効果を含めた快適性の向上効果があることが示された。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0084】
例えば、上記実施形態において、加熱部20が面状ヒータ20Aである例を示したが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、いわゆる電熱効果を奏するペルチェ素子を用いた電熱ヒータであってもよい。また、シートクッション12内に設けられたダクト、及び係るダクトを介して乗員Pの下半身に向かって温風を送風するブロアを備えた加熱装置であってもよい。
【0085】
また、上記実施形態において、面状ヒータ20Aの電熱線20A1の線密度を変化させて、温度を変化させる例を挙げて説明したが、本発明は、かかる例に限定されず、電熱線20A1の線径、及び/又は断面形状を変化させることで、温度を変化させるように構成されてもよい。
【0086】
また、上記実施形態において、加熱部20が一枚の面状ヒータ20Aである例を示したが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、乗員Pの下半身の各範囲に応じた別体のヒータが組み合わされて構成されてもよい。
【0087】
また、上記実施形態において、加熱部20としての面状ヒータ20Aが、ECUにより制御される例を挙げて説明したが、本発明は、かかる例に限定されない。例えば、面状ヒータ20Aが、サーモスタットを有するサーミスタとしての構成を備え、既定の温度条件に達したときに電源のON/OFFを行うことで加熱部20における温度が制御されてもよい。