IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三浦工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090480
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】蒸気ボイラ装置用水処理剤
(51)【国際特許分類】
   C23F 11/06 20060101AFI20240627BHJP
   C02F 1/58 20230101ALI20240627BHJP
   C02F 1/70 20230101ALI20240627BHJP
   F22B 37/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C23F11/06
C02F1/58 T
C02F1/70 Z
F22B37/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206426
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099841
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 恒彦
(72)【発明者】
【氏名】大西 純平
(72)【発明者】
【氏名】菊池 陽介
(72)【発明者】
【氏名】松村 涼
(72)【発明者】
【氏名】中野 剛志
【テーマコード(参考)】
4D038
4D050
4K062
【Fターム(参考)】
4D038AA05
4D038AB27
4D050AA08
4D050AB32
4D050BA06
4D050BA12
4K062AA03
4K062BB04
4K062BB06
4K062BC09
4K062CA03
4K062CA04
4K062DA05
4K062FA02
4K062FA06
(57)【要約】
【課題】ボイラ給水が導電性成分濃度の高い高腐食性水質であっても、蒸気ボイラ装置の缶体の腐食を全面腐食および局部的腐食の両方について抑制する。
【解決手段】蒸気ボイラ装置の缶体に貯えられたボイラ水に対してクエン酸系化合物およびタンニン酸からなる群から選択された少なくとも一つの酸系成分とポリマレイン酸とを添加する。ここで、ボイラ水に含まれる酸系成分の分量(但し、酸系成分がクエン酸系化合物を含む場合、クエン酸系化合物についてはクエン酸無水物換算での分量)とポリマレイン酸の分量との合計量における酸系成分の割合が60~80質量%に設定されかつポリマレイン酸の割合が40~20質量%に設定されるよう、ボイラ水に対する酸系成分およびポリマレイン酸のそれぞれの添加量を制御する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気ボイラ装置の缶体に貯えられたボイラ水に対して添加される、前記缶体の腐食を抑制するための水処理剤であって、
クエン酸系化合物およびタンニン酸からなる群から選択された少なくとも一つの酸系成分とポリマレイン酸とを含み、
前記酸系成分の分量(但し、前記酸系成分がクエン酸系化合物を含む場合、当該クエン酸系化合物についてはクエン酸無水物換算での分量)と前記ポリマレイン酸の分量との合計量における前記酸系成分の割合が60~80質量%に設定されかつ前記ポリマレイン酸の割合が40~20質量%に設定されている、
蒸気ボイラ装置用水処理剤。
【請求項2】
前記ボイラ水のpH調整剤および脱酸素剤のうちの少なくとも一つをさらに含む、請求項1に記載の蒸気ボイラ装置用水処理剤。
【請求項3】
蒸気ボイラ装置の缶体に貯えられたボイラ水により前記缶体が腐食するのを抑制するための方法であって、
前記ボイラ水に対してクエン酸系化合物およびタンニン酸からなる群から選択された少なくとも一つの酸系成分とポリマレイン酸とを添加する工程を含み、
前記ボイラ水に含まれる前記酸系成分の分量(但し、前記酸系成分がクエン酸系化合物を含む場合、当該クエン酸系化合物についてはクエン酸無水物換算での分量)と前記ポリマレイン酸の分量との合計量における前記酸系成分の割合が60~80質量%に設定されかつ前記ポリマレイン酸の割合が40~20質量%に設定されるよう、前記ボイラ水に対する前記酸系成分および前記ポリマレイン酸のそれぞれの添加量を制御する、
蒸気ボイラ装置缶体の腐食抑制方法。
【請求項4】
前記ボイラ水に対して前記ボイラ水のpH調整剤および脱酸素剤のうちの少なくとも一つをさらに添加する、請求項3に記載の蒸気ボイラ装置缶体の腐食抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気ボイラ装置用水処理剤、特に、蒸気ボイラ装置の缶体に貯えられたボイラ水に対して添加される、当該缶体の腐食を抑制するための水処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材を用いて形成された缶体に貯留したボイラ水を加熱することで蒸気を生成する蒸気ボイラ装置は、運転期間の長期化により缶体に腐食が生じるおそれがある。この腐食は、主に、ボイラ水に含まれる溶存酸素の影響、ボイラ水の濃縮に伴う塩化物イオンや硫酸イオンなどの導電性成分の高濃度化およびボイラ水のpHの低下(一般にはpHが11未満になること。)を原因として進行するものと考えられている。缶体に生じる腐食は、全面腐食と局部的腐食の二種類に分類される。全面腐食は、ボイラ水と接触している缶体の内面の全面に均等に進行して缶体の厚さ方向の減肉をもたらす腐食であり、緩慢に進行する。局部的腐食は、缶体の一部において局部的に生じる腐食であり、全面腐食よりも短時間のうちに進行する。特に、局部的腐食は、ボイラ水と接触する缶体の内面から厚さ方向に向かう孔状の腐食(孔食)として現れることから缶体を穿孔させやすいものであり、缶体に対して短時間のうちに致命的な損壊をもたらす可能性がある。
【0003】
そこで、蒸気ボイラ装置の運転では、ボイラ水に対して水処理剤を添加し、缶体の腐食の抑制が試みられている。特許文献1は、このような水処理剤としてケイ酸やケイ酸塩などのシリカ成分とpH調整剤とを含むものを開示している。この水処理剤は、pH調整剤によりボイラ水のpHを缶体の腐食が生じにくい領域へ高めることができるとともにシリカ成分により缶体の内面に防食皮膜を形成可能であり、全面腐食および局部的腐食の両種類の腐食を抑制可能なものと考えられる。
【0004】
しかし、ボイラ水の水質は、給水の水質により変動し得る。上述の水処理剤は、給水の水質にかかわらず、防食皮膜の形成により全面腐食を抑制可能である一方、導電性成分濃度等が高い高腐食性水質の給水を用いた場合において局部的腐食の抑制効果が不十分になることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-159597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ボイラ給水が導電性成分濃度の高い高腐食性水質であっても、蒸気ボイラ装置の缶体の腐食を全面腐食および局部的腐食の両方について抑制できるようにしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、蒸気ボイラ装置の缶体に貯えられたボイラ水に対して添加される、蒸気ボイラ装置の缶体の腐食を抑制するための水処理剤に関するものである。この水処理剤は、クエン酸系化合物およびタンニン酸からなる群から選択された少なくとも一つの酸系成分とポリマレイン酸とを含み、酸系成分の分量(但し、酸系成分がクエン酸系化合物を含む場合、当該クエン酸系化合物についてはクエン酸無水物換算での分量)とポリマレイン酸の分量との合計量における酸系成分の割合が60~80質量%に設定されかつポリマレイン酸の割合が40~20質量%に設定されている。
【0008】
本発明の水処理剤は、例えば、ボイラ水のpH調整剤および脱酸素剤のうちの少なくとも一つをさらに含んでいてもよい。
【0009】
他の観点に係る本発明は、蒸気ボイラ装置の缶体に貯えられたボイラ水により蒸気ボイラ装置の缶体が腐食するのを抑制するための方法に関するものである。この方法は、ボイラ水に対してクエン酸系化合物およびタンニン酸からなる群から選択された少なくとも一つの酸系成分とポリマレイン酸とを添加する工程を含み、ボイラ水に含まれる酸系成分の分量(但し、酸系成分がクエン酸系化合物を含む場合、クエン酸系化合物についてはクエン酸無水物換算での分量)とポリマレイン酸の分量との合計量における酸系成分の割合が60~80質量%に設定されかつポリマレイン酸の割合が40~20質量%に設定されるよう、ボイラ水に対する酸系成分およびポリマレイン酸のそれぞれの添加量を制御する。
【0010】
本発明の方法は、例えば、ボイラ水に対してボイラ水のpH調整剤および脱酸素剤のうちの少なくとも一つをさらに添加してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る蒸気ボイラ装置用水処理剤は、特定の酸系成分とポリマレイン酸とを特定の割合で含むものであることから、蒸気ボイラ装置の缶体において全面腐食および局部的腐食の両方を抑制することができる。
【0012】
本発明に係る蒸気ボイラ装置缶体の腐食抑制方法は、ボイラ水に対し、特定の酸系成分とポリマレイン酸とを特定の割合になるよう添加することから、蒸気ボイラ装置の缶体において全面腐食および局部的腐食の両方を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る蒸気ボイラ装置の缶体の腐食抑制方法の一形態は、蒸気ボイラ装置の缶体に貯えられたボイラ水に対して特定の酸系成分とポリマレイン酸とを添加する工程を含む。
【0014】
ここで用いられる特定の酸系成分は、クエン酸系化合物およびタンニン酸からなる群から選択された少なくとも一つのものである。クエン酸系化合物は、水中で解離してクエン酸イオンとなるものであれば種々のものがここで使用可能なものの選択肢となり得るが、好ましいものの例はクエン酸およびクエン酸塩である。クエン酸塩は、クエン酸のナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩が好ましい。クエン酸のアルカリ金属塩は、クエン酸一ナトリウムのようなクエン酸一アルカリ金属塩、クエン酸二ナトリウムのようなクエン酸二アルカリ金属塩およびクエン酸三ナトリウムのようなクエン酸三アルカリ金属塩のいずれのアルカリ金属塩であってもよい。クエン酸系化合物、特に、クエン酸およびクエン酸塩は、無水物であってもよいし、水和物であってもよい。また、クエン酸系化合物は、二種以上のものが併用されてもよい。
【0015】
ポリマレイン酸は、マレイン酸のホモポリマーであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した質量平均分子量が8,000未満のもの、例えば、200~8,000のもの、特に、500~4,000のものが好ましい。このようなポリマレイン酸は水中の硬度成分(カルシウムイオンおよびマグネシウムイオン)に由来のスケール物質を分散させ、スケールの結晶核の成長を抑えることでスケールの生成を抑えることから、ボイラ水用の水処理剤において、一般にはスケール分散剤として用いられるものである。
【0016】
なお、水中の硬度成分由来のスケール物質を分散させ、スケールの結晶核の成長を抑えることでスケールの生成を抑える機能を有することから、ポリマレイン酸と同様にスケール分散剤として用いられる高分子材料としてポリアクリル酸が知られているが、ポリマレイン酸に代えてポリアクリル酸を用いても、缶体の腐食抑制、特に、局部的腐食の顕著な抑制効果は得られにくい。
【0017】
酸系成分およびポリマレイン酸は、通常、蒸気ボイラ装置の缶体へ供給されるボイラ給水に対して添加することで間接的にボイラ水に添加することができるが、缶体内のボイラ水に対して直接に添加してもよい。ボイラ水に対する酸系成分およびポリマレイン酸のそれぞれの添加量は、ボイラ水に含まれる酸系成分の分量とポリマレイン酸の分量との合計量における酸系成分の割合が60~80質量%に設定されかつポリマレイン酸の割合が40~20質量%に設定されるように制御する。このように添加量を制御することで、蒸気ボイラ装置の缶体の全面腐食および局部的腐食の両方を抑制することができる。
【0018】
なお、ボイラ水に対して添加する酸系成分がクエン酸系化合物を含む場合、ボイラ水に含まれるクエン酸系化合物の分量は、クエン酸無水物換算での分量とする。
【0019】
ボイラ水における酸系成分およびポリマレイン酸の合計濃度は、蒸気ボイラ装置の缶体の全面腐食および局部的腐食の両方の抑制効果が発揮されるよう、少なくとも100mg/Lになるよう調整するのが好ましい。酸系成分がクエン酸系化合物を含む場合、ボイラ水に含まれるクエン酸系化合物の濃度は、クエン酸無水物換算での濃度とする。
【0020】
本形態の腐食抑制方法は、ボイラ水に対して特定の酸系成分とポリマレイン酸とを特定の割合になるよう添加することから、蒸気ボイラ装置の缶体の腐食、特に、缶体の内面における全面的腐食と局部的腐食の両方を抑制することができる。
【0021】
本形態の腐食抑制方法では、ボイラ水に対してボイラ水のpH調整剤および脱酸素剤のいずれかまたは両方をさらに添加してもよい。pH調整剤としては、ボイラ水のpHを高めることで缶体の腐食を抑制可能なもの、例えば、アルカリ金属の水酸化物やアルカリ土類金属の水酸化物等が用いられる。特に、缶体内においてスケールの発生源となりにくいアルカリ金属の水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化リチウムを用いるのが好ましい。pH調整剤は、二種以上のものが併用されてもよい。
【0022】
ボイラ水に対するpH調整剤の添加量は、ボイラ水のpHが缶体の腐食を抑制可能なアルカリ性領域になる程度、特に、ボイラ水のpHが日本工業規格JIS B 8223に記載された管理基準のpH11.0~11.8になるよう設定するのが好ましい。
【0023】
脱酸素剤は、水中に含まれている溶存酸素を化学的に除去し、溶存酸素に起因する腐食、とくに孔食の抑制効果を高めるためのものである。脱酸素剤の例としては、グルコースやデキストリン等の還元性糖類、亜硫酸ナトリウムや亜流酸カリウム等の亜硫酸塩、アスコルビン酸およびその塩並びにエリソルビン酸およびその塩等を挙げることができる。脱酸素剤としては、還元性糖類が特に好ましい。還元性糖類は、pH調整剤として用いられるアルカリ金属水酸化物とともに加熱されると、水中の溶存酸素の除去効果を高めることができる。また、脱酸素剤の中には亜硫酸塩のように酸素と反応することで腐食の加速因子となる生成物を生じる可能性のあるものも存在するが、還元性糖類を用いればそのような生成物が生じにくい。さらに、還元性糖類は、アスコルビン酸やエリソルビン酸に比べ、酸素当量当りの処理コストを抑えることができる。
【0024】
ボイラ水に対する脱酸素剤の添加量は、通常、ボイラ水における脱酸素剤の含有量が少なくとも0.5~30質量%になるよう設定するのが好ましく、少なくとも1~20質量%になるよう設定するのが特に好ましい。ボイラ水における脱酸素剤の含有量が0.5質量%未満の場合は、十分な脱酸素効果が得られない可能性がある。脱酸素剤は、添加分の全量がボイラ水に溶解可能な限り、添加量が特に制限されるものではない。
【0025】
本形態の腐食抑制方法において、酸系成分およびポリマレイン酸は、両者を含む水処理剤としてボイラ水に対して添加することもできる。この場合の水処理剤は、上述の特定の酸系成分とポリマレイン酸とを含むものであり、通常はこれらを含む溶液である。水処理剤が溶液の場合、当該溶液を調製するための溶剤としては、通常は水、具体的には蒸留水、純水またはイオン交換水などの精製水が用いられるが、各成分を溶解可能であれば各種の有機溶剤、例えば、メタノール、エタノールまたは2-プロパノールなどの水溶性有機溶剤を用いることもできる。溶剤は二種類以上のものが併用されてもよい。
【0026】
水処理剤において、酸系成分およびポリマレイン酸の含有量は、酸系成分の分量とポリマレイン酸の分量との合計量における酸系成分の割合が60~80質量%に設定されかつポリマレイン酸の割合が40~20質量%に設定されるように調整する。水処理剤における酸系成分およびポリマレイン酸の含有量をこのように制御することで、水処理剤を添加したボイラ水に含まれる酸系成分の分量とポリマレイン酸の分量との合計量における酸系成分の割合およびポリマレイン酸の割合を既述のように制御することができる。なお、酸系成分がクエン酸系化合物を含む場合、水処理剤に含まれるクエン酸系化合物の分量は、クエン酸無水物換算での分量とする。
【0027】
水処理剤は、酸系成分およびポリマレイン酸に加え、必要により先述のpH調整剤および脱酸素剤のいずれかまたは両方を含んでいてもよい。また、水処理剤は、これらの成分の他に、分散剤をさらに含んでいてもよい。
【0028】
ボイラ水に対する水処理剤の添加量は、ボイラ水における酸系成分およびポリマレイン酸の濃度が缶体の全面腐食および局部的腐食の両方の抑制効果を発揮することができる濃度になるよう設定するのが好ましい。具体的には、ボイラ水における酸系成分およびポリマレイン酸の合計濃度が少なくとも100mg/Lになるよう、ボイラ水に対する水処理剤の添加量を制御するのが好ましい。
【0029】
水処理剤がpH調整剤や脱酸素剤を含む場合、水処理剤におけるそれらの含有量は、ボイラ水に対して水処理剤を添加したときに、それぞれ、ボイラ水のpHが缶体の腐食を抑制可能なアルカリ性領域になる程度、および、ボイラ水において十分な脱酸素効果が得られる程度に設定するのが好ましい。
【0030】
水処理剤は、通常、缶体への給水に添加することでボイラ水に対して添加することができるが、ボイラ水に対して直接に添加することもできる。
【実施例0031】
[実施例1~4、比較例1~6]
酸系成分としてのクエン酸三ナトリウム・二水和物またはタンニン酸および高分子成分であるポリマレイン酸またはポリアクリル酸を表1に示す割合で純水に溶解し、蒸気ボイラ装置用の水溶液状の水処理剤を調製した。表1において、クエン酸三ナトリウム・二水和物の割合は、クエン酸無水物換算での割合である。
【0032】
【表1】
【0033】
[評価]
蒸気ボイラ装置への給水に実施例1~4および比較例1~6において調製した水処理剤を添加し、給水中の水処理剤の濃度が20~35mg/Lになるよう制御しながら、次の条件で蒸気ボイラ装置を運転した。また、参考例として、水処理剤を添加せずに同じ条件で蒸気ボイラ装置を運転した。
【0034】
ボイラ給水:導電性が高く、高腐食性の水質として知られた大阪市近郊の上水
運転圧力:0.3MPa
濃縮倍率:10倍
【0035】
上記条件での運転開始から48時間経過後において、缶体の水管の腐食状況を調査した。腐食状況は全面腐食の進行指標となる腐食速度(mdd)および局部的腐食の進行指標となる孔食深さ(μm)の両方を測定することで評価した。
【0036】
結果を表2に示す。評価基準は、参考例における腐食速度(mdd)および孔食深さ(μm)の結果を100%とした場合に、50%未満である場合を「A」、50以上100%未満である場合を「B」、100%以上である場合を「C」とした。腐食速度は評価AおよびBを合格、Cを不合格とし、対して孔食深さは、缶体寿命への影響の点でより重要性が高いことから、評価Aのみを合格とし、BおよびCを不合格とした。
【0037】
【表2】