(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090485
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなる曲げパイプ成形品
(51)【国際特許分類】
B29C 70/42 20060101AFI20240627BHJP
B29C 70/14 20060101ALI20240627BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240627BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20240627BHJP
F16L 9/128 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B29C70/42
B29C70/14
C08L101/00
C08K7/06
F16L9/128
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206432
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000222406
【氏名又は名称】東レプラスチック精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】塩田 凌太郎
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 和彦
【テーマコード(参考)】
3H111
4F205
4J002
【Fターム(参考)】
3H111AA01
3H111BA15
3H111BA28
3H111CB02
3H111CB14
3H111DA26
3H111EA04
4F205AA11
4F205AA13
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4F205HG05
4F205HK03
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4J002AA011
4J002BB031
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4J002CM041
4J002CN011
4J002DA016
4J002FA046
4J002FD016
4J002GM00
(57)【要約】
【課題】後加工が容易であり、押出成形に好適な炭素繊維複合材料を用いてなる、2次加工により90°以上に大きく曲げられたパイプ成形品を提供する。
【解決手段】熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなる曲げパイプ成形品であって、熱可塑性樹脂および炭素繊維を含む複合材料からなる熱可塑性炭素繊維樹脂基材から構成され、炭素繊維を5~60重量%含有し、全炭素繊維中、繊維長が0.01~0.5mmである炭素繊維の割合が60重量%以上であり、熱可塑性炭素繊維樹脂基材の厚さが0.5~10.0mmであり、曲げ箇所が1箇所以上存在することを特徴とするである熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなる曲げパイプ成形品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなる曲げパイプ成形品であって、熱可塑性樹脂および炭素繊維を含む複合材料からなる熱可塑性炭素繊維樹脂基材から構成され、炭素繊維を5~60重量%含有し、全炭素繊維中、繊維長が0.01~0.5mmである炭素繊維の割合が60重量%以上であり、熱可塑性炭素繊維樹脂基材の厚さが0.5~10.0mmであり、曲げ箇所が1箇所以上存在することを特徴とするである熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなる曲げパイプ成形品。
【請求項2】
全炭素繊維中60重量%以上の炭素繊維が30°以内の一方向に配向している請求項1に記載の熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなる曲げパイプ成形品。
【請求項3】
少なくとも粘度の異なる第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂とを含み、熱可塑性樹脂の融点、ガラス転移点、または軟化点から20~50℃の高い所定温度において、第2の熱可塑性樹脂の粘度が第1の熱可塑性樹脂の粘度の3~70倍である請求項1又は2に記載の熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなる曲げパイプ成形品。
【請求項4】
曲げ角度が1~360°である請求項1又は2に記載の熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなる曲げパイプ成形品。
【請求項5】
パイプ断面が真円、楕円、多角形のいずれかである請求項1又は2に記載の熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなる曲げパイプ成形品。
【請求項6】
外径が5~100mmで曲げのRが外径の3~10倍である請求項1又は2に記載の熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなる曲げパイプ成形品。
【請求項7】
熱可塑性炭素繊維樹脂基材の最も薄い箇所の厚みが0.5~1mmであり、最も厚い箇所が薄い箇所の1.5~8倍である請求項1又は2に記載の熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなる曲げパイプ成形品。
【請求項8】
曲げ箇所の外側、内側の一部または、全周に凹凸の溝形状を有する請求項1又は2に記載の熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなるパイプ成形品。
【請求項9】
曲げ箇所およびパイプ全体が樹脂チューブで被覆された請求項1又は2に記載の熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなる曲げパイプ成形品。
【請求項10】
曲げ箇所がさらに1回以上曲げられた請求項1又は2に記載の熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなる曲げパイプ成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後加工が容易であり押出成形に好適な炭素繊維複合材料を用いてなる2次加工により曲げられたパイプ成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂を含侵させた炭素繊維を芯金(マンドレル)に巻取り積層体を作り(ワインディング)、溶融プレス成形を行うことで熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなるパイプ成形品を得ていた。しかしながら、ワインディング設備や溶融プレス設備など高価な設備が必要となり、これらの設備を有することが大きな負担となっていた。例えば特許文献1には、そのような技術が開示されている。
【0003】
又、切断・加工にもウォータージェット加工装置など高価な設備が必要となり、これらの設備を有することが大きな負担となっている。
【0004】
更に、上記方法で得られたパイプは炭素繊維が連続長繊維であるため、小さい角度しか曲げられないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は係る従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、後加工が容易であり、押出成形に好適な炭素繊維複合材料を用いてなる、2次加工により90°以上に大きく曲げられたパイプ成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなる曲げパイプ成形品は、以下の構成を有する。
【0008】
熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなる曲げパイプ成形品であって、熱可塑性樹脂および炭素繊維を含む複合材料からなる熱可塑性炭素繊維樹脂基材から構成され、前記炭素繊維を5~60重量%含有し、全炭素繊維中、繊維長が0.01~0.5mmである炭素繊維の割合が60重量%以上であり、熱可塑性炭素繊維樹脂基材の厚さが0.5~10.0mmであり、曲げ箇所が1箇所以上存在することを特徴とする熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなる曲げパイプ成形品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなる曲げパイプ成形品の製造には、テープワインディングパイプに用いるようなワインディング設備や溶融プレス設備など高価な設備が不要である。又、得られたパイプ曲げ加工品は容易に切断・加工出来る為、ウォータージェット加工装置など高価な設備が不要になる。更に、90°以上に大きく曲げられたパイプ成形品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図11】曲げパイプ成形品の樹脂チューブでの被覆方法の側面の模式図
【
図12】曲げパイプ成形品の樹脂チューブでの被覆方法の側断面の模式図
【
図13】治具をパイプ成形品の外側に用いた曲げ加工方法の側面の模式図
【
図14】治具をパイプ成形品の外側に用いた曲げ加工方法の側断面の模式図
【
図15】治具をパイプ成形品の内側に用いた曲げ加工方法の側面の模式図
【
図16】治具をパイプ成形品の内側に用いた曲げ加工方法の側断面の模式図
【
図17】治具をパイプ成形品の内外に用いた曲げ加工方法の側面の模式図
【
図18】治具をパイプ成形品の内外に用いた曲げ加工方法の側断面の模式図
【
図19】凹凸の溝形状の治具を用いた曲げ加工方法の側面の模式図
【
図20】凹凸の溝形状の治具を用いた曲げ加工方法の側断面の模式図
【
図21】パイプ成形品の側面を電子顕微鏡において炭素繊維の配向方向を観察した結果を示す模式図
【
図22】パイプ成形品の断面を電子顕微鏡において炭素繊維の配向方向を観察した結果を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の熱可塑性炭素繊維複合樹脂からなる曲げパイプ成形品は熱可塑性炭素繊維樹脂基材で構成され、この熱可塑性炭素繊維樹脂基材は熱可塑性樹脂および炭素繊維を含む複合材料、いわゆる炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物により形成される。
【0013】
複合材料を構成する炭素繊維として、例えばポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維が挙げられるが、いずれの炭素繊維でも良い。炭素繊維の単繊維径は特に制限されるものではないが、成形性、後加工性、強度の観点から、好ましくは5~10μm、より好ましくは6~8μmが良い。なお、炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物の調製に使用する炭素繊維は、長繊維(ロービング)、短繊維(チョップドストランド)のいずれでも良いが、好ましくは短繊維である。
【0014】
複合材料のマトリックスとなる熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン、ポリスチレン)、ポリアミド(例えばナイロン(PA)6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、芳香族ナイロン)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルフォキサイド、ポリテトラフルオロエチレン、アクロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエーテル・エーテル・ケトン、ポリオキシメチレン等が挙げられる。また、これら熱可塑性樹脂の誘導体や変性体、これら熱可塑性樹脂の共重合体、さらにそれらの混合物でも良い。
【0015】
熱可塑性樹脂としてはポリアミドが好ましく、ナイロン6、ナイロン66、それらの誘導体もしくは共重合体、またはこれらの少なくとも1つを含む混合物がより好ましく、ナイロン6、ナイロン66がさらに好ましい。
【0016】
また、熱可塑性樹脂としてはポリオレフィンも好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、それらの誘導体もしくは共重合体、またはこれらの少なくとも1つを含む混合物がより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンがさらに好ましい。さらに、アクロニトリルブタジエンスチレン共重合体、その誘導体もしくは共重合体、またはこれを含む混合物も好ましい。さらに、ポリフェニレンサルファイド、その誘導体もしくは共重合体、または上記のいずれかを含む混合物も好ましい。
【0017】
熱可塑性樹脂は、互いに粘度の異なる第1の熱可塑性樹脂および第2の熱可塑性樹脂を少なくとも含むと良い。互いに粘度の異なる2以上の熱可塑性樹脂を含むことにより、成形性が向上し、パイプ自体に強度を持たせることができる。本発明では、熱可塑性樹脂の融点から20~50℃の高い所定温度において、第2の熱可塑性樹脂の粘度が第1の熱可塑性樹脂の粘度の3~70倍であることが好ましく、5~50倍であることがより好ましく、10~30倍であることがさらに好ましい。第1の熱可塑性樹脂および第2の熱可塑性樹脂は、分子量や共重合成分を相違させた同じ種類の熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0018】
上記パイプ成形品では、粘度の低い樹脂が極端に多く含まれていると成形性が悪くなる。その一方で、粘度の高い樹脂が極端に多い場合、樹脂と炭素繊維との密着性が悪く、パイプ自体の強度が低下してしまう。また、粘度の高い樹脂を用いての溶融混練は、樹脂温度が上がりすぎて、樹脂が分解してしまう。これは、炭素繊維とガラス繊維の双方で同じ傾向にあり、特に炭素繊維と高粘度の樹脂を混合すると発熱が高く分解し易い傾向にある。
【0019】
同時に、ガラス繊維と粘度の高い樹脂とを用いて、たとえ樹脂ができてもパイプ化する際にノズル表面を傷つけて、パイプを連続して作製することができない場合がある。
【0020】
上述したパイプ成形品において、熱可塑性炭素繊維樹脂基材における粘度の異なる樹脂の比率は、重量で低粘度樹脂が高粘度樹脂に対して0.3~5.0倍であることが好ましく、0.5~2.0倍であることがより好ましい。
【0021】
炭素繊維と樹脂との親和性の確保の観点から、炭素繊維の含有率は5~60重量%であり、より好ましくは10~40重量%であると良い。
【0022】
本発明において、成形加工性の点から、繊維長が0.01~0.5mmである炭素繊維の割合は、全炭素繊維中60%重量%以上である。繊維長は0.1~0.5mmがより好ましく、0.2~0.5mmが更に好ましい。繊維長が0.01~0.5mmである炭素繊維は、2軸の押出機により炭素繊維と熱可塑性樹脂とを混錬することにより作ることができる。繊維長の長さは、スクリュー軸の回転速度、スクリュー軸の長さ、太さ、溝の深さ、溝の間隔、混錬速度、樹脂温度を調節することで繊維を切断し、調節することができる。
【0023】
本発明において、全炭素繊維中60重量%以上の炭素繊維が、
図21、
図22に示すように、30°以内の一方向に配向していることが好ましい。15°以内の一方向に配向していることがより好ましく、10°以内の一方向に配向していることがさらに好ましい。
【0024】
炭素繊維の60重量%以上を30°以内の一方向に配向させた熱可塑性樹脂炭素繊維複合材は、上記の熱可塑性樹脂炭素繊維複合材料からなるペレットを用いて、一軸の押出機で溶融しながら、ダイスより一定方向に押し出すことで製造できる。
【0025】
このことより、本発明において、熱可塑性樹脂炭素繊維複合材の内部で、炭素繊維が一方向に配向する。
【0026】
パイプの厚さは成形性の点から0.5~10.0mmが好ましく、厚すぎると曲げ加工時に温度ムラが出来、うまく曲げ加工出来なくなる為、0.5~4.0mmがより好ましい。
【0027】
パイプ断面は真円、楕円、多角形のいずれかが好ましく、断面が真円であることがより好ましい。
【0028】
パイプの外径は5~100mmが好ましく、5~50mmがより好ましく、10~30mmがさらに好ましい。
【0029】
曲げ加工性の点から、曲げパイプのセンターから曲げの中心までの半径である曲げR(
図4の10)が、外径の3~10倍が好ましく、外径に対して曲げRが小さすぎると、曲げ加工時にパイプが破れてしまう為、4~10倍がより好ましい。曲げRは三次元測定機にて測定した。
【0030】
図6~
図10に示すように、パイプの厚みの薄い箇所(
図6のB)が0.5~1mmであり、厚い箇所(
図6のA)が薄い箇所の1.5~8倍とすることができる(偏肉)。曲げ箇所の外側を内側より厚くすることで、曲げ加工時にパイプが破れてしまうのを防ぐことができる。曲げ箇所の外側を内側より厚くし過ぎると、熱曲げ加工時に外側と内側で温度のムラが出来、うまく曲げ加工出来なくなる為、厚い箇所が薄い箇所の1.5~5倍がより好ましい。一軸の押出機でダイスの間隔を調整することで厚い箇所と薄い箇所を作ることができる。
【0031】
曲げパイプの曲げ角度(
図4の7)は1~360°であり、外観、強度の観点から1~270°が好ましく、1~180°がより好ましく、1~90°がより好ましく、10~90°がさらに好ましい。
【0032】
パイプの曲げ加工温度は、熱可塑性樹脂の融点、または熱たわみ温度から0~50℃高い温度が好ましく、0~30℃高いのがより好ましい。
【0033】
図19、
図20に示すように、パイプ曲げ箇所の外側、内側の一部または、全周に、パイプの長さ方向に高低差0.1~3mmの凹凸の溝形状を有することもできる。凹凸のあるスパイラルチューブにパイプを押し当てながら曲げ加工することで、凹凸の溝形状を得られる。凹凸を付ける事により、内側のシワを解消することができる。更に、パイプを把持した際の滑り止めにもなる。凹凸の高低差が小さすぎると内側のシワが解消されず、又、凹凸の高低差をつけすぎると凹凸部分が潰れてしまい、うまく曲げ加工出来ない場合があり、より好ましくは高低差1~2mmの凹凸の溝形状が望ましい。
【0034】
図11、
図12に示すように、パイプ曲げ箇所およびパイプ全体を樹脂チューブで被覆することもできる。曲げパイプ成形品に樹脂チューブを被せ、熱により収縮させることで被覆する。
【0035】
パイプをスパイラル状に加工、もしくは曲げ箇所をさらに1回以上曲げることもできる。より好ましくは1~10回、さらに好ましくは1~5回曲げることができる。
【0036】
図13~
図18に示すように、スパイラルチューブをパイプの外側、又は、内側、又は、は内外に用いることで、パイプを曲げ加工する。スパイラルチューブは、ミスミ製ステンレスチューブKSNやハリケーン製メッキスパイラルチューブ等を用いる。もしくは、特開2021-134849に記載されたフレキシブルホースや、特開2008-196533に記載された蛇腹ホースを用いることもできる。
【実施例0037】
次に、実施例について説明する。各実施例および比較例において、使用した材料および測定方法は以下の通りである。
【0038】
(1)使用した材料
(A)炭素繊維
A1:繊維径が7μmの炭素繊維。
【0039】
(B)第1の熱可塑性樹脂
B1: PA6(融点225℃、275℃における粘度:80poise)
B2:PA66(融点:255℃、305℃における粘度:250poise)
B3:PP(融点:170℃、220℃における粘度:70poise)
B4:ABS(ガラス転移点(軟化点):190℃、240℃における粘度:120poise)
B5:PPS(融点:285℃、335℃における粘度:260poise)
B6:PC(軟化点:146℃、290℃における粘度:125poise)。
【0040】
(C)第2の熱可塑性樹脂
C1:PA6(融点:225℃、275℃における粘度:1,100pois e)
C2:PA66(融点:255℃、305℃における粘度:5,500poise)
C3:PP(融点:170℃、220℃における粘度:1,770poise)
C4:ABS(軟化点:190℃、240℃ における粘度:2,520poise)
C5:PPS(融点:255℃、335℃における粘度:8,060poise)
C6:PC(軟化点:146℃、290℃における粘度:1,890poise)。
【0041】
(D)複合材料
D1:A1を25重量%、B1を50重量%、C1を25重量%含有
D2:A1を35重量%、B1を25重量%、C1を40重量%含有
D3:A1を30重量%、B1を45重量%、C1を25重量%含有
D4:A1を30重量%、B2を55重量%、C2を15重量%含有
D5:A1を25重量%、B3を35重量%、C3を40重量%含有
D6:A1を40重量%、B4を20重量%、C4を40重量%含有
D7:A1を40重量%、B5を30重量%、C5を30重量%含有
D8:A1を30重量%、B6を30重量%、C6を40重量%含有。
【0042】
(2)測定方法
(A)炭素繊維の繊維長とその割合、配向、重量%、平均繊維長
マイクロフォーカスX線透過透視装置(島津製作所製のSMX-1000 PLUS)にて測定。
【0043】
(B)パイプ厚み
ノギスにて測定。
【0044】
(C)曲げR、曲げ角度
三次元測定機にて測定。
【0045】
[実施例1]
上記複合材料D1を用いて、外径Φ21mm、厚さ1.0mmのパイプを作製した。得られたパイプにおいて、全炭素繊維中、繊維長が0.01~0.5mmである炭素繊維の割合が65重量%、炭素繊維の同一方向への配向は98%であった(表1)。
【0046】
上記パイプを用いて235℃で1箇所の熱曲げ加工を実施し、曲げ角度90°、R100mmのパイプを得た(表1)。
【0047】
以下、各実施例について、パイプ組成、後加工内容について表1に示す。
【0048】
[比較例1]
上記第1の熱可塑性樹脂B1にガラス繊維を30%含む樹脂を用いて、外径Φ21mm、厚さ1.0mmのパイプを射出成形で作製した(表2)。
【0049】
上記パイプを用いて235℃で熱曲げ加工を実施し曲げパイプを得ようとしたが、柔らかく得ることが出来なかった(表2)。
【0050】
以下、各比較例について、パイプ組成、後加工内容性について表2に示す。
【0051】
[実施例2]
上記複合材料D2を用いて、外径Φ22mm、厚さ2.0mmのパイプを作製した。得られたパイプにおいて、全炭素繊維中、繊維長が0.01~0.5mmである炭素繊維の割合が70重量%、炭素繊維の同一方向への配向は97%であった。
【0052】
上記パイプを用いて235℃で1箇所の熱曲げ加工を実施し、曲げ角度45°、R150mmのパイプを得た。
【0053】
[比較例2]
上記第1の熱可塑性樹脂B1にガラス繊維を40%含む樹脂を用いて、外径Φ21mm、厚さ1.0mmのパイプを射出成形で作製した。
【0054】
上記パイプを用いて235℃で熱曲げ加工を実施し曲げパイプを得ようとしたが、柔らかく得ることが出来なかった。
【0055】
[実施例3]
上記複合材料D3を用いて、外径Φ21mm、厚さ1.0mmのパイプを作製した。得られたパイプにおいて、全炭素繊維中、繊維長が0.01~0.5mmである炭素繊維の割合が67重量%、炭素繊維の同一方向への配向は98%であった。
【0056】
上記パイプを235℃で内側に1mmの凹凸の溝形状をつけて熱曲げ加工を実施し、曲げ角度60°、R100mmのパイプを得た。更に、曲げ箇所に樹脂チューブで被覆した。
【0057】
[比較例3]
上記第1の熱可塑性樹脂B1にガラス繊維を35%含む樹脂を用いて、外径Φ21mm、厚さ1.0mmのパイプを射出成形で作製した。
【0058】
上記パイプを235℃で熱曲げ加工を実施し曲げパイプを得ようとしたが、柔らかく得ることが出来なかった。
【0059】
[実施例4]
上記複合材料D4を用いて、外径Φ21mm、厚さ1.0mmのパイプを作製した。得られたパイプにおいて、全炭素繊維中、繊維長が0.01~0.5mmである炭素繊維の割合が68重量%、炭素繊維の同一方向への配向は98%であった。
【0060】
上記パイプを用いて265℃で1箇所の熱曲げ加工を実施し、曲げ角度45°、R205mmのパイプを得た。
【0061】
[比較例4]
上記第1の熱可塑性樹脂B2にガラス繊維を30%含む樹脂を用いて、外径Φ21mm、厚さ1.0mmのパイプを射出成形で作製した。
【0062】
上記パイプを用いて、265℃で熱曲げ加工を実施し曲げパイプを得ようとしたが、柔らかく得ることが出来なかった。
【0063】
[実施例5]
上記複合材料D5を用いて、外径Φ20mm、厚さ1.0mmのパイプを作製した。得られたパイプにおいて、全炭素繊維中、繊維長が0.01~0.5mmである炭素繊維の割合が71重量%、炭素繊維の同一方向への配向は95%であった。
【0064】
上記パイプを用いて185℃で5箇所の熱曲げ加工を実施し、更に、185℃で同一箇所の熱曲げ加工を1回実施し、曲げ角度350°、R60mmのパイプを得た。
【0065】
[比較例5]
上記第1の熱可塑性樹脂B3にガラス繊維を25%含む樹脂を用いて、外径Φ21mm、厚さ1.0mmのパイプを射出成形で作製した。
【0066】
上記パイプを用いて、185℃で熱曲げ加工を実施し曲げパイプを得ようとしたが、柔らかく得ることが出来なかった。
【0067】
[実施例6]
上記複合材料D6を用いて、外径Φ23mm、厚さ0.5mmのパイプを作製した。得られたパイプにおいて、全炭素繊維中、繊維長が0.01~0.5mmである炭素繊維の割合が66重量%、炭素繊維の同一方向への配向は88%であった。
【0068】
上記パイプを用いて185℃で1箇所の熱曲げ加工を実施し、曲げ角度260°のパイプを得た。
【0069】
[比較例6]
上記第1の熱可塑性樹脂B4にガラス繊維を40%含む樹脂を用いて、外径Φ21mm、厚さ1.0mmのパイプを射出成形で作製した。
【0070】
上記パイプを用いて、185℃で熱曲げ加工を実施し曲げパイプを得ようとしたが、柔らかく得ることが出来なかった。
【0071】
[実施例7]
上記複合材料D7を用いて、外径Φ7mm、厚さ平均4.0mm、厚い箇所が薄い箇所の1.5倍のパイプを作製した。得られたパイプにおいて、全炭素繊維中、繊維長が0.01mm~0.5mmである炭素繊維の割合が80重量%、炭素繊維の同一方向への配向は97%であった。
【0072】
上記パイプを用いて285℃で1箇所の熱曲げ加工を実施し、曲げ角度185°、R90mmのパイプを得た。
【0073】
[比較例7]
上記第1の熱可塑性樹脂B5にガラス繊維を40%含む樹脂を用いて、外径Φ21mm、厚さ1.0mmのパイプを射出成形で作製した。
【0074】
上記パイプを用いて、285℃で熱曲げ加工を実施し曲げパイプを得ようとしたが、柔らかく得ることが出来なかった。
【0075】
[実施例8]
上記複合材料D8を用いて、外径Φ95mm、厚さ平均9.5mm、厚い箇所が薄い箇所の7.7倍のパイプを作製した。得られたパイプにおいて、全炭素繊維中、繊維長が0.01~0.5mmである炭素繊維の割合が76重量%、炭素繊維の同一方向への配向は91%であった。
【0076】
上記パイプを用いて185℃で1箇所の熱曲げ加工を実施し、曲げ角度20°、R380mmのパイプを得た。
【0077】
[比較例8]
上記第1の熱可塑性樹脂B6にガラス繊維を40%含む樹脂を用いて、外径Φ21mm、厚さ1.0mmのパイプを射出成形で作製した。
【0078】
上記パイプを用いて、185℃で熱曲げ加工を実施し曲げパイプを得ようとしたが、柔らかく得ることが出来なかった。
【0079】
【0080】