(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090490
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】液状肥料の製造方法、製造装置及び液状肥料
(51)【国際特許分類】
C05F 11/00 20060101AFI20240627BHJP
C05G 5/20 20200101ALI20240627BHJP
C05F 11/06 20060101ALI20240627BHJP
C02F 11/02 20060101ALI20240627BHJP
C02F 1/469 20230101ALI20240627BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20240627BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20240627BHJP
【FI】
C05F11/00
C05G5/20
C05F11/06
C02F11/02 ZAB
C02F1/469
B01D61/58
C02F1/44 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206438
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】杉本 直也
(72)【発明者】
【氏名】長尾 衛
【テーマコード(参考)】
4D006
4D059
4D061
4H061
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA17
4D006KA01
4D006KA52
4D006KA55
4D006KA57
4D006KA72
4D006KB22
4D006KB23
4D006MA13
4D006MA14
4D006PA02
4D006PB08
4D006PC61
4D059AA01
4D059BA01
4D059BA11
4D059BE42
4D059BE49
4D059BE51
4D059CC01
4D061DA08
4D061DB18
4D061DC13
4D061DC14
4D061EA09
4D061EB04
4D061EB13
4D061EB19
4D061FA09
4H061AA02
4H061AA03
4H061BB01
4H061BB21
4H061BB51
4H061CC51
4H061FF01
4H061GG22
4H061GG49
4H061GG50
4H061GG54
4H061GG65
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、消化液に含まれる植物生育に有用な成分を取り出し、植物の生育条件や植物の種類に応じて様々な組成比の液状肥料を調製することである。
【解決手段】下記の第一工程から第三工程を含む、液状肥料の製造方法;第一工程:有機物の消化液を膜分離処理し、カリウム成分及び窒素成分を含む膜透過液と、汚泥を含む分散液を得る工程、第二工程:前記膜透過液を電気透析処理し、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記膜透過液よりも低い電気透析脱塩液と、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記膜透過液よりも高い電気透析濃縮液を得る工程、第三工程:前記電気透析脱塩液を逆浸透膜処理し、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記電気透析脱塩液よりも低い逆浸透膜透過液と、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記電気透析脱塩液よりも高い逆浸透膜濃縮液を得る工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の第一工程から第三工程を含む、液状肥料の製造方法;
第一工程:有機物の消化液を膜分離処理し、カリウム成分及び窒素成分を含む膜透過液と、汚泥を含む分散液を得る工程、
第二工程:前記膜透過液を電気透析処理し、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記膜透過液よりも低い電気透析脱塩液と、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記膜透過液よりも高い電気透析濃縮液を得る工程、
第三工程:前記電気透析脱塩液を逆浸透膜処理し、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記電気透析脱塩液よりも低い逆浸透膜透過液と、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記電気透析脱塩液よりも高い逆浸透膜濃縮液を得る工程。
【請求項2】
前記消化液が、嫌気性発酵の消化液又は好気性発酵の消化液である、請求項1に記載の液状肥料の製造方法。
【請求項3】
前記第一工程で得る汚泥を含む分散液が、前記消化液よりも高いリン成分濃度である、請求項1又は2に記載の液状肥料の製造方法。
【請求項4】
前記第二工程で得る電気透析濃縮液が、前記膜透過液よりも高いリン成分濃度である、請求項1又は2に記載の液状肥料の製造方法。
【請求項5】
前記第三工程で得る逆浸透膜濃縮液が、前記電気透析脱塩液よりも高いリン成分濃度である、請求項1又は2に記載の液状肥料の製造方法。
【請求項6】
下記の第一工程から第三工程を含む、液状肥料の製造装置;
第一工程:有機物の消化液を膜分離処理し、カリウム成分及び窒素成分を含む膜透過液と、汚泥を含む分散液を得る工程、
第二工程:前記膜透過液を電気透析処理し、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記膜透過液よりも低い電気透析脱塩液と、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記膜透過液よりも高い電気透析濃縮液を得る工程、
第三工程:前記電気透析脱塩液を逆浸透膜処理し、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記電気透析脱塩液よりも低い逆浸透膜透過液と、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記電気透析脱塩液よりも高い逆浸透膜濃縮液を得る工程。
【請求項7】
前記消化液が、嫌気性発酵の消化液又は好気性発酵の消化液である、請求項6に記載の液状肥料の製造装置。
【請求項8】
前記第一工程で得る汚泥を含む分散液が、前記消化液よりも高いリン成分濃度である、請求項6又は7に記載の液状肥料の製造装置。
【請求項9】
前記第二工程で得る電気透析濃縮液が、前記膜透過液よりも高いリン成分濃度である、請求項6又は7に記載の液状肥料の製造装置。
【請求項10】
前記第三工程で得る逆浸透膜濃縮液が、前記電気透析脱塩液よりも高いリン成分濃度である、請求項6又は7に記載の液状肥料の製造装置。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の液状肥料の製造方法の、第一工程で得られる膜透過液、第一工程で得られる汚泥を含む分散液、第二工程で得られる電気透析濃縮液、第三工程で得られる逆浸透膜濃縮液から選ばれる少なくとも一つを含む、液状肥料。
【請求項12】
請求項6又は7に記載の液状肥料の製造装置の、第一工程で得られる膜透過液、第一工程で得られる汚泥を含む分散液、第二工程で得られる電気透析濃縮液、第三工程で得られる逆浸透膜濃縮液から選ばれる少なくとも一つを含む、液状肥料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状肥料の製造方法、製造装置及び液状肥料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、畜産廃棄物や食品廃棄物等の有機物の消化液を、肥料または肥料の原料として用いることが望まれている。
例えば、特許文献1では、有機物の消化液を限外濾過処理することで、リン成分及び汚泥を含む分散液とカリウム成分及び窒素成分を含む膜透過液とに分離し、膜透過液を電気透析処理して濃縮し、さらに濃縮液を蒸留処理することで、窒素成分の濃度が高い第1の溶液と、カリウム成分を含み窒素成分の濃度が低い第2の溶液に分離し、これらを肥料の原料とすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で提案された方法では、消化液から限外濾過処理及び電気透析処理によって植物生育に必要な成分を取り出すことはできるものの、植物生育に必要な成分を取り出した後の電気透析脱塩液には窒素成分及びリン成分が残留しているため、これを公共水域に放出すると環境負荷が増加するという課題があることを、本発明者らは見出した。
【0005】
本発明の目的は、上記の課題を解決することにある。
即ち、本発明は、消化液に含まれる植物生育に有用な成分を取り出すことができ、さらに、植物の生育条件や植物の種類に応じて様々な組成比の液状肥料を調製することができる。また、植物生育に必要な成分を取り出した後の処理水中における窒素成分及びリン成分の濃度を低くでき、公共水域へ放出しても環境負荷が増加せず、水資源としても再利用できる処理水を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の液状肥料の製造方法を用いることで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
即ち、本発明は以下の特徴を有する。
[1] 下記の第一工程から第三工程を含む、液状肥料の製造方法;
第一工程:有機物の消化液を膜分離処理し、カリウム成分及び窒素成分を含む膜透過液と、汚泥を含む分散液を得る工程、
第二工程:前記膜透過液を電気透析処理し、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記膜透過液よりも低い電気透析脱塩液と、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記膜透過液よりも高い電気透析濃縮液を得る工程、
第三工程:前記電気透析脱塩液を逆浸透膜処理し、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記電気透析脱塩液よりも低い逆浸透膜透過液と、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記電気透析脱塩液よりも高い逆浸透膜濃縮液を得る工程。
[2] 前記消化液が、嫌気性発酵の消化液又は好気性発酵の消化液である、[1]に記載の液状肥料の製造方法。
[3] 前記第一工程で得る汚泥を含む分散液が、前記消化液よりも高いリン成分濃度である、[1]又は[2]に記載の液状肥料の製造方法。
[4] 前記第二工程で得る電気透析濃縮液が、前記膜透過液よりも高いリン成分濃度である、[1]~[3]のいずれかに記載の液状肥料の製造方法。
[5] 前記第三工程で得る逆浸透膜濃縮液が、前記電気透析脱塩液よりも高いリン成分濃度である、[1]~[4]のいずれかに記載の液状肥料の製造方法。
【0008】
[6] 下記の第一工程から第三工程を含む、液状肥料の製造装置;
第一工程:有機物の消化液を膜分離処理し、カリウム成分及び窒素成分を含む膜透過液と、汚泥を含む分散液を得る工程、
第二工程:前記膜透過液を電気透析処理し、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記膜透過液よりも低い電気透析脱塩液と、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記膜透過液よりも高い電気透析濃縮液を得る工程、
第三工程:前記電気透析脱塩液を逆浸透膜処理し、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記電気透析脱塩液よりも低い逆浸透膜透過液と、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記電気透析脱塩液よりも高い逆浸透膜濃縮液を得る工程。
[7] 前記消化液が、嫌気性発酵の消化液又は好気性発酵の消化液である、[6]に記載の液状肥料の製造装置。
[8] 前記第一工程で得る汚泥を含む分散液が、前記消化液よりも高いリン成分濃度である、[6]又は[7]に記載の液状肥料の製造装置。
[9] 前記第二工程で得る電気透析濃縮液が、前記膜透過液よりも高いリン成分濃度である、[6]~[8]のいずれかに記載の液状肥料の製造装置。
[10] 前記第三工程で得る逆浸透膜濃縮液が、前記電気透析脱塩液よりも高いリン成分濃度である、[6]~[9]のいずれかに記載の液状肥料の製造装置。
【0009】
[11] [1]~[5]のいずれかに記載の液状肥料の製造方法の、第一工程で得られる膜透過液、第一工程で得られる汚泥を含む分散液、第二工程で得られる電気透析濃縮液、第三工程で得られる逆浸透膜濃縮液から選ばれる少なくとも一つを含む、液状肥料。
[12] [6]~[10]のいずれかに記載の液状肥料の製造装置の、第一工程で得られる膜透過液、第一工程で得られる汚泥を含む分散液、第二工程で得られる電気透析濃縮液、第三工程で得られる逆浸透膜濃縮液から選ばれる少なくとも一つを含む、液状肥料。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液状肥料の製造方法は、消化液に含まれる植物生育に有用な成分を取り出すことができ、さらに、植物の生育条件や植物の種類に応じて様々な組成比の液状肥料を調製することができる。また、植物生育に必要な成分を取り出した後の逆浸透膜透過液は窒素成分及びリン成分の濃度が低いことから、河川等の公共水域に放出しても環境負荷が増加せず、水資源としても再利用可能である。
本発明の液状肥料の製造装置は、消化液に含まれる植物生育に有用な成分を取り出すことができ、さらに、植物の生育条件や植物の種類に応じて様々な組成比の液状肥料を調製することができる。また、河川等の公共水域に放出しても環境負荷が増加せず、水資源としても再利用できる逆浸透膜透過液を得ることができる。
本発明の液状肥料は、消化液に含まれる植物生育に有用な成分を含み、植物の生育条件や植物の種類に応じて様々な組成比とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
また、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後に記載される数値あるいは物理値を含む意味で用いることとする。また、上限、下限として記載した数値あるいは物理値は、その値を含む意味で用いることとする。
【0012】
[液状肥料の製造方法]
本発明の液状肥料の製造方法は、下記の第一工程から第三工程を含む。
【0013】
[第一工程]
本発明の第一工程は、有機物の消化液を膜分離処理し、カリウム成分及び窒素成分を含む膜透過液と、汚泥を含む分散液を得る工程である。
有機物の消化液とは、し尿等の有機物を発酵処理した後の液である。
前記消化液としては、嫌気性発酵の消化液、好気性発酵の消化液が挙げられる。
【0014】
嫌気性発酵の消化液とは、空気を遮断した無酸素の状態下で発酵処理した液である。
好気性発酵の消化液とは、空気で曝気した状態下での発酵処理液である。
嫌気性発酵の消化液と好気性発酵の消化液の中では、メタンガス等のバイオガス回収ができる等の理由から、嫌気発酵の消化液が好ましい。
【0015】
前記膜分離処理は、膜表面に開いた穴の孔径を利用して、液体中に含まれている固体の分離操作を行なう、固-液分離処理である。
膜分離処理に用いる膜としては、例えば、精密濾過膜、限外濾過膜が挙げられる。
これらの中では、第二工程に設置する電気透析装置の流路閉塞を防ぐ点で、より微細な固体を分離可能な限外濾過膜が好ましい。
【0016】
前記カリウム成分は、植物生育に有用な成分であり、具体的にはカリウムイオンを指す。カリウムイオンの対イオンは特に限定されるものではない。
【0017】
前記窒素成分も、植物生育に有用な成分であり、有機態窒素、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素等の形態がある。
これらの中では、液状肥料として有用である点から、アンモニア態窒素、硝酸態窒素が好ましく、水耕栽培の作物への適用も可能な硝酸態窒素がより好ましい。
【0018】
前記消化液中のリン成分の濃度は、1mg/L以上が好ましく、100mg/L以上がより好ましい。
【0019】
前記膜透過液はカリウム成分及び窒素成分を含み、その他の成分を含んでいてもよい。
膜透過液中のカリウム成分の濃度は、高いほど好ましい。
膜透過液中の窒素成分の濃度は、高いほど好ましい。
【0020】
前記汚泥とは、前記消化液由来の水分を含んだ固形物である。
植物の生育には前記カリウム成分及び前記窒素成分に加え、リン成分が有用であることから、汚泥はリン成分を含むことが好ましい。リン成分には、不溶性のリン成分と溶解性のリン成分があり、不溶性のリン成分は懸濁態のリン成分となる。
【0021】
汚泥を含む分散液とは、第一工程における膜分離槽内の汚泥である。
分散液中の汚泥の濃度は、5,000~20,000mg/Lが好ましく、8,000~12,000mg/Lがより好ましい。
【0022】
汚泥分散液中の不溶性のリン成分の濃度は、前記消化液の不溶性のリン成分の濃度よりも高い。
【0023】
[第二工程]
本発明の第二工程は、前記膜透過液を電気透析処理し、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記膜透過液よりも低い電気透析脱塩液と、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記膜透過液よりも高い電気透析濃縮液を得る工程である。
【0024】
前記電気透析処理とは、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を交互に、スペーサーを介して多数組積層し、その両端に1対の電極を配置し、陽極側の陰イオン交換膜と陰極側の陽イオン交換膜で仕切られたスペースである脱塩室(D室)、それとは反対に陽極側の陽イオン交換膜と陰極側の陰イオン交換膜で仕切られたスペースである濃縮室(C室)が交互に配置されたものである。
D室に原液を供給すると陽イオンは陰極に向かって陽イオン交換膜を透過して陰極よりのC室に移動する。その際、C室の陰極側は陰イオン交換膜で仕切られているため、さらに隣のD室に移動することはできない。
同様に、陰イオンはD室から陽極側のC室に移動する。結果としてD室で脱塩され、C室で濃縮されるという処理である。
【0025】
電気透析処理に用いる装置としては、例えば、AGCエンジニアリング社製のDW-1が挙げられる。
【0026】
前記電気透析脱塩液とは、電気透析処理のD室で脱塩された脱塩水である。
電気透析脱塩液はカリウム成分及び窒素成分を含み、その他の成分を含んでいてもよい。
電気透析脱塩液中のカリウム成分の濃度は、膜透過液中のカリウム成分の濃度より低いほど好ましい。
電気透析脱塩液中の窒素成分の濃度は、膜透過液中の窒素成分の濃度より低いほど好ましい。
【0027】
前記電気透析濃縮液とは、電気透析処理のC室で濃縮された濃縮液である。
電気透析濃縮液はカリウム成分及び窒素成分を含む。
電気透析濃縮液中のカリウム成分の濃度は、膜透過液中のカリウム成分の濃度より高いほど好ましい。
電気透析濃縮液中の窒素成分の濃度は、膜透過液中の窒素成分の濃度より高いほど好ましい。
【0028】
また、電気透析濃縮液はリン成分を含むことが好ましい。
電気透析濃縮液中のリン成分の濃度は、膜透過液中のリン成分の濃度よりも高い。
【0029】
[第三工程]
本発明の第三工程は、前記電気透析脱塩液を逆浸透膜処理し、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記電気透析脱塩液よりも低い逆浸透膜透過液と、カリウム成分及び窒素成分の濃度が前記電気透析脱塩液よりも高い逆浸透膜濃縮液を得る工程である。
【0030】
前記逆浸透膜処理とは、濃厚溶液側に浸透圧より大きな圧力を加えることによって、半透膜を通して溶媒を濃厚溶液側から希薄溶液側に移行させる原理を膜分離に利用した処理である。
逆浸透膜処理に用いる逆浸透膜としては、例えば、日東電工社製のCPA5が挙げられる。
【0031】
前記逆浸透膜透過液とは、逆浸透膜の透過液である。
逆浸透膜透過液は少なくともカリウム成分及び窒素成分を含み、その濃度は、前記電気透析脱塩液のカリウム成分及び窒素成分の濃度よりも低い。
逆浸透膜透過液中のカリウム成分の濃度は、電気透析脱塩液中のカリウム成分の濃度より低いほど好ましい。
逆浸透膜透過液中の窒素成分の濃度は、電気透析脱塩液中の窒素成分の濃度より低いほど好ましい。
【0032】
逆浸透膜濃縮液とは、逆浸透膜を透過しなかった液である。
逆浸透膜濃縮液は少なくともカリウム成分及び窒素成分を含み、その濃度は、前記電気透析脱塩液のカリウム成分及び窒素成分の濃度よりも高い。
逆浸透膜濃縮液中のカリウム成分の濃度は、電気透析脱塩液中のカリウム成分の濃度より高いほど好ましい。
逆浸透膜濃縮液中の窒素成分の濃度は、電気透析脱塩液中の窒素成分の濃度より高いほど好ましい。
【0033】
また、逆浸透膜濃縮液はリン成分を含むことが好ましい。
逆浸透膜濃縮液中のリン成分の濃度は、電気透析脱塩液中のリン成分の濃度よりも高い。
【0034】
[液状肥料の製造装置]
本発明の液状肥料の製造装置は、下記の第一工程から第三工程を含む。
【0035】
[第一工程]
液状肥料の製造方法の項目で記した、第一工程と同様である。
【0036】
[第二工程]
液状肥料の製造方法の項目で記した、第二工程と同様である。
【0037】
[第三工程]
液状肥料の製造方法の項目で記した、第三工程と同様である。
【0038】
[液状肥料]
本発明の液状肥料は、本発明の液状肥料の製造方法、又は、本発明の液状肥料の製造装置の、第一工程で得られる膜透過液、第一工程で得られる汚泥を含む分散液、第二工程で得られる電気透析濃縮液、第三工程で得られる逆浸透膜濃縮液から選ばれる少なくとも一つを含む。
液状肥料は、これらの内の1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
本発明の液状肥料は、第一工程で得られる膜透過液、第一工程で得られる汚泥を含む分散液、第二工程で得られる電気透析濃縮液、第三工程で得られる逆浸透膜濃縮液から選ばれる少なくとも一つを用い、さらに、肥料として一般的な添加剤を配合してもよい。
添加剤として、既に肥料として使用されている有機肥料、化学肥料等が挙げられる。植物への効能、利用のしやすさの観点から水溶性のものが好ましい。
【0040】
液状肥料は、窒素、カリウム、リンを含むことが好ましく、さらに他の成分として、カルシウム、マグネシウム、硫黄、マンガン、ホウ素を含むことがより好ましい。
上記他の成分は、第一工程で得られる膜透過液、第一工程で得られる汚泥を含む分散液、第二工程で得られる電気透析濃縮液、第三工程で得られる逆浸透膜濃縮液に、元々含まれていてもよいし、後から添加してもよい。
【0041】
[用途]
本発明の液状肥料は、一般的な肥料として使用可能であるが、特に、植物の土耕及び水耕栽培における元肥・追肥として好適に用いられる。
【実施例0042】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例においては、下記の方法により各種物性を測定した。
【0043】
[評価方法]
(1)TOC(全有機炭素濃度)
全有機炭素濃度は、全有機体炭素分析装置(日東精工アナリテック社製「TOC-310V」)により測定した。本装置の測定方法は、燃焼式である。
【0044】
(2)TN(全窒素濃度)
全窒素濃度は、全有機体炭素分析装置(日東精工アナリテック社製「TOC-310V」)の後段に接続した、窒素検出器(日東精工アナリテック社製「ND-210型」)により測定した。本装置の測定方法は、酸化分解-化学発光法(減圧法)である。
【0045】
(3)PO4-P(リン酸性リン濃度)
リン酸性リン濃度は、東ソー社製「IC-2100」を用い、イオンクロマトグラフ法により測定した。
東ソー社製「TSKgel SuperIC-A HS」をカラムとし、NaHCO3、NaCO3混合液を移動相として、電気伝導度により検出した。
【0046】
(4)K(カリウム濃度)
カリウム濃度は、フレーム光度法により測定した。
【0047】
[実施例1]
消化液として、し尿由来の好気発酵消化液を用いた。
この消化液を、第一工程として、三菱ケミカル社製の限外濾過膜(膜素材:ポリフッ化ビニリデン、公称孔径0.05μm、膜形状:中空糸)で吸引濾過処理し、限外濾過膜透過液と、汚泥を含む分散液を得た。
得られた限外濾過膜透過液を、第二工程として、AGCエンジニアリング社製の電気透析装置(カチオンイオン交換膜:CMVN、アニオンイオン交換膜:AMVN)で処理し、電気透析脱塩液と、電気透析濃縮液を得た。
得られた電気透析脱塩液を原水とし、逆浸透膜評価を実施した。
【0048】
逆浸透膜評価では、岩井ファルマテック社製のスピンフローセルを使用した。膜は日東電工社製のCPA5を使用した。
評価装置セル内に逆浸透膜を設置し、加圧ポンプにより、原水をセルに供給、濃縮液を原水に返送する循環濾過法により各回収率における処理水をサンプリングし、水質分析を実施した。
ここで回収率とは、逆浸透膜透過液/逆浸透膜供給液の算出値である。
結果を表1に示す。
【0049】
【0050】
逆浸透膜透過液の回収率が上記範囲内、即ち、回収率が70%以下であれば、一律、排水基準値であるN<100mg/L、P<8mg/Lを満たすことができ、公共水域に放出しても環境負荷低減が図れることがわかった。
また、逆浸透膜濃縮液は、液状肥料として有効なカリウム成分、窒素成分、リン成分を含有しており、そのまま液状肥料として利用することが可能である。また、電気透析濃縮液の濃度調整用の希釈水としての利用や、再度限外濾過工程、電気透析工程へ返送して、再濃縮をかける等、有効に利用可能である。