IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両用ピラーガラス周辺構造 図1
  • 特開-車両用ピラーガラス周辺構造 図2
  • 特開-車両用ピラーガラス周辺構造 図3
  • 特開-車両用ピラーガラス周辺構造 図4
  • 特開-車両用ピラーガラス周辺構造 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090509
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】車両用ピラーガラス周辺構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/10 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
B60J1/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206463
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】山下 晶夫
(72)【発明者】
【氏名】安田 貴裕
(57)【要約】
【課題】ガラスモールよりも下方に設置された適宜の部材への被水を防止できる車両用ピラーガラス周辺構造を提供する。
【解決手段】車両用ピラーガラス周辺構造100は、開口118が形成されたフロントピラー104と、開口に設置されたピラーガラス106と、ピラーガラスの周縁120に設置され、ピラーガラスの外面158を覆う外面部146と外面部に連続しピラーガラスの端面160を覆う端面部148とを有するガラスモール122と、ピラーガラスの内面140の少なくとも下辺部156に沿って塗布されピラーガラスをフロントピラーに接合する接着剤154とを備え、ガラスモールは、端面部から上方に突出してピラーガラスの内面を覆い外面部および端面部とともにピラーガラスの下縁138を挟み込んで保持する車両前後方向に離間して配置された前側保持部150および後側保持部152を有し、前側保持部および後側保持部は接着剤に隣接している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の開口が形成されたフロントピラーと、該開口に設置されたピラーガラスとを備える車両用ピラーガラス周辺構造において、当該車両用ピラーガラス周辺構造はさらに、
前記ピラーガラスの周縁に設置されたガラスモールであって、前記ピラーガラスの外面を覆う外面部と該外面部に連続し前記ピラーガラスの端面を覆う端面部とを有するガラスモールと、
前記ピラーガラスの内面の少なくとも下辺部に沿って塗布され該ピラーガラスを前記フロントピラーに接合する接着剤とを備え、
前記ガラスモールはさらに、前記端面部から上方に突出して前記ピラーガラスの内面を覆い前記外面部および前記端面部とともに前記ピラーガラスの下縁を挟み込んで保持する車両前後方向に離間して配置された前側保持部および後側保持部を有し、
前記前側保持部および後側保持部は前記接着剤に隣接していることを特徴とする車両用ピラーガラス周辺構造。
【請求項2】
前記接着剤は、前記ピラーガラスの下辺部において、該ピラーガラスの前端および後端に向かうほど上方に曲線状または直線状に傾斜するように塗布されていて、
前記前側保持部および後側保持部は、前記接着剤のうち前記傾斜するように塗布された部分に隣接していて、
前記前側保持部および後側保持部の上端は、前記接着剤の下端よりも上方に位置することを特徴とする請求項1に記載の車両用ピラーガラス周辺構造。
【請求項3】
当該車両用ピラーガラス周辺構造はさらに、前記ピラーガラスの下方に位置し前記フロントピラーに設置された所定のブラケットを備え、
前記前側保持部は、前記ブラケットよりも車両前側に位置し、
前記後側保持部は、前記ブラケットよりも車両後側に位置していることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ピラーガラス周辺構造。
【請求項4】
当該車両用ピラーガラス周辺構造はさらに、前記ピラーガラスの下方に位置し前記フロントピラーに設置された所定の部品固定部を備え、
前記前側保持部は、前記部品固定部よりも車両前側に位置し、
前記後側保持部は、前記部品固定部よりも車両後側に位置していることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ピラーガラス周辺構造。
【請求項5】
前記フロントピラーには、車両前後方向に離間して車外側にそれぞれ突出し上下方向に延びる前側突出部および後側突出部が形成されていて、
前記前側突出部は、前記前側保持部よりも車両後側に位置し、
前記後側突出部は、前記後側保持部よりも車両前側に位置し、
前記前側突出部と前記後側突出部との間に前記ブラケットが設置されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用ピラーガラス周辺構造。
【請求項6】
前記フロントピラーには、車両前後方向に離間して車外側にそれぞれ突出し上下方向に延びる前側突出部および後側突出部が形成されていて、
前記前側突出部は、前記前側保持部よりも車両後側に位置し、
前記後側突出部は、前記後側保持部よりも車両前側に位置し、
前記前側突出部と前記後側突出部との間に前記部品固定部が設置されていることを特徴とする請求項4に記載の車両用ピラーガラス周辺構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ピラーガラス周辺構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両は、例えば開口が形成されたフロントピラーと、フロントピラーの開口に設置されたピラーガラスとを備える。ピラーガラスの周縁には、ガラスモールが設置されている。ピラーガラスは、ガラスモールとともに接着剤によってフロントピラーに接合される。
【0003】
特許文献1には、モール付きガラスが記載されている。このモール付きガラスでは、ガラス板の周縁に付設したモールに、ループを描くように一筋の接着剤を塗布し、さらに接着剤の始点と終点とが重なる部位は二筋になるように塗布されて、車体のパネルに接着されている。またモールには、接着剤が二筋になる部位に、ガラス板に向かって窪ませた凹部が設けられている。
【0004】
特許文献1のモール付きガラスでは、モールに凹部を設けるだけで、凹部に接着剤が収まるため、少ない部品点数で接着剤の漏れを防止することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-162074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のモール付きガラスでは、ガラス板に塗布された接着剤を伝って雨水などの水が流れた場合、この水は、接着剤から下方に滴下する。このため、このモール付きガラスでは、モールよりも下方に設置された適宜の部材、例えばフェンダパネルなどを固定するブラケットへの被水を防止することができない。
【0007】
また特許文献1のモール付きガラスにおいて、ブラケットへの被水を防止するためには、水を導くための専用部品を用意する必要があり、部品点数が増えてコストや工数が増加してしまう。なお部品点数が増えると、所望の方向に水を導くためには、部品を高い精度で組み付ける必要もある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、ガラスモールよりも下方に設置された適宜の部材への被水を防止することができる車両用ピラーガラス周辺構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、所定の開口が形成されたフロントピラーと、開口に設置されたピラーガラスとを備える車両用ピラーガラス周辺構造において、車両用ピラーガラス周辺構造はさらに、ピラーガラスの周縁に設置されたガラスモールであって、ピラーガラスの外面を覆う外面部と外面部に連続しピラーガラスの端面を覆う端面部とを有するガラスモールと、ピラーガラスの内面の少なくとも下辺部に沿って塗布されピラーガラスをフロントピラーに接合する接着剤とを備え、ガラスモールはさらに、端面部から上方に突出してピラーガラスの内面を覆い外面部および端面部とともにピラーガラスの下縁を挟み込んで保持する車両前後方向に離間して配置された前側保持部および後側保持部を有し、前側保持部および後側保持部は接着剤に隣接していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガラスモールよりも下方に設置された適宜の部材への被水を防止することができる車両用ピラーガラス周辺構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係る車両用ピラーガラス周辺構造が適用される車両を示す図である。
図2図1の車両用ピラーガラス周辺構造の一部を示す図である。
図3図1の車両用ピラーガラス周辺構造のピラーガラスとガラスモールを示す図である。
図4図1の車両用ピラーガラス周辺構造の要部を示す図である。
図5図1の車両用ピラーガラス周辺構造の要部をフロントピラーとともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態の代表的な構成は、所定の開口が形成されたフロントピラーと、開口に設置されたピラーガラスとを備える車両用ピラーガラス周辺構造において、車両用ピラーガラス周辺構造はさらに、ピラーガラスの周縁に設置されたガラスモールであって、ピラーガラスの外面を覆う外面部と外面部に連続しピラーガラスの端面を覆う端面部とを有するガラスモールと、ピラーガラスの内面の少なくとも下辺部に沿って塗布されピラーガラスをフロントピラーに接合する接着剤とを備え、ガラスモールはさらに、端面部から上方に突出してピラーガラスの内面を覆い外面部および端面部とともにピラーガラスの下縁を挟み込んで保持する車両前後方向に離間して配置された前側保持部および後側保持部を有し、前側保持部および後側保持部は接着剤に隣接していることを特徴とする。
【0013】
上記構成では、前側保持部および後側保持部は、ガラスモールに形成されピラーガラスの下縁を保持し、さらにピラーガラスの下辺部に沿って塗布された接着剤に隣接している。このため、ピラーガラスの内面に塗布された接着剤を伝って雨水などの水が流れた場合、この水は、接着剤から前側保持部および後側保持部を伝って下方に滴下する。
【0014】
つまり、接着剤を伝ってピラーガラスの下辺部まで水が流れても、ガラスモールの下端部の任意の位置に形成された前側保持部および後側保持部によって、任意の位置で水を下方に滴下することができる。したがって、ガラスモールよりも下方に設置された適宜の部材(例えばフェンダパネルなどを固定するブラケット)への被水を防止することができる。
【0015】
さらにガラスモールに前側保持部および後側保持部を形成するため、水を導くための専用部品を用意する必要がない。このため、部品点数が増えることにより、コストや工数が増加することを防止することができる。
【0016】
上記の接着剤は、ピラーガラスの下辺部において、ピラーガラスの前端および後端に向かうほど上方に曲線状または直線状に傾斜するように塗布されていて、前側保持部および後側保持部は、接着剤のうち傾斜するように塗布された部分に隣接していて、前側保持部および後側保持部の上端は、接着剤の下端よりも上方に位置する。
【0017】
上記構成では、前側保持部および後側保持部を、ピラーガラスの下辺部において、接着剤のうち傾斜するように塗布された部分に隣接して形成し、さらに前側保持部および後側保持部の上端を、接着剤の下端よりも上方に位置させている。これにより、接着剤の下端まで水が伝う前に、前側保持部および後側保持部の上端から下方に水を導くことができる。このため、接着剤の下端に水が導かれることがなく、接着剤の下端から水が滴下することを防止することができる。
【0018】
上記の車両用ピラーガラス周辺構造はさらに、ピラーガラスの下方に位置しフロントピラーに設置された所定のブラケットを備え、前側保持部は、ブラケットよりも車両前側に位置し、後側保持部は、ブラケットよりも車両後側に位置している。
【0019】
これにより、ピラーガラスの接着剤を伝ってきた水は、ブラケットよりも車両前側、車両後側にそれぞれ位置する前側保持部、後側保持部によって下方に滴下される。このため、ブラケットへの被水を防止することができ、ブラケットに錆などが発生して、不具合が発生することを防止することができる。
【0020】
上記の車両用ピラーガラス周辺構造はさらに、ピラーガラスの下方に位置しフロントピラーに設置された所定の部品固定部を備え、前側保持部は、部品固定部よりも車両前側に位置し、後側保持部は、部品固定部よりも車両後側に位置している。
【0021】
これにより、ピラーガラスの接着剤を伝ってきた水は、部品固定部よりも車両前側、車両後側にそれぞれ位置する前側保持部、後側保持部によって下方に滴下される。このため、部品固定部への被水を防止することができ、部品固定部に錆などが発生して、不具合が発生することを防止することができる。なお部品固定部とは、スタッドボルトや固定穴などである。
【0022】
上記のフロントピラーには、車両前後方向に離間して車外側にそれぞれ突出し上下方向に延びる前側突出部および後側突出部が形成されていて、前側突出部は、前側保持部よりも車両後側に位置し、後側突出部は、後側保持部よりも車両前側に位置し、前側突出部と後側突出部との間にブラケットが設置されている。
【0023】
これにより、ピラーガラスの接着剤を伝ってきた水は、ガラスモールの前側保持部および後側保持部だけでなく、フロントピラーの前側突出部および後側突出部によっても下方に滴下されることになる。このため、ブラケットへの被水をより確実に防止することができる。
【0024】
上記のフロントピラーには、車両前後方向に離間して車外側にそれぞれ突出し上下方向に延びる前側突出部および後側突出部が形成されていて、前側突出部は、前側保持部よりも車両後側に位置し、後側突出部は、後側保持部よりも車両前側に位置し、前側突出部と後側突出部との間に部品固定部が設置されている。
【0025】
これにより、ピラーガラスの接着剤を伝ってきた水は、ガラスモールの前側保持部および後側保持部だけでなく、フロントピラーの前側突出部および後側突出部によっても下方に滴下されることになる。このため、部品固定部への被水をより確実に防止することができる。
【実施例0026】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0027】
図1は、本発明の実施例に係る車両用ピラーガラス周辺構造100が適用される車両102を示す図である。以下各図において、車両前後方向をそれぞれ矢印Front、Back、車幅方向の左右をそれぞれ矢印Left、Right、車両上下方向をそれぞれ矢印Up、Downで例示する。なお以下の説明では、図1の車両右側の車両用ピラーガラス周辺構造100を例示するが、車両左側に本実施例を適用してもよい。
【0028】
車両用ピラーガラス周辺構造100は、車両102の右側のフロントピラー104と、ピラーガラス106とを備える。フロントピラー104は、前側フロントピラー108と、後側フロントピラー110とを有する。前側フロントピラー108は、ルーフ112とフェンダパネル114との間に差し渡されている。後側フロントピラー110は、ルーフ112とサイドドアパネル116との間に差し渡されている。
【0029】
フロントピラー104には、前側フロントピラー108および後側フロントピラー110によって区画された開口118が形成されている。ピラーガラス106は、フロントピラー104の開口118を覆うように車外側から設置される。またピラーガラス106の周縁120には、ガラスモール122が設置されている。
【0030】
図2は、図1の車両用ピラーガラス周辺構造100の一部を示す図である。図2(a)は、フロントピラー104を車外側から見た状態を示している。図2(b)は、図2(b)のフロントピラー104の開口118にピラーガラス106を設置した状態を車内側から見た図である。
【0031】
フロントピラー104は、図2(a)に示すピラーアウタパネル124およびピラーインナパネル126を有する。ピラーインナパネル126は、図2(b)に示すように前側フロントピラー108および後側フロントピラー110に連続している。ピラーアウタパネル124は、図2(a)に示すようにピラーインナパネル126に重ねられていて、後側フロントピラー110に連続している。なおピラーアウタパネル124は、図2(a)に示すように車両前側ではピラーインナパネル126に重なっていない。
【0032】
図3は、図1の車両用ピラーガラス周辺構造100のピラーガラス106とガラスモール122を示す図である。図3(a)は、ピラーガラス106の周縁120に設置されたガラスモール122を車内側から見た図であって、ピラーガラス106およびガラスモール122の一部を示している。図3(b)は、図3(a)からピラーガラス106を省略したガラスモール122を示す図である。
【0033】
ガラスモール122は、前側端部128と、後側端部130と、下端部132とを有する。前側端部128、後側端部130はそれぞれ、ピラーガラス106の前端134、後端136に沿って上下方向に延びている。下端部132は、前側端部128と後側端部130とをつないでいて、ピラーガラス106の下縁138に沿って車両前後方向に延びている。なおピラーガラス106の内面140には、ピラーガラス106をフロントピラー104に固定するためのクリップ142と、ピラーガラス106とフロントピラー104との間に設置されるスペーサ144とが設置されている。
【0034】
ガラスモール122はさらに、図3(b)に示す外面部146と、端面部148と、前側保持部150および後側保持部152とを有する。前側保持部150および後側保持部152は、ガラスモール122の下端部132に形成されていて、車両前後方向に離間して配置されている。
【0035】
図4は、図1の車両用ピラーガラス周辺構造100の要部を示す図である。図4(a)は、車両用ピラーガラス周辺構造100の要部を車内側から見た側面図である。図4(b)、図4(c)はそれぞれ、図4(a)のA-A断面、B-B断面を示す図である。
【0036】
車両用ピラーガラス周辺構造100はさらに、接着剤154を備える。接着剤154は、図4(a)に示すように、ピラーガラス106の内面140の少なくとも下辺部156に沿って塗布され、ピラーガラス106をフロントピラー104に接合する。なお接着剤154は、下辺部156に沿って塗布されるだけでなく、ピラーガラス106の前端134、後端136などに沿って全体として環状に塗布されている。
【0037】
ガラスモール122の外面部146は、図4(b)、図4(c)に示すようにピラーガラス106の外面158を覆う部位である。ガラスモール122の端面部148は、外面部146に連続し、ピラーガラス106の端面160を覆う部位である。図4(b)、図4(c)に示すように、ガラスモール122の外面部146および端面部148は、L字状の断面形状を有していて、ピラーガラス106の外面158および端面160を覆っている。
【0038】
ガラスモール122の前側保持部150および後側保持部152は、ガラスモール122の下端部132において、端面部148から上方に突出してピラーガラス106の内面140を覆い、外面部146および端面部148とともにピラーガラス106の下縁138を挟み込んで保持する。
【0039】
また図4(a)に示す接着剤154は、ピラーガラス106の下辺部156において、前側傾斜部164および後側傾斜部166を形成している。前側傾斜部164および後側傾斜部166は、ピラーガラス106の前端134および後端136に向かうほど上方に曲線状または直線状に傾斜するように塗布された部分である。
【0040】
さらに図4(a)に示すように、ガラスモール122の前側保持部150の上端168および後側保持部152の上端170は、接着剤154のうち傾斜するように塗布された前側傾斜部164および後側傾斜部166にそれぞれ隣接している。また前側保持部150の上端168および後側保持部152の上端170は、接着剤154の下端171よりも上方に位置する。
【0041】
また接着剤154の前側傾斜部164は、図4(b)に示すようにピラーガラス106の内面140を、フロントピラー104のピラーインナパネル126に接合している。接着剤154の後側傾斜部166は、図4(c)に示すようにピラーガラス106の内面140を、フロントピラー104のピラーアウタパネル124に接合している。
【0042】
図5は、図1の車両用ピラーガラス周辺構造100の要部をフロントピラー104とともに示す図である。図5(a)は、車両用ピラーガラス周辺構造100の要部を車外側から見た側面図である。図5(b)は、図5(a)のC-C断面を示す図である。
【0043】
車両用ピラーガラス周辺構造100はさらに、ブラケット172を備える。ブラケット172は、図5(a)に示すようにピラーガラス106の下方に位置し、フロントピラー104のピラーアウタパネル124に設置されている。ブラケット172は、フロントピラー104にフェンダパネル114(図1参照)などを固定するために用いられる。
【0044】
ガラスモール122の前側保持部150は、ブラケット172よりも車両前側に位置している。後側保持部152は、ブラケット172よりも車両後側に位置している。つまり、ブラケット172は、前側保持部150と後側保持部152との間に位置している。
【0045】
またフロントピラー104のピラーアウタパネル124には、前側突出部174および後側突出部176が形成されている。前側突出部174および後側突出部176は、図5(a)および図5(b)に示すように車両前後方向に離間して車外側にそれぞれ突出し、上下方向に延びている。
【0046】
フロントピラー104の前側突出部174は、ガラスモール122の前側保持部150よりも車両後側に位置している。後側突出部176は、ガラスモール122の後側保持部152よりも車両前側に位置している。そして前側突出部174と後側突出部176との間に、ブラケット172が設置されている。
【0047】
このように車両用ピラーガラス周辺構造100では、ガラスモール122の前側保持部150および後側保持部152が、ピラーガラス106の下縁162を保持し、さらに接着剤154のうちピラーガラス106の下辺部156に沿って塗布された前側傾斜部164および後側傾斜部166にそれぞれ隣接している。このため、ピラーガラス106の内面140に塗布された接着剤154を伝って雨水などの水が流れた場合、この水は、図4(a)の点線Wa、Wbに示すように、接着剤154の前側傾斜部164および後側傾斜部166からガラスモール122の前側保持部150および後側保持部152を伝って下方に滴下する。
【0048】
つまり、接着剤154を伝ってピラーガラス106の下辺部156まで水が流れても、ガラスモール122の下端部132の任意の位置に形成された前側保持部150および後側保持部152によって、任意の位置で水を下方に滴下することができる。したがって、ガラスモール122よりも下方に設置されたブラケット172への被水を防止することができる。このため、ブラケット172に錆などが発生して、不具合が発生することを防止することができる。
【0049】
さらにガラスモール122に前側保持部150および後側保持部152を形成するため、水を導くための専用部品を用意する必要がない。このため、部品点数が増えることにより、コストや工数が増加することを防止することができる。
【0050】
また車両用ピラーガラス周辺構造100では、ガラスモール122に形成された前側保持部150の上端168および後側保持部152の上端170は、接着剤154の下端171よりも上方に位置している。このため、接着剤154の下端171まで水が伝う前に、前側保持部150の上端168および後側保持部152の上端170から下方に水を導くことができる。したがって接着剤154の下端171に水が導かれることがなく、接着剤154の下端171から水が滴下することを防止することができる。
【0051】
また車両用ピラーガラス周辺構造100では、ガラスモール122の前側保持部150と後側保持部152との間にブラケット172が位置している。このため、接着剤154を伝ってきた水は、ブラケット172よりも車両前側、車両後側にそれぞれ位置する前側保持部150、後側保持部152によって下方に滴下される。このため、ブラケット172への被水を十分に防止することができる。
【0052】
さらに車両用ピラーガラス周辺構造100では、ガラスモール122の前側保持部150と後側保持部152との間に、フロントピラー104の前側突出部174および後側突出部176が位置していて、さらに前側突出部174と後側突出部176との間に、ブラケット172が設置されている。このため、接着剤154を伝ってきた水は、ガラスモール122の前側保持部150および後側保持部152だけでなく、フロントピラー104の前側突出部174および後側突出部176によっても下方に滴下されることになる。このため、ブラケット172への被水をより確実に防止することができる。
【0053】
なお車両用ピラーガラス周辺構造100では、ガラスモール122の前側保持部150と後側保持部152との間にブラケット172が位置していて、さらにフロントピラー104の前側突出部174と後側突出部176との間に、ブラケット172が設置されているとしたが、これに限定されない。
【0054】
一例として、フロントピラー104のピラーアウタパネル124に、ブラケット172に代えて、スタッドボルトや固定穴などの所定の部品固定部を設けてもよい。なおスタッドボルトや固定穴は、ブラケット172を用いず、フロントピラー104にフェンダパネル114(図1参照)などを直接ボルト固定する場合などに用いられる。
【0055】
このような場合、ガラスモール122の前側保持部150と後側保持部152との間に部品固定部が位置することになるため、接着剤154を伝ってきた水は、部品固定部よりも車両前側、車両後側にそれぞれ位置する前側保持部150、後側保持部152によって下方に滴下される。このため、部品固定部への被水を十分に防止することができる。
【0056】
さらにフロントピラー104の前側突出部174と後側突出部176との間に、部品固定部が設置されることになるため、接着剤154を伝ってきた水は、ガラスモール122の前側保持部150および後側保持部152だけでなく、フロントピラー104の前側突出部174および後側突出部176によっても下方に滴下されることになる。このため、部品固定部への被水をより確実に防止することができる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、車両用ピラーガラス周辺構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
100…車両用ピラーガラス周辺構造、102…車両、104…フロントピラー、106…ピラーガラス、108…前側フロントピラー、110…後側フロントピラー、112…ルーフ、114…フェンダパネル、116…サイドドアパネル、118…フロントピラーの開口、120…ピラーガラスの周縁、122…ガラスモール、124…ピラーアウタパネル、126…ピラーインナパネル、128…ガラスモールの前側端部、130…ガラスモールの後側端部、132…ガラスモールの下端部、134…ピラーガラスの前端、136…ピラーガラスの後端、138…ピラーガラスの下縁、140…ピラーガラスの内面、142…クリップ、144…スペーサ、146…ガラスモールの外面部、148…ガラスモールの端面部、150…ガラスモールの前側保持部、152…ガラスモールの後側保持部、154…接着剤、156…ピラーガラスの下辺部、158…ピラーガラスの外面、160…ピラーガラスの端面、164…接着剤の前側傾斜部、166…接着剤の後側傾斜部、168…前側保持部の上端、170…後側保持部の上端、171…接着剤の下端、172…ブラケット、174…フロントピラーの前側突出部、176…フロントピラーの後側突出部
図1
図2
図3
図4
図5