(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090512
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】エアウェイアダプタ
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20240627BHJP
A61B 5/097 20060101ALI20240627BHJP
G01N 21/3504 20140101ALI20240627BHJP
G01N 21/05 20060101ALI20240627BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G01N1/02 W
A61B5/097
G01N21/3504
G01N21/05
G01N1/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206466
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 文彦
(72)【発明者】
【氏名】馬場 裕也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和正
【テーマコード(参考)】
2G052
2G057
2G059
4C038
【Fターム(参考)】
2G052AA34
2G052AB02
2G052AB06
2G052AD02
2G052AD22
2G052AD42
2G052BA17
2G052ED06
2G052FD17
2G052GA12
2G052JA11
2G057AA01
2G057AB02
2G057AB06
2G057AC03
2G057BA05
2G057BC10
2G057DB06
2G057DC07
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC04
2G059DD11
2G059EE01
2G059HH01
4C038SU19
4C038SX02
(57)【要約】
【課題】エアウェイアダプタの測定流路には、被検者の体内からの水分を含んだ呼気や加湿された吸気が通過するが、測定流路およびその近傍で温度が下がること等により結露が生じる。そして、結露が測定流路に滞留すると、赤外光が結露により生じた水で屈折するなどして、正確な測定が難しくなる。
【解決手段】被検者の呼気または吸気の少なくとも一方が通る測定流路を備え、設置時における前記測定流路の下部に吸水部材を有し、前記吸水部材は外部に露出しており、水を外部へ排出可能であることを特徴とするエアウェイアダプタを用いる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の呼気または吸気の少なくとも一方が通る測定流路を備え、
設置時における前記測定流路の下部に吸水部材を有し、
前記吸水部材は外部に露出しており、水を外部へ排出可能であることを特徴とする
エアウェイアダプタ。
【請求項2】
設置時における前記測定流路の下部に開口部を設け、
前記開口部を前記吸水部材で塞いで水を外部へ排出可能としたことを特徴とする
請求項1に記載されたエアウェイアダプタ。
【請求項3】
前記吸水部材には、溝状の貯留部を有することを特徴とする
請求項2に記載されたエアウェイアダプタ。
【請求項4】
前記貯留部には、テーパー構造が設けられていることを特徴とする
請求項3に記載されたエアウェイアダプタ。
【請求項5】
前記吸水部材の下部において、前記吸水部材の一部または全部を覆うカバー部を有することを特徴とする
請求項1乃至4のいずれか一項に記載されたエアウェイアダプタ。
【請求項6】
前記吸水部材は、前記開口部に着脱可能に構成されていることを特徴とする
請求項2乃至4のいずれか一項に記載されたエアウェイアダプタ。
【請求項7】
前記吸水部材は多孔性部材であることを特徴とする
請求項1乃至4のいずれか一項に記載されたエアウェイアダプタ。
【請求項8】
前記吸水部材は、外部に凹凸構造を有していることを特徴とする
請求項1乃至4のいずれか一項に記載されたエアウェイアダプタ。
【請求項9】
前記吸水部材は、外部で蒸発シートに接続していることを特徴とする
請求項1乃至4のいずれか一項に記載されたエアウェイアダプタ。
【請求項10】
前記蒸発シートは、交換可能であることを特徴とする
請求項9に記載されたエアウェイアダプタ。
【請求項11】
前記開口部は、複数設けられていることを特徴とする
請求項2乃至4のいずれか一項に記載されたエアウェイアダプタ。
【請求項12】
前記開口部は、一つ設けられていることを特徴とする
請求項2乃至4のいずれか一項に記載されたエアウェイアダプタ。
【請求項13】
前記測定流路は、前記吸水部材の内部に設けられていることを特徴とする
請求項1に記載されたエアウェイアダプタ。
【請求項14】
前記測定流路は、対向する赤外光が透過する部材の窓部の間を通過していることを特徴とする
請求項1乃至4、13のいずれか一項に記載されたエアウェイアダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の呼吸気に含まれる所定の呼吸ガス(二酸化炭素、酸素、笑気、揮発性麻酔ガス等)を検出可能なセンサ、および当該センサに対して取外し可能に装着され、前記生体の呼吸気が通過可能な通路が形成されたエアウェイアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
エアウェイアダプタには被検者の呼吸気が通過可能な測定流路が形成され、呼吸気に含まれる所定の呼吸ガスを測定する。例えば、二酸化炭素の濃度を測定するエアウェイアダプタでは、センサに設けられた発光部と受光部を結ぶ光軸が、この測定流路を横切るように配置される。発光部から出射された赤外光は受光部において受光され、受光強度に応じた信号がセンサより出力される。呼吸気中の二酸化炭素濃度が高いほど赤外光が強く吸収され、受光強度が弱まる。よって、センサより出力される信号強度をモニタすることにより被検者の呼吸気に含まれる二酸化炭素濃度を測定することができる。このようなエアウェイアダプタおよびセンサの例は特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エアウェイアダプタの測定流路には、被検者の体内からの水分を含んだ呼気や加湿された吸気が通過するが、測定流路およびその近傍で温度が下がること等により結露が生じる。そして、結露が測定流路に滞留すると、赤外光が結露により生じた水で屈折するなどして、正確な測定が難しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施例におけるエアウェイアダプタは、被検者の呼気または吸気の少なくとも一方が通る測定流路を備え、設置時における前記測定流路の下部に吸水部材を有し、前記吸水部材は、外部に露出して水を外部へ排出可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
測定流路およびその近傍で結露した水が吸水部材で吸収され、エアウェイアダプタの外部に排出される。これにより、エアウェイアダプタの測定流路には水が滞留することがなく、呼吸気の正確な計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】エアウェイアダプタを用いた人工呼吸の様子。
【
図6】開口部を塞ぐ前の実施例1のエアウェイアダプタの断面図。
【
図7】実施例1の第1変形例におけるエアウェイアダプタの断面図。
【
図8】実施例1の第2変形例におけるエアウェイアダプタの側面図。
【
図11】実施例2の変形例におけるエアウェイアダプタの断面図。
【
図12】実施例2の他の変形例におけるエアウェイアダプタの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、従来例および各実施例で共通して用いる。
図1は、ベッドBに横たわった患者Pに人工呼吸器Vを取り付けた状況を模式的に示したものである。この人工呼吸器Vは、酸素が多く含まれた吸気用のガスを患者Pに送出すると共に、患者Pの呼気を排出するものである。人工呼吸器Vの吸気側接続部v1には、吸気回路1が接続され、呼気側接続部v2には、呼気回路2が接続されている。吸気回路1では、人工呼吸器Vの吸気側接続部v1に蛇管1aが接続され、蛇管1aに加湿器1bが接続される。そして、加湿器1bに蛇管1cが接続され、蛇管1cがYピース3aに接続される。また、呼気回路2では、人工呼吸器Vの呼気側接続部v2に蛇管2aが接続され、蛇管2aにウォータートラップ2bが接続される。そして、ウォータートラップ2bに蛇管2cが接続され、蛇管2cにYピース3aが接続されている。Yピース3aには蛇管1c、2cが接続されるが、残りの接続部にフレキシブル管3bが接続されている。そして、エアウェイアダプタ4等を介して接続管3cから挿管チューブ3dに接続している。挿管チューブ3dは患者Pの口から気管まで挿入される。
【0009】
エアウェイアダプタ4等にはセンサの一種である光学センサ5が取り付けられており、エアウェイアダプタ4等の中を通過する呼吸ガスを光学的に測定する。光学センサ5では、エアウェイアダプタ4等の中を通った赤外光の受光値が得られ、配線51を介して患者モニタMに送られた受光値により二酸化炭素濃度が算出されて、測定値がモニタされる。
【0010】
図1に示したように、人工呼吸器Vから供給される吸気は加湿器1bにより加湿されている。また、患者Pから排出される呼気にも水蒸気が含まれている。そのため、体温よりも低い温度に晒されているエアウェイアダプタ4等の周辺では結露が生じる。
【0011】
図2、3に従来のエアウェイアダプタ4を示す。
図2は、エアウェイアダプタ4の側面図である。また、
図3は、
図2のA-A面での断面図であり、
図2の矢印の方向から見た状態を示す。エアウェイアダプタ4は、アダプタ本体42、窓部43を備えている。
図3に示すように、アダプタ本体42は両側に張り出したセンサ保持部423と上方に突出した係止突起424を備える。センサ保持部423は、光学センサ5を内側に保持するためにU字状に形成されている。センサ保持部423と係止突起424は、エアウェイアダプタ4に光学センサ5を取り外し可能に固定するために用いられる。
【0012】
また、エアウェイアダプタ4の内部には、
図3に示すように、呼吸気が通過する測定流路41が形成されている。測定流路41は、
図2に示すアダプタ本体42を機器側接続口421から被検者側接続口422まで貫通しており、対向する窓部43の間を通過している。アダプタ本体42は、測定流路41の両側に開口を有し、開口を、赤外光が透過する部材であるシート状の赤外光透過樹脂により塞いで、窓部43を形成している。センサ保持部423の内側に固定された光学センサ5から送出された測定用の赤外光は、
図3に示す一方の窓部43から他方の窓部43に向けて、測定流路41を横切って通過する。赤外光は測定流路41における二酸化炭素により吸収されるため、光学センサ5では、測定流路41を通過する呼吸気中の二酸化炭素濃度に応じた受光量が得られる。
【0013】
エアウェイアダプタ4は、測定流路41の延在方向に長く、機器側接続口421には、
図1で示したフレキシブル管3bが接続し、被検者側接続口422には、接続管3cを介して挿管チューブ3dが取り付けられる。また、
図3で示すように、アダプタ本体42の下方では、センサ保持部423が拡がっており、エアウェイアダプタ4は横向きになりにくい。これらの構成から、エアウェイアダプタ4は、概ね
図2、3に示す上下方向で、ベッドBの上に載置して設置される。
【0014】
エアウェイアダプタ4の内部および周辺で結露により生じた水は、エアウェイアダプタ4の内部では、
図3に記載した測定流路41の下方に溜まる。そして、エアウェイアダプタ4が横方向に回って斜めになったり、測定流路41の中で呼吸により水が飛散したりすると、窓部43の間に水が入る可能性がある。窓部43の間に水が入ると、測定用の赤外光が水により屈折して受光量が減少してしまう虞がある。水により赤外光が屈折して受光量が減少すると、二酸化炭素濃度の正確な測定が難しい。
【実施例0015】
図4~6に、実施例1のエアウェイアダプタ6を示す。
図4は、実施例1のエアウェイアダプタ6の側面図である。また、
図5、6は、
図4のA-A面での断面図であり、
図4の矢印の方向から見た状態を示す。
図5は、光学センサ5を取り付けたエアウェイアダプタ6を示し、
図6は、開口部625を塞ぐ前のエアウェイアダプタ6を示す。エアウェイアダプタ6は、設置時において概ね
図4~6に示す上下方向で、ベッドBの上に載置して設置される。実施例1のエアウェイアダプタ6も、従来例のエアウェイアダプタ4と同様に、
図1に示したように接続して用いられる。
【0016】
実施例1のエアウェイアダプタ6は、
図4~6に示すようにアダプタ本体62、窓部63、吸水部材64を備えている。アダプタ本体62は樹脂で形成されている。また、窓部63は赤外光が透過する樹脂で形成され、
図5、6に示すように、測定流路61の両側に設けられる。
図4~6に示すように、アダプタ本体62の両側にはU字状のセンサ保持部623が突出しており、上方に係止突起624が突出している。
【0017】
エアウェイアダプタ6の内部には、
図5、6に示すように、呼吸気が通過する測定流路61が形成されている。測定流路61は、アダプタ本体62を機器側接続口621から被検者側接続口622まで貫通しており、対向する窓部63の間を通過している。アダプタ本体62は、測定流路61の両側に開口を有し、開口を、赤外光が透過する部材であるシート状の赤外光透過樹脂により塞いで、窓部63を形成している。
【0018】
図5に示した光学センサ5は、
図1に示すように、配線51を介して患者モニタMに接続している。
図5において、光学センサ5では、内部構成である発光部52と受光部53を概念的に記載している。光学センサ5は、測定流路61を跨いだ状態で、U字状のセンサ保持部623の内側に保持される。光学センサ5の上方は2つの係止突起624により係止されて、エアウェイアダプタ6に取り外し可能に固定される。
【0019】
エアウェイアダプタ6に取り付けられた光学センサ5では、エアウェイアダプタ6の2つの窓部63を跨いだ位置に、発光部52と受光部53が位置する。発光部52から発した測定用の赤外光は、エアウェイアダプタ6の一方の窓部63から他方の窓部63に向けて測定流路61を横切り、受光部53で受光される。赤外光は測定流路61における二酸化炭素により吸収されるため、受光部53では、測定流路61を通過する呼吸気中の二酸化炭素濃度に応じた受光量が得られる。受光量のデータは、配線51を介して患者モニタMに送られ、二酸化炭素濃度が算出されて測定値がモニタされる。
【0020】
従来のエアウェイアダプタ4と異なり、実施例1のエアウェイアダプタ6では、設置時における測定流路61の下部に開口部625が設けられている。
図6は、開口部625を塞ぐ前のエアウェイアダプタ6の断面図である。開口部625の下に吸水部材64を示す。吸水部材64は外部に露出しており、水を外部へ排出可能である。吸水部材64は細かい空間を有して内部に水が浸透する多孔性部材で形成されている。この部材は、水は浸透して通過するが、呼吸気等の気体はほぼ通過しない。
【0021】
さらに、実施例1において、吸水部材64の上面には、テーパー面Tを有したテーパー構造を備えた溝状の貯留部641が設けられている。貯留部641は、測定流路61の延在方向に沿った溝として設けられる。貯留部641は、結露により生じた水を貯留し、貯留した水は、吸水部材64に浸透する。
【0022】
図6に矢印で示すように、開口部625は吸水部材64により塞がれる。実施例1では、吸水部材64は開口部625の近傍に接着により固定されており、
図4、5に示すように開口部625が吸水部材64で塞がれる。
図5は、貯留部641に水Wが溜まっている状態を示している。貯留部641には、吸水部材64がすぐに吸収できない水が溜まる。吸水部材64は、貯留部641やテーパー構造を備えていることで、吸水面を大きくすることができる。
【0023】
エアウェイアダプタ6の測定流路61やその近傍の管内で結露した水は、設置時における測定流路61の下部で吸水部材64に浸透する。吸水部材64は、一部がエアウェイアダプタ6の外部に露出しており、浸透した水は吸水部材64から外部へ排出される。排出される水が多い場合には、吸水部材64の下にガーゼ等を敷くことにより、水を吸収させて蒸発させることができる。また、結露が少ない場合等には、エアウェイアダプタ6をベッドBから浮いた状態で設置して、吸水部材64の外部から直接的に水を蒸発させることも可能である。
【0024】
<第1変形例>
図7に、実施例1の第1変形例におけるエアウェイアダプタ7の断面図を示す。
図7は、測定流路71の延在方向に直交する、実施例1のA-A面に相当する面での断面図である。第1変形例では、アダプタ本体72の下部に取り付けた吸水部材74の外部に凹凸構造を有している。そして、
図7に示すように、吸水部材74の外部は、測定流路71の延在方向に沿って下面と側面に溝742が形成されている。それ以外の構成は、実施例1と同様である。吸水部材74は外部に露出しており、水を外部へ排出可能である。
【0025】
吸水部材74の外部が凹凸構造を有していることにより、大きな表面積が得られ、吸水部材74からの大きな蒸発量が得られる。凹凸構造は測定流路71の延在方向に沿った溝だけでなく、測定流路71の延在方向に直交する溝や斜めに交わる溝でもよく、ドット状の凹凸であってもよい。
【0026】
<第2変形例>
図8に、実施例1の第2変形例におけるエアウェイアダプタ8の側面図を示す。第2変形例のエアウェイアダプタ8には、開口部が複数設けられ、各々の開口部は吸水部材84で塞がれている。アダプタ本体82には、窓部83と、センサ保持部823の下方の4箇所に開口部が設けられている。そして、センサ保持部823の下方における4箇所の開口部に、吸水部材84が接着により固定されている。吸水部材84は外部に露出しており、水を外部へ排出可能である。第2変形例では、4箇所の開口部および吸水部材84が、エアウェイアダプタ8の軸方向に並んで設けられているが、他の形態で設けられても良い。例えば、軸に垂直な方向に並んで設けても良く、アダプタ本体82の軸および軸に垂直な方向に水玉模様状に並んで設けてもよい。
第3変形例では、カバー部1026の横幅は、吸水部材104の横幅よりも小さい。カバー部1026は、吸水部材104の下部の板状部1026aにより吸水部材104の下面の一部を覆っている。その他の点は、実施例2と同様である。第3変形例では、吸水部材104の外部露出面が大きく、外部への水の排出が容易であるとともに、吸水部材104の取り付け取り外しが容易である。