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特開2024-90527フェノール樹脂成形材料およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090527
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】フェノール樹脂成形材料およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 61/04 20060101AFI20240627BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20240627BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20240627BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240627BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C08L61/04
C08K7/02
C08K7/14
C08K3/013
C08L1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206489
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 佑典
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB012
4J002CC031
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
(57)【要約】
【課題】バイオマス原料を配合することで二酸化炭素排出量を削減することができ、さらにバイオマス原料が配合されたとしても機械特性の低下が抑制された成形体が得られる、フェノール樹脂成形材料を提供する。
【解決手段】
本発明のフェノール樹脂成形材料は、(A)フェノール骨格を有する樹脂と、
(B)ガラス繊維と、(C)バイオマス原料と、を含み、バイオマス原料(C)の平均粒径は、ガラス繊維(B)の平均長さよりも小さい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フェノール骨格を有する樹脂と、
(B)ガラス繊維と、
(C)バイオマス原料と、
を含み、
バイオマス原料(C)の平均粒径は、ガラス繊維(B)の平均長さよりも小さい、フェノール樹脂成形材料。
【請求項2】
バイオマス原料(C)の平均粒径が0.01mm~0.20mmである、請求項1に記載のフェノール樹脂成形材料。
【請求項3】
ガラス繊維(B)の平均長さが0.1mm~0.3mmである、請求項2に記載のフェノール樹脂成形材料。
【請求項4】
前記フェノール樹脂成形材料100質量部に対して、フェノール骨格を有する樹脂(A)を20~50質量部含有する、請求項1に記載のフェノール樹脂成形材料。
【請求項5】
前記フェノール樹脂成形材料100質量部に対して、ガラス繊維(B)を15~60質量部含有する、請求項1に記載のフェノール樹脂成形材料。
【請求項6】
前記フェノール樹脂成形材料100質量部に対して、バイオマス原料(C)を5~40質量部含有する、請求項5に記載のフェノール樹脂成形材料。
【請求項7】
ガラス繊維(B)に対するバイオマス原料(C)の含有比率(C/B)が1.5以下である、請求項6に記載のフェノール樹脂成形材料。
【請求項8】
バイオマス原料(C)の吸油量が250(ml/100g)以下である、請求項1に記載のフェノール樹脂成形材料。
【請求項9】
バイオマス原料(C)は、籾殻、ココナッツシェル、木粉、およびセルロールから選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載のフェノール樹脂成形材料。
【請求項10】
前記フェノール樹脂成形材料を175℃、180秒で成形した後、180℃、8時間で硬化して得られる硬化物の、室温25℃における曲げ強度が100~300MPaである、請求項1に記載のフェノール樹脂成形材料。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料を硬化してなる成形体。
【請求項12】
請求項11に記載の成形体からなる自動車部品。
【請求項13】
請求項11に記載の成形体からなる電気・電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール樹脂成形材料およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂の成形物は、強度、耐熱性や電気特性等が優れていることから、従来から、機械構造部品、自動車用部品、電気機器部品、通信機器部品等の各種製品に広く採用されている。
このような製品は、機械的強度の向上を目的として、フェノール樹脂にガラス繊維や炭素繊維等の繊維状フィラーを配合して製造されている。
【0003】
特許文献1には、繊維状フィラーと所定量の球状フィラーとを含み、前記繊維状フィラーの数平均繊維径と球状フィラーの平均粒径とが所定の条件を満たす、成形材料が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ガラス繊維100重量部に対し、SiO2を組成の30wt%以上含み粒径が0.01μm~10μmのガラスフィラーを0.01~50重量部付着させた樹脂強化用フィラー、当該フィラーをフェノール樹脂に配合した例が開示されている。
【0005】
また、近年では、二酸化炭素排出量を削減することを目的として、バイオマス原料の活用が求められている。自動車部品などの部品の樹脂化に当たっては、強度や耐熱性等が求められており、例えば、強度に優れるセルロールナノファイバーなどの高機能フィラーを配合することが検討されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-88987号公報
【特許文献2】特開2001-270963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、バイオマス原料からなる高機能フィラーは高価となることから、汎用的に適用することは困難であった。また、高機能フィラーは、製造する過程のエネルギーが大きいため、製造時の二酸化炭素の排出量が多くなり、バイオマス原料を用いることによる二酸化炭素排出量の削減効果が想定よりも小さいことが課題であった。
一方で、二酸化炭素排出量の削減を期待してバイオマス原料を用いると、成形体の機械強度が低下する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、バイオマス原料を、ガラス繊維と組合わせ、所定の関係を満たすように配合することで、バイオマス原料の活用と機械特性とが両立できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0009】
[1](A)フェノール骨格を有する樹脂と、
(B)ガラス繊維と、
(C)バイオマス原料と、
を含み、
バイオマス原料(C)の平均粒径は、ガラス繊維(B)の平均長さよりも小さい、フェノール樹脂成形材料。
[2] バイオマス原料(C)の平均粒径が0.01mm~0.20mmである、[1]に記載のフェノール樹脂成形材料。
[3] ガラス繊維(B)の平均長さが0.1mm~0.3mmである、[1]または[2]に記載のフェノール樹脂成形材料。
[4] 前記フェノール樹脂成形材料100質量部に対して、フェノール骨格を有する樹脂(A)を20~50質量部含有する、[1]~[3]のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
[5] 前記フェノール樹脂成形材料100質量部に対して、ガラス繊維(B)を15~60質量部含有する、[1]~[4]のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
[6] 前記フェノール樹脂成形材料100質量部に対して、バイオマス原料(C)を5~40質量部含有する、[1]~[5]のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
[7] ガラス繊維(B)に対するバイオマス原料(C)の含有比率(C/B)が1.5以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
[8] バイオマス原料(C)の吸油量が250(ml/100g)以下である、[1]~[7]のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
[9] バイオマス原料(C)は、籾殻、ココナッツシェル、木粉、およびセルロールから選択される少なくとも1種を含む、[1]~[8]のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
[10] 前記フェノール樹脂成形材料を175℃、180秒で成形した後、180℃、8時間で硬化して得られる硬化物の、室温25℃における曲げ強度が100~300MPaである、[1]~[9]のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料を硬化してなる成形体。
[12] [11]に記載の成形体からなる自動車部品。
[13] [11]に記載の成形体からなる電気・電子部品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バイオマス原料を配合することで二酸化炭素排出量を削減することができ、さらにバイオマス原料が配合されたとしても機械特性の低下が抑制された成形体が得られる、フェノール樹脂成形材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。また、例えば「1~10」は特に断りがなければ「1以上」から「10以下」を表す。
【0012】
本実施形態のフェノール樹脂成形材料は、
フェノール骨格を有する樹脂(A)と、ガラス繊維(B)と、バイオマス原料(C)と、を含む。さらにバイオマス原料(C)の平均粒径は、ガラス繊維(B)の平均長さよりも小さい。
【0013】
[フェノール骨格を有する樹脂(A)]
本実施形態におけるフェノール骨格を有する樹脂(A)としては、本発明の効果を奏する範囲で、公知のフェノール骨格を有する樹脂を用いることができる。
【0014】
フェノール骨格を有する樹脂(A)としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂;レゾール型フェノール樹脂;リグニン変性フェノール樹脂、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂等の植物原料由来のフェノール樹脂;などが好ましい。
【0015】
(ノボラック型フェノール樹脂)
ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒下で反応させて得られるフェノール樹脂である。ノボラック型フェノール樹脂としては、フェノールノボラック型樹脂、クレゾールノボラック型樹脂、レゾルシンノボラック型樹脂、キシレノールノボラック型樹脂、アルキルフェノールノボラック型樹脂、ナフトールノボラック型樹脂、ビスフェノールAノボラック型樹脂、フェノールアラルキルノボラック型樹脂、フェノールジフェニルアラルキルノボラック型樹脂、フェノールナフタレンノボラック型樹脂、フェノールジシクロペンタジエンノボラック型樹脂、及びカシューナッツ油、テルペン、トール油、ロジン、ゴム等によるノボラック型変性フェノール樹脂などが挙げられる。
【0016】
ノボラック型フェノール樹脂を合成するために用いられるフェノール類としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等のクレゾール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等のキシレノール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール等のエチルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール等のブチルフェノール、p-tert-アミルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-クミルフェノール等のアルキルフェノール、p-フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール、カルダノール等の1価フェノール置換体、1-ナフトール、2-ナフトール等の1価のフェノール類、レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタリン等の多価フェノール類、フェノール系化合物を含有するカシューナッツ油等の油脂類が挙げられる。フェノール類は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
ノボラック型フェノール樹脂を合成するために用いられるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n-ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、パラキシレンジメチルエーテル等が挙げられる。アルデヒド類は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
ノボラック型フェノール樹脂の合成に用いられる酸触媒としては、例えば、シュウ酸などの有機酸、塩酸、硫酸、燐酸などの鉱物酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸、パラフェノールスルホン酸などが挙げられる。
【0019】
(レゾール型フェノール樹脂)
レゾール型フェノール樹脂は、塩基性触媒下、フェノール類と、アルデヒド類とを、反応溶媒中で、以下で説明する所定の条件で反応させて得られる樹脂である。
【0020】
本実施形態で用いられるレゾール型フェノール樹脂の合成のために使用されるフェノール類としては、フェノール;o-ジヒドロキシベンゼン(すなわち、カテコール)、m-ジヒドロキシベンゼン(すなわち、レゾルシノール、すなわち、レゾルシン)、p-ジヒドロキシベンゼン(すなわち、ヒドロキノン)などのジヒドロキシベンゼン;1,2,3-トリヒドロキシベンゼン(すなわち、ピロガロール)などのトリヒドロキシベンゼン;o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、オキソクレゾールなどのクレゾール;エチルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノールなどのアルキルフェノール;キシレノール;3-ペンタデシルフェノール、3-ペンタデシルフェノールモノエン、3-ペンタデシルフェノールジエン、3-ペンタデシルフェノールトリエンなどのカシューオイルの含有成分;1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼン、1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼンモノエン、1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼンジエン、1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼントリエンといったカルドールの含有成分;2-メチル-1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼン、2-メチル-1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼンモノエン、2-メチル-1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼンジエン、2-メチル-1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼントリエンといったメチルカルドールの含有成分;ウルシオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSといったビスフェノール類;p-フェニルフェノール;スチレン化フェノールなどが挙げられる。これらを単独あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
本実施形態で用いられるレゾール型フェノール樹脂の合成のために使用されるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n-ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上組み合わせて使用してもよい。また、これらアルデヒド類の前駆体あるいはこれらのアルデヒド類の溶液を使用することも可能である。中でも、製造コストの観点から、ホルムアルデヒド水溶液を使用することが好ましい。
【0022】
本実施形態で用いられるレゾール型フェノール樹脂の合成のために使用される塩基性触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;石灰等の酸化物;亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩;リン酸ナトリウム等のリン酸塩;アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン等のアミン類等が挙げられる。
【0023】
本実施形態で用いられるレゾール型フェノール樹脂の合成のために使用される反応溶媒としては、水が一般的であるが、有機溶媒を使用してもよい。このような有機溶媒の具体例としては、アルコール類、ケトン類、芳香族類等が挙げられる。またアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。芳香族類の具体例としてはとしては、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0024】
(植物原料由来のフェノール樹脂)
リグニン変性フェノール樹脂は、リグニンとフェノール反応させた後、ホルムアルデヒドを添加する公知の方法で合成することができ、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂は、リグニン類と、フェノール類と、アルデヒド類との反応により得られる反応生成物に、ノボラック型フェノール樹脂をさらに反応させる公知の方法で合成することができる。
本実施形態のフェノール樹脂成形材料や得られる成形体のバイオマス度を向上させ、二酸化炭素排出量を削減する観点からは、リグニン変性フェノール樹脂やリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂等の植物原料由来のフェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0025】
本実施形態においては、本発明の効果の観点から、フェノール樹脂成形材料100質量部に対して、フェノール骨格を有する樹脂(A)を20~50質量部、好ましくは25~45質量部、さらに好ましくは30~45質量部となる量で含有することができる。
【0026】
本実施形態において、フェノール骨格を有する樹脂(A)は必要に応じて、硬化剤を含むことができる。この硬化剤としてはヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミンとフェノール誘導体との付加物、及びヘキサメトキシメチロールメラミンなどのアミン系のアルデヒド供給源、若しくは、パラホルムアルデヒド、及びポリアセタール樹脂などのアルデヒド供給源等が挙げられる。
なお、この硬化剤もフェノール骨格を有する樹脂(A)が架橋した際に、その架橋構造内に取り込まれるものである。このことから、本明細書中においては、この硬化剤を含めて「樹脂成分」であるものとしている。
【0027】
[ガラス繊維(B)]
ガラス繊維(B)を構成するガラスの具体例としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラスが挙げられる。これらの中でもEガラス、Aガラス、Tガラス、または、Sガラスが好ましい。こうしたガラスを用いることにより、機械強度に優れた成形体を得ることができる。
【0028】
ガラス繊維(B)の平均長さは、成形品を用いる用途等に応じ適宜設定することができるが、好ましくは0.1mm~0.3mm、好ましくは0.12mm~0.25mm、さらに好ましくは0.15mm~0.25mmとすることができる。このような平均長さを有するガラス繊維(B)を用いることで、成形品の機械的強度を向上させることができる。
【0029】
ガラス繊維(B)の平均長さは、フェノール樹脂成形材料を溶剤で溶解し、分離したガラス繊維(B)300個をマイクロスコープ等の顕微鏡を用いて目視で計測し、各繊維の長さの平均値を算出することにより得ることができる。
【0030】
本実施形態においては、フェノール樹脂成形材料100質量部に対して、ガラス繊維(B)を15~60質量部、好ましくは20~55質量部、さらに好ましくは30~50質量部となる量で含有することができる。
これにより、成形品の機械的強度を向上させ、製品信頼性を向上させることができるとともに流動性や充填性をより効果的に向上させることができる。
【0031】
[バイオマス原料(C)]
本実施形態におけるバイオマス原料(C)としては、本発明の効果を奏する範囲で、公知のバイオマス原料を用いることができる。
【0032】
バイオマス原料(C)は、例えば、籾殻、ココナッツシェル、木粉、およびセルロールから選択される少なくとも1種を含むことができ、籾殻、またはココナッツシェルを含むことが好ましい。
【0033】
バイオマス原料(C)はバイオマス原料を粉砕して得ることができる。
本実施形態において、バイオマス原料(C)の平均粒径は、ガラス繊維(B)の上記平均長さよりも小さい。これにより、バイオマス原料(C)が配合されたとしても機械特性の低下が抑制された成形体を得ることができる。
【0034】
バイオマス原料(C)の平均粒径は、本発明の効果の観点から、0.01mm~0.20mm、好ましくは0.01mm~0.15mm、さらに好ましくは0.02~0.15mmとすることができる。
平均粒径の測定は、マイクロスコープ等の顕微鏡でバイオマス原料(C)300個を目視で計測し、各粒子の最大径の平均値を算出することにより行うことができる。
【0035】
また、バイオマス原料(C)の吸油量は250(ml/100g)以下、好ましくは200(ml/100g)以下、さらに好ましくは100(ml/100g)以下とすることができる。バイオマス原料(C)の吸油量の下限値は特に限定されないが、40(ml/100g)以上である。これにより、本実施形態のフェノール樹脂成形材料の流動性や充填性を向上させることができる。
バイオマス原料(C)の吸油量は、精製あまに油法(JIS K 5101-13-1)で測定することができる。
【0036】
前記フェノール樹脂成形材料100質量部に対して、バイオマス原料(C)を5~40質量部、好ましくは10~35質量部、さらに好ましくは10~30質量部の量で含む。
【0037】
本実施形態においては、本発明の効果の観点から、ガラス繊維(B)に対するバイオマス原料(C)の含有比率(C/B)が1.5以下、好ましくは1.2、さらに好ましくは1.0以下となるように配合することができる。
【0038】
[その他の成分]
本実施形態のフェノール樹脂成形材料は、必要に応じて、各種添加剤、たとえばフィラー、離型剤、硬化助剤、カーボンブラックなどの着色剤、密着性向上剤、カップリング剤等を配合してもよい。
【0039】
[フェノール樹脂成形材料の製造方法]
本実施形態のフェノール樹脂成形材料は、例えば上述した各成分を配合して、均一に混合後、ロール、コニーダ、二軸押出し機等の混練装置単独またはロールと他の混合装置との組み合わせで加熱溶融混練した後、造粒または粉砕することにより製造することができる。
【0040】
<フェノール樹脂成形材料>
本実施形態のフェノール樹脂成形材料は、前記樹脂成形材料を175℃、180秒で成形した後、180℃、8時間で硬化して得られる硬化物の、室温25℃における曲げ強度が100~300MPa、好ましくは120~250MPaとすることができる。このように、本実施形態のフェノール樹脂成形材料はバイオマス原料(C)を含むものの機械強度の低下が抑制されている。
【0041】
[成形体(樹脂部材)]
本実施形態に係る成形体(樹脂部材)は、上述のフェノール樹脂成形材料を用い、成形工程を経ることにより得られた硬化物からなる。具体的な成形方法としては、たとえば圧縮成形、トランスファー成形などの公知の成形方法の中から適宜条件を選択することができる。
【0042】
本実施形態のフェノール樹脂成形材料から得られる樹脂部材は、上述のように曲げ強度が高く、機械強度に優れる。
本実施形態のフェノール樹脂成形材料は、バイオマス度が5%以上の成形体を提供することができる。すなわち、本実施形態のフェノール樹脂成形材料によれば、二酸化炭素排出量が低減されており地球環境に優しい成形体を提供することができる。
【0043】
[用途]
本実施形態のフェノール樹脂成形材料から得られた成形体は、機械強度に優れており、ブラシホルダー、コンミテータ等のモーター関連、プーリー、冷却ポンプ、バルブなどの機構関連等の自動車部品、ブレーカーカバー、スイッチケース、端子板、コネクター、センサー、端子台等の電気・電子部品に用いることができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例0045】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例においては以下の成分を用いた。
【0046】
[フェノール骨格を有する樹脂(A)]
・ノボラック型フェノール樹脂(PR-53194、住友ベークライト社製、重量平均分子量:700)
・ヘキサメチレンテトラミン(HEXAMINE、CHANG CHUN PETROCHEMICAL.CO.LTD社製)
【0047】
[ガラス繊維(B)]
・ガラス繊維(CS3E479、日東紡績社製、数平均繊維径:11μm、繊維長:3mm)
成形材料としたときのガラス繊維(B)の平均長さは、フェノール樹脂成形材料を溶剤で溶解し、分離したガラス繊維(B)300個をマイクロスコープ(KH-3000VD、HIROX社製)で目視で計測し、各繊維の長さの平均値を算出することにより得ることができる。
【0048】
[バイオマス原料(C)]
各バイオマス原料の平均粒径の測定は、マイクロスコープ(KH-3000VD、HIROX社製)でバイオマス原料300個を目視で計測し、各粒子の最大径の平均値を算出して平均粒径とした。
また、各バイオマス原料の吸油量の測定は、精製あまに油法(JIS K 5101-13-1)で測定した。
・籾殻(ゴールデンパウダー、ダイソーケミカル社製)
平均粒径:50(μm)、吸油量70(ml/100g)
・ココナッツシェル(ココナッツ.シェル#200、Kuala Perak Coconut Industries社製)
平均粒径:60(μm)、吸油量60(ml/100g)
・セルロース(KCフロック W-100、日本製紙社製)
平均粒径:120(μm)、吸油量220(ml/100g)
・木粉(平均粒径250μm)(木粉100、カネキ燃料社製)
平均粒径:250(μm)、吸油量250(ml/100g)
・木粉(平均粒径100μm)(カネキ燃料社製木粉100を150メッシュで篩い作製)
平均粒径:100(μm)、吸油量200(ml/100g)
【0049】
[無機フィラー]
・焼成クレー(ポールスター501、イメリス社製)
【0050】
[離型剤]
・ステアリン酸カルシウム(Ca-St、日東化成工業社製)
【0051】
[顔料]
・カーボンブラック(#750、三菱化学社製)
【0052】
[実施例1~6、比較例1~2]
以下の表1に示す配合量に従って各成分を配合した材料混合物を回転速度の異なる加熱ロールで混練し、シート状に冷却したものを粉砕することにより、顆粒状の成形材料(フェノール樹脂組成物)を得た。
なお、加熱ロールの混練条件は、回転速度は高速側/低速側20/14rpm、温度は高速側/低速側90/20℃で、混練時間は5~10分間とした。
得られた各フェノール樹脂成形材料について、下記に示す測定及び評価を行った。
【0053】
(評価項目)
[曲げ強度および曲げ弾性率]
フェノール樹脂成形材料を、射出成形機(芝浦機械社製「EC100」)を用いて、金型温度:175℃、射出圧力:150MPa、充填時間:4秒、硬化時間:60秒の条件による射出成形により金型に注入成形した。これにより、幅10mm、厚み4mm、長さ80mmの成形品を得た。次いで、得られた成形品を180℃、8時間の条件で後硬化させた。これにより、機械的強度の評価用の試験片を作製した。そして、試験片の常温(25℃)における曲げ強度および曲げ弾性率を、JIS K 6911に準拠して測定した。
【0054】
[比重]
フェノール樹脂成形材料を射出成形機(芝浦機械社製「EC100」)を用いて、金型温度:175℃、射出圧力:150MPa、充填時間:4秒、硬化時間:60秒の条件による射出成形により金型に注入成形した。これにより、直径50mmΦ、厚み3mmの円板状成形物を得た。そして、試験片の比重を、JIS K 6911に準拠して測定した。
【0055】
[ガラス繊維(B)の平均長さ]
実施例で得られたフェノール樹脂成形材料を溶剤で溶解し、分離したガラス繊維(B)300個を、マイクロスコープを用いて目視で計測し、各繊維の長さの平均値を算出し、ガラス繊維(B)の平均長さとした。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に記載のように、本発明のフェノール樹脂成形材料は、バイオマス原料が配合されたとしても機械特性の低下が抑制された成形体が得られた。さらに、バイオマス原料を配合することで、二酸化炭素排出量を削減することができ、地球環境に優しい成形体を得ることができた。