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特開2024-90532電池接続用バスバ及び電池集積体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090532
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】電池接続用バスバ及び電池集積体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/526 20210101AFI20240627BHJP
   H01M 50/503 20210101ALI20240627BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20240627BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20240627BHJP
   H01M 50/591 20210101ALN20240627BHJP
【FI】
H01M50/526
H01M50/503
H01M50/505
H01M50/588
H01M50/591
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206504
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】三谷 健一
【テーマコード(参考)】
5H043
【Fターム(参考)】
5H043AA19
5H043AA20
5H043FA04
5H043JA02F
5H043JA06F
5H043JA21F
5H043LA02F
(57)【要約】
【課題】様々なパターンの接続経路に対応して電池間を接続できる技術を提供すること。
【解決手段】電池接続用バスバ100は、複数の導電帯11が、長手方向の全体にわたって相互に移動可能に、積層された積層導電体1と、積層導電体1の長手方向の第1端部1aにおいて、複数の導電帯11の各々に設けられた第1貫通孔31が重なり合って形成される、複数の導電帯11の積層方向に貫通する第1接続用挿通孔3と、積層導電体1の長手方向の第2端部1bにおいて、複数の導電帯11の各々に設けられた第2貫通孔41が重なり合って形成される、複数の導電帯11の積層方向に貫通する第2接続用挿通孔4と、を備える。複数の第2貫通孔41のうちの少なくとも1つが、導電帯11の長手方向に長い長孔である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池接続用バスバであって、
複数の導電帯が、長手方向の全体にわたって相互に移動可能に、積層された積層導電体と、
前記積層導電体の長手方向の第1端部において、前記複数の導電帯の各々に設けられた第1貫通孔が重なり合って形成される、前記複数の導電帯の積層方向に貫通する第1接続用挿通孔と、
前記積層導電体の長手方向の第2端部において、前記複数の導電帯の各々に設けられた第2貫通孔が重なり合って形成される、前記複数の導電帯の積層方向に貫通する第2接続用挿通孔と、
を備え、
前記複数の第2貫通孔のうちの少なくとも1つが、前記導電帯の長手方向に長い長孔である、電池接続用バスバ。
【請求項2】
請求項1に記載の電池接続用バスバであって、
前記複数の第1貫通孔の各々が、丸孔である、電池接続用バスバ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電池接続用バスバであって、
前記積層導電体が、長手方向の途中で曲がっている、電池接続用バスバ。
【請求項4】
請求項3に記載の電池接続用バスバであって、
前記複数の第1貫通孔が、全体的に重なり合っており、
前記複数の第2貫通孔が、前記導電帯の長手方向に互いにずれた位置にありつつ、少なくとも部分的に重なり合っている、電池接続用バスバ。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の電池接続用バスバであって、
前記複数の導電帯を、これらが長手方向に相互に移動可能な状態で、一括して覆う絶縁被覆、
をさらに備える、電池接続用バスバ。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の電池接続用バスバであって、
前記第1端部と前記第2端部とを区別するための識別子、
をさらに備える、電池接続用バスバ。
【請求項7】
電池集積体の製造方法であって、
複数の導電帯が長手方向の全体にわたって相互に移動可能に積層された積層導電体の長手方向の第1端部において、前記複数の導電帯の各々に設けられた第1貫通孔が全体的に重なり合って形成される、前記複数の導電帯の積層方向に貫通する第1接続用挿通孔に、第1電池のターミナルを挿通する第1挿通工程と、
前記第1接続用挿通孔に前記第1電池のターミナルが挿通された状態で、前記積層導電体を、長手方向の途中で曲げる曲げ工程と、
前記積層導電体が曲げられた後に、前記積層導電体の長手方向の第2端部において、前記複数の導電帯の各々に設けられた第2貫通孔が少なくとも部分的に重なり合って形成される、前記複数の導電帯の積層方向に貫通する第2接続用挿通孔に、第2電池のターミナルを挿通する第2挿通工程と、
を備え、
前記複数の第1貫通孔の各々が、丸孔であり、
前記複数の第2貫通孔のうちの少なくとも1つが、前記導電帯の長手方向に長い長孔である、電池集積体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池接続用バスバ及び電池集積体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の最小構成単位である電池セルは、単独で用いられることもあるが、複数の電池セルが集積化(アセンブリ化)されて、電池モジュールとして用いられることも多い。また、複数の電池モジュールが集積化されて、電池パックとして用いられることも多い。さらに、複数の電池パックが集積化されて用いられることもある。
【0003】
特許文献1には、複数の電池セルが積層されてなる電池モジュールにおいて、隣り合う電池セル同士を接続するバスバが、開示されている。ここに開示されているバスバには、圧縮強度が相対的に小さい脆弱部が設けられている。電池セルの積層方向に圧縮力がかかった場合に、バスバの脆弱部が変形することで、バスバから電池セルに加えられる荷重が逃がされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-216095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池セル、電池モジュール、及び、電池パック(以下、これらを「電池」と総称する)は、形状及びサイズのバリエーションが非常に多い。また、複数の電池が集積化される場合に、集積化される電池の個数やレイアウトは様々である。このため、電池間を接続する接続経路のパターンは、無数に存在する。
【0006】
特許文献1に開示されているバスバは、1つのパターンの接続経路を実現するために設計された専用品である。このような専用品のバスバは、形状が固定されているため、別の製品、すなわち、接続経路のパターンが異なる別の製品に流用することはできない。多品種少量生産品などにおいては、このような専用品のバスバを個別に設計して製造することが非効率な場合がある。このため、汎用性のあるバスバで電池間を接続できる技術、つまり、様々なパターンの接続経路に対応して電池間を接続できる汎用的な技術が、求められている。
【0007】
そこで、本開示は、様々なパターンの接続経路に対応して電池間を接続できる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の電池接続用バスバは、複数の導電帯が、長手方向の全体にわたって相互に移動可能に、積層された積層導電体と、前記積層導電体の長手方向の第1端部において、前記複数の導電帯の各々に設けられた第1貫通孔が重なり合って形成される、前記複数の導電帯の積層方向に貫通する第1接続用挿通孔と、前記積層導電体の長手方向の第2端部において、前記複数の導電帯の各々に設けられた第2貫通孔が重なり合って形成される、前記複数の導電帯の積層方向に貫通する第2接続用挿通孔と、を備え、前記複数の第2貫通孔のうちの少なくとも1つが、前記導電帯の長手方向に長い長孔である、電池接続用バスバである。
【0009】
本開示の電池集積体の製造方法は、複数の導電帯が長手方向の全体にわたって相互に移動可能に積層された積層導電体の長手方向の第1端部において、前記複数の導電帯の各々に設けられた第1貫通孔が全体的に重なり合って形成される、前記複数の導電帯の積層方向に貫通する第1接続用挿通孔に、第1電池のターミナルを挿通する第1挿通工程と、前記第1接続用挿通孔に前記第1電池のターミナルが挿通された状態で、前記積層導電体を、長手方向の途中で曲げる曲げ工程と、前記積層導電体が曲げられた後に、前記積層導電体の長手方向の第2端部において、前記複数の導電帯の各々に設けられた第2貫通孔が少なくとも部分的に重なり合って形成される、前記複数の導電帯の積層方向に貫通する第2接続用挿通孔に、第2電池のターミナルを挿通する第2挿通工程と、を備え、前記複数の第1貫通孔の各々が、丸孔であり、前記複数の第2貫通孔のうちの少なくとも1つが、前記導電帯の長手方向に長い長孔である、電池集積体の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、様々なパターンの接続経路に対応して電池間を接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は実施形態に係る電池接続用バスバの平面図である。
図2図2は電池接続用バスバの側面図である。
図3図3は電池集積体の一例を概略的に示す斜視図である。
図4図4は電池集積体の製造方法を説明するための図である。
図5図5は積層導電体が曲げられた状態の電池接続用バスバを例示する平面図である。
図6図6は積層導電体が曲げられた状態の電池接続用バスバを例示する側面図である。
図7図7は変形例に係る電池接続用バスバの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0013】
本開示の電池接続用バスバは、次の通りである。
【0014】
(1)複数の導電帯が、長手方向の全体にわたって相互に移動可能に、積層された積層導電体と、前記積層導電体の長手方向の第1端部において、前記複数の導電帯の各々に設けられた第1貫通孔が重なり合って形成される、前記複数の導電帯の積層方向に貫通する第1接続用挿通孔と、前記積層導電体の長手方向の第2端部において、前記複数の導電帯の各々に設けられた第2貫通孔が重なり合って形成される、前記複数の導電帯の積層方向に貫通する第2接続用挿通孔と、を備え、前記複数の第2貫通孔のうちの少なくとも1つが、前記導電帯の長手方向に長い長孔である、電池接続用バスバである。
【0015】
この電池接続用バスバは、複数の導電帯が、長手方向の全体にわたって相互に移動可能に、積層された積層導電体を備える。このような積層導電体は、例えば、該積層導電体と同じ厚みを有する1枚の金属板で形成された導電体、積層方向に隣り合う導電帯同士が相互に移動しないように固定されている導電体、などと比較して、曲がりやすい。また、この電池接続用バスバでは、重なり合って第2接続用挿通孔を形成する複数の第2貫通孔のうちの少なくとも1つが、導電帯の長手方向に長い長孔である。したがって、積層導電体が厚み方向に曲げられることによって、積層されている複数の導電帯の間に経路差が生じ、そのために、第2端部において複数の導電帯の間に長手方向の位置ずれが生じたとしても、第2接続用挿通孔が維持されやすい。このように、この電池接続用バスバでは、積層導電体が曲がりやすく、積層導電体が曲げられても接続用挿通孔が維持されやすい。したがって、様々なパターンの接続経路に対応して電池間を接続することができる。
【0016】
(2)(1)の電池接続用バスバにおいて、前記複数の第1貫通孔の各々が、丸孔であってもよい。この場合、各々が丸孔である複数の第1貫通孔が全体的に重なり合うことによって形成される第1接続用挿通孔に、電池のターミナルなどが挿通されることで、積層導電体の第1端部を位置決めすることができる。
【0017】
(3)(1)又は(2)の電池接続用バスバにおいて、前記積層導電体が、長手方向の途中で曲がっていてもよい。この場合、直線以外の接続経路に対応することができる。
【0018】
(4)(3)の電池接続用バスバにおいて、前記複数の第1貫通孔が、全体的に重なり合っており、前記複数の第2貫通孔が、前記導電帯の長手方向に互いにずれた位置にありつつ、少なくとも部分的に重なり合っていてもよい。この場合、積層導電体が曲がっている状態においても、複数の第1貫通孔が全体的に重なり合っているので、複数の第1貫通孔が長手方向に互いにずれた位置に配置されることを想定して第1貫通孔の形状を規定する必要がない。したがって、第1貫通孔の形状の自由度が高い。
【0019】
(5)(1)から(4)のいずれか1つの電池接続用バスバにおいて、前記複数の導電帯を、これらが長手方向に相互に移動可能な状態で、一括して覆う絶縁被覆、をさらに備えてもよい。この場合、絶縁被覆によって、積層された複数の導電帯がひとまとめにされるので、取り扱いが容易となる。また、積層された複数の導電帯における絶縁被覆で覆われる部分を、周囲から絶縁しつつ、保護することができる。
【0020】
(6)(1)から(5)のいずれか1つの電池接続用バスバにおいて、前記第1端部と前記第2端部とを区別するための識別子、をさらに備えてもよい。この場合、電池接続用バスバを用いて電池間を接続する作業を行う作業者などが、積層導電体の第1端部と第2端部とを容易に区別することができる。したがって、例えば、少なくとも1つが長孔である複数の第2貫通孔が重なり合って第2接続用挿通孔を形成している側、すなわち、複数の導電帯の間に長手方向の位置ずれが生じることが許容される側が、どちらであるかを、作業者などが容易に判別することができる。
【0021】
本開示の電池集積体の製造方法は、次の通りである。
【0022】
(7)複数の導電帯が長手方向の全体にわたって相互に移動可能に積層された積層導電体の長手方向の第1端部において、前記複数の導電帯の各々に設けられた第1貫通孔が全体的に重なり合って形成される、前記複数の導電帯の積層方向に貫通する第1接続用挿通孔に、第1電池のターミナルを挿通する第1挿通工程と、前記第1接続用挿通孔に前記第1電池のターミナルが挿通された状態で、前記積層導電体を、長手方向の途中で曲げる曲げ工程と、前記積層導電体が曲げられた後に、前記積層導電体の長手方向の第2端部において、前記複数の導電帯の各々に設けられた第2貫通孔が少なくとも部分的に重なり合って形成される、前記複数の導電帯の積層方向に貫通する第2接続用挿通孔に、第2電池のターミナルを挿通する第2挿通工程と、を備え、前記複数の第1貫通孔の各々が、丸孔であり、前記複数の第2貫通孔のうちの少なくとも1つが、前記導電帯の長手方向に長い長孔である、電池集積体の製造方法である。
【0023】
例えば、積層導電体が厚み方向に曲げられることによって、積層されている複数の導電帯の間に経路差が生じると、積層導電体の長手方向の両端部の一方あるいは両方において、複数の導電帯の間に長手方向の位置ずれが生じる。上記の電池集積体の製造方法では、各々が丸孔である複数の第1貫通孔が全体的に重なり合うことによって形成される第1接続用挿通孔に、電池のターミナルが挿通された状態、つまり、第1端部が位置決めされた状態で、積層導電体が曲げられる。したがって、複数の導電帯の間の長手方向の位置ずれは、第1端部の側には現れず、第2端部の側だけに現れる。そして、この第2端部においては、重なり合って第2接続用挿通孔を形成する複数の第2貫通孔のうちの少なくとも1つが、導電帯の長手方向に長い長孔である。このため、第2端部において、複数の導電帯の間に長手方向の位置ずれが生じたとしても、第2接続用挿通孔が維持されやすい。第2接続用挿通孔が維持されていれば、ここにターミナルが難なく挿通される。このように、この電池集積体の製造方法では、積層導電体が曲げられるとともに、第1及び第2接続用挿通孔の各々にターミナルが挿通された状態が、難なく形成される。したがって、様々なパターンの接続経路に対応して電池間を接続することができる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の電池接続用バスバ及び電池集積体の製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
[実施形態]
<電池接続用バスバ>
実施形態に係る電池接続用バスバ100について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、電池接続用バスバ100の平面図である。図2は、電池接続用バスバ100の側面図である。
【0026】
電池接続用バスバ100は、電池間の電気的な接続を行うための部品であり、配線部品の一種である。電池接続用バスバ100で接続される「電池」は、電池セルであってもよいし、電池モジュールであってもよいし、電池パックであってもよい。
【0027】
電池接続用バスバ100は、積層導電体1と、積層導電体1を覆う絶縁被覆2と、積層導電体1の第1端部1aに設けられた第1接続用挿通孔3と、積層導電体1の第2端部1bに設けられた第2接続用挿通孔4と、を備える。
【0028】
(積層導電体1)
積層導電体1は、複数の導電帯11を備える。各導電帯11は、導電性を有する材料によって形成される。導電帯11の形成材料として、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、などの金属を採用することができる。
【0029】
各導電帯11は、一定の幅で細長く延在する帯状であり、厚みが一定の板状である。複数の導電帯11は、厚み方向に積層される。積層方向に隣り合う導電帯11同士は、長手方向の少なくとも一部において互いに接触しており、電気的に接続されている。また、複数の導電帯11は、長手方向の全体にわたって相互に移動可能に、積層される。つまり、積層方向に隣り合う導電帯11同士は、相互に固定されていない。したがって、積層方向に隣り合う導電帯11同士が、擦れ合うようにして、長手方向に相対的に移動できる。このため、積層導電体1は、長手方向の任意の位置で、厚み方向に容易に曲がることができる。つまり、積層導電体1は、該積層導電体1と同じ厚みを有する1枚の金属板で形成された導電体、積層方向に隣り合う導電帯同士が相互に移動しないように固定されている導電体、などと比較して、曲がりやすい。
【0030】
積層される導電帯11の枚数、積層される各導電帯11の厚み、積層される各導電帯11の形状、などは、例えば、積層導電体1に求められる許容電流値、変形の容易性、加工性、などに応じて、任意に規定することができる。例えば、積層される導電帯11の枚数は2枚以上であれば何枚であってもよく、例えば10枚以上であってもよい。また、各導電帯11の厚みは、厚み方向に容易に曲がることができる程度であればどのような値であってもよい。一例として、各導電帯11の厚みは、1.0mm以下であってもよく、0.1mm以下であってもよい。また、積層される複数の導電帯11は、互いに同じ厚みを有するものであってもよいし、互いに異なる厚みを有するものであってもよい。また、各導電帯11は、端部の角部分が、丸みのない直角形状であってもよいし、丸みのある角丸形状であってもよい。
【0031】
(絶縁被覆2)
絶縁被覆2は、積層導電体1を覆う被覆である。絶縁被覆2は、絶縁性を有する材料、例えば、絶縁性を有する樹脂材料によって形成される。絶縁被覆2の形成材料として、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、シリコーンゴム、などを採用することができる。絶縁被覆2は、積層導電体1を長手方向のほぼ全体にわたって覆う。ただし、積層導電体1の長手方向の各端部1a,1bは、電池と接続される接続端であり、各端部1a,1bは絶縁被覆2から露出される。つまり、絶縁被覆2は、積層導電体1の長手方向の各端部1a,1bを露出させつつ、積層導電体1を被覆する。
【0032】
上記のとおり、積層導電体1は、積層された複数の導電帯11を備えており、絶縁被覆2は、積層された複数の導電帯11を一括して覆う。ただし、絶縁被覆2は、拘束力が十分に弱く、積層された複数の導電帯11が長手方向の全体にわたって相互に移動可能であることを妨げない。つまり、絶縁被覆2は、複数の導電帯11を、これらが長手方向に相互に移動可能な状態で、一括して覆う。また、絶縁被覆2は、柔軟性を有しており、積層された複数の導電帯11が曲がることを妨げない。
【0033】
(第1接続用挿通孔3)
第1接続用挿通孔3は、積層導電体1の長手方向の一方の端部(第1端部)1aに形成される。第1接続用挿通孔3は、積層導電体1を、その厚み方向、すなわち、複数の導電帯11の積層方向に貫通する貫通孔である。具体的には、積層された複数の導電帯11の各々に貫通孔(第1貫通孔)31が設けられており、複数の導電帯11の各々に設けられた第1貫通孔31が重なり合うことによって、第1接続用挿通孔3が形成される。
【0034】
各導電帯11に設けられる第1貫通孔31は、いずれも、丸孔である。つまり、重なり合って第1接続用挿通孔3を形成する複数の第1貫通孔31の各々は、いずれも、丸孔である。「丸孔」とは、平面視にて円形状の孔である。また、複数の第1貫通孔31は、互いに同じサイズであり、導電帯11における互いに同じ位置に設けられる。したがって、第1端部1aにおいて、複数の導電帯11の間に長手方向の位置ずれがない状態、すなわち、複数の導電帯11の第1端縁11aが揃っている状態では、各々が丸孔である複数の第1貫通孔31が全体的に重なり合って、丸孔である第1接続用挿通孔3が形成される。
【0035】
(第2接続用挿通孔4)
第2接続用挿通孔4は、積層導電体1の長手方向の他方の端部(第2端部)1bに形成される。第2接続用挿通孔4は、第1接続用挿通孔3と同様、積層導電体1を、その厚み方向、すなわち、複数の導電帯11の積層方向に貫通する貫通孔である。具体的には、積層された複数の導電帯11の各々に貫通孔(第2貫通孔)41が設けられており、複数の導電帯11の各々に設けられた第2貫通孔41が重なり合うことによって、第2接続用挿通孔4が形成される。
【0036】
各導電帯11に設けられる第2貫通孔41は、いずれも、導電帯11の長手方向に長い長孔である。つまり、重なり合って第2接続用挿通孔4を形成する複数の第2貫通孔41の各々は、いずれも、導電帯11の長手方向に長い長孔である。「長孔」とは、平面視にて、ある方向の長さが、該方向と直交する方向の長さよりも長い孔である。一例として、長孔は、平面視にて長円形状(半円弧を直線で結んだ形状)の孔である。また、複数の第2貫通孔41は、互いに同じサイズであり、導電帯11における互いに同じ位置に設けられる。したがって、第2端部1bにおいて、複数の導電帯11の間に長手方向の位置ずれがない状態、すなわち、複数の導電帯11の第2端縁11bが揃っている状態では、各々が長孔である複数の第2貫通孔41が全体的に重なり合って、長孔である第2接続用挿通孔4が形成される。
【0037】
<電池接続用バスバの製造方法>
電池接続用バスバ100を製造するにあたっては、まず、複数の導電帯11が準備され、これらが、長手方向の全体にわたって相互に移動可能に、積層される。これにより、積層導電体1が得られる。
【0038】
続いて、積層導電体1を長手方向の全体にわたって覆う絶縁被覆2が形成される。絶縁被覆2は、例えば、積層導電体1の周囲に、軟化溶融した樹脂材料を押出被覆することによって形成される。続いて、長手方向の全体にわたって絶縁被覆2で覆われた積層導電体1が、長手方向の寸法が調尺された上で、所定の寸法に切断される。その後、所定の寸法に切り出された積層導電体1の各端部1a,1bを覆う絶縁被覆2が、皮剥ぎされる。
【0039】
第1端部1aを覆う絶縁被覆2が皮剥ぎされた後、或いはその前に、積層導電体1の第1端部1aに対して、プレス加工、具体的には、穴抜き加工が行われて、第1接続用挿通孔3が形成される。すなわち、第1端部1aにおいて、積層されている複数の導電帯11に一括して穴抜き加工が行われて、各導電帯11に第1貫通孔31が形成される。第1端部1aに対する穴抜き加工には、円形状の穴抜き型が用いられる。また、第1端部1aに対する穴抜き加工は、複数の導電帯11の第1端縁11aが揃った状態で行われる。これによって、各導電帯11の第1端縁11aの近傍における互いに同じ位置に、互いに同じサイズの丸孔である第1貫通孔31が形成される。
【0040】
同様に、第2端部1bを覆う絶縁被覆2が皮剥ぎされた後、或いはその前に、積層導電体1の第2端部1bに対して、プレス加工、具体的には、穴抜き加工が行われて、第2接続用挿通孔4が形成される。すなわち、第2端部1bにおいて、積層されている複数の導電帯11に一括して穴抜き加工が行われて、各導電帯11に第2貫通孔41が形成される。第2端部1bに対する穴抜き加工には、長円形状の穴抜き型が用いられ、穴抜き型の長円の長尺方向は、導電帯11の長手方向に一致される。また、第2端部1bに対する穴抜き加工は、複数の導電帯11の第2端縁11bが揃った状態で行われる。これによって、各導電帯11の第2端縁11bの近傍における互いに同じ位置に、互いに同じサイズの長孔である第2貫通孔41が形成される。
【0041】
<電池集積体の製造方法>
次に、電池集積体200及びその製造方法について、図3及び図4を参照しながら説明する。図3は、電池集積体200の一例を概略的に示す斜視図である。図4は、電池集積体200の製造方法を説明するための図である。
【0042】
電池集積体200は、所定のレイアウトで配置された一群の電池20と、一群の電池20のうちの2つの電池20(第1電池20a及び第2電池20b)の間を電気的に接続する電池接続用バスバ100と、を備える。上記のとおり、電池接続用バスバ100で接続される電池20は、電池セルであってもよいし、電池モジュールであってもよいし、電池パックであってもよい。つまり、電池集積体200は、電池セル間が電池接続用バスバ100で接続された電池モジュールであってもよいし、電池モジュール間が電池接続用バスバ100で接続された電池パックであってもよいし、電池パック間が電池接続用バスバ100で接続されたものであってもよい。
【0043】
(準備工程S1)
電池集積体200を製造するにあたっては、電池接続用バスバ100が準備される。この段階では、図1及び図2に示されるように、積層導電体1が、長手方向に直線状に延在している。この状態において、積層導電体1の第1端部1aでは、複数の導電帯11の第1端縁11aが揃っており、各々が丸孔である複数の第1貫通孔31が全体的に重なり合って、丸孔である第1接続用挿通孔3を形成している。また、積層導電体1の第2端部1bでも、複数の導電帯11の第2端縁11bが揃っており、各々が長孔である複数の第2貫通孔41が全体的に重なり合って、長孔である第2接続用挿通孔4を形成している。
【0044】
(第1挿通工程S2)
続いて、第1接続用挿通孔3に、第1電池20aのターミナル21が、挿通される。ターミナル21は、電池20に設けられた円柱形状の導電部材であり、電池20の正極或いは負極とつながっている。ターミナル21は、端子、外部端子、などとも呼ばれる。一例として、ターミナル21は、電池20の一面から立設されたスタッドボルトであるが、これに限られるものではない。第1接続用挿通孔3、すなわち、各々が丸孔である複数の第1貫通孔31が全体的に重なり合って形成される第1接続用挿通孔3に、ターミナル21が挿通されることで、積層導電体1の第1端部1aが、積層された複数の導電帯11の第1端縁11aが揃った状態で、位置決めされる。
【0045】
第1接続用挿通孔3に第1電池20aのターミナル21が挿通された後、該ターミナル21に、締結部材としてのナット(図示省略)が挿通されて、螺合締結される。これによって、接続端である第1端部1aと第1電池20aのターミナル21とが、電気的に接続された状態で、固定される。
【0046】
(曲げ工程S3)
続いて、第1接続用挿通孔3に第1電池20aのターミナル21が挿通された状態で、積層導電体1が長手方向の途中で曲げられる。すなわち、積層導電体1が適宜の位置で適宜の方向に曲げられることによって、積層導電体1が、必要な接続経路、すなわち、第1電池20aのターミナル21と第2電池20bのターミナル21とを結ぶ接続経路に応じた形状に、変形される。上記のとおり、積層導電体1は、自身の厚みよりも薄い導電帯11が複数積層された構成を備える。また、積層導電体1においては、複数の導電帯11が、長手方向の全体にわたって相互に移動可能に、積層されている。このため、積層導電体1は、容易に曲がることができる。
【0047】
積層導電体1が曲げられる態様は、どのようなものであってもよい。例えば、積層導電体1が、厚み方向、すなわち、導電帯11の積層方向に、曲げられてもよい。厚み方向に曲げられるとは、厚み方向が変化するように曲げられることを意味する。例えば、積層導電体1が、長手方向と直交する折り線を境にして、厚み方向に90度曲げられることで、側面視にてL字状の曲げ部分D1が形成されてもよい。この場合、厚み方向は90度変化することになる。また例えば、積層導電体1が、長手方向と45度をなす折り線を境にして、厚み方向に180度曲げられることで、平面視にてL字状の曲げ部分D2が形成されてもよい。この場合、厚み方向は180度変化することになる。また例えば、積層導電体1が、長手方向の途中で円弧を描きつつ180度曲げられることで、側面視にてU字状の曲げ部分が形成されてもよい。この場合も、厚み方向は180度変化することになる。また例えば、積層導電体1が、ひねられるようにして曲げられてもよい。すなわち、積層導電体1が、長手方向に沿う軸のまわりで回転されてもよい。例えば、積層導電体1が、長手方向に沿う軸のまわりで90度だけ回転された場合、厚み方向は90度変化することになる。
【0048】
積層導電体1が厚み方向に曲げられると、積層されている複数の導電帯11の間に経路差が生じる。経路差が生じると(より正確には、積層導電体1に形成された1箇所以上の曲げ部分の各々で生じた経路差の総和が、ゼロにならない場合)、積層導電体1の長手方向の両端部1a,1bの一方あるいは両方において、複数の導電帯11の間に長手方向の位置ずれが生じる。ただし、ここでは、第1接続用挿通孔3に第1電池20aのターミナル21が挿通された状態、すなわち、第1端部1aが位置決めされた状態で、積層導電体1が曲げられる。この場合、複数の導電帯11の間の長手方向の位置ずれは、第1端部1aの側には現れずに、第2端部1bの側だけに現れる。つまり、各導電帯11の第1端縁11aは、揃ったままに維持され、各導電帯11の第2端縁11bが、互いにずれた位置に配置される。
【0049】
図5及び図6には、第1端部1aが位置決めされた状態で積層導電体1が曲げられた場合の、電池接続用バスバ100が例示されている。
【0050】
上記のとおり、第1端部1aが位置決めされた状態で積層導電体1が曲げられた場合、複数の導電帯11の間に経路差が生じても、第1端部1aにおいて、複数の導電帯11の間の長手方向の位置ずれは生じない。したがって、第1端部1aでは、複数の第1貫通孔31が全体的に重なり合って第1接続用挿通孔3を形成した状態が維持される。
【0051】
一方、第1端部1aが位置決めされた状態で積層導電体1が曲げられた場合、複数の導電帯11の間に経路差が生じると、第2端部1bにおいて、複数の導電帯11の間に長手方向の位置ずれが生じる。ここで、第2貫通孔41は、導電帯11の長手方向に長い長孔である。したがって、第2端部1bにおいて、複数の導電帯11の間に長手方向の位置ずれが生じたために、複数の第2貫通孔41が、導電帯11の長手方向に互いにずれた位置に配置されても、該複数の第2貫通孔41が部分的に重なり合うことで、第2接続用挿通孔4が維持される可能性が高い。ここで、「第2接続用挿通孔4が維持される」とは、第2接続用挿通孔4が、接続対象となるターミナル21などを挿通させるための接続用挿通孔としての機能を維持していることを意味する。例えば、複数の第2貫通孔41が重なり合うことで形成される第2接続用挿通孔4の長手方向の寸法が、接続対象となるターミナル21の外径よりも大きい場合に、第2接続用挿通孔4が維持されているといえる。
【0052】
(第2挿通工程S4)
積層導電体1が曲げられて必要な接続経路に応じた形状に変形されると、続いて、第2接続用挿通孔4に、第2電池20bのターミナル21が、挿通される。上記のとおり、積層導電体1が厚み方向に曲げられることによって複数の導電帯11の間に経路差が生じると、第2端部1bにおいて、複数の導電帯11の間に長手方向の位置ずれが生じる。このような場合であっても、複数の第2貫通孔41が、導電帯11の長手方向に互いにずれた位置にありつつ、部分的に重なり合うことで、第2接続用挿通孔4が維持されている可能性が高い。第2接続用挿通孔4が維持されていれば、ここにターミナル21が難なく挿通される。
【0053】
特に、複数の導電帯11の間に生じている経路差が比較的小さい場合、複数の第2貫通孔41が部分的に重なり合って形成される第2接続用挿通孔4は、個々の第2貫通孔41よりは短いものの、依然として、導電帯11の長手方向に長い長孔に維持されている可能性も高い。第2接続用挿通孔4が長孔に維持されていれば、その長さ分の作業余長が確保されることとなるので、第2接続用挿通孔4にターミナル21が容易に挿通される。
【0054】
第2接続用挿通孔4に第2電池20bのターミナル21が挿通された後、該ターミナル21に、締結部材としてのナット(図示省略)が挿通されて、螺合締結される。これによって、接続端である第2端部1bと第2電池20bのターミナル21とが、電気的に接続された状態で、固定される。
【0055】
以上によって、第1電池20aと第2電池20bとが電池接続用バスバ100によって電気的に接続され、電池集積体200が得られる。
【0056】
<効果等>
以上のように構成された電池接続用バスバ100は、複数の導電帯11が、長手方向の全体にわたって相互に移動可能に、積層された積層導電体1を備える。このような積層導電体1は、例えば、該積層導電体1と同じ厚みを有する1枚の金属板で形成された導電体、積層方向に隣り合う導電帯同士が相互に移動しないように固定されている導電体、などと比較して、曲がりやすい。また、電池接続用バスバ100では、重なり合って第2接続用挿通孔4を形成する複数の第2貫通孔41のうちの少なくとも1つが、導電帯11の長手方向に長い長孔である。したがって、積層導電体1が厚み方向に曲げられることによって、積層されている複数の導電帯11の間に経路差が生じ、そのために、第2端部1bにおいて複数の導電帯11の間に長手方向の位置ずれが生じたとしても、第2接続用挿通孔4が維持されやすい。このように、電池接続用バスバ100では、積層導電体1が曲がりやすく、積層導電体1が曲げられても第2接続用挿通孔4が維持されやすい。したがって、積層導電体1を様々なパターンの接続経路に応じた形状に変形させることで、様々なパターンの接続経路で電池20間を接続することができる。すなわち、様々なパターンの接続経路に対応して電池20間を接続することができる。
【0057】
例えば、車両、トラック、電車、住宅、インフラ設備、などで用いられる電池集積体200は、多品種少量生産品である場合が多い。したがって、これらの分野で用いられる電池集積体200における電池20間の接続(典型的には例えば、電池モジュール間の接続)に、電池接続用バスバ100を用いれば、例えば専用に設計されたバスバを用いる場合と比べて、開発工数及び製造コストを効果的に削減することができる。
【0058】
また、電池接続用バスバ100では、複数の第2貫通孔41の各々が長孔である。この場合、例えば、複数の第2貫通孔41に丸孔と長孔とが混在する場合と比較して、複数の導電帯11の間に許容される長手方向の最大の位置ずれ量、すなわち、第2接続用挿通孔4が維持され得る最大の位置ずれ量が、より大きいものとなる。つまり、第2接続用挿通孔4が、より維持されやすい。また、複数の第2貫通孔41の各々が長孔であれば、複数の導電帯11の間に長手方向の位置ずれが生じても、第2接続用挿通孔4が長孔に維持され得る。第2接続用挿通孔4が長孔に維持されていれば、第2接続用挿通孔4にターミナル21が容易に挿通される。
【0059】
また、電池接続用バスバ100では、複数の第1貫通孔31の各々が丸孔である。この場合、各々が丸孔である複数の第1貫通孔31が全体的に重なり合うことによって形成される第1接続用挿通孔3に、電池20のターミナル21などが挿通されることで、積層導電体1の第1端部1aを位置決めすることができる。
【0060】
丸孔を形成するための加工コストは、長孔を形成するための加工コストよりも低い。したがって、複数の第1貫通孔31の各々が丸孔であり、複数の第2貫通孔41の各々が長孔である電池接続用バスバ100は、例えば、複数の第1貫通孔31の各々が長孔であり、複数の第2貫通孔41の各々も長孔である電池接続用バスバに比べて、低コストで製造することができる。
【0061】
また、電池接続用バスバ100において、積層導電体1が長手方向の途中で曲がっていれば、直線以外の接続経路に対応することができる。さらに、積層導電体1が曲がっている場合において、複数の第1貫通孔31が全体的に重なり合っている状態が維持されるものであれば、複数の第1貫通孔31が長手方向に互いにずれた位置に配置されることを想定して第1貫通孔31の形状を規定する必要がない。例えば、複数の第1貫通孔31が長手方向に互いにずれた位置に配置されることを想定して、第1貫通孔31を長孔にする必要がない。例えば、第1貫通孔31を、長孔よりも低コストで形成できる丸孔とすることができる。
【0062】
また、電池接続用バスバ100は、複数の導電帯11を、これらが長手方向に相互に移動可能な状態で、一括して覆う絶縁被覆2を備える。この場合、絶縁被覆2によって、積層された複数の導電帯11がひとまとめにされるので、取り扱いが容易となる。また、積層された複数の導電帯11における絶縁被覆2で覆われる部分を、周囲から絶縁しつつ、保護することができる。
【0063】
また、上記の電池集積体200の製造方法では、各々が丸孔である複数の第1貫通孔31が全体的に重なり合うことによって形成される第1接続用挿通孔3に、電池20のターミナル21が挿通された状態、つまり、第1端部1aが位置決めされた状態で、積層導電体1が曲げられる。したがって、複数の導電帯11の間の長手方向の位置ずれは、第1端部1aの側には現れず、第2端部1bの側だけに現れる。そして、この第2端部1bにおいては、重なり合って第2接続用挿通孔4を形成する複数の第2貫通孔41のうちの少なくとも1つが、導電帯11の長手方向に長い長孔である。このため、第2端部1bにおいて、複数の導電帯11の間に長手方向の位置ずれが生じたとしても、第2接続用挿通孔4が維持されやすい。第2接続用挿通孔4が維持されていれば、ここにターミナル21が難なく挿通される。このように、この電池集積体200の製造方法では、積層導電体1が曲げられるとともに、第1及び第2接続用挿通孔3,4の各々にターミナル21が挿通された状態が、難なく形成される。したがって、積層導電体1を様々なパターンの接続経路に応じた形状に変形させることで、様々なパターンの接続経路で電池20間を接続することができる。すなわち、様々なパターンの接続経路に対応して電池20間を接続することができる。
【0064】
積層導電体が厚み方向に曲げられることによって、複数の導電帯の間に長手方向の位置ずれが生じて、接続用挿通孔が塞がってしまう、という事態を回避するためには、積層導電体を曲げた後に接続用挿通孔を形成する、という方策も考えられる。すなわち、絶縁被覆で覆われた積層導電体を調尺して切断した後に、切り出された積層導電体を曲げて、必要な接続経路に応じた形状に変形させる。その後、つまり、長手方向の両端部の一方あるいは両方において複数の導電帯の間に長手方向の位置ずれが生じている状態で、積層導電体の各端部に対して皮剥ぎ及び穴抜き加工を行うのである。しかしながら、この方策によると、調尺及び切断と、皮剥ぎ及び穴抜き加工とを一続きに(例えば、同一ラインで)行うことができない。また、例えば、電池集積体の組み立て現場で、積層導電体を曲げてから穴抜き加工を行うとなると、組み立て現場の作業者の負担が大きくなる。上記の電池接続用バスバ100では、調尺及び切断と、皮剥ぎ及び穴抜き加工とを一続きに行うことが可能である。また、電池集積体200の組み立て現場で穴抜き加工を行う必要もないので、組み立て現場の作業者の負担が大きくなることもない。
【0065】
[変形例]
上記実施形態に係る電池接続用バスバ100に、積層導電体1の第1端部1aと第2端部1bとを区別するための識別子6が設けられてもよい。識別子6の具体的な態様は、どのようなものであってもよい。例えば、図7に例示されるように、第1端部1a側の絶縁被覆2の端部に「1」と印字され、第2端部1b側の絶縁被覆2の端部に「2」と印字されることによって、識別子6が設けられてもよい。あるいは、第1端部1a側の絶縁被覆2の端部に「こちら側を先に固定してください」といった説明文が印字されることによって、識別子6が設けられてもよい。
【0066】
識別子6が設けられる場合、電池接続用バスバ100を用いて電池20間を接続する作業を行う作業者などが、積層導電体1の第1端部1aと第2端部1bとを容易に区別することができる。したがって、例えば、少なくとも1つが長孔である複数の第2貫通孔41が重なり合って第2接続用挿通孔4を形成している側、すなわち、複数の導電帯11の間に長手方向の位置ずれが生じることが許容される側が、どちらであるかを、作業者などが容易に判別することができる。
【0067】
上記のとおり、電池接続用バスバ100を用いて電池20間を接続する際には、第1端部1aに設けられている第1接続用挿通孔3に対するターミナル21の挿通を、第2端部1bに設けられている第2接続用挿通孔4に対するターミナル21の挿通よりも、先に行うことが好ましい。識別子6が、第1端部1aと第2端部1bと区別するための識別情報を提供するだけでなく、好ましい挿通順番をも示唆するものであれば、作業者は、迷いなく、好ましい挿通順番で作業を進めることができる。
【0068】
上記実施形態に係る電池接続用バスバ100においては、重なり合って第2接続用挿通孔4を形成する複数の第2貫通孔41の各々が、導電帯11の長手方向に長い長孔であった。つまり、複数の第2貫通孔41の全てが長孔であった。しかしながら、複数の第2貫通孔41のうちの少なくとも1つの第2貫通孔41が、導電帯11の長手方向に長い長孔であり、残りの第2貫通孔41が、丸孔であってもよい。このような構成であっても、第2端部1bにおいて複数の導電帯11の間に長手方向の位置ずれが生じた場合に、複数の第2貫通孔41が、導電帯11の長手方向に互いにずれた位置にありつつ、少なくとも部分的に重なり合うことで、第2接続用挿通孔4が維持されやすい。ただし、複数の第2貫通孔41に丸孔と長孔とが混在する場合、「複数の第2貫通孔41が、導電帯11の長手方向に互いにずれた位置にある」とは、各第2貫通孔41の中心が、導電帯11の長手方向に互いにずれた位置にある状態を指す。
【0069】
上記実施形態に係る電池接続用バスバ100においては、重なり合って第1接続用挿通孔3を形成する複数の第1貫通孔31の各々が、丸孔であった。つまり、複数の第1貫通孔31の全てが丸孔であった。しかしながら、複数の第1貫通孔31のうちの少なくとも1つの第1貫通孔31が丸孔であって、残りの第1貫通孔31が、導電帯11の長手方向に長い長孔であってもよい。あるいは、複数の第1貫通孔31の全てが長孔であってもよい。これらの構成の場合、第1端部1aにおいて複数の導電帯11の間に長手方向の位置ずれが生じた場合に、複数の第1貫通孔31が、導電帯11の長手方向に互いにずれた位置にありつつ、少なくとも部分的に重なり合うことで、第1接続用挿通孔3が維持されやすい。つまり、第2端部1bだけでなく、第1端部1aにおいても、長手方向の位置ずれが生じることが許容される。
【0070】
上記実施形態においては、積層導電体1の各端部1a,1bに対して穴抜き加工が行われることによって、第1及び第2接続用挿通孔3,4が形成されるものとした。しかしながら、第1及び第2接続用挿通孔3,4は、穴抜き加工以外の手法、例えば、ドリル加工、穴あけ治具を用いた加工、などによって形成されてもよい。第1接続用挿通孔3と第2接続用挿通孔4とは、同時に形成されてもよいし、順次に形成されてもよい。第1接続用挿通孔3を形成するにあたって、複数の第1貫通孔31は必ずしも一括に形成されなくともよく、順次に形成されてもよい。第2接続用挿通孔4を形成するにあたっても、複数の第2貫通孔41は必ずしも一括に形成されなくともよく、順次に形成されてもよい。
【0071】
電池接続用バスバ100は、例えば次のようにして製造されてもよい。まず、予め所定の寸法に切り出された複数の導電帯11が準備され、これらが積層される。これにより、所定の寸法の積層導電体1が得られる。その後、積層導電体1の各端部1a,1bに対して穴抜き加工などが行われることによって、第1及び第2接続用挿通孔3,4が形成される。第1及び第2接続用挿通孔3,4が形成された後、或いはその前に、金型を用いた射出成形によって、絶縁被覆2が形成される。具体的には例えば、積層導電体1がインサートされた金型内に、軟化溶融した樹脂材料を注入することによって、各端部1a,1bを露出させつつ積層導電体1を覆う絶縁被覆2が、形成される。すなわち、インサート成形によって積層導電体1を覆う絶縁被覆2が形成される。
【0072】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 積層導電体
1a 積層導電体の第1端部
1b 積層導電体の第2端部
11 導電帯
11a 導電帯の第1端縁
11b 導電帯の第2端縁
2 絶縁被覆
3 第1接続用挿通孔
31 第1貫通孔
4 第2接続用挿通孔
41 第2貫通孔
6 識別子
20 電池
20a 第1電池
20b 第2電池
21 ターミナル
100 電池接続用バスバ
200 電池集積体
S1 準備工程
S2 第1挿通工程
S3 曲げ工程
S4 第2挿通工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7