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特開2024-90539岸壁架橋設備、及び岸壁架橋設備を利用した物資の移動方法
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  • 特開-岸壁架橋設備、及び岸壁架橋設備を利用した物資の移動方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090539
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】岸壁架橋設備、及び岸壁架橋設備を利用した物資の移動方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 18/00 20060101AFI20240627BHJP
   E01D 15/06 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
E01D18/00 C
E01D15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206513
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】遠山 正恭
(72)【発明者】
【氏名】鷺 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 渉
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059BB10
2D059BB24
(57)【要約】
【課題】水域の状況に左右されることなく、また、物資の重量に左右されることなく、連絡橋を介して物資が移動する際の反力を安定的に取ることができる、岸壁架橋設備、及び岸壁架橋設備を利用した物資の移動方法を提供する。
【解決手段】岸壁Gと水域Wに停泊する船舶Sとの間を架橋する岸壁架橋設備100であり、岸壁Gにおいて水域Wに向かって延びる桟橋10と、桟橋10の幅方向の左右端に設けられている一対の支柱20と、桟橋10における水域側の端部11にある回動ヒンジ18に対して回動自在に取り付けられている連絡橋40と、支柱20の柱頭23に設置されている巻き取り機30と、巻き取り機30から延びて連絡橋40の一部に取り付けられているワイヤ50とを有し、巻き取り機30の駆動によるワイヤ50の巻き取りと巻き出しにより、回動ヒンジ18を介した連絡橋40の岸壁側への立設姿勢と水域側への張り出し姿勢が形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
岸壁と水域に停泊する船舶との間を架橋する、岸壁架橋設備であって、
前記岸壁において水域に向かって延びる桟橋と、
前記桟橋の幅方向の左右端に設けられている、一対の支柱と、
前記桟橋における水域側の端部にある回動ヒンジに対して回動自在に取り付けられている、連絡橋と、
前記支柱の柱頭に設置されている、巻き取り機と、
前記巻き取り機から延びて前記連絡橋の一部に取り付けられている、ワイヤとを有し、
前記巻き取り機の駆動による前記ワイヤの巻き取りと巻き出しにより、前記回動ヒンジを介した前記連絡橋の岸壁側への立設姿勢と水域側への張り出し姿勢が形成されることを特徴とする、岸壁架橋設備。
【請求項2】
前記支柱と、前記桟橋における該支柱よりも陸側の領域とを繋いで、前記ワイヤによる張力の反力の一部を、該桟橋の該陸側の領域に負担させるための控え材をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の岸壁架橋設備。
【請求項3】
前記巻き取り機が電動チェーンブロックであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の岸壁架橋設備。
【請求項4】
前記水域が湖であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の岸壁架橋設備。
【請求項5】
岸壁と水域に停泊する船舶との間を架橋する、岸壁架橋設備を利用して物資の移動を行う、岸壁架橋設備を利用した物資の移動方法であって、
前記岸壁において水域に向かって桟橋が延び、該桟橋の幅方向の左右端に一対の支柱が設けられ、桟橋における水域側の端部にある回動ヒンジに対して連絡橋が回動自在に取り付けられ、該支柱の柱頭に設置されている巻き取り機から延びるワイヤが該連絡橋の一部に取り付けられており、該巻き取り機を駆動して該ワイヤを巻き出し、岸壁側へ立設していた該連絡橋を水域側へ張り出させる、A工程と、
水域に停泊する前記船舶と、前記連絡橋とを連絡させ、前記桟橋と該船舶との間の物資の移動を行う、B工程とを有することを特徴とする、岸壁架橋設備を利用した物資の移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岸壁架橋設備、及び岸壁架橋設備を利用した物資の移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
岸壁の近傍に台船を停泊させ、岸壁と台船を架橋した上で、岸壁から台船へ物資を移動させる、もしくは台船から岸壁へ物資を移動させることにより、物資の海上輸送や、水域における新規の水上構造物の施工、水上構造物のメンテナンス施工等が行われる。水上構造物のメンテナンス施工の一例としては、ダムや水門、樋門等を含む、堰を構成する堰柱の補修工事や改修工事等が挙げられる。
この堰の補修工事では、例えば、堰柱の周囲に複数の箱体(箱体の積層体を含む)を設置し、堰柱を包囲する仮締切り体を形成した後に、堰柱と仮締切り体の間にドライ区間を形成し、ドライ空間を利用して堰柱の補修工事が行われる。この箱体は、岸壁から連絡橋を介して台船に積み込んだ後、施工対象の堰柱まで台船で曳航し、例えば台船の備える揚重機や、箱体を曳航した台船とは異なる起重機船等により、堰柱の周囲に箱体が吊り下ろされる。
【0003】
このように、比較的規模の大きな物資を台船を利用して水域に曳航したり、あるいは、台船から岸壁へ物資を輸送する場合に、大規模な台船には上記する連絡橋もしくは架橋設備が設置され、台船が岸壁の近傍に停泊した後に台船から岸壁へ連絡橋が渡され、連絡橋を介して大規模な物資の移動が行われることが往々にしてある。
例えば、特許文献1にも、連絡橋に相当する橋桁部材が台船に搭載されている、移動式架橋が提案されている。この移動式架橋は、水上を移動可能な台船と、台船上に基部を回転自在に枢着して立設された少くとも2本の支柱と、回転ヒンジによって順次連結された複数個の橋桁部材にて構成され、一端が支柱の基部に枢着された展開橋桁と、展開橋桁を支柱から斜張状に吊り下げる長さ調節機構をもつ複数本の展開ワイヤとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-42113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の移動式架橋をはじめとして、台船に対して連絡橋が回動自在に備えられた架橋設備では、連絡橋の反力を水域に浮遊する台船に取っていることから、連絡橋を介して物資が移動する際の反力取りが水域の状況(水位変動等)に左右され、安定しないといった課題がある。
また、反力を台船で取っていることから、連絡橋を介した物資の移動において物資の重量に制限が生じ、例えば上記する水上での施工に利用される大規模なクレーン等の揚重機の移動ができない場合も生じ得る。
さらに、水域が例えば湖である場合に、湖には起重機船等の作業船の入港が一般に不可能であるか極めて難しいことから、水域が湖である場合に対応することが難しくなる。
【0006】
本発明は、岸壁と水域に停泊する船舶との間を架橋する岸壁架橋設備とこれを利用した物資の移動方法に関し、水域の状況に左右されることなく、また、物資の重量に左右されることなく、連絡橋を介して物資が移動する際の反力を安定的に取ることができ、水域が湖でも岸壁と台船との間の物資の移動を可能とした、岸壁架橋設備、及び岸壁架橋設備を利用した物資の移動方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による岸壁架橋設備の一態様は、
岸壁と水域に停泊する船舶との間を架橋する、岸壁架橋設備であって、
前記岸壁において水域に向かって延びる桟橋と、
前記桟橋の幅方向の左右端に設けられている、一対の支柱と、
前記桟橋における水域側の端部にある回動ヒンジに対して回動自在に取り付けられている、連絡橋と、
前記支柱の柱頭に設置されている、巻き取り機と、
前記巻き取り機から延びて前記連絡橋の一部に取り付けられている、ワイヤとを有し、
前記巻き取り機の駆動による前記ワイヤの巻き取りと巻き出しにより、前記回動ヒンジを介した前記連絡橋の岸壁側への立設姿勢と水域側への張り出し姿勢が形成されることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、岸壁に設けられている桟橋の幅方向の左右端に一対の支柱があり、桟橋の水域側の端部にある回動ヒンジに連絡橋が回動自在に取り付けられ、支柱の柱頭に設置されている巻き取り機から延びて連絡橋の一部に取り付けられているワイヤの巻き取りや巻き出しによって連絡橋の立設姿勢と張り出し姿勢が形成されることにより、水域の状況に左右されることなく、また、物資の重量に左右されることなく、連絡橋を介して物資が移動する際の反力を安定的に取ることができる。
また、連絡橋を備えた台船を利用するものでないことから、水域が湖でも岸壁と台船との間の物資の移動が可能になる。
また、岸壁に連絡橋が回動自在に設けられていることから、どのような形状及び寸法の台船に対しても、岸壁から延びる連絡橋を台船に係止させ、岸壁の備える桟橋と台船を連絡橋にて架橋することができる。
さらに、反力を桟橋で取ることにより、台船が反力を取る必要がなくなることから、台船に反力取りのための設備を設ける必要がなくなり、台船の構成の簡素化と製作コストの削減にも繋がる。
【0009】
ここで、「連絡橋の岸壁側への立設姿勢」とは、ワイヤが巻き取り機にて巻き取られることにより、一対の回動ヒンジを支点として、水平もしくは若干の勾配を有する桟橋に対して連絡橋が90度程度回動して立設している姿勢を意味する。一方、「連絡橋の張り出し姿勢」とは、ワイヤが巻き取り機にて巻き出されることにより、一対の回動ヒンジを支点として、桟橋と平行もしくは若干傾斜した程度に水域側へ連絡橋が延びている姿勢を意味する。
【0010】
岸壁に設けられる桟橋は、改良地盤や支持杭等の上に設けられてよく、陸側に向かって一定の下り勾配を有する形態であってよい。桟橋と連絡橋は、双方が同じ勾配で傾斜する形態であってもよいし、異なる勾配で傾斜する形態であってもよい。また、水面のレベル変動に応じて台船のレベルも変動することから、ワイヤの巻き出し量を都度調整することにより、台船のレベルに応じて連絡橋の勾配を変化させることができ、従って、連絡橋は勾配が自在に変化するランプウェイとなる。
【0011】
また、本発明による岸壁架橋設備の他の態様は、
前記支柱と、前記桟橋における該支柱よりも陸側の領域とを繋いで、前記ワイヤによる張力の反力の一部を、該桟橋の該陸側の領域に負担させるための控え材をさらに有することを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、支柱と桟橋の陸側の一部とを繋ぐ控え材にて、ワイヤによる張力の反力の一部を桟橋の支柱よりも陸側の領域に負担させることにより、支柱の脚部と桟橋との接続部に必要とされる剛性を低減することができ、接続部の構造を可及的に簡素化できることで岸壁架橋設備の製作コストの低減に繋がる。ここで、控え材には、ワイヤの他、H形鋼や溝形鋼等の形鋼材、鋼管等が適用できる。
【0013】
また、本発明による岸壁架橋設備の他の態様において、
前記巻き取り機が電動チェーンブロックであることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、巻き取り機が電動チェーンブロックであることにより、重量のある連絡橋のスムーズな巻き取りと巻き出しを実現できる。また、遠隔操作にて電動チェーンブロックの稼働と停止を実行できて好ましい。
【0015】
また、本発明による岸壁架橋設備の他の態様は、
前記水域が湖であることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、岸壁の備える桟橋にある一対の回動ヒンジに対して回動自在に連絡橋が取り付けられていることにより、連絡橋を備えた台船の入港が不要となることから、水域が湖であっても、岸壁と台船との間を岸壁側から延びる連絡橋にて架橋することができる。岸壁と台船を連絡橋にて架橋した後、岸壁にある揚重機にて物資を吊り上げながら連絡橋を介して台船に積み込むことができ、物資が上記する仮締切り体を形成する箱体の場合は、箱体を吊り上げた揚重機がそのまま台船に搭乗して、箱体の設置場所である堰柱まで曳航され、堰柱の周囲に箱体を吊り下ろすことができる。
【0017】
また、本発明による岸壁架橋設備を利用した物資の移動方法の一態様は、
岸壁において水域に向かって延びる桟橋と、水域に停泊する船舶との間を架橋する、岸壁架橋設備を利用して物資の移動を行う、岸壁架橋設備を利用した物資の移動方法であって、
前記桟橋の幅方向の左右端に一対の支柱が設けられ、桟橋における水域側の端部にある回動ヒンジに対して連絡橋が回動自在に取り付けられ、該支柱の柱頭に設置されている巻き取り機から延びるワイヤが該連絡橋の一部に取り付けられており、該巻き取り機を駆動して該ワイヤを巻き出し、岸壁側へ立設していた該連絡橋を水域側へ張り出させる、A工程と、
水域に停泊する前記船舶と、前記連絡橋とを連絡させ、前記桟橋と該船舶との間の物資の移動を行う、B工程とを有することを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、岸壁に設けられている岸壁架橋設備を構成する連絡橋を、岸壁側へ立設していた姿勢から水域側へ張り出させ、水域に停泊する船舶と連絡橋とを連絡させて、桟橋と船舶との間の物資の移動を行うことにより、水域の状況に左右されることなく、また、物資の重量に左右されることなく、連絡橋を介して物資が移動する際の反力を安定的に取りながら、岸壁と台船との間のスムーズな物資の移動を実現できる。
【0019】
ここで、B工程には、先行して停泊する船舶に対して連絡橋を水域側へ張り出させて船舶に繋ぐ形態と、先行して連絡橋を水域側へ張り出させた後に、岸壁へ近接して停泊した船舶を連絡橋に繋ぐ形態の双方の形態が含まれる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の岸壁架橋設備、及び岸壁架橋設備を利用した物資の移動方法によれば、水域の状況に左右されることなく、また、物資の重量に左右されることなく、連絡橋を介して物資が移動する際の反力を安定的に取ることができ、水域が湖でも岸壁と台船との間の物資の移動を可能とした、岸壁架橋設備、及び岸壁架橋設備を利用した物資の移動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る岸壁架橋設備の一例の全景を示す斜視図であって、張り出し姿勢の連絡橋が岸壁の桟橋と台船を架橋している状態を示す図である。
図2】実施形態に係る岸壁架橋設備の一例のうち、一対の支柱を近傍の斜め下方から見た斜視図である。
図3】実施形態に係る岸壁架橋設備の一例の平面図であって、連絡橋が張り出し姿勢である状態を示す図である。
図4図3のIV-IV矢視図であって、一対の支柱の正面図である。
図5図4のV方向矢視図であって、連絡橋が張り出し姿勢の状態と、立設姿勢へ移行する過程の状態をともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態に係る岸壁架橋設備、及び岸壁架橋設備を利用した物資の移動方法の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0023】
[実施形態に係る岸壁架橋設備、及び岸壁架橋設備を利用した物資の移動方法]
図1乃至図5を参照して、実施形態に係る岸壁架橋設備、及び岸壁架橋設備を利用した物資の移動方法の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る岸壁架橋設備の一例の全景を示す斜視図であって、張り出し姿勢の連絡橋が岸壁の桟橋と台船を架橋している状態を示す図である。また、図2は、実施形態に係る岸壁架橋設備の一例のうち、一対の支柱を近傍の斜め下方から見た斜視図であり、図3は、実施形態に係る岸壁架橋設備の一例の平面図であって、連絡橋が張り出し姿勢である状態を示す図である。さらに、図4は、図3のIV-IV矢視図であって、一対の支柱の正面図であり、図5は、図4のV方向矢視図であって、連絡橋が張り出し姿勢の状態と、立設姿勢へ移行する過程の状態をともに示す図である。
【0024】
岸壁架橋設備100は、ドックDの岸壁Gに設けられて、水域Wに停泊する台船Sと岸壁Gを連絡して物資の移動を行う設備である。ここで、図示例の水域Wは湖であるが、水域が湾や海であって、湾等に面した岸壁に岸壁架橋設備100が適用されてもよい。
【0025】
岸壁架橋設備100は、岸壁Gにおいて水域Wに向かって延びる桟橋10と、桟橋10の幅方向の左右の幅方向端部12,13に設けられている、一対の支柱20と、桟橋10における水域側端部11にある回動ヒンジ18に対して一端41が回動自在に取り付けられている、連絡橋40とを有する。
【0026】
桟橋10は、水域側端部11から陸側端部14に向かって一定の下り勾配で傾斜してドックDの地表面に摺り付いている。また、連絡橋40を介した物資の移動に際して、水域Wに停泊している台船S(船舶の一例)は岸壁Gに係留される。
【0027】
変動する水深によって台船Sの天端レベルも変動するが、連絡橋40の一端41が桟橋10に対して回動自在に取り付けられ、他端42が台船Sの一端に係止されることにより、連絡橋40は台船Sのレベル変動に追随しながら、水平を含む様々な傾斜角度のランプウェイとなる。
【0028】
図1に示すように、岸壁Gには、物資を吊り上げて台船Sに積載する揚重機Mが設置されており、例えば、揚重機Mが物資を吊り上げた状態で、桟橋10と台船Sを架橋する連絡橋40を渡って台船Sに移動し、台船S上に物資を積載した後、連絡橋40を渡って岸壁Gへ戻ることにより、岸壁Gから台船Sへの物資の移動が行われる。
【0029】
また、台船Sから岸壁Gへ物資を移動させる際には、台船Sに搭載されている不図示の台車が物資を積載した状態で連絡橋40から岸壁Gへ渡る方法や、岸壁Gにある揚重機Mが連絡橋40を渡って台船S上にある物資を吊り上げ、連絡橋40を渡って岸壁Gに戻る方法等がある。
【0030】
さらに、水上構造物である堰を構成する堰柱の補修工事に際しては、堰柱の周囲に複数の箱体を設置し、堰柱を包囲する仮締切り体を形成する場合は、揚重機Mが連絡橋40を渡って台船Sに移動した後、台船Sが桟橋10に接岸し、揚重機Mが桟橋10上にある箱体を吊り上げて台船Sに取り込むことになる。その後、箱体と揚重機Mが台船Sにて堰柱の近傍まで曳航され、揚重機Mが箱体を堰柱の周囲に吊り下ろし、複数の箱体同士が相互に接続されることにより、仮締切り体が形成されることになる。
【0031】
支柱20は、鋼管等により形成される本体21と、桟橋10に接続される柱脚22と、柱頭23とを有する。柱脚22は、複数のH形鋼等の形鋼材22aを備え、複数の形鋼材22aが本体21の下方の同一レベル位置から側方へテーパー状に広がるようにして桟橋10に支持されることにより、本体21の下部が桟橋10に対して強固に固定される。
【0032】
本体21の中段には中段ステージ25が設けられ、本体21の柱頭23には柱頭ステージ24が設けられている。さらに、本体21の側面には、柱脚22の下方から柱頭ステージ24に亘り、所定の間隔を置いて複数のタラップ26が設けられており、タラップ26を利用して、中段ステージ25と柱頭ステージ24の双方にアクセス自在となっている。
【0033】
例えば、作業員や監視員が柱頭ステージ24に搭乗して、湖Wの状況や曳航する台船Sの状況を監視したり、連絡橋40を回動させて桟橋10と台船Sを架橋する際の双方の離間距離を高所から確認することができる。さらには、柱頭ステージ24に搭乗して、以下で説明するように柱頭23に設置されている巻き取り機30のメンテナンスを行うことができる。ここで、支柱20の本体21にタラップ26が設けられていない場合は、例えば高所作業車等にて作業員が巻き取り機30にアクセスし、メンテナンスを行ってもよい。
【0034】
各支柱20の柱頭23にはそれぞれ、巻き取り機30が設置されており、2つの巻き取り機30から延びるワイヤ50が、連絡橋40の左右端の一部に取り付けられている。
【0035】
ここで、巻き取り機30は電動チェーンブロックであり、例えば、監視員の携帯する携帯端末から遠隔操作にて電動チェーンブロック30によるワイヤ50の巻き取りと巻き出しを実行できるようになっている。従って、監視員は、遠隔にて携帯端末を利用して電動チェーンブロック30に対して駆動信号を送信して駆動させ、連絡橋40をX1方向に回動させることにより、連絡橋40が岸壁側へ戻された立設姿勢と、連絡橋40が水域側へ張り出されて台船Sと架橋する張り出し姿勢の双方をスムーズに形成することが可能になる。
【0036】
図1図3乃至図5に示すように、桟橋10は、陸側と水域側を結ぶ長手方向に沿って延設し、長手方向に直交する短手方向(幅方向)に間隔を置いて配設された複数のH形鋼からなる縦桁16を、短手方向に延設して、長手方向に間隔を置いて配設された複数のH形鋼からなる横桁15が支持し、隣接する複数の縦桁16の間に複数の覆工板17が敷設されることにより、その全体が構成されている。
【0037】
また、図示例では、桟橋10が複数のH形鋼からなる支持杭70にて支持されている。複数の支持杭70は、水底地盤内に所定長さ埋設され、桟橋10から載荷される設計荷重を支持して桟橋10の沈下を防止するように、その本数と仕様(材種、長さ等)が設定されている。
【0038】
また、支柱20の柱頭23と、桟橋10における支柱20よりも陸側の領域とを控え材60が繋いでいる。ここで、図示例の控え材60はワイヤであるが、控え材はその他、形鋼材や鋼管等により形成されてもよい。
【0039】
このように、支柱20と桟橋10の陸側の一部とを繋ぐ控え材60にて、ワイヤ50による張力の反力の一部を桟橋10の支柱よりも陸側の領域に負担させることにより、支柱20の柱脚22と桟橋10との接続部に必要とされる剛性を低減することができ、接続部の構造を可及的に簡素化することができ、岸壁架橋設備100の製作コストの低減に繋がる。
【0040】
図5に示すように、一対の支柱20の柱頭23にある2つの電動チェーンブロック30を同期して駆動させ、双方に固有のワイヤ50を同期して巻き取ることにより、例えば図示例のように水域側へ張り出す張り出し姿勢の連絡橋40Aを、回動ヒンジ18を回動支点としてX2方向に回動させることにより、徐々に立て起こすことができる。
【0041】
そして、図示例の立設姿勢へ移行する連絡橋40Bからさらに連絡橋40が回動して立て起こされることにより、連絡橋40を桟橋10の長手方向に対して直交もしくは略直交した立設姿勢とすることができる。
【0042】
実施形態に係る岸壁架橋設備を利用した物資の移動方法では、A工程として、電動チェーンブロック30を駆動してワイヤ50を巻き出すことにより、岸壁側へ立設した立設姿勢の連絡橋40を水域側へ徐々に張り出させる。
【0043】
次に、B工程として、水域に停泊する台船Sと連絡橋40とを連絡させ、桟橋10と台船Sとの間の物資の移動を行う。ここで、先行して停泊する台船Sに対して連絡橋40を水域側へ張り出させて台船Sに繋ぐ方法であってもよいし、先行して連絡橋40を水域側へ張り出させた後に、岸壁Gへ近接して停泊した台船Sを連絡橋40に繋ぐ方法であってもよい。
【0044】
岸壁架橋設備100と、これを利用した物資の移動方法によれば、桟橋10の水域側の端部11にある回動ヒンジ18に連絡橋40が回動自在に取り付けられ、一対の支柱20の柱頭23に設置されている2台の巻き取り機30から延びて連絡橋40の一部に取り付けられているワイヤ50の巻き取りや巻き出しによって連絡橋40の立設姿勢と張り出し姿勢が形成されることにより、水域Wの状況に左右されることなく、また、物資の重量に左右されることなく、連絡橋40を介して物資が移動する際の反力を安定的に取ることができる。例えば、200t級のクローラクレーン等の重機が連絡橋40の上を走行可能となる。
【0045】
また、湖には起重機船等の作業船の入港が一般に不可能であるが、岸壁G側に連絡橋40が回動自在に取り付けられていることから、連絡橋を備えた台船を利用する必要がなく、従って水域が湖でも岸壁Gと台船Sとの間の物資の移動が可能になる。
【0046】
また、岸壁Gに連絡橋40が回動自在に設けられていることから、どのような形状及び寸法の台船Sに対しても、岸壁Gから延びる連絡橋40を台船Sに係止させ、岸壁Gに設けられている桟橋10と台船Sを連絡橋40にて架橋することができる。
【0047】
さらに、連絡橋40の上を物資が移動する際の反力を、支柱20や控え材60を介して桟橋10で取ることにより、台船Sが反力を取る必要がなくなることから、台船Sに反力取りのための設備を設ける必要がなくなり、台船Sの構成の簡素化と製作コストの削減にも繋がる。
【0048】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0049】
10:桟橋
11:水域側端部
12,13:幅方向端部
14:陸側端部
15:横桁
16:縦桁
17:覆工板
18:回動ヒンジ
20:支柱
21:本体
22:柱脚
22a:形鋼材
23:柱頭
24:柱頭ステージ
25:中段ステージ
26:タラップ
30:巻き取り機(電動チェーンブロック)
40:連絡橋
40A:張り出し姿勢の連絡橋
40B:立設姿勢へ移行する連絡橋
41:一端
42:他端
50:ワイヤ
60:控え材(ワイヤ)
70:支持杭
100:岸壁架橋設備
D:ドック
G:岸壁
S:台船(船舶)
W:水域(湖)
M:揚重機(クレーン)
図1
図2
図3
図4
図5