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特開2024-90541土砂集積搬出システムと土砂集積搬出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090541
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】土砂集積搬出システムと土砂集積搬出方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 7/00 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
E02F7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206515
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修二
(72)【発明者】
【氏名】高尾 紘典
(72)【発明者】
【氏名】太田 八生
(57)【要約】
【課題】土砂ピットのためのスペースを可及的に増加させて、十分な量の掘削土砂の一時的な集積を実現することのできる、土砂集積搬出システムと土砂集積搬出方法を提供する。
【解決手段】掘削施工を行う施工現場Dに設けられている土砂ピット10に対して、発生した掘削土砂を一時的に集積し、集積された掘削土砂を搬出する土砂集積搬出システム100であり、土砂ピット10の上方に設けられているガイドレール20と、ガイドレール20に沿って走行する走行架台30と、土砂ピット10の周辺から走行架台30への搭乗と走行架台30から土砂ピット10の周辺への退避を行うとともに、掘削土砂の集積と搬出を行う重機40と、走行架台30の走行及び停止を制御する第1制御盤50とを有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削施工を行う施工現場に設けられている土砂ピットに対して、発生した掘削土砂を一時的に集積し、集積された該掘削土砂を搬出する、土砂集積搬出システムであって、
前記土砂ピットの上方に設けられている、ガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って走行する、走行架台と、
前記土砂ピットの周辺から前記走行架台への搭乗と、該走行架台から該土砂ピットの周辺への退避を行うとともに、前記掘削土砂の集積と搬出を行う、重機と、
前記走行架台の走行及び停止を制御する、第1制御盤とを有することを特徴とする、土砂集積搬出システム。
【請求項2】
前記重機は、下部走行体と、該下部走行体に対して旋回自在に積層されている上部旋回体と、該上部旋回体に対して回動自在に装着されているブーム及びアームと、該アームに対して回動自在に装着されているバケットを備え、
前記走行架台のうち、前記ガイドレールの延設方向に直交する幅は、前記重機の方向転換が不可能な幅であり、
前記走行架台には、前記幅を挟んで対向する一端にストッパーが設けられ、他端に前記重機の乗り入れ口が設けられており、
前記走行架台に対して前記重機が前記直交する方向から搭乗して停止姿勢を形成し、該停止姿勢の下で前記上部旋回体の旋回と、前記ブームと前記アームと前記バケットの回動を行い、該重機が前記直交する方向から前記周辺へ退避することを特徴とする、請求項1に記載の土砂集積搬出システム。
【請求項3】
前記周辺と前記走行架台との間に段差があり、前記乗り入れ口において該段差をテーパー状に繋ぐスロープが設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の土砂集積搬出システム。
【請求項4】
前記ガイドレールは、前記延設方向に沿う前記土砂ピットの長さに対応する第1長さ区間と、さらに第2長さ区間とを備えており、
前記ガイドレールの前記第2長さ区間に前記走行架台が移動して位置合わせされ、前記バケットによる前記掘削土砂の集積と搬出が行われることを特徴とする、請求項2又は3に記載の土砂集積搬出システム。
【請求項5】
前記重機は、前記上部旋回体の旋回と、前記ブームと前記アームと前記バケットの回動を制御する、第2制御盤を備えており、
前記第1制御盤と前記第2制御盤は、双方の同時操作を不可とする、電源切替え手段を介して相互に電気的に接続されていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の土砂集積搬出システム。
【請求項6】
掘削施工を行う施工現場に設けられている土砂ピットに対して、発生した掘削土砂を一時的に集積し、集積された該掘削土砂を搬出する、土砂集積搬出方法であって、
前記土砂ピットの上方に設けられているガイドレールに沿って走行する走行架台に対して、前記土砂ピットの周辺から、前記掘削土砂の集積と搬出を行う重機が搭乗し、
前記ガイドレールに沿って前記走行架台が走行して位置合わせされ、前記重機が前記掘削土砂の集積もしくは搬出を行い、
前記走行架台から前記周辺へ前記重機が退避することを特徴とする、土砂集積搬出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂集積搬出システムと土砂集積搬出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
開削施工やニューマチックケーソン施工等に代表される掘削施工を行う施工現場では、発生した掘削土砂を施工現場内に設けられている土砂ピットにて一時的に集積した後に、場外搬出することが往々にして行われる。
この土砂ピットにおける一時的な集積には様々な目的があり、一例として、発生した掘削土砂を速やかに場外搬出できない場合の一時的な集積が挙げられ、他の例としては、掘削土砂が水分を多量に含んでいる場合に、土砂ピットにおいて掘削土砂に対して改良材を添加して混合し、改良土を生成した後に場外へ搬出する際の当該改良材との混合が挙げられる。
【0003】
しかしながら、上記する掘削施工が都市部における施工現場にて行われる場合に、施工現場にて十分な平面規模の土砂ピットを形成できず、十分な量の掘削土砂の一時的な集積を実現できないケースが往々にして生じ得る。
すなわち、土砂ピットに掘削土砂を一時的に集積する場合は、土砂ピットのためのスペース(第1スペースという)が確保されることでは足りず、土砂ピットに対して掘削土砂を集積したり搬出する際に利用される、バックホウやクレーンといった重機の作動と移動のためのスペース(第2スペース)が第1スペースの周囲に確保される必要がある。
そのため、狭隘な施工現場に形成される土砂ピットのための第1スペースは自ずと狭くならざるを得ず、結果として、十分な量の掘削土砂の一時的な集積が実現できないことに繋がる。
【0004】
従って、掘削土砂を一時的に集積するための土砂ピットのための第1スペースと、掘削土砂の集積及び搬出の際に利用される重機の作動及び移動のための第2スペースを要する、掘削施工を行う施工現場において、土砂ピットのための第1スペースを可及的に増加させて、十分な量の掘削土砂の一時的な集積を実現することを可能にした、土砂集積搬出システムと土砂集積搬出方法が望まれる。
【0005】
ここで、特許文献1には、掘削土砂の集積搬出設備が提案されている。この集積搬出設備は、シールド工事の施工現場に設けられ、掘削土砂を一時的に集積して、ダンプトラックなどの搬出車両に搬出される掘削土砂の集積搬出設備であり、掘削土砂を集積する土砂ピットと、土砂ピットの直上に設けられたガイドレール上を走行し、土砂ピット内の掘削土砂を搬出車両に積載する移動式搬出重機とを備えている。
移動式搬出重機は、揺動自在に支持されたバケットを有し、ガイドレールに沿って電動駆動により自走する移動式バックホウを備えている。
さらに、ガイドレールは、土砂ピットの外方を覆う防音ハウス内の2階部分に設置され、防音ハウスの2階部分の床面には掘削土砂を投入するためのホッパが設けられ、防音ハウスの1階部分は、ホッパの直下に搬出車両を進入及び退出させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-204590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の掘削土砂の集積搬出設備によれば、土砂ピットの省スペース化を図ることができるとしている。しかしながら、この集積搬出設備は、ガイドレールに沿って電動駆動により自走する移動式バックホウを必須の構成としており、一般の重機を利用しながら土砂ピットのスペースを可及的に増加させるものではなく、さらには、大掛かりな設備となってその構築費用の高騰の恐れがある。
【0008】
本発明は、掘削土砂を一時的に集積するための土砂ピットのためのスペースと、掘削土砂の集積及び搬出の際に利用される重機の作動及び移動のためのスペースを要する、掘削施工を行う施工現場において、土砂ピットのためのスペースを可及的に増加させて、十分な量の掘削土砂の一時的な集積を実現することのできる、土砂集積搬出システムと土砂集積搬出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による土砂集積搬出システムの一態様は、
掘削施工を行う施工現場に設けられている土砂ピットに対して、発生した掘削土砂を一時的に集積し、集積された該掘削土砂を搬出する、土砂集積搬出システムであって、
前記土砂ピットの上方に設けられている、ガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って走行する、走行架台と、
前記土砂ピットの周辺から前記走行架台への搭乗と、該走行架台から該土砂ピットの周辺への退避を行うとともに、前記掘削土砂の集積と搬出を行う、重機と、
前記走行架台の走行及び停止を制御する、第1制御盤とを有することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、土砂ピットの上方に設けられているガイドレールに沿って走行する走行架台に対して、掘削土砂の集積と搬出を行う重機が土砂ピットの周辺から搭乗と退避を行うように構成されていることにより、一般の重機を利用しながら、当該重機を土砂ピットの上方で作動させることができるため、土砂ピットの周囲で重機が移動や作動するためのスペースを解消して土砂ピットのスペースを可及的に増加させることができる。そのため、例えば都市部における掘削施工を行う施工現場のように、土砂ピットのための十分なスペースを確保し難い施工現場において、本態様の土砂集積搬出システムは好適となる。
ここで、土砂ピットの平面視形状には、長方形や正方形等の矩形をはじめとして、施工現場において許容されるスペースに応じた様々な形状が含まれる。また、「土砂ピットに掘削土砂が集積される」には、発生した掘削土砂が文字通り土砂ピットに集積されることの他に、土砂ピットに集積された掘削土砂に対して改良材が添加され、重機にて混合されて改良土が生成されることが含まれる。
また、ガイドレールが「土砂ピットの上方に設けられている」とは、例えば一対のガイドレールが平面視矩形の土砂ピットの延設方向(例えば、平面視矩形の土砂ピットの長手方向)に沿う一対の鋼矢板等の土留めの上に設置される形態や、一対の鋼矢板等の土留めの周辺(外側)の地盤や路盤等の上に設置される形態、土砂ピットの平面寸法内(平面視における内側)に例えば一対のガイドレールが架け渡されている形態等が含まれる。中でも、土留めの上に設置される形態や土留めの周囲の路盤等の上に設置される形態では、ガイドレールが土留めや路盤等によって安定的に支持され、さらに、土砂ピットの平面寸法内側にガイドレールが存在しないことで重機による施工性が良好になり、重機とガイドレールとの干渉も抑制できることから好ましい。
【0011】
さらに、走行架台の走行及び停止を制御する第1制御盤は、土砂ピットの周辺に設置されてもよいし、施工現場内にある作業詰め所等の管理棟に設置されてもよく、例えば、第1制御盤を操作する作業員と重機のオペレータとが掛け声合図や無線通信等によって、走行架台の走行の際は重機の作動を停止させ、走行架台が所定位置に位置決めされた後に重機の作動を開始する等の施工連係が図られるのが好ましい。
【0012】
また、本発明による土砂集積搬出システムの他の態様において、
前記重機は、下部走行体と、該下部走行体に対して旋回自在に積層されている上部旋回体と、該上部旋回体に対して回動自在に装着されているブーム及びアームと、該アームに対して回動自在に装着されているバケットを備え、
前記走行架台のうち、前記ガイドレールの延設方向に直交する幅は、前記重機の方向転換が不可能な幅であり、
前記走行架台には、前記幅を挟んで対向する一端にストッパーが設けられ、他端に前記重機の乗り入れ口が設けられており、
前記走行架台に対して前記重機が前記直交する方向から搭乗して停止姿勢を形成し、該停止姿勢の下で前記上部旋回体の旋回と、前記ブームと前記アームと前記バケットの回動を行い、該重機が前記直交する方向から前記周辺へ退避することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、走行架台におけるガイドレールの延設方向に直交する幅が重機の方向転換が不可能な幅に設定され、走行架台において当該幅を挟んで対向する一端にストッパーが設けられ、他端に重機の乗り入れ口が設けられていて、走行架台に対して当該直交する方向から重機が搭乗して停止し、重機の備える上部旋回体の旋回と、ブームとアームとバケットの回動を行って掘削土砂の集積と搬出を行うことにより、重機が走行架台から土砂ピットの内部へ落下することを防止しながら、可及的に狭いスペース内での重機の走行架台への乗り入れと退避を実現することができる。
【0014】
また、本発明による土砂集積搬出システムの他の態様は、
前記周辺と前記走行架台との間に段差があり、前記乗り入れ口において該段差をテーパー状に繋ぐスロープが設けられていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、周辺と走行架台との間に段差がある場合に、乗り入れ口において段差をテーパー状に繋ぐスロープが設けられていることにより、重機が走行架台に対して安定的かつスムーズに走行架台への乗り入れと走行架台からの退避を行うことができる。上記するように、ガイドレールが土砂ピットの延設方向に沿う一対の土留めの上に設置される形態、土留めの周囲(外側)の路盤等の上に設置される形態、土砂ピットの平面寸法内に架け渡されている形態のいずれであっても、土砂ピットの周辺の路盤や地盤と、ガイドレール上に走行自在に設置されている走行架台との間には少なからず段差が生じ得ることから、重機の重量に耐え得る剛性を備えたスロープが乗り入れ口の段差部に設置されることにより、上記効果が奏されることになる。
【0016】
また、本発明による土砂集積搬出システムの他の態様において、
前記ガイドレールは、前記延設方向に沿う前記土砂ピットの長さに対応する第1長さ区間と、さらに第2長さ区間とを備えており、
前記ガイドレールの前記第2長さ区間に前記走行架台が移動して位置合わせされ、前記バケットによる前記掘削土砂の集積と搬出が行われることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、ガイドレールが、延設方向に沿う土砂ピットの長さに対応する第1長さ区間とさらに第2長さ区間とを備え、ガイドレールの第2長さ区間に走行架台が位置合わせされて重機による掘削土砂の集積と搬出が行われることにより、特に重機による集積や搬出が困難な土砂ピットの端部領域(土留め近傍領域)における掘削土砂の集積や搬出を実行し易くできる。
【0018】
また、本発明による土砂集積搬出システムの他の態様において、
前記重機は、前記上部旋回体の旋回と、前記ブームと前記アームと前記バケットの回動を制御する、第2制御盤を備えており、
前記第1制御盤と前記第2制御盤は、双方の同時操作を不可とする、電源切替え手段を介して相互に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、重機の備える第2制御盤と、走行架台の走行及び停止を制御する第1制御盤が、双方の同時操作を不可とする、電源切替え手段を介して相互に電気的に接続されていることにより、走行架台の走行途中で重機が作動した際に生じ得る、重機の転倒事故の他、重機のブームやアーム、バケットと作業ピットの壁面(土留め等)との干渉等を効果的に抑制できる。
【0020】
また、本発明による土砂集積搬出方法の一態様は、
掘削施工を行う施工現場に設けられている土砂ピットに対して、発生した掘削土砂を一時的に集積し、集積された該掘削土砂を搬出する、土砂集積搬出方法であって、
前記土砂ピットの上方に設けられているガイドレールに沿って走行する走行架台に対して、前記土砂ピットの周辺から、前記掘削土砂の集積と搬出を行う重機が搭乗し、
前記ガイドレールに沿って前記走行架台が走行して位置合わせされ、前記重機が前記掘削土砂の集積もしくは搬出を行い、
前記走行架台から前記周辺へ前記重機が退避することを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、土砂ピットの上方に設けられているガイドレールに沿って走行する走行架台に対して、掘削土砂の集積と搬出を行う重機を土砂ピットの周辺から搭乗させるとともに退避させることにより、一般の重機を利用しながら、当該重機を土砂ピットの上方で作動させることができるため、土砂ピットの周囲で重機が移動や作動するためのスペースを解消して土砂ピットのスペースを可及的に増加させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の土砂集積搬出システムと土砂集積搬出方法によれば、掘削土砂を一時的に集積するための土砂ピットのためのスペースと、掘削土砂の集積及び搬出の際に利用される重機の作動及び移動のためのスペースを要する、掘削施工を行う施工現場において、土砂ピットのためのスペースを可及的に増加させて、十分な量の掘削土砂の一時的な集積を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る土砂集積搬出システムが適用される施工現場の一例の平面図である。
図2A図1に示す施工現場の隅部に設けられている土砂ピットのA-A矢視図である。
図2B図1に示す施工現場の隅部に設けられている土砂ピットのB-B矢視図である。
図3図2BのIII部の拡大図であって、ガイドレールの路盤への固定構造を示す断面図である。
図4】重機が土砂ピットの周辺から走行架台へ搭乗する状態と、次に、走行架台の上に停止し、上部旋回体を旋回させた状態をともに示す図である。
図5】実施形態に係る土砂集積搬出システムの一例を側方から見た側面図であって、走行架台に搭乗している重機がアームを回動させ、土砂ピット内にバケットを差し込んでいる状態を示す図である。
図6図5のVI方向矢視図であって、実施形態に係る土砂集積搬出システムを上から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態に係る土砂集積搬出システムと土砂集積搬出方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0025】
[実施形態に係る土砂集積搬出システムと土砂集積搬出方法]
図1乃至図6を参照して、実施形態に係る土砂集積搬出システムと土砂集積搬出方法の一例について説明する。
ここで、図1は、実施形態に係る土砂集積搬出システムが適用される施工現場の一例の平面図である。また、図2Aは、図1に示す施工現場の隅部に設けられている土砂ピットのA-A矢視図であり、図2Bは、図1に示す施工現場の隅部に設けられている土砂ピットのB-B矢視図であり、図3は、図2BのIII部の拡大図であって、ガイドレールの路盤への固定構造を示す断面図である。また、図4は、重機が土砂ピットの周辺から走行架台へ搭乗する状態と、次に、走行架台の上に停止し、上部旋回体を旋回させた状態をともに示す図である。さらに、図5は、実施形態に係る土砂集積搬出システムの一例を側方から見た側面図であって、走行架台に搭乗している重機がアームを回動させ、土砂ピット内にバケットを差し込んでいる状態を示す図であり、図6は、図5のVI方向矢視図であって、実施形態に係る土砂集積搬出システムを上から見た平面図である。
【0026】
図1に示す施工現場Dは、例えば都市部においてニューマチックケーソン工法によって地盤を所定深度まで掘削し、地下から地上に亘って立設する新規の建築物を建築する現場である。図示するように、施工現場Dの中央には、複数のニューマチックケーソンM3によって掘削施工される掘削施工エリアE1があり、その周囲の2箇所の狭いエリアに、土砂集積搬出エリアE2,E3が設けられている。
【0027】
一方の土砂集積搬出エリアE2には、鋼矢板からなる土留めTにて仕切られた土砂ピットPが形成されており、掘削施工エリアE1にて発生した掘削土砂の一部が一時的に集積されるようになっている。また、土砂ピットPの周囲には、掘削土砂の集積と搬出を行う複数(図示例は2台)のバックホウM1,M2(重機の一例)が作動及び移動自在に設置されている。
【0028】
一方、他方の土砂集積搬出エリアE3にも、鋼矢板からなる土留め15にて仕切られた、平面視矩形の土砂ピット10が形成されており、この土砂ピット10においても、掘削施工エリアE1にて発生した掘削土砂の一部が一時的に集積されるようになっている。ここで、図示例の施工現場Dにおける土砂ピット10,Pにおける掘削土砂の一時的な集積とは、施工現場Dのエリアにおける地下水位が比較的高く、ニューマチックケーソン工法にて掘削された掘削土砂が水分を多量に含んでいる場合に、土砂ピット10,Pに掘削土砂を集積し、集積された掘削土砂に対して改良材を添加して混合し、改良土を生成することを意味している。土砂ピット10,P内において、ある程度の改良土が生成され、集積された段階で、改良土がダンプトラック等の車両に積み込まれ、場外へ搬出されることになる。
【0029】
図1に示すように、一方の土砂ピット10の周囲のスペースは、他方の土砂ピットPの周囲のスペースに比べて狭く、従って、他方の土砂ピットPのように、その周囲にバックホウM1,M2の移動や作動のためのスペースを確保しようとすると、土砂ピット10の平面寸法が非常に狭くなり、十分な掘削土砂の集積を図ることが難しくなる。そこで、土砂ピット10には、図5図6に示す土砂集積搬出システム100を設けることにより、土砂ピット10の周囲におけるバックホウの作動スペースを解消して、土砂ピット10の平面寸法を可及的に広くするようにしている。
【0030】
図1に戻り、土砂集積搬出エリアE3には、平面視矩形の土砂ピット10が設けられており、そのA-A矢視図とB-B矢視図である図2A図2Bに示すように、所定深度に床付けされた立方体空間を有している。図1に示すように、平面視矩形の土留め15の周囲のうち、当該矩形の長手方向に沿う一対の土留め15の外側には、ガイドレール20が設置されており、この長手方向は図2Aに示すようにガイドレール20の延設方向となっている。尚、図示を省略するが、例えば土留め15の頭部にキャップが取り付けられ、キャップにガイドレールが設置されている形態、すなわち、土留め15がガイドレールを支持する形態であってもよい。
【0031】
図2BとそのIII部の拡大図である図3に示すように、ガイドレール20はH形鋼により形成されており、ガイドレール20を支持する鉄筋コンクリート製の路盤22が地盤G内に設けられている。路盤22は、ガイドレール20の延設方向に沿って延びる帯状を呈しており、延設方向に延びる複数の主筋23と、複数の主筋23を包囲する複数のフープ筋24がコンクリートに埋設されることにより形成されている。
【0032】
ガイドレール20の下方フランジが一対のL形のアンカーボルト21を介して路盤22に固定されている。このアンカーボルト21は、ガイドレール20の延設方向に間隔を置いて複数設けられている。
【0033】
土砂集積搬出システム100は、既に説明したガイドレール20と、ガイドレール20に沿って走行する走行架台30と、土砂ピット10の周辺から走行架台30への搭乗と、走行架台30から土砂ピット10の周辺への退避を行うとともに、掘削土砂の集積と搬出を行うバックホウ40(重機の一例)と、走行架台30の走行及び停止を制御する第1制御盤50とを有する。
【0034】
一対のガイドレール20には、図4乃至図6に示す走行架台30が走行自在に設置されている。走行架台30は、平面視正方形のステージ31(図6参照)と、ステージ31の下方に取り付けられている一対のモータ36と、各モータ36の駆動によって直接回転される車輪35A、モータ36の駆動によって直接回転されない車輪35Bを備えており、2つの車輪35A,35Bが1組となって各ガイドレール20に設置されている。
【0035】
ステージ31の上面には、その外郭に沿って手摺り32が取り付けられている。また、ステージ31のうち、一方のガイドレール20側の一端31aにはストッパー34が設けられ、他端31bにある手摺り32には、バックホウ40の乗り入れ口33が設けられている。
【0036】
ステージ31のうち、ガイドレール20の延設方向に直交する方向の幅は、バックホウ40の下部走行体41の方向転換が不可能な幅に設定されている。
【0037】
バックホウ40は、下部走行体41と、下部走行体41に対してY1方向に旋回自在に積層されている上部旋回体43と、上部旋回体43に対してY2方向に回動自在に装着されているブーム46と、ブーム46に対してY3方向に回動自在に装着されているアーム47と、アーム47に対してY4方向に回動自在に装着されているバケット48(アタッチメント)を備えている。上部旋回体43に対してブームシリンダ49Aを介してブーム46が回動し、ブーム46に対してアームシリンダ49Bを介してアーム47が回動し、アーム47に対してバケットシリンダ49Cを介してバケット48が回動するように構成されている。
【0038】
上部旋回体43にはオペレータが搭乗するキャビン45が設けられており、キャビン45には不図示の第2制御盤が装備されている。キャビン45に搭乗したオペレータによる操作によって、第2制御盤を介してバックホウ40を構成する各部の作動が制御されるようになっている。
【0039】
図4に示すように、バックホウ40は、走行架台30のステージ31に対して、乗り入れ口33を介して、ガイドレール20の延設方向に直交する方向からX1方向に搭乗する。また、ステージ31からの退避の際は、同様に当該直交する方向で土砂ピット10の周辺へ退避する。
【0040】
ここで、土砂ピット10の周辺の地表面と、ガイドレール20の上に走行自在に設置されている走行架台30との間には、所定高さの段差Qが存在する。そこで、乗り入れ口33において、段差Qをテーパー状に繋ぐスロープ60が設置される。
【0041】
スロープ60は、バックホウ40が通過する際の耐荷重性を有している、鋼製ブロックや硬質な樹脂ブロック、発泡スチロール(EPS:Expanded Poly-Styol)ブロック等を適用できる。
【0042】
バックホウ40は、土砂ピット10の周辺からスロープ60を介してX1方向に走行架台30に搭乗し、ステージ31の一端31aにあるストッパー34に下部走行体41の一部が当接した状態で停止姿勢を形成する。次いで、停止姿勢の下で上部旋回体43をY1方向へ旋回することにより、掘削土砂の集積や搬出のための作動準備姿勢が形成される。
【0043】
その後、図5に示すように、バックホウ40が搭乗している走行架台30が一対のガイドレール20に沿って所望位置まで移動して停止され、バックホウ40のブーム46やアーム47,バケット48の回動によって土砂ピット10内における掘削土砂の集積と搬出が行われる。ガイドレール20の所望位置に走行架台30が順次移動することにより、土砂ピット10の全域における掘削土砂の集積と搬出が可能になる。
【0044】
ここで、図5及び図6に示すように、ガイドレール20は、延設方向に沿う土砂ピット10の長手方向の長さに対応する第1長さ区間20Aと、その両端部側にある2つの第2長さ区間20Bとを備えている。
【0045】
このように、ガイドレール20が第2長さ区間20Bを備えた長さを有することにより、例えば土砂ピット10の短手方向の土留め15の近傍における掘削土砂の集積や搬出を行う際には、走行架台30が第2長さ区間20Bに位置合わせされることにより、土留め15の近傍におけるバックホウ40による掘削土砂の集積と搬出を実行し易くできる。
【0046】
また、第2長さ区間20Bの端部にはストッパー25が設けられており、走行架台30の端部にあるアブソーバ37がストッパー25に衝撃なく当接することにより、走行架台30がガイドレール20の端部で停止するようになっている。
【0047】
また、バックホウ40のキャビン45に装備されている第2制御盤と、走行架台30の走行及び停止を制御する第1制御盤50は、双方の同時操作を不可とする、不図示の電源切替え手段を介して相互に電気的に接続されている。
【0048】
ここで、第1制御盤50と第2制御盤はいずれもコンピュータにより構成されており、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、無線通信装置、表示装置、及び入力装置等を有し、それらがシステムバスにてデータ通信可能に接続されている。ROMには、各種のプログラムやプログラムによって利用されるデータ等が記憶されている。RAMは、ROMに記憶されているプログラムをロードするための記憶領域や、ロードされたプログラムのワーク領域として用いられる。
【0049】
例えば、第1制御盤50に電源切替え手段が装備され、作業員が電源切替え手段を操作して走行架台30のモータ36をON制御すると、バックホウ40の第2制御盤の電源がOFF制御される。そのため、走行架台30の走行の途中で、バックホウ40の各部が動作することはない。
【0050】
次いで、モータ36を駆動して走行架台30をガイドレール20に沿って所望位置まで移動させて停止した後、作業員が電源切替え手段を操作して走行架台30のモータ36をOFF制御すると、バックホウ40の第2制御盤の電源がON制御される。
【0051】
作業員からバックホウ40のオペレータに対して、バックホウ40の各部の作動が可能になった旨の連絡が入ると、オペレータはバックホウ40を作動させ、土砂ピット10における掘削土砂の集積と搬出を行う。このバックホウ40の作動の途中で、走行架台30が走行することはない。
【0052】
以上の操作を順次繰り返すことにより、走行架台30とバックホウ40の同時操作が不可とされた状態で、走行架台30による所望位置までの移動と、所望位置におけるバックホウ40による掘削土砂の集積と搬出を行うことができる。このことにより、例えば走行架台30の走行途中でバックホウ40が作動した際に生じ得る、バックホウ40の転倒事故や、バックホウ40のバケット48等と土留め15等との干渉を効果的に抑制でき、施工安全性を担保することができる。
【0053】
土砂集積搬出システム100によれば、走行架台30のうち、ガイドレール20の延設方向に直交する幅がバックホウ40の方向転換が不可能な幅に設定されていて、走行架台30に対してバックホウ40がこの直交する方向から搭乗してストッパー34に当接して停止姿勢を形成し、停止姿勢の下で上部旋回体43の旋回とブーム46等の回動を行いながら掘削土砂の集積と搬出を行うことにより、土砂ピット10の周囲でバックホウ40が移動や作動するためのスペースを解消して、土砂ピット10のスペースを可及的に増加させることができる。
【0054】
さらに、バックホウ40が走行架台30から土砂ピット10の内部へ落下することを防止しながら、可及的に狭いスペース内でのバックホウ40の走行架台30への乗り入れと退避を実現することができる。
【0055】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0056】
10:土砂ピット
15:土留め
20:ガイドレール
20A:第1長さ区間
20B:第2長さ区間
21:アンカーボルト
22:路盤
23:主筋
24:フープ筋
25:ストッパー
30:走行架台
31:ステージ
31a:一端
31b:他端
32:手摺り
33:乗り入れ口
34:ストッパー
35A,35B:車輪
36:モータ
37:アブソーバ
40:重機(バックホウ)
41:下部走行体
43:上部旋回体
45:キャビン
46:ブーム
47:アーム
48:バケット(アタッチメント)
49A:ブームシリンダ
49B:アームシリンダ
49C:バケットシリンダ
50:第1制御盤
60:スロープ
100:土砂集積搬出システム
D:施工現場
E1:掘削施工エリア
E2,E3:土砂集積搬出エリア
P:土砂ピット
M1:ニューマチックケーソン
M2,M3:重機(バックホウ)
T:土留め
G:地盤
Q:段差
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6