(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090546
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】塗装物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/36 20060101AFI20240627BHJP
C08G 18/61 20060101ALI20240627BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20240627BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240627BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20240627BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240627BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240627BHJP
C09D 5/14 20060101ALI20240627BHJP
C09D 175/06 20060101ALI20240627BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20240627BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20240627BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240627BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20240627BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B05D1/36 Z
C08G18/61
C08G18/40 009
C09D5/00 D
C09D5/16
C09D175/04
C09D183/04
C09D5/14
C09D175/06
C09D167/00
C09K3/18 104
B05D7/00 K
B05D5/00 H
B05D5/00 Z
B05D7/24 302Y
B05D7/24 302T
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206520
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(71)【出願人】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 敬仁
(72)【発明者】
【氏名】中川 祐登
(72)【発明者】
【氏名】氏山 晃一郎
(72)【発明者】
【氏名】小松 利豪
【テーマコード(参考)】
4D075
4H020
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AC52
4D075AE03
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4J038NA07
4J038PA07
4J038PB05
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】優れた撥水性および防汚性を示し、かつ、これらの性能の耐久性に優れる塗装物品を提供する。
【解決手段】有機基材の表面に、プライマーを付与する工程と、前記プライマーが付与された前記有機基材の表面に、撥水防汚剤を付与する工程と、前記有機基材の表面に、前記プライマーおよび前記撥水防汚剤を固定する工程と、を備え、前記プライマーは、水酸基含有樹脂と、ポリイソシアネート化合物と、を含み、前記撥水防汚剤は、一方の末端にイソシアネート基と反応し得る反応性基を有し、他方の末端にイソシアネート基に対して非反応性の疎水性基を有する、ポリシロキサン化合物を含み、前記固定する工程では、前記ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基と、前記水酸基含有樹脂が有する水酸基および前記ポリシロキサン化合物が有する前記反応性基と、が反応する、塗装物品の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機基材の表面に、プライマーを付与する工程と、
前記プライマーが付与された前記有機基材の表面に、撥水防汚剤を付与する工程と、
前記有機基材の表面に、前記プライマーおよび前記撥水防汚剤を固定する工程と、を備え、
前記プライマーは、水酸基含有樹脂と、ポリイソシアネート化合物と、を含み、
前記撥水防汚剤は、一方の末端にイソシアネート基と反応し得る反応性基を有し、他方の末端にイソシアネート基に対して非反応性の疎水性基を有する、ポリシロキサン化合物を含み、
前記固定する工程では、前記ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基と、前記水酸基含有樹脂が有する水酸基および前記ポリシロキサン化合物が有する前記反応性基と、が反応する、塗装物品の製造方法。
【請求項2】
前記ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基と前記水酸基含有樹脂が有する水酸基との当量比:NCO/OHは、1.0超である、請求項1に記載の塗装物品の製造方法。
【請求項3】
前記反応性基は、水酸基およびアミノ基の少なくとも一方である、請求項1に記載の塗装物品の製造方法。
【請求項4】
前記ポリシロキサン化合物は、前記一方の末端に2以上の前記反応性基を有する、請求項1に記載の塗装物品の製造方法。
【請求項5】
前記ポリイソシアネート化合物は、芳香族炭化水素基を有する、請求項1に記載の塗装物品の製造方法。
【請求項6】
前記水酸基含有樹脂は、220mgKOH/g以上600mgKOH/g以下の水酸基価を有する、請求項1に記載の塗装物品の製造方法。
【請求項7】
前記プライマーおよび前記撥水防汚剤の少なくとも一方は、さらに、抗菌剤および抗ウイルス剤の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の塗装物品の製造方法。
【請求項8】
前記水酸基含有樹脂は、水酸基含有ポリエステル樹脂を含む、請求項1に記載の塗装物品の製造方法。
【請求項9】
前記有機基材は、繊維強化プラスチックを含む、請求項1に記載の塗装物品の製造方法。
【請求項10】
前記有機基材は、住宅設備に用いられる部材および建築物に用いられる部材の少なくとも一方の少なくとも一部を形成する有機基材であり、
前記住宅設備に用いられる部材は、浴槽、浴室の壁、浴室のカウンターおよび洗面化粧台よりなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記建築物に用いられる部材は、サイディング材およびカーポートの少なくとも一方である、請求項1に記載の塗装物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリシロキサン化合物を含む撥水防汚剤が知られている。例えば、特許文献1は、両末端反応型シリコーンオイルを含むコーティング剤を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のコーティング剤による撥水防汚性は低下し易い。
【0005】
本発明は上記課題を解決するものであり、優れた撥水性および防汚性を示し、かつ、これらの性能の耐久性に優れる塗装物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
有機基材の表面に、プライマーを付与する工程と、
前記プライマーが付与された前記有機基材の表面に、撥水防汚剤を付与する工程と、
前記有機基材の表面に、前記プライマーおよび前記撥水防汚剤を固定する工程と、を備え、
前記プライマーは、水酸基含有樹脂と、ポリイソシアネート化合物と、を含み、
前記撥水防汚剤は、一方の末端にイソシアネート基と反応し得る反応性基を有し、他方の末端にイソシアネート基に対して非反応性の疎水性基を有する、ポリシロキサン化合物を含み、
前記固定する工程では、前記ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基と、前記水酸基含有樹脂が有する水酸基および前記ポリシロキサン化合物が有する前記反応性基と、が反応する、塗装物品の製造方法。
【0007】
[2]
前記ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基と前記水酸基含有樹脂が有する水酸基との当量比:NCO/OHは、1.0超である、上記の[1]に記載の表面処理剤。
【0008】
[3]
前記反応性基は、水酸基およびアミノ基の少なくとも一方である、上記の[1]に記載の表面処理剤。
【0009】
[4]
前記ポリシロキサン化合物は、前記一方の末端に2以上の前記反応性基を有する、上記の[1]に記載の表面処理剤。
【0010】
[5]
前記ポリイソシアネート化合物は、芳香族炭化水素基を有する、上記の[1]に記載の表面処理剤。
【0011】
[6]
前記水酸基含有樹脂は、220mgKOH/g以上600mgKOH/g以下の水酸基価を有する、上記の[1]に記載の表面処理剤。
【0012】
[7]
前記プライマーおよび前記撥水防汚剤の少なくとも一方は、さらに、抗菌剤および抗ウイルス剤の少なくとも一方を含む、上記の[1]に記載の塗装物品の製造方法。
【0013】
[8]
前記水酸基含有樹脂は、水酸基含有ポリエステル樹脂を含む、上記の[1]に記載の塗装物品の製造方法。
【0014】
[9]
前記有機基材は、繊維強化プラスチックを含む、上記の[1]に記載の塗装物品の製造方法。
【0015】
[10]
前記有機基材は、住宅設備に用いられる部材および建築物に用いられる部材の少なくとも一方の少なくとも一部を形成する有機基材であり、
前記住宅設備に用いられる部材は、浴槽、浴室の壁、浴室のカウンターおよび洗面化粧台よりなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記建築物に用いられる部材は、サイディング材およびカーポートの少なくとも一方である、上記の[1]に記載の塗装物品の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、優れた撥水性および防汚性を示し、かつ、これらの性能の耐久性に優れる塗装物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[塗装物品の製造方法]
本開示に係る塗装物品は、有機基材の表面に、プライマーを付与する工程と、プライマーが付与された有機基材の表面に、撥水防汚剤を付与する工程と、有機基材の表面に、プライマーおよび撥水防汚剤を固定する工程と、を備える方法により製造される。
【0018】
プライマーは、水酸基含有樹脂と、ポリイソシアネート化合物と、を含む。撥水防汚剤は、一方の末端にイソシアネート基と反応し得る反応性基を有し、他方の末端にイソシアネート基に対して非反応性の疎水性基を有する、ポリシロキサン化合物を含む。
【0019】
固定する工程では、ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基と、水酸基含有樹脂が有する水酸基およびポリシロキサン化合物が有する反応性基と、が反応する。
【0020】
本開示に係る方法によれば、有機基材に優れた撥水性および防汚性が付与される。防汚性は、汚れ、特には水道水に含まれ得るカルシウムなどのミネラル成分(水垢)が付着し難い性質、あるいは付着しても容易に除去できる性質をいう。さらに、本開示に係る方法によれば、撥水性および防汚性が持続する。例えば、水に曝されたり、市販の洗浄剤で洗浄されたり、摩擦されたりして、塗装物品に外的な負荷がかかった場合にも、有機基材は優れた撥水性および防汚性を示す。以下、この優れた撥水性および防汚性が持続する性質を、耐久性と称する。
【0021】
撥水性および防汚性、ならびにこれらの耐久性が向上する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
【0022】
プライマーに含まれるポリイソシアネート化合物は、水酸基含有樹脂同士を架橋して、硬化層を形成する。硬化層は、有機基材に密着する。さらに、硬化層は、塗装物品の耐薬品性および耐摩擦性を向上させる。硬化層が有機基材に密着していること、塗装物品の耐薬品性および耐摩擦性が高いことは、耐久性の向上に貢献する。
【0023】
硬化層を形成するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基は、水酸基含有樹脂が有する水酸基とともに、後で付与される撥水防汚剤に含まれるポリシロキサン化合物が有する反応性基とも反応する。そのため、ポリシロキサン化合物は硬化層の表面近傍に固定される。ポリシロキサン化合物は、有機基材に撥水性および防汚性を付与する。ポリシロキサン化合物が硬化層の表面近傍に偏在することにより、撥水性と防汚性とがより効果的に発揮される。
【0024】
さらに、本開示で使用されるポリシロキサン化合物は、両端部のうち一方にのみ反応性基を有している。そのため、固定工程において、ポリシロキサン化合物の他方の端部はポリイソシアネート化合物と反応せず、一方の端部でのみ硬化層に固定される。つまり、ポリシロキサン化合物の他方の端部はフリーな状態で存在しているため、ポリシロキサン化合物には摩擦等の外力がかかり難くなって、ポリシロキサン化合物の脱落が抑制される。その結果、耐久性が向上する。
【0025】
加えて、プライマーと撥水防汚剤とが、順次、有機基材に付与されるため、プライマーによって形成される硬化層は、有機基材の表面に効率よく形成される。後に付与されるポリシロキサン化合物は、この硬化層の表面近傍に効率よく固定される。
以上の複数の要因によって、撥水性および防汚性、ならびにこれらの耐久性が向上すると考えられる。
【0026】
本開示に係る塗装物品に対する水の接触角は、95°超であり得、97°以上であり得る。水の接触角が95°超であると、塗装物品は、優れた撥水性を有していると言える。優れた撥水性により、防汚性も発揮される。水の接触角は、JIS R 3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」(静滴法)に準じて、測定することができる。
【0027】
(1)プライマーの付与工程
有機基材の表面にプライマーを付与する。プライマーは、水酸基含有樹脂と、ポリイソシアネート化合物と、を含む。プライマーは、さらに硬化触媒を含み得る。プライマーは、さらに溶媒を含み得る。
【0028】
(有機基材)
有機基材は、有機材料により形成される。有機基材の形状は特に限定されず、用途に応じた形状を有していてよい。有機材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂およびエラストマーが挙げられる。有機材料は、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。
【0029】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリル、ポリ塩化ビニル、および、いわゆるエンジニアリングプラスチックが挙げられる。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、超高分子量ポリエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマーおよびポリエーテルエーテルケトンが挙げられる。
【0030】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、不飽和ポリエステル、および熱硬化性ポリイミドが挙げられる。
【0031】
エラストマーとしては、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-アクリロニトリル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリスチレン、およびアクリロニトリル-スチレン-アクリレートが挙げられる。
【0032】
有機基材は、有機材料とともに繊維を含んでいてよい。有機基材は、熱可塑性樹脂と繊維とを混合して得られる繊維強化プラスチック(FRP)を含んでいてよい。
【0033】
有機材料と混合される繊維としては、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、およびセルロース繊維が挙げられる。繊維は、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。
【0034】
FRPは、例えば、シートモールディングコンパウンド(SMC)成形法、BMC(バルクモールディングコンパウンド)成形法、レジンインフュージョン(RIMP)成形法、プリプレグコンプレッションモールディング(PCM法)によって成形される。
【0035】
有機基材は、住宅設備に用いられる部材および建築物に用いられる部材の少なくとも一方の少なくとも一部を形成するものであってよい。住宅設備に用いられる部材としては、例えば、浴槽、浴室の壁、浴室のカウンターおよび洗面化粧台よりなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。建築物に用いられる部材としては、例えば、サイディング材およびカーポートの少なくとも一方が挙げられる。
【0036】
(プライマー)
プライマーは、水酸基含有樹脂と、ポリイソシアネート化合物と、を含む。
【0037】
≪水酸基含有樹脂≫
水酸基含有樹脂は、1以上の水酸基を有する。水酸基含有樹脂としては、具体的には、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリエーテル樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、水酸基含有アクリル樹脂および水酸基含有ポリエステル樹脂であってよい。架橋密度を高め易い点で、水酸基含有ポリエステル樹脂であってよい。
【0038】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、例えば、多価アルコールと多塩基酸またはその無水物とを重縮合(エステル反応)することにより得られる。市販の水酸基含有ポリエステル樹脂を用いてもよい。
【0039】
多価アルコールは特に限定されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ヒドロキシアルキル化ビスフェノールA、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピル-2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオネート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)ジメチルヒダントイン、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-(ヒドロキシエチル)イソシアネートが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0040】
多塩基酸またはその無水物は特に限定されず、例えば、フタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、無水コハク酸、乳酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、無水エンド酸が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0041】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、ラクトン、油脂または脂肪酸、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などを用いて変性されていてもよい。油脂または脂肪酸は特に限定されず、例えば、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヤシ油、コーン油、綿実油、亜麻仁油、荏の油、ケシ油、紅花油、大豆油、桐油などの油脂、またはこれらの油脂から抽出した脂肪酸が挙げられる。
【0042】
水酸基含有樹脂の水酸基価は特に限定されない。塗膜性能(特に、耐水性)の観点から、水酸基含有樹脂(a11)の水酸基価は、220mgKOH/g以上であってよく、300mgKOH/g以上であってよく、350mgKOH/g以上であってよい。水酸基含有樹脂の水酸基価は、600mgKOH/g以下であってよく、580mgKOH/g以下であってよく、550mgKOH/g以下であってよい。一態様において、水酸基含有樹脂(a11)の水酸基価は、220mgKOH/g以上600mgKOH/g以下である。水酸基価は、JIS K5601 2-1 酸価測定方法に基づいて算出される。具体的には、水酸基価は、水酸基含有樹脂の固形分1g中の遊離酸を中和するのに要する、水酸化カリウム(KOH)のmg数である。
【0043】
水酸基含有樹脂の数平均分子量は、例えば、350以上である。これにより、得られる塗膜の硬度が向上し易い。水酸基含有樹脂の数平均分子量は、500以上であってよい。水酸基含有樹脂の数平均分子量は、例えば、4,000以下である。これにより、プライマーの過度な粘度上昇が抑制され易くなって、塗布し易い。水酸基含有樹脂の数平均分子量は、2,000以下であってよい。一態様において、水酸基含有樹脂の数平均分子量は、350以上4,000以下である。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される、スチレンホモポリマー換算値である。
【0044】
水酸基含有樹脂のプライマーにおける固形分濃度は、0.1質量%以上であってよく、1質量%以上であってよい。これにより、塗膜の耐久性がより向上し得る。水酸基含有樹脂の固形分濃度は、10質量%以下であってよく、7質量%以下であってよく、5質量%以下であってよい。これにより、塗膜の外観が向上し得る。一態様において、水酸基含有樹脂のプライマーにおける固形分濃度は、0.1質量%以上10質量%以下である。
【0045】
≪ポリイソシアネート化合物≫
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族炭化水素基を有するポリイソシアネート、これらポリイソシアネートの誘導体が挙げられる。芳香族炭化水素基を有するポリイソシアネートとしては、分子中にイソシアネート基に結合していない芳香環を有する脂肪族ポリイソシアネート(芳香脂肪族ポリイソシアネート)、イソシアネート基に結合する芳香環を有する芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0046】
ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDIが挙げられる。ポリイソシアネート化合物は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0047】
なかでも、有機基材との密着性が高まり易い点で、芳香族炭化水素基を有するポリイソシアネートであってよく、芳香脂肪族ポリイソシアネートであってよい。
【0048】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)などの脂肪族ジイソシアネート;2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートが挙げられる。
【0049】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)などの脂環族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートが挙げられる。
【0050】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、m-またはp-キシリレンジイソシアネート、ω,ω'-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-または1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)などの芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートが挙げられる。
【0051】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4-TDI)もしくは2,6-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6-TDI)もしくはその混合物、4,4'-トルイジンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4',4''-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート;4,4'-ジフェニルメタン-2,2',5,5'-テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートが挙げられる。
【0052】
ポリイソシアネート化合物は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0053】
ポリイソシアネート化合物として、上記のポリイソシアネートまたはその誘導体のプレポリマーを使用してもよい。プレポリマーは、ポリイソシアネートまたはその誘導体と、これと反応し得る化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させることにより得られる。ポリイソシアネートまたはその誘導体と反応し得る化合物は、水酸基、アミノ基などの活性水素基を有する化合物である。上記化合物としては、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水が挙げられる。
【0054】
ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基と水酸基含有樹脂が有する水酸基との当量比:NCO/OHは、1.0超であってよい。イソシアネート基の割合が大きいと、ポリイソシアネート化合物が、後に付与されるポリシロキサン化合物とも反応し易くなるため、撥水防汚性の耐久性がより向上し得る。当量比:NCO/OHは、1.1以上であってよく、1.2以上であってよい。当量比:NCO/OHは、3以下であってよく、2以下であってよい。一態様において、当量比:NCO/OHは、1.1以上3以下である。
【0055】
ポリイソシアネート化合物および水酸基含有樹脂は、当量比:NCO/OHが1.0超になるような割合で、プライマーに配合される。
【0056】
ポリイソシアネート化合物のプライマーにおける固形分濃度は、0.1質量%以上であってよく、1質量%以上であってよい。これにより、塗膜の耐久性が向上し得る。ポリイソシアネート化合物の固形分濃度は、10質量%以下であってよく、7質量%以下であってよく、5質量%以下であってよい。これにより、塗膜の外観が向上し得る。一態様において、ポリイソシアネート化合物のプライマーにおける固形分濃度は、0.1質量%以上10質量%以下である。
【0057】
≪硬化触媒≫
プライマーは、硬化触媒を含んでよい。硬化触媒は、固定工程において、ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基と、水酸基含有樹脂が有する水酸基およびポリシロキサン化合物が有する反応性基との反応を促進する。
【0058】
促進効果の観点から、硬化触媒としては、例えば、Bi、Zn、Al、ZrおよびSnよりなる群から選択される金属元素を含む有機金属触媒の少なくとも1種が挙げられる。
【0059】
Biを含む有機金属触媒としては、例えば、ビスマスカルボン酸およびその塩が挙げられる。Znを含む有機金属触媒として、例えば、亜鉛錯体触媒が挙げられる。Alを含む有機金属触媒としては、例えば、アルミニウム錯体触媒が挙げられる。Zrを含む有機金属触媒としては、例えば、ジルコニウムキレート触媒が挙げられる。Snを含む有機金属触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテートなどのジアルキルスズジカルボキシレート;ジブチルスズオキサイドなどのスズオキサイド化合物;2-エチルヘキサン酸スズなどのスズカルボン酸塩が挙げられる。
【0060】
硬化触媒の配合量は、例えば、水酸基含有樹脂100質量部に対して0.05質量部以上であり、0.1質量部以上であってよい。これにより、上記の反応が進行し易くなって、撥水防汚性およびその耐久性が向上し得る。硬化触媒の配合量は、例えば、水酸基含有樹脂100質量部に対して1質量部以下であり、0.5質量部以下であってよい。これにより、ポットライフが長くなって、利便性が向上し得る。一態様において、硬化触媒の配合量は、水酸基含有樹脂100質量部に対して0.05質量部以上1質量部以下である。
【0061】
≪有機溶媒≫
プライマーは、有機溶媒を含んでよい。有機溶媒としては、例えば、n-ヘプタン、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサン、キシレン、トルエンなどの炭化水素類;メチルアルコール、n-ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル類;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセチルアセトンなどのケトン類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル類が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0062】
≪抗菌剤および抗ウイルス剤≫
プライマーは、抗菌剤および抗ウイルス剤の少なくとも一方を含んでよい。これにより、塗装物品に抗菌性および/または抗ウイルス性を付与できる。
【0063】
抗菌剤および/または抗ウイルス剤は、無機系であってよく有機系であってもよい。耐久性の観点から、無機系であってよい。
【0064】
無機系の抗菌剤および/または抗ウイルス剤としては、例えば、金属単体、金属塩、金属酸化物、金属水和物が挙げられる。金属種としては、例えば、Cu(銅)およびZn(亜鉛)、Ti(チタン)、Pt(白金)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0065】
無機系の抗菌剤および/または抗ウイルス剤は、粒子状の担体に担持されていてもよい。担体としては、例えば、ガラス、二酸化ケイ素、酸化チタン、ケイ素粒子、酸化アルミニウム、ゼオライトが挙げられる。
【0066】
無機系の抗菌剤および/または抗ウイルス剤は、粒子状であり得る。無機系の抗菌剤および/または抗ウイルス剤、あるいは、これを担持した担体の平均粒子径は、例えば、1μmである。上記の平均粒子径は、5nm以上であってよい。平均粒子径は、1次粒子径であって、レーザ回折・散乱法により得られた体積基準の粒度分布における50%平均粒子径(D50)である。
【0067】
有機系の抗菌剤および/または抗ウイルス剤としては、例えば、フェノール系、ピリジン系、トリアジン系、ニトリル系、チアゾール系、アルコール系、アルデヒド系、ジスルフィド系、カルボン酸系、エステル系、エーテル系、四級アンモニウム塩系の化合物が挙げられる。具体例としては、イソプロピルメチルフェノール、チモール、ヘキサクロロフェン、パラクロルメタクレゾール、オレイン酸カリウム、1-ペンタスルホン酸ナトリウム、1-デカンスルホン酸ナトリウム、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウム、セチルリン酸ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、トリクロカルバン、トリクロサン、ハロカルバン、パラオキシ安息香酸エステル等が挙げられる。
【0068】
抗菌剤および/または抗ウイルス剤の有効成分の配合量は、例えば、プライマーの固形分100質量部に対して、0.001質量部以上であり、0.05質量部以上であってよく、0.1質量部以上であってよい。抗菌剤および/または抗ウイルス剤の有効成分の配合量は、例えば、プライマーの固形分100質量部に対して10質量部以下であり、5質量部以下であってよく、1質量部以下であってよい。一態様において、抗菌剤および/または抗ウイルス剤の有効成分の配合量は、プライマーの固形分100質量部に対して0.001質量部以上10質量部以下である。
【0069】
(付与方法)
プライマーの付与方法は特に限定されない。付与方法としては、例えば、浸漬および塗布が挙げられる。塗布方法としては、例えば、コーティング法およびスプレー法が挙げられる。種々の有機基材に適用できる点で、スプレー法であってよい。
【0070】
(2)撥水防汚剤の付与工程
有機基材の表面に撥水防汚剤を付与する。
このとき、先に付与されているプライマーは、有機基材の表面近傍に留まっている。撥水防汚剤は、このプライマーを覆うように付与される。これにより、プライマーに含まれるポリイソシアネート化合物とポリシロキサン化合物とが反応し易くなる。撥水防汚剤の付与量は特に限定されない。
【0071】
(撥水防汚剤)
撥水防汚剤は、有機基材に撥水性と防汚性とを付与する。撥水防汚剤は、ポリシロキサン化合物を含む。
【0072】
≪ポリシロキサン化合物≫
ポリシロキサン化合物は、主鎖としてシロキサン結合(-O-Si-)を有し、側鎖の全部または一部として有機基を有する。本開示で用いられるポリシロキサン化合物は、一方の末端にイソシアネート基と反応し得る反応性基を有し、他方の末端にイソシアネート基に対して非反応性の疎水性基を有する。両端部のうち一方にのみ反応性基があることにより、疎水性基を有機基材の外部に向けて配置することが容易となって、撥水性および防汚性が向上する。さらに、ポリシロキサン化合物は、他方の端部がフリーな状態で有機基材に固定されるため、外的な負荷を受けても脱落し難い。
【0073】
ポリシロキサン化合物の側鎖としては、例えば、炭素数1~10の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は、芳香環、非芳香環および脂肪族炭化水素基よりなる群から選択される1つを有していてよい。脂肪族炭化水素基は、飽和していてよく、不飽和であってもよい。
【0074】
側鎖は、加水分解性シリル基を含まないことが望ましい。ポリシロキサン化合物同士の縮重合が抑制されるためである。ポリシロキサン化合物同士の重合が抑制されると、ポリシロキサン化合物の有機基材上での自由度が維持され易いため、耐久性が向上し易い。同様の観点から、側鎖は、重合性基を含まないことが望ましい。重合性基としては、例えば、エポキシ基、グリシジル基、アルケニル基、アルキニル基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、アリル基が挙げられる。側鎖は、後述するイソシアネート基と反応し得る反応性基を含まないことが望ましい。これにより、ポリシロキサン化合物は、一方の端部でのみ有機基材に固定されるため、耐久性が向上し易い。
【0075】
側鎖は、炭素数1~3のアルキル基またはフェニル基であってよい。側鎖は、いずれも炭素数1~3のアルキル基であってよく、メチル基であってよい。側鎖は、置換されていてよいし、置換されてなくてよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アシル基、ニトロ基、スルフォニル基が挙げられる。置換基もまた、加水分解性シリル基、重合性基および反応性基を含まないことが望ましい。
【0076】
反応性基としては、例えば、水酸基およびアミノ基の少なくとも一方が挙げられる。
【0077】
反応性基は、ポリシロキサン化合物の一方の末端に2以上あってよい。これにより、ポリイソシアネート化合物との反応点が増えるため、耐久性がより高まる。
【0078】
反応性基当量は、例えば、1,000g/mol以上であってよく、2,000g/mol以上であってよい。反応性基当量は、例えば、20,000g/mol以下であってよく、18,000g/mol以下であってよい。一態様において、反応性基当量は1,000g/mol以上20,000g/mol以下であってよい。
【0079】
疎水性基は、疎水性であって、かつ、イソシアネート基に対して非反応性であれば、特に限定されない。疎水性基としては、例えば、炭素数1~10の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は、芳香環、非芳香環および脂肪族炭化水素基よりなる群から選択される1つを有していてよい。疎水性基は、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基であってよい。脂肪族炭化水素基は、飽和していてよく、不飽和であってもよい。疎水性基は、メチル基であってよい。
【0080】
ポリシロキサン化合物は、例えば、下記式:
【化1】
(式中、R
1は、それぞれ独立して、炭素数1~10の炭化水素基であり、R
2は、イソシアネート基に対して非反応性の疎水性基であり、Xは、イソシアネート基と反応し得る反応性基を含む一価の有機基であり、nは1~800の整数である。)
で表される。
【0081】
Xは、イソシアネート基と反応し得る反応性基を含む一価の有機基である。Xは、例えば、水酸基およびアミノ基の少なくとも一方を有する一価の有機基である。Xは、ケイ素原子に結合した反応性基を含まないことが望ましい。Xは、ケイ素原子に直接結合した反応性基でないことが望ましい。
【0082】
1以上の水酸基を有する一価の有機基としては、例えば、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、-C3H6-O-C2H4OH、-C3H6-O-CH3C(CH2OH)2C2H5、-C3H6-O-C8H16OH基が挙げられる。炭素数1~20のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシシクロヘキシル基が挙げられる。
【0083】
1以上のアミノ基を有する一価の有機基としては、例えば、炭素数1~20のアミノアルキル基、-N(β-アミノエチル)イミノプロピル基が挙げられる。炭素数1~20のアミノアルキル基としては、例えば、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノブチル基、アミノフェニル基、アミノシクロヘキシル基が挙げられる。
【0084】
R1は、側鎖に導入された有機基であって、上記の通りである。R1は、それぞれ独立して、炭素数1~3のアルキル基またはフェニル基であってよい。R1は、それぞれ独立して、炭素数1~3のアルキル基であってよく、いずれもメチル基であってよい。
【0085】
R2は、イソシアネート基に対して非反応性の疎水性基であって、上記の通りである。
【0086】
nは1~800の整数である。nは、10以上であってよく、30以上であってよい。nは、400以下であってよく、200以下であってよい。
【0087】
ポリシロキサン化合物の撥水防汚剤における固形分濃度は、0.01質量%以上であってよく、0.05質量%以上であってよい。これにより、塗膜の撥水防汚性がより向上し得る。さらに、固定工程において、上記の反応が進行し易い。ポリシロキサン化合物の固形分濃度は、5質量%以下であってよく、3質量%以下であってよい。一態様において、ポリシロキサン化合物の撥水防汚剤における固形分濃度は、0.01質量%以上5質量%以下である。
【0088】
≪有機溶媒≫
撥水防汚剤は、通常、有機溶媒を含む。有機溶剤によって、ポリシロキサン化合物の固形分濃度が上記の範囲に調整される。有機溶媒としては、プライマーに含まれ得る有機溶媒と同様のものが挙げられる。
【0089】
≪抗菌剤および抗ウイルス剤≫
撥水防汚剤は、抗菌剤および抗ウイルス剤の少なくとも一方を含んでいてもよい。これにより、塗装物品に抗菌性および/または抗ウイルス性を付与できる。抗菌剤および抗ウイルス剤の例示は、上記の通りである。
【0090】
抗菌剤および/または抗ウイルス剤の有効成分の配合量は、例えば、撥水防汚剤の固形分100質量部に対して、0.1質量部以上であり、1.0質量部以上であってよい。抗菌剤および/または抗ウイルス剤の有効成分の配合量は、例えば、撥水防汚剤の固形分100質量部に対して50質量部以下であり、10質量部以下であってよい。一態様において、抗菌剤および/または抗ウイルス剤の有効成分の配合量は、撥水防汚剤の固形分100質量部に対して0.1質量部以上50質量部以下である。
【0091】
プライマーおよび撥水防汚剤の少なくとも一方が、抗菌剤および抗ウイルス剤の少なくとも一方を含んでいてよい。耐久性の観点から、プライマーが、抗菌剤および抗ウイルス剤の少なくとも一方を含んでいてよい。
【0092】
(その他)
撥水防汚剤は、必要に応じてその他の各種添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、表面調整剤、レベリング剤、可塑剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘性制御剤が挙げられる。添加剤は、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。
【0093】
(3)固定工程
撥水防汚剤の付与後、ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基と、水酸基含有樹脂が有する水酸基およびポリシロキサン化合物が有する反応性基と、を反応させる。これにより、有機基材の表面に、プライマーおよび撥水防汚剤が固定される。
【0094】
上記の反応は、熱によって進行し得る。加熱は、例えば、加熱炉、熱風乾燥機またはIRヒーターなどを用いた加熱、赤外線熱照射装置などを用いた赤外線の照射により行われる。加熱条件は特に限定されず、反応性基の反応性、各成分の付与量等に応じて適宜設定される。加熱温度は、例えば、70℃以上150℃以下であってよい。赤外線の照射時間は、例えば、3分以上10分以下であってよい。
【0095】
固定工程の前に、乾燥工程を行ってもよい。乾燥工程により有機溶媒等の揮発成分が除去される。乾燥条件は特に限定されず、有機溶媒の量等に応じて適宜設定される。
【0096】
最後に、塗膜から未反応の成分を除去することにより、撥水防汚加工された塗装物品が得られる。未反応成分は、例えば、上記の有機溶媒で拭き取って除去できる。
【0097】
プライマーおよび撥水防汚剤により形成される塗膜の厚みは特に限定されない。塗膜が薄くても、本開示に係る塗装物品は、優れた撥水性および防汚性を示し、かつ、これらの性能の耐久性に優れる。塗膜の厚みは、例えば、1μm以下であってよく、100nm以下であってよい。塗膜の厚みは、例えば、10nm以上であってよく、5nm以上であってよい。一態様において、塗膜の厚みは、5nm以上1μm以下である。
【0098】
塗装物品の用途は特に限定されず、屋外用であってよく、屋内用であってよい。塗装物品の用途としては、例えば、自動車車体、住宅設備および建築物が挙げられる。塗装物品は、これらの少なくとも一部を構成する部材の、少なくとも一部を構成し得る。自動車車体用の部材としては、例えば、スポイラー、バンパー、ミラーカバー、グリルおよびドアノブよりなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。住宅設備用の部材および建築用の部材の具体例は、上記の通りである。
【実施例0099】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準であって、固形分量を示す。
【0100】
実施例および比較例において使用された各成分は、以下のとおりである。
水酸基含有樹脂A:水酸基含有ポリエステル樹脂、コベストロ社製、デスモフェンXP2488、水酸基価530mgKOH/g
水酸基含有樹脂B:水酸基含有ポリエステル樹脂、BASF株式会社製、BasonolHPE1170B、水酸基価280mgKOH/g
水酸基含有樹脂C:水酸基含有ポリカーボネート樹脂、旭化成株式会社製、デュラノール T5650E、水酸基価225mgKOH/g
【0101】
ポリイソシアネート化合物A:三井化学社製、タケネートD-131N、m-キシリレンジイソシアネートのヌレート体
ポリイソシアネート化合物B:住化コベストロ株式会社製、デスモジュールN3600、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリマー
【0102】
ポリシロキサン化合物A:信越化学工業社製、X-22-176GX-A、反応性基の当量14,000g/mol、ジメチルシロキサン骨格を有し、一方の末端が-C3H6-O-CH3C(CH2OH)2C2H5であり、他方の末端はメチル基である。
ポリシロキサン化合物B:信越化学工業社製、X-22-176F、反応性基の当量約12,400g/mol、ジメチルシロキサン骨格を有し、一方の末端が-C3H6-O-CH3C(CH2OH)2C2H5であり、他方の末端はメチル基である。
ポリシロキサン化合物C:信越化学工業社製、X-22-170DX、反応性基の当量約4,670g/mol、ジメチルシロキサン骨格を有し、一方の末端が-C3H6-O-C2H4OHであり、他方の末端はメチル基である。
ポリシロキサン化合物a:信越化学工業社製、KF-6003、反応性基の当量約2,500g/mol、ジメチルシロキサン骨格を有し、両末端が-C3H6-O-C2H4OHである。
【0103】
[実施例1]
(a)プライマーの調製
水酸基含有樹脂Aを4部、ジブチルスズジラウレート(硬化触媒)0.012部、シクロヘキサノン(有機溶媒)を全量100部となるように、室温で攪拌混合して主剤を得た。
ポリイソシアネート化合物Aを4部と、シクロヘキサノン(有機溶媒)96部とを、室温で攪拌混合して硬化剤を得た。
主剤100gと硬化剤250gとを混合して、プライマーを調製した。当量比:NCO/OHは1.2とした。
【0104】
(b)撥水防汚剤の調製
片末端反応性のポリシロキサン化合物Aを1部と、ヘプタン99部とを、室温で攪拌混合し、撥水防汚剤を調製した。
【0105】
(c)有機基材の準備
ガラス繊維強化不飽和ポリエステル樹脂の表面をイソプロピルアルコールで脱脂し、有機基材を準備した。
【0106】
(d)プライマーの付与
有機基材に、プライマーをクロスを用いて塗布した。プライマーは、目視で塗跡が確認できないように塗布された。
【0107】
(e)撥水防汚剤の付与
続いて、プライマーが塗布された有機基材に、撥水防汚剤をクロスを用いて塗布した。
【0108】
(f)加熱
次いで、プライマーおよび撥水防汚剤が塗布された有機基材を、80℃のオーブンで20分間加熱した。最後に、塗膜の表面をイソプロピルアルコールで拭き取って、塗装物品を得た。塗膜の厚みは、15nmであった。
【0109】
[実施例2]
ポリイソシアネート化合物Aに替えて、ポリイソシアネート化合物Bを用いたこと以外、実施例1と同様にしてプライマーおよび撥水防汚剤を調製し、順次、有機基材に塗布して、塗装物品を得た。
【0110】
[実施例3]
ポリシロキサン化合物Aに替えて、片末端反応性のポリシロキサン化合物Bを用いたこと以外、実施例1と同様にしてプライマーおよび撥水防汚剤を調製し、順次、有機基材に塗布して、塗装物品を得た。
【0111】
[実施例4]
ポリシロキサン化合物Aに替えて、片末端反応性のポリシロキサン化合物Cを用いたこと以外、実施例1と同様にしてプライマーおよび撥水防汚剤を調製し、順次、有機基材に塗布して、塗装物品を得た。
【0112】
[実施例5]
水酸基含有樹脂Aに替えて、水酸基含有樹脂Bを用いたこと以外、実施例1と同様にしてプライマーおよび撥水防汚剤を調製し、順次、有機基材に塗布して、塗装物品を得た。
【0113】
[実施例6]
水酸基含有樹脂Aに替えて、水酸基含有樹脂Cを用いたこと以外、実施例1と同様にしてプライマーおよび撥水防汚剤を調製し、順次、有機基材に塗布して、塗装物品を得た。
【0114】
[実施例7]
プライマーに、抗菌剤A(日本イオン株式会社製、ナノピュアAGS-MB-3000、銀(有効成分0.3質量%)のメチルエチルケトン分散液)を10部添加したこと以外、実施例1と同様にしてプライマーおよび撥水防汚剤を調製し、順次、有機基材に塗布して、塗装物品を得た。
【0115】
[比較例1]
ポリシロキサン化合物Aに替えて、両末端反応性のポリシロキサン化合物aを用いたこと以外、実施例1と同様にして、プライマーおよび撥水防汚剤を順次、有機基材に塗布して、塗装物品を得た。
【0116】
[比較例2]
ポリシロキサン化合物Aに替えて、フッ素化合物b(東京化成工業社製、2,2,3,3,4,4,5,5-octafluoro-1-pentanol)を用いたこと以外、実施例1と同様にして、プライマーおよび撥水防汚剤を順次、有機基材に塗布して、塗装物品を得た。
【0117】
[比較例3]
実施例1で調製された撥水防汚剤のみを有機基材に塗布し、実施例1と同様にして、塗装物品を得た。
【0118】
[比較例4]
実施例1で調製されたプライマーのみを、有機基材に塗布し、実施例1と同様にして、塗装物品を得た。
【0119】
[評価]
実施例および比較例で得られた塗装物品に対して、撥水性および防汚性、ならびにこれらの耐久性の評価を行った。評価は、初期、耐アルカリ試験後、耐水試験後、耐摩耗試験後の塗装物品に対してそれぞれ行った。耐アルカリ試験後、耐水試験後および耐摩耗試験後の塗装物品の評価が高いほど、耐久性に優れる。各試験の方法は下記の通りである。評価結果を表1に示す。
【0120】
(1)耐アルカリ試験
塗装物品を、40℃のカビキラー(登録商標、ジョンソン株式会社製、アルカリ性)に24時間浸漬した。その後、塗装物品をイオン交換水で洗浄し、乾燥させた。
【0121】
(2)耐水試験
塗装物品を、イオン交換水に240時間浸漬した。その後、塗装物品を乾燥させた。
【0122】
(3)耐摩耗試験
20~25℃の水中において、3Mスコッチブライト(商標)抗菌ウレタンスポンジS-21KSを塗装物品の表面に当てて、500gfの荷重を掛けながら20往復させた。その後、塗装物品を乾燥させた。
【0123】
(i)撥水性:水の接触角
JIS R 3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」(静滴法)に準じて、初期品および、上記の方法で試験された各塗装物品の表面における水滴の接触角を測定した。具体的には、協和界面科学株式会社製のDMo-701を用い、蒸留水4μLを塗膜に滴下して60秒後の接触角を測定した。
【0124】
(ii)防汚性:ミネラル成分に対する洗浄性能
被塗物の塗面に対して、150μLの水を滴下し、40℃で24時間乾燥させて白色の水滴斑を作成した。その後、20~25℃の水中において3M スコッチブライト(商標)抗菌ウレタンスポンジS-21KSを塗装物品の表面に当てて、500gfの荷重を掛けながら20往復させた。その後、残存する水滴斑を目視で観察し、下記基準により評価した。評価が「最良」および「良」である塗装物品は、防汚性があり、「不良」である塗装物品は防汚性がない。
最良:水滴斑が視認されない
良:水滴斑がわずかに視認される
不良:水滴斑がはっきりと視認される
【0125】
【0126】
【0127】
実施例の塗装物品はいずれも、初期において良好な撥水性および防汚性を示した。さらに、各試験後においても接触角は95°超であって優れた撥水性を示すとともに、防汚性も維持されていた。一方、比較例1および2の塗装物品は、初期の撥水性および防汚性は良好であるものの、耐久性に劣っていた。比較例3および4の塗装物品は、初期の撥水性および防汚性に劣っていた。
【0128】
さらに、抗菌剤を含有する実施例7の塗装物品を用いて、JIS Z 2801「抗菌加工製品―抗菌性試験法・抗菌効果」に準ずる試験を実施したところ、大腸菌NBRC3972に対して抗菌活性値3.6を示した。
【0129】
本発明は下記態様を含む。
[1]
有機基材の表面に、プライマーを付与する工程と、
前記プライマーが付与された前記有機基材の表面に、撥水防汚剤を付与する工程と、
前記有機基材の表面に、前記プライマーおよび前記撥水防汚剤を固定する工程と、を備え、
前記プライマーは、水酸基含有樹脂と、ポリイソシアネート化合物と、を含み、
前記撥水防汚剤は、一方の末端にイソシアネート基と反応し得る反応性基を有し、他方の末端にイソシアネート基に対して非反応性の疎水性基を有する、ポリシロキサン化合物を含み、
前記固定する工程では、前記ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基と、前記水酸基含有樹脂が有する水酸基および前記ポリシロキサン化合物が有する前記反応性基と、が反応する、塗装物品の製造方法。
[2]
前記ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基と前記水酸基含有樹脂が有する水酸基との当量比:NCO/OHは、1.0超である、上記の[1]の表面処理剤。
[3]
前記反応性基は、水酸基およびアミノ基の少なくとも一方である、上記の[1]または[2]の表面処理剤。
[4]
前記ポリシロキサン化合物は、前記一方の末端に2以上の前記反応性基を有する、上記の[1]~[3]いずれかの表面処理剤。
[5]
前記ポリイソシアネート化合物は、芳香族炭化水素基を有する、上記の[1]~[4]いずれかの表面処理剤。
[6]
前記水酸基含有樹脂は、220mgKOH/g以上600mgKOH/g以下の水酸基価を有する、上記の[1]~[5]いずれかの表面処理剤。
[7]
前記プライマーおよび前記撥水防汚剤の少なくとも一方は、さらに、抗菌剤および抗ウイルス剤の少なくとも一方を含む、上記の[1]~[6]いずれかの塗装物品の製造方法。
[8]
前記水酸基含有樹脂は、水酸基含有ポリエステル樹脂を含む、上記の[1]~[7]いずれかの塗装物品の製造方法。
[9]
前記有機基材は、繊維強化プラスチックを含む、上記の[1]~[8]いずれかの塗装物品の製造方法。
[10]
前記有機基材は、住宅設備に用いられる部材および建築物に用いられる部材の少なくとも一方の少なくとも一部を形成する有機基材であり、
前記住宅設備は、浴槽、浴室の壁、浴室のカウンターおよび洗面化粧台よりなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記建築物は、サイディング材およびカーポートの少なくとも一方である、上記の[1]~[9]いずれかの塗装物品の製造方法。