(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090547
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】エレベータの滑車の交換方法、及びエレベータのロープ吊り治具
(51)【国際特許分類】
B66B 7/00 20060101AFI20240627BHJP
B66B 7/06 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B66B7/00 K
B66B7/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206522
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003568
【氏名又は名称】弁理士法人加藤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】本村 晃一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良直
【テーマコード(参考)】
3F305
【Fターム(参考)】
3F305BC18
3F305DA11
3F305DA15
3F305DA21
(57)【要約】
【課題】エレベータの滑車を容易に交換できるエレベータの滑車の交換方法を提供する。
【解決手段】既設の返し車10の外周面12のうちロープ40が巻き掛けられていない部分にロープ吊り治具50を取り付け、返し車10をロープ吊り治具50と共に回転させて、ロープ吊り治具50をロープ40と返し車10との間に入り込ませ、ロープ40にかかる荷重をロープ吊り治具50に支持させた状態で、ロープ吊り治具50を昇降路内の返し車梁30に固定し、返し車10を取り外して新規の滑車を取り付ける。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の滑車の外周面のうちロープが巻き掛けられていない部分にロープ吊り治具を取り付け、
前記既設の滑車を前記ロープ吊り治具と共に回転させて、前記ロープ吊り治具を前記ロープと前記既設の滑車との間に入り込ませ、
前記ロープにかかる荷重を前記ロープ吊り治具に支持させた状態で、前記ロープ吊り治具を昇降路内の支持部材に固定し、
前記既設の滑車を取り外して新規の滑車を取り付けるエレベータの滑車の交換方法。
【請求項2】
前記ロープ吊り治具及び前記支持部材のそれぞれにボルトによって固定される吊板を用いて、前記ロープ吊り治具を前記支持部材に固定する請求項1に記載のエレベータの滑車の交換方法。
【請求項3】
吊元、玉掛けロープ及びフックを用いて、前記ロープ吊り治具を前記支持部材に固定する請求項1に記載のエレベータの滑車の交換方法。
【請求項4】
凹曲面とロープ巻掛け面とが形成されている治具本体
を備え、
前記治具本体は、既設の滑車の外周面のうちロープが巻き掛けられていない部分に前記凹曲面を対向させて前記既設の滑車に取り付け可能になっており、
前記治具本体が前記既設の滑車に取り付けられている状態では、前記既設の滑車が回転して前記治具本体が前記ロープと前記既設の滑車との間に入り込むことにより、前記ロープが前記ロープ巻掛け面に巻き掛けられるエレベータのロープ吊り治具。
【請求項5】
前記凹曲面の曲率半径は、前記外周面の半径と等しい請求項4に記載のエレベータのロープ吊り治具。
【請求項6】
前記ロープ巻掛け面には、前記ロープを収容する治具ロープ溝が形成されている請求項4又は請求項5に記載のエレベータのロープ吊り治具。
【請求項7】
前記治具ロープ溝には、アンダーカットが形成されている請求項6に記載のエレベータのロープ吊り治具。
【請求項8】
前記凹曲面には、前記外周面の滑車ロープ溝に嵌め込まれる凸部が形成されている請求項4又は請求項5に記載のエレベータのロープ吊り治具。
【請求項9】
前記治具本体には、前記既設の滑車又は昇降路内の支持部材に前記治具本体を固定するための穴が形成されている請求項4又は請求項5に記載のエレベータのロープ吊り治具。
【請求項10】
前記ロープ巻掛け面の前記ロープとの摩擦係数は、前記外周面と前記ロープとの摩擦係数と同等以上である請求項4又は請求項5に記載のエレベータのロープ吊り治具。
【請求項11】
前記凹曲面は、弾性材料によって形成されている請求項4又は請求項5に記載のエレベータのロープ吊り治具。
【請求項12】
前記治具本体は、複数の前記ロープが巻き掛けられている前記既設の滑車に取り付け可能になっており、
前記ロープ巻掛け面には、前記ロープを個別に収容する複数の治具ロープ溝が形成されており、
前記複数の治具ロープ溝は、前記治具本体の厚み方向に並んでおり、
前記治具本体は、互いに分離可能に前記治具本体の厚み方向に積層された複数の層部材を有しており、
前記複数の治具ロープ溝のそれぞれは、前記複数の層部材のそれぞれに形成されている請求項4又は請求項5に記載のエレベータのロープ吊り治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータの滑車の交換方法、及びエレベータのロープ吊り治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、機械室レスエレベータの改修方法が記載されている。この改修方法では、上部支持体から釣合おもり返し車が取り外され、上部支持体の釣合おもり返し車が取り付けられていた位置に新たな巻上機が設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の改修方法では、釣合おもり返し車を新たな巻上機に交換する際、釣合おもり返し車に加わる荷重を小さくするために、釣合おもりを緩衝器によって支持し、かごをチェーンブロック等によって吊ることが考えられる。しかし、この場合、釣合おもりを緩衝器によって支持する作業、かごをチェーンブロック等によって吊る作業等が必要になる。従って、釣合おもり返し車を新たな巻上機に交換する作業に手間がかかる。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、エレベータの滑車を容易に交換できるエレベータの滑車の交換方法、及びエレベータのロープ吊り治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベータの滑車の交換方法は、既設の滑車の外周面のうちロープが巻き掛けられていない部分にロープ吊り治具を取り付け、既設の滑車をロープ吊り治具と共に回転させて、ロープ吊り治具をロープと既設の滑車との間に入り込ませ、ロープにかかる荷重をロープ吊り治具に支持させた状態で、ロープ吊り治具を昇降路内の支持部材に固定し、既設の滑車を取り外して新規の滑車を取り付けるものである。
【0007】
本開示に係るエレベータのロープ吊り治具は、凹曲面とロープ巻掛け面とが形成されている治具本体を備え、治具本体は、既設の滑車の外周面のうちロープが巻き掛けられていない部分に凹曲面を対向させて既設の滑車に取り付け可能になっており、治具本体が既設の滑車に取り付けられている状態では、既設の滑車が回転して治具本体がロープと既設の滑車との間に入り込むことにより、ロープがロープ巻掛け面に巻き掛けられる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、エレベータの滑車を容易に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係るエレベータの返し車の構成を示す正面図である。
【
図2】実施の形態1に係るエレベータの返し車の構成を示す側面図である。
【
図3】実施の形態1に係るロープ吊り治具の概略構成を示す斜視図である。
【
図5】実施の形態1に係るエレベータの滑車の交換方法を示す図である。
【
図6】実施の形態1に係るエレベータの滑車の交換方法を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係るエレベータの滑車の交換方法を示す図である。
【
図8】実施の形態1に係るエレベータの滑車の交換方法を示す図である。
【
図9】実施の形態1に係るエレベータの滑車の交換方法を示す図である。
【
図10】実施の形態1に係るエレベータの滑車の交換方法を示す図である。
【
図11】実施の形態1に係るエレベータの滑車の交換方法を示す図である。
【
図12】実施の形態1に係るエレベータの滑車の交換方法を示す図である。
【
図13】実施の形態1に係るエレベータの滑車の交換方法を示す図である。
【
図14】実施の形態1に係るエレベータの滑車の交換方法を示す図である。
【
図15】実施の形態1に係るエレベータの滑車の交換方法を示す図である。
【
図16】実施の形態1に係るエレベータの滑車の交換方法に用いられる4つの吊板の構成を示す斜視図である。
【
図17】実施の形態2に係るロープ吊り治具の構成を示す断面図である。
【
図18】実施の形態3に係るロープ吊り治具の構成を示す断面図である。
【
図19】実施の形態4に係るロープ吊り治具の構成を示す断面図である。
【
図20】実施の形態5に係るロープ吊り治具の構成を示す断面図である。
【
図21】実施の形態6に係るエレベータの滑車の交換方法を示す図である。
【
図22】実施の形態6に係るエレベータの滑車の交換方法を示す図である。
【
図23】実施の形態6に係るエレベータの滑車の交換方法に用いられる自在シャックルの構成を示す正面図である。
【
図24】実施の形態6に係るエレベータの滑車の交換方法に用いられる自在シャックルの構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1に係るエレベータの滑車の交換方法、及びエレベータのロープ吊り治具について説明する。以下の説明では、滑車の交換方法として、昇降路の上部に設置されている既設の返し車を新規の巻上機の綱車に交換する交換方法を例に挙げている。本実施の形態では、新規の巻上機の綱車の直径は、既設の返し車の直径と同一である。
【0011】
まず、既設の返し車の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係るエレベータの返し車の構成を示す正面図である。
図2は、本実施の形態に係るエレベータの返し車の構成を示す側面図である。
図1及び
図2のそれぞれの上下方向は、鉛直上下方向を表している。
図1の紙面に垂直な方向、及び
図2の左右方向は、回転軸11に沿う方向、すなわち返し車10の軸方向を表している。
図1及び
図2に示している返し車10は、かごと昇降路の壁との間に配置されている。例えば、
図1の紙面手前側及び
図2の左側は、かご側を表している。
図1の紙面奥側及び
図2の右側は、昇降路の壁側を表している。
【0012】
図1及び
図2に示すように、返し車10は、回転軸11及び外周面12を有している。回転軸11の一端部は、返し車取付金20によって支持されている。回転軸11の他端部は、返し車取付金21によって支持されている。返し車取付金20及び返し車取付金21のそれぞれは、ボルト等を用いて返し車梁30に固定されている。これにより、返し車10は、返し車取付金20及び返し車取付金21を介して、返し車梁30に回転自在に支持されている。返し車梁30は、昇降路内に固定されている支持部材である。返し車梁30は、返し車10よりも上方に設けられている。返し車梁30には、貫通穴30a及び貫通穴30bが形成されている。貫通穴30a及び貫通穴30bは、後述するロープ吊り治具50を固定するための穴である。
【0013】
返し車10の外周面12には、複数のロープ溝13が形成されている。複数のロープ溝13は、返し車10の軸方向に互いに並列している。各ロープ溝13は、返し車10の周方向に沿って延伸している。返し車10には、複数のロープ40が巻き掛けられている。各ロープ40は、対応するロープ溝13に収容されている。
【0014】
次に、ロープ吊り治具50の構成について説明する。ロープ吊り治具50は、既設の返し車10を新規の巻上機の綱車に交換する際、返し車10の外周面12のうちロープ40が巻き掛けられていない部分に取り付けられる。エレベータの通常動作時には、ロープ吊り治具50は、返し車10に取り付けられていない。
図1及び
図2には、ロープ吊り治具50が返し車10に取り付けられた後の状態が示されている。
【0015】
返し車10の軸方向に見たとき、外周面12のうち上側の半周部分には、複数のロープ40が巻き掛けられている。同方向に見たとき、外周面12のうち下側の半周部分には、複数のロープ40が巻き掛けられていない。このように、外周面12は、ロープ40が巻き掛けられている部分と、ロープ40が巻き掛けられていない部分と、を有している。ロープ吊り治具50は、外周面12のうち、ロープ40が巻き掛けられていない部分に取り付けられる。
【0016】
以下の説明では、ロープ吊り治具50が返し車10に取り付けられたときに返し車10の回転軸11と平行になる方向のことを、ロープ吊り治具50の厚み方向という場合がある。
【0017】
図3は、本実施の形態に係るロープ吊り治具の概略構成を示す斜視図である。
図4は、
図1のIV-IV断面を示す断面図である。
図3の奥行き方向、及び
図4の左右方向は、ロープ吊り治具50の厚み方向を表している。
図3及び
図4に示すように、ロープ吊り治具50は、凹曲面52及びロープ巻掛け面53が形成された治具本体51を有している。
【0018】
治具本体51は、後述するようにロープ吊り治具50はロープ40にかかる荷重を受けるため、ロープ40にかかる荷重を支持可能な強度を有しているものとする。ロープ40にかかる荷重とは、かご及び釣合おもりによる荷重や、ロープ40自身の自重による荷重によってロープ40に対して働く荷重のことである。そのため、治具本体51は、具体的には、金属などの素材によって形成されている。
【0019】
凹曲面52は、治具本体51すなわちロープ吊り治具50における一方の面である。凹曲面52は、ロープ吊り治具50が返し車10に取り付けられたとき、外周面12と対向するように配置される。ロープ吊り治具50はロープ40にかかる荷重を受けるため、凹曲面52の具体的な形状としては、外周面12に対して応力が集中しないような形状を採用することが望ましい。本実施の形態では、凹曲面52は、例えば、外周面12の半径と等しい曲率半径又はほぼ等しい曲率半径を有する部分円筒面状に形成されているものとする。これにより、ロープ吊り治具50が返し車10に取り付けられたとき、凹曲面52は外周面12と面接触すること又は概ね面接触することになる。
【0020】
凹曲面52には、複数のロープ溝13にそれぞれ嵌め込まれる複数の凸部54が形成されている。複数の凸部54は、ロープ吊り治具50の厚み方向に互いに並列している。各凸部54は、ロープ吊り治具50の厚み方向と垂直な平面内において凹曲面52に沿って延伸している。本実施の形態では、各凸部54は、例えば、外周面12のロープ溝13とほぼ同一の断面形状を有しているものとする。
【0021】
ロープ巻掛け面53は、治具本体51すなわちロープ吊り治具50における他方の面である。ロープ巻掛け面53は、凹曲面52の裏側に設けられた凸曲面である。本実施の形態では、ロープ吊り治具50の厚み方向と垂直な断面において、ロープ巻掛け面53の曲率は、凹曲面52の曲率よりも大きくなっている。このため、本実施の形態のロープ吊り治具50は、ロープ吊り治具50の厚み方向と垂直な断面において、三日月状の断面形状を有している。
【0022】
ロープ吊り治具50の厚み方向と垂直な断面において、ロープ吊り治具50の一方の端部と他方の端部との距離をロープ吊り治具50の横幅とする。ロープ吊り治具50の横幅は、返し車10の直径よりも狭くなっている。ただし、ロープ吊り治具50の横幅が返し車10の直径に対して狭すぎると、返し車10を取り外して新規の滑車を取り付ける際に、新規の滑車とロープ40とが干渉し、新規の滑車の取り付けが困難になる場合がある。このため、ロープ吊り治具50の横幅は、返し車10の直径に対して狭くなり過ぎないように設計されるのが望ましい。
【0023】
以上説明したように、ロープ吊り治具50の治具本体51は、凹曲面52及びロープ巻掛け面53において形状的な特徴を有している。その結果、ロープ吊り治具50が返し車10と共に回転させられることにより、ロープ巻掛け面53に対して、複数のロープ40をダメージ無く巻き掛けられることができるという効果が得られる。ロープ巻掛け面53は、上述したように、滑らかな曲面状に形成されていることから、ロープ巻掛け面53にロープ40が巻き掛けられたときにロープ40にダメージを与えるような過大な局所応力を発生させない。
【0024】
ロープ巻掛け面53には、複数のロープ溝55が形成されている。複数のロープ溝55は、ロープ吊り治具50の厚み方向に互いに並列している。各ロープ溝55は、ロープ吊り治具50の厚み方向と垂直な平面内においてロープ巻掛け面53に沿って延伸している。ロープ巻掛け面53に巻き掛けられた各ロープ40は、対応するロープ溝55に収容される。ロープ吊り治具50に対して各ロープ40に滑りが生じるのを抑えるため、各ロープ溝55にはアンダーカットが形成されていてもよい。アンダーカットとは、一般的には、アンダーカットU溝のことを指すものであり、溝形状が、丸溝とV溝の中間的な特性を持った溝型のことであり、広く利用されているロープ溝である。ロープ溝にアンダーカットを形成することによってロープ溝とロープとの面圧を高めて、滑りの発生を抑制させることができる。なお、ロープ巻掛け面53は、返し車10の外周面12と実質的に同一の断面形状を有していてもよい。
【0025】
治具本体51には、穴56a、56b、56cが形成されている。穴56a、56b、56cのそれぞれは、ロープ吊り治具50の厚み方向と平行に延伸しており、治具本体51を貫通している。
【0026】
穴56aは、ロープ吊り治具50の厚み方向と垂直な断面において、ロープ吊り治具50の一方の端部に設けられている。穴56bは、ロープ吊り治具50の厚み方向と垂直な断面において、ロープ吊り治具50の他方の端部に設けられている。穴56a及び穴56bは、ロープ吊り治具50が返し車梁30に固定される際に用いられる。
【0027】
穴56cは、穴56aと穴56bとの間に設けられている。穴56cは、ロープ吊り治具50が返し車10に固定される際に用いられる。
【0028】
【0029】
まず、
図1及び
図2に示したように、返し車10の外周面12のうちロープ40が巻き掛けられていない部分に、ロープ吊り治具50を取り付ける。ロープ吊り治具50の凹曲面52は、外周面12と対向して配置される。ロープ吊り治具50の各凸部54は、対応するロープ溝13に嵌め込まれる。ロープ吊り治具50は、穴56cに通された鉄線60により、返し車10に固定する。
【0030】
次に、かごを上昇又は下降させることにより、返し車10を回転させる。これにより、
図5に示すように、ロープ吊り治具50が返し車10と共に回転してロープ吊り治具50の一部がロープ40と返し車10との間に入り込み、ロープ40がロープ巻掛け面53に巻き掛けられる。各ロープ40がロープ吊り治具50に乗り上げる際には、各ロープ40は対応するロープ溝55に収容される。このため、ロープ吊り治具50から各ロープ40が外れてしまうことが抑制されるという効果が得られる。
【0031】
ロープ吊り治具50がロープ40と返し車10との間に入り込むと、ロープ吊り治具50にはロープ40にかかる荷重が作用する。本実施の形態では、凹曲面52と外周面12とが面接触しているため、ロープ吊り治具50と返し車10との接触部における応力集中が抑制される。また、本実施の形態では、凹曲面52の凸部54が外周面12のロープ溝13に嵌まり込み、凸部54とロープ溝13の内面とが接触しているため、応力集中がさらに抑制されるという効果が得られる。
【0032】
次に、
図6及び
図7に示すように、返し車10をロープ吊り治具50と共にさらに回転させ、ロープ吊り治具50を返し車10の上部に位置させる。これにより、ロープ吊り治具50の全体がロープ40と返し車10との間に入り込む。
【0033】
次に、
図8及び
図9に示すように、吊板61a、61b、62a、62bを用いてロープ吊り治具50を返し車梁30に固定する。
【0034】
図16は、本実施の形態に係るエレベータの滑車の交換方法に用いられる4つの吊板の構成を示す斜視図である。
図16に示す吊板61a及び吊板62aは、作業者側から見たとき、返し車10よりも手前側に位置する。吊板61aの上部には、通し穴61a1が形成されている。吊板61aの下部には、通し穴61a2が形成されている。吊板62aの上部には、通し穴62a1が形成されている。吊板62aの下部には、通し穴62a2が形成されている。
【0035】
吊板61b及び吊板62bは、作業者側から見たとき、返し車10よりも奥側に位置する。吊板61bの上部には、ねじ穴61b1が形成されている。吊板61bの下部には、ねじ穴61b2が形成されている。吊板62bの上部には、ねじ穴62b1が形成されている。吊板62bの下部には、ねじ穴62b2が形成されている。
【0036】
ロープ吊り治具50を返し車梁30に固定する際には、吊板61aの上部と吊板61bの上部との間に返し車梁30が挟まれ、ボルト63aによって吊板61a、返し車梁30及び吊板61bが締結される。ボルト63aは、吊板61a側から、通し穴61a1、貫通穴30a及びねじ穴61b1に通される。
【0037】
吊板61aの下部と吊板61bの下部との間にはロープ吊り治具50が挟まれ、ボルト63bによって吊板61a、ロープ吊り治具50及び吊板61bが締結される。ボルト63bは、吊板61a側から、通し穴61a2、穴56b及びねじ穴61b2に通される。
【0038】
同様に、吊板62aの上部と吊板62bの上部との間に返し車梁30が挟まれ、ボルト64aによって吊板62a、返し車梁30及び吊板62bが締結される。ボルト64aは、吊板62a側から、通し穴62a1、貫通穴30b及びねじ穴62b1に通される。
【0039】
吊板62aの下部と吊板62bの下部との間にはロープ吊り治具50が挟まれ、ボルト64bによって吊板62a、ロープ吊り治具50及び吊板62bが締結される。ボルト64bは、吊板62a側から、通し穴62a2、穴56a及びねじ穴62b2に通される。
【0040】
返し車10よりも奥側に位置する吊板61b及び吊板62bには、ねじ穴が形成されている。このため、返し車10よりも手前側から作業者が各ボルトを締め込むことにより、ロープ吊り治具50を返し車梁30に固定することができる。ロープ吊り治具50が返し車梁30に固定された後には、鉄線60が取り外される。これにより、ロープ吊り治具50と返し車10との固定が解除される。
【0041】
ロープ吊り治具50が返し車梁30に固定されることにより、ロープ吊り治具50はロープ40にかかる荷重を支持できる状態になる。
【0042】
次に、
図10及び
図11に示すように、ロープ40にかかる荷重をロープ吊り治具50に支持させた状態で、返し車10、返し車取付金20及び返し車取付金21を返し車梁30から取り外す。
【0043】
次に、ロープ40にかかる荷重をロープ吊り治具50に支持させた状態のままで、新規の巻上機70を返し車梁30に取り付ける。まず、
図12及び
図13に示すように、返し車梁30に防振ゴム71及び巻上機取付台72を取り付ける。
【0044】
次に、
図14及び
図15に示すように、巻上機取付台72に巻上機70を取り付ける。巻上機70の綱車73は、返し車10が取り付けられていた位置に、返し車10と同軸に取り付けられる。本実施の形態では、綱車73の直径が返し車10の直径と同一であるため、取り付けられた綱車73の外周面は、ロープ吊り治具50の凹曲面52と接する。
【0045】
その後、吊板61a、61b、62a、62bが取り外され、ロープ吊り治具50が取り外される。ロープ吊り治具50が取り外される際には、必要に応じて、鉄線60等を用いてロープ吊り治具50と綱車73とを固定し、綱車73をロープ吊り治具50と共に回転させるようにしてもよい。
【0046】
以上の手順により、既設の返し車10を新規の巻上機70の綱車73に交換することができる。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態に係るエレベータの滑車の交換方法では、返し車10の外周面12のうちロープ40が巻き掛けられていない部分にロープ吊り治具50を取り付ける。次に、返し車10をロープ吊り治具50と共に回転させて、ロープ吊り治具50をロープ40と返し車10との間に入り込ませる。次に、ロープ吊り治具50を昇降路内の返し車梁30に取り付ける。次に、ロープ40にかかる荷重をロープ吊り治具50に支持させた状態で、返し車10を取り外して巻上機70の綱車73を取り付ける。返し車10は、既設の滑車の一例である。巻上機70の綱車73は、新規の滑車の一例である。返し車梁30は、支持部材の一例である。
【0048】
この交換方法によれば、ロープ40にかかる荷重をロープ吊り治具50に支持させた状態で、返し車10を綱車73に交換することができる。このため、返し車10を綱車73に交換する際、釣合おもりを緩衝器によって支持する作業、かごをチェーンブロック等によって吊る作業等を省略することができる。したがって、エレベータの滑車を容易に交換することができるという効果が得られる。
【0049】
滑車が交換される際には、ロープも交換される場合が多い。ロープを交換する方法としては、かごを吊ることなく、新旧ロープを繋ぎ合わせて旧ロープを引っ張り出し、新ロープによってかご及び釣合おもりを懸架する方法が知られている。このロープ交換方法と本実施の形態の滑車の交換方法とを用いることにより、滑車の交換からロープの交換まで一貫してかご吊り作業を省略することができるという効果が得られる。
【0050】
本実施の形態に係るエレベータの滑車の交換方法では、ロープ吊り治具50及び返し車梁30のそれぞれにボルトによって固定される吊板61a、61b、62a、62bを用いて、ロープ吊り治具50を返し車梁30に取り付ける。この交換方法によれば、ロープ吊り治具50を返し車梁30に強固に固定して取り付けることができる。
【0051】
本実施の形態に係るエレベータのロープ吊り治具50は、凹曲面52とロープ巻掛け面53とが形成されている治具本体51を備えている。治具本体51は、返し車10の外周面12のうちロープ40が巻き掛けられていない部分に凹曲面52を対向させて返し車10に取り付け可能になっている。治具本体51が返し車10に取り付けられている状態では、返し車10が回転して治具本体51がロープ40と返し車10との間に入り込むことにより、ロープ40がロープ巻掛け面53に巻き掛けられる。
【0052】
この構成によれば、ロープ40にかかる荷重をロープ吊り治具50に支持させた状態で、返し車10を綱車73に交換することができる。このため、返し車10を綱車73に交換する際、釣合おもりを緩衝器によって支持する作業、かごをチェーンブロック等によって吊る作業等を省略することができる。したがって、エレベータの滑車を容易に交換することができる。
【0053】
本実施の形態に係るエレベータのロープ吊り治具50において、凹曲面52の曲率半径は、返し車10の外周面12の半径と等しい。この構成によれば、凹曲面52と外周面12とを面接触させることができるため、ロープ吊り治具50と返し車10との接触部に応力が集中するのを抑制することができる。
【0054】
本実施の形態に係るエレベータのロープ吊り治具50において、ロープ巻掛け面53には、ロープ40を収容するロープ溝55が形成されている。ロープ溝55は、治具ロープ溝の一例である。この構成によれば、ロープ巻掛け面53に巻き掛けられたロープ40がロープ吊り治具50から外れてしまうのを抑制することができる。
【0055】
本実施の形態に係るエレベータのロープ吊り治具50において、ロープ溝55には、アンダーカットが形成されている。この構成によれば、ロープ吊り治具50に対してロープ40に滑りが生じるのを抑えることができる。
【0056】
本実施の形態に係るエレベータのロープ吊り治具50において、凹曲面52には、外周面12のロープ溝13に嵌め込まれる凸部54が形成されている。ロープ溝13は、滑車ロープ溝の一例である。この構成によれば、ロープ吊り治具50と返し車10との接触部における応力集中を抑制することができる。
【0057】
本実施の形態に係るエレベータのロープ吊り治具50において、治具本体51には、返し車10又は返し車梁30に治具本体51を取り付けるための穴56a、56b、56cが形成されている。この構成によれば、穴56cに通された鉄線60などを用いて、ロープ吊り治具50を返し車10に容易に固定することができる。また、この構成によれば、穴56aに通されたボルト64b、及び穴56bに通されたボルト63bなどを用いて、ロープ吊り治具50を返し車梁30に容易に取り付けることができる。
【0058】
実施の形態2.
実施の形態2に係るエレベータのロープ吊り治具について説明する。
図17は、本実施の形態に係るロープ吊り治具の構成を示す断面図である。
図17には、
図4と対応するロープ吊り治具50及び返し車10の断面が示されている。
【0059】
図17に示すように、ロープ吊り治具50の治具本体51は、第1層57と第2層58とを有している。第1層57及び第2層58は、接着などにより一体化されている。
【0060】
第1層57は、治具本体51において返し車10と接触する側の層である。第1層57は、凹曲面52を含んでいる。第1層57は、金属などの素材によって形成されている。
【0061】
第2層58は、治具本体51においてロープ40と接触する側の層である。第2層58は、ロープ巻掛け面53を含んでいる。第2層58は、第1層57と同等又はそれより大きい摩擦係数が得られる素材、例えばゴムなどによって形成されている。これにより、ロープ巻掛け面53のロープ40との摩擦係数を、返し車10の外周面12とロープ40との摩擦係数と同等以上にすることができる。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0062】
以上説明した構成によれば、実施の形態1と比べて、ロープ巻掛け面53とロープ40との間の摩擦係数を相対的に大きくすることができるため、ロープ巻掛け面53において必要なトラクションを確保することができる。また、第1層57及び第2層58は、接着などにより、容易に一体化することができる。
【0063】
実施の形態3.
実施の形態3に係るエレベータのロープ吊り治具について説明する。
図18は、本実施の形態に係るロープ吊り治具の構成を示す断面図である。
図18には、
図4と対応するロープ吊り治具50及び返し車10の断面が示されている。
【0064】
図18に示すように、ロープ吊り治具50の治具本体51は、凹曲面52を含む第1層57と、ロープ巻掛け面53を含む第2層58と、を有している。
【0065】
第1層57は、弾性材料によって形成されている。すなわち、凹曲面52は、弾性材料によって形成されている。弾性材料としては、ゴムなどが用いられる。第2層58は、金属などの素材によって形成されている。第1層57の弾性率は、第2層58の弾性率よりも高くなっている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態に係るエレベータのロープ吊り治具50において、凹曲面52は、弾性材料によって形成されている。この構成によれば、ロープ吊り治具50がロープ40と返し車10との間に入り込んでいくとき、凹曲面52を含む第1層57を外周面12の形状に応じて弾性変形させることができる。このため、外周面12の半径と凹曲面52の曲率半径とが異なっていても、凹曲面52を外周面12に面接触させることができる。また、ロープ溝13の断面形状と凸部54の断面形状とが異なっていても、凸部54をロープ溝13に嵌め込むことができる。したがって、1種類のロープ吊り治具50によって、直径の異なる様々な返し車10に対応することができる。また、1種類のロープ吊り治具50によって、ロープ溝13の径が異なる様々な返し車10に対応することができる。また、第1層57及び第2層58は、接着などにより、容易に一体化することができる。
【0067】
実施の形態4.
実施の形態4に係るエレベータのロープ吊り治具について説明する。
図19は、本実施の形態に係るロープ吊り治具の構成を示す断面図である。
図19には、
図4と対応するロープ吊り治具50及び返し車10の断面が示されている。
【0068】
図19に示すように、ロープ吊り治具50の治具本体51の全体は、摩擦係数が大きくかつ弾性率が高い素材、例えばゴムなどによって形成されている。これにより、凹曲面52は、摩擦係数が大きくかつ弾性率が高い素材によって形成される。また、ロープ巻掛け面53も、摩擦係数が大きくかつ弾性率が高い素材によって形成される。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0069】
本実施の形態によれば、実施の形態2及び3の両方の効果が得られる。また、本実施の形態によれば、異種部材同士の接着が不要となるため、ロープ吊り治具50の製造工程を簡略化できる。
【0070】
実施の形態5.
実施の形態5に係るエレベータのロープ吊り治具について説明する。
図20は、本実施の形態に係るロープ吊り治具の構成を示す断面図である。
図20には、
図4と対応するロープ吊り治具50及び返し車10の断面が示されている。
【0071】
図20に示すように、返し車10の外周面12には、4つのロープ溝13が形成されている。ロープ吊り治具50の凹曲面52には、4つの凸部54が形成されている。各凸部54は、対応するロープ溝13に嵌め込まれる。ロープ吊り治具50のロープ巻掛け面53には、ロープ40を個別に収容する4つのロープ溝55が形成されている。4つのロープ溝55は、ロープ吊り治具50の厚み方向に並列している。
【0072】
ロープ吊り治具50の治具本体51は、ロープ吊り治具50の厚み方向に積層された4つの層部材51a、51b、51c、51dを有している。4つの層部材51a、51b、51c、51dは、互いに分離可能である。各層部材51a、51b、51c、51dには、1つの凸部54及び1つのロープ溝55が形成されている。すなわち、4つの凸部54のそれぞれは、4つの層部材51a、51b、51c、51dのそれぞれに形成されている。4つのロープ溝55のそれぞれは、4つの層部材51a、51b、51c、51dのそれぞれに形成されている。
【0073】
4つの層部材51a、51b、51c、51dは、鉄線、ボルトなどを用いて一体化されている。本実施の形態では、ロープ40が4本であるため、治具本体51として一体化される層部材の個数は4つである。治具本体51として一体化される層部材の個数は、ロープ40の本数に応じて変更される。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0074】
以上説明したように、本実施の形態に係るエレベータのロープ吊り治具50において、治具本体51は、複数のロープ40が巻き掛けられている返し車10に取り付け可能になっている。ロープ巻掛け面53には、ロープ40を個別に収容する複数のロープ溝55が形成されている。複数のロープ溝55は、治具本体51の厚み方向に並んでいる。治具本体51は、互いに分離可能に治具本体51の厚み方向に積層された複数の層部材51a、51b、51c、51dを有している。複数のロープ溝55のそれぞれは、複数の層部材51a、51b、51c、51dのそれぞれに形成されている。この構成によれば、層部材51a、51b、51c、51dの個数を変更することにより、ロープ吊り治具50を様々なロープ本数に対応させることができる。
【0075】
実施の形態6.
実施の形態6に係るエレベータの滑車の交換方法について説明する。
図21及び
図22は、本実施の形態に係るエレベータの滑車の交換方法を示す図である。
図21は、
図1に対応する正面図である。
図22は、
図2に対応する側面図である。
図23は、本実施の形態に係るエレベータの滑車の交換方法に用いられる自在シャックルの構成を示す正面図である。
図24は、本実施の形態に係るエレベータの滑車の交換方法に用いられる自在シャックルの構成を示す側面図である。
【0076】
図21~
図24に示すように、本実施の形態では、ロープ吊り治具50を返し車梁30に固定する際に、自在シャックル80等の吊元、玉掛けロープ84及びフック85が用いられる。
【0077】
自在シャックル80は、胴部81と、U字形状のシャックル本体82と、を有している。シャックル本体82の両端部は、胴部81の側面に回転自在に接続されている。胴部81の中心には、貫通穴が形成されている。貫通穴には、取付用のボルト83が通されている。吊元としては、自在シャックル80以外の吊り金具を用いることもできる。
【0078】
本実施の形態では、ロープ吊り治具50の穴56aには、ロープ吊り治具50の厚み方向における両側から、自在シャックル80が1つずつ取り付けられている。一方の自在シャックル80には、玉掛けロープ84の一端が接続されている。他方の自在シャックル80には、玉掛けロープ84の他端に設けられたフック85が接続されている。玉掛けロープ84は、返し車梁30に掛けられている。
【0079】
同様に、ロープ吊り治具50の穴56bには、ロープ吊り治具50の厚み方向における両側から、自在シャックル80が1つずつ取り付けられている。一方の自在シャックル80には、玉掛けロープ84の一端が接続されている。他方の自在シャックル80には、玉掛けロープ84の他端に設けられたフック85が接続されている。玉掛けロープ84は、返し車梁30に掛けられている。
【0080】
これにより、ロープ吊り治具50は、自在シャックル80、玉掛けロープ84及びフック85によって返し車梁30に固定され、ロープ40にかかる荷重を支持できる状態になる。その後、実施の形態1と同様に、返し車10、返し車取付金20及び返し車取付金21が返し車梁30から取り外され、新規の巻上機70が取り付けられる。
【0081】
以上説明したように、本実施の形態に係るエレベータの滑車の交換方法では、自在シャックル80、玉掛けロープ84及びフック85を用いて、ロープ吊り治具50を返し車梁30に取り付ける。自在シャックル80は、吊元の一例である。
【0082】
この構成によれば、吊板を固定するための貫通穴30a及び貫通穴30bが返し車梁30に形成されていない場合であっても、自在シャックル80、玉掛けロープ84及びフック85を用いてロープ吊り治具50を返し車梁30に吊り下げることができる。これにより、ロープ吊り治具50を返し車梁30に取り付けることができる。
【0083】
上記実施の形態では、既設の返し車10から新規の巻上機70の綱車73への交換を例に挙げたが、これには限られない。上記実施の形態は、既設の巻上機から新規の巻上機への交換、既設の吊り車から新規の吊り車への交換など、ロープが巻き掛けられている既設の各種滑車から新規の各種滑車への交換に適用できる。
【0084】
上記の各実施の形態は、互いに組み合わせて実施することが可能である。
【0085】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0086】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0087】
(付記1)
既設の滑車の外周面のうちロープが巻き掛けられていない部分にロープ吊り治具を取り付け、
前記既設の滑車を前記ロープ吊り治具と共に回転させて、前記ロープ吊り治具を前記ロープと前記既設の滑車との間に入り込ませ、
前記ロープにかかる荷重を前記ロープ吊り治具に支持させた状態で、前記ロープ吊り治具を昇降路内の支持部材に固定し、
前記既設の滑車を取り外して新規の滑車を取り付けるエレベータの滑車の交換方法。
(付記2)
前記ロープ吊り治具及び前記支持部材のそれぞれにボルトによって固定される吊板を用いて、前記ロープ吊り治具を前記支持部材に固定する付記1に記載のエレベータの滑車の交換方法。
(付記3)
吊元、玉掛けロープ及びフックを用いて、前記ロープ吊り治具を前記支持部材に固定する付記1に記載のエレベータの滑車の交換方法。
(付記4)
凹曲面とロープ巻掛け面とが形成されている治具本体
を備え、
前記治具本体は、既設の滑車の外周面のうちロープが巻き掛けられていない部分に前記凹曲面を対向させて前記既設の滑車に取り付け可能になっており、
前記治具本体が前記既設の滑車に取り付けられている状態では、前記既設の滑車が回転して前記治具本体が前記ロープと前記既設の滑車との間に入り込むことにより、前記ロープが前記ロープ巻掛け面に巻き掛けられるエレベータのロープ吊り治具。
(付記5)
前記凹曲面の曲率半径は、前記外周面の半径と等しい付記4に記載のエレベータのロープ吊り治具。
(付記6)
前記ロープ巻掛け面には、前記ロープを収容する治具ロープ溝が形成されている付記4又は付記5に記載のエレベータのロープ吊り治具。
(付記7)
前記治具ロープ溝には、アンダーカットが形成されている付記6に記載のエレベータのロープ吊り治具。
(付記8)
前記凹曲面には、前記外周面の滑車ロープ溝に嵌め込まれる凸部が形成されている付記4~付記7のいずれか一項に記載のエレベータのロープ吊り治具。
(付記9)
前記治具本体には、前記既設の滑車又は昇降路内の支持部材に前記治具本体を固定するための穴が形成されている付記4~付記8のいずれか一項に記載のエレベータのロープ吊り治具。
(付記10)
前記ロープ巻掛け面の前記ロープとの摩擦係数は、前記外周面と前記ロープとの摩擦係数と同等以上である付記4~付記9のいずれか一項に記載のエレベータのロープ吊り治具。
(付記11)
前記凹曲面は、弾性材料によって形成されている付記4~付記10のいずれか一項に記載のエレベータのロープ吊り治具。
(付記12)
前記治具本体は、複数の前記ロープが巻き掛けられている前記既設の滑車に取り付け可能になっており、
前記ロープ巻掛け面には、前記ロープを個別に収容する複数の治具ロープ溝が形成されており、
前記複数の治具ロープ溝は、前記治具本体の厚み方向に並んでおり、
前記治具本体は、互いに分離可能に前記治具本体の厚み方向に積層された複数の層部材を有しており、
前記複数の治具ロープ溝のそれぞれは、前記複数の層部材のそれぞれに形成されている付記4~付記11のいずれか一項に記載のエレベータのロープ吊り治具。
【符号の説明】
【0088】
10 返し車、11 回転軸、12 外周面、13 ロープ溝(返し車ロープ溝)、20、21 返し車取付金、30 返し車梁、30a、30b 貫通穴、40 ロープ、50 ロープ吊り治具、51 治具本体、51a、51b、51c、51d 層部材、52 凹曲面、53 ロープ巻掛け面、54 凸部、55 ロープ溝(滑車ロープ溝)、56a、56b、56c 穴、57 第1層、58 第2層、60 鉄線、61a、61b、62a、62b 吊板、61a1、61a2、62a1、62a2 通し穴、61b1、61b2、62b1、62b2 ねじ穴、63a、63b、64a、64b ボルト、70 巻上機、71 防振ゴム、72 巻上機取付台、73 綱車、80 自在シャックル、81 胴部、82 シャックル本体、83 ボルト、84 玉掛けロープ、85 フック。