(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090611
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】電動車両用バッテリの認証方法、およびこれを用いた電動車両
(51)【国際特許分類】
B62J 43/13 20200101AFI20240627BHJP
B62H 5/00 20060101ALI20240627BHJP
B62M 6/45 20100101ALI20240627BHJP
B62M 6/90 20100101ALI20240627BHJP
【FI】
B62J43/13
B62H5/00 Z
B62M6/45
B62M6/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206595
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000112978
【氏名又は名称】ブリヂストンサイクル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】藤木 優佑
(57)【要約】
【課題】電動アシスト自転車のバッテリの盗難防止に有効な車両用バッテリの認証方法を提供する。
【解決手段】電動車両用バッテリと、電動車両用バッテリを制御するために電動車両に搭載するコントローラと、を有する電動車両用バッテリ装置における電動車両用バッテリの認証方法であって、電動車両用バッテリに、この電動車両用バッテリに固有のコードを入力し、電動車両用バッテリとコントローラとのペアリングを可能にする認証モードに移行する認証モード移行工程1と、認証モードに移行後、電動車両用バッテリとコントローラとのペアリングを行い、バッテリおよびコントローラのうちいずれか一方に、他方をペアリング相手として認識させる、またはバッテリおよびコントローラの両方に、それぞれペアリング相手として認識させるペアリング工程2と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両用バッテリと、前記電動車両用バッテリを制御するために電動車両に搭載するコントローラと、を有する電動車両用バッテリ装置における電動車両用バッテリの認証方法であって、
前記電動車両用バッテリに、該電動車両用バッテリに固有のコードを入力し、前記電動車両用バッテリと前記コントローラとのペアリングを可能にする認証モードに移行する認証モード移行工程と、
前記認証モードに移行後、前記電動車両用バッテリと前記コントローラとのペアリングを行い、前記電動車両用バッテリおよび前記コントローラのうちいずれか一方に、他方をペアリング相手として認識させる、または前記電動車両用バッテリおよび前記コントローラの両方に、それぞれペアリング相手として認識させるペアリング工程と、
を有することを特徴とする電動車両用バッテリの認証方法。
【請求項2】
前記認証モード移行工程を、前記電動車両用バッテリを、前記コントローラまたは充電器に搭載し、前記バッテリに固有のコードを入力することで行う請求項1記載の電動車両用バッテリの認証方法。
【請求項3】
電動車両用バッテリと、前記電動車両用バッテリを制御するために電動車両に搭載するコントローラと、を有する電動車両用バッテリ装置を用いた電動車両において、
請求項1または2記載の電動車両用バッテリの認証方法を用いることを特徴とする電動車両。
【請求項4】
電動車両が電動アシスト自転車である請求項3記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両用バッテリの認証方法、およびこれを用いた電動車両に関し、詳しくは、特に、電動アシスト自転車のバッテリの盗難防止に有効な電動車両用バッテリの認証方法、およびこれを用いた電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電動アシスト自転車は、通常、バッテリと、このバッテリの動作を制御するためのコントローラと、を車体に搭載している。このコントローラはバッテリと電気的に接続可能とされている。そして、バッテリは1日から1週間程度の利用ごとに充電する必要があるため、バッテリは、電動アシスト自転車との脱着や運搬が容易に行えるように設計されている。しかしながら、このような設計の結果、電動アシスト自転車のバッテリは、盗難に遭うリスクがある。
【0003】
バッテリの盗難対策としては、物理的な鍵を使ってバッテリを車体に固定する方法が考えられるが、鍵が破壊されてバッテリが盗難されるという被害も報告されている。このような中、特許文献1では、バッテリが、使用開始時に搭載されたフレーム装置(コントローラ)の認証情報を記憶して、その認証情報を保持しているフレーム装置以外には電力を供給しない構成を提案している。これにより、例えばバッテリが盗難に遭った場合でも、バッテリ装置は、最初に搭載されたフレーム装置以外の他のフレーム装置では使用できなくなるので、安全性の高い盗難防止機能を発揮することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案されているバッテリ装置では、バッテリは、フレーム装置との1回目の接続により、認証情報を記憶してしまうため、新たに購入した予備のバッテリの使用や、別の電動アシスト自転車へのバッテリの転用、複数の電動アシスト自転車間でのバッテリの共用について詳細な検討がなされていない。そのため、バッテリの盗難を防止しつつ、予備のバッテリの使用やバッテリの転用、共用にも応用が利く、新たなバッテリの認証方法を確立する必要がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記問題点を解消した、特に、電動アシスト自転車のバッテリの盗難防止に有効な電動車両用バッテリの認証方法、およびこれを用いた電動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、各バッテリに固有のコードを付与し、この固有のコードを用いることで、バッテリとコントローラとのペアリングが可能となるとの構成を採用することで、上記課題を解消することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の電動車両用バッテリの認証方法は、電動車両用バッテリと、前記電動車両用バッテリを制御するために電動車両に搭載するコントローラと、を有する電動車両用バッテリ装置における電動車両用バッテリの認証方法であって、
前記電動車両用バッテリに、該電動車両用バッテリに固有のコードを入力し、前記電動車両用バッテリと前記コントローラとのペアリングを可能にする認証モードに移行する認証モード移行工程と、
前記認証モードに移行後、前記電動車両用バッテリと前記コントローラとのペアリングを行い、前記電動車両用バッテリおよび前記コントローラのうちいずれか一方に、他方をペアリング相手として認識させる、または前記電動車両用バッテリおよび前記コントローラの両方に、それぞれペアリング相手として認識させるペアリング工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の電動車両用バッテリの認証方法においては、前記認証モード移行工程が、前記電動車両用バッテリを、前記コントローラまたは充電器に搭載し、前記バッテリに固有のコードを入力することで行われることが好ましい。
【0010】
本発明の電動車両は、電動車両用バッテリと、前記電動車両用バッテリを制御するために電動車両に搭載するコントローラと、を有する電動車両用バッテリ装置を用いた電動車両において、
本発明の電動車両用バッテリの認証方法を用いることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の電動車両としては、特に、電動アシスト自転車が好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のバッテリの認証方法によれば、電動車両、特に、電動アシスト自転車のバッテリの盗難防止に有効な電動車両用バッテリの認証方法、およびこれを用いた電動車両を提供することができる。本発明の電動車両用バッテリの認証方法は、予備のバッテリを使用する場合、異なる電動車両へバッテリを転用する場合、さらには複数の電動車両でバッテリを共用する場合であっても、優れた盗難防止効果を発揮できる。本発明の電動車両用バッテリの認証方法は、従来からの電動車両の構成要件のみで構築できる簡便なシステムである。また、バッテリとコントローラとのペアリングに、正規の使用者しか知りえないバッテリの固有のコードを必要とするため、バッテリとコントローラのみでペアリングを行う場合より盗難防止効果が高い。さらに、情報端末やそれを用いて操作するアプリケーション、さらにはインターネットのような通信回線を必要としないため、新たなシステムの構築やシステムのアップデートが不要であるという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のバッテリの認証方法の一好適な実施の形態を示すフロー図である。
【
図2】本発明のバッテリの認証方法の他の好適な実施の形態のフロー図である。
【
図3】本発明の一好適な実施の形態のバッテリの認証方法を利用したバッテリ装置の使用の一例を示した説明図である。
【
図4】本発明の電動車両用バッテリの認証方法を利用したバッテリ装置の使用の他の例を示した説明図である。
【
図5】本発明の電動車両用バッテリの認証方法を利用したバッテリ装置の使用の別の他の例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の電動車両用バッテリの認証方法、およびこれを用いた電動車両について、詳細に説明する。
本発明の電動車両用バッテリの認証方法(以下、単に「バッテリの認証方法」とも称す)は、電動アシスト自転車に好適に適用できるバッテリの認証方法である。本発明のバッテリの認証方法では、電動車両に電力を供給する電動車両用バッテリ(以下、それぞれ単に「車両」および「バッテリ」とも称す)と、バッテリを制御するために車両に搭載するコントローラと、を有する電動車両用バッテリ装置(以下、それぞれ単に「バッテリ装置」とも称す)を用いる。
【0015】
図1,2は、本発明のバッテリの認証方法の概念を示すフロー図である。本発明のバッテリの認証方法は、バッテリに、このバッテリに固有のコードを入力し、このバッテリとコントローラとのペアリングを可能にする認証モードに移行する認証モード移行工程1と、認証モードに移行後、バッテリとコントローラとのペアリングを行うペアリング工程2とを含んでいる。
図1は、本発明のバッテリの認証方法の一好適な実施の形態のフロー図であり、バッテリをコントローラに搭載し、このバッテリにこのバッテリの固有のコードを入力し、バッテリをコントローラとのペアリングが可能な認証モードに移行させ(認証モード移行工程1)、その後、バッテリとコントローラとのペアリングを行っている(ペアリング工程2)。
図2は、本発明のバッテリの認証方法の他の好適な実施の形態のフロー図であり、バッテリを充電器に搭載し、このバッテリにこのバッテリの固有のコードを入力し、バッテリをコントローラとのペアリングが可能な認証モードに移行させ(認証モード移行工程1)、その後、バッテリをコントローラに搭載して、バッテリとコントローラとのペアリングを行っている(ペアリング工程2)。
【0016】
図3は、本発明の一好適な実施の形態の電動車両用バッテリの認証方法を利用したバッテリ装置の使用の一例を示した説明図である。
図3では、使用者Aが所有するバッテリAとコントローラAとを、バッテリAの固有のコードAを用いてペアリングが完了した状態であり、また、使用者Bが所有するバッテリBとコントローラBとを、バッテリBの固有のコードBを用いてペアリングが完了した状態である。ここで、使用者B(窃盗者)は、バッテリA(窃盗バッテリ)と自己の有するコントローラBとをペアリングしようとしても、バッテリAの固有のコードAを入力できないため、バッテリAとコントローラBとをペアリングできない。すなわち、使用者B(窃盗者)は、バッテリAを利用することができない。以下、本発明のバッテリの認証方法の各工程を詳細に説明する。
【0017】
(認証モード移行工程)
認証モード移行工程は、バッテリに固有のコードを入力し、このバッテリとコントローラとのペアリングを可能にする工程であり、バッテリとコントローラとをペアリングするための準備段階にあたるものである。ここで、バッテリの固有のコードは、バッテリ装置や電動車両のメーカーが付与するものであり、正規の使用者のみが知り得るコードである。したがって、バッテリの正規の所有者のみが、この認証モード移行工程を実行することができる。そのため、例え、バッテリが盗難被害に遭ったとしても、窃盗者は、このバッテリと自己の有するコントローラとをペアリングすることができず、窃盗者は、このバッテリを使用することができない。その結果、窃盗者の窃盗意欲を失わせることにより、バッテリの盗難を間接的に防止することができる。
【0018】
本発明のバッテリの認証方法においては、認証モード移行工程1の具体的な構成については特に制限はないが、バッテリをコントローラまたは充電器に最初に搭載した際に行うことができる。例えば、
図1に示すように、バッテリをコントローラに最初に搭載にした際に、バッテリの固有のコードを入力することにより行ってもよく、
図2に示すように、バッテリを充電器に最初に搭載にした際に、バッテリの固有のコードを入力することにより行ってもよい。作業の簡略化を重視する場合、認証モード移行工程1は、バッテリをコントローラに最初に搭載した際に行うことが好ましい。この場合、次工程であるペアリング工程2にスムーズにつながることになる。また、バッテリの盗難防止を重視する場合、バッテリを充電器に最初に搭載した際に行うことが好ましい。この場合、バッテリとコントローラとをペアリングさせるためには、さらに充電器も必要になるため、窃盗者の窃盗意欲を失わせるという効果が、より強く発揮される。
【0019】
なお、認証モード移行工程1におけるバッテリへの固有のコードの入力は、バッテリもしくはコントローラや充電器に設けられた入力手段で、この固有のコードをバッテリに入力して行うこととすることができる。固有のコードの入力手段については特に制限はなく、例えば、物理的な操作ボタンであっても、タッチパネル式であってもよい。
【0020】
(ペアリング工程)
ペアリング工程2は、認証モードに移行後に、バッテリとコントローラとのペアリングを行う工程である。このペアリング工程2では、バッテリおよびコントローラのいずれか一方が、他方をペアリング相手として認識すればよいが、バッテリとコントローラとの両方が、それぞれをペアリング相手として認識してもよい。これにより、ペアリングしたバッテリとコントローラの組み合わせの場合にのみ、バッテリを使用することができる。
【0021】
(バッテリの起動)
コントローラは、ペアリング相手であるバッテリが搭載された場合、バッテリの起動を許可する。すなわち、コントローラが、搭載されたバッテリをペアリング相手であると認識した場合、バッテリからの電力の供給が行われ、コントローラが、搭載されたバッテリをペアリング相手ではないと認識した場合、バッテリからの電力の供給は行われないことになる。または、バッテリが、コントローラをペアリング相手であると認識した場合、バッテリは電力の供給を許可し、バッテリが、コントローラをペアリング相手ではないと認識した場合、バッテリは電力の供給を行わないことになる。
【0022】
本発明のバッテリの認証方法は、認証モード移行工程1とペアリング工程2を電動車両の使用者が行ってもよいが、これらの工程をバッテリ装置や電動車両のメーカーまたは販売者(販売店)が行ってもよい。すなわち、認証モード移行工程1とペアリング工程2が、バッテリ装置や電動車両のメーカーによりなされた状態で出荷、販売され、使用者は購入した電動車両を使用するだけでよく、使用者は、本発明のバッテリの認証方法を意識しなくても電動車両の使用が可能である。
【0023】
本発明のバッテリ認証システムでは、バッテリを他のコントローラ(車両)に使用する場合、このバッテリと他のコントローラとをペアリングする必要がある。しかしながら、このバッテリの固有のコードを失念、紛失してしまった場合、このバッテリを他のコントローラとペアリングすることはできない。そこで、本発明のバッテリ認証方法を利用するにあたっては、予めバッテリ装置をユーザ登録して、ユーザ情報とバッテリとを紐づけしておき、このユーザ情報に基づいて、バッテリ装置の販売者等からバッテリの固有のコードを再発行してもらうような態様が好ましい。具体的には、登録済のユーザ情報と再発行申請者の情報とを照らし合わせる事によって、バッテリの固有のコードの再発行の可否が決定される。
【0024】
本発明のバッテリの認証方法においては、1つのコントローラに対して複数のバッテリをペアリングしてもよい。すなわち、使用者が所有するコントローラ(車両)と新たなバッテリとを、新たなバッテリの固有のコードを用いてペアリングすれば、1つのコントローラ(車両)に複数のバッテリが使用できることになる。例えば、新たに購入したバッテリを予備バッテリとして使用する場合等が想定できる。
図4は、本発明の電動車両用バッテリの認証方法を利用したバッテリ装置の使用の他の例を示した説明図である。
図4では、使用者Aは、バッテリAとコントローラAとを、バッテリの固有のコードAを用いてペアリングしたバッテリ装置を所有しており、新たにバッテリA2を購入した場合である。この新たなバッテリA2は、バッテリA2の固有のコードA2を用いて、コントローラAとペアリング可能である。そして、バッテリA2も本発明のバッテリの認証方法が採用されているため、盗難抑制効果を発揮することになる。
【0025】
図5は、本発明の電動車両用バッテリの認証方法を利用したバッテリ装置の使用の別の他の例を示した説明図であり、1つのバッテリを複数のコントローラとペアリングを行う場合の例である。
図5では、使用者Aは、バッテリAとコントローラAとがペアリングしたバッテリ装置を所有しており、新たにコントローラA2を搭載した車両を購入した場合の一例である。この場合、バッテリAはコントローラA2とバッテリAの固有のコードAを用いてペアリングすることで、コントローラA2でもバッテリAを使用することができる。
【0026】
本発明のバッテリの認証方法は、電動アシスト自転車におけるバッテリ装置に好適に採用することができるが、本発明のバッテリの認証方法の利用は、これに限られるものではない。例えば、自転車であれば、電装品に電力を供給するバッテリ装置にも利用することができる。電装品としては、競技用自転車であれば、変速装置、サスペンション、表示装置等の電気的に制御可能な電装品や、これらの制御装置等を挙げることができる。これら以外の電装品としては、照明機器、バックモニター、サイクルコンピュータ、ナビゲーション、方向指示器等を挙げることができる。また、本発明のバッテリの認証方法は、自転車以外にも電動ユニット付きキックボード(登録商標)、セグウェイ(登録商標)、電動ユニット付きスケートボード等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 認証モード移行工程
2 ペアリング工程