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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090614
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】移送器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A61B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206601
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】早川 浩一
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM33
4C160NN02
4C160NN30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】医療用シートを処置対象部に効率よく移送するための、移送器具を提供する。
【解決手段】移送器具10の第2キャリア部材20は、医療用シートを保持可能な第2支持面74を含むシート状の第2支持部50を備える。第2支持部は、第2支持部の厚み方向に貫通した貫通孔73を有する。貫通孔は、第2支持部の幅方向の一端部と他端部との間で、幅方向に直交する長手方向に延在している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具であって、
外筒と、
前記外筒の軸方向に延在して前記外筒の内部に前記軸方向に沿って移動可能に配置される第1シャフトと、前記第1シャフトの先端部に配置され、前記医療用シートを保持可能な第1支持面を含むシート状の第1支持部とを有する第1キャリア部材と、
前記第1シャフトに沿って延在して前記第1シャフトに沿って移動可能に設けられる第2シャフトと、前記第2シャフトの先端部に配置され、前記医療用シートを保持可能な第2支持面を含むシート状の第2支持部とを有する第2キャリア部材と、
を備え、
前記第1支持部が前記外筒内に収容されるように前記第1及び第2シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させた第1位置において、前記第1支持部及び前記第2支持部は、湾曲変形した状態で前記外筒内に収容され、
前記第1支持部が前記外筒の先端開口から突出するように前記第1及び第2シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させた第2位置において、前記第1支持部及び前記第2支持部は、前記外筒から前記先端方向に露出することで展開し、
前記第2支持部は、前記第2支持部の厚み方向に貫通した貫通孔を備え、
前記貫通孔は、前記第2支持部の幅方向の一端部と他端部との間で、前記幅方向に直交する縦方向に延在する、移送器具。
【請求項2】
請求項1記載の移送器具において、
前記貫通孔は、前記第2支持部の前記幅方向の中央に配置される、移送器具。
【請求項3】
請求項1記載の移送器具において、
前記第2支持部の前記第2支持面は、前記第2支持面に前記医療用シートが接触したときの前記第2支持部と前記医療用シートとの間の摩擦抵抗を前記第2支持部の移動方向に応じて変化させる抵抗変化部を備え、
前記第2支持部によって前記医療用シートを前記先端方向に向けて押し出すときに前記第2支持部と前記医療用シートとの間に働く第1摩擦抵抗が、前記医療用シートに対して前記第2支持部を前記基端方向に相対移動させるときに前記第2支持部と前記医療用シートとの間に働く第2摩擦抵抗よりも大きくなるように、前記抵抗変化部が構成されている、移送器具。
【請求項4】
請求項3記載の移送器具において、
前記抵抗変化部は、前記第2支持部の前記縦方向に沿って配置された複数の凸部を有し、
前記複数の凸部の各々は、前記第2支持部の先端に向かうにつれて徐々に高くなるように傾斜する傾斜面を有する、移送器具。
【請求項5】
請求項4記載の移送器具において、
前記第2支持部の前記第2支持面と直交する方向から見た平面視において、前記複数の凸部が前記第2支持部の前記縦方向及び前記幅方向に互いに隣接し、前記縦方向又は前記幅方向に互いに隣接する凸部は、前記幅方向又は前記縦方向に互いにずれて配置される、移送器具。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の移送器具において、
前記第1支持部は、前記第1支持面を含む表面と、前記表面の反対面である裏面とを有した可撓性シートにより形成され、
前記第1支持部は、前記第1シャフトの移動方向と直交する前記第1支持面の幅方向の両側部から上方に向けて突出した一対の突出部を有し、
前記第1位置において、前記裏面における前記第1支持部の幅方向の両側同士が互いに接触するように前記第1支持部が湾曲変形した状態で前記外筒内に収容される、移送器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、例えば、臓器移植に用いられる医療用シート(細胞シート)を生体の処置対象部に移送するための移送器具が開示されている。この移送器具は、シャフトと、シャフトの先端部に設けられた支持部とを備える。支持部は、医療用シートを載せるためのシート支持体を有する。移送器具では、シート支持体の支持面に載せられた医療用シートの上面を鉗子等で押さえながら移送器具をスライドさせることにより、医療用シートを支持部から処置対象部に移送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-000511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術では、医療用シートを支持部の支持面から生体の処置対象部に移送する時に鉗子等で医療用シートの上面を押さえながら移送器具を操作する必要があるため、医療用シートを処置対象部に効率よく移送できないことが懸念される。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の態様は、医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具であって、外筒と、前記外筒の軸方向に延在して前記外筒の内部に前記軸方向に沿って移動可能に配置される第1シャフトと、前記第1シャフトの先端部に配置され、前記医療用シートを保持可能な第1支持面を含むシート状の第1支持部とを有する第1キャリア部材と、前記第1シャフトに沿って延在して前記第1シャフトに沿って移動可能に設けられる第2シャフトと、前記第2シャフトの先端部に配置され、前記医療用シートを保持可能な第2支持面を含むシート状の第2支持部とを有する第2キャリア部材と、を備え、前記第1支持部が前記外筒内に収容されるように前記第1及び第2シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させた第1位置において、前記第1支持部及び前記第2支持部は、湾曲変形した状態で前記外筒内に収容され、前記第1支持部が前記外筒の先端開口から突出するように前記第1及び第2シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させた第2位置において、前記第1支持部及び前記第2支持部は、前記外筒から前記先端方向に露出することで展開し、前記第2支持部は、前記第2支持部の厚み方向に貫通した貫通孔を備え、前記貫通孔は、前記第2支持部の幅方向の一端部と他端部との間で、前記幅方向に直交する縦方向に延在する、移送器具である。
【0007】
この移送器具によれば、移送器具は第2キャリア部材を備えるため、他のデバイス(鉗子等)を用いることなく、第2キャリア部材を利用して医療用シートを第1支持部上から処置対象部へと載せ替えることができる。このため、医療用シートを処置対象部に効率よく移送することができる。第2支持部に貫通孔を設けることで、第2支持部をより変形させやすくし、第1位置において第1支持部に追従させるように第2支持部を変形させて密着させることができる。これにより、第2支持部を第1支持部と共に円滑に変形させて外筒内に収容することができる。
【0008】
(2)上記の(1)記載の移送器具において、前記貫通孔は、前記第2支持部の前記幅方向の中央に配置されるとよい。
【0009】
この構成によれば、第1及び第2支持部が外筒内に収容されるとき、幅方向中央に配置された貫通孔によってさらに容易に第2支持部を変形させることが可能である。
【0010】
(3)上記の(1)又は(2)記載の移送器具において、前記第2支持部の前記第2支持面は、前記第2支持面に前記医療用シートが接触したときの前記第2支持部と前記医療用シートとの間の摩擦抵抗を前記第2支持部の移動方向に応じて変化させる抵抗変化部を備え、前記第2支持部によって前記医療用シートを前記先端方向に向けて押し出すときに前記第2支持部と前記医療用シートとの間に働く第1摩擦抵抗が、前記医療用シートに対して前記第2支持部を前記基端方向に相対移動させるときに前記第2支持部と前記医療用シートとの間に働く第2摩擦抵抗よりも大きくなるように、前記抵抗変化部が構成されているとよい。
【0011】
この構成によれば、第2支持部によって医療用シートを生体の処置対象部に向けて押し出すとき、第2支持部と医療用シートとの間には相対的に大きな第1摩擦抵抗が働くため、医療用シートを第1支持部上から処置対象部へと効率的に載せ替えることができる。医療用シートを処置対象部に載せた後、処置対象部に対して第2支持部を後退させるとき、第2支持部と医療用シートとの間には相対的に小さな第2摩擦抵抗が働くため、医療用シートから第2支持部を円滑に離間させることができる。
【0012】
(4)上記の(3)記載の移送器具において、前記抵抗変化部は、前記第2支持部の前記縦方向に沿って配置された複数の凸部を有し、前記複数の凸部の各々は、前記第2支持部の先端に向かうにつれて徐々に高くなるように傾斜する傾斜面を有するとよい。
【0013】
この構成によれば、傾斜面を有した複数の凸部を設けることで、第2摩擦抵抗が第1摩擦抵抗に対して小さな抵抗変化部を容易に実現することが可能である。
【0014】
(5)上記の(4)記載の移送器具において、前記第2支持部の前記第2支持面と直交する方向から見た平面視において、前記複数の凸部が前記第2支持部の前記縦方向及び前記幅方向に互いに隣接し、前記縦方向又は前記幅方向に互いに隣接する凸部は、前記幅方向又は前記縦方向に互いにずれて配置されるとよい。
【0015】
この構成によれば、第2支持部において互い違いに配置された複数の凸部によって、医療用シートを確実に先端方向へ押し出すことができる。
【0016】
(6)上記の(1)~(5)のいずれか1つに記載の移送器具において、前記第1支持部は、前記第1支持面を含む表面と、前記表面の反対面である裏面とを有した可撓性シートにより形成され、前記第1支持部は、前記第1シャフトの移動方向と直交する前記第1支持面の幅方向の両側部から上方に向けて突出した一対の突出部を有し、前記第1位置において、前記裏面における前記第1支持部の幅方向の両側同士が互いに接触するように前記第1支持部が湾曲変形した状態で前記外筒内に収容されるとよい。
【0017】
この構成によれば、第1支持部を外筒内に収容するとき、一対の突出部が湾曲変形して凸状となった突出部の裏面同士が互いに接触し、一対の突出部が第1支持面に向かって変位して、第1支持部がハート型に湾曲変形する。これにより、外筒内において、第1支持部をハート型に収容できるため、第1支持部がハート型ではない形状に変形する場合に比べ、第1支持部に保持された医療用シートの破損を抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、医療用シートを破損させることなく処置対象部に効率よく移送することができる。第2支持部に貫通孔を設けることで、第2支持部をより変形させやすくし、第1位置において第1支持部に追従させるように第2支持部を変形させて密着させることができる。これにより、第2支持部を第1支持部と共に円滑に変形させて外筒内に収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態に係る移送器具の斜視図である。
図2図2は、図1の移送器具の分解斜視図である。
図3図3は、図1の移送器具の先端部の平面図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿った縦断面図である。
図5図5は、図4の第2支持部近傍の拡大断面図である。
図6図6は、図3のVI-VI線に沿った横断面図である。
図7図7は、変形例に係る第2支持部を有した移送器具の拡大断面図である。
図8図8は、図1の移送器具を用いた医療用シートの移送方法の手順を示すフローチャートである。
図9図9は、シート載置工程の第1説明図である。
図10図10は、シート載置工程の第2説明図である。
図11図11は、収容工程の説明図である。
図12図12は、図11のXII-XII線に沿った横断面図である。
図13図13は、図11のXIII-XIII線に沿った横断面図である。
図14図14は、配置工程の説明図である。
図15図15は、展開工程の説明図である。
図16図16は、図15のXVI-XVI線に沿った断面図である。
図17図17は、移動工程の説明図である。
図18図18は、抜去工程の説明図である。
図19図19は、第1変形例に係る移動規制部を備えた移送器具の断面図である。
図20図20Aは、第2変形例に係る移動規制部を示す移送器具の先端部の平面図であり、図20Bは、図20Aの移送器具の第1支持部が外筒に収容された状態を示す平面図である。
図21図21は、第1支持部を有した第3変形例に係る移送器具の先端部の平面図である。
図22図22は、図21のXXII-XXII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示されるように、本実施形態に係る移送器具10は、医療用シート300を生体の処置対象部に移送するための医療機器である。移送器具10は、例えば、虚血性心疾患による重症心不全の治療に使用される。この場合、医療用シート300は、心臓400の移植対象部402(生体の処置対象部)に移植される(図14図18参照)。移送器具10では、複数枚の医療用シート300を移植対象部402に貼付することができる。
【0021】
このような医療用シート300は、医療用途の医薬品や再生医療等製品、医療機器等を含む。医療用シート300は、フィルム状、膜状(ゲル状の物体)等のシート状に形成されている。医療用シート300は、フィブリン等を塗布して補強されてもよい。細胞を含む再生医療等製品は、例えば、細胞シート(シート状細胞培養物)、スフェロイド等を含む。細胞シートは、自家細胞又は他家細胞を培養して形成することができる。細胞シートは、例えば、骨格筋由来細胞シート又はiPS細胞由来心筋細胞シートである。
【0022】
医療用シート300は、組織接着剤、局所麻酔剤等を含んでもよい。医療用シート300の厚さは、例えば約100μmであり、医療用シート300の直径は、例えば約60mmである。ただし、医療用シート300の厚さ及び直径(大きさ)は、適宜設定可能である。
【0023】
医療用シート300は、心臓400以外の臓器(例えば、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸、食道等)に移植されるシートであってもよい。また、医療用シート300は、医療用途であれば、例えば、癒着を防止するためのシートであってもよい。
【0024】
図1及び図2に示すように、移送器具10は、器具本体12と、内視鏡14と、固定部材16とを備える。器具本体12は、第1キャリア部材18と、第2キャリア部材20と、外筒22と、移動規制部23とを有する。なお、移送器具10は、内視鏡14を備える場合に限定されない。
【0025】
図2において、第1キャリア部材18は、第1シャフト24及び第1支持部26を有する。
【0026】
第1シャフト24は、第1内腔28を有する管状体(本実施形態では、円管部材)である。第1内腔28は、第1シャフト24の先端(矢印X1方向の端)に開口すると共に第1シャフト24の基端(矢印X2方向の端)に開口する。第1シャフト24の基端には、第2シャフト48の外周面に密着する気密用の弁体55が設けられる。なお、第1シャフト24は、管状体に限定されるものではなく、管状体でなくてもよい。
【0027】
第1シャフト24は、外筒22の軸方向に延在して外筒22の内部に軸方向に沿って移動可能に配置される。第1シャフト24は、例えば、樹脂材料によって構成されている。第1シャフト24の構成材料としては、特に限定されないがポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等が挙げられる。第1シャフト24は、金属材料によって構成されてもよい。
【0028】
第1シャフト24は、可撓性を有してもよい。第1シャフト24は、曲げた形状を保持可能なフレキシブルチューブ部を有してもよい。この場合、体腔内において第1シャフト24を適宜の形状に屈曲させると共にその屈曲形状を保持できる。
【0029】
図2図4に示すように、第1支持部26は、第1シャフト24の先端部に取り付けられる。第1支持部26は、例えば、樹脂材料によって構成されている。第1支持部26は、医療用シート300を保持可能である。第1支持部26は、可撓性を有した樹脂製のシート材(フィルム材)を所定形状に折り曲げることにより形成される。第1支持部26は、例えば、シート成形型によってシート材を所定形状に成形することにより形成される。シート材の肉厚は、特に限定されないが、例えば、100μm以上200μm以下に設定されるのが好ましい。第1支持部26は、第1接合部30及び第1支持本体32を有する。
【0030】
第1支持部26の構成材料としては、特に限定されないが透明性を有することが望ましく、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂等が挙げられる。また、第1支持部26はメッシュ状であってもよい。
【0031】
図4において、第1接合部30は、第1シャフト24の先端部の内周面に接着剤によって接着されている。接着剤としては、特に限定されないが、例えば、UV接着剤、ホットメルト接着剤、瞬間接着剤(例えば、シアノアクリレート系瞬間接着剤)等が挙げられる。第1接合部30は、第1シャフト24の内周面に熱融着されてもよい。
【0032】
図3に示すように、第1支持本体32は、第1接合部30(図4参照)から先端方向に延出している。第1支持本体32は、基端支持部34、中間支持部36、一対の第1突出部38、一対の第2突出部40と、先端支持部42とを有する。
【0033】
基端支持部34は、第1接合部30の先端から先端方向(矢印X1方向)に向かって第1シャフト24の軸線Axに概ね沿うように延出している(図4参照)。基端支持部34は、その延出方向に向かって幅広に形成されている。換言すれば、基端支持部34の幅方向の両側部は、第1接合部30に向かってテーパ状に傾斜している。
【0034】
中間支持部36は、基端支持部34の先端から先端方向(矢印X1方向)に向かって第1シャフト24の軸線Axに対して交差し、第1支持部26の先端方向(矢印X1方向)に向かって延出している(図4参照)。中間支持部36は、先端から基端方向(矢印X2方向)に向けて徐々に幅が小さくなるテーパ状に形成される。
【0035】
図2及び図3において、一対の第1突出部38は、第1シャフト24の移動方向と直交する中間支持部36の幅方向の両側部から上方(矢印Y方向)且つ中間支持部36の幅方向内方に突出している。一対の第1突出部38は、基端支持部34に接続されている。
【0036】
図6に示すように、一対の第1突出部38の各々は、中間支持部36の上面(第1支持面261)に接続される固定端441と、第1支持面261に対して第1突出部38の突出方向に離間した端部である自由端442とを備える。
【0037】
図6に示す第1突出部38の突出方向と直交し、且つ、第1支持面261と直交する断面において、第1突出部38の各々の断面は、自由端442と固定端441との間を構成する中間部443を有する。中間部443は、第1支持面261から離間する方向に向けて凸状に膨出した円弧状である。中間部443の断面は、単一の半径を有した円弧状に限定されず弧状であればよい。換言すれば、図6に示す第1突出部38の断面において、固定端441と自由端442とを結ぶ線分Lに対し、中間部443が外側に配置される。
【0038】
図6に示す第1突出部38の突出方向と直交し、且つ、第1支持面261と直交する断面において、中間部443の曲率Rは、第1支持部26の基端方向(図3中、矢印X2方向)に向かって大きくなる。
【0039】
図3に示すように、一対の第2突出部40は、一対の第1突出部38の先端にそれぞれ繋がっている。一対の第2突出部40は、中間支持部36の幅方向の両側部から上方且つ中間支持部36の幅方向外方に突出している。第2突出部40は、第1突出部38よりも小さな曲率で形成される。第2突出部40は、第1突出部38より第1支持面261に対する突出高さが低い。
【0040】
先端支持部42は、中間支持部36の先端と一対の第2突出部40の先端とに繋がっている。先端支持部42は、先端方向(矢印X1方向)に向かって円弧状に突出している。すなわち、図3に示す第1支持面261と直交する方向から見て、第1支持部26の先端支持部42は、一対の第2突出部40を繋ぐ円弧状である。
【0041】
一対の第1突出部38の各々は、固定端441の基端側に一対の折曲部444を有する。一対の折曲部444の各々は、一対の第1突出部38を第1支持部26の第1支持面261(中間支持部36)に対して折り曲げる(図6参照)。図3に示すように、第1支持部26の折曲部444を折り曲げて外側に凸状に膨出した一対の第1突出部38を形成するとき、第1支持部26となる樹脂製シート材26a(図3中、仮想線形状参照)の幅方向における最大幅Wmとなる箇所の両端部を折曲部444で折り曲げることが好ましい。
【0042】
図3に示す第1支持面261と直交する方向から見たとき、第1支持部26における一対の折曲部444の幅方向の間隔Wが基端方向(矢印X2方向)に向かって徐々に小さくなる。すなわち、第1支持本体32において、一対の折曲部444は、基端方向に向けてテーパ状に形成される。
【0043】
第1支持本体32は、上方(矢印Y方向)を向き第1支持面261を含む表面461と、表面461の反対面である裏面462とを有する。第1支持面261は、基端支持部34の上面、中間支持部36及び先端支持部42の上面に連なった平坦面である。第1支持面261には、第2キャリア部材20の後述する第2支持部50を第1支持面261に対して円滑にスライドできるように潤滑剤が塗布されてもよい。
【0044】
図2に示すように、第2キャリア部材20は、第2シャフト48と、第2支持部50と、ハブ52とを有する。
【0045】
第2シャフト48は、第2内腔57を有する管状体(本実施形態では、円管部材)である。第2シャフト48の軸方向に沿った長さは、第1シャフト24の軸方向に沿った長さよりも長い。第2シャフト48は、第1シャフト24の第1内腔28に挿通されている(図1及び図4参照)。換言すれば、第2シャフト48の先端部は、第1シャフト24の先端開口から先端方向(矢印X1方向)に突出している。第2シャフト48の基端部は、第1シャフト24の基端開口から基端方向(矢印X2方向)に突出している(図1参照)。第2シャフト48は、第1シャフト24に沿って延在して第1シャフト24に沿って移動可能に設けられる。なお、第2シャフト48は、管状体に限定されるものではなく、管状体でなくてもよい。
【0046】
なお、第1シャフト24の第1内腔28と第2シャフト48との間に、スプリング等の弾発部材を設け、弾発部材の弾発力によって第2シャフト48が第1シャフト24に対して基端方向(矢印X2方向)に付勢される構成であってもよい。これにより、第1シャフト24に対して第2シャフト48をユーザが先端方向(矢印X1方向)に移動させた際、ユーザの操作力がなくなることで、第2シャフト48が弾発力によって基端方向に移動可能である。
【0047】
第2シャフト48は、第1支持部26の形状に追従できるように構成される。第2シャフト48の構成材料としては、例えば、第1シャフト24の構成材料よりも柔軟性がある材料が選択される。具体的に、第2シャフト48の構成材料としては、例えば、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、シリコーンゴム、金属コイル(樹脂との複合も含む)等が挙げられる。第2シャフト48は、可撓性を有する。
【0048】
図4に示すように、第2シャフト48は、キャリア保持部54と、第2シャフト48の先端部により構成された押付部56を有する。押付部56は、エラストマ材等の弾性体から形成される。押付部56は、外筒22内に第1支持部26が収容された状態で、第1支持部26を外筒22の内面に押し付ける。
【0049】
キャリア保持部54の先端は、押圧面58を有する。キャリア保持部54は、第1支持部26に支持された医療用シート300の外周端面を押圧面58により先端方向(矢印X1方向)に押圧可能である。本実施形態では、押付部56は、第2支持部50を支持するキャリア保持部54が設けられる。キャリア保持部54は、押圧面58と、取付孔60とを備える。キャリア保持部54は、上方から見て先端方向に向かって幅広に形成されている。キャリア保持部54は、上方から見て台形状に形成されている。図6に示す第2シャフト48の軸線と直交する断面において、キャリア保持部54は、キャリア保持部54の中心線Cを通り且つキャリア保持部54の幅方向と平行な仮想線L1に対して線対称な形状を有する。換言すれば、キャリア保持部54は、仮想線L1を中心として上下方向に対称形状である。
【0050】
具体的には、第2シャフト48の軸線と直交する断面において、キャリア保持部54の断面は、第2シャフト48の軸線と直交する一対の直線部621、622と、一対の直線部621、622の両側に配置され直線部621、622から離間する方向(幅方向外方)に凸状となる一対の凸状部641、642とを有する。凸状部641、642は、断面円弧状に形成される。直線部621、622の延在方向に沿ったキャリア保持部54の第1長さD1(幅寸法)が、延在方向と直交するキャリア保持部54の第2長さD2(厚さ寸法)よりも大きい。すなわち、キャリア保持部54は断面扁平状である。なお、キャリア保持部54は、断面扁平状に形成される場合に限定されず、例えば、断面円形状、断面楕円形状、断面正方形状、断面長方形状等で形成されてもよい。また、凸状部641、642に代えて、外筒22内に第1支持部26が収容された状態で、第1支持部26を外筒22の内面に押し付けられるような凹凸構造をキャリア保持部54に備えてもよい。
【0051】
押付部56と共に第1支持部26が外筒22の内腔78に収容されたとき、押付部56の幅方向両端部(一対の凸状部641、642)によって第1支持部26が外筒22の内腔78に向けて押されるように、押付部56の幅(第1長さD1)が設定される。押付部56の第1長さD1は、例えば、外筒22の内径(内腔78の直径)と同等、若しくは若干大きく設定される。第1支持部26の厚みがあるため、押付部56の第1長さD1は、外筒22の内径よりも若干小さく設定されてもよい。
【0052】
図4において、押圧面58は、キャリア保持部54の先端面に設けられる。押圧面58に取付孔60が開口する。押圧面58には、第2支持部50が取り付けられる。押圧面58は、医療用シート300の外周端面を先端方向(矢印X1方向)に押圧する(図17参照)。押圧面58は、キャリア保持部54の軸線と直交した平坦面である。なお、押圧面58には、第2シャフト48の先端部に向けて液体(例えば、生理食塩水)を第2シャフト48の第2内腔57を経由して供給可能な供給孔(図示せず)を備えていてもよい。液体は、例えばプライミング用、湿潤化用である。
【0053】
取付孔60は、キャリア保持部54の押圧面58に開口する。取付孔60は、押圧面58においてキャリア保持部54の中心線C上に配置される。取付孔60は、中心線Cからキャリア保持部54の幅方向と平行に延在するスリット状である。取付孔60は、中心線Cを中心として幅方向に対称形状である。取付孔60は、押圧面58から軸方向に延在する。取付孔60には、第2支持部50の一部が挿入され接続される。
【0054】
図2図4において、第2支持部50は、可撓性を有したシート状に構成される。第2支持部50は、第2接合部70と、第2支持本体72と、貫通孔73と、抵抗変化部75とを有する。第2接合部70は、第2支持部50の基端に設けられる。第2接合部70は、第2支持本体72の基端に設けられる。第2接合部70は、キャリア保持部54の取付孔60に挿入され、例えば、接着されている。第2接合部70は、接着以外の適宜の接合方法によりキャリア保持部54の取付孔60に接合されてもよい。また、第2支持部50は、キャリア保持部54と一体的に成形されてもよい。
【0055】
第2支持本体72は、第2接合部70から先端方向(矢印X1方向)に延出している。第2支持本体72の第2接合部70からの延出方向長さは、第1支持本体32の第1接合部30からの延出方向長さよりも短い。第2支持本体72の上面には、医療用シート300を載せるための第2支持面74が設けられる。第2支持面74は、平坦面である。第2支持本体72は、第1支持本体32よりも小さい。すなわち、第2支持面74の面積は、第1支持面261の面積よりも小さい。
【0056】
図3に示すように、第2支持本体72の基端部は、基端方向(矢印X2方向)に向かって幅狭に形成されている。第2支持本体72における先端と基端との間の中間部は、実質的に一定の幅で延在している。第2支持部50の先端部は、先端方向(矢印X1方向)に向かって円弧状に突出している。第2支持本体72の両面(下面及び上面)には、潤滑剤が塗布されていてもよい。
【0057】
図4に示すように、貫通孔73は、第2支持部50の第2支持本体72を厚み方向に貫通する。貫通孔73は、第2支持部50の第2支持面74に開口する。図3に示すように、貫通孔73は、第2支持部50の幅方向一端部と幅方向他端部との間で、幅方向に直交する長手方向(縦方向、矢印X1、X2方向)に延在する。貫通孔73は、第2支持部50の長手方向に沿って長尺なスリット状である。貫通孔73の先端は、第2支持部50の先端から基端方向(矢印X2方向)に離間して配置される。貫通孔73の基端は、第2支持部50の第2接合部70から先端方向(矢印X1方向)に離間して配置される。貫通孔73は、第2支持部50の幅方向の中央に配置される。第2支持部50の幅方向における貫通孔73の幅寸法が略一定である。なお、貫通孔73は、縦方向に沿ったスリット状に限定されない。
【0058】
貫通孔73は、例えば長手方向に長尺な楕円形状であってもよい。貫通孔73は、単数に限定されず複数であってもよい。貫通孔73の配置は、第2支持部50の幅方向中央に限定されない。例えば貫通孔73が2つ設けられる場合、貫通孔73の各々が、第2支持部50の幅方向中央部から幅方向にずれた位置に設けられてもよい。例えば貫通孔73が3つ設けられる場合、貫通孔73の各々が、第2支持部50の幅方向中央部、幅方向中央部から幅方向にずれた両側に設けられてもよい。
【0059】
第1支持部26の第1支持面261に第2支持部50が載置されたとき、貫通孔73を通じて第1支持面261と第2支持面74とが連通する。
【0060】
抵抗変化部75は、第2支持部50の第2支持面74に設けられる。第2支持部50の第2支持面74に医療用シート300が載置されて互いに接触したとき(図10参照)、抵抗変化部75は、第2支持部50と医療用シート300との間の摩擦抵抗を第2支持部50の移動方向(矢印X1、X2方向)に応じて変化させる。
【0061】
第2支持部50によって医療用シート300を先端方向(矢印X1方向)に向けて押し出すとき(図15参照)に第2支持部50と医療用シート300との間に働く摩擦抵抗を第1摩擦抵抗とする。医療用シート300に対して第2支持部50を基端方向(矢印X2方向)に相対移動させるとき(図18参照)に第2支持部50と医療用シート300との間に働く摩擦抵抗を第2摩擦抵抗とする。第1摩擦抵抗が第2摩擦抵抗よりも大きくなるように(第2摩擦抵抗が第1摩擦抵抗よりも小さくなるように)、抵抗変化部75が構成される。換言すれば、第2支持部50が先端方向(矢印X1方向)に移動するときの第1摩擦抵抗と、医療用シート300に対して第2支持部50が基端方向(矢印X2方向)に移動するときの第2摩擦抵抗とを、抵抗変化部75によって変化させる。
【0062】
図3に示すように、抵抗変化部75は、第2支持部50の長手方向(縦方向)に沿って配置された複数の凸部751を有する。図5に示すように、複数の凸部751の各々は、第2支持部50の先端に向かうにつれて徐々に高くなるように傾斜する傾斜面752を有する。すなわち、各凸部751の先端が最も高く形成され、各凸部751の基端が最も低くなる。
【0063】
図3に示す第2支持部50の第2支持面74と直交する方向から見た平面視において、複数の凸部751が第2支持部50の長手方向(縦方向、矢印X1、X2方向)及び幅方向に互いに隣接する。長手方向又は幅方向に互いに隣接する凸部751が、幅方向又は長手方向に互いにずれて配置される。
【0064】
図5に示すように、複数の凸部751は、シート状の抵抗部材753に形成される。複数の凸部751は、抵抗部材753の表面に設けられる。複数の凸部751は、抵抗部材753の表面に対してプレスによって形成される。抵抗部材753の裏面は平坦であり、第2支持面74に対して当接して固定される。抵抗部材753は、例えば第2支持面74に対して貼着又は溶着される。
【0065】
なお、抵抗変化部75は、第2支持部50の第2支持面74に固定されるシート状の抵抗部材753に設けられる構成に限定されない。図7に示す変形例に係る移送器具10aは、第2支持部50の第2支持面74に抵抗変化部754が一体的に形成される。例えば、第2支持部50を成形するとき、複数の凸部755からなる抵抗変化部754を第2支持面74に同時に成形するとよい。
【0066】
凸部755は、例えば複数のフィルムを積層することで形成してもよい。凸部755は、第2支持面74に転写することで形成してもよい。
【0067】
図2において、移送器具10のハブ52は、第2シャフト48の基端部に取り付けられている。
【0068】
図1及び図2において、外筒22は、内腔78を有する円筒部材である。内腔78は、外筒22の先端(矢印X1方向の端)に開口する先端開口80を有する。内腔78は、外筒22の基端(矢印X2方向の端)に開口する。外筒22は、可撓性を有する。外筒22の構成材料は、上述した第1シャフト24の構成材料と同様の材料が挙げられる。なお、第1シャフト24がフレキシブルチューブ部を有する場合、外筒22は、第1シャフト24を屈曲させることができる。また、本実施形態において、外筒22は、上述したようなフレキシブルチューブ部を有してもよい。
【0069】
外筒22の内腔78には、第1シャフト24が挿通されている。外筒22の軸方向に沿った長さは、第1シャフト24の軸方向に沿った長さよりも短い。図3及び図4において、外筒22の内径は、中間支持部36の幅よりも小さい。中間支持部36の幅は、第1支持部26を外筒22の内周面の周方向に沿って筒状に丸められた状態で外筒22内に収容できるように、外筒22の内面の円周長さと実質的に同じ長さ、又は、円周長さ以下の長さである。外筒22の基端には、第1シャフト24の外周面に密着する気密用の弁体84が設けられる。
【0070】
図2及び図4において、外筒22の先端面は、外筒22の軸方向と直交する方向に沿って延在している。
【0071】
図2に示すように、内視鏡14は、長尺な内視鏡本体86を有する。内視鏡本体86の先端部は、外筒22の外周面に固定部材16によって固定されている(図1参照)。内視鏡本体86の先端面に設けられた対物レンズ88は、外筒22の先端方向(矢印X1方向)を向いている。内視鏡本体86の先端部は、外筒22の軸方向の中間部に固定される。ただし、内視鏡本体86の先端部は、外筒22の先端部に固定されてもよい。
【0072】
固定部材16は、例えば、固定筒90と、固定チューブ92とを含む。固定筒90は、例えば、硬質な樹脂材料によって構成されている。固定筒90の内腔には、内視鏡本体86を挿入可能である。固定筒90は、外筒22の長手方向に沿うように配置されている。固定チューブ92は、固定筒90を外筒22の所定位置に固定するためのチューブである。固定チューブ92は、例えば、熱収縮チューブである。なお、外筒22と固定筒90とは、一体成形品であってもよい。ただし、内視鏡本体86の先端部の外筒22への固定方法は、適宜設定可能である。
【0073】
移動規制部23は、第1シャフト24と第2シャフト48との軸方向における相対移動を規制可能である。移動規制部23は、第2シャフト48の先端部により構成されたキャリア保持部54(押付部56)から構成される。外筒22内に第1支持部26が収容された状態で、キャリア保持部54が第1支持部26を外筒22の内面(内腔78)に押し付けることで、第1支持部26と第2シャフト48との相対変位が拘束される。第1支持部26と第2シャフト48との相対移動が拘束されることに伴って、第1シャフト24と第2シャフト48との軸方向における相対移動が規制される(図12参照)。
【0074】
次に、医療用シート300を生体の処置対象部に移送する移送方法について説明する。具体的に、図14図18に示すように、胸腔鏡下手術により医療用シート300を心臓400の移植対象部402(生体の処置対象部)に移送する移送方法について説明する。図8に示すように、本実施形態に係る移送方法は、準備工程、シート載置工程、収容工程、配置工程、展開工程、移動工程、抜去工程を含む。
【0075】
まず、準備工程(ステップS1)において、上述した本実施形態に係る移送器具10を準備する。以下では、図1に示すような状態を移送器具10の初期状態として説明する。初期状態では、第1及び第2シャフト24、48を外筒22に対して先端方向(矢印X1方向)に移動させ、第1支持部26及び第2支持部50を外筒22の先端開口80から先端方向に突出させた突出位置(第2位置)の状態となっている。第1及び第2支持部26、50の各々は、外筒22から先端方向に露出することで展開し、第1支持部26の第1支持面261の上に第2支持部50を配置させる。すなわち、第2支持部50は、第1支持部26の第1支持面261に重なった後退位置に配置される。このとき、キャリア保持部54の基端部は、第1シャフト24の第1内腔28に挿入されている。
【0076】
続いて、シート載置工程(ステップS2)において、図9に示すように、シャーレ401内に配置されている医療用シート300を第2支持面74に載せる。なお、図10に示すように、医療用シート300は、第2支持面74に載せた状態で第2支持部50から外側に張り出している。第1支持面261は、医療用シート300のうち第2支持部50から外側に張り出した張出部302を支持する。一対の第2突出部40は、第2支持面74に医療用シート300を載せた状態で、中間支持部36の幅方向における医療用シート300の移動(位置ずれ)を抑制する。
【0077】
その後、収容工程(図8のステップS3)において、医療用シート300を第1支持部26及び第2支持部50と共に外筒22内に収容した収容位置(第1位置)とする。具体的に、第1キャリア部材18の第1シャフト24と第2キャリア部材20の第2シャフト48とを一緒に外筒22に対して基端方向(矢印X2方向)に移動させる。
【0078】
そうすると、基端支持部34が外筒22の先端開口80から基端方向に引き込まれる。このとき、基端支持部34のテーパ状の両側部が外筒22の先端開口80に接触することにより、基端支持部34には、基端支持部34を外筒22の周方向に沿って丸まろうとする力が作用する。そのため、基端支持部34は、丸まりながら外筒22内にスムーズに引き込まれる。このとき、第1支持部26は、先端側が大径で、基端支持部34が小径となるように円錐状に丸まりながら、外筒22内に収容される。
【0079】
基端支持部34が変形すると、中間支持部36に外筒22の周方向に沿って丸まろうとする力が作用するため、中間支持部36は、丸まりながら外筒22内に引き込まれる。このとき、中間支持部36は、外筒22の内面に沿って円筒状に変形する。一対の第1突出部38の各々は、固定端441が内側に巻き込まれるように第1支持部26の表面461が内側、第1支持部26の裏面462が外側となるように湾曲していく。図13に示すように、径方向外方に向けて凸状に膨出した中間部443の裏面462同士が外筒22の中心軸と直交方向に延在する仮想線L2上で互いに接触する。一方の第1突出部38の中間部443と他方の第1突出部38の中間部443とが接触して下方(第1支持面261、表面461)に向けて収容されていく。
【0080】
これにより、第1支持部26の裏面462が外筒22の内面に密着した湾曲形状となり、各第1突出部38の固定端441から自由端442に向けて外筒22の中心に向けて折り返すようにさらに湾曲し、一対の自由端442が外筒22の中心軸より下方に配置される。すなわち、第1支持部26は、外筒22の内面に沿ったハート型に湾曲する。
【0081】
ハート型とは、一方において凸状に湾曲した形状と、一方とは反対側となる他方において二つの凸状に湾曲した形状からなる略円形状の形状をいう。管状体(外筒22)の内腔78にハート型が形成される場合、管状体の内面に沿って他方に突出した二つの凸状の湾曲形状が互いに近づいて一部の周面が互いに接することで、全体の輪郭が管状体の内面に沿った略円形状となる(図13中、第1支持部26の形状を参照)。
【0082】
第1支持部26の湾曲変形に伴って、第2支持部50も同様に、第1支持部26の内側(表面461側)で第1支持部26に沿って第2支持部50が湾曲変形する。第1及び第2支持部26、50の湾曲変形に伴って、医療用シート300が、第1及び第2支持本体32、72の形状に対応した形状に変形し、医療用シート300が外筒22内に収容される。収容工程は、図11に示すように、第1支持部26の全体が外筒22内に完全に挿入されることにより完了する。
【0083】
第1支持部26、第2支持部50及び医療用シート300を外筒22内に収容した収容状態では、図13に示すように、一対の第1突出部38は、裏面462同士が互いに接触した状態で押付部56の押圧面58よりも先端方向(矢印X1方向)に位置する(図11参照)。
【0084】
その後、配置工程(図8のステップS4)において、図14に示すように、胸部408の切開創409から胸腔410内に移送器具10を挿入する。この時、心臓400における移植対象部402の近くに移送器具10の先端を位置させると共に内視鏡14の先端を胸腔410内に位置させる。なお、移送器具10を胸腔410内に挿入する前に、ハブ52の接続ポート部に図示しない液体供給器具を接続して液体(例えば、生理食塩水)を導入してもよい。
【0085】
続いて、展開工程(図8のステップS5)において、図15に示すように、第1支持部26、第2支持部50及び医療用シート300を展開させる。具体的に、展開工程では、第1シャフト24を把持し外筒22に対して先端方向(矢印X1方向)に移動させる。これにより、第1シャフト24の弁体55によって、第1シャフト24と共に第2シャフト48が先端方向(矢印X1方向)に向けて一体的に移動する。このとき、移動規制部23を介して第1シャフト24と第2シャフト48とが一体的に先端方向に移動する。そうすると、外筒22の先端開口80から露出した第1支持部26は、復元力によって元の形状に復帰する。第1支持部26が展開した第2位置において、第2支持部50及び医療用シート300は、平面形状に広がる。
【0086】
展開工程において、第2キャリア部材20は、医療用シート300を載せた第2支持面74の全体が第1支持面261の上に位置する。この時、医療用シート300は、第1支持面261と第2支持面74とによって支持される。これにより、医療用シート300を心臓400の移植対象部402に移送する前の状態で、医療用シート300の張出部302に皺が発生することを抑制できる。
【0087】
次いで、移動工程(図8のステップS6)において、図17に示すように、第2キャリア部材20を第1キャリア部材18に対して先端方向(矢印X1方向)に移動させることで、医療用シート300が載せられた第2支持部50が後退位置から進出位置へと移動し、第2支持部50が第1支持部26の先端よりも先端方向(矢印X1方向)に突出する。具体的に、移動工程では、第2シャフト48を第1シャフト24に対して先端方向に移動させる。これにより、第2支持部50が第1支持部26に対して先端方向(矢印X1方向)に移動する。
【0088】
第2支持部50が先端方向(矢印X1方向)へ移動するとき、図16に示すように、第2支持面74に設けられた抵抗変化部75の凸部751によって医療用シート300の下面と第2支持面74との摩擦抵抗(第1摩擦抵抗)が相対的に大きくなる。すなわち、第2支持面74と医療用シート300との相対移動(医療用シート300が第2支持面74に対して相対的に基端方向に移動すること)が抑制され、第1支持部26の第1支持面261から先端方向に向けて、第2支持部50と共に医療用シート300が一体的に移動する。
【0089】
このとき、キャリア保持部54(押付部56)の押圧面58が医療用シート300の外周端面を先端方向に押圧すると、医療用シート300の全体が、第1支持部26よりも先端方向に位置する。この移動工程では、医療用シート300を心臓400の移植対象部402の上まで移動させて医療用シート300の張出部302を移植対象部402に接触させる。
【0090】
その後、抜去工程(図8のステップS7)において、図18に示すように、第2キャリア部材20を第2位置から第1位置まで移動させることにより第2支持部50を移植対象部402と医療用シート300との間から引き抜く。そうすると、医療用シート300の全体が移植対象部402の表面に接触する。これにより、医療用シート300の移植対象部402への移送が完了する。その後、移送器具10は、第1支持部26及び第2支持部50を外筒22内に収容した状態で、胸部408から抜去される。
【0091】
生体の移植対象部402から第2支持部50が基端方向(矢印X2方向)へ移動するとき、抵抗変化部75の凸部751によって医療用シート300の下面と第2支持面74との摩擦抵抗(第2摩擦抵抗)が、移動工程において医療用シート300を先端方向へ押し出す場合に比べて相対的に小さくなる。
【0092】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0093】
移送器具10は、第1キャリア部材18に対して軸方向に相対移動可能な第2キャリア部材20を備えるため、他のデバイス(鉗子等)を用いることなく、第2キャリア部材20を利用して医療用シート300を第1支持部26上から生体の移植対象部402へと載せ替えることができる。このため、医療用シート300を移植対象部402に効率よく移送することができる。
【0094】
図4に示すように、第2支持部50が、第2支持部50(第2支持本体72)の厚み方向に貫通した貫通孔73を備え、貫通孔73が、第2支持部50の幅方向の一端部と他端部との間で幅方向に直交する縦方向に延在している。そのため、貫通孔73によって第2支持部50をより変形させやすくし、外筒22内に第1及び第2支持部26、50が収容された第1位置において、第1支持部26に追従するように第2支持部50を円滑に変形させて密着させることができる。これにより、第2支持部50を第1支持部26と共に外筒22内に効果的に収容することができる。
【0095】
図3に示すように、貫通孔73を、第2支持部50の幅方向の中央に配置しているため、第1及び第2支持部26、50が外筒22内に収容されるとき、幅方向中央の貫通孔73によってさらに容易に第2支持部50を変形させることが可能である。
【0096】
第2支持部50の第2支持面74に、第2支持面74に対して医療用シート300が接触したときの第2支持部50と医療用シート300との間の摩擦抵抗を第2支持部50の移動方向に応じて変化させる抵抗変化部75を備える。第2支持部50によって医療用シート300を先端方向に向けて押し出すときに第2支持部50と医療用シート300との間に働く第1摩擦抵抗が、医療用シート300に対して第2支持部50を基端方向に相対移動させるときに第2支持部50と医療用シート300との間に働く第2摩擦抵抗よりも大きくなるように、抵抗変化部75が構成されている。これにより、第2支持部50によって医療用シート300を生体の移植対象部402に向けて押し出すとき、第2支持部50と医療用シート300との間には相対的に大きな第1摩擦抵抗が働くため、医療用シート300を第1支持部26の第1支持面261から移植対象部402へと効率的に載せ替えることができる。医療用シート300を移植対象部402に載せた後、移植対象部402に対して第2支持部50を後退させるとき、第2支持部50と医療用シート300との間には相対的に小さな第2摩擦抵抗が働くため、医療用シート300から第2支持部50を円滑に離間させることができる。
【0097】
図5に示すように、抵抗変化部75が、第2支持部50の長手方向(縦方向)に沿って配置された複数の凸部751を有し、複数の凸部751の各々は、第2支持部50の先端に向かうにつれて徐々に高くなるように傾斜する傾斜面752を有している。これにより、傾斜面752を有した複数の凸部751によって、第2摩擦抵抗が第1摩擦抵抗に対して小さな抵抗変化部75を容易に実現することが可能である。
【0098】
図3に示す第2支持部50の第2支持面74と直交する方向から見た平面視において、複数の凸部751が第2支持部50の長手方向(縦方向)及び幅方向に互いに隣接し、縦方向又は幅方向に互いに隣接する凸部751が、幅方向又は縦方向に互いにずれて配置される。これにより、第2支持部50において長手方向又は幅方向に互い違いに配置された複数の凸部751によって、医療用シート300を確実に先端方向(矢印X1方向)へ押し出すことができる。
【0099】
図13に示すように、第1支持部26が外筒22内に収納された状態では、移動規制部23によって第2シャフト48の先端部と第1支持部26とが当接することで、第1シャフト24と第2シャフト48との軸方向への相対移動が阻止される。これにより、第1支持部26が外筒22の先端部から突出した状態となる第2位置となる前に、ユーザが誤って第2キャリア部材20を先端方向(矢印X1方向)に移動させようとしても、第1キャリア部材18に対して第2キャリア部材20が軸方向に相対移動しない。具体的には、ユーザが誤って第2キャリア部材20を把持して先端方向に押しても、外筒22に対して第1キャリア部材18と第2キャリア部材20が両方とも先端方向に移動しない。ただし、ユーザが誤って第2キャリア部材20を把持して先端方向に押した際に、第2キャリア部材20と一緒に第1キャリア部材18も外筒22に対して先端方向に移動する場合があってもよい。この場合も、第1キャリア部材18に対して第2キャリア部材20が軸方向に相対移動しない。この結果、第2支持部50及び医療用シート300が外筒22の先端開口80から突出することが防止される。これにより、外筒22の内部に収容された医療用シート300が第2シャフト48の先端部によって押されて破損することが防止される。そのため、医療用シート300を破損させることなく移植対象部402に効率よく移送することができる。
【0100】
移動規制部23は、第2シャフト48の先端部を構成する押付部56である。外筒22内に第1支持部26が収容された状態で、押付部56が第1支持部26を外筒22の内腔78(内面)に押し付ける。これにより、移動規制部23を構成する押付部56と第1支持部26とが径方向に互いに密着するため、第1支持部26と第2シャフト48との相対変位が拘束される。第1支持部26が外筒22の先端部から突出した状態で、第1シャフト24に対して第2シャフト48を軸方向へ移動可能とすることができる。
【0101】
押付部56が弾性体から形成されるため、押付部56を第1支持部26に効果的に密着させることが可能である。押付部56が外筒22内に収容されているときに第2シャフト48が先端方向(矢印X1方向)に押しても、第2シャフト48が撓むことで押込力が押付部56へと伝わりにくいため、ユーザが誤操作に気がつきやすい。
【0102】
第2シャフト48の軸線と直交する断面において、押付部56は、一対の直線部621、622と、一対の直線部621、622の両側に設けられる一対の凸状部641、642とを有する。直線部621、622の延在方向に沿った第1長さD1は、第2長さD2よりも長い(図6参照)。これにより、第1支持部26が外筒22内に収容されたとき、直線部621、622の両側に設けられた一対の凸状部641、642によって第1支持部26を外筒22に向けて押すことで、第1支持部26とキャリア保持部54とをより密着させることができる。
【0103】
図1に示すように、第2シャフト48の先端部には、医療用シート300を保持可能な第2支持面74を含むシート状の第2支持部50が設けられる。第2支持部50は、第1支持面261に重なる後退位置と、第1支持面261よりも先端方向(矢印X1方向)に位置する進出位置との間で、第1支持部26に対して相対移動可能である。この構成により、第2支持面74を有した第2支持部50によって、医療用シート300を第1支持部26の第1支持面261に沿って移動させることができる。
【0104】
図11に示すように、収容位置(第1位置)において、第2支持部50は、外筒22の内部で第1支持部26と共に湾曲変形して収容される。この構成により、幅寸法を有した第2支持部50であっても、収容工程において外筒22の内部に第2支持部50を第1支持部26と共に好適に収容することが可能である。
【0105】
第2シャフト48の先端部には、第2支持部50の基端部を保持するキャリア保持部54が設けられる。本実施形態と異なり、キャリア保持部54が上下対称形状ではなく、且つキャリア保持部54の下端に第2支持部50が保持される構成の場合、ユーザが第2シャフト48を回転させ第2支持部50の上下方向が反転し、第2支持部50がキャリア保持部54の上部に配置される。この場合、第1支持部26の第1支持面261に対して第2支持部50が浮き上がり、第1支持部26と第2支持部50とが上下方向に離れてしまう。
【0106】
これに対し本実施形態では、図6に示すように、第2シャフト48の軸線と直交する断面において、キャリア保持部54の中心線Cに対してキャリア保持部54が線対称(上下対称)で形成される。また、キャリア保持部54は、中心線C上で第2支持部50を保持する。このため、ユーザが第2シャフト48を回転させることで第2支持部50の上下方向が反転した場合でも、キャリア保持部54の下端に第2支持部50が保持される構成に比べ、第1支持部26の第1支持面261からの第2支持部50の浮き上がりを抑制することができる。これにより、第2支持部50によって医療用シート300を安定して移植操作することができる。
【0107】
第1支持部26は、表面461と裏面462とを有した可撓性シートにより形成される。第1支持部26が、第1シャフト24の移動方向と直交する第1支持面261の幅方向の両側部から上方に向けて突出した一対の第1突出部38を有している。この構成により、第1支持部26を外筒22内に収容するとき、一対の第1突出部38が湾曲変形して凸状となった第1突出部38の裏面462同士が互いに接触する。一対の第1突出部38が第1支持面261に向かって変位して、支持部がハート型に湾曲変形する。これにより、外筒22内において第1支持部26をハート型に収容できるため、第1支持部26がハート型ではない形状に変形する場合と比べ、第1支持部26に保持された医療用シート300の破損を効果的に抑制できる。また、外筒22内に第1支持部26を円滑且つコンパクトに収容できるため、第1支持部26がハート型に湾曲変形しない構成と比較し、外筒22の直径を小さくすることができる。
【0108】
第1突出部38の突出方向と直交し、且つ、第1支持面261と直交する断面において、第1突出部38の各々の断面は、第1突出部38の自由端442と固定端441との間を構成する中間部443が、第1支持面261から離間する方向に向けて凸状に膨出した形状である。この構成により、第1支持部26を外筒22内に収容した際に、第1支持部26を確実にハート型に湾曲変形させることができる。これにより、第1支持部26がハート型ではない形状に変形することに起因する医療用シート300の破損を防止することができる。
【0109】
本実施形態と異なり、第1支持部26の裏面462において中間部443が第1支持面261に向かって凹むように湾曲した形状である場合、外筒22内で第1支持部26が適切なハート型に湾曲変形しないことがまれに起こることがある。例えば、一方の第1突出部38の自由端442(表面461)が、湾曲変形した他方の第1突出部38の固定端441(裏面462)に乗り上げることで、自由端442が外筒22の内面に向けてV字状に折れ曲がることがまれに起こる。本実施形態では、中間部443が、第1支持面261から離間する方向に向けて凸状に膨出した形状であるため、第1支持部26のV字状の折れ曲がりを防止することができる。
【0110】
一対の第1突出部38における中間部443を弧状に形成することで、外側に膨出した形状を有する第1突出部38を容易に形成することができる。
【0111】
第1支持部26の基端方向(矢印X2方向)に向かって第1突出部38の中間部443の曲率Rが大きくなるため、第1突出部38の先端側での第1突出部38間の幅方向の間隔Wを広げることができる。これにより、先端支持部42を通じて医療用シート300を第1支持部26の第1支持面261に載置しやすくすることができる。
【0112】
図3に示すように、第1支持部26の幅方向における一対の折曲部444の間隔Wが、基端方向に向かって小さくなるため、第1支持部26が基端部側から外筒22内に収容されるとき、外筒22との接触によって一対の第1突出部38を好適に円錐状に湾曲変形させることができ、それに伴って、一対の折曲部444の基端同士の干渉が抑制されるため、外筒22内に第1支持部26を基端側から円滑に収容することができる。
【0113】
第1支持面261と直交する方向から見て、第1支持部26の先端部は、一対の第2突出部40を繋ぐ円弧状であるため、第1支持部26の先端部が角部を有した形状である構成と比較し、第1支持部26を外筒22内に収容するとき、第1支持部26と外筒22との摺動抵抗を低減できる。第1支持部26を先端方向(矢印X1方向)に移動させて第1支持部26に医療用シート300を載置するとき、医療用シート300とシャーレ401(容器)の界面に対して第1支持部26を徐々に挿入することで円滑に作業を行うことができる。
【0114】
図19に示すように、第1変形例に係る移送器具100は、移動規制部102を備える。なお、本変形例において、上述した移送器具10と同一の構成には同一の参照符号を付し、同一の構成の詳細な説明は省略する。後述する第2~第5変形例に係る移送器具120、130、150、160についても同様である。
【0115】
移動規制部102は、第1支持部26に設けられる第1嵌合部104と、第2シャフト48の先端部のキャリア保持部54に設けられる第2嵌合部106とを備える。
【0116】
第1嵌合部104は、第1支持部26の第1支持面261から上方に向けて突出した一対の第1凸部1081、1082を有する。第1凸部1081、1082の各々は、第1支持部26の幅方向中心に対して等距離離間して配置される。第1支持部26の幅方向と直交する方向から見たとき、第1凸部1081、1082の断面は、例えば矩形状である。第1凸部1081、1082の断面は、他の形状(半円状等)でもよい。
【0117】
第2嵌合部106は、キャリア保持部54(押付部56)の幅方向両端部(凸状部641、642)の各々に配置される。第2嵌合部106は、凸状部641、642の外面から窪んだ凹部1101、1102を有する。凹部1101、1102は、凸状部641、642の外面から幅方向に窪む。キャリア保持部54の軸方向から見たとき、凹部1101、1102の断面は、第1凸部1081、1082に対応した矩形状である。凹部1101、1102の断面は、他の形状(半円状等)でもよい。
【0118】
外筒22内に第1支持部26が収容され第1支持部26が湾曲変形した状態で、移動規制部102を構成する第1嵌合部104の第1凸部1081、1082が第2嵌合部106の凹部1101、1102にそれぞれ嵌合される。これにより、第1支持部26とキャリア保持部54との相対変位が拘束され、それに伴って、第1シャフト24に対する第2シャフト48の軸方向への相対移動が規制される。
【0119】
以上のように、第1変形例に係る移送器具100では、外筒22内に第1支持部26が収容された状態(第1位置)において、移動規制部102における第1嵌合部104と第2嵌合部106とが嵌合されることで、第1支持部26を有した第1シャフト24と第2シャフト48との軸方向への相対移動が阻止される。第1支持部26が外筒22の先端部から突出した状態(第2位置)において、移動規制部102の第1嵌合部104と第2嵌合部106との嵌合が解除されると、第1支持部26に対して第2シャフト48が先端方向(矢印X1方向)へ移動可能となる。
【0120】
図20Aに示すように、第2変形例に係る移送器具120は、移動規制部122を備える。移動規制部122は、第1係合部124と、第2係合部126とを備える。第1係合部124は、第1支持面261を含む第1支持部26の表面461に設けられる。第2係合部126は、第2シャフト48の先端部のキャリア保持部54によって構成される。
【0121】
第1係合部124は、第1支持面261から上方に向けて突出した一対の第2凸部1281、1282を有する。第2凸部1281、1282の各々は、第1支持部26の幅方向中心に対して等距離離間して配置される。キャリア保持部54の先端の両側に第2係合部126が配置される。
【0122】
図20Bに示すように、外筒22内に第1支持部26が収容され第1支持部26が湾曲変形した状態で、外筒22の軸方向において、第1係合部124の第2凸部1281、1282と第2係合部126とが向かい合い、第1係合部124と第2係合部126とが軸方向に係合される。
【0123】
以上のように、第2変形例に係る移送器具120では、図20Bに示す外筒22内に第1支持部26が収容された状態(第1位置)において、移動規制部122を構成する第1係合部124と第2係合部126とが軸方向に係合されることで、第1支持部26を有した第1シャフト24と第2シャフト48との軸方向への相対移動が阻止される。図20Aに示す第1支持部26が外筒22の先端開口80から突出した状態(第2位置)において、第1支持部26が展開することで第1係合部124と第2係合部126とが軸方向に向かい合わず、第1係合部124と第2係合部126との係合が解除される。これにより、第1支持部26に対して第2シャフト48が先端方向(矢印X1方向)へ移動可能となる。
【0124】
図21及び図22に示すように、第3変形例に係る移送器具130は、第1支持部132を備える。第1支持部132の幅方向両側に設けられた突出部129は、自由端442と固定端441との間を構成する中間部134を有する。中間部134は、第1支持面261から離間する方向に向けて凸状に膨出した形状である。中間部134は、裏面462において山折りとなるように折り曲げられた中間折曲部136を有する。中間折曲部136は、中間部134において自由端442寄りに配置される。
【0125】
以上のように、第3変形例に係る移送器具130では、第1支持部132の突出部129に中間折曲部136を設けることで、第1支持面261から離間する方向に向けて凸状に膨出した形状の突出部129を容易に形成することができる。
【0126】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0127】
10、10a、100、120、130…移送器具
18…第1キャリア部材
20…第2キャリア部材
22…外筒
24…第1シャフト
26、132…第1支持部
261…第1支持面
48…第2シャフト
50…第2支持部
73…貫通孔
74…第2支持面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図16
図17
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図19
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図21
図22