(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090622
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】異常検出装置
(51)【国際特許分類】
H05B 3/00 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
H05B3/00 320Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206618
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 まり乃
(72)【発明者】
【氏名】一戸 哲
(72)【発明者】
【氏名】金 東鉉
(72)【発明者】
【氏名】高月 涼太
【テーマコード(参考)】
3K058
【Fターム(参考)】
3K058AA96
3K058CA03
3K058CA86
(57)【要約】
【課題】シャント抵抗を用いることなく抵抗体の異常を検出する。
【解決手段】異常検出装置は、ヒータを構成する第1の抵抗体と、ヒータを構成する抵抗体であって、第1の抵抗体に直列に接続された第2の抵抗体と、第1の抵抗体と第2の抵抗体の少なくとも一方の両端電圧を測定する電圧測定器と、電圧測定器によって測定された測定値に基づいて、ヒータの異常を検出する検出部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータを構成する第1の抵抗体と、
前記ヒータを構成する抵抗体であって、前記第1の抵抗体に直列に接続された第2の抵抗体と、
前記第1の抵抗体と前記第2の抵抗体の少なくとも一方の両端電圧を測定する電圧測定器と、
前記電圧測定器によって測定された測定値に基づいて、前記ヒータの異常を検出する検出部と、
を有する異常検出装置。
【請求項2】
前記第1の抵抗体と前記第2の抵抗体の抵抗値は、互いに同じである
請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記第1の抵抗体と前記第2の抵抗体の抵抗温度係数は互いに同じである
請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記ヒータは、前記第1の抵抗体と前記第2の抵抗体の接続部を引き出す配線を有する
請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項5】
前記第1の抵抗体の両端電圧を測定する第1の電圧測定器と、
前記第2の抵抗体の両端電圧を測定する第2の電圧測定器と、
を有する請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記電圧測定器によって測定された測定値が所定範囲内にない場合に前記ヒータに異常が生じているものと判定する
請求項1に記載の異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力が供給される抵抗体の異常を検出する異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒータを構成する抵抗体の異常を検出する技術として以下の技術が知られている。例えば特許文献1には、スイッチング素子の両端の電位がヒータの正常時と断線時であって且つスイッチング素子Q1 をオン・オフしたときで異なることを検出してヒーターチェック信号を出力する故障判別回路を備えた故障判別装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、温度制御対象物の温度を検出する感温抵抗と、これに直列接続された第一のプルアップ抵抗とを有し、感温抵抗と第一のプルアップ抵抗の共通接続点の電圧により温度制御対象物の異常高温を検知する異常高温検知部とを有する温度制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-73157号公報
【特許文献2】特開2006-73402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
抵抗加熱式のヒータの異常を検出するために、ヒータを構成する抵抗体の抵抗値を測定することが行われている。一般的に、抵抗体の抵抗値は、抵抗体に電力を供給し、そのときの抵抗体の両端電圧の測定値と、抵抗体に流れる電流の測定値から算出される。抵抗体に電力を供給するための電源として、ヒータを加熱させるための電源が用いられる。抵抗体に流れる電流の測定には、抵抗体に直列に接続された電流検出用抵抗(シャント抵抗)が用いられる。シャント抵抗の両端電圧とシャント抵抗の抵抗値から抵抗体に流れる電流が算出される。しかしながら、上記の方法によれば、ヒータの使用時には、シャント抵抗においても電力が消費されることになり、エネルギー効率が悪い。また、ヒータを構成する抵抗体とシャント抵抗の抵抗温度係数が異なる場合には、抵抗体の抵抗値の算出結果において誤差が生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、シャント抵抗を用いることなく抵抗体の異常を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術に係る異常検出装置は、ヒータを構成する第1の抵抗体と、前記ヒータを構成する抵抗体であって、前記第1の抵抗体に直列に接続された第2の抵抗体と、前記第1の抵抗体と前記第2の抵抗体の少なくとも一方の両端電圧を測定する電圧測定器と、前記電圧測定器によって測定された測定値に基づいて、前記ヒータの異常を検出する検出部と、を有する。
【0008】
前記第1の抵抗体と前記第2の抵抗体の抵抗値は、互いに同じであってもよい。前記第1の抵抗体と前記第2の抵抗体の抵抗温度係数は互いに同じであってもよい。前記ヒータは、前記第1の抵抗体と前記第2の抵抗体の接続部を引き出す配線を有していてもよい。前記第1の抵抗体の両端電圧を測定する第1の電圧測定器と、前記第2の抵抗体の両端電圧を測定する第2の電圧測定器と、を有していてもよい。前記検出部は、前記電圧測定器によって測定された測定値が所定範囲内にない場合に前記ヒータに異常が生じているものと判定してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シャント抵抗を用いることなく抵抗体の異常を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る異常検出装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るヒータの構成の一例を示す図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る異常検出装置の構成の一例を示す図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る異常検出装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る異常検出装置10の構成の一例を示す図である。異常検出装置10は、抵抗体を含んで構成されるヒータ20の異常を検出する機能を有する。異常検出装置10は、電源11、ヒータ20、電圧測定器30及び検出部40を含んで構成されている。
【0013】
ヒータ20は、抵抗加熱式であり直列接続された抵抗体21及び抵抗体22を含んで構成されている。すなわち、ヒータ20において、発熱体としての抵抗体が2分割されている。抵抗体22は、一端が電源11の正極に接続され、他端が抵抗体21の一端に接続されている。抵抗体21の他端はグランドに接続されている。本実施形態において、抵抗体21の抵抗値と抵抗体22の抵抗値は同じである。これにより、抵抗体21及び抵抗体22の両者で発熱量は等しくなり、両者の温度が同じになる。
【0014】
図2は、ヒータ20の構成の一例を示す図である。
図2には、ヒータ20が座席に内蔵されるシートヒータとして用いられる場合が例示されている。ヒータ20は、基板24と基板24上に設けられた面状の抵抗体21及び22を含んで構成されている。基板24は、背もたれの左側に対応する領域24L及び背もたれの右側に対応する領域24Rを有する。領域24Rに抵抗体21が設けられ、領域24Lに抵抗体22が設けられている。抵抗体21と抵抗体22は、配線25によって直列接続されるとともに、これらの接続部23がヒータ20の外部に引き出されている。なお、抵抗体21は、本発明における「第1の抵抗体」の一例であり、抵抗体22は、本発明における「第2の抵抗体」の一例である。
【0015】
電源11は、ヒータ20を発熱させるための電力をヒータ20に供給する。
図1には電源11が直流電源である場合が例示されているが、電源11は、PWM制御によってパルス幅が設定されたパルス電圧を出力するものであってもよい。
【0016】
電圧測定器30は、抵抗体21の両端電圧を測定する。換言すれば、電圧測定器30は、抵抗体21及び抵抗体22の接続部23の電位を測定する。
【0017】
検出部40は、電圧測定器30によって測定された抵抗体21の両端電圧の測定値に基づいて、ヒータ20の異常を検出する。例えば、検出部40は、抵抗体21の両端電圧の測定値が所定範囲内にない場合にヒータ20に異常が生じているものと判定してもよい。ここで、電源11の出力電圧をE[V]とし、抵抗体21の抵抗値をR1[Ω]とし、抵抗体22の抵抗値をR2[Ω]とする。この場合、抵抗体21の両端電圧V1[V]は、下記の(1)式によって表される。
V1=E・R1/(R1+R2) ・・・(1)
【0018】
すなわち、抵抗体21の両端電圧V1は、抵抗体21及び抵抗体22の抵抗比に応じた大きさとなる。抵抗体21及び抵抗体22の少なくとも一方に、破損等に起因する抵抗値変化が生じた場合には、抵抗比が変動する。抵抗体21と抵抗体22の抵抗比の変動は、抵抗体21の両端電圧V1の測定値に反映されるので、抵抗体21の両端電圧V1の測定値に基づいて、ヒータ20の異常検出を行うことが可能である。例えば、電源11の出力電圧Eが12V、正常時における抵抗体21の抵抗値R1が10Ω、正常時における抵抗体22の抵抗値R2が10Ωである場合、抵抗体21の両端電圧V1は6Vである。抵抗体21の部分的な破損によって抵抗値R1が例えば12Ωに変動し、抵抗体22の抵抗値R2が正常値である10Ωを維持している場合、抵抗体21の両端電圧V1は、6.54Vとなり、正常値である6Vから変動する。検出部40は、ヒータ20の異常を検出した場合、異常を報知する信号を出力してもよい。
【0019】
本実施形態に係る異常検出装置10によれば、ヒータ20を構成する抵抗体が複数の部分抵抗に分割され、いずれかの部分抵抗の両端電圧に基づいてヒータ20の異常検出が行われる。したがって、異常検出装置10によれば、シャント抵抗を用いることなくヒータ20の異常検出を行うことが可能となる。したがって、温熱に寄与しないシャント抵抗における電力消費を回避することができるので、シャント抵抗を用いる場合と比較してエネルギー効率を高めることができる。
【0020】
また、抵抗体21及び抵抗体22の抵抗値は互いに同じにすることで、抵抗体21及び抵抗体22の両者で発熱量は等しくなり、両者の温度は同じになる。さらに、抵抗体21及び抵抗体22は、同じ材料で構成されているため、抵抗温度係数が同じである。これにより、抵抗体21及び抵抗体22の抵抗比は、全温度範囲で一定に維持されるので、ヒータ20の異常検出精度を高めることが可能となる。なお、抵抗体21及び抵抗体22の温度が、互いに略同じであるとみなせる場合には、抵抗体21及び抵抗体22の抵抗値は異なっていてもよい。すなわち、抵抗体21及び抵抗体22の抵抗比は1:1のみならず、例えば9:1とすることも可能である。
【0021】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態に係る異常検出装置10Aの構成の一例を示す図である。異常検出装置10Aにおいて、電圧測定器30は、抵抗体22の両端電圧を測定する。
【0022】
検出部40は、電圧測定器30によって測定された抵抗体22の両端電圧の測定値に基づいて、ヒータ20の異常を検出する。例えば、検出部40は、抵抗体22の両端電圧の測定値が所定範囲内にない場合にヒータ20に異常が生じているものと判定してもよい。ここで、電源11の出力電圧をE[V]とし、抵抗体22の抵抗値をR1[Ω]とし、抵抗体22の抵抗値をR2[Ω]とする。この場合、抵抗体22の両端電圧V2[V]は、下記の(2)式によって表される。
V2=E・R2/(R1+R2) ・・・(2)
【0023】
すなわち、抵抗体22の両端電圧V2は、抵抗体21及び抵抗体22の抵抗比に応じた大きさとなる。抵抗体21及び抵抗体22の少なくとも一方に、破損等に起因する抵抗値変化が生じた場合には、抵抗比が変動する。抵抗体21と抵抗体22の抵抗比の変動は、抵抗体22の両端電圧V2の測定値に反映されるので、抵抗体22の両端電圧V2の測定値に基づいて、ヒータ20の異常検出を行うことが可能である。
【0024】
[第3の実施形態]
図4は、本発明の第3の実施形態に係る異常検出装置10Bの構成の一例を示す図である。異常検出装置10Bは、第1の電圧測定器31及び第2の電圧測定器32を有する。第1の電圧測定器31は、抵抗体21の両端電圧を測定し、第2の電圧測定器32は、抵抗体22の両端電圧を測定する。検出部40は、抵抗体21の両端電圧の測定値及び抵抗体22の両端電圧の測定値の比が所定範囲内にない場合にヒータ20に異常が生じているものと判定してもよい。上記した第1及び第2の実施形態によればヒータ20に故障が生じていなくても、電源11の出力電圧が変動した場合には、抵抗体21及び抵抗体22のそれぞれの両端電圧は変動するので、ヒータ20に異常が生じたものと誤判定してしまうおそれがある。抵抗体21の両端電圧の測定値及び抵抗体22の両端電圧の測定値の比に基づいてヒータ20の異常検出を行うことで、そのような誤判定を回避することが可能となる。
【0025】
また、図示しない電流プローブ等を用いて、ヒータ20に流れる電流Iが測定可能な場合には、検出部40は、抵抗体21の両端電圧V1の測定値及びヒータ20に流れる電流Iの測定値に基づいて、抵抗体21の抵抗値R1を導出してもよい。抵抗体21の抵抗値R1は、下記の(3)式によって求めることができる。
R1=V1/I ・・・(3)
【0026】
同様に、検出部40は、抵抗体22の両端電圧V2の測定値及びヒータ20に流れる電流Iの測定値に基づいて、抵抗体22の抵抗値R2を導出してもよい。抵抗体22の抵抗値R2は、下記の(4)式によって求めることができる。
R2=V2/I ・・・(4)
【0027】
以上の第1乃至第3の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
ヒータを構成する第1の抵抗体と、
前記ヒータを構成する抵抗体であって、前記第1の抵抗体に直列に接続された第2の抵抗体と、
前記第1の抵抗体と前記第2の抵抗体の少なくとも一方の両端電圧を測定する電圧測定器と、
前記電圧測定器によって測定された測定値に基づいて、前記ヒータの異常を検出する検出部と、
を有する異常検出装置。
【0028】
(付記2)
前記第1の抵抗体と前記第2の抵抗体の抵抗値は、互いに同じである
付記1に記載の異常検出装置。
【0029】
(付記3)
前記第1の抵抗体と前記第2の抵抗体の抵抗温度係数は互いに同じである
付記1又は付記に記載の異常検出装置。
【0030】
(付記4)
前記ヒータは、前記第1の抵抗体と前記第2の抵抗体の接続部を引き出す配線を有する
付記1から付記3のいずれか1つに記載の異常検出装置。
【0031】
(付記5)
前記第1の抵抗体の両端電圧を測定する第1の電圧測定器と、
前記第2の抵抗体の両端電圧を測定する第2の電圧測定器と、
を有する付記1から付記4のいずれか1つに記載の異常検出装置。
【0032】
(付記6)
前記検出部は、前記電圧測定器によって測定された測定値が所定範囲内にない場合に前記ヒータに異常が生じているものと判定する
付記1から付記5のいずれか1つに記載の異常検出装置
【符号の説明】
【0033】
10、10A、10B 異常検出装置
11 電源
20 ヒータ
21 第1の抵抗体
22 第2の抵抗体
23 接続部
24 基板
25 配線
30 電圧測定器
31 第1の電圧測定器
32 第1の電圧測定器
40 検出部