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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090623
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】移送器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A61B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206621
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】早川 浩一
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM33
4C160NN02
4C160NN30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】医療用シートを処置対象部に効率よく移送するための、移送器具を提供する。
【解決手段】移送器具170において、外筒22には、外筒の軸方向に沿って形成される切り欠き171が設けられている。第2シャフト48のうちの第1シャフト24の基端開口からの突出部分には、切り欠きを介して外筒の外部に突出し、切り欠きに沿ってスライドする操作部175が設けられている。
【選択図】図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具であって、
外筒と、
前記外筒の軸方向に延在して前記外筒の内部に前記軸方向に沿って移動可能に配置される第1シャフトと、前記第1シャフトの先端部に配置され、前記医療用シートを保持可能な支持面を含むシート状の支持部とを有する第1キャリア部材と、
前記外筒及び前記第1シャフトの内部に前記第1シャフトに沿って延在して前記第1シャフトに沿って移動可能に設けられる第2シャフトを有する第2キャリア部材と、
を備え、
前記支持部が前記外筒内に収容されるように前記第1及び第2シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させた第1位置において、前記支持部は、湾曲変形した状態で前記外筒内に収容され、
前記支持部が前記外筒の先端開口から突出するように前記第1及び第2シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させた第2位置において、前記支持部は、前記外筒から前記先端方向に露出することで展開し、
前記外筒には、前記軸方向に沿って形成される切り欠きが設けられ、
前記第2シャフトのうちの前記第1シャフトの基端開口からの突出部分には、前記切り欠きを介して前記外筒の外部に突出し、前記切り欠きに沿ってスライドする操作部が設けられ、
前記移送器具は、
前記第1位置から前記第2位置までの間において、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの前記軸方向における相対移動を規制する移動規制部と、
前記外筒に対する前記第1シャフトの前記軸方向における相対移動範囲の先端位置を規定する移動範囲規制部と、
前記第2キャリア部材に設けられ、前記第2キャリア部材が前記第2位置から前記第1位置に向かって移動する際に、前記第1キャリア部材に係合して前記第1キャリア部材を前記基端方向に移動させる係合部と、
をさらに備える、移送器具。
【請求項2】
請求項1記載の移送器具において、
前記移動規制部は、前記第1位置から前記第2位置までの間において、前記支持部と前記第2シャフトの先端部とに当接することで、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの前記軸方向における相対移動を規制する、移送器具。
【請求項3】
請求項2記載の移送器具において、
前記移動規制部は、前記第2シャフトの前記先端部により構成された押付部であり、
前記外筒内に前記支持部が収容された状態で、前記押付部が前記支持部を前記外筒の内面に押し付けることにより、前記支持部と前記第2シャフトとの相対変位が拘束される、移送器具。
【請求項4】
請求項2記載の移送器具において、
前記移動規制部は、前記支持部に設けられる第1嵌合部と、前記第2シャフトの前記先端部に設けられる第2嵌合部とを備え、
前記外筒内に前記支持部が収容された状態で、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部とが嵌合することにより、前記支持部と前記第2シャフトとの相対変位が拘束され、
前記第2位置において前記支持部が展開することで、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との嵌合が解除される、移送器具。
【請求項5】
請求項2記載の移送器具において、
前記移動規制部は、前記支持面を含む前記支持部の表面に設けられる第1係合部と、前記第2シャフトの前記先端部に形成される第2係合部とを備え、
前記外筒内に前記支持部が収容された状態で、前記第2シャフトの軸方向において前記第1係合部と前記第2係合部とが向かい合い、前記第1係合部と前記第2係合部とが前記軸方向に係合されることにより、前記支持部と前記第2シャフトとの相対変位が拘束され、
前記第2位置において前記支持部が展開することで、前記第1係合部と前記第2係合部とが前記軸方向に向かい合うことなく前記第1係合部と前記第2係合部との係合が解除される、移送器具。
【請求項6】
請求項1記載の移送器具において、
前記移動範囲規制部は、前記第1シャフトに設けられ、前記切り欠きを介して前記外筒の外部に突出し、前記切り欠きに沿ってスライド可能な凸部を有し、
前記軸方向における前記切り欠きの先端の位置が、前記相対移動範囲の前記先端位置である、移送器具。
【請求項7】
請求項1記載の移送器具において、
前記移動範囲規制部は、前記外筒と前記第1キャリア部材とに接続された紐状又はワイヤ状の連結部材を有する、移送器具。
【請求項8】
請求項1記載の移送器具において、
前記第1シャフトは、管状を有し、
前記第2シャフトは、前記第1シャフトに挿通されるシャフト本体を有し、
前記係合部は、前記シャフト本体の先端部から延出し、
前記係合部のうちの少なくとも一部は、前記第1シャフトよりも前記先端方向側に位置しており、且つ、前記軸方向に垂直な方向における寸法が前記第1シャフトの内径よりも大きい、移送器具。
【請求項9】
請求項2記載の移送器具において、
前記第2シャフトの前記先端部には、前記医療用シートを保持可能な第2支持面を含むシート状の第2支持部が設けられ、
前記第2支持部は、前記支持面に重なる後退位置と、前記支持面よりも前記先端方向に位置する進出位置との間で、前記支持部に対して相対移動可能である、移送器具。
【請求項10】
請求項9記載の移送器具において、
前記第1位置において、前記第2支持部は、前記外筒の内部で前記支持部と共に湾曲変形して収容される、移送器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えば、臓器移植に用いられる医療用シート(細胞シート)を生体の処置対象部に移送するための移送器具が開示されている。この移送器具は、シャフトと、シャフトの先端部に設けられた支持部とを備える。支持部は、医療用シートを載せるためのシート支持体を有する。移送器具では、シート支持体の支持面に載せられた医療用シートの上面を鉗子等で押さえながら移送器具をスライドさせることにより、医療用シートを支持部から処置対象部に移送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-000511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術では、医療用シートを支持部の支持面から生体の処置対象部に移送するときに、鉗子等で医療用シートの上面を押さえながら移送器具を操作する必要があるため、医療用シートを処置対象部に効率よく移送できないことが懸念される。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の態様は、医療用シートを生体の処置対象部に移送するための移送器具であって、外筒と、前記外筒の軸方向に延在して前記外筒の内部に前記軸方向に沿って移動可能に配置される第1シャフトと、前記第1シャフトの先端部に配置され、前記医療用シートを保持可能な支持面を含むシート状の支持部とを有する第1キャリア部材と、前記外筒及び前記第1シャフトの内部に前記第1シャフトに沿って延在して前記第1シャフトに沿って移動可能に設けられる第2シャフトを有する第2キャリア部材と、を備え、前記支持部が前記外筒内に収容されるように前記第1及び第2シャフトを前記外筒に対して基端方向に移動させた第1位置において、前記支持部は、湾曲変形した状態で前記外筒内に収容され、前記支持部が前記外筒の先端開口から突出するように前記第1及び第2シャフトを前記外筒に対して先端方向に移動させた第2位置において、前記支持部は、前記外筒から前記先端方向に露出することで展開し、前記外筒には、前記軸方向に沿って形成される切り欠きが設けられ、前記第2シャフトのうちの前記第1シャフトの基端開口からの突出部分には、前記切り欠きを介して前記外筒の外部に突出し、前記切り欠きに沿ってスライドする操作部が設けられ、前記移送器具は、前記第1位置から前記第2位置までの間において、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの前記軸方向における相対移動を規制する移動規制部と、前記外筒に対する前記第1シャフトの前記軸方向における相対移動範囲の先端位置を規定する移動範囲規制部と、前記第2キャリア部材に設けられ、前記第2キャリア部材が前記第2位置から前記第1位置に向かって移動する際に、前記第1キャリア部材に係合して前記第1キャリア部材を前記基端方向に移動させる係合部と、をさらに備える。
【0007】
本発明によれば、移送器具が第2キャリア部材を備えるため、他のデバイス(鉗子等)を用いることなく、第2キャリア部材を利用して医療用シートを支持部上から処置対象部へと載せ替えることができる。このため、医療用シートを処置対象部に効率よく移送することができる。
【0008】
また、第2シャフトに設けられた操作部が切り欠きを介して外筒の外部に突出している。これにより、ユーザが操作部を切り欠きに沿って先端方向にスライドすると、第1シャフト及び第2シャフトを先端方向に移動させることができる。この結果、支持部を外筒の先端開口から突出させることができる。
【0009】
さらに、移送器具が移動規制部及び移動範囲規制部を備えているので、ユーザが操作部を先端方向にスライドすると、医療用シートを処置対象部へと移送させることができる。これにより、支持部に支持された医療用シートを処置対象部に効率よく移送させることができる。また、第1位置から第2位置までの間では、第1シャフトと第2シャフトとの相対移動が規制されるので、支持部が外筒内に収容されている状態で、第2シャフトのみが先端方向に移動することを防止することができる。
【0010】
また、移送器具が係合部を備えているので、ユーザが操作部を基端方向にスライドするだけで、第1キャリア部材と第2キャリア部材とを外筒に収容することができる。
【0011】
しかも、第1シャフトと第2シャフトとが外筒内に収容され、操作部のみが切り欠きを介して外筒の外部に突出しているので、第1シャフト及び第2シャフトは、外筒の基端から露出していない。これにより、ユーザは、操作部のみを軸方向にスライドすればよいので、どの部位を操作すべきか迷うことがない。
【0012】
このように、本発明では、ユーザによる移送器具の操作が容易であると共に、ユーザによる移送器具の誤操作を防止することができる。
【0013】
(2)上記の(1)記載の移送器具において、前記移動規制部は、前記第1位置から前記第2位置までの間において、前記支持部と前記第2シャフトの先端部とに当接することで、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの前記軸方向における相対移動を規制してもよい。
【0014】
支持部を外筒の先端方向で展開させる前の状態では、移動規制部によって第2シャフトの先端部と支持部とが当接するので、第1シャフトと第2シャフトとの軸方向への相対移動を阻止することができる。
【0015】
(3)上記の(2)記載の移送器具において、前記移動規制部は、前記第2シャフトの前記先端部により構成された押付部であり、前記外筒内に前記支持部が収容された状態で、前記押付部が前記支持部を前記外筒の内面に押し付けることにより、前記支持部と前記第2シャフトとの相対変位が拘束されてもよい。
【0016】
外筒内に支持部が収容された状態において、第2シャフトの先端部である押付部によって支持部が外筒の内面に押し付けられることで、外筒に対して第2シャフトのみが先端方向に移動することを防止することができる。
【0017】
(4)上記の(2)記載の移送器具において、前記移動規制部は、前記支持部に設けられる第1嵌合部と、前記第2シャフトの前記先端部に設けられる第2嵌合部とを備え、前記外筒内に前記支持部が収容された状態で、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部とが嵌合することにより、前記支持部と前記第2シャフトとの相対変位が拘束され、前記第2位置において前記支持部が展開することで、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との嵌合が解除されてもよい。
【0018】
外筒内に支持部が収容された第1位置において、第1嵌合部と第2嵌合部とが嵌合されることで、支持部を有した第1シャフトと第2シャフトとの軸方向への相対移動を阻止することができる。また、第2位置で第1嵌合部と第2嵌合部との嵌合が解除されると、支持部に対して第2シャフトが先端方向へ移動可能となる。
【0019】
(5)上記の(2)記載の移送器具において、前記移動規制部は、前記支持面を含む前記支持部の表面に設けられる第1係合部と、前記第2シャフトの前記先端部に形成される第2係合部とを備え、前記外筒内に前記支持部が収容された状態で、前記第2シャフトの軸方向において前記第1係合部と前記第2係合部とが向かい合い、前記第1係合部と前記第2係合部とが前記軸方向に係合されることにより、前記支持部と前記第2シャフトとの相対変位が拘束され、前記第2位置において前記支持部が展開することで、前記第1係合部と前記第2係合部とが前記軸方向に向かい合うことなく前記第1係合部と前記第2係合部との係合が解除されてもよい。
【0020】
外筒内に支持部が収容された第1位置において、第1係合部と第2係合部とが軸方向に係合されることで、支持部を有した第1シャフトと第2シャフトとの軸方向への相対移動が阻止される。また、第2位置で第1係合部と第2係合部との係合が解除されると、支持部に対して第2シャフトが先端方向へ移動可能となる。
【0021】
(6)上記の(1)~(5)のいずれか1つに記載の移送器具において、前記移動範囲規制部は、前記第1シャフトに設けられ、前記切り欠きを介して前記外筒の外部に突出し、前記切り欠きに沿ってスライド可能な凸部を有し、前記軸方向における前記切り欠きの先端の位置が、前記相対移動範囲の前記先端位置であってもよい。
【0022】
切り欠きに沿って凸部が先端方向にスライドしたときに、凸部が切り欠きの先端に当接することで、第1シャフトの先端方向への移動が規制される。これにより、第1シャフトが外筒から先端方向に必要以上に突出することを回避することができる。
【0023】
(7)上記の(1)~(5)のいずれか1つに記載の移送器具において、前記移動範囲規制部は、前記外筒と前記第1キャリア部材とに接続された紐状又はワイヤ状の連結部材を有してもよい。
【0024】
シンプルな構成で、第1シャフトの相対移動範囲の先端位置を規定することができる。
【0025】
(8)上記の(1)~(5)のいずれか1つに記載の移送器具において、前記第1シャフトは、管状を有し、前記第2シャフトは、前記第1シャフトに挿通されるシャフト本体を有し、前記係合部は、前記シャフト本体の先端部から延出し、前記係合部のうちの少なくとも一部は、前記第1シャフトよりも前記先端方向側に位置しており、且つ、前記軸方向に垂直な方向における寸法が前記第1シャフトの内径よりも大きくてもよい。
【0026】
第2キャリア部材が第2位置から第1位置に向かって移動する際に、係合部のうちの一部が、第1シャフトの先端開口に係合する。係合部が先端開口に係合することで、第1キャリア部材は、第2キャリア部材と一体的に、外筒に対して基端方向へと相対移動することができる。
【0027】
(9)上記の(2)~(5)のいずれか1つに記載の移送器具において、前記第2シャフトの前記先端部には、前記医療用シートを保持可能な第2支持面を含むシート状の第2支持部が設けられ、前記第2支持部は、前記支持面に重なる後退位置と、前記支持面よりも前記先端方向に位置する進出位置との間で、前記支持部に対して相対移動可能であってもよい。
【0028】
第2支持面を有した第2支持部によって、医療用シートを第1支持部に沿って移動させることができる。
【0029】
(10)上記の(9)記載の移送器具において、前記第1位置において、前記第2支持部は、前記外筒の内部で前記支持部と共に湾曲変形して収容されてもよい。
【0030】
幅寸法を有した第2支持部であっても、外筒の内部に好適に収容することが可能である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、移送器具が第2キャリア部材を備えるため、他のデバイス(鉗子等)を用いることなく、第2キャリア部材を利用して医療用シートを支持部上から処置対象部へと載せ替えることができる。このため、医療用シートを処置対象部に効率よく移送することができる。
【0032】
また、第2シャフトに設けられた操作部が切り欠きを介して外筒の外部に突出している。これにより、ユーザが操作部を切り欠きに沿って先端方向にスライドすると、第1シャフト及び第2シャフトを先端方向に移動させることができる。この結果、支持部を外筒の先端開口から突出させることができる。
【0033】
さらに、移送器具が移動規制部及び移動範囲規制部を備えているので、ユーザが操作部を先端方向にスライドすると、医療用シートを処置対象部へと移送させることができる。これにより、支持部に支持された医療用シートを処置対象部に効率よく移送させることができる。また、第1位置から第2位置までの間では、第1シャフトと第2シャフトとの相対移動が規制されるので、支持部が外筒内に収容されている状態で、第2シャフトのみが先端方向に移動することを防止することができる。
【0034】
また、移送器具が係合部を備えているので、ユーザが操作部を基端方向にスライドするだけで、第1キャリア部材と第2キャリア部材とを外筒に収容することができる。
【0035】
しかも、第1シャフトと第2シャフトとが外筒内に収容され、操作部のみが切り欠きを介して外筒の外部に突出しているので、第1シャフト及び第2シャフトは、外筒の基端から露出していない。これにより、ユーザは、操作部のみを軸方向にスライドすればよいので、どの部位を操作すべきか迷うことがない。
【0036】
このように、本発明では、ユーザによる移送器具の操作が容易であると共に、ユーザによる移送器具の誤操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、移送器具の斜視図である。
図2図2は、図1の移送器具の分解斜視図である。
図3図3は、図1の移送器具の先端部の平面図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿った縦断面図である。
図5図5は、図3のV-V線に沿った横断面図である。
図6図6は、図1の移送器具を用いた医療用シートの移送方法の手順を示すフローチャートである。
図7図7は、シート載置工程の第1説明図である。
図8図8は、シート載置工程の第2説明図である。
図9図9は、収容工程の説明図である。
図10図10は、図9のX-X線に沿った横断面図である。
図11図11は、図9のXI-XI線に沿った横断面図である。
図12図12は、配置工程の説明図である。
図13図13は、展開工程の説明図である。
図14図14は、移動工程の説明図である。
図15図15は、抜去工程の説明図である。
図16図16は、第1変形例に係る移動規制部を備えた移送器具の断面図である。
図17図17Aは、第2変形例に係る移動規制部を示す移送器具の先端部の平面図であり、図17Bは、図17Aの移送器具の第1支持部が外筒に収容された状態を示す平面図である。
図18図18は、第1支持部を有した第3変形例に係る移送器具の先端部の平面図である。
図19図19は、図18のXIX-XIX線に沿った断面図である。
図20図20は、押圧体を備えた第4変形例に係る移送器具の先端部の拡大斜視図である。
図21図21は、押圧体を備えた第5変形例に係る移送器具の先端部の拡大斜視図である。
図22図22は、図21の移送器具の先端部の断面図である。
図23図23A及び図23Bは、第6変形例に係る移送器具の基端部の拡大斜視図である。
図24図24は、移送器具の斜視図である。
図25図25は、移送器具の斜視図である。
図26図26は、移送器具の斜視図である。
図27図27は、移送器具の斜視図である。
図28図28は、移送器具の変形例を示す図である。
図29図29は、移送器具の他の変形例を示す図である。
図30図30は、移送器具の他の変形例を示す図である。
図31図31は、移送器具の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1に示される移送器具10は、医療用シート300を生体の処置対象部に移送するための医療機器である。移送器具10は、例えば、虚血性心疾患による重症心不全の治療に使用される。この場合、医療用シート300は、心臓400の移植対象部402(生体の処置対象部)に移植される(図12図15参照)。移送器具10では、複数枚の医療用シート300を移植対象部402に貼付することができる。
【0039】
このような医療用シート300は、医療用途の医薬品や再生医療等製品、医療機器等を含む。医療用シート300は、フィルム状、膜状(ゲル状の物体)等のシート状に形成されている。医療用シート300は、フィブリン等を塗布して補強されてもよい。細胞を含む再生医療等製品は、例えば、細胞シート(シート状細胞培養物)、スフェロイド等を含む。細胞シートは、自家細胞又は他家細胞を培養して形成することができる。細胞シートは、例えば、骨格筋由来細胞シート又はiPS細胞由来心筋細胞シートである。
【0040】
医療用シート300は、組織接着剤、局所麻酔剤等を含んでもよい。医療用シート300の厚さは、例えば約100μmであり、医療用シート300の直径は、例えば約60mmである。ただし、医療用シート300の厚さ及び直径(大きさ)は、適宜設定可能である。
【0041】
医療用シート300は、心臓400以外の臓器(例えば、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸、食道等)に移植されるシートであってもよい。また、医療用シート300は、医療用途であれば、例えば、癒着を防止するためのシートであってもよい。
【0042】
図1及び図2に示すように、移送器具10は、器具本体12と、内視鏡14と、固定部材16とを備える。器具本体12は、第1キャリア部材18と、第2キャリア部材20と、外筒22と、移動規制部23とを有する。なお、移送器具10は、内視鏡14を備える場合に限定されない。
【0043】
図2において、第1キャリア部材18は、第1シャフト24及び第1支持部26を有する。
【0044】
第1シャフト24は、第1内腔28を有する。第1シャフト24は、管状体である。第1シャフト24の先端は、先端開口25を有する。第1内腔28は、第1シャフト24の先端(矢印X1方向の端)で先端開口25を介して開口している。第1シャフト24の基端部24b(矢印X2方向の端部)は、閉塞してもよいし、又は、閉塞してなくてもよい。第1シャフト24の軸方向に沿った長さは、外筒22の軸方向に沿った長さよりも長い。
【0045】
第1シャフト24は、外筒22の軸方向に延在して外筒22の内部に軸方向に沿って移動可能に配置される。第1シャフト24は、例えば、樹脂材料によって構成されている。第1シャフト24は、可撓性を有してもよい。第1シャフト24の構成材料としては、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等が挙げられる。第1シャフト24は、金属材料によって構成されてもよい。
【0046】
図2図4に示すように、第1支持部26は、第1シャフト24の先端部に取り付けられる。第1支持部26は、例えば、樹脂材料によって構成されている。第1支持部26は、医療用シート300(図1参照)を保持可能である。第1支持部26は、可撓性を有した樹脂製のシート材(フィルム材)を所定形状に折り曲げることにより形成される。第1支持部26は、例えば、シート成形型によってシート材を所定形状に成形することにより形成される。シート材の肉厚は、特に限定されないが、例えば、100μm以上200μm以下に設定されるのが好ましい。第1支持部26は、第1接合部30及び第1支持本体32を有する。
【0047】
第1支持部26の構成材料としては、特に限定されないが、透明性を有することが望ましく、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂等が挙げられる。また、第1支持部26は、メッシュ状であってもよい。
【0048】
図4において、第1接合部30は、第1シャフト24の先端部の内周面に接着剤によって接着されている。接着剤としては、特に限定されないが、例えば、UV接着剤、ホットメルト接着剤、瞬間接着剤(例えば、シアノアクリレート系瞬間接着剤)等が挙げられる。第1接合部30は、第1シャフト24の内周面に熱融着されてもよい。
【0049】
図3に示すように、第1支持本体32は、第1接合部30(図4参照)から先端方向に延出している。第1支持本体32は、基端支持部34、中間支持部36、一対の第1突出部38、一対の第2突出部40と、先端支持部42とを有する。
【0050】
基端支持部34は、第1接合部30の先端から先端方向(矢印X1方向)に向かって第1シャフト24の軸線Axに概ね沿うように延出している(図4参照)。基端支持部34は、その延出方向に向かって幅広に形成されている。換言すれば、基端支持部34の幅方向の両側部は、第1接合部30に向かってテーパ状に傾斜している。
【0051】
中間支持部36は、基端支持部34の先端から先端方向(矢印X1方向)に向かって第1シャフト24の軸線Axに対して交差し、第1支持部26の先端方向(矢印X1方向)に向かって延出している(図4参照)。中間支持部36は、先端から基端方向(矢印X2方向)に向けて徐々に幅が小さくなるテーパ状に形成される。
【0052】
図2及び図3において、一対の第1突出部38は、第1シャフト24の移動方向と直交する中間支持部36の幅方向の両側部から上方(矢印Y方向)且つ中間支持部36の幅方向内方に突出している。一対の第1突出部38は、基端支持部34に接続されている。
【0053】
図5に示すように、一対の第1突出部38の各々は、中間支持部36の上面(第1支持面261)に接続される固定端441と、第1支持面261に対して第1突出部38の突出方向に離間した端部である自由端442とを備える。
【0054】
図5に示す第1突出部38の突出方向と直交し、且つ、第1支持面261と直交する断面において、第1突出部38の各々の断面は、自由端442と固定端441との間を構成する中間部443を有する。中間部443は、第1支持面261から離間する方向に向けて凸状に膨出した円弧状である。中間部443の断面は、単一の半径を有した円弧状に限定されず弧状であればよい。換言すれば、図5に示す第1突出部38の断面において、固定端441と自由端442とを結ぶ線分Lに対し、中間部443が外側に配置される。
【0055】
図5に示す第1突出部38の突出方向と直交し、且つ、第1支持面261と直交する断面において、中間部443の曲率Rは、第1支持部26の基端方向(図3中、矢印X2方向)に向かって大きくなる。
【0056】
図3に示すように、一対の第2突出部40は、一対の第1突出部38の先端にそれぞれ繋がっている。一対の第2突出部40は、中間支持部36の幅方向の両側部から上方且つ中間支持部36の幅方向外方に突出している。第2突出部40は、第1突出部38よりも小さな曲率で形成される。第2突出部40は、第1突出部38より第1支持面261に対する突出高さが低い。
【0057】
先端支持部42は、中間支持部36の先端と一対の第2突出部40の先端とに繋がっている。先端支持部42は、先端方向(矢印X1方向)に向かって円弧状に突出している。すなわち、図3に示す第1支持面261と直交する方向から見て、第1支持部26の先端支持部42は、一対の第2突出部40を繋ぐ円弧状である。
【0058】
一対の第1突出部38の各々は、固定端441の基端側に一対の折曲部444を有する。一対の折曲部444の各々は、一対の第1突出部38を第1支持部26の第1支持面261(中間支持部36)に対して折り曲げる(図5参照)。図3に示すように、第1支持部26の折曲部444を折り曲げて外側に凸状に膨出した一対の第1突出部38を形成するとき、第1支持部26となる樹脂製シート材26a(図3中、仮想線形状参照)の幅方向における最大幅Wmとなる箇所の両端部を折曲部444で折り曲げることが好ましい。
【0059】
図3に示す第1支持面261と直交する方向から見たとき、第1支持部26における一対の折曲部444の幅方向の間隔Wが基端方向(矢印X2方向)に向かって徐々に小さくなる。すなわち、第1支持本体32において、一対の折曲部444は、基端方向に向けてテーパ状に形成される。
【0060】
第1支持本体32は、上方(矢印Y方向)を向き第1支持面261を含む表面461と、表面461の反対面である裏面462とを有する(図4及び図5参照)。第1支持面261は、基端支持部34の上面、中間支持部36及び先端支持部42の上面に連なった平坦面である。第1支持面261には、第2キャリア部材20の後述する第2支持部50を第1支持面261に対して円滑にスライドできるように潤滑剤が塗布されてもよい。
【0061】
図2に示すように、第2キャリア部材20は、第2シャフト48と、第2支持部50と、操作部51とを有する。
【0062】
第2シャフト48は、第2内腔57を有する。第2シャフト48は、有底筒状の管状体である。第2シャフト48の軸方向に沿った長さは、第1シャフト24の軸方向に沿った長さよりも短い。第2シャフト48の軸方向に沿った長さは、外筒22の軸方向に沿った長さよりも長い。第2シャフト48は、第1シャフト24の第1内腔28に挿通されている(図1及び図4参照)。第2シャフト48の先端部は、第1シャフト24の先端開口25から先端方向(矢印X1方向)に突出している。第2シャフト48の基端部は、常時、第1シャフト24の内部に収容されている(図1参照)。第2シャフト48は、第1シャフト24に沿って延在して第1シャフト24に沿って移動可能に設けられる。第2シャフト48は、管状体に限定されるものではなく、管状体でなくてもよい。
【0063】
なお、第1シャフト24の第1内腔28と第2シャフト48との間に、スプリング等の弾発部材を設け、弾発部材の弾発力によって第2シャフト48が第1シャフト24に対して基端方向(矢印X2方向)に付勢される構成であってもよい。これにより、第1シャフト24に対して第2シャフト48の操作部51をユーザが先端方向(矢印X1方向)に移動させた際、ユーザの操作力がなくなることで、第2シャフト48が弾発力によって基端方向に移動可能である。
【0064】
第2シャフト48は、第1支持部26の形状に追従できるように構成される。第2シャフト48の構成材料としては、例えば、第1シャフト24の構成材料よりも柔軟性がある材料が選択される。具体的に、第2シャフト48の構成材料としては、例えば、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、シリコーンゴム、金属コイル(樹脂との複合も含む)等が挙げられる。第2シャフト48は、可撓性を有する。
【0065】
図4に示すように、第2シャフト48は、キャリア保持部54と、第2シャフト48の先端部により構成された押付部56とを有する。押付部56は、エラストマー材等の弾性体から形成される。押付部56は、外筒22内に第1支持部26が収容された状態で、第1支持部26を外筒22の内面に押し付ける。
【0066】
キャリア保持部54の先端は、押圧面58を有する。キャリア保持部54は、第1支持部26に支持された医療用シート300(図1参照)の外周端面を押圧面58により先端方向(矢印X1方向)に押圧可能である。押付部56には、第2支持部50を支持するキャリア保持部54が設けられる。キャリア保持部54は、押圧面58と、取付孔60とを備える。キャリア保持部54は、上方から見て先端方向に向かって幅広に形成されている(図3参照)。キャリア保持部54は、上方から見て台形状に形成されている。図5に示す第2シャフト48の軸線と直交する断面において、キャリア保持部54は、キャリア保持部54の中心線Cを通り且つキャリア保持部54の幅方向と平行な仮想線L1に対して線対称な形状を有する。換言すれば、キャリア保持部54は、仮想線L1を中心として上下方向に対称形状である。
【0067】
具体的には、第2シャフト48の軸線と直交する断面において、キャリア保持部54の断面は、第2シャフト48の軸線と直交する一対の直線部621、622と、一対の直線部621、622の両側に配置され直線部621、622から離間する方向(幅方向外方)に凸状となる一対の凸状部641、642とを有する。凸状部641、642は、断面円弧状に形成される。直線部621、622の延在方向に沿ったキャリア保持部54の第1長さD1(幅寸法)が、延在方向と直交するキャリア保持部54の第2長さD2(厚さ寸法)よりも大きい。すなわち、キャリア保持部54は断面扁平状である。なお、キャリア保持部54は、断面扁平状に形成される場合に限定されず、例えば、断面円形状、断面楕円形状、断面正方形状、断面長方形状等で形成されてもよい。また、凸状部641、642に代えて、外筒22内に第1支持部26が収容された状態で、第1支持部26を外筒22の内面に押し付けられるような凹凸構造をキャリア保持部54に備えてもよい。
【0068】
押付部56と共に第1支持部26が外筒22の内腔78(図2及び図4参照)に収容されたとき、押付部56の幅方向両端部(一対の凸状部641、642)によって第1支持部26が外筒22の内腔78に向けて押されるように、押付部56の幅(第1長さD1)が設定される。押付部56の第1長さD1は、例えば、外筒22の内径(内腔78の直径)と同等、若しくは若干大きく設定される。第1支持部26の厚みがあるため、押付部56の第1長さD1は、外筒22の内径よりも若干小さく設定されてもよい。
【0069】
図4において、押圧面58は、キャリア保持部54の先端面に設けられる。押圧面58に取付孔60が開口する。押圧面58には、第2支持部50が取り付けられる。押圧面58は、医療用シート300の外周端面を先端方向(矢印X1方向)に押圧する(図14参照)。押圧面58は、キャリア保持部54の軸線と直交した平坦面である。なお、押圧面58には、第2シャフト48の先端部に向けてプライミング用又は湿潤用の液体(例えば、生理食塩水)を供給可能な供給孔(図示せず)が備えられてもよい。
【0070】
取付孔60は、キャリア保持部54の押圧面58に開口する。取付孔60は、押圧面58においてキャリア保持部54の中心線C上に配置される。取付孔60は、中心線Cからキャリア保持部54の幅方向と平行に延在するスリット状である。取付孔60は、中心線Cを中心として幅方向に対称形状である。取付孔60は、押圧面58から軸方向に延在する。取付孔60には、第2支持部50の一部が挿入され接続される。
【0071】
図2図4において、第2支持部50は、可撓性を有したシート状に構成される。第2支持部50は、第2接合部70及び第2支持本体72を有する。第2接合部70は、第2支持部50の基端に設けられる。第2接合部70は、第2支持本体72の基端に設けられる。第2接合部70は、キャリア保持部54の取付孔60に挿入され、例えば、接着されている。第2接合部70は、接着以外の適宜の接合方法によりキャリア保持部54の取付孔60に接合されてもよい。また、第2支持部50は、キャリア保持部54と一体的に成形されてもよい。
【0072】
第2支持本体72は、第2接合部70から先端方向(矢印X1方向)に延出している。第2支持本体72の第2接合部70からの延出方向長さは、第1支持本体32の第1接合部30からの延出方向長さよりも短い。第2支持本体72の上面には、医療用シート300を載せるための第2支持面74が設けられる。第2支持面74は、平坦面である。第2支持本体72は、第1支持本体32よりも小さい。すなわち、第2支持面74の面積は、第1支持面261の面積よりも小さい。
【0073】
図3に示すように、第2支持本体72の基端部は、基端方向(矢印X2方向)に向かって幅狭に形成されている。第2支持本体72における先端と基端との間の中間部443は、実質的に一定の幅で延在している。第2支持部50の先端部は、先端方向(矢印X1方向)に向かって円弧状に突出している。第2支持本体72の両面(下面及び上面)には、潤滑剤が塗布されていてもよい。
【0074】
図1及び図2において、外筒22は、内腔78を有する円筒部材である。内腔78は、外筒22の先端(矢印X1方向の端)に開口する先端開口80を有する。内腔78は、外筒22の基端(矢印X2方向の端)に開口する基端開口81を有する。外筒22は、可撓性を有する。外筒22の構成材料は、上述した第1シャフト24の構成材料と同様の材料が挙げられる。
【0075】
外筒22の内腔78には、第1シャフト24が挿通されている。上記のように、外筒22の軸方向に沿った長さは、第1シャフト24の軸方向に沿った長さよりも短い。図3及び図4において、外筒22の内径は、中間支持部36の幅よりも小さい。中間支持部36の幅は、第1支持部26を外筒22の内周面の周方向に沿って筒状に丸められた状態で外筒22内に収容できるように、外筒22の内面の円周長さと実質的に同じ長さ、又は、円周長さ以下の長さである。外筒22の基端には、第2シャフト48の外周面に密着する気密用の弁体84が設けられる。
【0076】
図2及び図4において、外筒22の先端面は、外筒22の軸方向と直交する方向に沿って延在している。
【0077】
なお、上記のように、外筒22の軸方向において、第1シャフト24は、外筒22よりも長い。第1シャフト24は、外筒22の基端開口81から基端方向に突出している(図1参照)。したがって、第1支持部26が外筒22内に収容される状態と、第1支持部26が外筒22の先端開口80から突出する状態とのいずれの状態においても、第1シャフト24は、外筒22の基端開口81から基端方向に突出している。
【0078】
また、第1シャフト24の第1内腔28に、第2シャフト48が挿通されている。上記のように、第2シャフト48は、外筒22の軸方向において、外筒22よりも長いと共に、第1シャフト24よりも短い。そのため、第2シャフト48は、第1シャフト24の内部に収容された状態で、外筒22の基端開口81から基端方向に突出している(図1参照)。
【0079】
図2に示すように、内視鏡14は、長尺な内視鏡本体86を有する。内視鏡本体86の先端部は、外筒22の外周面に固定部材16によって固定されている(図1参照)。内視鏡本体86の先端面に設けられた対物レンズ88は、外筒22の先端方向(矢印X1方向)を向いている。内視鏡本体86の先端部は、外筒22の軸方向の中間部に固定される。ただし、内視鏡本体86の先端部は、外筒22の先端部に固定されてもよい。
【0080】
固定部材16は、例えば、固定筒90と、固定チューブ92とを含む。固定筒90は、例えば、硬質な樹脂材料によって構成されている。固定筒90の内腔には、内視鏡本体86を挿入可能である。固定筒90は、外筒22の長手方向に沿うように配置されている。固定チューブ92は、固定筒90を外筒22の所定位置に固定するためのチューブである。固定チューブ92は、例えば、熱収縮チューブである。なお、外筒22と固定筒90とは、一体成形品であってもよい。ただし、内視鏡本体86の先端部の外筒22への固定方法は、適宜設定可能である。
【0081】
移動規制部23は、第1シャフト24と第2シャフト48との軸方向における相対移動を規制可能である。移動規制部23は、第2シャフト48の先端部により構成されたキャリア保持部54(押付部56)から構成される。外筒22内に第1支持部26が収容された状態で、キャリア保持部54が第1支持部26を外筒22の内面(内腔78)に押し付けることで、第1支持部26と第2シャフト48との相対変位が拘束される。第1支持部26と第2シャフト48との相対移動が拘束されることに伴って、第1シャフト24と第2シャフト48との軸方向における相対移動が規制される(図10参照)。
【0082】
なお、後述する切り欠き97を用いて操作部51及び第2シャフト48の基端部を規定しない場合、第3係合部96(係合部)を設けるとよい。この場合、第3係合部96は、第2キャリア部材20に設けられる。
【0083】
第3係合部96は、後述する第2位置から第1位置へと第2キャリア部材20が移動する際に、第1キャリア部材18に係合する。第1キャリア部材18は、第3係合部96に係合されることで、第2キャリア部材20と一体的に、外筒22に対して基端方向へと相対移動することができる。
【0084】
以下の説明において、第2シャフト48のうちの第3係合部96よりも基端方向側(矢印X2方向)の部位を、シャフト本体49とも称する。すなわち、第2シャフト48は、シャフト本体49を有する(図2も参照)。シャフト本体49は、第1シャフト24に挿通されている。シャフト本体49の先端部から、第3係合部96が先端方向に延出している。
【0085】
第3係合部96の少なくとも一部は、第1シャフト24よりも先端方向側に位置している(図3も参照)。第3係合部96のうちの、第1シャフト24よりも先端方向側に位置している部分の幅は、第1内腔28の径よりも大きい。すなわち、第1シャフト24の径方向において、第3係合部96の少なくとも一部の寸法は、第1シャフト24の内径D24よりも大きい。第1シャフト24の径方向は、外筒22の軸方向に垂直である。
【0086】
移送器具10では、上述したキャリア保持部54が、第3係合部96を兼ねる。すなわち、図3に示すように、キャリア保持部54の少なくとも一部は、第1シャフト24よりも先端方向側に位置している。キャリア保持部54のうちの第1シャフト24よりも先端方向側に位置している部分の幅W54は、第1シャフト24の内径D24よりも大きい(W54>D24)。第2キャリア部材20が第2位置から第1位置へと移動する際において、キャリア保持部54のうちの幅W54を有する部分が、第1シャフト24の先端開口25と係合する。キャリア保持部54が第1シャフト24の先端開口25に係合することで、第1キャリア部材18の全体は、第2キャリア部材20と一緒に基端方向へと相対移動することができる。
【0087】
なお、後述するように、移送器具10では、ユーザが操作部51を切り欠き97に沿って基端方向にスライドすることで、第2キャリア部材20を第2位置に移動させることが可能である。つまり、切り欠き97の基端で操作部51を止める場合には、第3係合部96は不要である。
【0088】
移送器具10では、上記のように、第1シャフト24及び第2シャフト48は、外筒22の軸方向において、外筒22よりも長い。そのため、第1シャフト24及び第2シャフト48は、外筒22の基端開口81から基端方向に突出している(図1参照)。また、第2シャフト48は、外筒22の軸方向において、第1シャフト24よりも短い。第2シャフト48は、第1シャフト24の第1内腔28に収容されている。さらに、第1シャフト24に対する第2シャフト48の可動範囲の全域にわたって、第2シャフト48の基端部は、第1シャフト24内に位置する。つまり、第2シャフト48の基端部は、第1シャフト24の基端部24bから基端方向に突出することはない。
【0089】
第1シャフト24のうちの外筒22の基端開口81からの突出部分には、外筒22の軸方向に沿って、切り欠き97が形成されている。切り欠き97は、第1内腔28に連通する溝である。
【0090】
第2シャフト48のうちの外筒22の基端開口81からの突出部分には、操作部51が設けられている。具体的には、第2シャフト48の基端部に操作部51が設けられている。操作部51は、第2シャフト48の基端部よりも先端方向側に設けられてもよい。操作部51は、切り欠き97を介して、第1シャフト24の外部に突出している。操作部51は、第2シャフト48の第2内腔57に連通する接続ポート部53であってもよい。
【0091】
操作部51は、切り欠き97に沿ってスライド可能である。操作部51が第2シャフト48に設けられているので、ユーザが操作部51を切り欠き97に沿ってスライドすると、第1シャフト24に対して第2シャフト48を外筒22の軸方向に相対移動させることができる。この場合、切り欠き97の外筒22の軸方向に沿った長さが、第1シャフト24に対する第2シャフト48の外筒22の軸方向における相対移動範囲となる。
【0092】
具体的には、ユーザが操作部51を矢印X1方向にスライドすることで、第2シャフト48を先端方向に移動させることができる。また、操作部51が切り欠き97の矢印X1方向の先端(切り欠き97の先端位置)に当接すると、第2シャフト48の矢印X1方向への移動が規制される。したがって、切り欠き97の先端位置は、第1シャフト24に対する第2シャフト48の外筒22の軸方向における相対移動範囲の先端位置である。
【0093】
また、ユーザが操作部51を矢印X2方向にスライドすることで、第2シャフト48を基端方向に移動させることができる。操作部51が切り欠き97の矢印X2方向の基端(切り欠き97の基端位置)に当接すると、第2シャフト48の矢印X2方向への移動が規制される。すなわち、切り欠き97の基端位置は、第1シャフト24に対する第2シャフト48の外筒22の軸方向における相対移動範囲の基端位置である。
【0094】
さらに、ユーザは、第1シャフト24のうちの外筒22の基端開口81からの突出部分を把持し、外筒22の軸方向に操作することにより、外筒22に対して第1シャフト24及び第2シャフト48を該軸方向に相対移動可能である。ただし、第1シャフト24には、切り欠き97が設けられている。そのため、切り欠き97が外筒22で覆われないように、外筒22に対する第1シャフト24の相対移動範囲が設定される。具体的には、第1シャフト24を矢印X1方向に移動させる場合、図1に示す第1シャフト24の位置が、外筒22に対する第1シャフト24の相対移動範囲の先端位置となる。また、第1シャフト24を矢印X2方向に移動させる場合、図9に示す第1シャフト24の位置が、外筒22に対する第1シャフト24の相対移動範囲の基端位置となる。
【0095】
次に、医療用シート300を生体の処置対象部に移送する移送方法について説明する。具体的に、図12図15に示すように、胸腔鏡下手術により医療用シート300を心臓400の移植対象部402(生体の処置対象部)に移送する移送方法について説明する。図6に示すように、移送方法は、準備工程、シート載置工程、収容工程、配置工程、展開工程、移動工程、及び、抜去工程を含む。
【0096】
まず、準備工程(ステップS1)において、移送器具10を準備する。以下では、図1に示すような状態を移送器具10の初期状態として説明する。初期状態では、移送器具10は以下の状態となっている。第1支持部26及び第2支持部50は、外筒22の先端開口80から先端方向に突出させた突出位置(第2位置)の状態となっている。操作部51は、切り欠き97の基端に位置している。第1及び第2支持部26、50の各々は、外筒22から先端方向に露出して展開しており、第1支持部26の第1支持面261の上に第2支持部50が配置されている。すなわち、第2支持部50は、第1支持部26の第1支持面261に重なった後退位置に配置されている。このとき、キャリア保持部54の基端部は、第1シャフト24の第1内腔28に挿入されている。
【0097】
続いて、シート載置工程(ステップS2)において、図7に示すように、シャーレ401内に配置されている医療用シート300を第2支持面74に載せる。なお、図8に示すように、医療用シート300は、第2支持面74に載せた状態で第2支持部50から外側に張り出している。第1支持面261は、医療用シート300のうち第2支持部50から外側に張り出した張出部302を支持する。一対の第2突出部40は、第2支持面74に医療用シート300を載せた状態で、中間支持部36の幅方向における医療用シート300の移動(位置ずれ)を抑制する。
【0098】
その後、収容工程(図6のステップS3)において、医療用シート300を第1支持部26及び第2支持部50と共に外筒22内に収容した収容位置(第1位置)とする。具体的には、ユーザは、第1シャフト24を把持して基端方向に引っ張る。これにより、第1及び第2シャフト24、48を基端方向に移動させることができる。
【0099】
そうすると、基端支持部34が外筒22の先端開口80から基端方向に引き込まれる。このとき、基端支持部34のテーパ状の両側部が外筒22の先端開口80に接触することにより、基端支持部34には、基端支持部34を外筒22の周方向に沿って丸まろうとする力が作用する。そのため、基端支持部34は、丸まりながら外筒22内にスムーズに引き込まれる。このとき、第1支持部26は、先端側が大径で、基端支持部34が小径となるように円錐状に丸まりながら、外筒22内に収容される。
【0100】
基端支持部34が変形すると、中間支持部36に外筒22の周方向に沿って丸まろうとする力が作用するため、中間支持部36は、丸まりながら外筒22内に引き込まれる。このとき、中間支持部36は、外筒22の内面に沿って円筒状に変形する。一対の第1突出部38の各々は、固定端441が内側に巻き込まれるように第1支持部26の表面461が内側、第1支持部26の裏面462が外側となるように湾曲していく。図11に示すように、径方向外方に向けて凸状に膨出した中間部443の裏面462同士が外筒22の中心軸と直交方向に延在する仮想線L2上で互いに接触する。一方の第1突出部38の中間部443と他方の第1突出部38の中間部443とが接触して下方(第1支持面261、表面461)に向けて収容されていく。
【0101】
これにより、第1支持部26の裏面462が外筒22の内面に密着した湾曲形状となり、各第1突出部38の固定端441から自由端442に向けて外筒22の中心に向けて折り返すようにさらに湾曲し、一対の自由端442が外筒22の中心軸より下方に配置される。すなわち、第1支持部26は、外筒22の内面に沿ったハート型に湾曲する。
【0102】
ハート型とは、一方において凸状に湾曲した形状と、一方とは反対側となる他方において二つの凸状に湾曲した形状からなる略円形状の形状をいう。管状体(外筒22)の内腔78にハート型が形成される場合、管状体の内面に沿って他方に突出した二つの凸状の湾曲形状が互いに近づいて一部の周面が互いに接することで、全体の輪郭が管状体の内面に沿った略円形状となる(図11中、第1支持部26の形状を参照)。
【0103】
第1支持部26の湾曲変形に伴って、第2支持部50も同様に、第1支持部26の内側(表面461側)で第1支持部26に沿って第2支持部50が湾曲変形する。第1及び第2支持部26、50の湾曲変形に伴って、医療用シート300が、第1及び第2支持本体32、72の形状に対応した形状に変形し、医療用シート300が外筒22内に収容される。収容工程は、図9に示すように、第1支持部26の全体が外筒22内に完全に挿入されることにより完了する。
【0104】
第1支持部26、第2支持部50及び医療用シート300を外筒22内に収容した収容状態では、図10に示すように、一対の第1突出部38は、裏面462同士が互いに接触した状態で押付部56の押圧面58よりも先端方向(矢印X1方向)に位置する(図9参照)。
【0105】
その後、配置工程(図6のステップS4)において、図12に示すように、胸部408の切開創409から胸腔410内に移送器具10を挿入する。この時、心臓400における移植対象部402の近くに移送器具10の先端を位置させると共に内視鏡14の先端を胸腔410内に位置させる。なお、移送器具10を胸腔410内に挿入する前に、接続ポート部53を介して、移送器具10に液体(例えば、生理食塩水)を導入してもよい。
【0106】
続いて、展開工程(図6のステップS5)において、図13に示すように、第1支持部26、第2支持部50及び医療用シート300を展開させる。具体的に、展開工程では、ユーザは、第1シャフト24を把持し、外筒22に対して、該第1シャフト24を先端方向(矢印X1方向)に移動させる。このとき、移動規制部23を介して第1シャフト24と第2シャフト48とが一体的に先端方向に移動する。そうすると、外筒22の先端開口80から露出した第1支持部26は、復元力によって元の形状に復帰する。第1支持部26が展開した第2位置において、第2支持部50及び医療用シート300は、平面形状に広がる。
【0107】
展開工程において、第2キャリア部材20では、医療用シート300を載せた第2支持面74の全体が第1支持面261の上に位置する。この時、医療用シート300は、第1支持面261と第2支持面74とによって支持される。これにより、医療用シート300を心臓400の移植対象部402に移送する前の状態で、医療用シート300の張出部302に皺が発生することを抑制できる。
【0108】
次いで、移動工程(図6のステップS6)において、図14に示すように、ユーザは、操作部51を切り欠き97に沿って先端方向にスライドさせる。これにより、第2キャリア部材20は、外筒22に対して先端方向(矢印X1方向)に移動する。この結果、医療用シート300が載せられた第2支持部50が後退位置から進出位置へと移動し、第2支持部50が第1支持部26の先端よりも先端方向(矢印X1方向)に突出する。すなわち、移動工程では、第2シャフト48は、第1シャフト24よりも先端方向に移動する。操作部51が切り欠き97の先端に到達すると、先端方向への第2シャフト48の相対移動は規制される。このように、ユーザは、第1シャフト24が外筒22に対する相対移動範囲の先端位置に到達した後、操作部51を先端方向にスライドすることで、第2キャリア部材20だけを外筒22に対して先端方向に相対移動させることが可能である。
【0109】
これにより、第2支持部50が第1支持部26に対して先端方向(矢印X1方向)に移動する。このとき、キャリア保持部54(押付部56)の押圧面58が医療用シート300の外周端面を先端方向に押圧すると、医療用シート300の全体が、第1支持部26よりも先端方向に位置する。この移動工程では、医療用シート300を心臓400の移植対象部402の上まで移動させて医療用シート300の張出部302を移植対象部402に接触させる。
【0110】
その後、抜去工程(図6のステップS7)において、図15に示すように、ユーザは、操作部51を切り欠き97に沿って基端方向にスライドする。これにより、第2キャリア部材20は、第2位置から第1位置まで移動する。この結果、第2支持部50は、移植対象部402と医療用シート300との間から引き抜かれる。そうすると、医療用シート300の全体が移植対象部402の表面に接触する。これにより、医療用シート300の移植対象部402への移送が完了する。その後、移送器具10は、第1支持部26及び第2支持部50を外筒22内に収容した状態で、胸部408から抜去される。なお、抜去工程において、ユーザが第1シャフト24を基端方向に引くと、第1支持部26及び第2支持部50は、外筒22内に収容される。この場合、第1シャフト24及び第2シャフト48が共に基端方向に移動するので、第1キャリア部材18と第2キャリア部材20とを、外筒22に収容することができる。
【0111】
次に、移送器具10の変形例(第1~第6変形例)について説明する。
【0112】
図16に示すように、第1変形例に係る移送器具100は、移動規制部102を備える。なお、第1変形例において、上述した移送器具10と同一の構成には同一の参照符号を付し、同一の構成の詳細な説明は省略する。後述する第2~第5変形例に係る移送器具120、130、150、160についても同様である。
【0113】
移動規制部102は、第1支持部26に設けられる第1嵌合部104と、第2シャフト48の先端部のキャリア保持部54に設けられる第2嵌合部106とを備える。
【0114】
第1嵌合部104は、第1支持部26の第1支持面261から上方に向けて突出した一対の第1凸部1081、1082を有する。第1凸部1081、1082の各々は、第1支持部26の幅方向中心に対して等距離離間して配置される。第1支持部26の幅方向と直交する方向から見たとき、例えば、第1凸部1081、1082の断面は、例えば矩形状である。第1凸部1081、1082の断面は、他の形状(半円状等)でもよい。
【0115】
第2嵌合部106は、キャリア保持部54(押付部56)の幅方向両端部(凸状部641、642)の各々に配置される。第2嵌合部106は、凸状部641、642の外面から窪んだ凹部1101、1102を有する。凹部1101、1102は、凸状部641、642の外面から幅方向に窪む。キャリア保持部54の軸方向から見たとき、凹部1101、1102の断面は、第1凸部1081、1082に対応した矩形状である。凹部1101、1102の断面は、他の形状(半円状等)でもよい。
【0116】
外筒22内に第1支持部26が収容され第1支持部26が湾曲変形した状態で、移動規制部102を構成する第1嵌合部104の第1凸部1081、1082が第2嵌合部106の凹部1101、1102にそれぞれ嵌合される。これにより、第1支持部26とキャリア保持部54との相対変位が拘束され、それに伴って、第1シャフト24に対する第2シャフト48の軸方向への相対移動が規制される。
【0117】
以上のように、第1変形例に係る移送器具100では、外筒22内に第1支持部26が収容された状態(第1位置)において、移動規制部102における第1嵌合部104と第2嵌合部106とが嵌合されることで、第1支持部26を有した第1シャフト24と第2シャフト48との軸方向への相対移動が阻止される。第1支持部26が外筒22の先端部から突出した状態(第2位置)において、移動規制部102の第1嵌合部104と第2嵌合部106との嵌合が解除されると、第1支持部26に対して第2シャフト48が先端方向(矢印X1方向)へ移動可能となる。
【0118】
図17Aに示すように、第2変形例に係る移送器具120は、移動規制部122を備える。移動規制部122は、第1係合部124と、第2係合部126とを備える。第1係合部124は、第1支持面261を含む第1支持部26の表面461に設けられる。第2係合部126は、第2シャフト48の先端部のキャリア保持部54によって構成される。
【0119】
第1係合部124は、第1支持面261から上方に向けて突出した一対の第2凸部1281、1282を有する。第2凸部1281、1282の各々は、第1支持部26の幅方向中心に対して等距離離間して配置される。キャリア保持部54の先端の両側に第2係合部126が配置される。
【0120】
図17Bに示すように、外筒22内に第1支持部26が収容され第1支持部26が湾曲変形した状態で、外筒22の軸方向において、第1係合部124の第2凸部1281、1282と第2係合部126とが向かい合い、第1係合部124と第2係合部126とが軸方向に係合される。
【0121】
以上のように、第2変形例に係る移送器具120では、図17Bに示す外筒22内に第1支持部26が収容された状態(第1位置)において、移動規制部122を構成する第1係合部124と第2係合部126とが軸方向に係合されることで、第1支持部26を有した第1シャフト24と第2シャフト48との軸方向への相対移動が阻止される。図17Aに示す第1支持部26が外筒22の先端開口80から突出した状態(第2位置)において、第1支持部26が展開することで第1係合部124と第2係合部126との軸方向に向かい合わず、第1係合部124と第2係合部126との係合が解除される。これにより、第1支持部26に対して第2シャフト48が先端方向(矢印X1方向)へ移動可能となる。
【0122】
図18及び図19に示すように、第3変形例に係る移送器具130は、第1支持部132を備える。第1支持部132の幅方向両側に設けられた突出部129は、自由端442と固定端441との間を構成する中間部134を有する。中間部134は、第1支持面261から離間する方向に向けて凸状に膨出した形状である。中間部134は、裏面462において山折りとなるように折り曲げられた中間折曲部136を有する。中間折曲部136は、中間部134において自由端442寄りに配置される。
【0123】
以上のように、第3変形例に係る移送器具130では、第1支持部132の突出部129に中間折曲部136を設けることで、第1支持面261から離間する方向に向けて凸状に膨出した形状の突出部129を容易に形成することができる。
【0124】
第2シャフト48の先端部に第2支持部50が取り付けられる場合について説明したがこれに限定されるものではない。例えば、図20に示す第4変形例に係る移送器具150のように、第2シャフト48の先端部に押圧体152を備える構成でもよい。押圧体152は、例えば、平坦な底面を有した断面扁平状である。第1支持部26の第1支持面261上に載置された医療用シート300を、押圧体152の底面で下方に向けて押圧して医療用シート300を第1支持部26の第1支持面261に沿って先端方向(矢印X1方向)に押し出すことが可能である。
【0125】
押圧体152のうちの少なくとも一部の幅を第1シャフト24の内径D24(図3参照)よりも大きくすることで、押圧体152を第3係合部96として機能させることが可能である。
【0126】
図21及び図22に示す第5変形例に係る移送器具160のように、第2シャフト48の先端部に押圧体162を備える構成でもよい。押圧体162の先端には、押圧面164を有する。押圧面164は、押圧体162の軸線と直交する平坦面である。押圧体162の基端が、第2シャフト48の先端部に接続される。第1支持部26の第1支持面261上に載置された医療用シート300を押圧体162の押圧面164で押圧して医療用シート300を第1支持部26の第1支持面261に沿って先端方向(矢印X1方向)に押し出すことが可能である。
【0127】
また、押圧体162のうちの少なくとも一部の幅を第1シャフト24の内径D24(図3参照)よりも大きくすることで、押圧体162を第3係合部96として機能させることが可能である。
【0128】
なお、移送器具10では、操作部51が図23A及び図23Bに示す構成であってもよい。図23Aでは、操作部51は、ユーザが操作するためのスライド操作部55である。スライド操作部55は、切り欠き97を介して第2シャフト48に連結されている。ユーザは、切り欠き97に沿ってスライド操作部55を外筒22の軸方向にスライドすることで、第2シャフト48を該軸方向に容易に移動させることができる。図23Bでは、操作部51は、ユーザが操作するための取っ手59である。取っ手59は、第1シャフト24の外周を囲む円形状の取っ手である。取っ手59は、切り欠き97を介して第2シャフト48に連結されている。ユーザは、切り欠き97に沿って取っ手59を外筒22の軸方向にスライドすることで、第2シャフト48を該軸方向に容易に移動させることができる。
【0129】
なお、操作部51は、ユーザが操作可能な構成であればよい。したがって、操作部51は、第2シャフト48から突出するフランジでもよい。あるいは、操作部51は、歯車等を含む動力伝達機構に連結されたダイヤルであってもよい。ダイヤルは、動力伝達機構を介して第2シャフト48と連結されている。ユーザがダイヤルを操作すると、動力伝達機構は、ダイヤルの回転力を外筒22の軸方向への移動力に変換する。これにより、第2シャフト48は、動力伝達機構によって変換された移動力に基づき、外筒22の軸方向に移動させることができる。
【0130】
移送器具10は、以下の効果を奏する。
【0131】
図1に示すように、移送器具10は、第1キャリア部材18に対して軸方向に相対移動可能な第2キャリア部材20を備えるため、他のデバイス(鉗子等)を用いることなく、第2キャリア部材20を利用して医療用シート300を第1支持部26上から生体の移植対象部402へと載せ替えることができる。このため、医療用シート300を移植対象部402に効率よく移送することができる。
【0132】
また、第1シャフト24の内部に第2シャフト48が収容され、第2シャフト48に設けられた操作部51が、切り欠き97を介して第1シャフト24の外部に突出している。これにより、ユーザは、第1シャフト24のうちの外筒22の基端開口81からの突出部分を先端方向に押すことで、第1シャフト24及び第2シャフト48を先端方向に移動させることができる。この結果、第1支持部26及び第2支持部50を外筒22の先端開口80から突出させることができる。
【0133】
さらに、ユーザが操作部51を切り欠き97に沿って先端方向にスライドすると、第1シャフト24に対して第2シャフト48を先端方向に移動させることができる。これにより、第2支持部50に支持された医療用シート300を移植対象部402(図12図15参照)に効率よく移送させることができる。
【0134】
しかも、外筒22の基端開口81から第1シャフト24が軸方向に突出すると共に、第1シャフト24に形成された切り欠き97を介して操作部51が第1シャフト24の外部に突出している。これにより、ユーザは、まず、第1シャフト24を操作し、その後、操作部51を操作すればよいと直感的に理解することができる。
【0135】
このように、移送器具10の外観形状が、移送器具10の操作手順が容易に理解できるような外観形状であるため、ユーザが移送器具10の操作手順を間違えることを低減することができる。
【0136】
また、移送器具10が移動規制部23を備えているので、第1位置と第2位置との間において、ユーザが誤って操作部51を操作しても、第1シャフト24と第2シャフト48とが相対移動しない。これにより、ユーザが第1シャフト24を操作する前に、第2シャフト48のみが先端方向に移動することを阻止することができる。
【0137】
また、第1支持部26を外筒22の先端方向で展開させる前の状態(図9参照)では、移動規制部23によって第2シャフト48の先端部と第1支持部26とが当接するので、第1シャフト24と第2シャフト48との軸方向への相対移動を阻止することができる。
【0138】
また、図9に示すように、外筒22内に第1支持部26が収容された状態において、第2シャフト48の先端部である押付部56によって第1支持部26が外筒22の内面に押し付けられることで、外筒22に対して第2シャフト48のみが先端方向に移動することを抑制することができる。
【0139】
さらに、図16に示すように、外筒22内に第1支持部26が収容された第1位置において、第1嵌合部104と第2嵌合部106とが嵌合されることで、第1支持部26を有した第1シャフト24と第2シャフト48との軸方向への相対移動を阻止することができる。また、第2位置で第1嵌合部104と第2嵌合部106との嵌合が解除されると、第1支持部26に対して第2シャフト48が先端方向へ移動可能となる。
【0140】
また、図17A及び図17Bに示すように、外筒22内に第1支持部26が収容された第1位置において、第1係合部124と第2係合部126とが軸方向に係合されることで、第1支持部26を有した第1シャフト24と第2シャフト48との軸方向への相対移動が阻止される。また、第2位置で第1係合部124と第2係合部126との係合が解除されると、第1支持部26に対して第2シャフト48が先端方向へ移動可能となる。
【0141】
さらに、図1に示すように、外筒22の軸方向における切り欠き97の先端の位置が、第1シャフト24に対する第2シャフト48の該軸方向における相対移動範囲の先端位置であるので、第2シャフト48が外筒22及び第1シャフト24から先端方向に必要以上に突出することを回避することができる。
【0142】
また、第2支持面74を有した第2支持部50によって、医療用シート300を第1支持部26に沿って移動させることができる。
【0143】
また、図11に示すように、第2支持部50は、外筒22の内部で第1支持部26と共に湾曲変形して収容されるので、幅寸法を有した第2支持部50であっても、外筒22の内部に好適に収容することが可能である。
【0144】
図5に示すように、第1支持部26は、表面461と裏面462とを有した可撓性シートにより形成される。第1支持部26が、第1シャフト24の移動方向と直交する第1支持面261の幅方向の両側部から上方に向けて突出した一対の第1突出部38を有している。この構成により、図11に示すように、第1支持部26を外筒22内に収容するとき、一対の第1突出部38が湾曲変形して凸状となった第1突出部38の裏面462同士が互いに接触する。一対の第1突出部38が第1支持面261に向かって変位して、第1支持部26がハート型に湾曲変形する。これにより、外筒22内において第1支持部26をハート型に収容できるため、第1支持部26がハート型ではない形状に変形する場合と比べ、第1支持部26に保持された医療用シート300の破損を効果的に抑制できる。外筒22内に第1支持部26を円滑且つコンパクトに収容できるため、第1支持部26がハート型に湾曲変形しない構成と比較し、外筒22の直径を小さくすることができる。
【0145】
また、図1に示すように、第1キャリア部材18及び第2キャリア部材20が第1位置と第2位置との間を移動する場合において、第1シャフト24は外筒22の基端開口81から基端方向に突出している。したがって、準備工程、展開工程は、第1シャフト24のうちの外筒22の基端開口81から突出している部分をユーザが先端方向に押すことで達成することができる。また、移動工程は、ユーザが操作部51を先端方向にスライドすることで達成することができる。
【0146】
図10に示すように、第1支持部26が外筒22内に収納された状態では、移動規制部23によって第2シャフト48の先端部と第1支持部26とが当接することで、第1シャフト24と第2シャフト48との軸方向への相対移動が阻止される。これにより、ユーザが第1キャリア部材18を先端方向に移動させると、第1キャリア部材18と第2キャリア部材20とが一緒に先端方向に移動する。この結果、第2支持部50及び医療用シート300が外筒22の先端開口80から突出することが防止される。これにより、外筒22の内部に収容された医療用シート300が第2シャフト48の先端部によって押されて破損することが防止される。そのため、医療用シート300を破損させることなく移植対象部402に効率よく移送することができる。
【0147】
移動規制部23は、第2シャフト48の先端部を構成する押付部56である。外筒22内に第1支持部26が収容された状態で、押付部56が第1支持部26を外筒22の内腔78(内面)に押し付ける。これにより、移動規制部23を構成する押付部56と第1支持部26とが径方向に互いに密着するため、第1支持部26と第2シャフト48との相対変位が拘束される。第1支持部26が外筒22の先端部から突出した状態で、第1シャフト24に対して第2シャフト48を軸方向へ移動可能とすることができる。
【0148】
押付部56が弾性体から形成されるため、押付部56を第1支持部26に効果的に密着させることが可能である。
【0149】
第2シャフト48の軸線と直交する断面において、押付部56は、一対の直線部621、622と、一対の直線部621、622の両側に設けられる一対の凸状部641、642とを有する。直線部621、622の延在方向に沿った第1長さD1は、第2長さD2よりも長い(図5参照)。これにより、第1支持部26が外筒22内に収容されたとき、直線部621、622の両側に設けられた一対の凸状部641、642によって第1支持部26を外筒22に向けて押すことで、第1支持部26とキャリア保持部54とをより密着させることができる。
【0150】
図1に示すように、第2シャフト48の先端部には、医療用シート300を保持可能な第2支持面74を含むシート状の第2支持部50が設けられる。第2支持部50は、第1支持面261に重なる後退位置と、第1支持面261よりも先端方向(矢印X1方向)に位置する進出位置との間で、第1支持部26に対して相対移動可能である。この構成により、第2支持面74を有した第2支持部50によって、医療用シート300を第1支持部26の第1支持面261に沿って移動させることができる。
【0151】
図9に示すように、収容位置(第1位置)において、第2支持部50は、外筒22の内部で第1支持部26と共に湾曲変形して収容される。この構成により、幅寸法を有した第2支持部50であっても、収容工程において外筒22の内部に第2支持部50を第1支持部26と共に好適に収容することが可能である。
【0152】
第2シャフト48の先端部には、第2支持部50の基端部を保持するキャリア保持部54が設けられる。キャリア保持部54が上下対称形状ではなく、且つキャリア保持部54の下端に第2支持部50が保持される構成の場合、ユーザが第2シャフト48を回転させ第2支持部50の上下方向が反転し、第2支持部50がキャリア保持部54の上部に配置される。この場合、第1支持部26の第1支持面261に対して第2支持部50が浮き上がり、第1支持部26と第2支持部50とが上下方向に離れてしまう。
【0153】
これに対して、図5に示すように、第2シャフト48の軸線と直交する断面において、キャリア保持部54の中心線Cに対してキャリア保持部54が線対称(上下対称)で形成される。また、キャリア保持部54は、中心線C上で第2支持部50を保持する。このため、ユーザが第2シャフト48を回転させることで第2支持部50の上下方向が反転した場合でも、キャリア保持部54の下端に第2支持部50が保持される構成に比べ、第1支持部26の第1支持面261からの第2支持部50の浮き上がりを抑制することができる。これにより、第2支持部50によって医療用シート300を安定して移植操作することができる。
【0154】
第1突出部38の突出方向と直交し、且つ、第1支持面261と直交する断面において、第1突出部38の各々の断面は、第1突出部38の自由端442と固定端441との間を構成する中間部443が、第1支持面261から離間する方向に向けて凸状に膨出した形状である。この構成により、第1支持部26を外筒22内に収容した際に、第1支持部26を確実にハート型に湾曲変形させることができる。これにより、第1支持部26がハート型ではない形状に変形することに起因する医療用シート300の破損を防止することができる。
【0155】
第1支持部26の裏面462において中間部443が第1支持面261に向かって凹むように湾曲した形状である場合、外筒22内で第1支持部26が適切なハート型に湾曲変形しないことがまれに起こることがある。例えば、一方の第1突出部38の自由端442(表面461)が、湾曲変形した他方の第1突出部38の固定端441(裏面462)に乗り上げることで、自由端442が外筒22の内面に向けてV字状に折れ曲がることがまれに起こる。移送器具10では、中間部443が、第1支持面261から離間する方向に向けて凸状に膨出した形状であるため、第1支持部26のV字状の折れ曲がりを防止することができる。
【0156】
一対の第1突出部38における中間部443を弧状に形成することで、外側に膨出した形状を有する第1突出部38を容易に形成することができる。
【0157】
第1支持部26の基端方向(矢印X2方向)に向かって第1突出部38の中間部443の曲率Rが大きくなるため、第1突出部38の先端側での第1突出部38間の幅方向の間隔Wを広げることができる。これにより、先端支持部42を通じて医療用シート300を第1支持部26の第1支持面261に載置しやすい。
【0158】
図3に示すように、第1支持部26の幅方向における一対の折曲部444の間隔Wが、基端方向に向かって小さくなるため、第1支持部26が基端部側から外筒22内に収容されるとき、外筒22との接触によって一対の第1突出部38を好適に円錐状に湾曲変形させることができ、それに伴って、一対の折曲部444の基端同士の干渉が抑制されるため、外筒22内に第1支持部26を基端側から円滑に収容することができる。
【0159】
第1支持面261と直交する方向から見て、第1支持部26の先端部は、一対の第2突出部40を繋ぐ円弧状であるため、第1支持部26の先端部が角部を有した形状である構成と比較し、第1支持部26を外筒22内に収容するとき、第1支持部26と外筒22との摺動抵抗を低減できる。第1支持部26を先端方向(矢印X1方向)に移動させて第1支持部26に医療用シート300を載置するとき、医療用シート300とシャーレ401(容器)の界面に対して第1支持部26を徐々に挿入することで円滑に作業を行うことができる。
【0160】
以下、移送器具170について記載する。なお、移送器具10において既に説明されている要素には、特に断らない限り、同一の参照符号を付す。また、移送器具170の説明では、移送器具10と重複する説明を適宜省略する。
【0161】
図24図27の各々は、移送器具170の斜視図である。
【0162】
移送器具170は、外筒22と、第1キャリア部材18と、第2キャリア部材20と、移動規制部23と、移動範囲規制部94とを備える。第1キャリア部材18は第1シャフト24を有する。第2キャリア部材20は、キャリア保持部54(第3係合部96)と第2シャフト48とを有する。なお、移送器具170では、第3係合部96(係合部)は、必須の構成要素である。
【0163】
移送器具170において、外筒22の軸方向における長さは、第1キャリア部材18及び第2キャリア部材20の軸方向における長さよりも長い。また、第1シャフト24の外筒22の軸方向に沿った長さは、第2シャフト48の該軸方向に沿った長さよりも短い。
【0164】
そのため、第1シャフト24は、外筒22の内部で該外筒22の軸方向に沿って配置されている。第2シャフト48は、外筒22の内部で第1シャフト24に挿通して該外筒22の軸方向に沿って延在している。第2シャフト48は、外筒22の内部で、第1シャフト24の基端部24bに形成された基端開口から基端方向に突出している。
【0165】
第1位置において、第1及び第2シャフト24、48は、外筒22の内部に収容されている(図24参照)。また、第2位置において、第1及び第2シャフト24、48の先端部は、外筒22の先端開口80から先端方向に露出する。この場合、第2位置において、第1及び第2シャフト24、48の基端部は、外筒22の内部に位置している。したがって、外筒22に対する第1及び第2シャフト24、48の可動範囲の全域に亘って、第1及び第2シャフト24、48の基端部は、外筒22内に位置する。そのため、第1及び第2シャフト24、48の基端部が外筒22の基端部22bから基端方向に突出することはない。
【0166】
外筒22には、該外筒22の軸方向に沿って切り欠き171が形成されている。切り欠き171は、外筒22の先端部と基端部22bとの間で、該軸方向に沿って形成されている。切り欠き171は、外筒22の内腔78に連通する溝である。
【0167】
第2シャフト48のうちの第1シャフト24の基端開口からの突出部分には、操作部175が設けられている。操作部175は、第2シャフト48の基端部に設けられている。操作部175は、切り欠き171を介して外筒22の外部に突出している。切り欠き171に沿ってスライド可能である。
【0168】
移動範囲規制部94は、外筒22に対する第1シャフト24の軸方向における相対移動範囲の先端位置を規定する。移動範囲規制部94は、第1シャフト24に設けられた凸部177を有する。凸部177は、操作部175よりも先端方向の位置で、切り欠き171を介して外筒22の外部に突出している。凸部177は、切り欠き171に沿ってスライド可能である。
【0169】
この場合、外筒22の軸方向に沿った外筒22と第1シャフト24との相対移動範囲は、切り欠き171の長さに基づいて制限される。第1シャフト24の相対移動範囲の先端位置は、切り欠き171の先端方向側の先端(矢印X1方向側の先端位置)によって規定される。詳しくは、凸部177が矢印X1方向に沿ってスライドし、切り欠き171の先端に当接したときに、凸部177の当接位置が第1シャフト24の相対移動範囲の先端位置である。したがって、凸部177が切り欠き171の先端に当接すると、第1シャフト24の先端方向への移動が制限される。
【0170】
また、外筒22の軸方向に沿った第1シャフト24と第2シャフト48との相対移動範囲は、切り欠き171の長さに基づいて制限される。第2シャフト48の相対移動範囲の基端位置は、切り欠き171の基端方向側の基端(矢印X2方向側の基端位置)によって規定される。また、第2シャフト48の相対移動範囲の先端位置は、切り欠き171の先端方向側と、第1シャフト24とによって規定される。詳しくは、凸部177が切り欠き171の先端に当接しているときに、操作部175が先端方向にスライドして第1シャフト24の基端部24bに当接するときの操作部175の位置が、第2シャフト48の相対移動範囲の先端位置である。したがって、操作部175が第1シャフト24に当接すると、第2シャフト48の先端方向への移動が制限される。
【0171】
第1及び第2キャリア部材18、20が第1位置にある状態の移送器具170が、図24には示されている。ユーザは、図24の状態から操作部175を先端方向にスライドすることで、外筒22に対して、第1キャリア部材18と第2キャリア部材20とを一体的に先端方向に相対移動させることができる。
【0172】
凸部177が切り欠き171の先端に到達している状態の移送器具170が、図25には示されている。図25の状態において、第2キャリア部材20は第2位置に到達しており、第1支持部26と第2支持部50との各々は展開している。図25の状態において、ユーザが操作部175を先端方向にさらにスライドしても、第1キャリア部材18は外筒22に対して相対移動しない。その一方で、図25の状態において、ユーザが操作部175を先端方向にさらにスライドすると、第2キャリア部材20は、外筒22に対して先端方向に相対移動する。
【0173】
このように、凸部177が切り欠き171の先端に到達している状態においては、第1キャリア部材18は、外筒22に対して先端方向に相対移動不可能である。その一方で、凸部177が切り欠き171の先端に到達している状態においても、第2キャリア部材20は、外筒22に対して先端方向に相対移動可能である。
【0174】
ユーザが操作部175を先端方向にさらにスライドしたときに、操作部175が第1シャフト24の基端部24bに当接すると、外筒22に対する第2シャフト48の先端方向への相対移動が阻止される。
【0175】
第3係合部96であるキャリア保持部54のうちの少なくとも一部の幅W54は、第1シャフト24の内径D24よりも大きい(図3も参照)。したがって、ユーザが図26の状態から操作部175を基端方向(X2)にスライドすることで、第1シャフト24と、第3係合部96であるキャリア保持部54とを係合させることができる(図27も参照)。第1シャフト24とキャリア保持部54とが係合した状態で、操作部175を基端方向にさらにスライドすることで、移送器具170は、図24に示される状態に戻ることができる。
【0176】
次に、移送器具170の変形例について説明する。
【0177】
図28に示すように、移動範囲規制部94は、外側凸部178と内側凸部180とを有してもよい。外側凸部178は外筒22に形成される。外側凸部178は、外筒22の内径を部分的に狭めるように、外筒22の内方に向かって突出する。その一方で、内側凸部180は第1シャフト24に形成される。内側凸部180は、第1シャフト24の外径を部分的に拡張するように、第1シャフト24の外方に向かって突出する。内側凸部180は外側凸部178よりも、基端方向側に位置する。
【0178】
外側凸部178は、第1シャフト24が外筒22に対して先端方向に相対移動した場合に、内側凸部180に干渉(係合)する。内側凸部180は、外側凸部178に干渉することで、第1シャフト24の外筒22に対する先端方向への相対移動を阻止する。このようにすれば、外側凸部178と内側凸部180とが干渉している状態における第2キャリア部材20の位置を、第2キャリア部材20の相対移動範囲の先端位置として規定することができる。
【0179】
なお、図29に示すように、移動範囲規制部94は、連結部材95であってもよい。連結部材95は、紐状又はワイヤ状を有する部材である。連結部材95は、外筒22と第1キャリア部材18とに接続される。連結部材95の一端は、外筒22に固定されている。連結部材95の他端は、第1キャリア部材18のうち、例えば、第1シャフト24の基端部24bに固定される。より具体的には、連結部材95の一端は、外筒22の内表面に接着される。また、連結部材95の他端は、第1シャフト24の基端部24bに接着される。なお、連結部材95の他端は、第1シャフト24の外表面に接続されてもよいし、第1シャフト24の内表面に接続されてもよい。
【0180】
連結部材95は、可撓性を有する。したがって、ユーザが操作部175を基端方向にスライドすることで、第1シャフト24が外筒22に対して基端方向に相対移動する場合、連結部材95は、撓むことができる。これにより、第1シャフト24の基端部24bと外筒22の基端部22bとが接近するように第1シャフト24と外筒22とが相対移動することは、許容される。
【0181】
その一方で、ユーザが操作部175を先端方向にスライドすることで、第1シャフト24が外筒22に対して先端方向に相対移動する場合、連結部材95は、外筒22の基端部22bと第1シャフト24の基端部24bとの距離が大きくなることに応じて、徐々に張架する。張架した連結部材95は、外筒22の基端部22bと、第1シャフト24の基端部24bとの距離が連結部材95の軸方向の長さ以上に大きくなることを阻止する。このようにして、連結部材95は、第1シャフト24の相対移動範囲の先端位置を規定する。すなわち、連結部材95が最大限まで張架している際における第1シャフト24の位置が、第1シャフト24の相対移動範囲の先端位置として規定される。
【0182】
なお、このような連結部材95は、例えば硬質樹脂製のフィルムにより実現される。当該フィルムの材料となる硬質樹脂は例えばポリイミドであるが、これに限定されない。硬質樹脂製のフィルムは、可撓性を有し、且つ、糸等と比較して、耐久性に優れる。また、硬質樹脂製のフィルムは、ゴム、エラストマー材等と比較して伸びにくい。そのため、硬質樹脂製のフィルムは、ゴム、エラストマー材等と比較して、外筒22に対する第1シャフト24の相対移動範囲の先端位置をより正確に規定することができる。連結部材95は、第1シャフト24のうちの基端部24b以外の部位に接続されてもよい。さらに、連結部材95は、外筒22のうちの基端部22b以外の部位に接続されてもよい。
【0183】
このように、図29の構成では、移動範囲規制部94は、外筒22と第1キャリア部材18とに接続された紐状又はワイヤ状の連結部材95を有する。これにより、シンプルな構成で、外筒22に対する第1シャフト24の相対移動範囲の先端位置を規定することができる。
【0184】
図30の構成では、外筒22の外周面にハンドル179が取り付けられている。ハンドル179は、外筒22の軸方向に沿って延びる矩形状の筐体である。ハンドル179には、切り欠き181が形成されている。切り欠き181は、外筒22の軸方向に沿って延びている。ハンドル179には、操作部175であるスイッチ操作部182が配置されている。スイッチ操作部182は、切り欠き181と、外筒22の切り欠き171とを介して、第2シャフト48と連結されている。ユーザがスイッチ操作部182を切り欠き181に沿ってスライドすると、第2シャフト48を外筒22の軸方向に移動させることができる。
【0185】
図31の構成では、外筒22の外周面にハンドル183が取り付けられている。ハンドル183は、外筒22の軸方向に沿って延びる矩形状の筐体である。ハンドル183には、操作部175であるダイヤル184が設けられている。ハンドル183の内部には、歯車等を含む動力伝達機構が設けられている。ダイヤル184は、動力伝達機構に連結されている。ダイヤル184は、動力伝達機構を介して第2シャフト48と連結されている。ユーザがダイヤル184を操作すると、動力伝達機構は、ダイヤル184の回転力を外筒22の軸方向への移動力に変換する。これにより、第2シャフト48とハンドル183とは、動力伝達機構によって変換された移動力に基づき、外筒22の軸方向に移動させることができる。
【0186】
移送器具170は、以下の効果を奏する。
【0187】
図24図27に示すように、移送器具170でも、移送器具10(図1参照)と同様に、移送器具170が第2キャリア部材20を備えるため、他のデバイス(鉗子等)を用いることなく、第2キャリア部材20を利用して医療用シート300を第1支持部26上から生体の移植対象部402へと載せ替えることができる。このため、医療用シート300を移植対象部402に効率よく移送することができる。
【0188】
また、第2シャフト48に設けられた操作部175が切り欠き171を介して外筒22の外部に突出している。これにより、ユーザが操作部175を切り欠き171に沿って先端方向にスライドすると、第1シャフト24及び第2シャフト48を先端方向に移動させることができる。この結果、第1支持部26を外筒22の先端開口80から突出させることができる。
【0189】
さらに、移送器具170が移動規制部23及び移動範囲規制部94を備えているので、ユーザが操作部175を先端方向にスライドすると、医療用シート300を移植対象部402へと移送させることができる。これにより、第1支持部26に支持された医療用シート300を移植対象部402に効率よく移送させることができる。また、第1位置から第2位置までの間では、第1シャフト24と第2シャフト48との相対移動が規制されるので、第1支持部26が外筒22内に収容されている状態で、第2シャフト48のみが先端方向に移動することを防止することができる。
【0190】
また、移送器具170が第3係合部96を備えているので、ユーザが操作部175を基端方向にスライドするだけで、第1キャリア部材18と第2キャリア部材20とを外筒22に収容することができる。
【0191】
しかも、第1シャフト24と第2シャフト48とが外筒22内に収容され、操作部175のみが切り欠き171を介して外筒22の外部に突出しているので、第1シャフト24及び第2シャフト48は、外筒22の基端部22bから露出していない。これにより、ユーザは、操作部175のみを軸方向にスライドすればよいので、どの部位を操作すべきか迷うことがない。
【0192】
このように、移送器具170では、ユーザによる移送器具170の操作が容易であると共に、ユーザによる移送器具170の誤操作を防止することができる。
【0193】
また、移送器具170でも、第1支持部26を外筒22の先端方向で展開させる前の状態(図24参照)では、移動規制部23によって第2シャフト48の先端部と第1支持部26とが当接するので、第1シャフト24と第2シャフト48との軸方向への相対移動を阻止することができる。
【0194】
さらに、移送器具170でも、外筒22内に第1支持部26が収容された状態において、第2シャフト48の先端部である押付部56によって第1支持部26が外筒22の内面に押し付けられることで、外筒22に対して第2シャフト48のみが先端方向に移動することを防止することができる。
【0195】
また、移送器具170でも、外筒22内に第1支持部26が収容された第1位置において、第1嵌合部104と第2嵌合部106とが嵌合されることで(図16も併せて参照)、第1支持部26を有した第1シャフト24と第2シャフト48との軸方向への相対移動を阻止することができる。また、第2位置で第1嵌合部104と第2嵌合部106との嵌合が解除されると、第1支持部26に対して第2シャフト48が先端方向へ移動可能となる。
【0196】
さらに、移送器具170でも、外筒22内に第1支持部26が収容された第1位置において、第1係合部124と第2係合部126とが軸方向に係合されることで(図17A及び図17Bも併せて参照)、第1支持部26を有した第1シャフト24と第2シャフト48との軸方向への相対移動が阻止される。また、第2位置で第1係合部124と第2係合部126との係合が解除されると、第1支持部26に対して第2シャフト48が先端方向へ移動可能となる。
【0197】
また、移送器具170では、切り欠き171に沿って凸部177が先端方向にスライドしたときに、凸部177が切り欠き171の先端に当接することで、第1シャフト24の先端方向への移動が規制される(図25参照)。これにより、第1シャフト24が外筒22から先端方向に必要以上に突出することを回避することができる。
【0198】
さらに、図29に示すように、移送器具170では、移動範囲規制部94は、外筒22と第1キャリア部材18とに接続された紐状又はワイヤ状の連結部材95を有してもよい。これにより、シンプルな構成で、第1シャフト24の相対移動範囲の先端位置を規定することができる。
【0199】
また、移送器具170でも、第2キャリア部材20が第2位置から第1位置に向かって移動する際に、第3係合部96のうちの一部が、第1シャフト24の先端開口25に係合する。第3係合部96が該先端開口25に係合することで、第1キャリア部材18は、第2キャリア部材20と一体的に、外筒22に対して基端方向へと相対移動することができる。
【0200】
さらに、図25図27に示すように、移送器具170でも、第2支持面74を有した第2支持部50によって、医療用シート300を第1支持部26に沿って移動させることができる。
【0201】
また、移送器具170でも、第1位置において、第2支持部50は、外筒22の内部で第1支持部26と共に湾曲変形して収容されてもよいので(図11も併せて参照)、幅寸法を有した第2支持部50であっても、外筒22の内部に好適に収容することが可能である。
【0202】
移送器具170の効果について、さらに詳しく説明する。
【0203】
図24及び図25に示すように、移送器具170では、第2キャリア部材20を第1位置から第2位置へと移動させる場合には、操作部175を先端方向にスライドさせて、第2シャフト48を外筒22に対して先端方向に相対移動させればよい。これにより、第1キャリア部材18と第2キャリア部材20とが一体的に先端方向に移動する。したがって、準備工程、展開工程、移動工程等(図6参照)では、ユーザが操作部175を先端方向にスライドするだけで達成することができる。なお、移動工程において、第1シャフト24が外筒22に対して先端方向に相対移動することは、移動範囲規制部94により規制される。
【0204】
また、収容工程、抜去工程等(図6参照)において、第2キャリア部材20を第2位置から第1位置へと移動させる場合には、操作部175を基端方向にスライドさせればよい。これにより、第3係合部96であるキャリア保持部54を、第1シャフト24の先端開口25に係合させることができる。キャリア保持部54が先端開口25に係合した状態で操作部175を基端方向にさらにスライドすると、第1キャリア部材18と第2キャリア部材20とを一体的に基端方向に移動させることができる。
【0205】
また、移送器具10と、移送器具10に係る各変形例とは、矛盾しない範囲内で、移送器具170に組み合わされてもよい。
【0206】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0207】
10、100、120、130、150、160、170…移送器具
18…第1キャリア部材
20…第2キャリア部材
22…外筒
22b…外筒の基端部
23、102、122…移動規制部
24…第1シャフト
24b…第1シャフトの基端部
26、132…第1支持部
48…第2シャフト
51、175…操作部
81…外筒の基端開口
94…移動範囲規制部
96…係合部(第3係合部)
97、171…切り欠き
261…第1支持面
300…医療用シート
402…移植対象部(処置対象部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図28
図29
図30
図31