(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090631
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】オゾン水の生成装置および生成方法
(51)【国際特許分類】
B01F 21/00 20220101AFI20240627BHJP
C01B 13/10 20060101ALI20240627BHJP
B01F 23/23 20220101ALI20240627BHJP
B01F 25/53 20220101ALI20240627BHJP
B01F 35/90 20220101ALI20240627BHJP
C02F 1/68 20230101ALI20240627BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B01F21/00
C01B13/10 D
B01F23/23
B01F25/53
B01F35/90
C02F1/68 510A
C02F1/68 520B
C02F1/68 530A
C02F1/68 530L
H01L21/304 647Z
H01L21/304 648K
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206639
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(71)【出願人】
【識別番号】520472664
【氏名又は名称】明電ナノプロセス・イノベーション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】300040519
【氏名又は名称】エコデザイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 敏徳
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 安▲緒▼
(72)【発明者】
【氏名】長倉 正昭
【テーマコード(参考)】
4G035
4G037
4G042
5F157
【Fターム(参考)】
4G035AA01
4G035AA02
4G035AB04
4G035AB20
4G035AB54
4G035AC22
4G035AC30
4G035AE02
4G035AE13
4G035AE15
4G037CA18
4G037EA01
4G042CE01
5F157CC41
5F157DB38
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】高濃度のオゾン水を安定供給し易くすることに貢献可能な技術を提供する。
【解決手段】オゾンガスを溶解可能な溶媒を循環ラインL2aにより循環している状態で、当該溶媒の温度を適宜制御し、当該オゾンガスが任意の供給圧力で供給されている気液混合器21に対して当該溶媒を流通させることにより、当該オゾンガスを溶媒に混合させて溶解する。気液混合器21においては、溶媒が流通する溶媒流通路と、その溶媒流通路に接続して設けられて当該気液混合器21に供給されたオゾンガスを当該溶媒流通路に導入するオゾンガス導入路と、を備えているものとする。そして、溶媒の温度は、溶媒の蒸気圧が前記供給圧力よりも小さくなるように制御し、気液混合器21に供給されるオゾンガスは、オゾン濃度が50体積%以上でオゾン分圧が30kPa(abs)以下であるものとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンガスを溶解可能な溶媒を循環にする循環ラインと、
前記溶媒の温度を制御する制御部と、
前記溶媒が循環している循環状態において当該溶媒が流通し、前記オゾンガスが任意の供給圧力で供給される気液混合器と、
を備え、
前記気液混合器は、
前記溶媒が流通する溶媒流通路と、
前記溶媒流通路に接続して設けられ、前記気液混合器に供給されたオゾンガスを当該溶媒流通路に導入するオゾンガス導入路と、
を有し、
前記制御部は、前記溶媒の蒸気圧が前記供給圧力よりも小さくなるように、前記溶媒の温度を制御し、
前記オゾンガスは、オゾン濃度が50体積%以上であり、オゾン分圧が30kPa(abs)以下であることを特徴とするオゾン水の生成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記温度を、前記溶媒の凝固点よりも大きく15℃以下となるように制御することを特徴とする請求項1記載のオゾン水の生成装置。
【請求項3】
前記オゾンガスは、オゾン濃度が90体積%以上であることを特徴とする請求項1または2記載のオゾン水の生成装置。
【請求項4】
前記気液混合器は、開閉バルブを介して前記オゾンガスが供給され、
前記制御部は、前記蒸気圧が前記供給圧力よりも大きくなった場合に、前記開閉バルブを閉状態にすることを特徴とする請求項1記載のオゾン水の生成装置。
【請求項5】
前記気液混合器は、前記循環ラインに接続して備えられていることを特徴とする請求項1記載のオゾン水の生成装置。
【請求項6】
前記溶媒を放出する放出部を、更に備え、
前記制御部は、前記放出部から放出する前記溶媒の放出流量を、前記循環状態における前記溶媒の循環流量よりも小さくなるように制御することを特徴とする請求項1記載のオゾン水の生成装置。
【請求項7】
前記溶媒を導入して貯留可能な循環タンクが、前記循環ラインに接続して設けられていることを特徴とする請求項1記載のオゾン水の生成装置。
【請求項8】
前記循環タンクに導入した前記溶媒から分離された気相ガスを排気可能な排気部が、前記循環タンクにおける鉛直方向の上方側に設けられていることを特徴とする請求項7記載のオゾン水の生成装置。
【請求項9】
前記循環タンクの内壁面は、軸心が鉛直方向に延在した円筒状の側壁内周面を有した形状であり、
前記側壁内周面には、前記循環ラインにおける前記気液混合器の下流側と連通し、当該下流側から前記溶媒を前記循環タンク内に導入する導入口が、設けられており、
前記内壁面において前記導入口よりも前記鉛直方向の下方側には、
前記循環ラインにおける前記気液混合器の上流側と連通し、前記循環タンク内に導入した前記溶媒を当該上流側に導出する導出口と、
前記循環部の外周側と連通し、前記循環タンク内に導入した前記溶媒を放出する放出口と、
が設けられており、
前記導入口は、前記側壁内周面における周方向一方側に向かって開口した形状であることを特徴とする請求項7記載のオゾン水の生成装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記循環タンク内に不活性ガスを供給することにより、当該循環タンク内の圧力を制御することを特徴とする請求項7~9の何れかに記載のオゾン水の生成装置。
【請求項11】
オゾンガスを溶解可能な溶媒を循環ラインにより循環する循環工程と、
前記循環工程により前記溶媒を循環している状態で、当該溶媒の温度を制御する温度制御工程と、
前記循環工程により前記溶媒を循環している状態で、前記オゾンガスが任意の供給圧力で供給されている気液混合器に対し、当該溶媒を流通させる気液混合工程と、
を有し、
前記気液混合器は、
前記溶媒が流通する溶媒流通路と、
前記溶媒流通路に接続して設けられ、前記気液混合器に供給されたオゾンガスを当該溶媒流通路に導入するオゾンガス導入路と、
を有し、
前記温度制御工程は、前記溶媒の蒸気圧が前記供給圧力よりも小さくなるように、前記溶媒の温度を制御し、
前記気液混合工程により供給される前記オゾンガスは、オゾン濃度が50体積%以上であり、オゾン分圧が30kPa(abs)以下であることを特徴とするオゾン水の生成方法。
【請求項12】
前記温度制御工程は、前記溶媒の温度を、当該溶媒の凝固点よりも大きく15℃以下となるように制御することを特徴とする請求項11記載のオゾン水の生成方法。
【請求項13】
前記オゾンガスは、オゾン濃度が90体積%以上であることを特徴とする請求項11または12記載のオゾン水の生成方法。
【請求項14】
前記気液混合工程は、
前記気液混合器に対し、前記オゾンガスが開閉バルブを介して供給され、
前記蒸気圧が前記供給圧力よりも大きくなった場合に、前記開閉バルブを閉状態にすることを特徴とする請求項11記載のオゾン水の生成方法。
【請求項15】
前記溶媒を放出する放出工程を、更に有し、
前記放出工程は、当該放出工程により放出する前記溶媒の放出流量を、前記循環工程により循環する前記溶媒の循環流量よりも小さくなるように制御することを特徴とする請求項11記載のオゾン水の生成方法。
【請求項16】
前記気液混合器は、前記循環ラインに接続して備えられていることを特徴とする請求項11記載のオゾン水の生成方法。
【請求項17】
前記溶媒を導入して貯留可能な循環タンクが、前記循環ラインに接続して設けられていることを特徴とする請求項11記載のオゾン水の生成方法。
【請求項18】
前記循環タンクにおける鉛直方向の上方側から、当該循環タンク内に導入した前記溶媒から分離された気相ガスを排気する排気工程を、更に有している請求項17記載のオゾン水の生成方法。
【請求項19】
前記循環タンクの内壁面は、軸心が鉛直方向に延在した円筒状の側壁内周面を有した形状であり、
前記側壁内周面には、前記循環ラインにおける前記気液混合器の下流側と連通し、当該下流側から前記溶媒を前記循環タンク内に導入する導入口が、設けられており、
前記内壁面において前記導入口よりも前記鉛直方向の下方側には、
前記循環ラインにおける前記気液混合器の上流側と連通し、前記循環タンク内に導入した前記溶媒を当該上流側に導出する導出口と、
前記循環部の外周側と連通し、前記循環タンク内に導入した前記溶媒を放出する放出口と、
が設けられており、
前記導入口は、前記側壁内周面における周方向一方側に向かって開口した形状であることを特徴とする請求項17記載のオゾン水の生成方法。
【請求項20】
前記循環タンク内に不活性ガスを供給することにより、当該循環タンク内の圧力を制御する圧力制御工程を、更に有していることを特徴とする請求項17~19の何れかに記載のオゾン水の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン水の生成装置および生成方法に貢献可能な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オゾンを溶媒(例えば純水等の原料水)に溶解して得られるオゾン水は、強い酸化力を持つことから、例えば上水道や食品の殺菌などに利用されてきた。このようなオゾン水の利用は、オゾンが最終的には酸素に分解し易く、残留薬品等を残すことも無いため、環境に優しい手段として評価されている。
【0003】
近年、例えば精密電子部品(例えば半導体素子やFPD等のディスプレイ部品)等の各種工業部品を製造する際に行われている洗浄工程においても、オゾン水を利用する試みが進んでおり、当該オゾン水の高濃度化や工業的に安定供給すること等が、検討されている。
【0004】
特許文献1では、まずオゾンガスを冷却(濃縮)して得たオゾン水を再気化し、その再気化して得たオゾンガス(濃縮オゾンガス)を冷却式捕集器で捕集し、更に当該捕集物(液体オゾンまたは固体オゾン)を水に溶解してオゾン水を得る構成により、オゾン水を高濃度化することが開示されている。
【0005】
特許文献2では、原料水(例えば25℃以下(好ましくは5℃~20℃の原料水)に対しオゾンガスおよび炭酸ガスを同時に溶解して得た洗浄液を、45℃以上に加温した状態で基材上のレジスト膜(有機皮膜)に接触させる構成により、当該洗浄液のオゾン濃度を高濃度で維持し、レジスト膜を除去し易くすることが開示されている。
【0006】
特許文献3では、オゾンガス生成装置(特許文献3では、酸素ガスを原料とする装置)のオゾンガスと原料水とを気液混合器により混合してオゾン水を生成するものであって、当該オゾンガス生成装置と気液混合器との間にオリフィスを設けた構成により、オゾンガス生成装置側が負圧状態(すなわち常圧(約101.33kPa)未満の状態)になることを防止でき、オゾンガス溶解効率を高めることが開示されている。
【0007】
特許文献4では、オゾン水を循環するオゾン水循環ラインと、そのオゾン水循環ラインから排出される排オゾンガスと原料水とを接触させるオゾンガス接触機構(フッ素樹脂で形成された浸透膜)と、を有した構成により、当該排オゾンガスを有効利用して、オゾン水を高濃度化することが開示されている。
【0008】
特許文献5では、オゾンガス生成装置(特許文献5では、酸素ガスを原料とする装置)のオゾンガスと原料水とを気液混合器により混合してオゾン水を生成するものであって、当該原料水によって低濃度化し過ぎたオゾン水(特許文献5では符号34で示すタンク内のオゾン水)を当該気液混合器に通過させる構成により、オゾン水を高濃度化することが開示されている。
【0009】
非特許文献1では、オゾンが外的要因(例えば、電気的スパーク,分解を誘発するコンタミ等によるトリガ)により急激な自己分解反応を起こし得る場合に、当該自己分解反応を抑制する抑制剤としてCF4ガスを適用することが開示されている。
【0010】
特許文献1~5に示す構成によれば、ある程度のオゾン濃度(例えば100ppm程度)のオゾン水を生成できる可能性はあるが、比較的大きい酸化力を必要とする洗浄工程では、更なる高濃度(例えば半導体素子の洗浄工程では200ppm以上)のオゾン水が要求されるものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11-262782号公報
【特許文献2】特許4296393号公報
【特許文献3】特許4746515号公報
【特許文献4】特許5213601号公報
【特許文献5】特許7041466号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】大陽日酸技報No.28(2009)「爆発範囲の測定装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
例えば特許文献3,5に示すように気液混合器を用いた構成において、当該気液混合器に供給するオゾンガスの供給圧力を高圧(常圧を超えて更に高圧)にした場合には、当該オゾンガスが溶媒に対して溶解し易くなり、高濃度のオゾン水が得られる可能性はある。
【0014】
しかしながら、前記のように単にオゾンガスの供給圧力を高圧にしてしまうと、非特許文献1に示すように、オゾンの急激な自己分解反応が起こり易く、実用的な安全性を保持することが困難となり、工業的な安定供給を実現できなくなるおそれがある。
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高濃度のオゾン水を安定供給し易くすることに貢献可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明に係るオゾン水の生成装置および生成方法は、前記の課題の解決に貢献できるものであり、当該生成装置の一態様においては、オゾンガスを溶解可能な溶媒を循環にする循環ラインと、前記溶媒の温度を制御する制御部と、前記溶媒が循環している循環状態において当該溶媒が流通し、前記オゾンガスが任意の供給圧力で供給される気液混合器と、を備えているものである。
【0017】
また、前記気液混合器は、前記溶媒が流通する溶媒流通路と、前記溶媒流通路に接続して設けられ、前記気液混合器に供給されたオゾンガスを当該溶媒流通路に導入するオゾンガス導入路と、を有しているものである。
【0018】
そして、前記制御部は、前記溶媒の蒸気圧が前記供給圧力よりも小さくなるように、前記溶媒の温度を制御し、前記オゾンガスは、オゾン濃度が50体積%以上であり、オゾン分圧が30kPa(abs)以下であることを特徴とする。
【0019】
生成方法の一態様においては、オゾンガスを溶解可能な溶媒を循環ラインにより循環する循環工程と、前記循環工程により前記溶媒を循環している状態で、当該溶媒の温度を制御する温度制御工程と、前記循環工程により前記溶媒を循環している状態で、前記オゾンガスが任意の供給圧力で供給されている気液混合器に対し、当該溶媒を流通させる気液混合工程と、を有しているものである。
【0020】
また、前記気液混合器は、前記溶媒が流通する溶媒流通路と、前記溶媒流通路に接続して設けられ、前記気液混合器に供給されたオゾンガスを当該溶媒流通路に導入するオゾンガス導入路と、を有しているものである。
【0021】
そして、前記温度制御工程は、前記溶媒の蒸気圧が前記供給圧力よりも小さくなるように、前記溶媒の温度を制御し、前記気液混合工程により供給される前記オゾンガスは、オゾン濃度が50体積%以上であり、オゾン分圧が30kPa(abs)以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上示したように本発明によれば、高濃度のオゾン水を安定供給し易くすることに貢献可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例によるオゾン水の生成装置Aの構成を説明するための概略構成図。
【
図2】(a)は水の飽和蒸気圧曲線、(b)は水蒸気圧表。
【
図3】検証例の気液混合工程により供給するオゾンガスの流量(O
3流量)、放出工程の放出により取り出したオゾン水の放出量(O
3水取出量)およびオゾン濃度(O
3水濃度)を観測して得た、経過時間に対する変化特性図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態のオゾン水の生成装置および生成方法は、例えば特許文献3,5に示すように単に気液混合器を用いた構成(以下、単に従来構成と適宜称する)とは、全く異なるものである。
【0025】
すなわち、本実施形態においては、オゾンガスを溶解可能な溶媒(例えば、原料水,純水,超純水等)を循環ラインにより循環している状態で、当該溶媒の温度(以下、単に溶媒温度と適宜称する)を適宜制御し、当該オゾンガスが任意の供給圧力で供給されている気液混合器に対して当該溶媒を流通させることにより、当該オゾンガスを溶媒に混合させて溶解する構成である。
【0026】
また、気液混合器においては、溶媒が流通する溶媒流通路と、その溶媒流通路に接続して設けられて当該気液混合器に供給されたオゾンガスを当該溶媒流通路に導入するオゾンガス導入路と、を備えているものとする。そして、溶媒温度は、溶媒の蒸気圧が前記供給圧力よりも小さくなるように制御し、気液混合器に供給されるオゾンガスは、オゾン濃度が50体積%以上でオゾン分圧が30kPa(abs)以下であるものとする。
【0027】
このような本実施形態によれば、オゾン分圧が十分に減圧された状態の高濃度のオゾンガスを適用できる構成であるため、当該オゾンガスにおいて急激な自己分解反応を起こさないように十分抑制でき、実用的な安全性を保持することが可能となる。また、気液混合器を流通する溶媒の蒸気圧が、当該気液混合器に供給されるオゾンガスの供給圧力(すなわちオゾンガスの全圧)よりも小さくなるように制御されるため、当該オゾンガスを溶媒に対して溶解し易くなる。したがって、高濃度のオゾン水を安定供給し易くすることに貢献可能となる。
【0028】
本実施形態の生成装置および生成方法は、前述のように溶媒温度を適宜制御しながら、気液混合器に任意の供給圧力で供給されたオゾンガス(オゾン濃度50体積%以上でオゾン分圧30kPa(abs)以下のオゾンガス)を、当該溶媒に溶解できる構成であれば良い。すなわち、種々の分野(例えば、オゾンガスやオゾン水の生成分野等)の技術常識を適宜適用し、必要に応じて先行技術文献等を適宜参照して設計変形することが可能であり、その一例として後述の実施例が挙げられる。なお、後述の実施例では、例えば互いに同様の内容について同一符号を引用する等により、詳細な説明を適宜省略しているものとする。
【0029】
≪参考≫
例えば従来構成に適用されていた従来のオゾンガス生成装置(オゾナイザ)の場合、生成できるオゾンガスは低濃度(例えばオゾン濃度20体積%以下)であって、オゾン以外(例えば酸素等)の成分によるガス(以下、非オゾン成分と適宜称する)が多く含まれてしまう。このような低濃度オゾンガスを用いても、高濃度のオゾン水を生成することは困難であり、非オゾン成分が多く溶解されたものとなる。
【0030】
また、前記のような低濃度オゾンガスを高圧状態で溶媒に溶解して高濃度化したオゾン水は、オゾン成分の他に非オゾン成分も過飽和状態で溶解したものとなる。このようなオゾン水を大気開放した場合には、当該非オゾン成分による気泡が生じて大気中に飛散し易くなり、併せてオゾン成分も飛散し易くなるため、当該オゾン水の高濃度状態を保持できなくなる。
【0031】
近年は、オゾナイザ等で生成したオゾンガスを、例えば吸着濃縮方式(シリカゲル等の表面吸着を利用した方法)や冷却濃縮方式等により濃縮することにより、高濃度(例えばオゾン濃度50体積%以上)のオゾンガスを生成できるようになった。
【0032】
例えば、明電舎製で冷却濃縮方式のオゾンガス生成装置(商品名ピュアオゾンジェネレータ)によれば、オゾン濃度が約100体積%に近い極めて高濃度(オゾン濃度90体積%以上)のオゾンガスを生成することも可能であり、国際安全規格SEMI-S2の認証を取得して実用的な安全性も実現している。
【0033】
しかしながら、前記のように濃縮したオゾンガスにおいても、急激な自己分解反応が起こらないように減圧状態を保持する必要があるため、従来構成(すなわち、オゾンガス生成装置側が負圧状態になることを防止する構成)に適用することは困難である。
【0034】
一方、本実施形態においては、オゾンガスを減圧状態(オゾン分圧30kPa(abs)以下)で適用する構成であるため、前記のように濃縮した極めて高濃度のオゾンガスも安全に利用でき、所望の高濃度のオゾン水を生成することが十分可能となる。
【0035】
具体例として、オゾン濃度90体積%以上で酸素濃度10体積%未満のオゾンガスの場合、当該オゾンガスの全圧を30kPa(abs)以下の減圧状態(すなわち、オゾン分圧30kPa(abs)以下の状態)にすることにより、当該オゾンガスを安全に保持できる。
【0036】
また、オゾン濃度50体積%以上で酸素濃度50体積%未満のオゾンガスの場合には、当該オゾンガスの全圧を60kPa(abs)以下の減圧状態(すなわち、オゾン分圧30kPa(abs)以下の状態)にすることにより、当該オゾンガスを安全に保持できる。
【0037】
≪実施例≫
<実施例による生成装置Aの構成例>
図1は、実施例によるオゾン水の生成装置Aの構成を説明するための概略構成図である。この装置Aは、オゾン濃度50体積%以上のオゾンガスを減圧状態で供給可能なオゾンガス供給部1と、当該オゾンガス供給部1のオゾンガスを溶解可能な溶媒を導入して循環(
図1では図示時計回り方向に循環)する循環部2と、当該循環部2に前記溶媒やガスを供給する溶媒供給部3と、当該オゾンガス供給部1,循環部2,溶媒供給部3等の状態を示す情報(例えば、後述の循環ラインL2aにおける測温抵抗体24の計測値(溶媒温度);以下、単に状態情報と適宜称する)を適宜取得して当該オゾンガス供給部1,循環部2,溶媒供給部3等を制御する制御部6と、を主な要素として構成している。
【0038】
更に、
図1に示す装置Aの場合、循環部2の溶媒を当該循環部2の外周側に放出(オゾンガスが溶解されている溶媒、すなわちオゾン水を放出)する放出部4と、当該溶媒から分離した気相ガスを当該循環部2から排気可能な排気部5と、を備え、それぞれ制御部6によって状態情報が適宜取得され制御される構成となっている。
【0039】
<オゾンガス供給部1の構成例>
図1に示すオゾンガス供給部1は、オゾンガス生成装置10と、当該オゾンガス生成装置10で生成されたオゾンガスを循環部2に供給(後述の気液混合器21を介して供給)するオゾンガス供給ラインL1aと、当該オゾンガス供給ラインL1aに接続されて当該オゾンガス供給ラインL1aのオゾンガスを排気(例えばオゾンガス供給ラインL1aのガス圧力を調整するために排気)するオゾンガス排気ラインL1bと、を主として備えている。
【0040】
このオゾンガス供給部1のうち、オゾンガス生成装置10においては、オゾン濃度50体積%以上のオゾンガスを生成して減圧状態で供給できるものであれば良く、種々の態様を適用することが可能である。一例として、オゾナイザ等で生成したオゾンガスを吸着濃縮方式または冷却濃縮方式により濃縮する構成が挙げられる。
【0041】
なお、吸着濃縮方式は、例えばシリカゲル等による表面吸着現象を利用して濃縮する方式であり、濃縮対象のオゾンガス中にNOxや重金属等の不純物が混入されている場合には、濃縮過程において当該不純物も濃縮されてしまう可能性がある。このため、当該不純物が混入されている場合には、予め除去しておくことが好ましい。
【0042】
一方、冷却濃縮方式は、濃縮対象のオゾンガスを冷却して得た液体オゾンを気化する方式である。また、オゾンガスと不純物とは互いに蒸気圧が異なる(例えば数桁レベルで異なる)ため、冷却濃縮方式で濃縮したオゾンガス(気化後のオゾンガス)には、原理的に、不純物を殆ど含まないものとなる。したがって、濃縮対象のオゾンガス中に不純物が混入されている可能性がある場合には、冷却濃縮方式を適用することが好ましいと言える。
【0043】
次に、オゾンガス供給ラインL1aにおいては、ガス流量制御器11を備えており、当該オゾンガス供給ラインL1aを流通するオゾンガスの流量を制御できる構成となっている。また、ガス流量制御器11の上流側(オゾンガス生成装置10側)には、当該上流側を流通するオゾンガスのガス圧力(すなわち後述の気液混合器21に供給するオゾンガスの供給圧力)を計測する圧力計12を、備えている。
【0044】
更に、ガス流量制御器11の下流側には、オゾンガス供給ラインL1aにおけるオゾンガスの流通(オゾンガスの供給や逆流)の可否を切り替え自在な開閉バルブ(例えば逆止弁等。
図1中では2個の開閉バルブ)13を、備えている。更に、開閉バルブ13の下流側には、当該下流側のガス圧力を計測する圧力計14を、備えている。この圧力計14によれば、後述の気液混合器21によってオゾンガスを吸引する際の吸引圧に相当するガス圧力を計測でき、当該吸引圧を評価することが可能である。
【0045】
次に、オゾンガス排気ラインL1bにおいては、オゾンガス供給ラインL1aにおけるガス流量制御器11と開閉バルブ13との間に連通して接続されており、当該オゾンガス供給ラインL1aからのオゾンガスの流通(排気)の可否を切り替え自在な開閉バルブ15を、備えている。また、開閉バルブ15の下流側には、オゾンガス排気ラインL1bを流通するオゾンガスを安全な状態に分解するオゾン分解器(オゾンキラー)16と、当該分解した後のオゾンガスを吸引して排気する真空ポンプ17と、を備えている。
【0046】
<循環部2の構成例>
図1に示す循環部2は、溶媒供給部3の溶媒を導入して循環可能な循環ラインL2aと、当該循環ラインL2aに接続され一定量の溶媒を導入して貯留可能な循環タンク20と、当該循環タンク20から放出した溶媒を循環ラインL2aに還流させる還流ラインL2bと、溶媒とオゾンガスとを混合する気液混合器21と、を主として備えている。
【0047】
この循環部2のうち、循環ラインL2aにおいては、オゾンガス供給部1から気液混合器21に供給されたオゾンガスを、当該気液混合器21を介して循環ラインL2aに導入し溶媒に溶解させることが可能な構成となっている。
図1に示す循環部2では、循環ラインL2aと気液混合器21との両者が接続されて一体化した描写となっているが、これに限定されることはなく、当該両者は互いに分離した別体構成であっても良い。
【0048】
気液混合器21は、例えばエジェクタ,アスピレータ,ジェットポンプ等を適用することが挙げられるが、これに限定されるものではなく、種々の態様を適用することが可能である。すなわち、気液混合器21においては、溶媒が流通する溶媒流通路(図示省略)と、その溶媒流通路に接続して設けられて当該気液混合器21に供給されたオゾンガスを当該溶媒流通路に導入するオゾンガス導入路(図示省略)と、を有した構成であれば良い。
【0049】
このように溶媒流通路およびオゾンガス導入路を有した構成の気液混合器21によれば、オゾンガス導入路には、溶媒流通路に流通する溶媒の流量(流速)に応じて、ベルヌーイの定理による吸引圧が発生する。また、オゾンガス導入路には、溶媒の飽和蒸気圧に応じた蒸気が発生する。例えば、溶媒が原料水の場合、
図2における水の飽和蒸気圧曲線および水蒸気圧表に示すような特性を有することになる。
【0050】
この
図2に示したような溶媒の特性と、気液混合器21に対するオゾンガスの供給圧力と、によれば、当該気液混合器21のオゾンガス導入路の蒸気圧が当該供給圧力よりも小さくなるような溶媒温度の範囲(以下、吸引可能範囲と適宜称する)を、導き出すことが可能となる。この吸引可能範囲は、溶媒に対する気体の一般的溶解特性(溶媒の温度が低くなるに連れて溶解度が向上する傾向)を考慮して、少なくとも当該溶媒の凝固点よりも大きい温度(溶媒が凍結しない温度)で、比較的低い温度の範囲となるように設定することが好ましい。
【0051】
そして、制御部6により、溶媒温度が吸引可能温度の範囲内となるように適宜制御(後述の温度制御工程のように制御)することにより、気液混合器21のオゾンガス導入路の蒸気圧を、当該気液混合器21に供給されるオゾンガスの供給圧力よりも小さくなるように設定することが可能となる。具体的には、圧力計14の計測値が圧力計12の計測値よりも小さくなるように、適宜設定することが挙げられる。これにより、オゾンガス供給ラインL1aのオゾンガスが、気液混合器21のオゾンガス導入路に導入され易くなり、当該オゾンガスを溶媒に混合させて溶解することが可能となる。
【0052】
気液混合器21の上流側には、循環ラインL2aを循環する溶媒の循環流量を計測する循環流量計22を、備えている。気液混合器21の下流側には、溶媒を循環させる循環ポンプ(
図1中では2個の循環ポンプ)23を、備えている。
図1に示すように2個の循環ポンプ23a,23bを備えておくことにより、例えば当該循環ポンプ23a,23bのうち一方を通常稼働させ、当該一方の1次圧が下がりすぎた場合に他方を補助ポンプとして機能させることが可能であるが、循環部2の状況(循環条件等)に応じて当該他方を適宜省略しても良い。
【0053】
また、循環ポンプ23の下流側には、溶媒温度を計測する測温抵抗体(
図1中では2個の測温抵抗体)24と、当該溶媒温度を調整する温度調整器(例えば冷却器)25と、を備えている。これら測温抵抗体24,温度調整器25を制御部6によって適宜制御することにより、溶媒温度が吸引可能範囲内となるように設定できる。
【0054】
次に、循環タンク20においては、一定量の溶媒を導入して貯留可能な有底筒状の周壁20aを備えて成り、当該周壁20aの内壁面は、軸心が鉛直方向に延在する円筒状の側壁内周面20bを有した形状となっている。
【0055】
周壁20aの上方側には、循環ライン2Laにおける測温抵抗体24bの下流側(すなわち、気液混合器21の下流側)と連通している導入口26と、後述の圧力調整ラインL3cと連通している導入口26aと、後述のガス排気ラインL5と連通している排気口26bと、が設けられている。
【0056】
周壁20aの下方側には、循環ラインL2aにおける循環流量計22の上流側(すなわち、気液混合器21の上流側)と連通している導出口27と、後述の溶媒放出ラインL4と連通している放出口28と、が設けられている。
【0057】
導入口26の形状等においては、特に限定されるものではないが、例えば
図1に示すように側壁内周面20bの位置に設け、当該側壁内周面20bの周方向一方側に向かって開口した形状とすることが挙げられる。このように側壁内周面20bに開口した形状の導入口26によれば、当該導入口26から循環タンク20内に導入された溶媒が、当該側壁内周面20bに沿って旋回しながら鉛直方向の下方側に移動(例えば、特許第6954645号公報において符号Sで示すような旋回流を発生させて移動)するように、貯留されることとなる。
【0058】
前記のように溶媒が側壁内周面20bに沿って旋回しながら移動する場合、当該溶媒のうち密度の大きい液相分は遠心力によって当該側壁内周面20bに沿って移動し易くなる一方、密度の小さい気相分は当該側壁内周面20bの軸心側に向かって凝集され易くなる。すなわち、前記のように旋回する溶媒によれば、効率良く気液分離が生じ易くなり、当該気液分離によって生じた気相分(気相ガス)を循環タンク20の上方側に移動させ、液相分を循環タンク20の下方側に貯留させることが可能となる。
【0059】
次に、還流ラインL2bにおいては、後述の溶媒放出ラインL4の上流側と、循環ラインL2aにおける循環流量計22の上流側と、の両者間を連通するように接続して設けられており、当該溶媒放出ラインL4の上流側の溶媒(すなわち、放出口28から放出された溶媒)を循環ラインL2aに還流可能な構成となっている。また、還流ラインL2bは、当該還流ラインL2bによって還流する溶媒のオゾン濃度を計測可能なオゾン濃度計測器29を、備えている。このように還流ラインL2bに備えられたオゾン濃度計測器29によれば、単に循環ラインL2aの溶媒のオゾン濃度を計測するのではなく、実際に循環タンク20から放出される溶媒(すなわち、目的とするオゾン水)と同様のオゾン濃度を計測することが可能となる。
【0060】
<溶媒供給部3の構成例>
図1に示す溶媒供給部3は、例えば原料水等の溶媒を循環ラインL2aに供給可能な溶媒供給ラインL3aと、当該循環ラインL2aの溶媒のオゾン濃度を安定化させる濃度調整ガス(例えば二酸化炭素ガス等)を供給可能な濃度調整ラインL3bと、循環タンク20内の圧力を調整する圧力調整ガス(例えばN
2,Ar,He等の不活性ガス)を供給可能な圧力調整ラインL3cと、を備えている。
【0061】
この溶媒供給部3のうち、溶媒供給ラインL3aにおいては、循環ラインL2aにおける循環ポンプ23a,23bの両者間に連通して接続されており、当該溶媒供給ラインL3aを流通する溶媒の流量を制御可能な溶媒流量制御器31を、備えている。また、溶媒流量制御器31の下流側には、当該溶媒供給ラインL3aを流通する溶媒の純水度を高めることが可能な純水化部(例えば純水製造装置等)32と、当該溶媒供給ラインL3aにおける溶媒の流通の可否を切り替え自在な開閉バルブ33と、を備えている。
【0062】
次に、濃度調整ラインL3bにおいては、循環ラインL2aにおける循環ポンプ23a,23bの両者間に連通して接続されており、当該濃度調整ラインL3bを流通する濃度調整ガスの流量を制御可能なガス流量制御器34を、備えている。また、ガス流量制御器34の下流側には、濃度調整ラインL3bにおける濃度調整ガスの流通の可否を切り替え自在な開閉バルブ35を、備えている。
【0063】
次に、圧力調整ラインL3cにおいては、循環タンク20における導入口26aに連通して接続されており、当該圧力調整ラインL3cを流通する圧力調整ガスの流量を制御可能なガス流量制御器36を、備えている。
【0064】
<放出部4の構成例>
図1に示す放出部4は、循環タンク20内の溶媒を当該循環タンク20の外周側に放出する溶媒放出ラインL4を、備えている。この溶媒放出ラインL4は、循環タンク20における放出口28に連通して接続されており、当該溶媒放出ラインL4を介して放出される溶媒の放出流量を制御可能な放出流量制御器41を、備えている。
【0065】
<排気部5の構成例>
図1に示す排気部5は、循環タンク20内のガス(例えば溶媒から気液分離した気相分等)を当該循環タンク20の外周側に排気するガス排気ラインL5を、備えている。このガス排気ラインL5は、循環タンク20における排気口26bに連通して接続されており、当該循環タンク20内の圧力を一定に保持しながら当該循環タンク20内のガスの流通(排気)の可否を切り替え自在な開閉バルブ(背圧調整弁等)51を、備えている。また、開閉バルブ51の下流側には、ガス排気ラインL5を流通するオゾンガスのオゾン濃度を計測可能なオゾン濃度計測器52と、当該ガス排気ラインL5を流通するオゾンガスを安全な状態に分解するオゾン分解器53と、を備えている。
【0066】
<制御部6の構成例>
図1に示す制御部6は、目的とするオゾン水が得られるように、オゾンガス供給部1,循環部2,溶媒供給部3,放出部4,排気部5の各状態情報を適宜取得して制御可能な構成であれば良く、種々の態様を適用することが可能である。
【0067】
例えば、制御部6と、各ライン(オゾンガス供給ラインL1a,オゾンガス排気ラインL1b,循環ラインL2a,還流ラインL2b,溶媒供給ラインL3a,濃度調整ラインL3b,圧力調整ラインL3c,溶媒放出ラインL4,ガス排気ラインL5)に構成されている機器類(例えば、計測器,調整器,制御器,開閉バルブ,循環ポンプ,測温抵抗体等)と、の間を図外の信号ライン等を介して適宜接続した態様が挙げられる。
【0068】
このような態様の構成によれば、当該各ラインを適宜稼働して当該機器類の状態情報を取得でき、その取得した状態情報に基づいて、当該機器類に制御指令を出力して制御することが可能となる。
【0069】
<装置Aによるオゾン水の生成方法の一例>
以上示した装置Aにおいては、例えば以下に示す循環工程,温度制御工程,気液混合工程,放出工程,排気工程を適宜実行することにより、所望のオゾン水を生成することが可能である。
【0070】
まず、循環工程では、溶媒供給ラインL3aの開閉バルブ33を開状態にする等により、循環ラインL2aに対して溶媒を供給し、当該循環ラインL2を溶媒で満たした状態にする。この循環ラインL2aに満たされる循環の量は、例えば循環タンク20内の溶媒の液面が導入口26と導出口27との間に位置するように、適宜設定することが挙げられる。
【0071】
そして、循環ラインL2aの循環ポンプ23を稼働する等により、当該循環ラインL2aを、所定の循環流量で溶媒が循環している状態(以下、単に循環状態と適宜称する)にする。この循環状態の際、必要に応じて、濃度調整ラインL3b,圧力調整ラインL3cも稼働することにより、循環ラインL2aの循環溶媒のオゾン濃度を安定化させ、循環タンク20内の圧力を調整する。
【0072】
次に、温度制御工程では、予め、後段のオゾンガス供給工程によるオゾンガスの供給圧力と、
図2の飽和蒸気圧曲線および蒸気圧表に示すような特性と、に基づいて吸引可能範囲を導き出しておく。そして、循環状態において、循環ラインL2aの溶媒温度を測温抵抗体24により計測しながら、当該溶媒温度が吸引可能範囲内となるように温度調整器25により調整する。例えば、オゾン濃度300ppm以上のオゾン水を目的とする場合、吸引可能範囲は、溶媒の凝固点よりも大きく15℃以下の範囲とすることが挙げられる。
【0073】
次に、気液混合工程では、循環状態において、オゾンガス供給ラインL1aの開閉バルブ13を開状態にする等により、気液混合器21に対してオゾンガスを供給する。ここで、前段の温度制御工程によって循環溶媒温度が吸引可能範囲内の状態であるため、気液混合器21に対するオゾンガスの供給圧力は、気液混合器21のオゾンガス導入路の蒸気圧よりも大きくなる。
【0074】
これにより、気液混合器21に供給されたオゾンガスは、当該気液混合器21内のオゾンガス導入路を介して溶媒流通路に導入され、当該溶媒流通路の溶媒に混合されて溶解可能な状態となる。そして、当該オゾンガスが溶媒に溶解されることにより、当該溶媒が所望のオゾン濃度となる。
【0075】
なお、気液混合工程によりオゾンガスを供給している状態において、圧力計14の計測値が圧力計12の計測値よりも大きくなった場合には、開閉バルブ13を開状態に切り替え制御する。これにより、オゾンガス供給ラインL1aにおいてオゾンガスの逆流が生じないように抑制可能となる。
【0076】
次に、放出工程では、循環状態において、溶媒放出ラインL4の放出流量制御器41を適宜制御することにより、循環タンク20内の溶媒を放出する(すなわち、目的とするオゾン水を得る)。また、溶媒供給ラインL3aから循環ラインL2aに対して溶媒を適宜供給することにより、溶媒の放出流量が循環ラインL2aの溶媒の循環流量よりも大きくならないように、制御する。
【0077】
これにより、循環タンク20内において一定量の溶媒を貯留した状態を保持しながら当該溶媒を放出することができる。すなわち、放出工程において、所望のオゾン濃度のオゾン水を連続的に取り出すことが可能となる。
【0078】
次に、排気工程では、ガス排気ラインL5の開閉バルブ51を開状態にする等により、循環タンク20内に存在しているガス(例えば循環溶媒から気液分離した気相分等)を当該循環タンク20の外周側に排気する。
【0079】
<検証例>
図1に示したような構成の装置Aを用いて、以上示したように循環工程,温度制御工程,気液混合工程,放出工程,排気工程等を適宜実行することにより、オゾン水を生成した。そして、当該オゾン水中に含まれ得る金属・非金属元素(Li,Na,Mg,Al,K,Ca,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Cd,Sn,Ba,Pb,Si)の不純物量を、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によりppbレベルで観測したところ、後述の表1に示す結果が得られた。また、気液混合工程により供給するオゾンガスの流量(
図3のO
3流量)、放出工程の放出により取り出したオゾン水の放出量(
図3のO
3水取出量)およびオゾン濃度(
図3のO
3水濃度)において、経過時間に対する変化特性を観測したところ、
図3に示す結果が得られた。
【0080】
なお、装置Aのオゾンガス生成装置10には、明電舎製のピュアオゾンジェネレータを適用し、気液混合工程において、オゾン濃度90体積%以上のオゾンガスを全圧30kPa(abs)以下の減圧状態で気液混合器21に供給した。また、吸引可能範囲は、10℃~15℃に設定した。
【0081】
【0082】
表1の結果によると、装置Aにより生成したオゾン水は、金属・非金属元素の不純物が殆ど無く、Na,Cr,Fe,Cu,Alによる不純物量においては定量下限値以下に抑えられていることが判る。
【0083】
図3の結果によると、装置Aにおいては、循環タンク20内において一定量の溶媒を貯留した状態を保持しながら、300ppm以上の高濃度のオゾン水を連続的に放出できていることが判る。また、当該オゾン水のオゾン濃度は、殆ど変化しないように抑制されていることが判る。すなわち、高濃度のオゾン水を安定供給できることを確認できた。
【0084】
<装置Aにより生成したオゾン水の適用例>
例えばSi半導体においては、一般的なRCA洗浄工程を行うと、Si基板表面にSiのダングリングボンドが露出することがある。通常は、後段の希フッ酸処理工程等により、前記ダングリングボンドは水素終端化されるため、当該ダングリングボンドにコンタミ(汚染物)が付着することは抑制される。
【0085】
しかしながら、水素終端の寿命は短いため(例えば数時間程度)、当該水素終端状態を長期保持する場合には、Si基板表面に薄い酸化膜を形成し、ダングリングボンドが露出しない状態にする必要がある。すなわち、RCA洗浄後に、高濃度のオゾン水を適用して、Si基板表面に極めて薄いSi酸化膜を形成する方ことが考えられる。ただし、適用したオゾン水に金属・非金属元素の不純物が含まれている場合には、当該不純物がSi酸化膜中に取り込まれてしまい、目的とするSi半導体製品が得られなくなってしまう。
【0086】
そこで、前記のようなSi酸化膜を形成する場合には、装置Aにより生成したオゾン水を適用することにより、当該Si酸化膜中に不純物が取り込まれることを抑制でき、目的とするSi半導体製品がより得られ易くなる。
【0087】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0088】
A…オゾン水生成装置
1…オゾンガス供給部
2…循環部
3…溶媒供給部
4…放出部
5…排気部
6…制御部
L2a…溶媒循環ライン
21…気液混合器