(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090636
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】三次元造形物の製造方法、および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20240627BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240627BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240627BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240627BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20240627BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y50/02
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/118
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206645
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 郷志
(72)【発明者】
【氏名】岡本 英司
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AR07
4F213AR12
4F213AR15
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL15
4F213WL32
4F213WL85
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】三次元造形物の重心位置および重量の少なくとも一方を、所望のものに近づけることができる三次元造形物の製造方法を提供する。
【解決手段】吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて層を積層させることで、三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、前記三次元造形物の重心位置を指定する情報、および前記三次元造形物の重量を指定する情報のうちの少なくとも一方を含む指定情報を取得する工程と、前記指定情報に基づいて、前記吐出部の前記ステージに対する経路の情報、および前記経路における前記造形材料の吐出量の情報を含む造形データを生成する工程と、前記造形データに基づいて前記吐出部を制御して、前記三次元造形物を造形する工程と、を含む、三次元造形物の製造方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて層を積層させることで、三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、
前記三次元造形物の重心位置を指定する情報、および前記三次元造形物の重量を指定する情報のうちの少なくとも一方を含む指定情報を取得する工程と、
前記指定情報に基づいて、前記吐出部の前記ステージに対する経路の情報、および前記経路における前記造形材料の吐出量の情報を含む造形データを生成する工程と、
前記造形データに基づいて前記吐出部を制御して、前記三次元造形物を造形する工程と、
を含む、三次元造形物の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記指定情報は、前記三次元造形物の重量分布を指定する情報を含む、三次元造形物の製造方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記造形データに基づいて前記三次元造形物の重心位置および重量のうちの少なくとも一方を算出し、算出した値と、前記指定情報において指定された値とが、所定値以上乖離している場合、前記造形データを修正、または新たな造形データを生成する工程を含む、三次元造形物の製造方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記造形データに基づいて前記三次元造形物の重心位置および重量のうちの少なくとも一方を算出し、算出した値を表示部に表示させる工程を含む、三次元造形物の製造方法。
【請求項5】
請求項1において、
前記ステージに対して前記三次元造形物を、第1向きで配置させる場合と、前記第1向きと異なる第2向きで配置させる場合と、において、前記指定情報で指定された重心位置と、前記ステージと、の間の距離を比較する工程を含み、
前記造形データを生成する工程では、前記距離が小さい方の向きの前記造形データを生成する、三次元造形物の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、
前記指定情報に基づいて、インフィルの充填率の条件、フィルパターンの条件、線幅の条件、積層ピッチの条件、および前記造形材料の条件のうちの少なくとも1つを調整して、造形データ生成条件を決定する工程を含み、
前記造形データを生成する工程では、前記造形データ生成条件に基づいて、前記造形データを生成する、三次元造形物の製造方法。
【請求項7】
吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて層を積層させることで、三次元造形物を製造するための造形データを生成する情報処理装置であって、
前記三次元造形物の重心位置を指定する情報、および前記三次元造形物の重量を指定する情報のうちの少なくとも一方を含む指定情報を取得する取得部と、
前記指定情報に基づいて、前記吐出部の前記ステージに対する経路の情報、および前記経路における前記造形材料の吐出量の情報を含む前記造形データを生成するデータ生成部と、
を有する、情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形物の製造方法、および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可塑化された材料をステージに向けて吐出し、硬化させることによって三次元造形物を製造する方法が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、造形対象である対象造形物の3次元モデルの重心を算出し、算出した重心に基づいて、3次元モデルを支持するサポートの配置を決定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような対象造形物において、重心の位置や重量を所望のものとし、ユーザーの利便性を向上させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る三次元造形物の製造方法の一態様は、
吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて層を積層させることで、三次元造形物を製造する三次元造形物の製造方法であって、
前記三次元造形物の重心位置を指定する情報、および前記三次元造形物の重量を指定する情報のうちの少なくとも一方を含む指定情報を取得する工程と、
前記指定情報に基づいて、前記吐出部の前記ステージに対する経路の情報、および前記経路における前記造形材料の吐出量の情報を含む造形データを生成する工程と、
前記造形データに基づいて前記吐出部を制御して、前記三次元造形物を造形する工程と、
を含む。
【0007】
本発明に係る情報処理装置の一態様は、
吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて層を積層させることで、三次元造形物を製造するための造形データを生成する情報処理装置であって、
前記三次元造形物の重心位置を指定する情報、および前記三次元造形物の重量を指定する情報のうちの少なくとも一方を含む指定情報を取得する取得部と、
前記指定情報に基づいて、前記吐出部の前記ステージに対する経路の情報、および前記経路における前記造形材料の吐出量の情報を含む前記造形データを生成するデータ生成部と、
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る三次元造形システムを模式的に示す断面図。
【
図2】本実施形態に係る三次元造形装置のフラットスクリューを模式的に示す斜視図。
【
図3】本実施形態に係る三次元造形装置のバレルを模式的に示す平面図。
【
図4】本実施形態に係る情報処理装置の処理を説明するためのフローチャート。
【
図5】三次元造形物のモデルを模式的に示す斜視図。
【
図6】三次元造形物のモデルを模式的に示す平面図。
【
図7】三次元造形物のモデルを模式的に示す断面図。
【
図9】本実施形態に係る三次元造形装置の制御部の処理を説明するためのフローチャート。
【
図10】本実施形態に係る三次元造形装置の制御部の処理を説明するための断面図。
【
図11】本実施形態に係情報処理装置の処理の変形例を説明するためのフローチャート。
【
図12】三次元造形物のモデルを模式的に示す側面図。
【
図13】三次元造形物のモデルを模式的に示す側面図。
【
図14】三次元造形物のモデルを模式的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1. 三次元造形システム
1.1. 全体の構成
まず、本実施形態に係る三次元造形システムについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る三次元造形システム1000を模式的に示す断面図である。なお、
図1では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を示している。X軸方向およびY軸方向は、例えば、水平方向である。Z軸方向は、例えば、鉛直方向である。
【0011】
三次元造形システム1000は、
図1に示すように、三次元造形装置100と、受付部50と、表示部52と、情報処理装置60と、を含む。三次元造形装置100は、
図1に示すように、例えば、吐出部10と、ステージ20と、移動部30と、制御部40と、を含む。
【0012】
三次元造形装置100は、吐出部10からステージ20に向けて可塑化された造形材料を吐出させつつ、移動部30を駆動して、吐出部10とステージ20との相対的な位置を変化させる。これにより、三次元造形装置100は、ステージ20上に所望の形状の三次元造形物を造形する。三次元造形装置100は、FDM(Fused Deposition Modeling)(登録商標)方式の三次元造形装置である。
【0013】
なお、図示はしないが、吐出部10は、複数設けられていてもよい。例えば、吐出部10は、2つ設けられていてもよい。この場合、2つの吐出部10は、ともに三次元造形物を構成する造形材料を吐出してもよいし、一方が造形材料を吐出し、他方が三次元造形物を支持するサポート材を吐出してもよい。2つの吐出部10は、X軸方向に並んでいてもよい。
【0014】
吐出部10は、例えば、材料貯留部110と、可塑化部120と、ノズル160と、を有している。
【0015】
材料貯留部110は、ペレット状や粉末状の材料を貯留する。材料貯留部110は、可
塑化部120に材料を供給する。材料貯留部110は、例えば、ホッパーによって構成されている。材料貯留部110に収容される材料は、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂である。
【0016】
材料貯留部110と可塑化部120とは、材料貯留部110の下方に設けられた供給路112によって接続されている。材料貯留部110に投入された材料は、供給路112を介して、可塑化部120に供給される。
【0017】
可塑化部120は、例えば、スクリューケース122と、駆動モーター124と、フラットスクリュー130と、バレル140と、ヒーター150と、を有している。可塑化部120は、材料貯留部110から供給された固体状態の材料の少なくとも一部を可塑化し、流動性を有するペースト状の造形材料を生成して、ノズル160に供給する。
【0018】
なお、可塑化とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0019】
スクリューケース122は、フラットスクリュー130を収容する筐体である。スクリューケース122の下面には、バレル140が設けられている。スクリューケース122とバレル140とによって囲まれた空間に、フラットスクリュー130が収容されている。
【0020】
駆動モーター124は、スクリューケース122の上面に設けられている。駆動モーター124は、例えば、サーボモーターである。駆動モーター124のシャフト126は、フラットスクリュー130の上面131に接続されている。駆動モーター124は、制御部40によって制御される。なお、図示はしないが、減速機を介して、駆動モーター124のシャフト126と、フラットスクリュー130の上面131とが、接続されていてもよい。
【0021】
フラットスクリュー130は、回転軸R方向の大きさが、回転軸R方向と直交する方向の大きさよりも小さい略円柱形状を有している。図示の例では、回転軸Rは、Z軸と平行である。駆動モーター124が発生させるトルクによって、フラットスクリュー130は、回転軸Rを中心に回転する。
【0022】
フラットスクリュー130は、上面131と、上面131とは反対側の溝形成面132と、上面131と溝形成面132とを接続する側面133と、を有している。溝形成面132には、第1溝134が形成されている。側面133は、例えば、溝形成面132に対して垂直である。ここで、
図2は、フラットスクリュー130を模式的に示す斜視図である。なお、便宜上、
図2では、
図1に示した状態とは上下の位置関係を逆向きとした状態を示している。
【0023】
フラットスクリュー130の溝形成面132には、
図2に示すように、第1溝134が形成されている。第1溝134は、例えば、中央部135と、接続部136と、材料導入部137と、を有している。中央部135は、バレル140に形成された連通孔146と対向している。中央部135は、連通孔146と連通している。接続部136は、中央部135と材料導入部137とを接続している。図示の例では、接続部136は、中央部135から溝形成面132の外周に向かって渦状に設けられている。材料導入部137は、溝形成面132の外周に設けられている。すなわち、材料導入部137は、フラットスクリュー130の側面133に設けられている。材料貯留部110から供給された材料は、
材料導入部137から第1溝134に導入され、接続部136および中央部135を通って、バレル140に形成された連通孔146に搬送される。第1溝134は、例えば、2つ設けられている。
【0024】
なお、第1溝134の数は、特に限定されない。図示はしないが、第1溝134は、3つ以上設けられていてもよいし、1つだけ設けられていてもよい。
【0025】
また、図示はしないが、可塑化部120は、フラットスクリュー130ではなく、側面に螺旋溝を有する長尺のインラインスクリューを有していてもよい。そして、可塑化部120は、インラインスクリューの回転によって材料を可塑化してもよい。
【0026】
バレル140は、
図1に示すように、フラットスクリュー130の下方に設けられている。バレル140は、フラットスクリュー130の溝形成面132に対向する対向面142を有している。対向面142の中心には、第1溝134と連通する連通孔146が形成されている。ここで、
図3は、バレル140を模式的に示す平面図である。
【0027】
バレル140の対向面142には、
図3に示すように、第2溝144と、連通孔146と、が形成されている。第2溝144は、複数形成されている。図示の例では、6つの第2溝144が形成されているが、第2溝144の数は、特に限定されない。複数の第2溝144は、Z軸方向からみて、連通孔146の周りに形成されている。第2溝144は、一端が連通孔146に接続され、連通孔146からバレル140の外周に向かって渦状に延びている。第2溝144は、可塑化された造形材料を連通孔146に導く機能を有している。
【0028】
なお、第2溝144の形状は、特に限定されず、例えば、直線状であってもよい。また、第2溝144は、一端が連通孔146に接続されていなくてもよい。さらに、第2溝144は、対向面142に形成されていなくてもよい。ただし、連通孔146に可塑化された材料を効率よく導くことを考慮すると、第2溝144は、対向面142に形成されていることが好ましい。
【0029】
ヒーター150は、
図1に示すように、バレル140に設けられている。ヒーター150は、フラットスクリュー130とバレル140との間に供給された材料を加熱する。ヒーター150の出力は、制御部40によって制御される。可塑化部120は、フラットスクリュー130、バレル140、およびヒーター150によって、材料を連通孔146に向かって搬送しながら加熱して、可塑化された造形材料を生成する。そして、可塑化部120は、生成された造形材料を連通孔146から流出させる。
【0030】
なお、Z軸方向からみて、ヒーター150の形状は、リング状であってもよい。また、ヒーター150は、バレル140ではなく、バレル140の下方に設けられていてもよい。
【0031】
ノズル160は、バレル140の下方に設けられている。ノズル160には、ノズル流路162が形成されている。ノズル流路162は、連通孔146に連通している。ノズル流路162には、連通孔146から造形材料が供給される。ノズル160は、ノズル流路162に供給された造形材料をステージ20に向けて吐出する。
【0032】
ステージ20は、ノズル160の下方に設けられている。図示の例では、ステージ20の形状は、直方体である。ステージ20は、造形材料が堆積される堆積面22を有している。堆積面22は、ステージ20の上面の領域である。
【0033】
ステージ20の材質は、例えば、アルミニウムなどの金属である。ステージ20は、金属板と、金属板に設けられた密着シートと、によって構成されていてもよい。この場合、堆積面22は、密着シートによって構成される。密着シートは、ステージ20と、吐出部10から吐出される造形材料と、の密着性を向上できる。
【0034】
ステージ20は、図示はしないが、溝が形成された金属板と、溝を埋めるように設けられた下地層と、によって構成されていてもよい。この場合、堆積面22は、下地層によって構成される。下地層の材質は、例えば、造形材料と同じである。下地層は、ステージ20と、吐出部10から吐出される造形材料と、の密着性を向上できる。
【0035】
移動部30は、ステージ20を支持している。移動部30は、吐出部10とステージ20との相対的な位置を変更する。図示の例では、移動部30は、ステージ20をX軸方向およびY軸方向に移動させることによって、X軸方向およびY軸方向において、ノズル160とステージ20との相対的な位置を変更する。さらに、移動部30は、吐出部10をZ軸方向に移動させることによって、Z軸方向において、ノズル160とステージ20との相対的な位置を変更する。
【0036】
移動部30は、例えば、第1電動アクチュエーター32と、第2電動アクチュエーター34と、第3電動アクチュエーター36と、を有している。第1電動アクチュエーター32は、ステージ20をX軸方向に移動させる。第2電動アクチュエーター34は、ステージ20をY軸方向に移動させる。第3電動アクチュエーター36は、吐出部10をZ軸方向に移動させる。
【0037】
なお、移動部30は、吐出部10とステージ20との相対的な位置を変更することができれば、その構成は、特に限定されない。移動部30は、例えば、ステージ20をZ軸方向に移動し、吐出部10をX軸方向およびY軸方向に移動させる構成であってもよい。または、移動部30は、ステージ20または吐出部10をX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に移動させる構成であってもよい。
【0038】
制御部40は、例えば、プロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースと、を有するコンピューターによって構成されている。制御部40は、例えば、主記憶装置に読み込んだプログラムをプロセッサーが実行することによって、種々の機能を発揮する。具体的には、制御部40は、吐出部10および移動部30を制御する。なお、制御部40は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0039】
受付部50は、ユーザーの指示を受け付ける。受付部50は、受け付けたユーザーからの指示に従って、情報処理装置60に信号を送信する。受付部50は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、マイクなどによって構成されている。
【0040】
表示部52は、情報処理装置60からの指示に従って、各種の画像を表示する。表示部52は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ、EPD(Electrophoretic Display)、タッチパネル型ディスプレイなどによって構成されている。
【0041】
情報処理装置60は、例えば、主記憶装置に読み込んだプログラムをプロセッサーが実行することによって、種々の機能を発揮する。情報処理装置60は、吐出部10からステージ20に向けて造形材料を吐出させて層を積層させることで、三次元造形物を製造するための造形データを生成する。情報処理装置60は、三次元造形物の重心位置を指定する情報、および三次元造形物の重量を指定する除法のうちの少なくとも一方を含む指定情報
を取得する取得部62と、指定情報に基づいて、吐出部10のステージ20に対する経路の情報、および当該経路における造形材料の吐出量を含む造形データを生成するデータ生成部64と、を有する。情報処理装置60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などによって構成される。なお、図示はしないが、制御部40と情報処理装置60とは、1つの装置として一体に設けられていてもよい。
【0042】
1.2. 情報処理装置の処理
次に、本実施形態に係る情報処理装置60の処理について、図面を参照しながら説明する。
図4は、情報処理装置60の処理を説明するためフローチャートである。
図5は、三次元造形装置100によって製造される三次元造形物のモデルMを模式的に示す斜視図である。
図6は、モデルMを模式的に示す平面図である。
図7は、モデルMを模式的に示す
図5のVI-VII線断面図である。
【0043】
ユーザーは、例えば、受付部50を操作して、情報処理装置60に処理を開始するための処理開始信号を出力する。情報処理装置60は、処理開始信号を受けると処理を開始する。
【0044】
1.2.1. ステップS1
情報処理装置60は、
図4に示すように、ユーザーによる受付部50の操作によって送信された形状データを取得する処理を行う。情報処理装置60の取得部62は、ステップS1の処理を行う。
【0045】
形状データは、三次元CAD(Computer Aided Design)ソフトや三次元CG(Computer Graphics)ソフトなどを用いて作成された三次元造形物の目標形状を表すデータである。形状データとしては、例えば、STL(Standard Triangulated Language)形式やAMF(Additive Manufacturing File Format)などのデータを用いる。
【0046】
1.2.2. ステップS2
次に、情報処理装置60は、取得した形状データに基づいて、三次元造形物のデフォルト重心位置を算出する処理を行う。情報処理装置60のデータ生成部64は、ステップS2の処理および後述するステップS3~S9の処理を行う。
【0047】
具体的には、情報処理装置60は、
図5に示すように、形状データに基づいた三次元造形物のモデルMを、所定の厚さの層Lに分割する。図示の例では、モデルMは、層Lとして10層の層L1~L10に分割されている。情報処理装置60は、例えば、スライサーソフトとして構成されている。情報処理装置60は、分割した各層Lに対して、面内方向において均一な重量分布とした場合のモデルMの重心位置をデフォルト重心位置として算出する。「面内方向」とは、層Lの厚さ方向と直交する方向である。図示の例では、層Lの厚さ方向は、Z軸方向である。モデルMの形状は、例えば、直方体である。なお、モデルMの形状および層Lの数は、特に限定されない。モデルMの形状は、円柱であってもよい。層Lの数は、ユーザーによって指定されてもよい。
【0048】
1.2.3. ステップS3
次に、情報処理装置60は、
図4に示すように、算出したデフォルト重心位置を、表示部52に表示させる処理を行う。
【0049】
1.2.4. ステップS4
次に、情報処理装置60は、指定情報を取得する処理を行う。指定情報は、三次元造形
物の重心位置を指定する情報(以下、「重心位置情報」ともいう)、および三次元造形物の重量を指定する情報(「重量情報」ともいう)を含む。なお、指定情報は、重心位置情報を含み、重量情報を含まなくてもよいし、重量情報を含み、重心位置情報を含まなくてもよい。
【0050】
具体的には、ユーザーは、受付部50を操作して、三次元造形物の重心位置および重量を指定する。ユーザーは、例えば、(X,Y,Z)の座標を入力して、重心位置を指定する。ユーザーは、例えば、所望の数値を入力して、重量を指定する。なお、重心位置の指定の方法は、座標の入力に限定されず、例えば、「三次元造形物の上部側」、「三次元造形物の下部側」、といった指定の方法であってよい。
【0051】
情報処理装置60は、重心位置情報で指定される重心位置と、重量情報で指定される重量と、を両立できない場合に、どちらを優先させるか指定された優先情報を取得してもよい。優先情報は、ユーザーによって指定される。
【0052】
指定情報は、さらに、三次元造形物の重量分布を指定する情報(以下、「重量分布情報」ともいう)を含んでもよい。
【0053】
例えば、重心位置が層L7に指定された場合あって、Z軸方向の重量分布を指定する場合、ユーザーは、層L7の重量を基準値として、層L1~L6,L8~L10の重量分布を、基準値に対する割合として入力する。これにより、ユーザーは、Z軸方向の重量分布を指定できる。
【0054】
例えば、
図6に示すように、重心位置Gが、中心位置Cよりも+X軸方向に指定された場合であって、X軸方向の重量分布を指定する場合、ユーザーは、重心位置Gを含む所定領域Aの重量を基準して、他の領域Aの重量を、基準値に対する割合として入力する。これにより、ユーザーは、X軸方向の重量分布を指定できる。
【0055】
図6に示す例では、領域Aの形状は、長方形である。領域Aの数は、10個である。複数の領域Aは、X軸方向に配列されている。領域Aの形状、数、および配列の方向は、特に限定されない。例えば複数の領域をY軸方向に配列させることにより、ユーザーは、Y軸方向の重量分布を指定できる。領域Aの形状、数、および配列の方向は、ユーザーによって指定されてよい。
【0056】
上記のような方法によって、受付部50は、重心位置情報、重量情報、および重量分布情報を含む指定情報を受け付ける。受付部50は、受け付けた指定情報を、情報処理装置60に送信する。これにより、情報処理装置60は、指定情報を取得する。
【0057】
1.2.5. ステップS5
次に、情報処理装置60は、
図4に示すように、取得した指定情報に基づいて、造形データ生成条件を決定する処理を行う。
【0058】
具体的には、情報処理装置60は、重心位置情報で指定された重心位置となり、重量情報で指定された重量となり、かつ、重量分布情報で指定された重量分布となるように、造形データ生成条件を決定する。
【0059】
造形データ生成条件は、例えば、インフィルの充填率の条件と、フィルパターンの条件と、線幅の条件と、積層ピッチの条件と、造形材料の条件と、を含む。
【0060】
「インフィルの充填率」とは、
図7に示すように、モデルMの外周を形成する外周パス
P
OUTに囲まれた内部パスP
INの充填率である。インフィルの充填率が100%の場合、外周パスP
OUTに囲まれた領域は、内部パスP
INで完全に埋め込まれる。インフィルの充填率が0%の場合、外周パスP
OUTに囲まれた領域に、内部パスPINは、存在しない。外周パスP
OUTおよび内部パスP
INは、吐出部10のステージ20に対する経路に相当する。外周パスP
OUTは、連続的な形状を有している。
【0061】
「フィルパターン」とは、内部パスPINの形状のことである。図示の例では、内部パスPINは、Y軸方向に往復しながら、X軸方向に延在する形状を有している。内部パスPINの形状は、特に限定されず、例えば、螺旋状であってもよいし、複数に分割された多角形や円で構成されていてもよい。
【0062】
「線幅」とは、内部パスPINの幅のことである。具体的には、線幅は、内部パスPINの延在方向と直交する方向の大きさである。図示の例では、内部パスPINのX軸方向に延在している部分において、線幅は、Y軸方向の大きさである。内部パスPINのY軸方向に延在している部分において、線幅は、X軸方向の大きさである。
【0063】
「積層ピッチ」とは、
図5に示すように、積層された層Lのピッチのことである。具体的には、積層ピッチは、層Lの厚さである。図示の例では、積層された層Lの厚さは、互いに同じである。
【0064】
情報処理装置60は、重心位置情報で指定された重心位置となり、重量情報で指定された重量となり、かつ、重量分布情報で指定された重量分布となるように、インフィルの充填率の条件、フィルパターンの条件、線幅の条件、積層ピッチの条件、造形材料の条件のうちの少なくとも1つを調整して、造形データ生成条件を決定する。
【0065】
例えば、インフィルの充填率を大きくするほど、重量は大きくなる。フィルパターンを調整することにより、インフィルの充填率を変化させることができる。線幅を調整することにより、重量を変化させることができる。積層ピッチを調整することにより、重量を変化させることができる。造形材料として、例えば、金属フィラーを含むMIM(Metal Injection Molding)を用いることにより、金属フィラーを含まない樹脂からなる場合に比べて、重量は大きくなる。
【0066】
情報処理装置60は、層Lごとに、造形データ生成条件を調整してもよい。情報処理装置60は、1つの層Lにおいて、造形データ生成条件を、同心円状に変化させてもよいし、領域A単位でグラデーションを付けて変化させてもよいし、連続的にグラデーションを付けて変化させてもよい。
【0067】
情報処理装置60は、インフィルの充填率の条件、フィルパターンの条件、線幅の条件、積層ピッチの条件、および造形材料の条件を、優先順位を付けて調整してもよい。情報処理装置60は、例えば、まず、インフィルの充填率およびフィルパターンの条件を調整し、当該条件を調整しても重心位置情報で指定された重心位置とならない場合に、線幅の条件を調整してもよい。さらに、情報処理装置60は、線幅の条件を調整しても、重心位置情報で指定された重心位置とならない場合に、積層ピッチの条件、造形材料の条件を、順に調整してもよい。これらの条件の優先順位は、ユーザーによって指定されてもよい。
【0068】
1.2.6. ステップS6
次に、情報処理装置60は、
図4に示すように、取得した指定情報に基づいて、造形データを生成する処理を行う。具体的には、情報処理装置60は、指定情報に基づいて決定された造形データ生成条件に基づいて、造形データを生成する。
【0069】
造形データは、吐出部10のステージ20に対する相対的な経路の情報、および当該経路における吐出部10からの造形材料の吐出量の情報を含む。造形データは、例えば、Gコード、Mコードなどによって表される。
【0070】
ここで、
図8は、造形データを説明するための図である。具体的には、
図8は、
図7に示す内部パスP
INを形成するための造形データを説明するための図である。
図8に示す例では、造形データに含まれる経路の情報は、(X,Y,Z)の座標として示されている。造形データに含まれる吐出量の情報は、「E」として示されている。
【0071】
造形データのコマンドCOM1は、吐出部10をステージ20に対して、(X1,Y1,Z1)の位置に移動させる。(X1,Y1,Z1)の位置は、
図7に示す内部パスP
INの始点F1に相当する。コマンドCOM1は、「E1」を示し、当該移動の間に、造形材料を吐出させない。
【0072】
造形データのコマンドCOM2は、吐出部10をステージ20に対して、(X1,Y1,Z1)の位置から(X1,Y2,Z1)に移動させる。コマンドCOM2は、「E2」を示し、当該移動の間に、吐出部10から所定量の造形材料を吐出させる。これにより、
図7に示す内部パスP
INの第1パスP1が形成される。
【0073】
造形データのコマンドCOM3は、吐出部10をステージ20に対して、(X1,Y2,Z1)の位置から(X2,Y2,Z1)に移動させる。コマンドCOM3は、当該移動の間に、吐出部10から所定量の造形材料を吐出する。これにより、内部パスPINの第2パスP2が形成される。
【0074】
造形データのコマンドCOM4は、吐出部10をステージ20に対して、(X2,Y2,Z1)の位置から(X2,Y1,Z1)に移動させる。コマンドCOM4は、当該移動の間に、吐出部10から所定量の造形材料を吐出させる。これにより、内部パスPINの第3パスP3が形成される。
【0075】
造形データのコマンドCOM5は、吐出部10をステージ20に対して、(X2,Y1,Z1)の位置から(X3,Y1,Z1)に移動させる。コマンドCOM5は、当該移動の間に、吐出部10から所定量の造形材料を吐出させる。これにより、内部パスPINの第4パスP4が形成される。
【0076】
以上のように、造形データは、内部パスP
INの複数のパスに対応する複数のコマンドから構成されている。例えば、
図7に示す内部パスP
INを形成するためには、
図8に示すように、造形データは、コマンドCOM1~COM21を含む。コマンドCOM21の(X11,Y2,Z1)の位置は、
図7に示す内部パスP
INの終点F2に相当する。
【0077】
なお、図示はしないが、造形データは、「Z」の値が変更されることにより、他の層Lにおいてパスを形成できる。また、造形データは、例えば、「E」の値が変更されることにより、造形材料の吐出量を変更できる。また、造形データは、外周パスPOUTを形成するためのコマンドを含む。また、造形データは、吐出部10のステージ20に対する速度に相当する情報を含んでいてもよい。
【0078】
1.2.7. ステップS7
次に、情報処理装置60は、
図4に示すように、造形データに基づいて三次元造形物の重心位置および重量を算出する処理を行う。なお、情報処理装置60は、指定情報に、重心位置情報が含まれ、重量情報が含まれていない場合は、重心位置を算出して、重量を算出しなくてもよい。また、情報処理装置60は、指定情報に、重量情報が含まれ、重心位
置情報が含まれていない場合は、重量を算出して、重心位置を算出しなくてもよい。
【0079】
1.2.8. ステップS8
次に、情報処理装置60は、ステップS7で算出した値を、表示部52に表示させる処理を行う。情報処理装置60は、例えば、算出した重心位置および重量を、表示部52に表示させる。
【0080】
1.2.9. ステップS9
次に、情報処理装置60は、算出した値と、指定情報において指定された値とが、所定値以上乖離しているか否か判定する処理を行う。判定の基準となる所定値は、例えば、ユーザーによって指定される。
【0081】
算出した値と指定された値とが所定値以上乖離していると判定した場合(
図4のステップS9で「YES」)、情報処理装置60は、処理をステップS5に戻す。そして、情報処理装置60は、算出した値と指定された値とが所定値以上乖離していないと判定するまで、ステップS5~S9を繰り返す。情報処理装置60は、1度生成した造形データを修正することで、ステップS5~S9を再度行ってもよいし、取得した指定情報に基づいて新たな造形データを生成することで、ステップS5~S9を再度行ってもよい。
【0082】
情報処理装置60は、ユーザーによる受付部50の操作によって送信された修正指示情報に基づいて、ステップS5~S10を再度行ってもよい。修正指示情報は、例えば、修正された重量分布情報を含む。ユーザーは、ステップS8で表示部52に表示された結果を確認して重量分布情報を修正し、受付部50の操作によって、修正された重量分布情報を情報処理装置60に送信してもよい。
【0083】
なお、情報処理装置60は、修正指示情報を取得することなく、算出した値と指定された値との差が小さくなるように、自動で造形データ生成条件を決定して、ステップS5~S9を再度行ってもよい。
【0084】
一方、算出した値と指定された値とが所定値以上乖離していないと判定した場合(
図4のステップS9で「NO」)、情報処理装置60は、処理を終了する。
【0085】
1.3. 制御部の処理
次に、制御部40の処理について、図面を参照しながら説明する。
図9は、制御部40の処理を説明するためフローチャートである。制御部40は、情報処理装置60が処理を終了すると、処理を開始する。
【0086】
1.3.1. ステップS10
制御部40は、
図9に示すように、生成した造形データに基づいて吐出部10および移動部30を制御して、ステージ20の堆積面22に、三次元造形物を構成する層を形成する処理を行う。
【0087】
具体的には、制御部40は、フラットスクリュー130とバレル140との間に供給された材料を可塑化して造形材料を生成させ、吐出部10のノズル160から造形材料を吐出させる。制御部40は、例えば、ステップS10の処理が終了するまで造形材料を生成させ続ける。
【0088】
ここで、
図10は、制御部40のステップS10の処理を説明するための断面図である。制御部40は、
図10に示すように、造形データに基づいて、移動部30を制御して吐出部10とステージ20との相対的な位置を変化させつつ、吐出部10を制御してノズル
160からステージ20に向けて造形材料を吐出させる。
【0089】
具体的には、ステップS10の処理が開始される前、すなわち、1層目の層T1の形成が開始される前では、ノズル160は、ステージ20の-X軸方向の端部よりも-X軸方向の初期位置に配置されている。ステップS10の処理が開始されると、制御部40は、移動部30を制御することによって、例えば、ステージ20に対してノズル160を+X軸方向に相対移動させる。ノズル160がステージ20上を通過する際、ノズル160から造形材料が吐出される。これにより、層T1が形成される。
図10では、5層目の層T5までを図示している。
【0090】
1.3.2. ステップS11
次に、制御部40は、
図9に示すように、造形データに基づいて、全ての層の形成が完了したか否か判定する判定処理を行う。
【0091】
全ての層の形成が完了していないと判定した場合(
図9のステップS11で「NO」)、制御部40は、処理をステップS10に戻す。そして、制御部40は、ステップS11において、全ての層の形成が完了したと判定するまで、ステップS10とステップS11とを繰り返す。
【0092】
一方、全ての層の形成が完了したと判定した場合(
図9のステップS11で「YES」)、制御部40は、処理を終了する。
【0093】
以上により、積層された複数の層からなる三次元造形物を造形できる。このように、本実施形態に係る三次元造形物の製造方法は、情報処理装置60および三次元造形装置100を用いて行われる。
【0094】
1.4. 作用効果
情報処理装置60は、三次元造形物の重心位置を指定する情報、および三次元造形物の重量を指定する情報のうちの少なくとも一方を含む指定情報を取得する取得部62と、指定情報に基づいて、吐出部10のステージ20に対する経路の情報、および経路における造形材料の吐出量の情報を含む造形データを生成するデータ生成部64と、を有する。制御部40は、造形データに基づいて吐出部10を制御して、三次元造形物を造形する処理を行う。そのため、情報処理装置60を用いる三次元造形物の製造方法では、三次元造形物の重心位置および重量の少なくとも一方を、所望のものに近づけることができる。これにより、ユーザーの利便性を向上できる。
【0095】
情報処理装置60が取得する指定情報は、三次元造形物の重量分布を指定する情報を含む。そのため、情報処理装置60を用いる三次元造形物の製造方法では、三次元造形物の重量分布を、所望のものに近づけることができる。
【0096】
情報処理装置60は、造形データに基づいて三次元造形物の重心位置および重量のうちの少なくとも一方を算出し、算出した値と、指定情報において指定された値とが、所定値以上乖離している場合、造形データを修正、または新たな造形データを生成する処理を行う。そのため、情報処理装置60を用いる三次元造形物の製造方法では、三次元造形物の重心位置および重量の少なくとも一方を、より所望のものに近づけることができる。
【0097】
情報処理装置60は、造形データに基づいて三次元造形物の重心位置および重量のうちの少なくとも一方を算出し、算出した値を表示部52に表示させる処理を含む。そのため、ユーザーは、算出した値を認識できる。
【0098】
情報処理装置60は、指定情報に基づいて、インフィルの充填率の条件、フィルパターンの条件、線幅の条件、積層ピッチの条件、前記造形材料の条件のうちの少なくとも1つを調整して、造形データ生成条件を決定する処理を行い、造形データを生成する処理では、決定された造形データ生成条件に基づいて、造形データを生成する。そのため、情報処理装置60を用いる三次元造形物の製造方法では、インフィルの充填率の条件、フィルパターンの条件、線幅の条件、積層ピッチの条件、造形材料の条件のうちの少なくとも1つを考慮して、造形データを生成できる。
【0099】
2. 情報処理装置の処理の変形例
次に、情報処理装置60の処理の変形例について、図面を参照しながら説明する。
図11は、情報処理装置60の処理の変形例を説明するためのフローチャートである。
図12~
図14は、情報処理装置60の処理の変形例で形成されるモデルMを説明するための図である。
【0100】
図11に示すステップS21~S24は、それぞれ、上述した
図4に示すステップS1~S4と、基本的に同じである。
【0101】
情報処理装置60は、
図11に示すように、ステップS25として、取得した形状データに基づいて、ステージ20に対して三次元造形物を、第1向きで配置させる場合と、第1向きと異なる第2向きで配置させる場合と、において、指定情報で指定された重心位置と、ステージ20と、の間の距離を比較する処理を行う。
【0102】
具体的には、情報処理装置60は、取得した形状データに基づいて、ステージ20の堆積面22に相当するステージ面M22に対して三次元造形物のモデルMを、
図12に示す第1向きで配置させる場合と、
図13に示す第2向きで配置させる場合と、
図14に示す第3向きで配置させる場合と、において、指定情報で指定された重心位置Gと、ステージ面M22と、の間の距離を比較する。
【0103】
図12~
図14に示す例では、モデルMは、四角推である。
図12に示す例では、四角推の底面がステージ面M22に接している。
図13に示す例では、四角推の側面がステージ面M22に接している。
図14に示す例では、四角推の頂点がステージ面M22に接している。
図13に示す重心位置Gとステージ面M22との間の距離D2は、
図12に示す重心位置Gとステージ面M22との間の距離D1、および
図14に示す重心位置Gとステージ面M22との間の距離D3よりも小さい。
【0104】
次に、情報処理装置60は、
図11に示すように、ステップS26として、ステップS25で比較した距離が最も小さい三次元造形物の向きの造形データ生成条件を決定する。上記の場合では、
図13に示すモデルMの向きの造形データ生成条件を決定する。そして、情報処理装置60は、ステップS27として、ステップS25で比較した距離が最も小さい三次元造形物の向きの造形データを生成する。その他のステップS26,S27の処理は、それぞれ、上述した
図4のステップS5,S6と、基本的に同じである。
【0105】
次に、情報処理装置60は、
図11に示すように、ステップS28~S30の処理を行う。ステップS28~S30は、それぞれ、上述した
図4に示すステップS7~S9と、基本的に同じである。
【0106】
なお、例えば、
図14に示すように、三次元造形物の姿勢が不安定になる場合、情報処理装置60は、図示しないサポート材を配置させるように、吐出部10および移動部30を制御してもよい。サポート材は、三次元造形物が倒れないように、三次元造形物をサポートする部材である。サポート材は、例えば、吐出部10から吐出される。
【0107】
情報処理装置60は、ステージ20に対して三次元造形物を、第1向きで配置させる場合と、第1向きと異なる第2向きで配置させる場合と、において、指定情報で指定された重心位置と、ステージ20と、の間の距離を比較する処理を含み、造形データを生成する処理では、距離が小さい方の向きの造形データを生成する。そのため、情報処理装置60を用いる三次元造形物の製造方法では、三次元造形物の重心位置より下方の部分が崩れる可能性を小さくすることができる。例えば、三次元造形物の重心位置と、ステージと、の間の距離が大きいと、重心位置近傍の重さによって、重心位置より下方の部分が崩れる可能性が高くなる。
【0108】
3. 三次元造形装置に貯留される材料
上述した材料貯留部110に貯留される材料は、ABS樹脂であったが、これに限定されない。
【0109】
材料貯留部110に貯留される材料としては、熱可塑性を有する材料、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料とした材料を挙げることができる。ここで、「主材料」とは、三次元造形装置で造形される造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、造形物において50質量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0110】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、汎用エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
【0111】
汎用エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM )、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0112】
スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が挙げられる。
【0113】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、可塑化部120において、フラットスクリュー130の回転と、ヒーター150の加熱と、によって可塑化されて溶融した状態に転化される。また、そのように生成された造形材料は、ノズル160から堆積された後、温度の低下によって硬化する。熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル160から吐出されることが望ましい。
【0114】
可塑化部120では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、金属材料を粉末状にした粉末材料に、造形材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、可塑化部120に投入されることが望ましい。
【0115】
金属材料としては、例えば、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)や
クロム(Cr)、アルミニウム (Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金、また、マルエージング鋼、ステンレス鋼、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金が挙げられる。
【0116】
可塑化部120においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックなどが挙げられる。
【0117】
材料貯留部110に貯留される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上述の熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、可塑化部120において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0118】
材料貯留部110に貯留される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、溶剤を添加することもできる。溶剤としては、例えば、水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等が挙げられる。
【0119】
その他に、材料貯留部110に貯留される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、バインダーが添加されていてもよい。バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂またはPLA、PA、PPS、PEEK、あるいはその他の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0120】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0121】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0122】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0123】
三次元造形物の製造方法の一態様は、
吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて層を積層させることで、三次元造形
物を製造する三次元造形物の製造方法であって、
前記三次元造形物の重心位置を指定する情報、および前記三次元造形物の重量を指定する情報のうちの少なくとも一方を含む指定情報を取得する工程と、
前記指定情報に基づいて、前記吐出部の前記ステージに対する経路の情報、および前記経路における前記造形材料の吐出量の情報を含む造形データを生成する工程と、
前記造形データに基づいて前記吐出部を制御して、前記三次元造形物を造形する工程と、
を含む。
【0124】
この三次元造形物の製造方法によれば、三次元造形物の重心位置および重量の少なくとも一方を、所望のものに近づけることができる。
【0125】
三次元造形物の製造方法の一態様において、
前記指定情報は、前記三次元造形物の重量分布を指定する情報を含んでもよい。
【0126】
この三次元造形物の製造方法によれば、三次元造形物の重量分布を、所望のものに近づけることができる。
【0127】
三次元造形物の製造方法の一態様において、
前記造形データに基づいて前記三次元造形物の重心位置および重量のうちの少なくとも一方を算出し、算出した値と、前記指定情報において指定された値とが、所定値以上乖離している場合、前記造形データを修正、または新たな造形データを生成する工程を含んでもよい。
【0128】
この三次元造形物の製造方法によれば、三次元造形物の重心位置および重量の少なくとも一方を、より所望のものに近づけることができる。
【0129】
三次元造形物の製造方法の一態様において、
前記造形データに基づいて前記三次元造形物の重心位置および重量のうちの少なくとも一方を算出し、算出した値を表示部に表示させる工程を含んでもよい。
【0130】
この三次元造形物の製造方法によれば、ユーザーは、算出した値を認識できる。
【0131】
三次元造形物の製造方法の一態様において、
前記ステージに対して前記三次元造形物を、第1向きで配置させる場合と、前記第1向きと異なる第2向きで配置させる場合と、において、前記指定情報で指定された重心位置と、前記ステージと、の間の距離を比較する工程を含み、
前記造形データを生成する工程では、前記距離が小さい方の向きの前記造形データを生成してもよい。
【0132】
この三次元造形物の製造方法によれば、三次元造形物の重心位置より下方の部分が崩れる可能性を小さくすることができる。
【0133】
三次元造形物の製造方法の一態様において、
前記指定情報に基づいて、インフィルの充填率の条件、フィルパターンの条件、線幅の条件、積層ピッチの条件、および前記造形材料の条件のうちの少なくとも1つを調整して、造形データ生成条件を決定する工程を含み、
前記造形データを生成する工程では、前記造形データ生成条件に基づいて、前記造形データを生成してもよい。
【0134】
この三次元造形物の製造方法によれば、インフィルの充填率の条件、フィルパターンの条件、線幅の条件、積層ピッチの条件、造形材料の条件のうちの少なくとも1つを考慮して、造形データを生成できる。
【0135】
情報処理装置の一態様は、
吐出部からステージに向けて造形材料を吐出させて層を積層させることで、三次元造形物を製造するための造形データを生成する情報処理装置であって、
前記三次元造形物の重心位置を指定する情報、および前記三次元造形物の重量を指定する情報のうちの少なくとも一方を含む指定情報を取得する取得部と、
前記指定情報に基づいて、前記吐出部の前記ステージに対する経路の情報、および前記経路における前記造形材料の吐出量の情報を含む前記造形データを生成するデータ生成部と、
を有する。
【0136】
この情報処理装置によれば、三次元造形物の重心位置および重量の少なくとも一方を、所望のものに近づけることができる。
【符号の説明】
【0137】
10…吐出部、20…ステージ、22…堆積面、30…移動部、32…第1電動アクチュエーター、34…第2電動アクチュエーター、36…第3電動アクチュエーター、40…制御部、50…受付部、52…表示部、60…情報処理装置、100…三次元造形装置、110…材料貯留部、112…供給路、120…可塑化部、122…スクリューケース、124…駆動モーター、126…シャフト、130…フラットスクリュー、131…上面、132…溝形成面、133…側面、134…第1溝、135…中央部、136…接続部、137…材料導入部、140…バレル、142…対向面、144…第2溝、146…連通孔、150…ヒーター、160…ノズル、162…ノズル流路、1000…三次元造形システム