IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

特開2024-90658農作業支援装置、農作業支援システム、農業機械、走行ライン作成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090658
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】農作業支援装置、農作業支援システム、農業機械、走行ライン作成方法
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A01B69/00 301
A01B69/00 303M
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206695
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菊地 良太
(72)【発明者】
【氏名】玉谷 健二
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA02
2B043BA07
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB03
2B043BB06
2B043BB07
2B043BB14
2B043DA01
2B043DA04
2B043DA17
2B043DC01
2B043DC03
2B043EA01
2B043EA12
2B043EA32
2B043EA37
2B043EB05
2B043EB16
2B043EB17
2B043EB18
2B043EC12
2B043EC14
2B043EC16
2B043ED12
2B043EE01
2B043EE02
2B043EE05
2B043EE06
(57)【要約】
【課題】圃場で作業装置により農作業を行うために農業機械を走行させる走行ラインを適切に作成する。
【解決手段】農作業支援装置は、圃場情報、作業装置の装置情報、及び圃場で農業機械を走行させながら作業装置により行う農作業の作業条件が入力される入力部と、圃場情報と装置情報と作業条件に基づいて作業装置により農作業を行うために農業機械を走行させる走行ラインを圃場マップに複数作成する制御部と、を備え、制御部は、圃場情報から複数の圃場辺を特定し、作業条件から農作業の作業方向と枕地幅を特定し、作業方向に対して平行に圃場マップに作成した複数の走行ラインの端点のそれぞれを、複数の圃場辺と枕地幅とに基づいて、それぞれの走行ラインの短縮方向にシフトさせる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を示す圃場情報、農業機械に連結された作業装置を示す装置情報、及び前記圃場で前記農業機械を走行させながら前記作業装置により行う農作業の作業条件がそれぞれ入力される入力部と、
前記圃場情報と前記装置情報と前記作業条件とに基づいて、前記作業装置により前記農作業を行うために前記農業機械を走行させる走行ラインを、前記圃場を示す圃場マップに複数作成する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記圃場情報から前記圃場の輪郭を示す複数の圃場辺を特定し、
前記作業条件から前記農作業の作業方向及び前記圃場の端部に確保する枕地幅を特定し、
前記作業方向に対して平行に前記圃場マップに作成した複数の前記走行ラインの端点のそれぞれを、複数の前記圃場辺と前記枕地幅とに基づいて、それぞれの前記走行ラインの短縮方向にシフトさせる農作業支援装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記端点のシフト前に、複数の前記走行ラインのそれぞれと、前記圃場マップに示される複数の前記圃場辺のうちの複数の前記走行ラインのそれぞれが交差する交差圃場辺との成す角度と、前記枕地幅とに基づいて、複数の前記走行ラインのそれぞれに対応するシフト量を算出し、
複数の前記走行ラインの前記端点のそれぞれを前記短縮方向に対応する前記シフト量だけシフトさせる請求項1に記載の農作業支援装置。
【請求項3】
前記制御部は、
複数の前記走行ラインの前記端点のそれぞれを前記短縮方向にシフトさせることで、複数の前記走行ラインのそれぞれを短縮し、
シフト後の前記端点と前記交差圃場辺との間に枕地を設ける請求項2に記載の農作業支援装置。
【請求項4】
前記制御部は、複数の前記走行ラインのそれぞれと前記交差圃場辺に対する垂線との成す角度(θ)と、前記枕地幅(Wp)と、次式(1)とにより、
Xs=Wp/cosθ (1)
複数の前記走行ラインのそれぞれに対応する前記シフト量(Xs)を算出する請求項2に記載の農作業支援装置。
【請求項5】
前記制御部は、複数の前記走行ラインのうち、長さが所定長より短い走行ラインを削除する請求項1に記載の農作業支援装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記農業機械を走行させながら前記作業装置により前記農作業を行うことが可能な最短作業距離を特定し、
前記シフト量の算出前に、複数の前記走行ラインのうち、長さが前記最短作業距離と前記枕地幅との合計値より短い走行ラインを削除する請求項2に記載の農作業支援装置。
【請求項7】
前記制御部は、複数の前記圃場辺のそれぞれから、シフト後の前記端点までの距離が所定距離以上になるように、シフト後の前記端点を対応する前記走行ラインの前記短縮方向にさらにシフトさせる請求項2に記載の農作業支援装置。
【請求項8】
前記制御部は、複数の前記圃場辺のうち、前記端点のシフト前に少なくともいずれかの前記走行ラインが交差しなかった非交差圃場辺から、シフト後の前記端点までの距離が、
第1所定距離以上になるように、シフト後の前記端点を対応する前記走行ラインの前記短縮方向にさらにシフトさせる請求項2に記載の農作業支援装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記装置情報から前記作業装置の作業幅を特定し、
前記端点をシフトさせた後の複数の前記走行ラインと前記作業幅とに基づいて、前記農業機械を走行させて前記作業装置により前記農作業を行うことが可能な中央作業領域を算出し、
複数の前記圃場辺のうち、前記端点のシフト前に少なくともいずれかの前記走行ラインが交差しなかった非交差圃場辺から、前記中央作業領域までの距離が、第2所定距離以上になるように、対応する前記走行ラインの前記端点を前記短縮方向にさらにシフトさせる請求項2に記載の農作業支援装置。
【請求項10】
前記制御部は、複数の前記圃場辺のうち、前記端点のシフト前に少なくともいずれかの前記走行ラインが交差していた交差圃場辺から、シフト後の前記端点までの距離が、第3所定距離以上になるように、シフト後の前記端点を対応する前記走行ラインの前記短縮方向にさらにシフトさせる請求項2に記載の農作業支援装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記装置情報から前記作業装置の作業幅を特定し、
前記作業条件からオフセット距離を特定し、
複数の前記圃場辺のうち、前記作業方向に対して平行な圃場辺と、当該平行な圃場辺から最も離れた他の複数の前記圃場辺の交点とを、前記圃場マップの内側に前記オフセット距離だけそれぞれオフセットし、
当該オフセットした前記圃場辺及び前記交点と、前記作業方向に対して平行でない前記圃場辺とで囲まれる対象領域に、複数の前記走行ラインを前記作業方向と平行に前記作業幅に応じた間隔で作成する請求項1に記載の農作業支援装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の農作業支援装置と、
前記農業機械と、
前記農作業支援装置により複数の前記走行ラインが作成された前記圃場マップを表示する表示装置と、を含む農作業支援システム。
【請求項13】
前記農業機械に連結された前記作業装置を含み、
前記農作業支援装置は、前記端点がシフトされた複数の前記走行ラインを前記農業機械に出力する出力部を備え、
前記農業機械は、
走行可能な車体と、
前記車体の位置を検出する位置検出装置と、
複数の前記走行ラインのそれぞれに沿って前記車体の操舵と走行のいずれかを自動で行いながら、前記作業装置により前記圃場に対して前記農作業を行う制御装置と、を有する請求項12に記載の農作業支援システム。
【請求項14】
請求項1~11のいずれかに記載の農作業支援装置と、
走行可能で且つ前記作業装置を連結可能な車体と、
前記車体の位置を検出する位置検出装置と、
前記農作業支援装置により複数の前記走行ラインが作成された後に出力された前記圃場マップを表示する表示装置と、
複数の前記走行ラインのそれぞれに沿って前記車体の操舵と走行のいずれかを自動で行いながら、前記作業装置により前記圃場に対して前記農作業を行う制御装置と、を備えた
農業機械。
【請求項15】
圃場で農業機械に連結された作業装置により農作業を行うために前記農業機械を走行させる走行ラインを、前記圃場を示す圃場マップに作成する走行ライン作成方法であって、
農作業支援装置の入力部により、前記圃場を示す圃場情報、前記作業装置を示す装置情報、及び前記農作業の作業条件がそれぞれ入力されるステップと、
前記農作業支援装置の制御部が、前記圃場情報から前記圃場の輪郭を示す複数の圃場辺を特定するステップと、
前記制御部が、前記作業条件から前記農作業の作業方向及び前記圃場の端部に確保する枕地幅を特定するステップと、
前記制御部が、前記作業方向に対して平行に前記圃場マップに作成した複数の前記走行ラインの端点のそれぞれを、複数の前記圃場辺と前記枕地幅とに基づいて、それぞれの前記走行ラインの短縮方向にシフトさせるステップと、を備えた走行ライン作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場で農業機械を走行させながら農業機械に連結された作業装置により農作業を行うことを支援する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、圃場で作業装置により農作業を行うために、作業装置が連結された農業機械を自立走行させる走行ライン(作業経路)を作成する技術が開示されている。特許文献1に開示された農業用作業車両では、オペレータが圃場の中央に作業領域を指定すると、制御部に備わる作業経路作成部が、作業領域に複数の走行ライン(直線状の農作業経路)を適宜の間隔をあけて平行で且つ作業領域を通過するように作成する。圃場の作業領域以外の領域は、枕地に設定される(段落0045-0046、図6など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-135995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オペレータが圃場、農業機械、及び作業装置の大きさなどを考慮して、圃場に作業領域と枕地とを指定するのは困難である。特に、矩形状のような単純な形状の輪郭を有する圃場より、矩形状以外の複雑な形状の輪郭を有する圃場の方が、作業領域と枕地とを指定するのが困難である。作業領域と枕地とが圃場に適切に指定されなかった場合、走行ラインの長さが不適切になってしまう。このため、例えば、長すぎる走行ラインに沿って農業機械を走行させながら作業装置により農作業を行った場合には、農業機械又は作業装置が圃場から食み出すおそれがある。また、短すぎる走行ラインに沿って農業機械を走行させながら作業装置により農作業を行った場合には、農作業を行うことができた箇所が狭くなり、圃場で栽培する作物の収穫量が減少するなどの弊害を招くおそれがある。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑み、圃場で作業装置により農作業を行うために農業機械を走行させる走行ラインを適切に作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
【0007】
本発明の農作業支援装置は、圃場を示す圃場情報、農業機械に連結された作業装置を示す装置情報、及び前記圃場で前記農業機械を走行させながら前記作業装置により行う農作業の作業条件がそれぞれ入力される入力部と、前記圃場情報と前記装置情報と前記作業条件とに基づいて、前記作業装置により前記農作業を行うために前記農業機械を走行させる走行ラインを、前記圃場を示す圃場マップに複数作成する制御部と、を備え、前記制御部は、前記圃場情報から前記圃場の輪郭を示す複数の圃場辺を特定し、前記作業条件から前記農作業の作業方向及び前記圃場の端部に確保する枕地幅を特定し、前記作業方向に対して平行に前記圃場マップに作成した複数の前記走行ラインの端点のそれぞれを、複数の前記圃場辺と前記枕地幅とに基づいて、それぞれの前記走行ラインの短縮方向にシフトさせる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、圃場で作業装置により農作業を行うために農業機械を走行させる走行ラインを適切に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】農作業支援システムの構成図である。
図2】作業選択画面を示す図である。
図3】作業装置設定確認画面を示す図である。
図4】圃場選択画面を示す図である。
図5A】ルート作成画面を示す図である。
図5B】走行ライン作成後のルート作成画面を示す図である。
図5C】走行ルート作成後のルート作成画面を示す図である。
図6】走行制御画面を示す図である。
図7A】走行ラインの作成手順を示すフローチャートである。
図7B】走行ラインの作成手順を示すフローチャートである。
図8A】矩形状の圃場マップのオフセット状態を示す図である。
図8B】矩形状の圃場マップの最初の走行ラインを示す図である。
図8C】矩形状の圃場マップの走行ラインを示す図である。
図8D】矩形状の圃場マップの確定後の走行ラインを示す図である。
図8E】矩形状の圃場マップの走行ラインを示す図である。
図9A】イレギュラな形状の圃場マップのオフセット状態を示す図である。
図9B】イレギュラな形状の圃場マップの走行ラインを示す図である。
図9C】イレギュラな形状の圃場マップから短い走行ラインを削除した状態を示す図である。
図9D】イレギュラな形状の圃場マップのシフト後の走行ラインを示す図である。
図9E】イレギュラな形状の圃場マップの長い走行ラインを短縮した状態を示す図である。
図9F】イレギュラな形状の圃場マップの長い走行ラインを短縮した状態を示す図である。
図9G】イレギュラな形状の圃場マップの確定後の走行ラインを示す図である。
図9H】イレギュラな形状の圃場マップの走行ラインを示す図である。
図10】他の形状の圃場マップの確定した走行ラインを示す図である。
図11】他の形状の圃場マップの確定した走行ラインを示す図である。
図12】農業機械の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図12は、農業機械1の側面図である。農業機械1はトラクタから構成されている。なお、本発明の農業機械は、トラクタに限定されず、例えば田植機又はコンバインなどの走行可能な他の農業機械により構成されてもよい。
【0012】
農業機械1は、車体3、原動機4、変速装置5、及び走行装置7を備えている。走行装置7の前輪7Fは、タイヤ型であってもよいし、クローラ型であってもよい。また、走行装置7の後輪7Rも、タイヤ型であってもよいし、クローラ型であってもよい。原動機4は、ディーゼルエンジン或いは電動モータなどから構成されている。本実施形態では、原動機4はディーゼルエンジンにより構成されている。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切り替え可能であると共に、走行装置7の前進と後進を切り替え可能である。原動機4の駆動力が変速装置5により走行装置7に伝達されて、走行装置7が駆動することで、車体3が前後に走行する。なお、図12において、左側が農業機械1(車体3)の前方であり、右側が農業機械1の後方である。また、図12に向かって、奥側が農業
機械1の右方であり、手前側が農業機械1の左方である。
【0013】
車体3にはキャビン9が設けられている。キャビン9の内部には、運転席10が設けられている。車体3の後部には、3点リンク機構などで構成された昇降装置8が設けられている。昇降装置8には、農作業を行うための作業装置2が連結可能である。詳しくは、昇降装置8に設けられた連結部8g、8hに、作業装置2を連結可能である。作業装置2を連結部8g、8hに連結することで、作業装置2と車体3(農業機械1)とが連結されて、車体3が作業装置2を牽引可能になる。
【0014】
作業装置2は、圃場で作物を露地栽培するための農作業を行う。作業装置2は、例えば圃場に対して耕うん作業を行う耕うん装置(ロータリ耕うん機)、肥料若しくは農薬などを散布する散布装置、培土作業を行う培土装置(畝立装置ともいう。)、作物の種などを播く播種装置、苗を移植する移植装置、或いは作物を収穫する収穫装置などから構成されている。
【0015】
図1は、農作業支援システム100の構成図である。農作業支援システム100には、農業機械1及び農作業支援装置50が含まれている。農作業支援システム100及び農作業支援装置50は、圃場で農業機械1を走行させながら作業装置2により農作業を行うことを支援する。
【0016】
農業機械1は、制御装置60、操作装置62、原動機4、変速装置5、制動装置6、操舵装置29、昇降装置8、位置検出装置40、警報装置63、及び状態検出装置64を備えている。また、農業機械1には、LAN又はCANなどの車載ネットワークN1が構築されている。制御装置60、操作装置62、位置検出装置40、警報装置63、及び状態検出装置64は、車載ネットワークN1に接続されている。農業機械1に備わるこれらの各部は、農作業支援システム100に含まれる。
【0017】
制御装置60は、CPUと内部メモリとを含んだ電子制御装置(ECU)から構成されている。制御装置60の内部メモリには、揮発性メモリと不揮発性メモリとが含まれている。制御装置60は、内部メモリに記憶されたソフトウェアプログラムと制御データとに基づいて、農業機械1の各部の動作を制御する。制御装置60は、農業機械1の走行と作業装置2の動作とを制御するコントローラである。操作装置62は、運転席10に着座した運転者又は農業機械1の近傍にいる作業者などのオペレータが操作可能なスイッチ、レバー、ペダル、及びその他のキーなどから構成されている。
【0018】
原動機4(エンジン)は、制御装置60により駆動、停止、及び回転数を制御される。変速装置5は制御弁37に接続されている。制御弁37は、制御装置60から送信される制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁37には、油圧ポンプ33から吐出された作動油が供給される。制御弁37は、図1では1つのブロックで示しているが、変速装置5に設けられた油圧クラッチ又は油圧シリンダなどの油圧機器の数に応じて適宜数設けられている。
【0019】
制動装置6は制御弁38に接続されている。制御弁38は、制御装置60から送信される制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁38には、油圧ポンプ33から吐出された作動油が供給される。制御装置60は、制御弁38の切り替え位置及び開度を電気的に制御することにより、制動装置6を作動させて、車体3にブレーキをかける。
【0020】
制御装置60は、制御弁37の切り替え位置(開度)を電気的に制御して、変速装置5の駆動を制御する。変速装置5が原動機4の駆動力を走行装置7に伝達することで、走行装置7が作動して、車体3を前後に走行させる。また、例えば作業装置2が対地作業を行
う場合などに、変速装置5は、原動機4の駆動力を作業装置2に伝達する。これにより、作業装置2の作動力が大きくなる。
【0021】
また、制御装置60は、車載ネットワークN1を経由して作業装置2と通信する。具体的には、作業装置2は、制御部と通信部とを備えている(図示省略)。制御装置60は、車載ネットワークN1を経由して作業装置2に作業指令を送信する。作業装置2の制御部は、当該作業指令を通信部により受信すると、当該作業指令に基づいて作業装置2の各部の動作を制御して、農作業(対地作業)を行う。また、作業装置2の制御部は、作業状態などを示す情報又はデータを通信部により車載ネットワークN1を経由して制御装置60に送信する。制御装置60は、作業装置2から車載ネットワークN1を経由して受信した情報又はデータに基づいて、作業装置2の作業状態などを検出する。
【0022】
なお、制御部及び通信部を備えていない作業装置2もある。この種の作業装置2に対して、制御装置60は、車載ネットワークN1を経由して通信を行わないが、後述するように昇降装置8により作業装置2を昇降させて、作業装置2の位置を変化させることにより、作業装置2の動作を制御し、且つ作業装置2の作業状態などを検出する。
【0023】
操舵装置29は、ハンドル(ステアリングホイール)30、操舵軸(回転軸)31、及び補助機構(パワーステアリング機構)32を有している。ハンドル30は、キャビン9(図20)の内部に設けられている。操舵軸31は、ハンドル30の回転に伴って回転する。補助機構32は、ハンドル30による操舵を補助する。
【0024】
補助機構32には、制御弁34とステアリングシリンダ35とが含まれている。制御弁34は、制御装置60から送信される制御信号に基づいて作動する電磁弁である。詳しくは、制御弁34は、スプールなどの移動によって切り替え可能な3位置切替弁から構成されている。制御弁34には、油圧ポンプ33から吐出された作動油が供給される。制御装置60は、制御弁34の切り替え位置及び開度を電気的に制御することにより、ステアリングシリンダ35に供給する油圧を調整して、ステアリングシリンダ35を伸縮させる。ステアリングシリンダ35は、前輪7Fの向きを変えるナックルアーム39に接続されている。
【0025】
制御弁34は、操舵軸31の操舵によっても切り替え可能である。具体的には、ハンドル30を操作することで、当該操作状態に応じて操舵軸31が回転して、制御弁34の切り替え位置及び開度が切り替わる。ステアリングシリンダ35は、制御弁34の切り替え位置及び開度に応じて、車体3の左方又は右方に伸縮する。このステアリングシリンダ35の伸縮動作により、前輪7Fの操舵方向が変更される。なお、上述した操舵装置29は一例であり、上述した構成に限定されない。
【0026】
農業機械1の車体3は、ハンドル30の手動操作による手動操舵と、制御装置60による自動操舵とが可能である。また、操作装置62に備わるアクセル部材又はブレーキペダル(共に図示省略)の手動操作に応じて、変速装置5又は制動装置6が作動することで、車体3は走行及び停止が可能である。さらに、制御装置60による変速装置5と制動装置6の制御に応じて、車体3は、自動で走行及び停止が可能である。即ち、農業機械1では、オペレータが走行操作と操舵操作とを行う手動運転、制御装置60が走行と操舵とを自動で行う自動運転、及び制御装置60が操舵を自動で行い且つオペレータが走行操作を行うオートステア制御(自動操舵制御又は半自動運転とも言う。)がそれぞれ可能である。
【0027】
昇降装置8には、アクチュエータとして油圧シリンダが設けられている。当該油圧シリンダは、制御弁36と接続されている。制御弁36は、制御装置60から送信される制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁36には、油圧ポンプ33から吐出された
作動油が供給される。制御装置60は、制御弁36の切り替え位置又は開度を電気的に制御することにより、昇降装置8の油圧シリンダに供給する油圧を調整して、当該油圧シリンダを伸縮させる。昇降装置8の油圧シリンダが伸縮することにより、連結部8g、8h(図12)が上下に回動して、連結部8g、8hに連結された作業装置2が上下に昇降する。
【0028】
図1に示す位置検出装置40は、受信装置41と慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)42とを有している。受信装置41は、、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびきなどの衛星測位システム(測位衛星)から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻など)を受信する。位置検出装置40は、受信装置41により受信した衛星信号に基づいて、現在位置(例えば、緯度、経度)を検出する。即ち、位置検出装置40は、衛星測位システムにより、農業機械1(車体3)の位置を検出する測位装置である。慣性計測装置42は、加速度センサとジャイロセンサなどを有している。慣性計測装置42は、車体3のロール角、ピッチ角、ヨー角などを検出する。警報装置63は、車体3に設けられたブザー、スピーカ、又は警告灯などから構成されている。警報装置63は、音又は光により車体3の周囲に対して警報を発する。
【0029】
状態検出装置64は、農業機械1及び作業装置2の各部に設置されたセンサなどから構成されている。状態検出装置64は、センサなどからの出力信号に基づいて、農業機械1の変速装置5、制動装置6、走行装置7、昇降装置8、操舵装置29、及び操作装置62といった各部の動作状態(駆動及び停止の状態と、動作位置など)を検出する。また、状態検出装置64は、センサなどからの出力信号に基づいて、作業装置2の動作状態を検出する。
【0030】
また、状態検出装置64には、対象物検出部64aと、LiDARのようなレーザセンサと、超音波センサと、カメラなどが含まれている。レーザセンサと超音波センサとカメラなどは、車体3の前部、後部、及び左右側部に設置されている。対象物検出部64aは、レーザセンサ又は超音波センサからの出力信号から、農業機械1及び作業装置2の周囲の対象物の有無と、対象物までの距離などを検出する。また、対象物検出部64aは、カメラにより撮像された農業機械1と作業装置2の周囲の撮像画像から、農業機械1及び作業装置2の対象物の有無などを検出する。即ち、状態検出装置64は、レーザセンサ、超音波センサ、及びカメラなどにより、農業機械1の周囲の状態を検出する。
【0031】
農作業支援装置50は、例えば携帯型のタブレット端末装置などから構成されている。農作業支援装置50は、例えば農業機械1のキャビン9の内部に搭載され、農業機械1に対して着脱可能である。即ち、農業機械1は農作業支援装置50を備えている。また、農作業支援装置50は、農業機械1から離脱させることも可能である。
【0032】
農作業支援装置50には、制御部51、表示操作部52、記憶部53、及び通信部54が備わっている。制御部51は、農作業支援装置50のプロセッサであり、CPUと内部メモリとを含んでいる。制御部51の内部メモリには、揮発性メモリと不揮発性メモリとが含まれている。
【0033】
表示操作部52は、タッチパネルディスプレイから構成されていて、各種の情報を画面に表示する。オペレータが表示操作部52の表示画面に対して所定の操作を行うことにより、各種の情報又は指示が入力される。表示操作部52は、農作業支援装置50の表示装置、出力部(出力インタフェイス)、及び入力部(入力インタフェイス)である。即ち、表示操作部52は、ユーザインタフェイスである。表示操作部52に代えて、独立した表示装置、出力インタフェイス、及び入力インタフェイスが農作業支援装置50に設けられてもよい。
【0034】
記憶部53は、不揮発性のメモリなどから構成されている。記憶部53には、農業機械1の走行と作業を支援する情報又はデータが読み書き可能に記憶される。制御部51は、記憶部53又は内部メモリに記憶されたソフトウェアプログラムと制御データなどに基づいて、農作業支援装置50の各部を制御する。通信部54は、車載ネットワークN1に接続するための通信インタフェイスから構成されている。制御部51は、通信部54により車載ネットワークN1を経由して、制御装置60、操作装置62、位置検出装置40、警報装置63、状態検出装置64、及び作業装置2と通信する。また、通信部54は、インターネットなどを経由して、サーバなどの外部装置と通信可能である。通信部54は、農業機械1の制御装置60に対して情報、データ、及び指示を入出力(送受信)する出力部及び入力部である。
【0035】
圃場を示す圃場情報、農業機械1を示す機体情報、作業装置2を示す装置情報、及び圃場で農業機械1を走行させながら作業装置2により行う農作業の作業条件などが、表示操作部52又は通信部54により農作業支援装置50にそれぞれ入力されて、記憶部53又は制御部51の内部メモリに記憶される。制御部51は、少なくとも圃場情報と装置情報と作業条件に基づいて、作業装置2により農作業を行うために農業機械1を走行させる走行ラインを、圃場を示す圃場マップに複数作成する。また、制御部51は、圃場マップに作成した複数の走行ラインの端点のそれぞれを、圃場の輪郭を示す複数の圃場辺と、圃場の端部に確保する枕地の幅などに基づいて、それぞれの走行ラインの短縮方向にシフトさせる。即ち、制御部51は、圃場マップに一旦作成した複数の走行ラインをそれぞれ短縮させる。
【0036】
圃場情報には、圃場の識別情報(ID)、位置(座標)、輪郭、及び面積などの情報が含まれている。装置情報には、作業装置2の仕様(寸法、性能、識別情報などを含む)を示す情報が含まれている。作業条件には、農作業の種別、作業方向、枕地幅、及び圃場のオフセット距離などが含まれている。農業機械1の機体情報には、農業機械1の仕様(寸法、性能、識別情報などを含む)を示す情報が含まれている。農業機械1の機体情報は、制御装置60の内部に設けられたメモリにも記憶されている。
【0037】
制御部51は、圃場情報、装置情報、作業条件、及び走行ラインを示す情報などを、通信部54により農業機械1の制御装置60に送信する。制御装置60は、圃場情報、装置情報、作業条件、走行ライン、位置検出装置40により検出された農業機械1(車体3)の位置、及び状態検出装置64の検出結果などに基づいて、原動機4、変速装置5、制動装置6、操舵装置29、昇降装置8、及び作業装置2の駆動を制御し、農業機械1(車体3)の走行及び操舵を自動で行いながら、作業装置2により圃場に対して農作業(対地作業)を行う自動運転を実行する。
【0038】
また、制御装置60は、上記各情報に基づいて、農業機械1(車体3)の走行を手動に委ねて、農業機械1の操舵を自動で行いながら、作業装置2により圃場に対して農作業を行うオートステア運転も実行することが可能である。オートステア運転では、農業機械1の運転者が操作装置62(図1)に含まれるアクセル部材又はブレーキ部材を操作することで、当該操作に応じて車体3の走行速度が変更される。
【0039】
また、農業機械1は、手動運転によっても走行と操舵が可能であり、且つ手動運転による走行時に作業装置2により農作業を行うことが可能である。農業機械1の手動運転とは、運転者が操作装置62のアクセル部材又はブレーキ部材を操作することにより、車体3の走行速度を変更し、且つハンドル30(図1)を操作することにより、車体3の操舵を行うことである。
【0040】
図2図6は、農作業支援装置50の表示操作部52に表示される画面の一例を示す図である。本実施形態では、オペレータが、図2図5Bに表示操作部52の画面D3、D4、D5、D7により、作物を露地栽培(畑作)するための作業装置2を示す装置情報、圃場を示す圃場情報、及び農作業の作業条件を入力する。そして、農作業支援装置50の制御部51が、装置情報、圃場情報、及び作業条件などに基づいて、露地栽培用の農作業を作業装置2により行うために農業機械1を走行させる走行ラインを作成し、当該走行ラインに基づいて農業機械1を走行させたときの状態を表示操作部52の画面D8に表示する。
【0041】
オペレータが農作業支援装置50を起動させると、制御部51は、図示しないホーム画面を表示操作部52に表示させる。オペレータが表示操作部52によりホーム画面で所定の入力操作を行うことで、制御部51は、図2に示す作業選択画面D3を表示操作部52に表示させる。作業選択画面D3のデータと以降で説明する各画面のデータは、記憶部53に記憶されている。制御部51は、必要に応じて記憶部53からデータを読み出して、当該データに基づく画面を表示操作部52に表示させる。
【0042】
オペレータは作業選択画面D3で、農業機械1と作業装置2により行う農作業の種別を選択する。オペレータが作業キーB31~B35のいずれかを操作(タップ操作)することで、操作された作業キーB31~B35に対応する農作業が選択される。図2の例では、播種作業が選択された状態を示している。
【0043】
図2の作業選択画面D3には、作物の露地栽培用の農作業として、耕うん作業、播種作業、培土作業(畝立て作業ともいう)、防除作業、及び施肥作業が例示されているが、これらに限定しない。オペレータが矢印キーB41、B42を操作することで、制御部51は、図2に表示されていない移植作業及び収穫作業などの他の農作業を作業選択画面D3に表示させる。なお、播種作業及び移植作業は、圃場に作物の種子又は苗など(馬鈴薯の場合は種芋)を作付けする作付作業である。
【0044】
オペレータが作業選択画面D3で、作業キーB31~B35のいずれかを操作してから、次へキーB9を操作することで、制御部51は、操作された作業キーに対応する農作業が選択されたと判断し、当該選択された農作業を示す情報を内部メモリ又は記憶部53に記憶させる。また、制御部51は、図3に示す作業装置設定確認画面(以下、単に「装置設定画面」という)D4を表示操作部52に表示させる。なお、オペレータが戻るキーB8を操作することで、制御部51は、前の画面を表示操作部52に表示させる。(以降の画面D4、D5、D7も同様)
【0045】
オペレータは装置設定画面D4で、作業装置2の仕様を確認及び入力する。図3の例では、オペレータは装置設定画面D4で、作業装置2の識別情報、寸法情報、及びタイプを確認し、設定キーB37~B39を操作することで、作業装置2の寸法情報とタイプとをそれぞれ入力及び変更する。
【0046】
作業装置2の寸法情報には、作業装置2の全幅、作業幅、全長、及び作業位置が含まれている。作業装置2のタイプには、作業装置2を駆動させるための副変速機(図示省略)の速度段、昇降装置8による作業装置2の昇降の有無、及び農業機械1のPTO(Power take-off)との連動の有無が含まれている。
【0047】
なお、記憶部53には、図3に示した播種作業用の作業装置2以外の他の農作業用の作業装置2の装置情報も記憶されている。制御部51は、図2の作業選択画面D3で選択された農作業に応じて、当該農作業用の作業装置2を判断し、当該作業装置2の装置情報を記憶部53から読み出して、図3の装置設定画面D4に表示させる。また、記憶部53に
は、予め登録された1台以上の農業機械1の機体情報も記憶されている。
【0048】
オペレータが設定キーB37~B39のいずれかを操作した後、表示操作部52により作業装置2の寸法情報又はタイプを入力すると、制御部51は、当該入力内容に応じて、装置設定画面D4の表示内容を変更する。オペレータが装置設定画面D4の表示内容を確認して、次へキーB9を操作すると、制御部51は、装置設定画面D4に表示されている作業装置2の装置情報を内部メモリ又は記憶部53に記憶させ、図4に示す圃場選択画面D5を表示操作部52に表示させる。
【0049】
オペレータは圃場選択画面D5で、予め記憶部53に登録された1つ以上の圃場を示す圃場マップMP2のうち、いずれかの圃場マップMP2を選択する。オペレータがいずれかの圃場マップMP2を選択すると、制御部51は、選択された圃場マップMP2を他の圃場マップMP2とは異なる表示形態で表示させる。図4では、選択された圃場マップMP2が太線枠で囲われている。いずれかの圃場マップMP2が選択された状態で、オペレータが次へキーB9を選択すると、制御部51は、選択された圃場マップMP2を含む圃場情報を記憶部53から読み出して、当該圃場情報を内部メモリに記憶させ、図5Aに示すルート作成画面D7を表示操作部52に表示させる。
【0050】
ルート作成画面D7には、圃場選択画面D5で選択された圃場マップMP2、農業機械マークM1、各種入力欄、及びキーなどが表示されている。オペレータはルート作成画面D7で、作業条件を入力する。図5Aの例では、オペレータは、作業条件として、作業方向、枕地幅、及びオフセット距離を入力及び変更する。
【0051】
作業方向とは、圃場で農業機械1を直進で往復させながら作業装置2で作業を行う方向のことである。オペレータは、圃場(圃場マップMP2)の輪郭H1を構成する複数の圃場辺H1a~H1eとそれぞれ平行な方向のうち、いずれかの方向を作業方向として入力する。詳しくは、オペレータが作業方向の数値入力欄に、所定の数値(例えば、「1」、「2」、・・・)を入力することで、当該数値に対応する圃場辺が基準辺に指定され、当該基準辺に対して平行な方向が作業方向として入力される。図5Aに示す矩形状の圃場マップMP2では、圃場辺H1a~H1eのいずれかが基準辺に指定され、当該基準辺と平行な上下方向或いは左右方向が作業方向として入力可能である。例えば、オペレータが、ルート作成画面D7の作業方向の数値入力欄に数値「2」を入力することで、当該数値「2」に対応する圃場辺H1bが基準辺に指定され、当該基準辺H1bに対して平行な上下方向が作業方向として入力される。
【0052】
枕地幅とは、圃場の作業方向にある両端部に設ける枕地の幅(作業方向と平行な幅)のことである。オフセット距離とは、例えば農業機械1又は作業装置2が圃場から食み出さないように、圃場の作業方向に対して平行な圃場辺などを、後述するように圃場の内側にオフセットする距離のことである。
【0053】
オペレータはルート作成画面D7において、各設定項目の数値入力欄を選択して、プラスキーB45又はマイナスキーB46を操作することで、各数値入力欄に数値を入力する。オペレータが、ルート作成画面D7の各設定項目に数値を入力した後、ライン作成キーB13を操作すると、制御部51が、当該各設定項目の数値を内部メモリに記憶させる。そして、制御部51は、圃場で作業装置2により農作業を行うために、農業機械1を走行させる走行ラインL1を圃場マップMP2に作成する。
【0054】
図7A及び図7Bは、農作業支援装置50による走行ラインL1の作成手順を示すフローチャートである。図7A及び図7Bの各ステップは、制御部51により実行される。図8A図8Dは、矩形状の圃場マップへの走行ラインL1の作成過程を示す図である。図
9A~図9Gは、イレギュラな圃場マップへの走行ラインL1の作成過程を示す図である。
【0055】
前述したように、オペレータが、図5Aのルート作成画面D7で各設定項目に数値を入力した後、ライン作成キーB13を操作すると、制御部51は、各設定項目に入力された数値を内部メモリに一旦記憶させた後、内部メモリに記憶された圃場情報、作業装置2の装置情報、及び作業条件を読み込む(図7AのS1)。そして、制御部51は、圃場情報から圃場の輪郭H1を示す複数の圃場辺H1a~H1eを特定し、装置情報から作業装置2の作業幅を特定し、作業条件から作業方向と枕地幅とオフセット距離とを特定する(S2)。
【0056】
次に、制御部51は、作業方向とオフセット距離とに基づいて圃場マップMP2をオフセットして、圃場マップMP2内に対象領域C1を決定する(図7AのS3)。このとき、制御部51は、作業方向に対して平行な圃場辺と、当該平行な圃場辺から最も離れた他の複数の圃場辺の交点とを、圃場マップMP2の内側にオフセット距離だけそれぞれオフセットする。そして、制御部51は、当該オフセットした圃場辺及び交点と、作業方向に対して平行でない圃場辺とで囲まれる領域を、対象領域C1に決定する。
【0057】
具体的には、例えば図8Aに示すような矩形状の圃場マップMP2の場合、制御部51は、作業方向Vに対して平行な圃場辺H1b、H1dを、作業方向Vに対して垂直に圃場マップMP2の内側にオフセット距離Y1だけオフセットして、作業方向Vに対して平行なオフセット辺H2b、H2dを作成する。また、制御部51は、圃場辺H1b、H1dのそれぞれから最も離れた他の複数の圃場辺H1a~H1dの交点Q1、Q2、Q3、Q4を、作業方向Vに対して垂直に圃場マップMP2の内側にオフセット距離Y1だけオフセットして、作業方向Vに対して平行なオフセット辺H2b、H2dを作成する。このとき、交点Q1と交点Q3とが圃場辺H1b上にあり、交点Q2と交点Q4とが圃場辺H1d上にあるため、圃場辺H1b、H1dに対応するオフセット辺H2b、H2dと、交点Q1、Q2、Q3、Q4に対応するオフセット辺H2b、H2dと一致する。このため、制御部51は、複数のオフセット辺H2b、H2dと作業方向Vに対して平行でない複数の圃場辺H1a、H1cとで囲まれる領域を、対象領域C1に決定する。
【0058】
また、図9Aに示すようなイレギュラな形状(台形状)の圃場マップMP2の場合、制御部51は、作業方向Vに対して平行な圃場辺H1bを、作業方向Vに対して垂直に圃場マップMP2の内側にオフセット距離Y1だけオフセットして、作業方向Vに対して平行なオフセット辺H2bを作成する。また、制御部51は、基準辺である圃場辺H1bから最も離れた他の複数の圃場辺H1c、H1eの交点Q4を、作業方向Vに対して垂直に圃場マップMP2の内側にオフセット距離Y1だけオフセットして、作業方向Vに対して平行なオフセット辺H2eを作成する。そして、制御部51は、複数のオフセット辺H2e、H2eと作業方向Vに対して平行でない複数の圃場辺H1a、H1cとで囲まれる領域を、対象領域C1に決定する。
【0059】
なお、オペレータが、ルート作成画面D7(図5Aなど)でオフセット距離Y1の数値入力欄に「0」を入力した場合には、図7AのステップS3で制御部51が、作業方向Vと平行な圃場辺H1b、H1dをオフセット辺とみなし、圃場辺H1a~H1eで囲まれる圃場マップMP2の全体を対象領域C1に決定する。
【0060】
次に、制御部51は、圃場情報と装置情報と作業条件とに基づいて、対象領域C1に複数の走行ラインL1を作成する(図7AのS4)。このとき、制御部51は、例えば図8Bなどに示す矩形状の圃場の場合、一方のオフセット辺H2bから作業幅Waの半分の距離Wa/2だけ離れた対象領域C1内の該当位置に、作業方向Vと平行な1本の走行ライ
ンL1を、作業方向Vと平行でない複数の圃場辺H1a、H1cに亘って作成する。そして、制御部51は、当該1本の走行ラインL1を基準にして、図8Cに示すように作業方向Vと平行な複数の走行ラインL1を作業幅Waに応じた間隔で対象領域C1に圃場辺H1a、H1cに亘って作成する。作業幅Waに応じた間隔とは、作業幅Waと等しい間隔、或いは作業幅Waから所定の重なり代を減算した値と等しい間隔などのことである。
【0061】
図9Bなどに示すイレギュラな圃場の場合も、制御部51は、まず、オフセット辺H2bから作業幅Waの半分の距離Wa/2だけ離れた対象領域C1内の該当位置に、作業方向Vと平行な1本の走行ラインL1を、作業方向Vと平行でない複数の圃場辺H1a、H1cに亘って作成する。そして、制御部51は、当該1本の走行ラインL1を基準にして、作業方向Vと平行な複数の走行ラインL1aを作業幅Waに応じた間隔で対象領域C1に圃場辺H1cと圃場辺H1a又は圃場辺H1eとに亘って作成する。
【0062】
次に、制御部51は、複数の走行ラインL1の長さX1を算出する(図7AのS5)。そして、制御部51は、長さX1が所定長Xtより短い走行ラインL1を対象領域C1から削除する(S6)。所定長Xtは、例えば、農業機械1を走行させながら作業装置2により農作業を行うことが可能な最短作業距離Xwと、枕地幅Wpとの加算値(Xt=Xw+Wp)に設定されている。
【0063】
図8Cの例では、長さX1が所定長Xtより短い走行ラインL1が無いので、走行ラインL1は削除されない。図9Bの例では、右側から1本の走行ラインL1aの長さX1が所定長Xtより短いため、当該1本の走行ラインL1aが削除される(図9Cの状態)。
【0064】
なお、所定長Xtは、上記加算値(Xt=Xw+Wp)に限定されない。例えば所定長Xtは、上記加算値に、さらに所定の余裕値Xqを加算した値(Xt=Xw+Wp+Xq)に設定されていてもよい。また、上記以外の所定値が、所定長Xtに設定されてもよい。
【0065】
次に、制御部51は、複数の圃場辺H1a~H1eのうち、複数の走行ラインL1のそれぞれが交差する交差圃場辺を検出する(図7AのS7)。例えば図8Cの例では、作業方向Vと平行な圃場辺H1b、H1d以外の圃場辺H1a、H1cが交差圃場辺である。また、図9Cの例では、作業方向Vと平行な圃場辺H1b以外の圃場辺H1a、H1c、H1eが交差圃場辺である。なお、圃場辺H1a、H1c、H1eは、ある走行ラインL1に対しては交差圃場辺であるが、別の走行ラインL1に対しては非交差圃場辺となることもある。
【0066】
次に、制御部51は、複数の走行ラインL1のそれぞれと、交差圃場辺に対する垂線との成す角度を算出する(図7AのS8)。このとき、制御部51は、複数の走行ラインL1のそれぞれと、交差圃場辺との成す角度θaを算出し、それぞれの角度θaを90°から減算することにより、複数の走行ラインL1のそれぞれと交差圃場辺に対する垂線との成す角度θを求めてもよい(θ=90°-θa)。
【0067】
図8Cの例では、複数の走行ラインL1のそれぞれと交差圃場辺H1a、H1cとの成す角度が90°であるため(θa=90°)、複数の走行ラインL1のそれぞれと交差圃場辺H1a、H1cに対する垂線Lvとは平行であり、複数の走行ラインL1のそれぞれと垂線Lvとの成す角度θは、0°である(θ=0°)。図9Cの例では、複数の走行ラインL1のそれぞれと交差圃場辺H1a、H1c、H1eとの成す角度が鋭角であるため(0°<θa<90°)、複数の走行ラインL1のそれぞれと交差圃場辺H1a、H1cに対する垂線Lvとの成す角度θも鋭角である(0°<θ<90°)。
【0068】
次に、制御部51は、複数の走行ラインL1にそれぞれ対応する角度θと枕地幅Wpとに基づいて、複数の走行ラインL1のそれぞれに対応するシフト量Xsを算出する(図7AのS9)。このとき、制御部51は、複数の走行ラインL1にそれぞれ対応する角度θと、枕地幅Wpと、次式(1)とにより、複数の走行ラインL1のそれぞれに対応するシフト量Xsを算出する。
Xs=Wp/cosθ (1)
【0069】
図8Cの例では、複数の走行ラインL1のそれぞれと交差圃場辺H1a、H1cに対する垂線Lvとの成す角度θが0°であるため(θ=0°)、式(1)により算出された複数の走行ラインL1のシフト量Xsは、枕地幅Wpと同値になる(Xs=Wp)。図9Cの例では、複数の走行ラインL1のそれぞれと交差圃場辺H1a、H1c、H1eに対する垂線Lvとの成す角度θが鋭角であるため(0°<θ<90°)、式(1)により算出された複数の走行ラインL1のシフト量Xsは、枕地幅Wpより大きくなる(Xs=Wp/cosθ、Xs>Wp)。
【0070】
なお、前述したように、複数の走行ラインL1のそれぞれと交差圃場辺H1a、H1c、H1eに対する垂線Lvとの成す角度θは、複数の走行ラインL1のそれぞれと交差圃場辺H1a、H1c、H1eとの成す角度θaを90°から減算した値と同値である(θ=90°-θa)。このため、式(1)は、次の式(2)に展開される。
Xs=Wp/cos(90°-θa) (2)
【0071】
制御部51は、複数の走行ラインL1のそれぞれと交差圃場辺H1a、H1c、H1eとの成す角度θaと、枕地幅Wpと、式(2)とにより、複数の走行ラインL1のそれぞれに対応するシフト量Xsを算出してもよい。即ち、制御部51は、複数の走行ラインL1のそれぞれと交差圃場辺H1a、H1c、H1eとの成す角度θaと、枕地幅Wpとに基づいて、複数の走行ラインL1のそれぞれに対応するシフト量Xsを算出する。
【0072】
次に、制御部51は、複数の走行ラインL1の両方の端点P1、P2のそれぞれを、複数の走行ラインL1の短縮方向に対応するシフト量Xsだけシフトさせる(図7AのS10)。これにより、図8C及び図8Dに示す矩形状の圃場マップMP2では、複数の走行ラインL1のそれぞれの両端点P1、P2が交差圃場辺H1a、H1cから離間して、複数の走行ラインL1のそれぞれが短縮した状態となる(図8Dの状態)。また、図9C及び図9Dに示す台形状の圃場マップMP2では、複数の走行ラインL1のそれぞれの両方の端点P1、P2が交差圃場辺H1a、H1c、H1eから離間して、複数の走行ラインL1のそれぞれが短縮した状態となる(図9Dの状態)。
【0073】
次に、制御部51は、複数の圃場辺H1a~H1eのうち、複数の走行ラインL1の端点P1、P2のシフト前に、複数の走行ラインL1がそれぞれ交差しなかった非交差圃場辺から、シフト後の端点P1、P2までの距離X2が所定距離(第1所定距離)Xuより短い走行ラインL1を検出する(図7BのS11)。例えば、枕地幅Wpがオフセット距離Y1より大きい場合、所定距離Xuは、枕地幅Wp以下で且つオフセット距離Y1以上の値に設定されていてもよい(Y1≦Xu≦Wp)。
【0074】
図8C及び図8Dの例では、端点P1、P2のシフト前(図8C)に、複数の走行ラインL1がそれぞれ交差しなかった非交差圃場辺H1b、H1dから、シフト後(図8D)の端点P1、P2までの距離X2が所定距離Xuより短い走行ラインL1が無いので(X2≧Xu)、制御部51は、複数の走行ラインL1を保持する。なお、図8Dなどに示すように、複数の走行ラインL1と全ての非交差圃場辺H1b、H1dとが平行な場合、制御部51は、図7BのステップS11、S12を省略してもよい。
【0075】
対して、図9C及び図9Dの例では、端点P1、P2のシフト前(図9C)に、複数の走行ラインL1がそれぞれ交差しなかった非交差圃場辺H1eから、シフト後(図9D)の端点P1までの距離X2が所定距離Xuより短い走行ラインL1bがある(X2<Xu)。このため、制御部51は、該当する走行ラインL1bの端点P1を、非交差圃場辺H1eから所定距離Xu離れた位置まで走行ラインL1bの短縮方向にさらにシフトさせる(図7BのS12、図9Eの走行ラインL1b)。即ち、制御部51は、距離X2が所定距離Xu以上になるように、シフト後の端点P1を対応する走行ラインL1bの短縮方向にさらにシフトさせる。これにより、走行ラインL1bがさらに短縮した状態となる。なお、走行ラインL1bの端点P1の移動先である非交差圃場辺H1eから所定距離Xuだけ離れた位置が、走行ラインL1b上に無い場合、制御部51は走行ラインL1bを削除してもよい。図8Dなどの矩形状の圃場マップMP2の場合も同様である。
【0076】
また、他の例として、制御部51は、図7BのステップS11、S12に代えて、図9Hに示すように端点P1、P2をシフト量Xsだけシフトさせた後の複数の走行ラインL1と、作業幅Waとに基づいて、農業機械1を走行させて作業装置2により農作業を行うことが可能な中央作業領域C2を算出し、且つ非交差圃場辺H1b、H1eから、中央作業領域C2までの距離X2aを算出してもよい。そして、制御部51は、非交差圃場辺H1b、H1eから中央作業領域C2までの距離X2aが、所定距離(第2所定距離)Xzより短い箇所がある場合、距離X2aが所定距離Xz以上になるように、当該箇所に最も近い対応する走行ラインL1の端点P1を短縮方向にさらにシフトさせてもよい。
【0077】
図9Hの例では、走行ラインL1bの近傍箇所で非交差圃場辺H1eから中央作業領域C2までの距離X2aが所定距離Xzより短いので、制御部51は、当該距離X2aが所定距離Xz以上になるように、最も近い対応する走行ラインL1の端点P1を短縮方向にさらにシフトさせる(図9Hでは、シフト後の端点P1を白丸で示している)。所定距離Xzは、例えば枕地幅Wp以下で且つオフセット距離Y1以上の値に設定されていてもよい(Y1≦Xz≦Wp)。
【0078】
また、矩形状の圃場マップMP2でも、制御部51は、図8Eに示すように、非交差圃場辺H1b、H1dから中央作業領域C2までの距離X2aが、所定距離(第2所定距離)Xzより短い箇所がある場合、距離X2aが所定距離Xz以上になるように、当該箇所に最も近い対応する走行ラインL1の端点P1を短縮方向にさらにシフトさせてもよい。
【0079】
また、制御部51は、複数の圃場辺H1a~H1eのうち、複数の走行ラインL1の端点P1、P2のシフト前に、複数の走行ラインL1がそれぞれ交差していた交差圃場辺から、シフト後の端点P1、P2までの距離X3が所定距離(第3所定距離)Xvより短い走行ラインL1を検出する(図7BのS13)。所定距離Xvは、例えば枕地幅Wp以下で且つオフセット距離Y1以上の値に設定されていてもよい(Y1≦Xv≦Wp)。また、所定距離Xv及びオフセット距離Y1は、枕地幅Wpより短い距離に設定されている(Xv、Y1<Wp)。他の例として、オフセット距離Y1は、枕地幅Wpと同値に設定されていてもよい(Y1=Wp)。
【0080】
図8C及び図8Dの例では、端点P1、P2のシフト前(図8Cの状態)に、複数の走行ラインL1がそれぞれ交差していた交差圃場辺H1a、H1cから、シフト後(図8Dの状態)の端点P1、P2までの距離X3が所定距離Xvより短い走行ラインL1が無いので(X3≧Xv)、制御部51は、複数の走行ラインL1を保持する。なお、制御部51は、図8Dなどに示すように、複数の走行ラインL1と全ての交差圃場辺H1a、H1cとが垂直な場合、図7BのステップS13、S14を省略してもよい。
【0081】
対して、図9E及び図9Fの例では、端点P1、P2のシフト前に、いずれかの走行ラ
インL1が交差していた交差圃場辺H1eから、シフト後の端点P1までの距離X3が所定距離Xvより短い走行ラインL1cがある。このため、制御部51は、走行ラインL1cの端点P1を、交差圃場辺H1eから所定距離Xv離れた位置まで走行ラインL1cの短縮方向にさらにシフトさせる(図7BのS14、図9Fの走行ラインL1c)。即ち、制御部51は、距離X3が所定距離Xv以上になるように、シフト後の端点P1を対応する走行ラインL1cの短縮方向にさらにシフトさせる。これにより、走行ラインL1cがさらに短縮した状態となる。
【0082】
次に、制御部51は、複数の走行ラインL1の長さX4を算出する(図7BのS15)。そして、制御部51は、長さX4が所定長Xjより短い走行ラインL1を対象領域C1から削除する(S16)。所定長Xjは、例えば最短作業距離Xwに設定されている(Xj=Xw)。他の例として、最短作業距離Xwに所定の余裕値を加算した値に、所定長Xjが設定されていてもよい。
【0083】
図8Dの例では、長さX4が所定長Xjより短い走行ラインL1が無いので、走行ラインL1は削除されない。図9Fの例では、最も右側にある走行ラインL1dの長さX4が所定長Xjより短いため、当該走行ラインL1dが削除される(図9Gの状態)。
【0084】
そして、制御部51は、この時点で残っている複数の走行ラインL1を確定し、当該複数の走行ラインL1を示す情報(位置、長さなど)を記憶部53に記憶させる(図7BのS17、図8D図9G)。また、制御部51は、複数の走行ラインL1の端点P1、P2と、当該走行ラインL1の端点P1、P2のシフト前に交差していた交差圃場辺H1a、H1c、H1eとの間の領域を、枕地E1a、E1c、E1eとして確定し、当該枕地E1a、E1c、E1eを示す情報(位置、面積など)を記憶部53に記憶させる(図7BのS18)。即ち、制御部51は、複数の走行ラインL1の端点P1、P2と交差圃場辺H1a、H1c、H1eとの間に、それぞれ枕地E1a、E1c、E1eを設ける。
【0085】
また、制御部51は、図8D及び図9Gに示すように、オフセットした圃場辺H1b、H1dとオフセット辺H2b、H2dとの間の領域をオフセット領域J1として確定し、複数の走行ラインL1と作業幅Waとに基づいて中央作業領域C2を算出して、当該中央作業領域C2を確定し、オフセット領域J1及び中央作業領域C2を示す情報(位置、面積など)を記憶部53に記憶させる(図7BのS19)。
【0086】
制御部51は、上述のように複数の走行ラインL1と枕地E1a、E1c、E1eなどを確定すると、図5Bに示すように、ルート作成画面D7中の圃場マップMP2に、複数の走行ラインL1を表示させる。このとき、枕地E1a、E1c、E1e、オフセット領域J1、及び中央作業領域C2も圃場マップMP2に表示される。
【0087】
オペレータがルート作成画面D7の作業方向、枕地幅、及びオフセット距離の少なくともいずれかの数値を変更して、再度ライン作成キーB13を操作すると、制御部51は、前述したように圃場マップMP2に走行ラインL1を作成し、且つ枕地E1a、E1c、E1eとオフセット領域J1と中央作業領域C2を設ける。
【0088】
即ち、制御部51は、作業方向、枕地幅、及びオフセット距離の少なくともいずれかの変更に応じて、走行ラインL1と枕地E1a、E1c、E1eとオフセット領域J1と中央作業領域C2の少なくともいずれかを変更する。オペレータは、ルート作成画面D7に表示された走行ラインL1などを見ながら作業条件を変更して、走行ラインL1などを適切に設定することができる。また、オペレータが前の画面D3~D5の設定内容(入力値)を変更しても、制御部51は、当該設定内容の変更に応じて走行ラインL1などを変更する。
【0089】
ルート作成画面D7に走行ラインL1が表示された後、オペレータがルート作成キーB14を操作すると、制御部51は、農業機械1を走行させる複数の走行ラインL1の走行順を決定する。このとき、制御部51は、例えば、圃場情報から特定した圃場の出入口に最も近い走行ラインL1を、走行順が最後(走行ラインL1をN本作成した場合のN番目)の走行ラインL1に決定し、当該最後の走行ラインL1の両端点P1、P2のうち、出入口に最も近い端点をゴール位置Pgに決定する。そして、制御部51は、最後の走行ラインL1を基準にして、他の走行ラインL1の走行順を決定し、走行順が最初(1番目)の走行ラインL1の端点P1、P2のいずれかをスタート位置Psに決定する。
【0090】
その際、制御部51は、例えば、複数の走行ラインL1の作成順を走行順に決定し、最初に作成した走行ラインL1の作成開始点をスタート位置Psに決定し、最後に作成した走行ラインL1の作成終了点をゴール位置Pgに決定してもよい。
【0091】
走行順などの決定後、制御部51は表示操作部52により、図5Cに示すようにルート作成画面D7中の圃場マップMP2に、スタート位置Ps及びゴール位置Pgを表示させ、決定した走行順で隣接する走行ラインL1同士を繋ぐ円弧状の補助ラインL2を表示させ、複数の走行ラインL1に農業機械1の進行方向を示す矢印を表示させる。これにより、複数の走行ラインL1が接続されて、一連の走行ルートL3が圃場マップMP2に作成及び表示された状態となる。
【0092】
他の例として、ルート作成キーB14を省略し、制御部51が、前述したように複数の走行ラインL1と枕地E1a、E1c、E1eなどを確定した後に、自動的に一連の走行ルートL3を圃場マップMP2に作成して、当該走行ルートL3をルート作成画面D7に表示させてもよい。また、ライン作成キーB13も省略し、制御部51が、例えば作業方向Vと枕地幅Wpとオフセット距離Y1と表示操作部52により入力された後に、複数の走行ラインL1を圃場マップMP2に作成してもよい。
【0093】
オペレータは、表示操作部52を操作することによって、ルート作成画面D7の圃場マップMP2中のスタート位置Ps及びゴール位置Pgのいずれかを、別の端点P1、P2に移動(変更)させることができる。スタート位置Ps又はゴール位置Pgが別の端点P1、P2に移動すると、制御部51は、当該位置の移動に応じて、複数の走行ラインL1の走行順を変更し、スタート位置Ps、ゴール位置Pg、補助ラインL2、及び複数の走行ラインL1の進行方向を示す矢印のそれぞれの表示を変更する。
【0094】
ルート作成画面D7にスタート位置Ps及びゴール位置Pgなどが表示された後、オペレータが次へキーB9を操作する。これにより、制御部51は、走行ルートL3を示す情報(複数の走行ラインL1、走行順、スタート位置Ps、ゴール位置Pg、及び補助ラインL2)を記憶部53又は内部メモリに記憶させ、図6に示す走行制御画面D8を表示操作部52に表示させる。また、制御部51は、記憶部53及び内部メモリに記憶された各種設定情報に基づいて走行データを生成し、当該走行データを通信部54により農業機械1の制御装置60に送信(出力)する。走行データには、作業装置2の装置情報、圃場マップMP2、走行ルートL3、中央作業領域C2、オフセット領域J1、枕地E1a、E1c、E1e、及び農作業の種別などをそれぞれ示す情報が含まれている。
【0095】
走行制御画面D8は、圃場で農業機械1を走行させながら作業装置2により農作業を行う状態を示す画面である。走行制御画面D8には、圃場マップMP2、走行ルートL3、農業機械マークM2、農業機械1の走行状態、及びキーなどが表示されている。制御部51は、位置検出装置40により検出された実際の車体3の位置を所定の周期で通信部54により取得し、当該車体3の位置に応じた圃場マップMP2中の該当箇所に、農業機械マ
ークM2を随時表示させる。即ち、走行制御画面D8中の農業機械マークM2は、農業機械1の車体3の実際の位置を示している。
【0096】
例えばオペレータが、走行制御画面D8を見ながら農業機械1を手動運転して、走行ルートL3のスタート位置Psに相当する位置まで農業機械1を移動させてから、操作装置62(図1)に備わるモードスイッチ62bで自動走行作業モードに移行するための所定の操作を行う。これにより、制御装置60は、自動走行作業モードに移行し、農作業支援装置50から受信した走行データと、位置検出装置40により検出された車体3の位置とに基づいて、車体3を自動運転で走行させながら作業装置2により圃場に対して農作業(対地作業)を行う。
【0097】
詳しくは、制御装置60は、まず走行データを読み込んで、枕地E1a、E1c、E1e、走行ラインL1、スタート位置Ps、及びゴール位置Pgを特定する。そして、制御装置60は、複数の走行ラインL1と車体3の位置とに基づいて、スタート位置Psから車体3を自動運転で走行ラインL1に沿って走行させながら、作業装置2により対地作業を行う。なお、図6に示す走行制御画面D8は、農業機械1の自動運転が開始されてからしばらくした後の、農業機械1の走行状態と作業装置2による作業状態とを示している。
【0098】
自動走行作業モードにおいて、制御装置60は車体3の自動操舵を行う。詳しくは、制御装置60は、位置検出装置40により検出された車体3の位置と、走行ラインL1との偏差を演算する。当該偏差が閾値未満である場合、制御装置60は、操舵軸31(図1)の回転角を維持する。また、車体3の位置と走行ラインL1との偏差が閾値以上であって、車体3が走行ラインL1に対して左側に位置している場合、制御装置60は、車体3の操舵方向が右方向となるように、操舵軸31を回転させる(自動操舵)。また、車体3の位置と走行ラインL1との偏差が閾値以上であって、車体3が走行ラインL1に対して右側に位置している場合、制御装置60は、車体3の操舵方向が左方向となるように、操舵軸31を回転させる。また、制御装置60は、走行ラインL1と車体3の位置とに基づいて、車体3の走行速度を自動で変更する。
【0099】
車体3が一方の走行ラインL1の終端(端点P1又は端点P2)に到達すると、制御装置60は、作業装置2による対地作業を一旦停止して、隣接する他方の走行ラインL1の始端(端点P1又は端点P2)に向かって車体3を旋回させる。この際、制御装置60は、枕地E1a、E1c、E1eの位置情報、走行ラインL1の位置情報、農業機械1及び作業装置2の寸法情報、位置検出装置40により検出された車体3の位置、及び状態検出装置64の検出結果などに基づいて、農業機械1及び作業装置2を旋回させる。また、作業装置2が培土装置のように着地状態で農作業を行う作業装置である場合には、制御装置60は、旋回時に昇降装置8により作業装置2を上昇させて地面から離間させる。
【0100】
そして、制御装置60は、車体3が他方の走行ラインL1の始端に到達すると、他方の走行ラインL1に基づいて車体3を自動運転で走行させ始めるときに、作業装置2による対地作業を再開する。作業装置2が着地状態で農作業を行う作業装置である場合には、制御装置60は、対地作業時に昇降装置8により作業装置2を下降させて着地させる。このように、農業機械1が自動運転で中央作業領域C2を往復直進し、作業装置2により中央作業領域C2に対して対地作業を行う。
【0101】
制御装置60が、複数の走行ラインL1と車体3の位置とに基づいて、車体3を自動運転で走行させながら作業装置2により対地作業を行うことで、作業装置2がゴール位置Pgに到着すると、制御装置60は、自動走行作業モードを停止し、車体3及び作業装置2を停止させる。これにより、農業機械1及び作業装置2の自動走行作業モードでの農作業が完了した状態となる。
【0102】
制御装置60は、上述したように、複数の走行ラインL1に基づいて農業機械1を自動運転しながら、作業装置2により農作業を行うだけでなく、複数の走行ラインL1に基づいて農業機械1をオートステア(自動操舵)運転しながら、作業装置2により農作業を行うこともできる。即ち、農作業支援装置50により作成された複数の走行ラインL1は、農業機械1の自動運転だけでなく、農業機械1のオートステア運転にも活用可能である。また、農業機械1をオートステア運転する際にも、農作業支援装置50の制御部51が、複数の走行ラインL1を含む走行ルートL3と車体3の位置などを表示操作部52により表示させてもよい。
【0103】
さらに、オペレータが農業機械1を手動運転しながら、作業装置2により農作業を行う際にも、制御部51が農作業支援装置50により作成された複数の走行ラインL1と車体3の位置などを表示操作部52により表示させてもよい。
【0104】
上述した実施形態では、走行ラインL1の両端点P1、P2のシフト前に走行ラインL1が交差していた交差圃場辺H1a、H1c、H1eと、シフト後の両端点P1、P2との間にそれぞれ同一の枕地幅Wpを有する枕地E1a、E1cが設けられる例を示したが、これに限定するものではない。例えば、走行ラインL1の端点P1と圃場辺H1a、H1eとの間に設ける枕地E1a、E1eの枕地幅と、端点P2と圃場辺H1cとの間に設ける枕地E1cの枕地幅とが、ルート作成画面D7で別々に入力され、制御部51が、当該枕地幅のそれぞれの入力値に応じて、枕地E1a、E1e、E1cを設定するようにしてもよい。また、制御部51は、枕地E1a、E1c、E1eに走行ラインを作成してもよい。また、作業者が農業機械1を自動運転又は手動運転して、作業装置2により枕地E1a、E1c、E1eに対して農作業を行ってもよい。
【0105】
上述した実施形態では、矩形状の圃場を示す圃場マップMP2と台形状の圃場を示す圃場マップMP2とに複数の走行ラインL1を作成して、当該複数の走行ラインL1などに基づいて農業機械1を自動運転して作業装置2により農作業を行う例を示したが、これらに限定するものではない。例えば、図10に示すような凹凸(デコボコ)の輪郭を有した圃場を示す圃場マップMP2、又は図11に示すような三角形状の圃場を示す圃場マップMP2などのような、イレギュラな形状を有した圃場を圃場マップMP2に、農作業支援装置50により複数の走行ラインL1を作成し且つ枕地E1などを設定し、当該複数の走行ラインL1と車体3の位置とに基づいて、農業機械1を走行させて作業装置2により農作業を行ってもよい。また、農業機械1と農業機械1に連結された作業装置2だけでなく、他の農業機械と当該農業機械に連結された作業装置を用いて、走行ラインL1に基づいて圃場に対して農作業を行ってもよい。
【0106】
上述した実施形態では、オペレータが、図2に示した作業選択画面D3で播種作業を選択したため、制御部51が、播種作業用の複数の走行ラインL1などを作成した例を示したが、オペレータが作業選択画面D3で他の農作業を選択することで、制御部51が、当該農作業用の複数の走行ラインL1などを圃場マップMP2に作成してもよい。また、オペレータ或いは制御部51が、外部の記憶媒体若しくはサーバなどから、圃場情報、作業装置2の装置情報、及び作業条件などを、通信部54により農作業支援装置50に入力してもよい。
【0107】
上述した実施形態では、農作業支援装置50が携帯型のタブレット端末装置から構成されている例を挙げたが、これ以外に、例えばスマートフォン、農業機械1に固定された端末装置、農業機械1から離れた場所に設置されたコンピュータ、サーバ、及びクラウド上に設けられたサーバなどのうちの少なくとも1つから農作業支援装置を構成してもよい。また、図7A及び図7Bの走行ラインの作成手順を示したソフトウェアプログラムをクラ
ウド上に設けられたサーバに格納し、当該ソフトウェアプログラムをインストールしたコンピュータで走行ラインL1を作成し、当該コンピュータに接続されたディスプレイ装置に走行ラインL1を表示させ、当該コンピュータから農業機械1などに走行ラインL1などを示す走行データを出力するようにしてもよい。
【0108】
以上説明した本実施形態は、以下の構成を備え、効果を奏する。
【0109】
本実施形態の農作業支援装置50は、圃場を示す圃場情報、農業機械1に連結された作業装置2を示す装置情報、及び圃場で農業機械1を走行させながら作業装置2により行う農作業の作業条件がそれぞれ入力される入力部(表示操作部)52(表示操作部52に代えて、通信部54でもよい)と、圃場情報と装置情報と作業条件とに基づいて、作業装置2により農作業を行うために農業機械1を走行させる走行ラインL1を、圃場を示す圃場マップMP2に複数作成する制御部51と、を備え、制御部51は、圃場情報から圃場の輪郭H1を示す複数の圃場辺H1a~H1eを特定し、作業条件から農作業の作業方向V及び圃場の端部に確保する枕地幅Wpを特定し、作業方向Vに対して平行に圃場マップMP2に作成した複数の走行ラインL1の端点P1、P2のそれぞれを、複数の圃場辺H1a~H1eと前記枕地幅Wpとに基づいて、それぞれの走行ラインL1の短縮方向にシフトさせる。
【0110】
上記構成によると、制御部51は、どのような形状の圃場に対しても、圃場を示す圃場マップMP2に作業装置2により農作業を行うために農業機械1を走行させる複数の走行ラインL1を適切な長さで作成することができる。また、制御部51は、圃場マップMP2において、複数の走行ラインL1を作成した領域を中央作業領域C2に設定し、中央作業領域C2以外の領域を枕地E1a、E1c、E1e又は非作業領域(オフセット領域J1など)に設定することができる。そして、作業者が複数の走行ラインL1のそれぞれに沿って農業機械1を走行させながら作業装置2により農作業を行った場合に、農業機械1又は作業装置2が圃場から食み出すことを防止することが可能になり、また必要以上に広い非作業領域が形成されて、圃場で栽培する作物の収穫量が減少するなどの弊害の発生を阻止することが可能になる。
【0111】
本実施形態では、制御部51は、端点P1、P2のシフト前に、複数の走行ラインL1のそれぞれと、圃場マップMP2に示される複数の圃場辺H1a~H1dのうちの複数の走行ラインL1のそれぞれが交差する交差圃場辺H1a、H1c、H1eとの成す角度θaと、枕地幅Wpとに基づいて、複数の走行ラインL1のそれぞれに対応するシフト量Xsを算出し、複数の走行ラインL1の端点P1、P2のそれぞれを短縮方向に対応するシフト量Xsだけシフトさせる。これにより、制御部51は、複数の走行ラインL1と交差圃場辺H1a、H1c、H1eとの成す角度θaと枕地幅Wpとに応じて、複数の走行ラインL1を適切な長さに作成することができる。
【0112】
また、本実施形態では、制御部51は、複数の走行ラインL1の端点P1、P2のそれぞれを短縮方向にシフトさせることで、複数の走行ラインL1のそれぞれを短縮し、当該短縮後の複数の走行ラインL1の端点P1、P2と交差圃場辺H1a、H1c、H1eとの間に枕地E1a、E1c、E1eを設ける。これにより、複数の走行ラインL1の端点P1、P2と圃場辺H1a、H1c、H1eとの間を枕地E1a、E1c、E1eに決定することができる。そして、作業者が複数の走行ラインL1のそれぞれに沿って農業機械1を走行させながら作業装置2により農作業を行った場合に、枕地E1a、E1c、E1eで農業機械1及び作業装置2を旋回させて、農業機械1又は作業装置2が圃場から食み出すことをより防止することができる。
【0113】
また、本実施形態では、制御部51は、複数の走行ラインL1のそれぞれと交差圃場辺
H1a、H1c、H1eに対する垂線Lvとの成す角度θと、枕地幅Wpと、式(1)とにより、複数の走行ラインのそれぞれに対応するシフト量Xsを算出する。これにより、制御部51は、圃場マップMP2において、作業方向Vに対して平行でない一方の圃場辺H1cと他方の圃場辺H1a又は圃場辺H1eに亘って一旦作成した複数の走行ラインL1を、両端点P1、P2からそれぞれシフト量Xsだけ短縮させて、適切な長さの複数の走行ラインL1を作成することができる。また、複数の走行ラインL1の点P1、P2と圃場辺H1a、H1c、H1eとの間に、枕地幅Wpを有する枕地E1a、E1c、E1eを確保することができる。
【0114】
また、本実施形態では、制御部51は、複数の走行ラインL1のうち、長さX1、X4が所定長Xt、Xjより短い走行ラインL1a、L1dを削除する。これにより、短くて不適切な走行ラインL1a、L1dが、圃場マップMP2に作成されるのを防止することができる。
【0115】
また、本実施形態では、制御部51は、農業機械1を走行させながら作業装置2により農作業を行うことが可能な最短作業距離Xwを特定し、シフト量Xsの算出前に、複数の走行ラインL1のうち、長さX1が最短作業距離Xwと枕地幅Wpとの合計値より短い走行ラインL1aを削除する。これにより、端点P1、P2をシフトさせた場合に消滅してしまうような短い走行ラインL1aを予め削除し、シフト量Xsの算出時と端点P1、P2のシフト時に制御部51にかかる処理負担を軽減して、適切な長さの走行ラインL1を効率良く作成することができる。
【0116】
また、本実施形態では、制御部51は、複数の圃場辺H1a~H1eのそれぞれからシフト後の端点P1、P2までの距離が、所定距離(距離Xu或いは距離Xv)以上になるように、シフト後の端点P1、P2を対応する走行ラインL1の短縮方向にさらにシフトさせる。これにより、走行ラインL1の端点P1、P2と圃場辺H1a~H1dとの間に、枕地又は非作業領域を確保して、農業機械1又は作業装置2が圃場から食み出すことを防止することができる。
【0117】
また、本実施形態では、制御部51は、複数の圃場辺H1a~H1eのうち、端点P1、P2のシフト前に少なくともいずれかの走行ラインL1が交差しなかった非交差圃場辺H1b、H1d、H1eから、シフト後の端点P1、P2までの距離X2が、第1所定距離Xu以上になるように、シフト後の端点P1、P2を対応する走行ラインL1の短縮方向にさらにシフトさせる。例えば作業者が、図9Dに示した距離X2が第1所定距離Xu未満である走行ラインL1bに基づいて、農業機械1を走行させながら作業装置2により農作業を行った場合、農業機械1又は作業装置2が圃場から食み出すおそれがある。然るに、上記のように走行ラインL1bの端点P1、P2を短縮方向にシフトさせることで、走行ラインL1bの端点P1、P2と非交差圃場辺H1b、H1d、H1eとの間に、枕地E1e又は非作業領域(オフセット領域J1など)を確保して、農業機械1又は作業装置2が圃場から食み出すことを防止することができる。
【0118】
また、本実施形態では、制御部51は、装置情報から作業装置2の作業幅Waを特定し、端点P1、P2をシフトさせた後の複数の走行ラインL1と作業幅Waとに基づいて、農業機械1を走行させて作業装置2により農作業を行うことが可能な中央作業領域C2を算出し、複数の圃場辺H1a~H1eのうち、端点P1、P2のシフト前に少なくともいずれかの走行ラインL1が交差しなかった非交差圃場辺H1b、H1d、H1eから、中央作業領域C2までの距離が、第2所定距離Xz以上になるように、対応する走行ラインL1bの端点P1、P2を短縮方向にさらにシフトさせる。これにより、走行ラインL1bの端点P1、P2と非交差圃場辺H1b、H1d、H1eとの間に、枕地E1e又は非作業領域を確保して、農業機械1又は作業装置2が圃場から食み出すことを防止すること
ができる。
【0119】
また、本実施形態では、制御部51は、複数の圃場辺H1a~H1eのうち、端点P1、P2のシフト前に少なくともいずれかの走行ラインL1が交差していた交差圃場辺H1a、H1c、H1eから、シフト後の端点P1、P2までの距離X3が、第3所定距離Xv以上になるように、シフト後の端点P1、P2を対応する走行ラインL1の短縮方向にさらにシフトさせる。例えば作業者が、図9Eに示した距離X3が第3所定距離Xv未満である走行ラインL1cに基づいて、農業機械1を走行させながら作業装置2により農作業を行った場合、農業機械1若しくは作業装置2、或いはその後の農作業で用いられる他の農業機械若しくは作業装置が圃場から食み出すおそれがある。然るに、上記のように走行ラインL1cの端点P1、P2を短縮方向にシフトさせることで、走行ラインL1cの端点P1、P2と交差圃場辺H1a、H1c、H1eとの間に、枕地E1a、E1c、E1e又は非作業領域(オフセット領域J1など)を確保して、農業機械1又は作業装置2などが圃場から食み出すことを防止することができる。
【0120】
また、本実施形態では、制御部51は、装置情報から作業装置2の作業幅Waを特定し、作業条件からオフセット距離Y1を特定し、複数の圃場辺H1a~H1eのうち、作業方向Vに対して平行な圃場辺H1b、H1dと、当該平行な圃場辺H1b、H1dから最も離れた他の複数の圃場辺H1a~H1eの交点Q1~Q4とを、圃場マップMP2の内側にオフセット距離Y1だけそれぞれオフセットし、当該オフセットした圃場辺H1b、H1d及び交点Q1~Q4と、作業方向Vに対して平行でない圃場辺H1a、H1c、H1eとで囲まれる対象領域C1に、複数の走行ラインL1を作業方向Vと平行に作業幅Waに応じた間隔で作成する。これにより、走行ラインL1と圃場辺H1a、H1c、H1eとの間に、オフセット距離Y1と同一の幅を有するオフセット領域J1を確保して、農業機械1又は作業装置2などが圃場から食み出すことを防止することができる。
【0121】
また、本実施形態では、複数の圃場辺H1a~H1eのいずれかと平行な方向が、作業条件に含まれる作業方向Vとして入力部52により入力可能である。これにより、オペレータは、入力部52により作業方向Vを容易に入力することができる。
【0122】
また、本実施形態では、作物の露地栽培(畑作)用の圃場を示す圃場情報及び農作業の作業条件が入力部52により入力可能であり、制御部51は、圃場で農業機械1を走行させながら作業装置2により露地栽培用の農作業を行う複数の走行ラインL1を圃場マップMP2に作成する。これにより、作業者は、複数の走行ラインL1に基づいて農業機械1を走行させながら、作業装置2により圃場に対して露地栽培用の農作業を適切に行うことができる。
【0123】
また、本実施形態では、制御部51は、圃場に作物を作付けする作付作業又は圃場に畝を形成する培土作業を作業装置2により行うために、農業機械1を走行させる複数の走行ラインL1を圃場マップMP2に作成する。これにより、作業者は、複数の走行ラインL1に基づいて農業機械1を走行させながら、作業装置2により圃場に対して作付作業又は培土作業を適切に行うことができる。
【0124】
本実施形態の農作業支援システム100は、農作業支援装置50と、農業機械1と、農作業支援装置50により複数の走行ラインL1が作成された圃場マップMP2を表示する表示装置(表示操作部)52と、を含んでいる。これにより、農作業支援装置50によって複数の走行ラインL1が適切に作成された圃場マップMP2が、表示装置52により表示されるので、オペレータ及び作業者は複数の走行ラインL1を確認して、複数の走行ラインL1に基づいて農業機械1を走行させながら、作業装置2により圃場に対して農作業を適切に行うことができる。
【0125】
本実施形態では、農作業支援システム100は、農業機械1に連結された作業装置2を含み、農作業支援装置50は、端点P1、P2がシフトされた複数の走行ラインL1を農業機械1に出力する出力部(通信部)54を備え、農業機械1は、走行可能な車体3と、車体3の位置を検出する位置検出装置40と、複数の走行ラインL1のそれぞれに沿って車体3の操舵と走行のいずれかを自動で行いながら、作業装置2により圃場に対して農作業を行う制御装置60と、を有する。これにより、オペレータ又は作業者は、農作業支援装置50によって適切に作成された複数の走行ラインL1と、位置検出装置40により検出された農業機械1の車体3の位置とに基づいて、農業機械1を自動運転又はオートステア運転で走行させながら、作業装置2により圃場に対して農作業を適切に行うことができる。
【0126】
本実施形態の農業機械1は、農作業支援装置50と、走行可能で且つ作業装置2を連結可能な車体3と、車体3の位置を検出する位置検出装置40と、農作業支援装置50により複数の走行ラインL1が作成された後に出力された圃場マップMP2を表示する表示装置52と、複数の走行ラインL1のそれぞれに沿って車体3の操舵と走行のいずれかを自動で行いながら、作業装置2により圃場に対して農作業を行う制御装置60と、を備える。これにより、農業機械1に乗車した作業者は、農作業支援装置50によって適切に作成された複数の走行ラインL1と、位置検出装置40により検出された農業機械1の車体3の位置とに基づいて、農業機械1を自動運転又はオートステア運転で走行させながら、作業装置2により圃場に対して農作業を適切に行うことができる。
することができる。
【0127】
本実施形態の走行ライン作成方法は、圃場で農業機械1に連結された作業装置2により農作業を行うために農業機械1を走行させる走行ラインL1を、圃場を示す圃場マップMP2に作成する走行ライン作成方法であって、農作業支援装置50の入力部52により、圃場を示す圃場情報、作業装置の装置情報、及び農作業の作業条件がそれぞれ入力されるステップと、農作業支援装置50の制御部51が、圃場情報から圃場の輪郭H1を示す複数の圃場辺H1a~H1eを特定するステップと、制御部51が、作業条件から農作業の作業方向V及び圃場の端部に確保する枕地幅Wpを特定するステップと、制御部51が、作業方向Vに対して平行に圃場マップMP2に作成した複数の走行ラインL1の端点のそれぞれを、複数の圃場辺H1a~H1eと枕地幅Wpとに基づいて、それぞれの走行ラインL1の短縮方向にシフトさせるステップと、を備える。これにより、どのような形状の圃場に対しても、農作業支援装置50によって、圃場を示す圃場マップMP2に作業装置2により農作業を行うために農業機械1を走行させる複数の走行ラインL1を適切な長さで作成することができる。
【0128】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0129】
1 農業機械
2 作業装置
3 車体
40 位置検出装置
50 農作業支援装置
52 表示操作部(入力部、表示装置)
54 通信部(入力部、出力部)
60 制御装置
100 農作業支援システム
C1 対象領域
C2 中央作業領域
E1a、E1c、E1e 枕地
H1 圃場の輪郭
H1a、H1c 圃場辺、交差圃場辺
H1b、H1d 圃場辺、非交差圃場辺
H1e 圃場辺、交差圃場辺、非交差圃場辺
L1、L1a、L1b、L1c、L1d 走行ライン
Lv 交差圃場辺に対する垂線
MP2 圃場マップ
P1、P2 端点
Q1、Q2、Q3、Q4 交点
V 作業方向
Wa 作業幅
Wp 枕地幅
X1、X4 走行ラインの長さ
X2 非交差圃場辺から端点までの距離
X2a 非交差圃場辺から中央作業領域までの距離
X3 交差圃場辺から端点までの距離
Xj、Xt 所定長
Xs シフト量
Xu 第1所定距離(所定距離)
Xv 第3所定距離(所定距離)
Xw 最短作業距離
Xz 第2所定距離
Y1 オフセット距離
θ 走行ラインと交差圃場辺に対する垂線との成す角度
θa 走行ラインと交差圃場辺との成す角度
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図10
図11
図12