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特開2024-90660農作業支援装置、農作業支援システム、農業機械、走行ライン作成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090660
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】農作業支援装置、農作業支援システム、農業機械、走行ライン作成方法
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A01B69/00 301
A01B69/00 303M
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206697
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菊地 良太
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA02
2B043BA07
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB03
2B043BB06
2B043BB07
2B043BB14
2B043DA01
2B043DA04
2B043DA17
2B043DC01
2B043DC03
2B043EA01
2B043EA12
2B043EA32
2B043EA37
2B043EB05
2B043EB16
2B043EB17
2B043EB18
2B043EC12
2B043EC14
2B043EC15
2B043EC16
2B043ED12
2B043EE01
2B043EE02
2B043EE05
2B043EE06
(57)【要約】
【課題】圃場で作業装置により農作業を行うために農業機械を走行させる走行ラインを適切に作成する。
【解決手段】農作業支援装置は、圃場情報、作業装置の装置情報、及び圃場で農業機械を走行させながら作業装置により行う農作業の作業条件が入力される入力部と、圃場情報と装置情報と作業条件に基づいて作業装置により農作業を行うために農業機械を走行させる走行ラインを圃場マップに複数作成する制御部と、を備え、制御部は、圃場情報から複数の圃場辺を特定し、作業条件から農作業の作業方向と枕地幅を特定し、作業方向に対して平行に圃場マップに作成した複数の走行ラインの端点のそれぞれを、複数の圃場辺と枕地幅とに基づいてそれぞれの走行ラインの短縮方向にシフトさせる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を表す圃場情報、農業機械に連結された作業装置の装置情報、及び前記圃場で前記農業機械を走行させながら前記作業装置により行う農作業の作業情報がそれぞれ入力される入力部と、
前記圃場情報と前記装置情報と前記作業情報とに基づいて、前記作業装置により前記農作業を行うために前記農業機械を走行させる走行ラインを、前記圃場を示す圃場マップに複数作成する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記装置情報から前記作業装置の変更可能な作業幅の仕様と所定の第1作業幅とを特定し、
前記第1作業幅で前記農作業を行う第1走行ラインを1つ以上前記圃場マップに作成し、
前記第1走行ラインを作成するだけでは、前記第1作業幅よりも所定値以上幅が狭い余り領域が前記圃場マップに生じる場合に、前記作業幅の仕様に基づいて前記余り領域の幅に応じた前記作業装置の第2作業幅を決定し、
前記第2作業幅で前記余り領域に対して前記農作業を行う第2走行ラインを前記圃場マップに作成する農作業支援装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記装置情報から前記作業装置の前記作業幅の可変状態と可変範囲とを含む前記仕様を特定する請求項1に記載の農作業支援装置。
【請求項3】
前記圃場で行う複数種類の前記農作業の前記作業情報が前記入力部により入力され、
前記制御部は、
複数種類の前記農作業のうち、対象農作業と連携する連携農作業の作業情報から、前記連携農作業の作業位置を特定し、
前記連携農作業の作業位置に基づいて、前記対象農作業を行うための前記第1走行ライン及び前記第2走行ラインを前記圃場マップに作成する請求項1に記載の農作業支援装置。
【請求項4】
前記圃場に形成される複数の畝に関する畝情報が前記入力部により入力され、
前記制御部は、
前記畝情報から、複数の前記畝の数を示す全畝数と、前記畝を1つ形成するための土壌がある位置の幅を示す畝幅とを特定し、
前記第1作業幅と前記畝幅とに基づいて、前記第1作業幅で同時に前記農作業を行うことが可能な範囲に含まれる作業対象畝数を算出し、
前記全畝数を前記作業対象畝数で除算して、その商を前記第1走行ラインの作成数に決定し且つ余りの畝数を求め、
前記余りの畝数と前記畝幅とに基づいて、前記余り領域の幅を算出する請求項1に記載の農作業支援装置。
【請求項5】
前記農業機械の機械情報が前記入力部により入力され、
前記制御部は、
前記機械情報及び前記装置情報から、前記農業機械に対する前記作業装置の相対位置及び前記農業機械が有する車体の幅方向に並ぶ一対の走行装置の間隔を特定し、
一対の前記走行装置の間隔と前記畝幅とに基づいて、一対の前記走行装置の間に通す通過畝数を算出し、
前記相対位置及び前記通過畝数に基づいて、前記第1走行ライン及び前記第2走行ラインを作成する請求項4に記載の農作業支援装置。
【請求項6】
前記作業装置は、前記農業機械の幅方向に延設された1つ以上の散布ユニットを有し、前記散布ユニットの長手方向に所定の間隔で設けられた散布口から資材を散布する散布装置から構成され、
前記制御部は、前記余り領域の幅に適合する前記散布ユニット及び前記散布口の少なくともいずれかを判断し、当該適合する前記散布ユニット及び前記散布口の少なくともいずれかに基づいて前記第2作業幅を決定する請求項1に記載の農作業支援装置。
【請求項7】
作物を露地栽培するための前記圃場を表す前記圃場情報と、前記資材の散布作業の前記作業情報とが前記入力部により入力可能であり、
前記制御部は、前記作業装置により前記散布作業を行うための前記農業機械の前記第1走行ライン及び前記第2走行ラインを前記圃場マップに作成する請求項6に記載の農作業支援装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の農作業支援装置と、
前記農業機械と、
前記農作業支援装置により出力された前記第1走行ライン及び前記第2走行ラインが作成された前記圃場マップを表示する表示装置と、を含む農作業支援システム。
【請求項9】
前記農業機械に連結された前記作業装置を含み、
前記農業機械は、
走行可能な車体と、
前記車体の位置を検出する位置検出装置と、
前記第1走行ライン及び前記第2走行ラインのそれぞれに沿って前記車体の自動操舵及び自動走行のいずれかを行いながら、前記作業装置により前記圃場に対して前記農作業を行う制御装置と、を備えた請求項8に記載の農作業支援システム。
【請求項10】
所定の通知を出力する出力装置を含み、
前記表示装置は、表示中の前記圃場マップに前記位置検出装置により検出された前記車体の位置を表示し、
前記制御装置は、前記第1走行ライン及び前記第2走行ラインのうち、先行の走行ラインに沿った前記車体の走行状態から後行の走行ラインに沿った前記車体の走行状態へ移行する際に、前記車体及び前記作業装置を一時停止させ、
前記出力装置は、前記車体の走行状態の移行中及び当該移行中より前の少なくともいずれかに、前記後行の走行ラインに対応する前記第2作業幅を示す通知を出力する請求項9に記載の農作業支援システム。
【請求項11】
前記出力装置は、前記第2作業幅を示す通知に、前記作業装置の作業幅を手動で操作する必要がある旨と前記作業装置の作業形態とを示す情報を含めて、当該通知を出力する請求項10に記載の農作業支援システム。
【請求項12】
請求項1~7のいずれかに記載の前記農作業支援装置と、
走行可能で且つ前記作業装置を連結可能な車体と、
前記車体の位置を検出する位置検出装置と、
前記農作業支援装置により前記第1走行ライン及び前記第2走行ラインが作成された後に出力された前記圃場マップを表示する表示装置と、を備えた農業機械。
【請求項13】
圃場で農業機械に連結された作業装置により農作業を行うために前記農業機械を走行させる走行ラインを、前記圃場を表す圃場マップに作成する走行ライン作成方法であって、
農作業支援装置の入力部により、前記圃場を表す圃場情報、前記作業装置の装置情報、及び前記農作業の作業条件がそれぞれ入力されるステップと、
前記農作業支援装置の制御部が、前記装置情報から前記作業装置の変更可能な作業幅の仕様と所定の第1作業幅とを特定するステップと、
前記圃場に対して前記農作業を行うために、前記制御部が、前記第1作業幅で前記農作業を行う第1走行ラインを1つ以上前記圃場マップに作成するステップと、
前記第1走行ラインを作成するだけでは、前記第1作業幅より所定値以上幅が狭い余り領域が前記圃場マップに生じる場合に、前記制御部が、前記作業幅の仕様に基づいて前記余り領域の幅に応じた前記作業装置の第2作業幅を決定するステップと、
前記制御部が、前記第2作業幅で前記余り領域に対して前記農作業を行う第2走行ラインを前記圃場マップに作成するステップと、を備えた走行ライン作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場で農業機械を走行させながら農業機械に連結された作業装置により農作業を行うことを支援する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業経路作成部が、トラクタに連結された作業装置(作業機)により農作業を行うためにトラクタを走行させる走行ライン(直線状の農作業経路)を、圃場の中央の作業領域に作業装置の作業幅などの間隔で複数作成する技術が開示されている(段落0045-0046、図6など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-135995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圃場の作業領域で農業機械を走行させながら、作業装置により一定の作業幅で農作業を行った場合、作業幅より幅が狭い領域が生じることがある。このような幅が狭い領域に対しても一定の作業幅で農作業を行った場合、農業機械及び作業装置の少なくともいずれかが圃場外へ食み出すことがあり、好ましくない。また、農業機械などが圃場外へ食み出すことを防止するため、作業領域に狭い作業幅の間隔で複数の走行ラインを作成して、農業機械を走行させながら作業装置により行う農作業の作業軌跡をオーバーラップさせる方法もある。しかし、この場合、作業軌跡のオーバーラップ量が多くなると、走行ラインの本数が多くなって、農業機械の走行距離が長くなることがあり、また散布作業などでは資材の散布量が無駄に多くなることがあり、非効率的である。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑み、圃場で農業機械を走行させながら作業装置により農作業を効率的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
【0007】
本発明の農作業支援装置は、圃場を表す圃場情報、農業機械に連結された作業装置の装置情報、及び前記圃場で前記農業機械を走行させながら前記作業装置により行う農作業の作業情報がそれぞれ入力される入力部と、前記圃場情報と前記装置情報と前記作業情報とに基づいて、前記作業装置により前記農作業を行うために前記農業機械を走行させる走行ラインを、前記圃場を示す圃場マップに複数作成する制御部と、を備え、前記制御部は、前記装置情報から前記作業装置の変更可能な作業幅の仕様と所定の第1作業幅とを特定し、前記第1作業幅で前記農作業を行う第1走行ラインを1つ以上前記圃場マップに作成し、前記第1走行ラインを作成するだけでは、前記第1作業幅よりも所定値以上幅が狭い余り領域が前記圃場マップに生じる場合に、前記作業幅の仕様に基づいて前記余り領域の幅に応じた前記作業装置の第2作業幅を決定し、前記第2作業幅で前記余り領域に対して前記農作業を行う第2走行ラインを前記圃場マップに作成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、圃場で農業機械を走行させながら作業装置により農作業を効率的に行
うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】農作業支援システムの構成図である。
図2】作業選択画面を示す図である。
図3】作業装置設定確認画面を示す図である。
図4】圃場選択画面を示す図である。
図5A】ルート作成画面を示す図である。
図5B】走行ライン作成後のルート作成画面を示す図である。
図5C】走行ルート作成後のルート作成画面を示す図である。
図6】畝情報設定画面を示す図である。
図7】連携作業設定画面を示す図である。
図8】走行制御画面を示す図である。
図9A】農作業支援装置の走行ライン作成動作を示すフローチャートである。
図9B図9Aの続きのフローチャートである。
図10A】圃場マップを示す図である。
図10B】畝位置を示す図である。
図10C】畝位置と防除作業の第1走行ラインとを示す図である。
図10D】防除作業の第1走行ラインと第2走行ラインとを示す図である。
図10E】防除作業の走行ルートを示す図である。
図11】農業機械の走行装置と畝を示す図である。
図12A】左右均等な作業装置と余り領域の一例を示す図である。
図12B】左右均等な作業装置と余り領域の他の例を示す図である。
図12C】片側仕様の作業装置と余り領域の一例を示す図である。
図12D】片側仕様の作業装置と余り領域の他の例を示す図である。
図12E】片側仕様の作業装置と余り領域の他の例を示す図である。
図12F】片側仕様の作業装置と余り領域の他の例を示す図である。
図13A】農作業支援装置の表示動作を示すフローチャートである。
図13B図13Aの続きのフローチャートである。
図14A】作業ライン及び走行ラインを表示したルート作成画面の一例を示す図である。
図14B】作業ライン及び走行ラインを表示したルート作成画面の他の例を示す図である。
図15】実施済み及び未実施の表示設定キーを表示したルート作成画面を示す図である。
図16A】自動作業モードでの農作業支援システムの動作を示すフローチャートである。
図16B図16Aの続きのフローチャートである。
図17A】第1通知画面の一例を示す図である。
図17B】第2通知画面の一例を示す図である。
図17C】第3通知画面の一例を示す図である。
図18】農業機械の側面図である。
図19】農業機械と培土装置の平面図である。
図20A】農業機械と突出状態の散布装置の平面図である。
図20B】農業機械と縮小状態の散布装置の平面図である。
図20C】農業機械と収納状態の散布装置の平面図である。
図21A】他の散布装置の概略平面図である。
図21B】他の散布装置の概略平面図である。
図21C】他の散布装置の概略平面図である。
図21D】他の散布装置の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図18は、本実施形態の農業機械1の側面図である。農業機械1は、トラクタから構成されている。なお、本発明の農業機械は、トラクタに限定せず、例えば田植機又はコンバインなどの他の農業機械、或いは農作業を行うトラクタ以外の作業車両などにより構成されてもよい。
【0012】
農業機械1は、車体3、原動機4、変速装置5、及び走行装置7を備えている。走行装置7は、車体3に左右一対で設けられていて、車体3を走行可能に支持している。一対の走行装置7は、それぞれ前輪7Fと後輪7Rとを有している。前輪7Fは、タイヤ型であってもよいし、クローラ型であってもよい。また、後輪7Rも、タイヤ型であってもよいし、クローラ型であってもよい。
【0013】
原動機4は、ディーゼルエンジン或いは電動モータなどから構成されている。本実施形態では、原動機4はディーゼルエンジンにより構成されている。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切り替え可能であると共に、走行装置7の前進と後進を切り替え可能である。原動機4の駆動力が変速装置5により走行装置7に伝達されて、走行装置7が駆動することで、車体3が前後に走行する。なお、図18において、左側が車体3の前方であり、右側が車体3の後方である。また、図18に向かって、奥側が車体3の右方であり、手前側が車体3の左方である。
【0014】
車体3にはキャビン9が設けられている。キャビン9の内部には、運転席10が設けられている。車体3の後部には、3点リンク機構などで構成された昇降装置8が設けられている。昇降装置8には、農作業を行うための作業装置2が連結可能である。詳しくは、昇降装置8に設けられた連結部8g、8hに、作業装置2が連結可能である。作業装置2を連結部8g、8hに連結することで、作業装置2と車体3(農業機械1)とが連結されて、車体3が作業装置2を牽引可能になる。
【0015】
作業装置2は、圃場で作物を露地栽培するための農作業を行う。例えば作業装置2には、圃場に対して耕うん作業を行う耕うん装置(ロータリ耕うん機)、肥料若しくは農薬などの資材を散布する散布装置、培土作業を行う培土装置(畝立装置ともいう。)、作物の種などを播く播種装置、苗を移植する移植装置、及び作物を収穫する収穫装置などが含まれている。
【0016】
図19は、農業機械1と培土装置2Aの一例の平面図である。培土装置2Aは、複数の畝立て器72とロータリ耕耘部73などを有している。ロータリ耕耘部73は、複数の畝立て器72よりも前方(農業機械1の車体3に近い方向)に設けられている。複数の畝立て器72は、農業機械1の幅方向に所定の間隔で設けられている。
【0017】
圃場で農業機械1が前方に直進走行し、農業機械1により牽引された培土装置2Aが駆動することで、圃場の土がロータリ耕耘部73により耕うんされた後、複数の畝立て器72によりそれぞれ台形状に成形されて、複数の畝Uaが所定の幅で且つ所定の間隔で形成される。図19に示す例では、2つの畝立て器72が培土装置2Aに設けられているため、帯状の2つの畝Uaが同時に形成される。培土装置2Aに設けられる畝立て器72の数は、2つに限定されず、1つでもよいし、3つ以上でもよい。培土装置2Aに設けられた畝立て器72の設置数と同数の畝Uaが同時に形成される。
【0018】
図20A図20Cは、農業機械1と散布装置2Bの一例の平面図である。散布装置2
Bは、ブームスプレーヤとも呼ばれている。散布装置2Bは、フレーム75、散布ユニット76、タンク77、及びポンプ78などを有している。フレーム75は、農業機械1の昇降装置8に連結され、且つ散布ユニット76、タンク77、及びポンプ78を支持している。
【0019】
図20Aに示すように、散布ユニット76は、農業機械1の幅方向に1つ以上延設されている。本例では、3つの散布ユニット76(76L、76R、76M)が散布装置2Bに設けられている。散布ユニット76は、ブーム76a、散布管76b、及びノズル76cなどを有している。ブーム76aは、農業機械1の幅方向に延設されている。左右の散布ユニット76L、76Rが有するブーム76aは、多段式ブームから構成され、農業機械1の幅方向に伸縮可能である。散布管76bは、ブーム76aと平行に設置されている。散布管76bには、散布管76bの軸方向に所定の間隔で複数のノズル76cが設けられている。それぞれのノズル76cの先端には、散布口76dが形成されている。即ち、散布口76dは、散布ユニット76の長手方向に所定の間隔で複数設けられている。タンク77は、液状の農薬を貯留する。ポンプ78は、タンク77内の農薬を、散布管76bを通してノズル76cに供給する。
【0020】
圃場で農業機械1が前方に直進走行し、農業機械1により牽引された散布装置2Bが駆動することで、複数のノズル76cの散布口76dから農薬或いは肥料などの資材が散布され、散布作業(防除作業或いは施肥作業)が行われる。散布装置2Bは、後述するように散布状態が手動で操作可能である。作業者は、散布装置2Bに設けられた補助コントローラ或いは操作ボックス(共に図示省略)などにより散布装置2Bを手動で操作する。また、作業者は、フレーム75に対して散布ユニット76を適宜数着脱する。
【0021】
なお、農業機械1に連結可能な散布装置には、図20Aに示す牽引式の散布装置2Bだけでなく、農業機械1の車体3に搭載される直装式の散布装置もある。また、補助コントローラなどで手動操作される散布装置2Bだけでなく、農業機械1とISO-BUSで制御可能に接続される散布装置もあり、当該散布装置は、農業機械1から送信される操作信号により操作される。
【0022】
図1は、農作業支援システム100の構成図である。農作業支援システム100及び農作業支援装置50は、圃場で農業機械1を走行させながら作業装置2により農作業を行うことを支援する。
【0023】
農業機械1は、制御装置60、操作装置62、原動機4、変速装置5、制動装置6、操舵装置29、昇降装置8、位置検出装置40、警報装置63、及び状態検出装置64を備えている。また、農業機械1には、LAN又はCANなどの車載ネットワークN1が構築されている。制御装置60、操作装置62、位置検出装置40、警報装置63、及び状態検出装置64は、車載ネットワークN1に接続されている。農業機械1に備わるこれらの各部は、農作業支援システム100に含まれる。
【0024】
制御装置60は、CPUと内部メモリとを含んだ電子制御装置(ECU)から構成されている。制御装置60の内部メモリには、揮発性メモリと不揮発性メモリとが含まれている。制御装置60は、内部メモリに記憶されたソフトウェアプログラムと制御データとに基づいて、農業機械1の各部の動作を制御する。制御装置60は、農業機械1の走行と作業装置2の動作とを制御するコントローラである。操作装置62は、運転席10に着座した運転者又は農業機械1の近傍にいる作業者などが操作可能なスイッチ、レバー、ペダル、及びその他のキーなどから構成されている。
【0025】
原動機4(例えばエンジン或いは電動モータ)は、制御装置60により駆動、停止、及
び回転数を制御される。変速装置5は制御弁37に接続されている。制御弁37は、制御装置60から送信される制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁37には、油圧ポンプ33から吐出された作動油が供給される。制御弁37は、図1では1つのブロックで示しているが、変速装置5に設けられた油圧クラッチ又は油圧シリンダなどの油圧機器の数に応じて適宜数設けられている。
【0026】
制動装置6は制御弁38に接続されている。制御弁38は、制御装置60から送信される制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁38には、油圧ポンプ33から吐出された作動油が供給される。制御装置60は、制御弁38の切り替え位置及び開度を電気的に制御することにより、制動装置6を作動させて、車体3にブレーキをかける。
【0027】
制御装置60は、制御弁37の切り替え位置(開度)を電気的に制御して、変速装置5の駆動を制御する。変速装置5が原動機4の駆動力を走行装置7に伝達することで、走行装置7が作動して、車体3を前後に走行させる。また、例えば作業装置2が対地作業を行う場合などに、変速装置5は、原動機4の駆動力を作業装置2に伝達する。これにより、作業装置2の作動力が大きくなる。
【0028】
また、制御装置60は、車載ネットワークN1を経由して作業装置2と通信する。具体的には、作業装置2は、制御部と通信部とを備えている(図示省略)。制御装置60は、車載ネットワークN1を経由して作業装置2に作業指令を送信する。作業装置2の制御部は、当該作業指令を通信部により受信すると、当該作業指令に基づいて作業装置2の各部の動作を制御して、農作業(対地作業)を行う。また、作業装置2の制御部は、作業状態などを示す情報又はデータを通信部により車載ネットワークN1を経由して制御装置60に送信する。制御装置60は、作業装置2から車載ネットワークN1を経由して受信した情報又はデータに基づいて、作業装置2の作業状態などを検出する。
【0029】
なお、制御部及び通信部を備えていない作業装置2もある。この種の作業装置2に対して、制御装置60は、車載ネットワークN1を経由して通信を行わないが、後述するように昇降装置8により作業装置2を昇降させて、作業装置2の位置を変化させることにより、作業装置2の動作を制御し、且つ作業装置2の作業状態などを検出する。
【0030】
操舵装置29は、ハンドル(ステアリングホイール)30、操舵軸(回転軸)31、及び補助機構(パワーステアリング機構)32を有している。ハンドル30は、キャビン9(図18)の内部に設けられている。操舵軸31は、ハンドル30の回転に伴って回転する。補助機構32は、ハンドル30による操舵を補助する。
【0031】
補助機構32には、制御弁34とステアリングシリンダ35とが含まれている。制御弁34は、制御装置60から送信される制御信号に基づいて作動する電磁弁である。詳しくは、制御弁34は、スプールなどの移動によって切り替え可能な3位置切替弁から構成されている。制御弁34には、油圧ポンプ33から吐出された作動油が供給される。制御装置60は、制御弁34の切り替え位置及び開度を電気的に制御することにより、ステアリングシリンダ35に供給する油圧を調整して、ステアリングシリンダ35を伸縮させる。ステアリングシリンダ35は、前輪7Fの向きを変えるナックルアーム39に接続されている。
【0032】
制御弁34は、操舵軸31の操舵によっても切り替え可能である。具体的には、ハンドル30を操作することで、当該操作状態に応じて操舵軸31が回転して、制御弁34の切り替え位置及び開度が切り替わる。ステアリングシリンダ35は、制御弁34の切り替え位置及び開度に応じて、車体3の左方又は右方に伸縮する。このステアリングシリンダ35の伸縮動作により、前輪7Fの操舵方向が変更される。なお、上述した操舵装置29は
一例であり、上述した構成に限定されない。
【0033】
農業機械1の車体3は、ハンドル30の手動操作による手動操舵と、制御装置60による自動操舵とが可能である。また、操作装置62に備わるアクセル部材又はブレーキペダル(共に図示省略)の手動操作に応じて、変速装置5又は制動装置6が作動することで、車体3は走行及び停止が可能である。さらに、制御装置60による変速装置5と制動装置6の制御に応じて、車体3は、自動で走行及び停止が可能である。即ち、農業機械1では、作業者など(運転者)が走行操作と操舵操作とを行う手動運転、制御装置60が走行と操舵とを自動で行う自動運転、及び制御装置60が操舵を自動で行い且つ作業者などが走行操作を行うオートステア運転(自動操舵又は半自動運転とも言う。)がそれぞれ可能である。
【0034】
昇降装置8には、アクチュエータとして油圧シリンダが設けられている。当該油圧シリンダは、制御弁36と接続されている。制御弁36は、制御装置60から送信される制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁36には、油圧ポンプ33から吐出された作動油が供給される。制御装置60は、制御弁36の切り替え位置又は開度を電気的に制御することにより、昇降装置8の油圧シリンダに供給する油圧を調整して、当該油圧シリンダを伸縮させる。昇降装置8の油圧シリンダが伸縮することにより、連結部8g、8h(図18)が上下に回動して、連結部8g、8hに連結された作業装置2が上下に昇降する。
【0035】
図1に示す位置検出装置40は、受信装置41と慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)42とを有している。受信装置41は、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびきなどの衛星測位システム(測位衛星)から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻など)を受信する。位置検出装置40は、受信装置41により受信した衛星信号に基づいて、現在位置(例えば、緯度、経度)を検出する。即ち、位置検出装置40は、衛星測位システムにより、農業機械1(車体3)の位置を検出する測位装置である。慣性計測装置42は、加速度センサとジャイロセンサなどを有している。慣性計測装置42は、車体3のロール角、ピッチ角、ヨー角などを検出する。警報装置63は、車体3に設けられたブザー、スピーカ、又は警告灯などから構成されている。警報装置63は、音又は光により車体3の周囲に対して警報を発する。
【0036】
状態検出装置64は、農業機械1及び作業装置2の各部に設置されたセンサなどから構成されている。状態検出装置64は、センサなどからの出力信号に基づいて、農業機械1の変速装置5、制動装置6、走行装置7、昇降装置8、操舵装置29、及び操作装置62といった各部の動作状態(駆動及び停止の状態と、動作位置など)を検出する。また、状態検出装置64は、センサなどからの出力信号に基づいて、作業装置2の動作状態を検出する。
【0037】
また、状態検出装置64には、対象物検出部64aと、LiDARのようなレーザセンサと、超音波センサと、カメラなどが含まれている。レーザセンサと超音波センサとカメラなどは、車体3の前部、後部、及び左右側部に設置されている。対象物検出部64aは、レーザセンサ又は超音波センサからの出力信号から、農業機械1及び作業装置2の周囲の対象物の有無と、対象物までの距離などを検出する。また、対象物検出部64aは、カメラにより撮像された農業機械1と作業装置2の周囲の撮像画像から、農業機械1及び作業装置2の対象物の有無などを検出する。即ち、状態検出装置64は、レーザセンサ、超音波センサ、及びカメラなどにより、農業機械1の周囲の状態を検出する。
【0038】
農作業支援装置50は、例えば携帯型のタブレット端末装置などから構成されている。農作業支援装置50は、例えば農業機械1のキャビン9の内部に搭載され、農業機械1に
対して着脱可能である。即ち、農業機械1は農作業支援装置50を備えている。また、農作業支援装置50は、農業機械1から離脱させることも可能である。
【0039】
農作業支援装置50には、制御部51、表示操作部52、記憶部53、及び通信部54が備わっている。制御部51は、農作業支援装置50のプロセッサであり、CPUと内部メモリとを含んでいる。制御部51の内部メモリには、揮発性メモリと不揮発性メモリとが含まれている。
【0040】
表示操作部52は、タッチパネルディスプレイから構成されていて、各種の情報を画面に表示(出力)する。また、表示操作部52は、所定の情報を画面に表示することで、当該情報を作業者などに通知する。即ち、表示操作部52は、所定の情報を含む通知(画面)を出力する。作業者などのオペレータが表示操作部52の表示画面に対して所定の操作を行うことにより、各種の情報又は指示が入力される。表示操作部52は、農作業支援装置50の表示装置、入力装置(入力部、入力インタフェイス)、及び出力装置(出力部、出力インタフェイス)である。即ち、表示操作部52は、ユーザインタフェイスである。表示操作部52に代えて、独立した表示装置、入力装置、及び出力装置が農作業支援装置50に設けられてもよい。また、農業機械1の警報装置63に含まれるスピーカを出力装置として用いて、所定の情報を音声で出力することにより、当該情報を作業者に通知してもよい。
【0041】
記憶部53は、不揮発性のメモリなどから構成されている。記憶部53には、農業機械1の走行と作業を支援する情報又はデータが読み書き可能に記憶される。制御部51は、記憶部53又は内部メモリに記憶されたソフトウェアプログラムと制御データなどに基づいて、農作業支援装置50の各部を制御する。通信部54は、車載ネットワークN1に接続するための通信インタフェイスから構成されている。制御部51は、通信部54により車載ネットワークN1を経由して、制御装置60、操作装置62、位置検出装置40、警報装置63、状態検出装置64、及び作業装置2と通信する。また、通信部54は、インターネットなどを経由して、サーバなどの外部装置と通信可能である。通信部54は、農業機械1の制御装置60に対して情報、データ、及び指示を入出力(送受信)する入力装置(入力部、入力インタフェイス)及び出力装置(出力部、出力インタフェイス)である。
【0042】
圃場を示す圃場情報、農業機械1を示す機体情報、作業装置2を示す装置情報、及び圃場で農業機械1を走行させながら作業装置2により行う農作業の作業情報などが、表示操作部52又は通信部54により農作業支援装置50にそれぞれ入力されて、記憶部53又は制御部51の内部メモリに記憶される。制御部51は、少なくとも圃場情報と装置情報と作業情報とに基づいて、作業装置2により農作業を行うために農業機械1を走行させる走行ラインを、圃場を示す圃場マップに複数作成する。
【0043】
圃場情報には、圃場の識別情報(ID)、位置(座標)、輪郭、及び面積などの情報が含まれている。作業装置2の装置情報には、作業装置2の仕様(寸法、性能、機能、識別情報などを含む)と、作業装置2の手動操作に関する情報が含まれている。作業情報には、対応する農作業の種別、対応する農作業を農業機械1と作業装置2により行う作業条件、作業計画、及び作業履歴などが含まれている。作業条件には、作業方向及び枕地幅などが含まれている。作業計画には、農業機械1の走行ライン、複数の走行ラインをひとつなぎにした走行ルート、及び予定の作業位置などが含まれている。作業履歴には、農業機械1と作業装置2とにより農作業を行った実際の作業位置などが含まれている。農業機械1の機体情報には、農業機械1の仕様(寸法、性能、機能、識別情報などを含む)を示す情報が含まれている。農業機械1の機体情報は、制御装置60の内部に設けられたメモリにも記憶されている。
【0044】
制御部51は、農業機械1の走行ラインを作成する際に、例えば作業装置2の装置情報に基づいて、作業装置2の変更可能な作業幅の仕様(可変状態と可変範囲など)と、作業装置2の所定の第1作業幅とを特定し、第1作業幅で農作業を行うための農業機械1の第1走行ラインを1つ以上圃場マップに作成する。また、制御部51は、第1走行ラインを作成するだけでは、第1作業幅よりも所定値以上も幅が狭い余り領域が圃場マップに生じる場合に、作業装置2の作業幅の仕様に基づいて、余り領域の幅に応じた作業装置2の第2作業幅を決定し、第2作業幅で余り領域に対して農作業を行うための農業機械1の第2走行ラインを圃場マップに作成する。
【0045】
制御部51は、圃場マップを表示操作部52に表示する。その際、制御部51は、例えば圃場で連携して行われる複数種類の農作業の作業位置及び走行ラインの少なくともいずれかを表示操作部52により圃場マップに描画する。
【0046】
また、制御部51は、圃場情報、装置情報、及び作業情報などを、通信部54により農業機械1の制御装置60に送信する。制御装置60は、圃場情報、装置情報、作業情報、位置検出装置40により検出された農業機械1(車体3)の位置、及び状態検出装置64の検出結果などに基づいて、原動機4、変速装置5、制動装置6、操舵装置29、昇降装置8、及び作業装置2の駆動を制御し、農業機械1(車体3)の走行及び操舵を自動で行いながら、作業装置2により圃場に対して農作業(対地作業)を行う自動運転を実行する。
【0047】
その際、制御装置60は、上記各情報に基づいて、作業装置2の手動操作の要否を判断する。詳しくは、作業装置2の装置情報には、手動操作に関する情報として、手動操作の要否と手動操作の内容とが含まれている。制御装置60は、当該作業装置2の手動操作に関する情報と、圃場における農業機械1の位置と、農業機械1の動作状態と、作業装置2による作業状態などに基づいて、作業装置2の手動操作の要否を判断する。なお、作業装置2の手動操作に関する情報は、例えばオペレータが農作業支援装置50により設定する。制御装置60は、作業装置2を手動で操作する必要があると判断した場合に、当該旨などを示す通知を農作業支援装置50の表示操作部52などにより出力する。
【0048】
また、制御装置60は、上記各情報に基づいて、農業機械1(車体3)の走行を手動に委ねて、農業機械1の操舵を自動で行いながら、作業装置2により圃場に対して農作業を行うオートステア運転も実行することが可能である。オートステア運転では、農業機械1の運転者が操作装置62(図1)に含まれるアクセル部材又はブレーキ部材を操作することで、当該操作に応じて車体3の走行速度が変更される。
【0049】
また、農業機械1は、手動運転によっても走行と操舵が可能であり、且つ手動運転による走行時に作業装置2により農作業を行うことが可能である。農業機械1の手動運転とは、運転者が操作装置62のアクセル部材又はブレーキ部材を操作することにより、車体3の走行速度を変更し、且つハンドル30(図1)を操作することにより、車体3の操舵を行うことである。
【0050】
図2図8は、農作業支援装置50の表示操作部52に表示される画面の一例を示す図である。本実施形態では、オペレータが、図2図6の表示操作部52の画面D3~D7などにより、作物を露地栽培(畑作)するための作業装置2を示す装置情報、圃場を示す圃場情報、及び農作業の作業情報を入力する。そして、農作業支援装置50の制御部51が、装置情報、圃場情報、及び作業情報などに基づいて、露地栽培用の農作業を作業装置2により行うために農業機械1を走行させる複数の走行ラインを作成する。また、制御部51は、複数の走行ラインをひと繋ぎにした走行ルートを作成し(図5C)、当該走行ル
ートに基づいて農業機械1を走行させたときの状態を表示操作部52の画面D8(図8)に表示する。
【0051】
オペレータが農作業支援装置50を起動させると、制御部51は、図示しないホーム画面を表示操作部52に表示させる。オペレータが表示操作部52によりホーム画面で所定の入力操作を行うことで、制御部51は、図2に示す作業選択画面D3を表示操作部52に表示させる。作業選択画面D3のデータと以降で説明する各画面のデータは、記憶部53に記憶されている。制御部51は、必要に応じて記憶部53からデータを読み出して、当該データに基づく画面を表示操作部52に表示させる。
【0052】
オペレータは作業選択画面D3で、農業機械1と作業装置2により行う農作業の種別を選択する。オペレータが作業キーB31~B35のいずれかを操作(タップ操作)することで、操作された作業キーB31~B35に対応する農作業が選択される。図2の例では、防除作業が選択された状態を示している。
【0053】
図2の作業選択画面D3には、作物の露地栽培用の農作業として、耕うん作業、播種作業、培土作業、防除作業、及び施肥作業が例示されているが、これらに限定しない。オペレータが矢印キーB41、B42を操作することで、制御部51は、図2に表示されていない移植作業及び収穫作業などの他の農作業を作業選択画面D3に表示させる。なお、播種作業及び移植作業は、圃場に作物の種子又は苗など(馬鈴薯の場合は種芋)の資材を作付けする作付作業の一例である。
【0054】
オペレータが作業選択画面D3で、作業キーB31~B35のいずれかを操作してから、次へキーB9を操作することで、制御部51は、操作された作業キーに対応する農作業が対象農作業として指定されたと判断し、当該指定された対象農作業を示す作業指定情報を内部メモリ又は記憶部53に記憶させる。また、制御部51は、図3に示す作業装置設定確認画面(以下、単に「装置設定画面」という)D4を表示操作部52に表示させる。なお、オペレータが戻るキーB8を操作することで、制御部51は、前の画面を表示操作部52に表示させる。(以降の画面D4~D7も同様)
【0055】
オペレータは装置設定画面D4で、作業装置2の装置情報を入力及び確認する。図3の例では、制御部51が、作業装置2の装置情報として、現在設定されている防除作業用の散布装置2Bの識別情報及び寸法情報を装置設定画面D4に表示している。寸法情報には、散布装置2Bの全幅、全長、及び作業幅が含まれている。作業幅には、左散布ユニット、右散布ユニット、及び中央散布ユニットの各作業幅と、散布装置2B全体の作業幅を示す全作業幅とが含まれている。
【0056】
図20Aに示すように、散布装置2Bは、左散布ユニット76L、右散布ユニット76R、及び中央散布ユニット76Mの3つの散布ユニット76を有している。このうち、左散布ユニット76L及び右散布ユニット76Rは、図示しないアクチュエータにより、図20A及び図20Bに示すように農業機械1(車体3)の左右の幅方向に伸縮可能である。また、左散布ユニット76L及び右散布ユニット76Rは、図示しないアクチュエータにより、図20A及び図20Bに示すように農業機械1の左右側方に突出した状態(作業状態)と、図20Cに示すように農業機械1の左右側方に突出しない収納状態(非作業状態)とに変更可能である。
【0057】
図20A図20Cの例では、左散布ユニット76L及び右散布ユニット76Rが、アクチュエータにより水平面内で回動して、農業機械1の左右方向に延設された突出状態と、農業機械1の前後方向に延設された収納状態とにそれぞれ変化している。然るに、散布装置2Bの機種によっては、左散布ユニット76L及び右散布ユニット76Rが、アクチ
ュエータにより鉛直面内或いは鉛直面に対して鋭角に傾斜した傾斜面内で回動して、農業機械1の左右方向に延設された突出状態と、農業機械1又は散布装置2Bの中心に寄せられた収納状態とにそれぞれ変化する場合もある。また、左散布ユニット76L及び右散布ユニット76Rのうち、一方の散布ユニット76を突出状態にし、他方の散布ユニット76を収納状態にする場合もある。
【0058】
作業者が、補助コントローラ又は操作ボックスにより散布装置2Bを手動操作して、左散布ユニット76L及び右散布ユニット76Rの少なくともいずれかを突出状態にし、且つ当該突出状態の散布ユニット76をON(駆動状態)することで、当該突出状態の散布ユニット76のノズル76cの散布口76dから資材(薬剤)が散布される。また、作業者が、補助コントローラ又は操作ボックスにより散布装置2Bを手動操作して、中央散布ユニット76MをONすることで、中央散布ユニット76Mのノズル76cの散布口76dから資材が散布される。
【0059】
また、作業者が、補助コントローラ又は操作ボックスにより散布装置2Bを手動操作して、左散布ユニット76L及び右散布ユニット76Rの少なくともいずれかの突出長を変えたり、複数の散布ユニット76L、76R、76MをそれぞれON(駆動状態)或いはOFF(停止状態)したりすることで、散布装置2Bの作業幅(資材を散布する幅)Waが変化する。
【0060】
また、作業者が、補助コントローラ又は操作ボックスにより散布装置2Bを手動操作して、複数の散布ユニット76(76L、76R、76M)がそれぞれ有する複数のノズル76cをそれぞれON(資材を散布可能な開通状態)或いはOFF(或資材を散布不可能な閉塞状態)にすることで、散布装置2Bの作業幅Wa及び散布位置がそれぞれ変化してもよい。また、作業者が、補助コントローラ又は操作ボックスにより散布装置2Bを手動操作して、アクチュエータにより複数の散布ユニット76の少なくともいずれかを農業機械1の前後方向或いは上下方向に傾斜させて、当該散布ユニット76の姿勢を変えることで、散布装置2Bの作業幅Waなどが変化してもよい。
【0061】
上述した散布装置2B以外に、例えば図21Aに示すように、農業機械1の左右側方のうちの一方と真後ろとにそれぞれ位置する複数の散布ユニット76を有する散布装置2Bもある。また、例えば図21Bに示すように、農業機械1の左右側方のうちの一方に位置する散布ユニット76だけを有する散布装置2Bもある。また、例えば図21Cに示すように、農業機械1の真後ろに位置する散布ユニット76だけを有する散布装置2Bもある。図20Aに示した散布装置2Bも、複数の散布ユニット76を適宜ON或いはOFFすることで、実質的に図21A図21Cの作業形態に変化させることができる。
【0062】
また、例えば図21Dに示すように、農業機械1の幅方向の中心から左右側方にそれぞれ延設された複数の散布ユニット76を有する散布装置2Bもある。図示を省略しているが、農業機械1の幅方向の中心から左右側方のうちの一方或いは両方に延設された単一の散布ユニット76を有する散布装置2Bもある。このように散布装置2Bには様々な作業状態の仕様があるが、上記で例示した仕様に限定するわけではない。
【0063】
図3の装置設定画面D4で、オペレータ(又は作業者)が設定キーB37を操作すると、散布装置2Bの識別情報及び寸法情報がそれぞれ変更可能になる。例えば、オペレータが設定キーB37を操作した後、表示操作部52により散布装置2Bの識別情報を変更(入力)すると、制御部51は、当該変更された識別情報に対応する散布装置2Bの装置情報を記憶部53から読み出して内部メモリに記憶し、そのうち散布装置2Bの寸法情報を装置設定画面D4に表示させる。
【0064】
また、オペレータが設定キーB37を操作した後、農業機械1に連結した散布装置2Bの仕様に基づいて、散布装置2Bの全幅、全長、或いは各散布ユニット76(76L、76R、76M)の各作業幅を適宜変更(入力)すると、制御部51が、当該変更された全幅、全長、或いは作業幅を表示操作部52により装置設定画面D4に表示させる。また、制御部51は、例えば各散布ユニット76の作業幅の合計値から所定の重複代を減算した値を全作業幅として算出し、当該全作業幅を表示操作部52により装置設定画面D4に表示させる。図3の例では、左散布ユニット76Lと右散布ユニット76Rの作業幅がそれぞれ650cmであり、中央散布ユニット76Mの作業幅が180cmであり、中央散布ユニット76Mの作業幅に対する左散布ユニット76L及び右散布ユニット76Rの作業幅の重複代がそれぞれ15cmであるため、制御部51は、各散布ユニット76の作業幅の合計値1480cmから、両方の重複代を減算して、全作業幅1450cmを算出している(全作業幅=650cm+650cm+180cm-15cm-15cm=1450cm)。他の例として、制御部51は、各散布ユニット76の作業幅の合計値を全作業幅として算出してもよい。
【0065】
上記では、オペレータが防除作業用の作業装置2(散布装置2B)の装置情報を装置設定画面D4で入力及び変更する場合を例に示したが、その他の農作業用の作業装置2の装置情報も装置設定画面D4で入力及び変更することができる。記憶部53には、図3に示した防除作業用の作業装置2以外の他の農作業用の作業装置2の装置情報も記憶されている。制御部51は、図2の作業選択画面D3で選択された農作業に応じて、当該農作業用の作業装置2を判断し、当該作業装置2の装置情報を記憶部53から読み出して、図3の装置設定画面D4に表示させる。また、記憶部53には、予め登録された1台以上の農業機械1の機体情報も記憶されている。
【0066】
オペレータが装置設定画面D4の表示内容を確認して、次へキーB9を操作すると、制御部51は、装置設定画面D4に表示されている作業装置2の装置情報を内部メモリ又は記憶部53に記憶させ、図4に示す圃場選択画面D5を表示操作部52に表示させる。
【0067】
オペレータは圃場選択画面D5で、予め記憶部53に登録された1つ以上の圃場を示す圃場マップMP2のうち、いずれかの圃場マップMP2を選択する。オペレータがいずれかの圃場マップMP2を選択すると、制御部51は、選択された圃場マップMP2を他の圃場マップMP2とは異なる表示形態で表示させる。図4では、選択された圃場マップMP2が太線枠で囲われている。いずれかの圃場マップMP2が選択された状態で、オペレータが次へキーB9を選択すると、制御部51は、選択された圃場マップMP2を含む圃場情報を記憶部53から読み出して、当該圃場情報を内部メモリに記憶させ、図5Aに示すルート作成画面D7を表示操作部52に表示させる。
【0068】
ルート作成画面D7には、圃場選択画面D5で選択された圃場マップMP2、農業機械マークK1、各種入力欄、及びキーなどが表示されている。オペレータはルート作成画面D7で、作業条件を入力する。図5Aの例では、オペレータは、作業条件として、作業方向及び枕地幅を入力し又は変更する。
【0069】
作業方向とは、圃場で農業機械1を直進で往復させながら作業装置2で作業を行う方向のことである。オペレータは、圃場(圃場マップMP2)の輪郭H1を構成する複数の圃場辺H1a~H1eとそれぞれ平行な方向のうち、いずれかの方向を作業方向として入力する。詳しくは、オペレータが作業方向の数値入力欄に、所定の数値(例えば、「1」、「2」、・・・)を入力することで、当該数値に対応する圃場辺が基準辺に指定され、当該基準辺に対して平行な方向が作業方向として入力される。図5Aに示す矩形状の圃場マップMP2では、圃場辺H1a~H1eのいずれかが基準辺に指定され、当該基準辺と平行な上下方向或いは左右方向が作業方向として入力可能である。枕地幅とは、圃場の端部に設ける枕地の幅(作業方向と平行な幅)のことである。枕地幅には、「0」より大きい
数値が入力される。
【0070】
オペレータが作業連携キーB21を操作すると、制御部51は、図6に示す作業連携画面D6を表示操作部52に表示させる。このとき制御部51は、作業連携画面D6をポップアップで装置設定画面D4上に表示させてもよいし、或いは装置設定画面D4に代えて作業連携画面D6を表示操作部52に表示させてもよい。作業連携画面D6には、図2の作業選択画面D3で選択された対象農作業と連携可能な他の農作業が表示されている。本例では、作業選択画面D3で防除作業が対象農作業として指定されたため、制御部51が、防除作業と連携可能な農作業として、播種作業及び培土作業を特定し、播種設定ボックスB23と培土設定ボックスB24とを選択的に指定可能に作業連携画面D6に表示させている。なお、制御部51は、防除作業と連携可能な農作業として、播種作業及び培土作業のうちのいずれかに対応する設定ボックスを、作業連携画面D6に表示させてもよい。
【0071】
図6に示すように、オペレータが培土設定ボックスB24を選択(タップ操作)すると、培土作業が連携農作業として指定され、制御部51が、予め記憶部53に記憶された培土作業の作業情報を培土設定ボックスB24に表示させる。培土作業の作業情報には、培土作業を行うことで圃場に形成される複数の畝Uaの畝幅及び全畝数といった畝情報が含まれている。
【0072】
全畝数とは、圃場に形成される複数の畝Uaの数のことである。畝幅とは、例えば図11に示すように、圃場に畝Uaを1つ形成するための土壌がある位置の幅Wuのことである。即ち、畝幅Wuとは、畝Ua自体の幅を示す畝裾幅Wubと、隣り合う畝Uaの裾同士の間隔を示す畝間Suとの合計値である(Wu=Wub+Su)。なお、畝Uaの上端の幅を示す畝肩幅Wucが、畝Ua自体の幅として採用され、隣り合う畝Uaの上端同士の間隔が、畝間として採用される場合もある。
【0073】
畝情報が記憶部53に記憶されている場合、制御部51は、畝情報に含まれる畝幅Wu及び全畝数の設定値を培土設定ボックスB24(図6)の畝幅Wu及び全畝数の数値入力欄に表示させる。培土設定ボックスB24の畝幅Wu及び全畝数の数値入力欄にそれぞれ表示された設定値で、圃場マップMP2に対応する圃場に畝Uaが未だ形成されていない場合(培土作業が未実施の場合)、オペレータは、表示操作部52を操作することにより、当該設定値をそれぞれ変更することができる。対して、培土設定ボックスB24の畝幅Wu及び全畝数の数値入力欄にそれぞれ表示された設定値で、圃場マップMP2に対応する圃場に畝Uaが既に形成されている場合(培土作業が実施済みの場合)、制御部51は、当該設定値を変更できないように培土設定ボックスB24に表示する。
【0074】
なお、培土作業の作業情報は、農作業支援装置50で設定されて記憶部53に記憶された作業情報であってもよいし、或いは制御部51がサーバなどの外部装置から通信部54により受信して記憶部53に記憶させた作業情報であってもよい。また、培土作業の作業情報は、未だ実施されていない培土作業の作業情報であってもよいし、或いは既に実施された培土作業の作業情報であってもよい。
【0075】
培土作業の作業情報が記憶部53に記憶されていない場合、制御部51は、畝幅Wu及び全畝数という項目名だけを培土設定ボックスB24に表示させる。この場合、制御部51は、培土設定ボックスB24の畝幅Wu及び全畝数の数値入力欄への数値入力を受け付けず、培土作業と防除作業とが連携できない旨を示すメッセージ(通知)を作業連携画面D6などに出力(表示)してもよい(図示省略)。或いは、オペレータが、表示操作部52を操作することにより、培土設定ボックスB24の畝幅Wu及び全畝数の数値入力欄に、それぞれ数値を入力できるようにし、制御部51が、当該入力された数値を受け付けてもよい。
【0076】
オペレータが播種設定ボックスB23を選択した場合、播種作業が連携農作業として指定され、制御部51が、予め記憶部53に記憶された播種作業の作業情報を播種設定ボックスB23に表示させる(図示省略)。播種作業の作業情報にも、播種作業の作業位置を含む畝の畝幅Wu及び全畝数といった畝情報が含まれていてもよい。或いは、畝情報に代えて、制御部51が、播種位置若しくは播種列などの播種情報を播種設定ボックスB23に表示させてもよい。また、前述した培土設定ボックスB24の場合と同様に、制御部51が播種作業の作業情報の項目及び設定値を播種設定ボックスB23に表示させ、オペレータが播種作業の作業情報を変更及び入力してもよい。
【0077】
オペレータが、作業連携画面D6でOKキーB10を操作すると、制御部51が、作業連携画面D6で指定された連携農作業を示す作業指定情報と、当該連携農作業の表示或いは入力された作業情報とを記憶部53に記憶させ、図5Aのルート作成画面D7を表示操作部52により表示させる。このとき、制御部51は、ルート作成画面D7の作業方向及び枕地幅の入力欄に、連携農作業で設定された作業方向及び枕地幅を表示させる。そして、オペレータが、ルート作成画面D7のライン作成キーB13を操作すると、制御部51が、ルート作成画面D7などの設定内容を内部メモリに記憶させ、圃場で作業装置2により対象農作業を行うために、農業機械1を走行させる走行ラインを圃場マップMP2に作成する。
【0078】
図9A及び図9Bは、農作業支援装置50の走行ラインの作成動作を示すフローチャートである。図9A及び図9Bの各ステップは、制御部51により実行される。図10A図10Dは、圃場マップMP2への走行ラインの作成過程を示す図である。以下、散布装置2Bにより、対象農作業として防除作業を行うために、農業機械1を走行させる走行ラインを作成する場合を例に説明する。
【0079】
前述したように、オペレータが、図5Aのルート作成画面D7で各設定項目に数値及び選択内容を入力した後、ライン作成キーB13を操作すると、制御部51は、各設定項目に入力された数値などを内部メモリに一旦記憶させた後、内部メモリに記憶された圃場情報、作業装置2の装置情報、及び対象農作業の作業情報を読み込む(図9AのS1)。
【0080】
そして、制御部51は、圃場情報から圃場の輪郭H1を示す複数の圃場辺H1a~H1eを特定し、装置情報から散布装置2Bの基本となる第1作業幅Wa1と散布装置2Bの変更可能な作業幅Waの仕様とを特定し、作業情報から作業方向と枕地幅とを特定する(S2)。このとき特定される散布装置2Bの第1作業幅Wa1は、図3の装置設定画面D4で設定された散布装置2Bの全作業幅である。散布装置2Bの変更可能な作業幅Waの仕様には、散布装置2Bに設けられた散布ユニット76(76L、76R、76M)と、当該散布ユニット76の変更形態(設置数、設置状態、姿勢など)と、当該散布ユニット76の作業幅の変更範囲(最小値から最大値の範囲)などが含まれている。
【0081】
制御部51は、例えば図10Aに示すように圃場マップMP2において、作業方向Vに対して平行でない圃場辺H1a、H1cを枕地幅Wpだけ圃場マップMP2の内側にオフセットした位置に、圃場辺H1a、H1cと平行なオフセット辺H2a、H2cを作成する。そして、制御部51は、オフセット辺H2a、H2cと他の圃場辺H1b、H1dとで囲まれる中央領域C1を決定し、圃場マップMP2の中央領域C1以外の部分を枕地E1a、E1cに決定する(図9AのS3)。即ち、枕地E1aは、圃場辺H1a、H1b、H1dとオフセット辺H2aとで囲まれる領域であり、枕地E1cは、圃場辺H1c、H1b、H1dとオフセット辺H2cとで囲まれる領域である。
【0082】
他の例として、制御部51は、作業方向Vと平行な圃場辺H1b、H1d(図10A
も枕地幅Wp或いは所定距離だけ内側にオフセットして、圃場辺H1b、H1dと平行なオフセット辺をそれぞれ作成し、当該オフセット辺と前述のオフセット辺H2a、H2cとで囲まれる領域を、中央領域に決定してもよい。この場合、当該中央領域と圃場辺H1a~H1dとの間に、それぞれ枕地が設定される。
【0083】
次に、制御部51は、走行ラインを作成する対象農作業(防除作業)と連携する連携農作業(例えば培土作業)の作業情報が記憶部53に記憶されているか否かを確認する。連携農作業の作業情報が記憶部53に記憶されている場合(図9AのS4:YES)、制御部51は、連携農作業の作業情報から、連携農作業の作業状態及び作業位置を特定する(S5)。具体的には、このとき制御部51は、連携農作業である培土作業により形成される畝Uaの畝幅Wu及び全畝数を作業状態として特定し、当該畝幅Wu全畝数、及び圃場情報(圃場における中央作業領域など)に基づいて、連携農作業の作業位置として畝位置を特定する。畝位置とは、圃場に形成される複数の畝Uaの位置のことである。
【0084】
図10Bには、制御部51により特定された複数の畝位置R1が、それぞれ太い破線で表されている。畝位置R1は、作業方向Vに対して平行な直線であり、畝ラインR1とも呼ばれる。複数の畝位置(畝ライン)R1にそれぞれ対応する畝Uaの幅方向は、作業方向Vに対して垂直な方向である。
【0085】
他の例として、制御部51は、連携農作業の作業情報に含まれる走行ライン(連携農作業を作業装置2により行うために作業機1を走行させる走行ライン)と、連携農作業を行う作業装置2の装置情報とに基づいて、連携農作業の作業位置(畝位置など)を特定してもよい。或いは、制御部51が、連携農作業を行わない作業機1の走行可能ライン(図11に示すように畝Uaが形成されない畝間Suを表す畝間ラインなど)を、予め連携農作業の作業情報に含めて記憶部53に記憶させておき、その後当該走行可能ラインに基づいて、連携農作業の作業位置(畝位置など)を特定してもよい。
【0086】
次に、制御部51は、記憶部53に記憶された農業機械1の機械情報及び作業装置2の装置情報から、農業機械1の車体3に対する作業装置2の相対位置及び車体3の幅方向に並ぶ左右一対の走行装置7の間隔を特定する(図9AのS6)。このとき制御部51は、例えば位置検出装置40により検出された車体3の位置を基準点とし、車体3の前後方向における基準点から走行装置7の中心までの第1距離と、車体3の幅方向における基準点から走行装置7の中心までの第2距離とを、車体3に対する作業装置2の相対位置として特定(算出)する。また、制御部51は、農業機械1の機械情報から左右一対の走行装置7の前輪7Fの間隔と後輪7Rの間隔とを検出し、このうちの狭い方の間隔を走行装置7の間隔Taとして特定する。そして、制御部51は、図11に示すように、走行装置7の間隔Taと畝位置R1と畝幅Wuとに基づいて、走行装置7の間に通す通過畝数を算出する(図9AのS7)。
【0087】
また、制御部51は、第1作業幅Wa1と畝位置R1と畝幅Wuとに基づいて、散布装置2Bが第1作業幅Wa1で同時に農作業(防除作業)を行うことが可能な範囲に含まれる作業対象畝数を算出する(S8)。また、制御部51は、全畝数を作業対象畝数で除算して、その商を第1走行ラインの作成数に決定し且つ余りの畝数を求める(S9)。なお、全畝数が作業対象畝数で割り切れた場合は、余りの畝数は「0」になる。
【0088】
次に、制御部51は、連携農作業の畝位置R1に基づいて、図10Cに示すように、第1作業幅Wa1で対象農作業を行う第1走行ラインL1を決定数だけ圃場マップMP2に作成する(図9BのS10)。詳しくは、制御部51は、例えば第1走行ラインL1を複数作成する場合、まず図10Cに示す作業方向Vと平行な中央領域C1の一辺から第1作業幅Wa1の半分の距離Wa1/2だけ離れた中央領域C1内の該当位置に、作業方向V
及び畝ラインR1と平行な1本の第1走行ラインL1を、作業方向Vと平行でない複数のオフセット辺H2a、H2cに亘って作成する。そして、制御部51は、当該1本の第1走行ラインL1を基準にして、作業方向V及び畝ラインR1と平行な第1走行ラインL1を第1作業幅Wa1の間隔で中央領域C1にオフセット辺H2a、H2cに亘って作成する。
【0089】
図10Cに示すように、中央領域C1に第1走行ラインL1を作成するだけでは、第1作業幅Wa1よりも所定値以上も幅Wrが狭い余り領域C1rが中央領域C1の端部に生じることがある。このときの所定値は、第1作業幅Wa1より小さい値に設定されている。余り領域C1rが中央領域C1の端部に生じた場合(図9BのS12:YES)、制御部51は、余りの畝数と畝位置R1と畝幅Wuとに基づいて、余り領域C1rの幅Wrを算出する(S13)。なお、作業条件などによって、中央領域C1の端部以外に余り領域C1rが生じることもある。
【0090】
次に、制御部51は、作業装置2の作業幅Waの仕様に基づいて、余り領域C1rの幅Wrに応じた作業装置2の第2作業幅Wa2を決定する(図9BのS14)。このとき、制御部51は、余り領域C1rの幅Wrに適合する散布ユニット76(76L、76R、76M)及び散布口76dの少なくともいずれかを判断し、当該適合する散布ユニット76及び散布口76dの少なくともいずれかに基づいて第2作業幅Wa2を決定する。即ち、制御部51は、第2作業幅Wa2を実現するための作業装置2の作業形態(複数の散布ユニット76L、76R、76Mのうち、散布を行うのに有効な散布ユニット、当該有効な散布ユニットの幅方向への突出長、姿勢、及び散布位置(散布口76d))を決定する。なお、第2作業幅Wa2は、第1作業幅Wa1よりも狭い幅である。制御部51は、決定した作業装置2の第2作業幅Wa2及び作業形態を関連付けて記憶部53に記憶させる。
【0091】
次に、制御部51は、図10Dに示すように、第2作業幅Wa2で農作業を行う第2走行ラインL2を中央領域C1に作成する(図9BのS15)。このとき、制御部51は、余り領域C1rにある連携農作業の畝位置、農業機械1の車体3に対する作業装置2の相対位置、及び通過畝数に基づいて、作業方向V及び畝ラインR1と平行な第2走行ラインL2を中央領域C1にオフセット辺H2a、H2cに亘って作成する。
【0092】
具体的には、例えば図12Aに示すように、農業機械1の幅方向の中心軸Jaと散布装置2B(作業装置2)の幅方向の中心軸Jaとが一致し、且つ余り領域C1rにある畝数が通過畝数と同様に偶数である場合、余り領域C1rにある畝数から通過畝数を減算した値も偶数になるので、制御部51は、当該減算値が偶数であることに基づいて、余り領域C1rの幅Wrとほぼ同等の第2作業幅Wa2を決定する。また、制御部51は、余り領域C1rにある畝Ua2に対して散布装置2Bの左散布ユニット76L、右散布ユニット76R、及び中央散布ユニット76Mにより左右均等に防除作業を行えるように、各散布ユニット76L、76R、76Mのそれぞれの作業幅と資材を散布させる散布口76dとを決定する。そして、制御部51は、農業機械1及び作業装置2の中心軸Jaを、余り領域C1rにある複数の畝Ua2の並列方向における中心位置Juに一致させて、当該中心軸Ja及び中心位置Juを通る第2走行ラインL2を余り領域C1rに作成する(図10D)。
【0093】
この場合、中央散布ユニット76Mが、一対の走行装置7の間を通る畝Ua2に対して防除作業を行う。左散布ユニット76L及び右散布ユニット76Rは、余り領域C1rにある畝数(図12Aの例では8本)から通過畝数(2本)を減算した畝数(6本)の半数(3本)の畝Ua2に対してそれぞれ防除作業を行う。
【0094】
また、例えば余り領域C1rにある畝数が通過畝数とは異なって奇数である場合、余り領域C1rにある畝数から通過畝数を減算した値も奇数になるので、制御部51は、当該減算値が奇数であることに基づいて、例えば図12Bに示すように、余り領域C1rの幅Wrに畝幅Wuを加算した値を、第2作業幅Wa2に決定する。また、制御部51は、余り領域C1rにある畝Ua2と、当該畝Ua2に隣接する1つの畝(余り領域C1rにない畝)Ua1とに対して左散布ユニット76L、右散布ユニット76R、及び中央散布ユニット76Mにより左右均等に防除作業を行えるように、各散布ユニット76L、76R、76Mのそれぞれの作業幅と資材を散布させる散布口76dとを決定する。そして、制御部51は、農業機械1及び作業装置2(散布装置2B)の中心軸Jaを、畝Ua1と畝Ua2の並列方向における中心位置Jvに一致させて、当該中心軸Ja及び中心位置Jvを通る第2走行ラインL2を余り領域C1rに作成する。
【0095】
この場合も、中央散布ユニット76Mが、一対の走行装置7の間を通る畝Ua2に対して防除作業を行う。左散布ユニット76L及び右散布ユニット76Rは、中央領域C1にある複数の畝Uaのうち、余り領域C1rにある畝数(図12Bの例では、余り領域C1rにある畝Ua2は9本)と隣接する畝Ua1の数(1本)との合計数(10本)から通過畝数(2本)を減算した畝数(8本)の半数(4本)の畝Ua2、Ua1に対してそれぞれ防除作業を行う。
【0096】
また、例えば余り領域C1rにある畝数が、左散布ユニット76Lと中央散布ユニット76Mとで防除作業を行うことが可能な最大作業畝数(例えば10本)以下の場合、制御部51は、例えば図12Cに示すように、余り領域C1rの幅Wrとほぼ同等の第2作業幅Wa2を決定する。また、制御部51は、余り領域C1rにある畝Ua2に対して散布装置2Bの左散布ユニット76L及び中央散布ユニット76Mにより防除作業を行えるように、左散布ユニット76L及び中央散布ユニット76Mのそれぞれの作業幅と資材を散布させる散布口76dとを決定する。そして、制御部51は、農業機械1及び散布装置2Bの中心軸Jaを、いずれか2つの畝Ua2同士の間に位置させて、当該中心軸Jaを通る第2走行ラインL2を余り領域C1rに作成する。
【0097】
この場合、中央散布ユニット76Mが、左右一対の走行装置7の間を通る畝Ua2に対して防除作業を行う。一対の走行装置7の左側方には、余り領域C1rにある畝数(図12Cの例では余り領域C1rにある畝Ua2は8本)から通過畝数(2本)を減算した畝数(6本)の畝Ua2が位置するので、左散布ユニット76Lが、当該左側方にある畝Ua2に対して防除作業を行う。なお、左散布ユニット76Lに代えて、右散布ユニット76Rと中央散布ユニット76Mとで、余り領域C1rにある畝Ua2に対して防除作業を行えるように、制御部51が第2走行ラインL2を余り領域C1rに作成してもよい。
【0098】
また、例えば余り領域C1rにある畝数が、左散布ユニット76Lだけで防除作業を行うことが可能な最大作業畝数(例えば8本)以下の場合、制御部51は、例えば図12Dに示すように、余り領域C1rの幅Wrとほぼ同等の第2作業幅Wa2を決定する。また、制御部51は、余り領域C1rにある畝Ua2に対して散布装置2Bの左散布ユニット76Lにより防除作業を行えるように、左散布ユニット76Lの作業幅と資材を散布させる散布口76dとを決定する。そして、制御部51は、農業機械1及び散布装置2Bの中心軸Jaを余り領域C1rにない2つの畝Ua1同士の間に位置させて、当該中心軸Jaを通る第2走行ラインL2を中央領域C1に作成する。
【0099】
或いは、制御部51は、図12Eに示すように、余り領域C1rにある畝Ua2のうち、作業方向Vと平行な圃場辺H1dの近くに位置する通過畝数(2本)の畝Ua2同士の間に、農業機械1及び散布装置2Bの中心軸Jaを位置させて、当該中心軸Jaを通る第2走行ラインL2を余り領域C1rに作成してもよい。また、制御部51は、一対の走行
装置7の間を通す畝Ua2を散布装置2Bによる防除作業の対象外にし、それ以外の畝Ua2に対して左散布ユニット76Lで防除作業を行うようにしてもよい。この場合、作業者が、一対の走行装置7の間を通る畝Ua2に対して、別途防除作業を行うようにしてもよい。
【0100】
また、例えば余り領域C1rにある畝数が、左散布ユニット76Lだけで防除作業を行うことが可能な最大作業畝数(例えば8本)以下であり、且つ図12Fに示すように、余り領域C1rにある畝Ua2と最も近い圃場辺H1dとの間に、畝Uaが形成されない非作業領域Edが設けられた場合、制御部51は、第2走行ラインL2を非作業領域Edに作成し、余り領域C1rにある畝Ua2に対して左散布ユニット76Lで防除作業を行うようにしてもよい。
【0101】
散布装置2B、散布装置2Bの作業形態、第2走行ラインL2、及び第2走行ラインL2の作成方法は、上記例示のものに限定されない。また、上記例示以外の散布装置2Bと散布装置2Bの他の作業形態があってもよいし、他の方法で第2走行ラインL2が作成されてもよい。
【0102】
また、農業機械1が第2走行ラインL2に沿って走行して、散布装置2Bが第2作業幅Wa2で防除作業を行った場合の作業軌跡と、農業機械1が第2走行ラインL2の隣にある第1走行ラインL1に沿って走行して、散布装置2Bが第1作業幅Wa1で防除作業を行った場合の作業軌跡とが一部重複するように、制御部51が第2走行ラインL2を作成してもよい。また、農業機械1が一方の第1走行ラインL1に沿って走行して、散布装置2Bが第1作業幅Wa1で防除作業を行った場合の作業軌跡と、農業機械1が一方の第1走行ラインL1の隣にある他方の第1走行ラインL1に沿って走行して、散布装置2Bが第1作業幅Wa1で防除作業を行った場合の作業軌跡とが一部重複するように、制御部51が複数の第1走行ラインL1を作成してもよい。
【0103】
また、図9AのステップS3の後、連携農作業の作業情報が記憶部53に記憶されていない場合(図9AのS4:NO)、制御部51は、第1作業幅Wa1で農作業を行う第1走行ラインL1を圃場マップMP2に1つ以上作成する(図9BのS11)。そして、中央領域C1に第1走行ラインL1を作成するだけでは、第1作業幅Wa1よりも所定値以上も幅Wrが狭い余り領域C1rが中央領域C1の端部に生じた場合(S12:YES)、制御部51は、当該余り領域C1rの幅Wrを算出する(S13)。また、制御部51は、散布装置2Bの作業幅Waの仕様に基づいて、余り領域C1rの幅Wrに応じた散布装置2Bの第2作業幅Wa2を決定し(S14)、第2作業幅Wa2で農作業を行う第2走行ラインL2を中央領域C1に作成する(S15)。
【0104】
上述したように、対象農作業の第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2を圃場マップMP2に作成すると、制御部51は、当該走行ラインL1、L2、中央領域C1、及び枕地E1a、E1cをそれぞれ示す情報(位置、長さ、大きさなど)を記憶部53に記憶させる(S16)。このとき、制御部51は、対象農作業の走行ラインL1、L2などの情報が対象農作業の作業情報に含まれるように、当該走行ラインL1、L2などの情報を対象農作業の他の作業情報と関連づけて記憶部53に記憶させる。なお、余り領域C1rが中央領域C1の端部に生じない場合(S12:NO)、制御部51は、第1走行ラインL1、中央領域C1、及び枕地E1a、E1cをそれぞれ示す情報を記憶部53に記憶させる(S16)。
【0105】
制御部51は、上述のように複数の走行ラインL1、L2と枕地E1a、E1cなどを確定すると、図5Bに示すように、ルート作成画面D7中の圃場マップMP2に、複数の走行ラインL1、L2を表示させる。オペレータ或いは制御部51が、ルート作成画面D
7の作業方向、枕地幅、作業連携画面D6(図6)の畝情報、装置設定画面D4(図3)の作業装置2の装置情報の少なくともいずれかの数値を変更した後、オペレータが再度ライン作成キーB13を操作すると、制御部51は、前述したように圃場マップMP2に走行ラインL1、L2を作成し、且つ枕地E1a、E1cと中央領域C1を設ける。
【0106】
即ち、制御部51は、対象農作業の作業情報、連携農作業の作業情報、及び作業装置2の装置情報の少なくともいずれかの変更に応じて、走行ラインL1、L2などを変更する。オペレータは、ルート作成画面D7に表示された走行ラインL1、L2などを見ながら、作業情報又は装置情報を変更して、走行ラインL1、L2などを適切に設定することができる。また、オペレータが前の画面D3~D6の設定内容(入力値)を変更しても、制御部51は、当該設定内容の変更に応じて走行ラインL1、L2などを変更する。
【0107】
ルート作成画面D7には、対象農作業の走行ラインL1、L2だけでなく、連携農作業の作業位置なども圃場マップMP2に表示させるための連携表示キーB22が設けられている。オペレータが、連携表示キーB22を操作すると、制御部51は、図7の表示設定画面D9を表示操作部52により表示させる。このとき制御部51は、表示設定画面D9をポップアップでルート作成画面D7上に表示させてもよいし、或いはルート作成画面D7に代えて表示設定画面D9を表示操作部52に表示させてもよい。
【0108】
表示設定画面D9には、対象農作業と連携可能な他の農作業の作業位置と走行ラインの表示(ON)及び非表示(OFF)を設定(指示)する表示設定キーB50~B55が表示されている。前述したように、図2の作業選択画面D3で、防除作業が対象農作業として指定され、且つ図6の作業連携画面D6で、培土作業が連携農作業として選択指定されたため、制御部51は、表示設定画面D9の初期状態で、図7に示すように、防除作業の作業位置に対応する表示設定キーB54をOFFにし、防除作業の走行ラインに対応する表示設定キーB55をONにしている。即ち、制御部51は、対象農作業である防除作業の作業位置を表示せず、走行ラインを表示するように設定している。
【0109】
また、制御部51は、培土作業の作業位置に対応する表示設定キーB52をONにし、培土作業の走行ラインに対応する表示設定キーB53をOFFにしている。即ち、制御部51は、連携農作業である培土作業の作業位置を表示し、走行ラインを表示しないように設定している。また、制御部51は、播種作業の作業位置に対応する表示設定キーB50と、走行ラインに対応する表示設定キーB51とを、それぞれOFFにしている。即ち、制御部51は、対象農作業でも連携農作業でもない播種作業の作業位置及び走行ラインを表示しないように設定している。
【0110】
オペレータは、表示操作部52を操作することにより、表示設定キーB50~B55をON(表示)或いはOFF(非表示)に切り換えることができる。即ち、オペレータは、表示操作部52により表示設定キーB50~B55を操作して、播種作業、培土作業、及び防除作業のそれぞれの作業位置と走行ラインの表示及び非表示を指示する表示指示情報(第1指示情報、第2指示情報)を入力することができる。オペレータが、表示設定画面D9でOKキーB10を操作すると、制御部51が、表示設定画面D9で表示設定キーB50~B55により入力された表示指示情報を記憶部53に記憶させ、図5Aなどのルート作成画面D7を表示操作部52により表示させる。
【0111】
図13A及び図13Bは、農作業支援装置50の表示動作を示すフローチャートである。制御部51は、例えばライン作成キーB13或いは連携表示キーB22が操作されるなどして、対象農作業及び連携農作業の少なくともいずれかの走行ライン或いは作業位置を表示操作部52に表示させる際に、本表示動作を開始する。
【0112】
まず制御部51は、記憶部53に記憶された複数の農作業の表示指示情報を読み込む(図13AのS21)。例えば、表示設定画面D9(図7)で表示設定キーB55がONに操作されて、対象農作業(防除作業、第2農作業)の走行ラインを表示する指示が表示指示情報(第1指示情報、第2指示情報)に示されている場合(図13AのS22:YES)、制御部51は、記憶部53から対象農作業の作業情報を読み出して、当該作業情報から対象農作業の走行ラインを示す情報を特定する(S23)。
【0113】
また、表示設定画面D9(図7)で表示設定キーB54がONに操作されて、対象農作業の作業位置を表示する指示が表示指示情報(第2指示情報)に示されている場合(図13AのS24:YES)、制御部51は、記憶部53から対象農作業の作業情報を読み出して、当該作業情報などから対象農作業の作業位置を特定する(S25)。
【0114】
また、表示設定画面D9(図7)で表示設定キーB52がONに操作されて、連携農作業(培土作業、第1農作業)の作業位置を表示する指示が表示指示情報(第1指示情報、第2指示情報)に示されている場合(図13AのS26:YES)、制御部51は、連携農作業の作業情報を記憶部53から読み出して、当該作業情報などから連携農作業の作業位置を特定する(S27)。
【0115】
また、表示設定画面D9(図7)で表示設定キーB53がONに操作されて、連携農作業の走行ラインを表示する指示が表示指示情報(第2指示情報)に示されている場合(図13AのS28:YES)、制御部51は、連携農作業の作業情報を記憶部53から読み出して、当該作業情報から連携農作業の走行ラインを示す情報を特定する(S29)。
【0116】
また、表示設定画面D9(図7)で表示設定キーB50がONに操作されて、連携可能な他の農作業(播種作業)の少なくともいずれかの作業位置を表示する指示が表示指示情報に示されている場合(図13BのS30:YES)、制御部51は、他の農作業の作業情報を記憶部53から読み出して、当該作業情報などから他の農作業の作業位置を特定する(S31)。
【0117】
また、表示設定画面D9(図7)で表示設定キーB51がONに操作されて、他の農作業の走行ラインを表示する指示が表示指示情報に示されている場合(図13BのS32:YES)、制御部51は、他の農作業の作業情報を記憶部53から読み出して、当該作業情報から他の農作業の走行ラインを示す情報を特定する(S33)。
【0118】
そして、制御部51は、図14A及び図14Bなどに示すように、表示操作部52に表示しているルート作成画面D7などに圃場マップMP2を表示し(図13BのS34)、ステップS22~S33で特定した走行ライン及び作業位置を表示操作部52により圃場マップMP2に描画する(S35)。
【0119】
図14A及び図14Bは、複数種類の農作業の走行ライン及び作業位置を表示したルート作成画面D7の一例及び他の例を示す図である。図14Aに示すルート作成画面D7中の圃場マップMP2には、制御部51及び表示操作部52によって、対象農作業(防除作業、第2農作業)の走行ラインL1、L2が太い実線で描画(表示)され、連携農作業(培土作業、第1農作業)の作業位置R1が太い破線で描画されている。また、走行ラインL1、L2及び作業位置R1の表示形態を示す凡例Zが、制御部51及び表示操作部52によって、ルート作成画面D7に表示されている。
【0120】
図14Bに示すルート作成画面D7中の圃場マップMP2には、制御部51及び表示操作部52によって、対象農作業(防除作業、第2農作業)の走行ラインL1、L2に加えて、対象農作業の作業位置(薬剤の散布軌跡(散布範囲))Y1が描画され、連携農作業
(培土作業、第1農作業)の作業位置R1に加えて、連携農作業の走行ラインL4が2点鎖線で描画されている。対象農作業の作業位置Y1は、連携農作業の作業位置R1よりも広範囲に及び、図14Bでは、ハッチングを付した矩形で表されている。また、走行ラインL1、L2、L4及び作業位置R1、Y1の表示形態を示す凡例Zが、制御部51及び表示操作部52によって、ルート作成画面D7に表示されている。
【0121】
図示を省略しているが、制御部51は、連携可能な他の農作業(播種作業)の作業位置及び走行ラインの少なくともいずれかの表示指示がある場合、他の農作業(播種作業)の作業位置及び走行ラインの少なくともいずれかを、対象農作業(防除作業)及び連携農作業(培土作業)の走行ラインL1、L2、L4及び作業位置R1、Y1とは異なる形態(又はオブジェクト)で圃場マップMP2に描画する。
【0122】
制御部51は、対象農作業、連携農作業、及びその他の農作業のうちの少なくともいずれかの、走行ライン及び作業位置をそれぞれ見た目が異なるオブジェクト、色、或いはパターンなどで圃場マップMP2に表示してもよい。また、制御部51は、対象農作業、連携農作業、及びその他の農作業のうちの少なくともいずれかの、走行ライン及び作業位置の少なくともいずれかを含む圃場マップMP2を、ルート作成画面D7だけではなく、後述する走行制御画面D8などのような、表示操作部52が表示する他の画面に表示してもよい。
【0123】
また、制御部51は、図15に示すように、実施済みの農作業の作業位置及び走行ラインの表示或いは非表示を設定(指示)する表示設定キーB25と、未実施の農作業の作業位置及び走行ラインの表示或いは非表示を設定(指示)する表示設定キーB26とをルート作成画面D7に表示してもよい。そして、制御部51は、表示設定キーB25、B26の操作により入力された指示を示す情報(第3指示情報)に基づいて、対象農作業(防除作業)、連携農作業(培土作業)、及びその他の農作業(播種作業)の作業位置及び走行ラインの圃場マップMP2に対する表示或いは非表示を制御してもよい。
【0124】
例えば、オペレータが表示設定キーB25をOFFに操作すると、制御部51は、ルート作成画面D7中の圃場マップMP2に表示している対象農作業及び連携農作業などのうち、実施済みの農作業の作業位置及び走行ラインを消去する。この後、オペレータが表示設定キーB25をONに操作すると、制御部51は、表示設定画面D9(図7)で表示指示が入力された対象農作業及び連携農作業などのうち、実施済みの農作業の作業位置及び走行ラインを、ルート作成画面D7中の圃場マップMP2に表示する。
【0125】
また、オペレータが表示設定キーB26をOFFに操作すると、制御部51は、ルート作成画面D7中の圃場マップMP2に表示している対象農作業及び連携農作業などのうち、未実施の農作業の作業位置及び走行ラインを消去する。この後、オペレータが表示設定キーB26をONに操作すると、制御部51は、表示設定画面D9(図7)で表示指示が入力された対象農作業及び連携農作業などのうち、未実施の農作業の作業位置及び走行ラインを、ルート作成画面D7中の圃場マップMP2に表示する。
【0126】
上述した実施形態では、オペレータが対象農作業及び連携農作業をそれぞれ指定する例を示したが、これ以外に、例えば、オペレータが指定した対象農作業に応じて、農作業支援装置50の制御部51が、連携農作業を1つ以上決定し、対象農作業の走行ラインと連携農作業の作業位置とを、圃場マップMP2にそれぞれ描画してもよい。
【0127】
ルート作成画面D7に対象農作業の走行ラインL1、L2が表示された後、オペレータがルート作成キーB14を操作すると、制御部51は、農業機械1を走行させる複数の走行ラインL1、L2の走行順を決定する。このとき、制御部51は、例えば、圃場情報か
ら特定した圃場の出入口に最も近い走行ラインL2を、走行順が最後(走行ラインL1をN本作成した場合のN番目)の走行ラインL2に決定し、当該最後の走行ラインL2の両端点P1、P2(図10E)のうち、出入口に最も近い端点をゴール位置Pgに決定する。そして、制御部51は、最後の走行ラインL2を基準にして、他の走行ラインL1の走行順を決定し、走行順が最初(1番目)の走行ラインL1の端点P1、P2のいずれかをスタート位置Psに決定する。また、制御部51は、複数の走行ラインL1、L2の端点P1、P2のうち、一方を始点P1に決定し、他方を終点P2に決定する(図10E)。
【0128】
なお、制御部51は、例えば、複数の走行ラインL1の作成順を走行順に決定し、最初に作成した走行ラインL1の作成開始点をスタート位置Psに決定し、最後に作成した走行ラインL1の作成終了点をゴール位置Pgに決定してもよい。
【0129】
走行順などの決定後、制御部51は表示操作部52により、図5Cに示すようにルート作成画面D7中の圃場マップMP2に、スタート位置Ps及びゴール位置Pgを表示させ、決定した走行順で隣接する走行ラインL1同士を繋ぐ円弧状の補助ラインL3を表示させ、複数の走行ラインL1に農業機械1の進行方向を示す矢印を表示させる。これにより、複数の走行ラインL1が接続されて、一連の走行ルートL10が圃場マップMP2に作成及び表示された状態となる。
【0130】
他の例として、ルート作成キーB14を省略し、制御部51が、前述したように複数の走行ラインL1と枕地E1a、E1cと中央領域C1を確定した後に、自動的に一連の走行ルートL10を圃場マップMP2に作成して、当該走行ルートL10をルート作成画面D7に表示させてもよい。また、ライン作成キーB13も省略し、例えば圃場情報、作業装置2の装置情報、及び作業条件が表示操作部52により入力された後に、制御部51が、複数の走行ラインL1を圃場マップMP2に作成してもよい。
【0131】
オペレータは、表示操作部52を操作することによって、ルート作成画面D7の圃場マップMP2中のスタート位置Psを別の始点P1に移動(変更)させたり、ゴール位置Pgを別の終点P2に移動(変更)させたりすることができる。スタート位置Ps又はゴール位置Pgが別の始点P1又は終点P2に移動すると、制御部51は、当該移動に応じて、複数の走行ラインL1の走行順を変更し、スタート位置Ps、ゴール位置Pg、補助ラインL3、及び複数の走行ラインL1の進行方向を示す矢印のそれぞれの表示を変更する。
【0132】
ルート作成画面D7にスタート位置Ps及びゴール位置Pgなどが表示された後、オペレータが次へキーB9を操作する。これにより、制御部51は、走行ルートL10を示す情報(複数の走行ラインL1、走行順、スタート位置Ps、ゴール位置Pg、及び補助ラインL3)を記憶部53又は内部メモリに記憶させ、図6に示す走行制御画面D8を表示操作部52に表示させる。また、制御部51は、記憶部53及び内部メモリに記憶された各種設定情報に基づいて走行データを生成し、当該走行データを通信部54により農業機械1の制御装置60に送信(出力)する。
【0133】
走行データには、当該走行データに基づいて実施する農作業の種類と、当該農作業を実施するための作業装置2の装置情報、圃場情報、及び作業情報が含まれている。そのうち、圃場情報には、圃場マップMP2、走行ラインL1、L2、走行ルートL10、中央領域C1、枕地E1a、E1c、及び畝情報などをそれぞれ示す情報が含まれている。作業情報には、走行ラインL1、L2に対応する作業装置2の作業幅Wa1、Wa2が含まれている。
【0134】
走行制御画面D8は、圃場で農業機械1を走行させながら作業装置2により農作業を行
う状態を示す画面である。走行制御画面D8には、走行ルートL10を含む圃場マップMP2、農業機械マークK2、農業機械1の走行状態(直進、停止など)、及び作業装置2の仕様などが表示されている。制御部51は、位置検出装置40により検出された実際の車体3の位置を所定の周期で通信部54により取得し、当該車体3の位置に応じた圃場マップMP2中の該当箇所に、農業機械マークK2を随時表示する。即ち、走行制御画面D8中の農業機械マークK2は、農業機械1の車体3の実際の位置を示している。制御部51は、作業装置2の仕様として、作業装置2の種類(「散布装置」)と作業形態(「左右中央散布」)とを走行制御画面D8に表示する。
【0135】
また、走行制御画面D8には、連携表示キーB22が表示されている。制御部51は、走行制御画面D8で連携表示キーB22が操作されたときにも、図13A及び図13Bに示した表示動作を実行し、対象農作業及び連携農作業などの走行ライン或いは作業位置を表示操作部52に表示させる。また、制御部51は、前述した表示設定キーB25、B26も走行制御画面D8に表示し、当該表示設定キーB25、B26の操作に応じて、対象農作業及び連携農作業などのうち、実施済みの農作業の作業位置及び走行ラインの表示及び非表示を制御したり、未実施の農作業の作業位置及び走行ラインの表示及び非表示を制御したりしてもよい。
【0136】
例えば作業者(オペレータ)が、走行制御画面D8を見ながら農業機械1を手動運転して、対象農作業の走行ルートL10のスタート位置Psに相当する位置まで農業機械1を移動させてから、操作装置62(図1)に備わるモードスイッチ62bを自動運転に切り替えて、自動スイッチ62aで開始操作を行う。これにより、制御装置60は、自動運転による自動作業モードを開始し、農作業支援装置50から受信した走行データと、位置検出装置40により検出された車体3の位置とに基づいて、車体3を自動運転で走行させながら作業装置2により圃場に対して対象農作業を行う。なお、作業者が自動スイッチ62aで停止操作を行うと、制御装置60は自動作業モードを停止する。
【0137】
図16A及び図16Bは、自動作業モードでの農作業支援システム100の動作を示すフローチャートである。農業機械1の制御装置60は、自動作業モードに移行すると、まず走行データを読み込み(図16AのS41)、走行データから対象農作業の走行ルートL10(走行ラインL1、L2も)、枕地E1a、E1c、スタート位置Ps、及びゴール位置Pgを特定する(S42)。また、制御装置60は、走行データに含まれる作業装置2の装置情報から作業装置2の仕様を特定する(S43)。
【0138】
そして、制御装置60は、走行ルートと車体3の位置とに基づいて、農業機械1の自動運転(車体3の自動走行及び自動操舵)と作業装置2による農作業を開始する(S44)。この際、制御装置60は、まずスタート位置Psがある最初の走行ラインと車体3の位置とに基づいて、スタート位置Psから車体3を自動運転で走行ラインに沿って走行させながら、作業装置2により農作業を行う。なお、図6に示す走行制御画面D8は、農業機械1の自動運転が開始されてからしばらくした後の、農業機械1の走行状態と作業装置2による作業状態とを示している。
【0139】
自動作業モードにおいて、制御装置60は車体3の自動操舵を行う。詳しくは、制御装置60は、位置検出装置40により検出された車体3の位置と、走行ラインL1(又は走行ラインL2)との偏差を演算する。当該偏差が閾値未満である場合、制御装置60は、操舵軸31(図1)の回転角を維持する。また、車体3の位置と走行ラインL1との偏差が閾値以上であって、車体3が走行ラインL1に対して左側に位置している場合、制御装置60は、車体3の操舵方向が右方向となるように、操舵軸31を回転させる(自動操舵)。また、車体3の位置と走行ラインL1との偏差が閾値以上であって、車体3が走行ラインL1に対して右側に位置している場合、制御装置60は、車体3の操舵方向が左方向
となるように、操舵軸31を回転させる。また、制御装置60は、走行ラインL1と車体3の位置とに基づいて、車体3の走行速度を自動で変更する。
【0140】
車体3がいずれかの走行ラインの終点P2に到達し(図16AのS45)、当該終点P2が走行ルートのゴール位置Pgでなければ(S46:NO)、制御装置60は、走行データに含まれる圃場情報、作業装置2の装置情報、及び作業情報と、農業機械1(車体3)の位置とに基づいて、作業装置2の手動操作の要否を判断する。
【0141】
例えば作業装置2が散布装置2B以外の作業装置(培土装置、播種装置など)である場合、制御装置60は、作業装置2の手動操作が必要でないと判断し(図16AのS48:NO)、自動作業モード及び自動運転を継続して、車体3を次の走行ラインの始点P1に向かって旋回させる。また、車体3が次の走行ラインの始点P1に到達したときも(S45、S46:NO)、制御装置60は、作業装置2の手動操作が必要でないと判断し(S47:NO)、自動作業モード及び自動運転を継続して、車体3を自動運転で次の走行ラインに沿って走行させながら、作業装置2により農作業を行う。そして、車体3が走行ルートのゴール位置Pgに到達すると(S45、S46:YES)、制御装置60は、自動作業モードを終了し、農業機械1の自動運転と作業装置2による農作業とを停止する(S47)。
【0142】
対して、作業装置2が散布装置2Bであって、当該散布装置2Bに設けられた散布ユニット76(76L、76R、76M、図20Aなど)が作業状態(ON:散布駆動状態)と非作業状態(OFF:散布停止状態)とに手動で操作される場合、車体3及び散布装置2Bの旋回中に無駄に資材が散布されるのを防ぐため、制御装置60は、作業装置2の手動操作が必要であると判断する(S48:YES)。
【0143】
また、作業装置2が散布装置2Bであって、散布装置2Bに設けられた左散布ユニット76L及び右散布ユニット76Rが車体3の左右方向に突出した状態(図20A図20B、作業状態)と、車体3の左右方向に所定長以上突出しない収納状態(図20C、非作業状態)とに手動で操作される場合、左散布ユニット76L及び右散布ユニット76Rを収納状態にした方が車体3及び散布装置2Bを安定に旋回させることができるため、制御装置60は、作業装置2の手動操作が必要であると判断する(図16AのS48:YES)。
【0144】
上記のように作業装置2の手動操作が必要であると判断した場合、制御装置60は、作業幅Waを変更する必要がないので(図16BのS49:NO)、一時停止が必要であるか否かを確認する。図6に示すように、走行制御画面D8には、一時停止設定キーB29が表示されている。一時停止設定キーB29は、作業装置2の手動操作が必要である場合に、自動作業モード及び農業機械1の自動運転を一時停止させるか否かを示す停止要否情報を入力するためのキーである。
【0145】
初期状態では、一時停止設定キーB29は、農作業支援装置50の制御部51により、農業機械1を一時停止させることを示すONに設定されている。このため、制御装置60は、一時停止が必要であると判断し(図16BのS50:YES)、自動作業モードを一時停止して、農業機械1の自動運転も一時停止し、作業装置2による農作業も一時停止する(S51)。即ち、制御装置60は、複数の走行ラインL1、L2(第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2)のうち、先行の走行ラインに沿った車体3の走行状態から後行の走行ラインに沿った車体3の走行状態へ移行する際に、車体3の自動走行と自動操舵と作業装置2による農作業とを一時停止する。
【0146】
作業者が一時停止設定キーB29をOFFに操作した場合には、制御装置60は、一時
停止が不要であると判断し(S50:NO)、自動作業モードを一時停止せず、農業機械1の自動運転と作業装置2による農作業を継続する。なお、作業装置2の手動操作が必要である場合に、農業機械1(車体3)を走行ラインの始点P1で一時停止させるか否かを示す停止要否情報を入力するための始点一時停止設定キーと、走行ラインの終点P2で一時停止させるか否かを示す停止要否情報を入力するための終点一時停止設定キーとを、制御部51が走行制御画面D8などに別々に設けるようにしてもよい。
【0147】
図16AのステップS45で検出した車体3の到達位置が走行ラインの終点P2であれば(図16BのS52:終点)、制御装置60は、農作業支援装置50の制御部51に指令を送信して、例えば図17Aに示す第1通知画面D11を表示操作部52に表示させる(図16BのS53)。詳しくは、このとき制御装置60は、第1通知画面D11の表示指令を制御部51に送信し、当該表示指令を受信した制御部51が、第1通知画面D11を表示操作部52に表示させる。また、制御部51は、走行制御画面D8に代えて第1通知画面D11を表示操作部52に表示させてもよいし、或いは走行制御画面D8上に第1通知画面D11をポップアップで表示させてもよい。(後述する他の通知画面D12、D13も同様である。)
【0148】
制御装置60は、図16BのステップS51で自動作業モードを一時停止した場合、図17Aに示すように、第1通知画面D11にメッセージK1、K2、K3を表示する。「以下の理由で自動運転による農作業を一時停止しました。」とのメッセージK1は、自動作業モードが一時停止された旨を示している。「農作業を継続するには自動スイッチを開始に操作してください。」とのメッセージK2は、自動スイッチ62aを開始操作することで自動作業モードによる農作業が継続される旨を示している。「作業装置を非作業状態に手動で操作する必要があります。(散布OFF、左右散布ユニット収納)」とのメッセージK3は、作業装置2を手動で操作する必要がある旨と当該手動操作の内容とを示している。即ち、制御装置60は、第1通知画面D11を表示操作部52に表示させることで、上述した3つの主旨と作業装置2の手動操作の内容とを示す通知を出力する。
【0149】
また、制御装置60は、自動作業モード及び車体3を一時停止させなかった場合、第1通知画面D11にメッセージK2、K3を表示し、メッセージK1を表示しない。(後述する第2通知画面D12の場合も同様である。)
【0150】
作業者は、第1通知画面D11に表示されたメッセージK1~K3を視認して、作業装置2(散布装置2B)を非作業状態に手動で操作する。詳しくは、このとき作業者は、補助コントローラ或いは操作ボックスにより散布装置2Bの散布ユニット76(76L、76R、76M)をOFF(散布停止)したり、左散布ユニット76L及び右散布ユニット76Rを収納状態にしたりする。
【0151】
自動作業モード及び車体3の一時停止中に(図16BのS55:YES)、作業者が自動スイッチ62aを開始操作すると(S56)、制御装置60は、自動作業モードを再開して、走行データと車体3の位置とに基づいて、自動作業モードを再開させて、車体3の自動運転も再開させ(S57)、次の走行ラインの始点P1に向かって車体3を旋回させる。また、制御装置60は、制御部51に指令を送信して、第1通知画面D11の表示を停止させる(S58)。
【0152】
詳しくは、このとき制御装置60は、第1通知画面D11の停止指令を制御部51に送信し、当該停止指令を受信した制御部51が、表示操作部52により第1通知画面D11を消去させる。自動作業モードが一時停止中でない場合は(S55:NO)、制御装置60が所定時間経過後に、制御部51に指令を送信して、第1通知画面D11の表示を停止させる(S58)。
【0153】
農業機械1が自動運転により旋回して、車体3が走行ラインの始点P1に到達すると(S45、S46:NO)、制御装置60は、作業装置2の手動操作の要否を判断する。このときも、制御装置60は、作業装置2の手動操作が必要であると判断し(図16AのS48:YES)、作業幅Waを変更する必要がなく(図16BのS49:NO)、農業機械1の一時停止が必要であれば(S50:YES)、自動作業モードを一時停止して、車体3を一時停止させる(S51)。そして、車体3の到達位置が走行ラインの始点P1であれば(S52:始点)、制御装置60は、農作業支援装置50の制御部51に指令を送信して、図17Bに示す第2通知画面D12を表示操作部52に表示させる(S54)。
【0154】
第2通知画面D12には、メッセージK1、K2と、「作業装置を作業状態に手動で操作する必要があります。(散布ON、左右散布ユニット突出)」とのメッセージK4とが表示されている。メッセージK4は、作業装置2を手動で操作する必要がある旨と当該手動操作の内容とを示している。即ち、制御装置60は、第2通知画面D12を表示操作部52に表示させることで、メッセージK1、K2、K4にそれぞれ対応する前述の3つの主旨と、作業装置2の手動操作の内容とを示す通知を出力する。
【0155】
作業者は、第2通知画面D12に表示されたメッセージK1、K2、K4を視認して、作業装置2(散布装置2B)を作業状態に手動で操作する。詳しくは、このとき作業者は、補助コントローラ或いは操作ボックスにより散布装置2Bの左散布ユニット76L及び右散布ユニット76Rを車体3の左右側方に突出させたり、散布ユニット76(76L、76R、76M)をON(散布駆動)にしたりする。
【0156】
この後、図16BのステップS55~ステップS58を経て、車体3が走行ラインL2(図8など)の隣の走行ラインL1の終点P2に到達する(図16AのS45、S46:NO)。このとき、作業装置2が散布装置2Bであって、散布装置2Bの現在の作業幅Waが第1走行ラインL1に対応する第1作業幅Wa1であり、次の走行ラインが第2走行ラインL2である。この場合、制御装置60は、現在の第1作業幅Wa1を第2走行ラインL2に対応する第2作業幅Wa2に手動操作する必要があると判断する(S48:YES)。
【0157】
そして、制御装置60は、作業幅Waを変更する必要があるので(図16BのS49:YES)、第2作業幅Wa2を目標作業幅として特定する(S59)。また、このとき制御装置60は、一時停止設定キーB29がOFFに操作されて、農業機械1の一時停止が不要であるとの指示があっても、自動作業モードを一時停止して、農業機械1の自動運転と作業装置2による農作業を一時停止する(S60)。そして、制御装置60は、農作業支援装置50の制御部51に指令を送信して、図17Cに示す第3通知画面D13を表示操作部52に表示させる(S61)。
【0158】
第3通知画面D13には、メッセージK1、K2と、「作業装置の作業幅を手動で操作する必要があります。(目標作業幅10m、左右散布ユニット使用)」とのメッセージK5が表示されている。メッセージK5は、作業装置2を手動で操作する必要がある旨、当該手動操作の内容、及び目標作業幅(第2作業幅Wa2)を示している。即ち、制御装置60は、第3通知画面D13を表示操作部52に表示させることで、メッセージM1、M2、M5にそれぞれ対応する前述の3つの主旨と、作業装置2の手動操作の内容と、目標作業幅とを示す通知を出力する。また、制御装置60は、先行の走行ラインL1に沿った車体3の走行状態から、後行の走行ラインL2に沿った車体3の走行状態へ移行する前に、後行の走行ラインL2に対応する第2作業幅Wa2を示す第3通知画面D13を表示操作部52により出力する。なお、制御装置60は、第3通知画面D13に、前述したメッセージK3(図17A)を表示させてもよい。
【0159】
また、制御装置60は、自動作業モード及び車体3の自動運転(自動走行)を一時停止している場合、自動作業モード及び車体3の自動運転が再開されるまで、第3通知画面D13を表示操作部52に表示させる(第1通知画面D11及び第2通知画面D12も同様である。図16BのS53~S58、S61)。また、制御装置60は、自動作業モード及び車体3の自動運転を一時停止していない場合、第3通知画面D13を表示操作部52に所定時間表示させる(第1通知画面D11及び第2通知画面D12も同様)。即ち、制御装置60は、先行の走行ラインL1に沿った車体3の走行状態から、後行の走行ラインL2に沿った車体3の走行状態への移行中も、第2作業幅Wa2を示す第3通知画面D13を表示操作部52により出力する。
【0160】
作業者は、第3通知画面D13に表示されたメッセージK1、K2、K5を視認して、作業装置2(散布装置2B)の作業幅Waを目標作業幅に手動で操作する。詳しくは、このとき作業者は、補助コントローラ或いは操作ボックスにより散布装置2Bの散布ユニット76(76L、76R、76M)をOFF(散布停止)したり、散布ユニット76(76L、76R、76M)の合計作業幅を目標作業幅(第2作業幅Wa2)にしたりする。
【0161】
この後、図16BのステップS55~ステップS58を経て、車体3が走行ラインL2(図6など)の始点P1に到達すると(図16AのS45、S46:NO)、制御装置60は、作業装置2の手動操作が必要であり(S48:YES)、作業幅Waを変更する必要がなく(図16BのS49:NO)、農業機械1の一時停止の必要もないと判断する(S50:NO)。また、車体3の到達位置が走行ラインL2の始点P1であるため(S52:始点)、制御装置60は、第2通知画面D12を表示操作部52に表示させる(S54)。このとき、制御装置60は、第2通知画面D12に、メッセージK5を表示させてもよい。即ち、制御装置60は、先行の走行ラインL1に沿った車体3の走行状態から、後行の走行ラインL2に沿った車体3の走行状態への移行する前に、後行の走行ラインL2に対応する第2作業幅Wa2を示す第3通知画面D13を表示操作部52により出力する。
【0162】
さらに、図16BのステップS55~ステップS58を経て、車体3が走行ラインL2(図6など)の終点P2、即ち走行ルートL10のゴール位置Pgに到達すると(図16AのS45、S46:YES)、制御装置60は、自動作業モードを終了し、車体3の走行と作業装置2による農作業とを停止する(S47)。
【0163】
制御装置60は、上述したように走行ラインに基づいて農業機械1を自動運転しながら、作業装置2により農作業を行う自動作業モード(自動運転作業モード)を実行するだけでなく、走行ラインに基づいて農業機械1をオートステア(自動操舵)運転しながら、作業装置2により農作業を行う自動作業モード(オートステア作業モード)を実行することもできる。即ち、農作業支援装置50により作成された走行ラインL1、L2は、農業機械1の自動運転だけでなく、農業機械1のオートステア運転にも活用可能である。農業機械1のオートステア運転による自動作業モードは、作業者がモードスイッチ62b(図1)を操作することで、制御装置60により実行される。
【0164】
オートステア運転による自動作業モードを実行する際、及び農業機械1を手動運転する際にも、制御装置60が、走行ラインL1、L2を含む走行ルートL10を表示操作部52に表示させ、図16A及び図16Bに示した手順で通知画面D11~D13を表示操作部52に表示させてもよい。また、制御装置60に代えて、農作業支援装置50の制御部51が、圃場情報、装置情報、作業情報、及び農業機械1の位置に基づいて、作業装置2の手動操作の要否を判断して、通知画面D11~D13を表示操作部52に表示させてもよい。
【0165】
また、制御装置60或いは制御部51が、散布装置2B以外の作業装置2の手動操作の要否を判断し、当該判断結果に応じて、自動作業モード及び車体3を一時停止させ、作業装置2を手動で操作する必要がある旨、手動操作の内容、及び農作業が一時停止された旨を示す通知画面を表示操作部52に表示させてもよい。また、例えば作業装置2がリバーシブルプラウである場合、作業機1が走行ラインの始点及び終点の少なくともいずれかに到達したときに、制御装置60などが、耕耘刃の向きなどの手動操作の要否を判断し、手動操作が必要であれば、当該旨などを示す通知画面を表示操作部52に表示させてもよい。
【0166】
図10Dなどに示した実施形態では、制御部51が、圃場マップMP2の中央領域C1に走行ラインL1、L2を作成した例を示したが、これに限定するものではない。例えば、制御部51が、枕地E1a、E1cにも走行ラインを作成してもよい。そして、制御装置60が、枕地E1a、E1cに作成された走行ラインなどに基づいて、農業機械1の自動運転或いは自動操舵を行いながら、作業装置2により枕地E1a、E1cに対して播種、培土、及び防除などの農作業を行ってもよい。また、作業者が、枕地E1a、E1cに作成された走行ラインなどに基づいて、農業機械1を手動運転で走行させながら、作業装置2により枕地E1a、E1cに対して播種、培土、及び防除などの農作業を行ってもよい。またその際に、制御部51が、対象農作業と連携農作業の走行ラインと作業位置とを表示操作部52に表示させ、農業機械1(車体3)が走行ラインの始点P1又は終点P2に到達したときに、制御部51が、通知画面D11~D13を表示操作部52に表示させてもよい。
【0167】
図17Cに示した実施形態では、制御装置60が、作業装置2(散布装置2B)の目標作業幅(第2作業幅Wa2)を第3通知画面D13に含めて、当該第3通知画面D13を表示操作部52に表示させた例を示したが、制御装置60或いは制御部51が、作業装置2(散布装置2B)の現在の作業幅(第1作業幅)も第3通知画面D13或いは走行制御画面D8などに表示させてもよい。
【0168】
また、農業機械1(車体3)が走行ラインL1、L2の始点P1と終点P2とに到達する度に、通知画面D11~D13のいずれかが表示操作部52に表示されるのを、作業者などが煩わしいと感じた場合に、通知画面D11~D13の表示を適宜停止させることを指示するためのキーなどを、走行制御画面D8などに設けてもよい。例えば、農業機械1が走行ラインL1の終点P2に到達したときにだけ、制御装置60が、第1通知画面D11或いは第3通知画面D13を表示操作部52に表示させてもよい。或いは、農業機械1が走行ラインL1、L2の始点P1に到達したときにだけ、制御装置60が、第2通知画面D12或いは第3通知画面D13を表示操作部52に表示させてもよい。また、他の例として、表示操作部52への通知画面D11~D13の表示に代えて、制御装置60が、前述したメッセージK1~K5に対応する音声データを、農作業支援装置50或いは農業機械1に備わるスピーカなどから出力するようにしてもよい。
【0169】
上述した実施形態では、オペレータが、図2に示した作業選択画面D3で防除作業を選択したため、制御部51が、防除作業用の走行ラインL1、L2などを作成した例を示したが、オペレータが作業選択画面D3で他の農作業を選択することで、制御部51が、当該農作業用の走行ラインなどを圃場マップMP2に作成してもよい。また、オペレータ或いは制御部51が、外部の記憶媒体若しくはサーバなどから、圃場情報、作業装置2の装置情報、及び作業情報などを、通信部54により農作業支援装置50に入力してもよい。
【0170】
上述した実施形態では、農作業支援装置50が携帯型のタブレット端末装置から構成されている例を挙げたが、これ以外に、例えばスマートフォン、農業機械1に固定された端
末装置、農業機械1から離れた場所に設置されたコンピュータ、サーバ、及びクラウド上に設けられたサーバなどのうちの少なくとも1つから農作業支援装置を構成してもよい。また、図9A及び図9Bの処理手順を示したソフトウェアプログラムと、図13A及び図13Bの処理手順を示したソフトウェアプログラムとのうちの少なくとも一方を、クラウド上に設けられたサーバに格納し、当該ソフトウェアプログラムをインストールしたコンピュータが図9A及び図9Bの各ステップ、或いは図13A及び図13Bの各ステップを実行してもよい。そして、当該コンピュータが、接続されたディスプレイ装置に走行ラインと作業位置と通知画面D11~D13などを表示させ、農業機械1などに走行データを出力してもよい。
【0171】
以上説明した本実施形態は、以下の構成を備え、効果を奏する。
【0172】
本実施形態の農作業支援装置50は、圃場を示す圃場情報、農業機械1に連結された作業装置2を示す装置情報、及び圃場で農業機械1を走行させながら作業装置2により行う農作業の作業情報がそれぞれ入力される入力部(表示操作部)52と、圃場情報と装置情報と作業情報とに基づいて、作業装置2により農作業を行うために農業機械1を走行させる走行ラインL1を、圃場を示す圃場マップMP2に複数作成する制御部51と、を備え、制御部51は、装置情報から作業装置2の変更可能な作業幅Waの仕様と所定の第1作業幅Wa1とを特定し、第1作業幅Wa1で農作業を行う第1走行ラインL1を1つ以上圃場マップMP2に作成し、第1走行ラインL1を作成するだけでは、第1作業幅Wa1よりも所定値以上幅Wrが狭い余り領域C1rが圃場マップMP2に生じる場合に、作業幅Waの仕様に基づいて余り領域C1rの幅Wrに応じた作業装置2の第2作業幅Wa2を決定し、第2作業幅Wa2で余り領域C1rに対して農作業を行う第2走行ラインL2を圃場マップMP2に作成する。
【0173】
上記構成によると、作業者が、圃場で農業機械1を第1走行ラインL1に基づいて走行させながら、作業装置2により第1作業幅Wa1で農作業を行うことで、第1作業幅Wa1よりも幅Wrが狭い余り領域C1rが圃場に生じても、農業機械1を第2走行ラインL2に基づいて走行させながら、作業装置2により余り領域C1rの幅Wrに応じた第2作業幅Wa2で余り領域C1rに対して農作業を行うことができる。このため、余り領域C1rに対する農作業時に、農業機械1及び作業装置2の少なくともいずれかが圃場外へ食み出すのを抑制することができる。また、作業者が農業機械及び作業装置により行う農作業の作業軌跡を無駄に重複させる必要がなく、走行ラインL1の本数が増えること、農業機械1の走行距離が長くなること、及び防除作業などでは資材(薬剤)の散布量が増えることを、それぞれ抑制することができる。これらの結果、作業者は圃場で農業機械1と作業装置2とにより農作業を効率的に行うことが可能になる。
【0174】
本実施形態では、制御部51は、装置情報から作業装置2の作業幅Waの可変状態と可変範囲とを含む仕様を特定する。これにより、制御部51は、余り領域C1rの幅Wrに応じた作業装置2の第2作業幅Wa2を適切に決定することができる。
【0175】
また、本実施形態では、圃場で行う複数種類の農作業の作業情報が入力部52により入力され、制御部51は、複数種類の農作業のうち、対象農作業と連携する連携農作業の作業情報から、連携農作業の作業位置を特定し、連携農作業の作業位置に基づいて、対象農作業を行うための第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2を圃場マップMP2に作成する。これにより、作業者は、圃場で農業機械1を第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2にそれぞれ基づいて走行させながら、作業装置2により第1作業幅Wa1及び第2作業幅Wa2でそれぞれ農作業を行うことで、対象農作業及び連携農作業を連携させながら効率的且つ適切に行うことができる。
【0176】
また、本実施形態では、圃場に形成される複数の畝Uaに関する畝情報が入力部52により入力され、制御部51は、畝情報から、複数の畝Uaの数を示す全畝数と、畝Uaを1つ形成するための土壌がある位置の幅を示す畝幅Wuとを特定し、第1作業幅Wa1と畝幅Wuとに基づいて、第1作業幅Wa1で同時に農作業を行うことが可能な範囲に含まれる作業対象畝数を算出し、全畝数を作業対象畝数で除算して、その商を第1走行ラインL1の作成数に決定し且つ余りの畝数を求め、余りの畝数と畝幅Wuとに基づいて、余り領域C1rの幅Wrを算出する。これにより、制御部51は、余り領域C1rの幅Wrを確実に算出して、当該幅Wrに応じた第2作業幅Wa2及び第2走行ラインL2を適切に決定することができる。このため、作業者は、圃場で農業機械1を第2走行ラインL2に基づいて走行させながら、余り領域C1rの畝Uaに対して防除などの農作業を、作業装置2により第2作業幅Wa2で効率的に行うことが可能になる。
【0177】
また、本実施形態では、農業機械1の機械情報が入力部52により入力され、制御部51は、機械情報及び装置情報から、農業機械1に対する作業装置2の相対位置及び農業機械1が有する車体3の幅方向に並ぶ一対の走行装置7の間隔Taを特定し、一対の走行装置7の間隔Taと畝幅とに基づいて、一対の走行装置7の間に通す通過畝数を算出し、農業機械1に対する作業装置2の相対位置及び通過畝数に基づいて、第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2を作成する。これにより、制御部51は、農業機械1に対する作業装置2の相対位置と、農業機械1の一対の走行装置7の間に通す畝Uaとを考慮して、第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2を適切に作成することができる。
【0178】
また、本実施形態では、作業装置2は、農業機械1の幅方向に延設された1つ以上の散布ユニット76を有し、散布ユニット76の長手方向に所定の間隔で設けられた散布口76dから資材を散布する散布装置2Bから構成され、制御部51は、余り領域C1rの幅Wrに適合する散布ユニット76及び散布口76dの少なくともいずれかを判断し、当該適合する散布ユニット76及び散布口76dの少なくともいずれか基づいて第2作業幅Wa2を決定する。これにより、制御部51は、余り領域C1rの幅Wrに応じた散布装置2Bの第2作業幅Wa2を適切に決定し、当該第2作業幅Wa2で農作業を行うための農業機械1の第2走行ラインL2を適切に作成することができる。
【0179】
また、本実施形態では、作物を露地栽培するための圃場を表す圃場情報と、資材の散布作業の作業情報とが入力部52により入力可能であり、制御部51は、作業装置2により散布作業を行うための農業機械1の第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2を圃場マップMP2に作成する。これにより、作業者は、圃場で農業機械1を第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2に基づいてそれぞれ走行させながら、作業装置2により第1作業幅Wa1及び第2作業幅Wa2で資材の散布作業を効率的に行うことが可能になる。
【0180】
また、本実施形態の農作業支援システム100は、上述した農作業支援装置50と、農業機械1と、農作業支援装置50に備わる制御部51により作成された第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2を含む圃場マップMP2を表示する表示装置(表示操作部)52と、を含んでいる。これにより、農作業支援装置50によって第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2が適切に作成された圃場マップMP2が、表示装置52により表示されるので、作業者は第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2を視認して、第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2に基づいて農業機械1を走行させながら、作業装置2により圃場に対して農作業を効率的且つ適切に行うことができる。
【0181】
また、本実施形態では、農作業支援システム100は、農業機械1に連結された作業装置2を含み、農業機械1は、走行可能な車体3と、車体3の位置を検出する位置検出装置40と、第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2のそれぞれに沿って車体3の自動操舵及び自動走行のいずれかを行いながら、作業装置2により圃場に対して農作業を行う制
御装置60と、を備える。これにより、作業者は、農作業支援装置50によって適切に作成された第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2と、位置検出装置40により検出された農業機械1の車体3の位置とに基づいて、農業機械1を自動運転又はオートステア運転で走行させながら、作業装置2により圃場に対して農作業を効率的且つ適切に行うことができる。
【0182】
また、本実施形態では、農作業支援システム100は、所定の通知を出力する出力装置(表示操作部)52を含み、表示装置52は、表示中の圃場マップMP2に位置検出装置40により検出された車体3の位置を表示し、制御装置60は、第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2のうち、先行の走行ラインに沿った車体3の走行状態から後行の走行ラインに沿った車体3の走行状態へ移行する際に、車体3及び作業装置2を一時停止させ、出力装置52は、車体3の走行状態の移行中及び当該移行中より前の少なくともいずれかに、後行の走行ラインに対応する第2作業幅Wa2を示す通知(第3通知画面)D13を出力する。これにより、作業者は、農業機械1が第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2のうち、先行の走行ラインに沿った走行状態から後行の走行ラインに沿った走行状態へ移行する前に、通知(第3通知画面)D13によって作業装置2の作業幅Waを第2作業幅Wa2に変更する必要があることを認識して、当該変更を実行することができる。
【0183】
また、本実施形態では、出力装置52は、第2作業幅Wa2を示す通知D13に、作業装置2の作業幅Waを手動で操作する必要がある旨と作業装置2の作業形態とを示す情報を含めて、当該通知D13を出力する。これにより、作業者は、通知(第3通知画面)D13によって変更すべき作業装置2の作業幅Wa及び作業形態を容易に認識して、当該変更を容易且つ適切に実行することができる。
【0184】
また、本実施形態の農業機械1は、上述した農作業支援装置50と、走行可能で且つ作業装置2を連結可能な車体3と、車体3の位置を検出する位置検出装置40と、農作業支援装置50により第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2が作成された後に出力された圃場マップMP2を表示する表示装置52と、を備える。これにより、作業者は、農作業支援装置50によって第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2が適切に作成され且つ表示装置52により表示された圃場マップMP2を視認して、第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2に基づいて農業機械1を走行させながら、作業装置2により圃場に対して農作業を効率的且つ適切に行うことができる。
【0185】
また、本実施形態の走行ライン作成方法は、圃場で農業機械1に連結された作業装置2により農作業を行うために農業機械1を走行させる走行ラインL1、L2を、圃場を表す圃場マップMP2に作成する方法であって、農作業支援装置50の入力部52により、圃場を表す圃場情報、作業装置2の装置情報、及び農作業の作業条件がそれぞれ入力されるステップと、農作業支援装置50の制御部51が、装置情報から作業装置2の変更可能な作業幅Waの仕様と所定の第1作業幅Wa1とを特定するステップと、圃場に対して農作業を行うために、前記制御部51が、第1作業幅Wa1で農作業を行う第1走行ラインL1を1つ以上圃場マップMP2に作成するステップと、第1走行ラインL1を作成するだけでは、第1作業幅Wa1より所定値以上幅が狭い余り領域C1rが圃場マップMP2に生じる場合に、制御部51が、作業幅Waの仕様に基づいて余り領域C1rの幅Wrに応じた作業装置2の第2作業幅Wa2を決定するステップと、制御部51が、第2作業幅Wa2で余り領域C1rに対して農作業を行う第2走行ラインL2を圃場マップMP2に作成するステップと、を備える。これにより、第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2が農作業支援装置50によって適切に作成されるので、作業者は、第1走行ラインL1及び第2走行ラインL2に基づいて農業機械1を走行させながら、作業装置2により圃場に対して農作業を効率的且つ適切に行うことができる。
【0186】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0187】
1 農業機械
2 作業装置
2A 培土装置(作業装置)
2B 散布装置(作業装置)
3 車体
7 走行装置
40 位置検出装置
50 農作業支援装置
51 制御部
52 表示操作部(入力部、表示装置、出力装置)
54 通信部(入力部)
60 制御装置
76 散布ユニット
76d 散布口
100 農作業支援システム
C1r余り領域
D13 第3通知画面
L1 第1走行ライン
L2 第2走行ライン
MP2 圃場マップ
Ta 走行装置の間隔
Ua 畝
Wr余り領域の幅
Wa 作業幅
Wa1 第1作業幅
Wa2 第2作業幅
Wu 畝幅
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20A
図20B
図20C
図21A
図21B
図21C
図21D