(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090662
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】マッサージ機構、マッサージ装置
(51)【国際特許分類】
A61H 7/00 20060101AFI20240627BHJP
A61H 23/02 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61H7/00 323Q
A61H23/02 357
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206700
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000136491
【氏名又は名称】株式会社フジ医療器
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福永 武央
【テーマコード(参考)】
4C074
4C100
【Fターム(参考)】
4C074AA04
4C074BB05
4C074CC17
4C074EE02
4C074GG03
4C100AD11
4C100AF03
4C100BB04
4C100CA06
4C100DA05
4C100EA12
(57)【要約】
【課題】マッサージ効果を向上できるマッサージ機構及びマッサージ装置を提供する。
【解決手段】マッサージ機構の軸部材は、回転軸に沿って配置され、回転軸を中心として順回転及び逆回転できる。一対の施療部は、回転軸の軸方向に並んで被施療者を施療する。各々の施療部の施療子は、軸部材の回転に応じて回転軸と交差する方向に揺動することで、被施療者に対する叩き動作を行うことができる。カム部は、互いに係合可能な第1偏心カム部材及び第2偏心カム部材を含む。各々の施療部では、軸部材が順回転をする場合と、逆回転をする場合とで、第1偏心カム部材及び第2偏心カム部材の係合状態が変化する。これにより、回転軸に対するカム部の偏心量が変化する。
【選択図】
図10A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に沿って配置され、前記回転軸を中心として周方向一方に回転する順回転と周方向他方に回転する逆回転とが可能な軸部材と、
前記回転軸の軸方向に並んで被施療者を施療する一対の施療部と、
を備え、
各々の前記施療部は、
アームに支持される施療子と、
前記軸部材とともに回転可能なカム部と、
前記アームと前記カム部とを接続する接続部と、
を有し、
各々の前記施療部の前記施療子は、前記軸部材の回転に応じて前記回転軸と交差する方向に揺動することで、被施療者に対する叩き動作を行うことができ、
前記カム部は、互いに係合可能な第1偏心カム部材及び第2偏心カム部材を含み、
各々の前記施療部では、前記軸部材が前記順回転をする場合と、前記逆回転をする場合とで、前記第1偏心カム部材及び前記第2偏心カム部材の係合状態が変化することにより、
前記回転軸に対する前記カム部の偏心量が変化する、マッサージ機構。
【請求項2】
一方の前記施療部の前記カム部と、他方の前記施療部の前記カム部との前記回転軸に対する偏心方向が180°ずれて配される、請求項1に記載のマッサージ機構。
【請求項3】
各々の前記施療部において、
前記第1偏心カム部材は、前記軸部材の外周面に配置される筒状に形成されるとともに、第1係合部と、第2係合部と、を有し、
前記第2偏心カム部材は、前記第1偏心カム部材の外周面に配置されて前記第1偏心カム部材を囲む筒状に形成されるとともに、前記軸部材が順回転する際に前記第1係合部と周方向に係合する第3係合部と、前記軸部材が逆回転する際に前記第2係合部と周方向に係合する第4係合部と、を有し、
前記第1偏心カム部材の外周面及び前記第2偏心カム部材の内周面の一方が前記回転軸に対して偏心する第1中心を有して他方が摺動可能な円筒面を有するとともに、前記第2偏心カム部材の外周面が前記第1中心に対して偏心した第2中心を有する円筒面に形成される、請求項1に記載のマッサージ機構。
【請求項4】
軸方向から見た前記回転軸から前記第1中心に向かう第1偏心ベクトルと、軸方向から見た前記第1中心から前記第2中心に向かう第2偏心ベクトルとの合成偏心ベクトルの大きさは、
前記第1係合部が前記第3係合部に係合した際に、前記第1偏心ベクトルの大きさ、及び、前記第2偏心ベクトルの大きさよりも大きく、
前記第2係合部が前記第4係合部に係合した際に、前記第1偏心ベクトルの大きさ、及び、前記第2偏心ベクトルの大きさよりも小さい、請求項3に記載のマッサージ機構。
【請求項5】
前記第2偏心ベクトルの大きさは、前記第1偏心ベクトルの大きさの25%以上且つ85%以下である、請求項3に記載のマッサージ機構。
【請求項6】
前記第2偏心ベクトルの大きさは、0.3mm以上且つ1.0mm以下である、請求項4に記載のマッサージ機構。
【請求項7】
前記第1偏心ベクトルの向きと、前記第2偏心ベクトルの向きとは逆方向である、請求項4に記載のマッサージ機構。
【請求項8】
前記第2係合部が前記第4係合部に係合した際に、
前記第1偏心ベクトルの向きは、前記第2偏心ベクトルの向きとは逆方向であって、
前記第2偏心ベクトルの大きさは、前記第1偏心ベクトルの大きさと同じである、請求項4に記載のマッサージ機構。
【請求項9】
第2偏心カム部材に対して第1偏心カム部材が回動可能な周方向幅は180°である、請求項3に記載のマッサージ機構。
【請求項10】
前記第1係合部が前記第3係合部に係合した状態、及び、前記第2係合部が前記第4係合部に係合した状態の一方のときに前記カム部が偏心して叩き動作が行われ、他方のときに前記カム部の中心が前記回転軸に一致して揉み動作が行われる、請求項3に記載のマッサージ機構。
【請求項11】
前記第1偏心カム部材の外周面及び前記第2偏心カム部材の内周面が前記第1中心を有した円筒面を備える、請求項3に記載のマッサージ機構。
【請求項12】
前記第1偏心カム部材の外周面が前記第1中心を有した円筒面を備え、前記第2偏心カム部材が内周面上から突出して該円筒面に摺動する複数の突出部を有する、請求項3に記載のマッサージ機構。
【請求項13】
前記突出部により前記第3係合部及び前記第4係合部が形成される、請求項12に記載のマッサージ機構。
【請求項14】
前記第2偏心カム部材の内周面が前記第1中心を有した円筒面を備え、
前記第1偏心カム部材が該円筒面に摺動する突出片を有する、請求項3に記載のマッサージ機構。
【請求項15】
各々の前記施療部の前記カム部は同一の形状である、請求項1に記載のマッサージ機構。
【請求項16】
請求項1~請求項15のいずれか1項に記載のマッサージ機構を備える、マッサージ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ機構、マッサージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、揉み玉を前後に揺動させることによる叩き動作、揉み玉を偏心回転させることによる揉み動作などを行うマッサージ機が知られている。たとえば、特許文献1では、タタキ用モータの駆動に伴って、タタキ用偏心軸を回転させる。これにより、揉み玉アーム支持体が前後に揺動する。この際、左右一対の揉み玉が、交互に前後方向に揺動することにより、叩き動作が行われる。また、揉み用モータの駆動による揉み用回転軸の回転に伴って、揉み玉アーム支持体が回転する。この際、左右一対の揉み玉が、前後方向に偏心して回転することにより、揉み動作が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のマッサージ機によると、叩き動作時に左右の揉み玉は偏心軸の回転により交互に揺動する。このため、叩き動作から揉みなどの他の施療に切り替わる際に各々の揉み玉の前後位置が異なる場合がある。これにより、揉み玉による施療の体感が左右で異なり、快適なマッサージ効果を得られない場合があった。
【0005】
本発明は、上記の状況を鑑みて、マッサージ効果を向上できるマッサージ機構及びマッサージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の一の態様によるマッサージ機構は、軸部材と、一対の施療部と、を備える。前記軸部材は、回転軸に沿って配置され、前記回転軸を中心として周方向一方に回転する順回転と周方向他方に回転する逆回転とが可能である。前記施療部は、前記回転軸の軸方向に並んで被施療者を施療する。各々の前記施療部は、施療子と、カム部と、接続部と、を有する。前記施療子は、アームに支持される。前記カム部は、前記軸部材とともに回転可能である。前記接続部は、前記アームと前記カム部とを接続する。各々の前記施療部の前記施療子は、前記軸部材の回転に応じて前記回転軸と交差する方向に揺動することで、被施療者に対する叩き動作を行うことができる。前記カム部は、互いに係合可能な第1偏心カム部材及び第2偏心カム部材を含む。各々の前記施療部では、前記軸部材が前記順回転をする場合と、前記逆回転をする場合とで、前記第1偏心カム部材及び前記第2偏心カム部材の係合状態が変化する。これにより、前記回転軸に対する前記カム部の偏心量が変化する。
【0007】
また、上記目的を達成するために本発明の一の態様によるマッサージ装置は、上記のマッサージ機構を備える。
【0008】
本発明の更なる特徴や利点は、以下に示す実施形態によって一層明らかにされる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、マッサージ効果を向上できるマッサージ機構及びマッサージ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】椅子式マッサージ機の構成例を示す概略的な斜視図
【
図2】椅子式マッサージ機の動作を制御する制御系の一例を示すブロック図
【
図10A】叩き軸部材を順回転した際のカム部の状態の一例を示す断面図
【
図10B】叩き軸部材を逆回転した際のカム部の状態の一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0012】
<1.第1実施形態>
以下に、
図1を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、椅子式マッサージ機100の構成例を示す概略的な斜視図である。また、以下では、椅子式マッサージ機100を「マッサージ機100」と称することがある。
【0013】
以下の説明において、後述するマッサージ機100に着座した被施療者から見て前側(正面側)を「前方」といい、後側(背面側)を「後方」という。なお、背凭れ部102、及び、背凭れ部102に凭れる被施療者に関して、背凭れ部102が傾倒した状態においても、背凭れ部102の被施療者側、及び、被施療者の正面側を「前方」ということがある。また、背凭れ部102の被施療者とは反対側、及び、被施療者の背面側を「後方」ということがある。また、背凭れ部102が起立した状態のマッサージ機100に着座した被施療者から見て上側(頭側)を「上方」といい、下側(脚側)を「下方」という。また、背凭れ部102が起立した状態のマッサージ機100に着座した被施療者から見て右側を「右方」といい、左側を「左方」という。
【0014】
<1-1.マッサージ機100>
マッサージ機100は、座部101と、背凭れ部102と、施療ユニット103と、左右一対の立設部104と、左右一対の肘掛け部105と、オットマン106と、を備える。
【0015】
座部101には、被施療者が着座する。座部101は、被施療者の臀部及び太腿部を支持する。
【0016】
背凭れ部102は、座部101の後端部と接続され、被施療者の頭、胴部(たとえば肩部、腰部、及び背中)などを支持する。背凭れ部102は、左右方向に延びる背凭れ回転軸Ja回りに座部101に対して回動可能である。背凭れ部102は、背凭れ回転軸Ja回りの回動により、起立状態から後方に回動して傾倒したり、傾倒状態から前方に回動したりすることが可能である。背凭れ部102は、
図1に示すように、枕部1021を有する。枕部1021は、背凭れ部102の上端部に配置され、被施療者の頭部、首部などを支持する。
【0017】
施療ユニット103は、被施療者の胴部及び首部などを施療可能である。施療ユニット103は、背凭れ部102に配置される。施療ユニット103は、背凭れ部102に沿って左右方向と垂直な方向に移動可能である。たとえば、施療ユニット103は、背凭れ部102に設けられる左右一対のガイドレール1031によって案内される。施療ユニット103は、背凭れ部102の長手方向に昇降可能である。長手方向は、たとえば背凭れ部102に凭れ掛かる被施療者の臀部(又は腰部)から頭部に向かう方向である。
【0018】
立設部104は、座部101の左右方向の両側に立設して設けられ、肘掛け部105を支持する。
【0019】
肘掛け部105は、立設部104の上部に配置される。一対の肘掛け部105は、座部101の左右方向における両側に配置され、被施療者の前腕部及び手を支持する。左右一対の肘掛け部105は、互いに左右対称の形状である。
【0020】
オットマン106は、座部101の前端部に回動可能に支持される。オットマン106は、被施療者の少なくとも下腿部を収容する。
【0021】
<1-2,マッサージ機100の制御系>
次に、
図2を参照して、マッサージ機100の制御系の構成例を説明する。
図2は、マッサージ機100の動作を制御する制御系を示すブロック図である。
【0022】
図2に示すように、マッサージ機100は、入力部1071と、記憶部1072と、制御部108と、アクチュエータ群1091と、ポンプ1092と、電磁弁群1093と、をさらに備える。
【0023】
入力部1071は、被施療者などの入力操作を受け付け、入力操作に基づく信号を制御部108に出力する。入力操作は、施療ユニット103の駆動、施療パターンの選択、施療の強弱調整などを含む。入力部1071はコード線を介して制御部108に接続される。入力部1071は、スタンド(符号省略)に対して装着及び取り外しが可能である。スタンドは、座部101の左側に配置された肘掛け部105に固定される。
【0024】
記憶部1072は、電力供給が停止しても記憶した情報を保持する非一過性の記憶媒体である。記憶部1072は、たとえば、制御部108がマッサージ機100の動作を制御するために必要なプログラム及びデータを記憶している。
【0025】
制御部108は、たとえば座部101の下側に配置され、入力部1071から出力される信号などに基づいて、マッサージ機100の各部を制御する。たとえば、制御部108は、施療ユニット103の駆動及び昇降、アクチュエータ群1091、ポンプ1092、及び、電磁弁群1093を制御する。
【0026】
アクチュエータ群1091は、複数のアクチュエータを含む。たとえば、アクチュエータ群1091は、背凭れ部102を回動させる背凭れ部用のアクチュエータ(図示省略)と、オットマン106を回動させるオットマン用のアクチュエータとを含む。
【0027】
電磁弁群1093は、エアバッグ群(図示省略)に設けられる電磁弁を含む。ポンプ1092は、電磁弁群1093を介してエアバッグ群に給気する。電磁弁は、エアバッグ群の膨張,膨縮状態の維持,収縮を切り替える。詳細には、電磁弁は、ポンプ1092とエアバッグ群との間の連通/遮断を切り替える。たとえば、電磁弁の動作によりポンプ1092とエアバッグとが連通すると、ポンプ1092から電磁弁を介してエアバッグに空気が供給される。これにより、エアバッグが膨張する。また、電磁弁は、エアバッグ群と外部との間の連通/遮断を切り替える。たとえば、電磁弁の動作により外部とエアバッグとが連通すると、エアバッグが電磁弁を介して外部に開放される。これにより、エアバッグ内の空気が排出され、エアバッグが収縮する。また、電磁弁の動作により、エアバッグがポンプ1092とも外部とも連通しなくなると、エアバッグ内の空気の量が保持され、エアバッグの膨縮状態が維持される。
【0028】
<1-3.施療ユニット>
次に、
図3~
図6を参照して、施療ユニット103の構成例を説明する。
図3は、施療ユニット103を前方から見た斜視図である。
図4は、施療ユニット103を後方から見た斜視図である。
図5は、施療ユニット103を左方から見た側面図である。
図6は、施療ユニット103を右方から見た側面図である。
【0029】
図3及び
図4に示すように、施療ユニット103は、ベース部1と、上側昇降軸部材21と、下側昇降軸部材22と、を有する。
【0030】
ベース部1は、左ベース部11と、右ベース部12と、中央ベース部13と、を有する。左ベース部11及び右ベース部12は、それぞれ上下方向及び左右方向に広がる板状であり、左右方向に並ぶ。中央ベース部13は、左右方向に延び、左ベース部11の下端部と右ベース部12の下端部とを接続する。
【0031】
上側昇降軸部材21は、左右方向に延びる円柱形状の部材であり、左ベース部11の上端部と右ベース部12の上端部とに接続される。
【0032】
下側昇降軸部材22は、左右方向に延びる円柱形状の部材であり、左右方向を基準とする周方向回りに回転可能である。下側昇降軸部材22の左右方向両端部には、ガイドレール1031のラック(図示省略)と噛み合うピニオンギヤ221が配置される。施療ユニット103は、下側昇降軸部材22の回転に応じて、ガイドレール1031に沿って昇降する。
【0033】
また、
図3~
図6に示すように、施療ユニット103は、進退用軸部材30と、左上側保持部31と、右上側保持部32と、左下側保持部33と、右下側保持部34と、を有する。左上側保持部31は、左ベース部11の後面の上部に配置される。右上側保持部32は、右ベース部12の後面の上部に配置される。左下側保持部33は、左ベース部11の後面の下部に配置される。右下側保持部34は、右ベース部12の後面の下部に配置される。
【0034】
左上側保持部31及び右上側保持部32は、左右方向に延びる進退用軸部材30を回転可能に保持する。詳細には、左上側保持部31は、支持部材311と、進退機構用モータ312と、動力伝達機構313と、を有する。
【0035】
支持部材311は、左ベース部11の後面から後方に延び、動力伝達機構313を支持する。進退機構用モータ312は、進退用軸部材30の駆動源であり、制御部108により制御される。動力伝達機構313は、複数のギヤ、プーリ、変速装置などで構成される。動力伝達機構313には、進退用軸部材30の左端部が回転可能に接続される。なお、進退用軸部材30の右端部は、右上側保持部32により回転可能に支持される。進退機構用モータ312のトルクを進退用軸部材30に伝達する。このトルクに応じて、進退用軸部材30は左右方向を基準とする周方向の一方又は他方に回転する。
【0036】
左下側保持部33及び右下側保持部34は、下側昇降軸部材22を回転可能に保持する。詳細には、左下側保持部33は、下側昇降軸用モータ331と、動力伝達機構332と、を有する。下側昇降軸用モータ331は、下側昇降軸部材22の駆動源であり、制御部108により制御される。動力伝達機構332は、下側昇降軸部材22の左側部分が接続される。動力伝達機構332は、複数のギヤ、プーリ、変速装置などで構成され、下側昇降軸用モータ331のトルクを下側昇降軸部材22に伝達する。このトルクに応じて、下側昇降軸部材22は、左右方向を基準とする周方向の一方又は他方に回転する。
【0037】
右下側保持部34は、下側昇降軸部材22の右側部分を回転可能に支持する。また、右下側保持部34は、下側昇降軸部材22の回転方向及び回転速度を検出するエンコーダ341を有する。
【0038】
次に、施療ユニット103は、マッサージ機構4をさらに備える。なお、施療ユニット103は、本発明の「マッサージ装置」の一例である。マッサージ機構4は、被施療者に対して叩き施療、揉み施療などを行う。後述するように、施療ユニット103は、マッサージ機構4の搭載により、施療子45の揺動範囲を簡易な構成で変化させることができ、簡易な構成で異なる体感を被施療者に提供することができる。従って、施療ユニット103のマッサージ機構4は、マッサージ効果を向上できる。マッサージ機構4の構成は後述する。
【0039】
次に、施療ユニット103は、上側筐体部51と、下側筐体部52と、軸支部520と、左側壁部53と、右側壁部54と、を有する。なお、以下では、これらを総称して、筐体部5と呼ぶことがある。前後方向から見て、これらは、マッサージ機構4とともに、左ベース部11及び右ベース部12間に配置される。
【0040】
上側筐体部51は、左右方向から見て上方に向かうほど前方に延びる円弧形状のカバーであり、下側筐体部52、左側壁部53、及び右側壁部54の上部に配置される。上側筐体部51の上面には、進退用軸部材30のギヤ301と噛み合うラック511が配置される。ラック511は、上側筐体部51の上面に沿って前後方向に延び、たとえば、左右方向から見て上方に向かうほど前方に延びる。
【0041】
下側筐体部52は、底部521と、背部522と、を有する。底部521は、マッサージ機構4の下部を覆う。背部522は、底部521の後端部から上方に延び、マッサージ機構4の後部を覆う。
【0042】
また、底部521には、軸支部520が固定される。軸支部520は、下側昇降軸部材22の中央部を軸支する。進退用軸部材30が回転すると、ギヤ301とラック511との噛み合いにより、上側筐体部51が前方又は後方に移動する。これにより、筐体部5とともにマッサージ機構4は、下側昇降軸部材22回りに回転することで、前方又は後方に移動できる。
【0043】
左側壁部53は、マッサージ機構4の左部を覆い、後述する揉み軸部材41の左端部と叩き軸部材43の左端部とを回転可能に支持する。なお、叩き軸部材43の左端部は、左側壁部53を貫通して設けられるベアリングホルダ(不図示)に挿通され、左側壁部53から左方に突出する。
【0044】
右側壁部54は、マッサージ機構4の右部を覆い、揉み軸部材41の右端部と叩き軸部材43の右端部とを回転可能に支持する。なお、揉み軸部材41の右端部は、右側壁部54を貫通して設けられるベアリングホルダ(不図示)に挿通され、右側壁部54から右方に突出する。
【0045】
また、施療ユニット103は、叩き軸用モータ55と、動力伝達機構56と、をさらに備える。叩き軸用モータ55は、叩き軸部材43の駆動源であり、背部522の後面に配置される。動力伝達機構56は、左側壁部53の左側面に配置される。動力伝達機構56は、複数のギヤ、プーリ、変速装置などで構成され、叩き軸用モータ55のトルクを叩き軸部材43に伝達する。このトルクに応じて、叩き軸部材43は、左右方向を基準とする周方向の一方又は他方に回転する。
【0046】
また、施療ユニット103は、揉み軸用モータ57と、動力伝達機構58と、をさらに備える。揉み軸用モータ57及び動力伝達機構58は、右側壁部54よりも右方に配置される。揉み軸用モータ57は、揉み軸部材41の駆動源である。動力伝達機構56は、複数のギヤ、プーリ、変速装置などで構成され、揉み軸用モータ57のトルクを揉み軸部材41に伝達する。このトルクに応じて、揉み軸部材41は、左右方向を基準とする周方向の一方又は他方に回転する。
【0047】
<1-4.マッサージ機構>
次に、
図7及び
図8を参照して、マッサージ機構4の構成例を説明する。
図7は、マッサージ機構4の構成例を示す斜視図である。
図8は、マッサージ機構4の分解斜視図である。
【0048】
図7及び
図8に示すように、マッサージ機構4は、揉み軸部材41と、揉み用偏心カム部42と、叩き軸部材43と、左右一対の施療部44と、を備える。
【0049】
揉み軸部材41は、軸方向を左右方向に延びて配置される円柱形状の部材である。揉み用偏心カム部42は、軸方向を左右方向に延びて配置される円筒形状の部材である。揉み用偏心カム部42は、揉み軸部材41の左右方向の中央部に固定されて、揉み軸部材41を囲む。揉み軸部材41及び揉み用偏心カム部42は、中心軸Jmを中心に回転可能である。また、揉み用偏心カム部42の外周面の中心は、揉み軸部材41の左右方向に延びる中心軸Jmから径方向にずれて偏心している。
【0050】
叩き軸部材43は、左右方向と平行な回転軸Jtに沿って延びて配置される円柱形状の部材である。叩き軸部材43は、本発明の「軸部材」の一例であり、回転軸Jt回りの順回転及び逆回転が可能である。なお、順回転では、叩き軸部材43は、回転軸Jtを中心とする周方向一方に回転する。また、逆回転では、叩き軸部材43は、回転軸Jtを中心とする周方向他方に回転する。
【0051】
各々の施療部44は、回転軸Jtの軸方向に並んで、被施療者を施療する。なお、軸方向は、回転軸Jtが延びる方向であり、たとえば左右方向である。各々の施療部44は、施療子45と、アーム46と、カム部47と、接続部48と、を有する。
【0052】
左右一対の施療子45は、アーム46に支持される揉み玉である。アーム46は、短手方向が上下方向に広がる板状であり、少なくとも前後方向に長く延びる。なお、本実施形態では、アーム46は、前方に向かうほど左右方向外方に延びる。アーム46の前端部には、施療子45が配置される。
【0053】
左右一対のアーム46にはそれぞれ、左右方向に貫通してベアリングホルダ461が配置される開口が形成される。ベアリングホルダ461は、アーム46の前端部と後端部との間に配置される。ベアリングホルダ461は、ベアリング(符号省略)を介して揉み用偏心カム部42を回転可能に保持する。これにより、揉み軸部材41が回転する際、各々のアーム46は、施療子45とともに、中心軸Jm回りに偏心して回動する。なお、各々のアーム46は、揉み軸部材41の中心軸Jmに対して斜めに交差する方向に延びて配置される。そのため、各々のアーム46の偏心した回動により、マッサージ機構4は、揉み動作などを行うことができる。
【0054】
各々の施療部44が有するカム部47は、叩き軸部材43の左右方向の中央部に配置されて、叩き軸部材43を囲んで左右方向に並ぶ。カム部47は、叩き軸部材43とともに回転可能である。カム部47は、叩き軸部材43の回転軸Jtに対して偏心して回転可能である。
【0055】
各々の施療部44において、接続部48は、カム部47とアーム46の後端部とを接続する。詳細には、接続部48は、クランプ部481と、クランプカバー482と、ベアリング483と、ロッド部484と、を有する。ベアリング483は、カム部47の最外周面に配置されて、外周面が円筒面のカム部47を囲む。クランプ部481及びクランプカバー482は、ベアリング483を介して、カム部47を把持する。なお、把持された状態において、カム部47は、接続部48に対して回転可能である。ロッド部484は、クランプ部481からアーム46の後端部に向かって延び、アーム46の後端部に接続される。たとえば、ロッド部484の先端は、球体形状であり、アーム46の後端部との接続部分において回転可能に把持される。つまり、該接続部分は、球体関節として機能する。
【0056】
叩き軸部材43の回転に応じたカム部47の偏心回転は、接続部48を介してアーム46の後端部に伝達され、さらにアーム46の先端に配置された施療子45にも伝達される。これにより、各々の施療部44の施療子45は、叩き軸部材43の回転に応じて回転軸Jtと交差する方向に揺動することで、被施療者に対する叩き動作を行うことができる。
【0057】
次に、カム部47は、互いに係合可能な複数の偏心カム部材470(たとえば、後述する第1偏心カム部材471及び第2偏心カム部材472)を含む。各々の偏心カム部材470は、叩き軸部材43を囲んで軸方向に延びる筒状である。
【0058】
図9は、叩き軸部材43及びカム部47の斜視図である。
図10Aは、叩き軸部材43を順回転した際のカム部47の状態の一例を示す断面図である。
図10Bは、叩き軸部材43を逆回転した際のカム部47の状態の一例を示す断面図である。
図11は、カム部47の変形例を示す断面図である。なお、
図10A及び
図10Bは、
図9の一点鎖線X-Xに沿う叩き軸部材43及びカム部47の断面構造を示す。
図11も同様に該断面構造に対応する。また、
図10Bでは、後述する合成偏心ベクトルVcの大きさ|Vc|=0であるため、合成偏心ベクトルVcを図示していない。
【0059】
各々の施療部44では、叩き軸部材43が周方向一方に順回転をする場合(
図10A参照)と、周方向他方に逆回転をする場合(
図10B参照)とで、複数の偏心カム部材470(たとえば、第1偏心カム部材471及び第2偏心カム部材472)の係合状態が変化する。これにより、軸方向から見た回転軸Jtに対するカム部47の偏心量(複数の偏心カム部材470の合成偏心量)|Vc|が変化する。たとえば、
図10Aでは合成偏心量|Vc|>0である一方で、
図10Bでは合成偏心量|Vc|=0である。
【0060】
こうすれば、叩き軸部材43の順回転と逆回転とを切り替えることにより、他の駆動機構(特にモータなどの他の動力源)を要することなく、一対の施療部44の施療子45の揺動距離を変化させることができる。たとえば、叩き施療の場合には、叩き軸部材43を順回転させることで、合成偏心量|Vc|を大きくし、各々の施療子45の揺動距離を大きくする。一方、他の施療(揉み施療など)の場合は、叩き軸部材43を逆回転させることで、合成偏心量|Vc|を小さくし、各々の施療子45の揺動距離を小さくする。従って、叩き動作における施療子45のストロークを簡易な構成で変化させることができる。或いは、軸方向から見た左右一対の施療子45の位置のずれを簡易な構成で抑制することができる。また、叩き動作から揉みなどの他の施療に切り替わる際に、各々の施療子45の前後位置を揃えることもできる。よって、施療ユニット103のマッサージ機構4は、マッサージ効果を向上できる。
【0061】
好ましくは、一方の施療部44のカム部47と他方の施療部44のカム部47との回転軸Jtに対する偏心方向が180°ずれて配される。つまり、上述の合成偏心位置|Vc|の差は、180°離れる。こうすれば、一対の施療部44の施療子45の周期的な揺動の位相差を180°ずらすことができる。たとえば、各々の施療子45は、交互の叩き動作で被施療者を施療できる。従って、一方の施療子45が被施療者に向かって移動して施療部位を押圧する際、他方の施療子45は、被施療者から離れる方向に移動する。但し、この例示は、上述の合成偏心位置の差が0°よりも大きく且つ180°未満である構成を排除しない。
【0062】
次に、本実施形態では、各々の施療部44において、カム部47は、筒状の第1偏心カム部材471と、筒状の第2偏心カム部材472と、を有する。つまり、偏心カム部材470は、第1偏心カム部材471及び第2偏心カム部材472を含む。
【0063】
各々の施療部44において、第1偏心カム部材471は、叩き軸部材43の外周面に配置される筒状に形成され、叩き軸部材43を囲む。第1偏心カム部材471の内周面の中心は、回転軸Jtと一致する。一方、第1偏心カム部材471は、回転軸Jtに対して偏心した中心P1を有した同心の円筒面の外周面471a、471bを有する。なお、中心P1は、本発明の「第1中心」の一例である。内周側の外周面471aと外周側の外周面471bとの間には、段差が設けられる。該段差によって後述する第1係合部4711及び第2係合部4712が形成される。
【0064】
本実施形態では、第1偏心カム部材471は、軸方向に延びる筒状であり、軸方向に凹む凹部4710を有する。凹部4710は、第1偏心カム部材471の左右方向外方の端部において左右方向内方及び径方向内方に凹むとともに、周方向に延びる。なお、左右方向外方とは、左側の施療部44のカム部47であれば左方を意味し、右側の施療部44のカム部47であれば右方を意味する。また、左右方向内方とは、左側の施療部44のカム部47であれば右方を意味し、右側の施療部44のカム部47であれば左方を意味する。
【0065】
各々の施療部44において、第2偏心カム部材472は、第1偏心カム部材471の外周面に配置されて、第1偏心カム部材471を囲む筒状に形成される。第2偏心カム部材472は同心の円筒面の内周面472a、472bを有する。内周面472a、472bの中心は、第1偏心カム部材471の外周面の中心P1と一致する。内周面472aは第1偏心カム部材471の外周面471aと摺動し、内周面472bは第1偏心カム部材471の外周面471bと摺動する。内周側の内周面472aと外周側の内周面472bとの間には段差が設けられ、該段差によって後述する突壁部4720、第3係合部4721及び第4係合部4722が形成される。
【0066】
第2偏心カム部材472の外周面の中心P2は、第2偏心カム部材472の内周面の中心P1に対して偏心する。なお、中心P2は、本発明の「第2中心」の一例である。
【0067】
なお、本実施形態では、第1偏心カム部材471の外周面が回転軸Jtに対して偏心する第1中心(つまり中心P1)を有して、第2偏心カム部材472の内周面が摺動可能な円筒面を有する。但し、この例示に限定されず、第2偏心カム部材472の内周面が回転軸Jtに対して偏心する第1中心を有して、第1偏心カム部材471の外周面が摺動可能な円筒面を有してもよい。この際、第2偏心カム部材472の外周面は、第1中心に対して偏心した第2中心を有する円筒面に形成される。
【0068】
本実施系形態では、第2偏心カム部材472は、軸方向に延びる筒状であり、第1偏心カム部材471の左右方向外方の端部において回転可能に配置されて、これを囲む。また、第2偏心カム部材472は、突壁部4720を有する。突壁部4720は、第2偏心カム部材472の左右方向内方の端部において左右方向内方に突出し、周方向に延びる。また、第2偏心カム部材472の突壁部4720は、第1偏心カム部材471の凹部4710に収容される。突壁部4720の周方向長さは、凹部4710の周方向長さよりも短い。
【0069】
ここで、好ましくは、各々の施療部44のカム部47の構成は同じであり、第1偏心カム部材471及び第2偏心カム部材472が同じ形状に形成される。たとえば、左右一対のカム部47の第1偏心カム部材471及び第2偏心カム部材472には、それぞれ、共通化された同じ部品が用いられる。こうすれば、カム部47となる部品を共通化して、同種の部品を用いることができる。従って、各々の施療部44のカム部47の構成が異なる(つまり、異種の部品を用いる)場合と比べて、製造コストを低減できる。従って、マッサージ機構4の生産性を向上できる。但し、この例示は、各々の施療部44のカム部47の構成が異なる構成を排除しない。
【0070】
また、第2偏心カム部材472は、第1偏心カム部材471に対して、第1偏心カム部材471の外周面回りの周方向の一方及び他方に回転可能である。たとえば、叩き軸部材43が周方向一方に順回転する場合、第2偏心カム部材472は、第1偏心カム部材471に対して周方向一方に回転する。また、叩き軸部材43が周方向他方に逆回転する場合、第2偏心カム部材472は、第1偏心カム部材471に対して周方向他方に回転する。但し、第1偏心カム部材471に対する第2偏心カム部材472の回転範囲は、360°未満であり、好ましくは180°以下であり、さらに好ましくは180°である。この回転範囲の一方端及び他方端において、両者は、係合することで、第1偏心カム部材471に対する第2偏心カム部材472の回転が防止される。
【0071】
たとえば、第1偏心カム部材471は、第1係合部4711と、第2係合部4712と、を有する。本実施形態では、第1係合部4711は、凹部4710の周方向一方側の内壁面であり、言い換えると周方向他方を向く内壁面である。第2係合部4712は、凹部4710の周方向他方側の内壁面であり、言い換えると周方向一方を向く内壁面である。
【0072】
また、第2偏心カム部材472は、第3係合部4721と、第4係合部4722と、を有する。第3係合部4721は、叩き軸部材43が順回転する際に第1係合部4711と周方向に係合する。第4係合部4722は、叩き軸部材43が逆回転する際に第2係合部4712と周方向に係合する。本実施形態では、第3係合部4721は、突壁部4720の周方向一方側の端部である。第4係合部4722は、突壁部4720の周方向他方側の端部である。
【0073】
図10Aに示すように、叩き軸部材43が順回転する際、第1偏心カム部材471の外周面471aが第2偏心カム部材の内周面472aと摺動する。第3係合部4721は、第1係合部4711と周方向に当接する。
【0074】
また、
図10Bに示すように、叩き軸部材43が逆回転する際、第1偏心カム部材471の外周面471aが第2偏心カム部材の内周面472aと摺動する。第4係合部4722は、第2係合部4712と周方向に当接する。
【0075】
なお、第1係合部4711~第4係合部4722の形態は、上述の例示に限定されない。たとえば
図11に示すように、第1偏心カム部材471が、中心P1を有した円筒面の外周面471aを備えてもよい。また、第2偏心カム部材472が内周面上から突出して該円筒面に摺動する複数の突出部を有してもよい。たとえば、
図11のように、第1係合部4711、第2係合部4712は、外周面471aから突出する突出片であってもよい。この時、第3係合部4721、第4係合部4722は、第2偏心カム部材472の内周面472b上から突出して第1偏心カム部材471の円筒面の外周面471aに摺動可能な突出片であってもよい。
【0076】
また、第2係合部4712は、第1係合部4711とは、周方向において間隔を空けて離れていてもよい。第4係合部4722は、第3係合部4721とは、周方向において間隔を空けて離れていてもよい。
【0077】
また、第2偏心カム部材472が中心P1を有した円筒面の内周面472bを備えてもよい。第1係合部4711、第2係合部4712は、第2偏心カム部材472の内周面472bに摺動可能な突出片であってもよい。
【0078】
ここで、軸方向から見た回転軸Jtから第1偏心カム部材471の外周面の中心に向かうベクトルを「第1偏心ベクトルV1」と呼ぶ。軸方向から見た第2偏心カム部材472の内周面の中心から第2偏心カム部材472の外周面の中心に向かうベクトルを「第2偏心ベクトルV2」と呼ぶ。また、第1偏心ベクトルV1及び第2偏心ベクトルV2の和を「合成偏心ベクトルVc」と呼ぶ。
【0079】
叩き軸部材43が順回転して第1係合部4711が第3係合部4721に係合した際に、合成偏心ベクトルVcの大きさ|Vc|は、第1偏心ベクトルV1の大きさ|V1|、及び、第2偏心ベクトルV2の大きさ|V2|よりも大きい。
【0080】
一方、叩き軸部材43が逆回転して第2係合部4712が第4係合部4722に係合した際、合成偏心ベクトルVcの大きさ|Vc|は、第1偏心ベクトルV1の大きさ|V1|、及び、第2偏心ベクトルV2の大きさ|V2|よりも小さい。
【0081】
こうすれば、叩き軸部材43の順回転と逆回転とを切り替えることにより、左右一対の施療部44の施療子45の揺動距離(叩き動作のストローク)をそれぞれ大きく変化させることができる。
【0082】
第2偏心ベクトルV2の大きさ|V2|は、第1偏心ベクトルV1の大きさ|V1|の25%以上且つ85%以下であってもよい。こうすれば、叩き軸部材43が逆回転して第2係合部4712が第4係合部4722に係合した際、叩き軸部材43が順回転して第1係合部4711が第3係合部4721に係合した際よりも、一対の施療部44の各々の施療子45の揺動距離(叩き動作のストローク)をより小さくできる。叩き軸部材43を逆回転させる際に微振動の叩き動作ができるので、施療子45の揺動周期を小さくして、単位時間当たりの揺動数を大きくできる。たとえば、JIS規格に準拠する最大の揺動数1700[回/分]にできる。従って、被施療者に提供する叩き施療の体感を向上できる。
【0083】
また、好ましくは、第1偏心ベクトルV1の大きさ|V1|に対する第2偏心ベクトルV2の大きさ|V2|の比率(|V2|/|V1|)は、30%以上且つ70%以下であってもよい。こうすれば、叩き軸部材43を逆回転させる際、施療子45の揺動周期をさらに小さくして、単位時間当たりの揺動数をさらに大きくできる。
【0084】
なお、上述の比率(|V2|/|V1|)が25%未満になると、叩き軸部材43の順回転時での上述の合成偏心ベクトルVcの大きさ|Vc|と、逆回転時での上述の合成偏心ベクトルVcの大きさ|Vc|との差が小さくなり過ぎる。従って、叩き軸部材43の順回転時及び逆回転時で叩き施療の体感の違いが分かりづらくなる。
【0085】
一方、上述の比率(|V2|/|V1|)が85%よりも大きくなると、施療子45の揺動周期が大きくなるため、単位時間当たりの揺動数を大きくし難くなる。従って、被施療者に提供する叩き施療の体感が向上し難くなる。
【0086】
但し、上述の例示は、上述の比率(|V2|/|V1|)が25%未満、又は、85%よりも大きい構成を排除しない。
【0087】
また、第2偏心ベクトルV2の大きさ|V2|は、0.3[mm]以上且つ1.0[mm]以下であってもよい。こうすれば、叩き軸部材43が逆回転して第2係合部4712が第4係合部4722に係合した際、叩き軸部材43が順回転して第1係合部4711が第3係合部4721に係合した際よりも、一対の施療部44の各々の施療子45の揺動距離(叩き動作のストローク)をより小さくできる。叩き軸部材43を逆回転させる際の微振動の叩き動作ができるので、施療子45の揺動周期を小さくして、単位時間当たりの揺動数を大きくできる。たとえば、JIS規格に準拠する最大の揺動数1700[回/分]にできる。従って、被施療者が感じる叩き施療の体感を向上できる。
【0088】
なお、第2偏心ベクトルV2の大きさ|V2|が0.3[mm]未満になると、叩き軸部材43を逆回転させる際、施療子45の揺動範囲が小さすぎるため、叩き施療の効果が大きく減少する。
【0089】
一方、第2偏心ベクトルV2の大きさ|V2|が1.0[mm]よりも大きくなると、施療子45の揺動周期が大きくなるため、単位時間当たりの揺動数を大きくし難くなる。従って、被施療者に提供する叩き施療の体感が向上し難くなる。
【0090】
但し、上述の例示は、|V2|<0.3[mm]である構成、及び、|V2|>1.0[mm]である構成を排除しない。
【0091】
また、上述の状況において、第1偏心ベクトルV1の向きと、第2偏心ベクトルV2の向きとは逆方向であってもよい。こうすれば、叩き軸部材43が順回転する際での上述の合成偏心ベクトルVcの大きさ|Vc|と、叩き軸部材43が逆回転する際での上述の合成偏心ベクトルVcの大きさ|Vc|との差の絶対値を最大化できる。従って、叩き軸部材43の順回転と逆回転とを切り替えることにより、一対の施療部44の施療子45の揺動距離(叩き動作のストローク)を最大限に変化させることができる。
【0092】
さらに、好ましくは、叩き軸部材43が逆回転して第2係合部4712が第4係合部4722に係合した際、第1偏心ベクトルV1の向きは第2偏心ベクトルV2の向きとは逆方向であって、第2偏心ベクトルV2の大きさ|V2|は第1偏心ベクトルV1の大きさ|V1|と同じであってもよい。すなわち、叩き軸部材43が逆回転する際、カム部47は、偏心回転しなくてもよい。こうすれば、叩き軸部材43を逆回転させて第2係合部4712を第4係合部4722に係合させる際、上述の合成偏心ベクトルVcの大きさ|Vc|を0にできる。すなわち、左右一対の施療子45が揺動しなくなるので、軸方向から見た施療子45の位置を揃えることができる。言い換えると、1対の施療部44で施療子45がほぼ重なる状態にすることができる。従って、叩き軸部材43が逆回転して第2係合部4712が第4係合部4722に係合した際に、施療子45が軸方向にそろった状態での動作が望ましい他の施療動作(揉み施療、背筋伸ばし施療など)を効果的に実施できる。
【0093】
なお、上述の例示では、第1係合部4711が第3係合部4721に係合した状態のときにカム部47が偏心して叩き動作が行われる(
図10A参照)。一方、第2係合部4712が第4係合部4722に係合した状態のときにカム部47の中心が回転軸Jtに一致して揉み動作が行われる(
図10B参照)。但し、この例示に限定されず、第2係合部4712が第4係合部4722に係合した状態のときにカム部47が偏心して叩き動作が行われてもよい。また、第1係合部4711が第3係合部4721に係合した状態のときにカム部47の中心が回転軸Jtに一致して揉み動作が行われてもよい。
【0094】
こうすれば、叩き施療において、左右一対の施療子45は、半周期ずらして交互にリズムよく施療部位をたたくことができる。また、揉み施療などにおいて、左右一対の施療子45が軸方向にそろった状態で揉み動作を行うことができる。従って、揉み施療の体感を左右で同じにできる。よって、被施療者は、快適なマッサージ効果を得ることができる。
【0095】
また、好ましくは、第2偏心カム部材472に対して第1偏心カム部材471が回動可能な周方向幅は180°である。すなわち、軸方向から見て上述の2つの係合部分は、2回対称となる位置に配置される。こうすれば、叩き軸部材43の順回転と逆回転とを切り替えることにより、一対の施療部44の施療子45の揺動距離(叩き動作のストローク)を最大限に変化させることができる。例えば、
図10Aにおいて、凹部4710を画定する第1係合部4711と第2係合部4712が中心P1を中心とする逆時計回りに270°離間し、突壁部4720を画定する第3係合部4721と第4係合部4722が中心P1を中心とする逆時計回りに90°離間していれば、270°-90°=180°となり、第2偏心カム部材472に対して第1偏心カム部材471が回動可能な周方向幅は180°となる。
【0096】
但し、上述の例示は、第2偏心ベクトルV2の向きが第1偏心ベクトルV1の向きとは真逆ではない構成を排除しないし、さらに|V1|≠|V2|である構成を排除しない。また、上述の例示は、第2偏心カム部材472に対して第1偏心カム部材471が回動可能な周方向幅が180°未満又は180°よりも大きい構成を排除しない。また、上述の例示では、1つの施療部44には2つの偏心カム部材470を設けているが、3つ以上の偏心カム部材470を設けていても良い。
【0097】
<2.備考>
上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0098】
<3.総括>
以下では、これまでに説明してきた実施形態について総括的に述べる。
【0099】
たとえば、本明細書中に開示されているマッサージ機構は、
回転軸に沿って配置され、前記回転軸を中心として周方向一方に回転する順回転と周方向他方に回転する逆回転とが可能な軸部材と、
前記回転軸の軸方向に並んで被施療者を施療する一対の施療部と、
を備え、
各々の前記施療部は、
アームに支持される施療子と、
前記軸部材とともに回転可能なカム部と、
前記アームと前記カム部とを接続する接続部と、
を有し、
各々の前記施療部の前記施療子は、前記軸部材の回転に応じて前記回転軸と交差する方向に揺動することで、被施療者に対する叩き動作を行うことができ、
前記カム部は、互いに係合可能な第1偏心カム部材及び第2偏心カム部材を含み、
各々の前記施療部では、前記軸部材が前記順回転をする場合と、前記逆回転をする場合とで、前記第1偏心カム部材及び前記第2偏心カム部材の係合状態が変化することにより、
前記回転軸に対する前記カム部の偏心量が変化する構成(第1の構成)とされる。
【0100】
上記第1の構成のマッサージ機構は、
一方の前記施療部の前記カム部と、他方の前記施療部の前記カム部との前記回転軸に対する偏心方向が180°ずれて配される構成(第2の構成)であってもよい。
【0101】
上記第1又は第2の構成のマッサージ機構は、
各々の前記施療部において、
前記第1偏心カム部材は、前記軸部材の外周面に配置される筒状に形成されるとともに、第1係合部と、第2係合部と、を有し、
前記第2偏心カム部材は、前記第1偏心カム部材の外周面に配置されて前記第1偏心カム部材を囲む筒状に形成されるとともに、前記軸部材が順回転する際に前記第1係合部と周方向に係合する第3係合部と、前記軸部材が逆回転する際に前記第2係合部と周方向に係合する第4係合部と、を有し、
前記第1偏心カム部材の外周面及び前記第2偏心カム部材の内周面の一方が前記回転軸に対して偏心する第1中心を有して他方が摺動可能な円筒面を有するとともに、前記第2偏心カム部材の外周面が前記第1中心に対して偏心した第2中心を有する円筒面に形成される構成(第3構成)であってもよい。
【0102】
上記第3の構成のマッサージ機構は、
軸方向から見た前記回転軸から前記第1中心に向かう第1偏心ベクトルと、軸方向から見た前記第1中心から前記第2中心に向かう第2偏心ベクトルとの合成偏心ベクトルの大きさは、
前記第1係合部が前記第3係合部に係合した際に、前記第1偏心ベクトルの大きさ、及び、前記第2偏心ベクトルの大きさよりも大きく、
前記第2係合部が前記第4係合部に係合した際に、前記第1偏心ベクトルの大きさ、及び、前記第2偏心ベクトルの大きさよりも小さい構成(第4の構成)であってもよい。
【0103】
上記第4の構成のマッサージ機構は、
前記第2偏心ベクトルの大きさは、前記第1偏心ベクトルの大きさの25%以上且つ85%以下である構成(第5の構成)であってもよい。
【0104】
上記第4又は第5の構成のマッサージ機構は、
前記第2偏心ベクトルの大きさは、0.3mm以上且つ1.0mm以下である構成(第6の構成)であってもよい。
【0105】
上記第4~第6のいずれかの構成のマッサージ機構は、
前記第1偏心ベクトルの向きと、前記第2偏心ベクトルの向きとは逆方向である構成(第7の構成)であってもよい。
【0106】
上記第4~第7のいずれかの構成のマッサージ機構は、
前記第2係合部が前記第4係合部に係合した際に、
前記第1偏心ベクトルの向きは、前記第2偏心ベクトルの向きとは逆方向であって、
前記第2偏心ベクトルの大きさは、前記第1偏心ベクトルの大きさと同じである構成(第8の構成)であってもよい。
【0107】
上記第3~第8のいずれかの構成のマッサージ機構は、
第2偏心カム部材に対して第1偏心カム部材が回動可能な周方向幅は180°である構成(第9の構成)であってもよい。
【0108】
上記第3~第9のいずれかの構成のマッサージ機構は、
前記第1係合部が前記第3係合部に係合した状態、及び、前記第2係合部が前記第4係合部に係合した状態の一方のときに前記カム部が偏心して叩き動作が行われ、他方のときに前記カム部の中心が前記回転軸に一致して揉み動作が行われる構成(第10の構成)であってもよい。
【0109】
上記第3~第10のいずれかの構成のマッサージ機構は、
前記第1偏心カム部材の外周面及び前記第2偏心カム部材の内周面が前記第1中心を有した円筒面を備える構成(第11の構成)であってもよい。
【0110】
上記第3~第11のいずれかの構成のマッサージ機構は、
前記第1偏心カム部材の外周面が前記第1中心を有した円筒面を備え、前記第2偏心カム部材が内周面上から突出して該円筒面に摺動する複数の突出部を有する構成(第12の構成)であってもよい。
【0111】
上記第12の構成のマッサージ機構は、
前記突出部により前記第3係合部及び前記第4係合部が形成される構成(第13の構成)であってもよい。
【0112】
上記第3~第13のいずれかの構成のマッサージ機構は、
前記第2偏心カム部材の内周面が前記第1中心を有した円筒面を備え、
前記第1偏心カム部材が該円筒面に摺動する突出片を有する構成(第14の構成)であってもよい。
【0113】
上記第1~第14のいずれかの構成のマッサージ機構は、
各々の前記施療部の前記カム部は同一の形状である構成(第15の構成)であってもよい。
【0114】
また、本明細書中に開示されているマッサージ機構は、
上記第1~第15のいずれかの構成のマッサージ機構を備える構成(第16の構成)とされる。
【符号の説明】
【0115】
100 (椅子式)マッサージ機
101 座部
102 背凭れ部
1021 枕部
103 施療ユニット
1031 ガイドレール
104 立設部
105 肘掛け部
106 オットマン
1071 入力部
1072 記憶部
108 制御部
1091 アクチュエータ群
1092 ポンプ
1093 電磁弁群
1 ベース部
11 左ベース部材
12 右ベース部材
13 中央ベース部材
21 上側昇降軸部材
22 下側昇降軸部材
221 ピニオンギヤ
30 進退用軸部材
301 進退用ギヤ
31 左上側保持部
311 支持部材
312 進退機構用モータ
313 動力伝達機構
32 右上側保持部
33 左下側保持部
331 下側昇降軸用モータ
332 動力伝達機構
34 右下側保持部
341 エンコーダ
4 マッサージ機構
41 揉み軸部材
42 揉み用偏心カム部
43 叩き軸部材
44 施療部
45 施療子
46 アーム
461 ベアリングホルダ
47 カム部
470 偏心カム部材
471 第1偏心カム部材
471a、471b 外周面
4710 凹部
4711 第1係合部
4712 第2係合部
472 第2偏心カム部材
472a、472b 内周面
4720 突壁部
4721 第3係合部
4722 第4係合部
48 接続部
481 クランプ部
482 クランプカバー
483 ベアリング
484 ロッド部
51 上側筐体部
511 ラック
52 下側筐体部
520 軸支部
521 底部
522 背部
53 左側壁部
54 右側壁部
55 叩き軸用モータ
56 動力伝達機構
57 揉み軸用モータ
58 動力伝達機構