(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090664
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/10 20060101AFI20240627BHJP
F04D 29/12 20060101ALI20240627BHJP
F04D 25/16 20060101ALI20240627BHJP
F16J 15/54 20060101ALI20240627BHJP
F16J 15/44 20060101ALI20240627BHJP
F16J 15/48 20060101ALI20240627BHJP
F16J 15/3268 20160101ALI20240627BHJP
【FI】
F04D29/10 A
F04D29/12 Z
F04D25/16
F16J15/54
F16J15/44 C
F16J15/48
F16J15/3268
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206704
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正悟
(72)【発明者】
【氏名】石原 佳季
(72)【発明者】
【氏名】光田 聡
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】中根 芳之
【テーマコード(参考)】
3H130
3J042
3J043
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB27
3H130AB47
3H130AB62
3H130AB65
3H130AC03
3H130AC13
3H130BA53F
3H130BA66F
3H130DA02Z
3H130DB01Z
3H130DB02Z
3H130DC13X
3H130DC20X
3H130DD01Z
3H130EA06F
3H130EB01A
3H130EB01F
3H130EC01F
3H130EC04A
3J042AA04
3J042BA03
3J042CA05
3J042DA20
3J043AA16
3J043BA04
3J043DA20
(57)【要約】
【課題】広範囲の運転範囲において、遠心圧縮機の運転効率の向上を図ること。
【解決手段】シールリング62が、第1凹部61内において、バネ63の付勢力に抗する洩れ空気から受ける圧力に応じて回転軸41の軸方向に移動し、回転軸41の径方向において第1対向面64又は第2対向面65に対向することで、シール間隔が変化する。例えば、洩れ空気の圧力が比較的小さい状態で遠心圧縮機10が運転している場合、シールリング62は、一対の第2対向面65の一方に対向する。例えば、洩れ空気の圧力が比較的大きい状態で遠心圧縮機10が運転している場合、シールリング62は、一対の第2対向面65の他方に対向する。洩れ空気の圧力が比較的小さくもなく、且つ、比較的大きくもない中間の圧力の状態で遠心圧縮機10が運転している場合、シールリング62は、第1対向面64に対向する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸と一体的に回転することで流体を圧縮するインペラと、
前記回転軸を回転させるモータと、
前記インペラを収容するインペラ室、前記モータを収容するモータ室、及び前記インペラによって圧縮された流体が吐出される吐出室を区画するハウジングと、を備え、
前記ハウジングは、前記インペラ室と前記モータ室とを仕切るとともに前記回転軸が挿通される挿通孔が形成されている仕切壁を有する遠心圧縮機であって、
前記挿通孔と前記回転軸との間には、前記回転軸が挿通され、前記インペラの背面に洩れてきた洩れ流体をシールするシール機構が設けられ、
前記シール機構は、
前記回転軸及び前記挿通孔の一方に設けられるとともに他方に向けて開口する環状の第1凹部と、
前記第1凹部に設けられ、前記他方に向けて前記開口から突出する突出部を有し、前記回転軸の軸方向に移動可能に設けられる環状のシールリングと、
前記第1凹部に設けられ、前記シールリングを前記モータ室側から前記インペラ室側に向けて前記軸方向に付勢するバネと、
前記回転軸及び前記挿通孔の他方に設けられ、前記回転軸の径方向において前記シールリングとのシール間隔が所定間隔となるように対向する環状の第1対向面と、
前記第1対向面を間に挟んで前記モータ室側及び前記インペラ室側に設けられ、前記シール間隔が前記所定間隔よりも大きくなるように対向する環状の一対の第2対向面と、を有し、
前記軸方向において、前記シールリングの幅は、一対の前記第2対向面の各々の幅よりも小さく、
前記シール機構は、前記シールリングが、前記第1凹部内において、前記バネの付勢力に抗する前記洩れ流体から受ける圧力に応じて前記軸方向に移動され、前記径方向において前記第1対向面又は前記第2対向面に対向することで、前記シール間隔が変化されることを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項2】
前記回転軸は、前記第1対向面と一対の前記第2対向面とを有する第2凹部を有し、
前記第1対向面は、前記第2対向面から突出する円環状の凸部の上面を構成し、
前記第2凹部は、前記軸方向に対して前記凸部を間に挟んで並ぶ低圧力用凹部と高圧力用凹部とを有し、
一対の前記第2対向面のうち、
一方の前記第2対向面は前記低圧力用凹部の底面を構成し、
他方の前記第2対向面は前記高圧力用凹部の底面を構成し、
前記バネの付勢力は、
前記圧力が第1所定圧力以下のときに前記径方向で前記低圧力用凹部と重なる位置に前記シールリングが配置され、
前記圧力が前記第1所定圧力よりも大きい第2所定圧力以上のときに前記径方向で前記高圧力用凹部と重なる位置に前記シールリングが配置され、
前記圧力が前記第1所定圧力よりも大きく、且つ、前記第2所定圧力よりも小さい第3所定圧力のときに前記挿通孔と前記回転軸との間が前記シールリング及び前記第1対向面によってシールされるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
前記第1対向面及び一対の前記第2対向面は、前記回転軸の外周面に形成されており、
前記第1凹部は、前記挿通孔の内周面に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遠心圧縮機。
【請求項4】
前記第2対向面には、前記シールリングに向けて前記径方向へ突出する突起が形成され、前記第2対向面に対する前記突起の突出高さは、前記第2対向面に対する前記凸部の突出高さよりも低いことを特徴とする請求項2に記載の遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、遠心圧縮機は、回転軸と、インペラと、を備えている。インペラは、回転軸と一体的に回転することで流体を圧縮する。遠心圧縮機は、モータと、ハウジングと、を備えている。モータは、回転軸を回転させる。ハウジングは、インペラ室、モータ室、及び吐出室を区画する。インペラ室は、インペラを収容する。モータ室は、モータを収容する。吐出室には、インペラによって圧縮された流体が吐出される。ハウジングは、仕切壁を有している。仕切壁は、インペラ室とモータ室とを仕切る。仕切壁には、回転軸が挿通される挿通孔が形成されている。
【0003】
ところで、このような遠心圧縮機においては、インペラによって圧縮されて吐出室に吐出される流体の一部が、インペラの背面に洩れてくる場合がある。そして、インペラの背面に洩れてきた流体が、挿通孔を介してモータ室内へ洩れてしまう虞がある。その結果、遠心圧縮機において、流体の無駄な圧縮が増えることになるため、運転効率が低下する要因となる。そこで、挿通孔と回転軸との間をシールするシールリングを備えた遠心圧縮機が知られている。これによれば、挿通孔を介してモータ室内へ流体が洩れてしまうことがシールリングによって抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回転軸が回転することに伴い、シールリングと回転軸との間では摺動抵抗が生じる。シールリングと回転軸との間で生じる摺動抵抗は、遠心圧縮機の動力損失となる。遠心圧縮機の動力損失は、遠心圧縮機の運転効率が低下する要因となる。
【0006】
ここで、例えば、インペラの背面に洩れてきた洩れ流体の圧力が比較的小さい状態で遠心圧縮機が運転している場合を考える。この場合、挿通孔を介してモータ室内へ流体が洩れたとしても、遠心圧縮機の運転効率はさほど低下しない。したがって、洩れ流体の圧力が比較的小さい状態では、挿通孔と回転軸との間をシールリングによってシールする必要が無いにもかかわらず、シールリングと回転軸との間で摺動抵抗が生じることにより、遠心圧縮機の動力損失が生じてしまう。
【0007】
一方で、例えば、インペラの背面に洩れてきた洩れ流体の圧力が比較的大きい状態で遠心圧縮機が運転している場合を考える。この場合、挿通孔を介してモータ室内へ流体が洩れてしまうと、遠心圧縮機の運転効率が低下する。したがって、挿通孔と回転軸との間をシールリングによってシールする必要がある。しかしながら、洩れ流体の圧力が比較的大きい状態で遠心圧縮機が運転している場合は、回転軸の回転数が高いため、シールリングと回転軸との間で生じる摺動抵抗が比較的大きくなる。したがって、遠心圧縮機の動力損失が比較的大きくなる。ここで、シールリングと回転軸との間での摺動抵抗に伴う遠心圧縮機の動力損失による運転効率の低下は、挿通孔を介したモータ室内への流体の洩れによる運転効率の低下に比較して影響が大きい。したがって、洩れ流体の圧力が比較的大きい状態では、挿通孔と回転軸との間をシールするシールリングが無いほうが、遠心圧縮機の運転効率の面で有利である。
【0008】
さらには、インペラの背面に洩れてきた洩れ流体の圧力が比較的小さくもなく、且つ、比較的大きくもない中間の圧力の状態で遠心圧縮機が運転している場合を考える。この場合、シールリングと回転軸との間での摺動抵抗に伴う遠心圧縮機の動力損失による運転効率の低下は、挿通孔を介したモータ室内への流体の洩れによる運転効率の低下に比較して影響が小さい。したがって、洩れ流体の圧力が比較的小さくもなく、且つ、比較的大きくもない中間の圧力の状態では、挿通孔を介したモータ室内への流体の洩れを抑制することが望まれている。このように、広範囲の運転範囲において、遠心圧縮機の運転効率の向上を図ることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する遠心圧縮機は、回転軸と、前記回転軸と一体的に回転することで流体を圧縮するインペラと、前記回転軸を回転させるモータと、前記インペラを収容するインペラ室、前記モータを収容するモータ室、及び前記インペラによって圧縮された流体が吐出される吐出室を区画するハウジングと、を備え、前記ハウジングは、前記インペラ室と前記モータ室とを仕切るとともに前記回転軸が挿通される挿通孔が形成されている仕切壁を有する遠心圧縮機であって、前記挿通孔と前記回転軸との間には、前記回転軸が挿通され、前記インペラの背面に洩れてきた洩れ流体をシールするシール機構が設けられ、前記シール機構は、前記回転軸及び前記挿通孔の一方に設けられるとともに他方に向けて開口する環状の第1凹部と、前記第1凹部に設けられ、前記他方に向けて前記開口から突出する突出部を有し、前記回転軸の軸方向に移動可能に設けられる環状のシールリングと、前記第1凹部に設けられ、前記シールリングを前記モータ室側から前記インペラ室側に向けて前記軸方向に付勢するバネと、前記回転軸及び前記挿通孔の他方に設けられ、前記回転軸の径方向において前記シールリングとのシール間隔が所定間隔となるように対向する環状の第1対向面と、前記第1対向面を間に挟んで前記モータ室側及び前記インペラ室側に設けられ、前記シール間隔が前記所定間隔よりも大きくなるように対向する環状の一対の第2対向面と、を有し、前記軸方向において、前記シールリングの幅は、一対の前記第2対向面の各々の幅よりも小さく、前記シール機構は、前記シールリングが、前記第1凹部内において、前記バネの付勢力に抗する前記洩れ流体から受ける圧力に応じて前記軸方向に移動され、前記径方向において前記第1対向面又は前記第2対向面に対向することで、前記シール間隔が変化される。
【0010】
これによれば、シールリングが、第1凹部内において、バネの付勢力に抗する洩れ流体から受ける圧力に応じて回転軸の軸方向に移動し、回転軸の径方向において第1対向面又は第2対向面に対向することで、シール間隔が変化する。したがって、例えば、洩れ流体の圧力が比較的小さい状態で遠心圧縮機が運転している場合、シールリングは、一対の第2対向面の一方に対向する。よって、シールリングと回転軸との間で摺動抵抗が生じてしまうことが低減されるため、遠心圧縮機の動力損失を抑制することができる。また、例えば、洩れ流体の圧力が比較的大きい状態で遠心圧縮機が運転している場合、シールリングは、一対の第2対向面の他方に対向する。よって、シールリングと回転軸との間で摺動抵抗が生じてしまうことが低減されるため、遠心圧縮機の動力損失を抑制することができる。さらに、例えば、洩れ流体の圧力が比較的小さくもなく、且つ、比較的大きくもない中間の圧力の状態で遠心圧縮機が運転している場合、シールリングは、第1対向面に対向する。よって、洩れ流体が挿通孔を介してモータ室内へ洩れてしまうことが抑制される。以上により、広範囲の運転範囲において、遠心圧縮機の運転効率の向上を図ることができる。
【0011】
上記遠心圧縮機において、前記回転軸は、前記第1対向面と一対の前記第2対向面とを有する第2凹部を有し、前記第1対向面は、前記第2対向面から突出する円環状の凸部の上面を構成し、前記第2凹部は、前記軸方向に対して前記凸部を間に挟んで並ぶ低圧力用凹部と高圧力用凹部とを有し、一対の前記第2対向面のうち、一方の前記第2対向面は前記低圧力用凹部の底面を構成し、他方の前記第2対向面は前記高圧力用凹部の底面を構成し、前記バネの付勢力は、前記圧力が第1所定圧力以下のときに前記径方向で前記低圧力用凹部と重なる位置に前記シールリングが配置され、前記圧力が前記第1所定圧力よりも大きい第2所定圧力以上のときに前記径方向で前記高圧力用凹部と重なる位置に前記シールリングが配置され、前記圧力が前記第1所定圧力よりも大きく、且つ、前記第2所定圧力よりも小さい第3所定圧力のときに前記挿通孔と前記回転軸との間が前記シールリング及び前記第1対向面によってシールされるように設定されているとよい。
【0012】
例えば、洩れ流体の圧力が第1所定圧力以下のとき、シールリングが回転軸の径方向で低圧力用凹部と重なる位置に配置される。したがって、洩れ流体の圧力が第1所定圧力以下のときに、シールリングと回転軸との間で摺動抵抗が生じてしまうことが低減されるため、遠心圧縮機の動力損失を抑制することができる。
【0013】
また、例えば、洩れ流体の圧力が第2所定圧力以上のとき、シールリングが回転軸の径方向で高圧力用凹部と重なる位置に配置される。したがって、洩れ流体の圧力が第2所定圧力以上のときに、シールリングと回転軸との間で摺動抵抗が生じてしまうことが低減されるため、遠心圧縮機の動力損失を抑制することができる。
【0014】
さらに、例えば、洩れ流体の圧力が第1所定圧力よりも大きく、且つ、第2所定圧力よりも小さい第3所定圧力のとき、挿通孔と回転軸との間がシールリング及び第1対向面によってシールされるようになっている。したがって、洩れ流体の圧力が第1所定圧力よりも大きく、且つ、第2所定圧力よりも小さい第3所定圧力のときに、洩れ流体が挿通孔を介してモータ室内へ洩れてしまうことが抑制される。以上により、広範囲の運転範囲において、遠心圧縮機の運転効率の向上を図ることができる。
【0015】
上記遠心圧縮機において、前記第1対向面及び一対の前記第2対向面は、前記回転軸の外周面に形成されており、前記第1凹部は、前記挿通孔の内周面に形成されているとよい。
【0016】
第1対向面及び一対の第2対向面が、回転軸の外周面に形成されており、且つ、第1凹部が、挿通孔の内周面に形成されている構成は、シールリングを第1凹部内で回転軸の軸方向で往復動可能とする構成として好適である。
【0017】
上記遠心圧縮機において、前記第2対向面には、前記シールリングに向けて前記径方向へ突出する突起が形成され、前記第2対向面に対する前記突起の突出高さは、前記第2対向面に対する前記凸部の突出高さよりも低いとよい。
【0018】
これによれば、洩れ流体の一部が突起によって遮られる。したがって、洩れ流体が挿通孔を介してモータ室内へ洩れてしまうことを抑制することができる。その結果、遠心圧縮機の運転効率の向上をさらに図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、広範囲の運転範囲において、遠心圧縮機の運転効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態における遠心圧縮機の断面図である。
【
図2】遠心圧縮機の一部分を拡大して示す断面図である。
【
図3】遠心圧縮機の一部分を拡大して示す断面図である。
【
図4】遠心圧縮機の一部分を拡大して示す断面図である。
【
図5】遠心圧縮機の一部分を拡大して示す断面図である。
【
図6】別の実施形態における遠心圧縮機の一部分を示す断面図である。
【
図7】別の実施形態における遠心圧縮機の一部分を示す断面図である。
【
図8】別の実施形態における遠心圧縮機の一部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、遠心圧縮機を具体化した一実施形態を
図1~
図5にしたがって説明する。なお、以下に説明する実施形態の遠心圧縮機は、燃料電池車に搭載されている。遠心圧縮機は、燃料電池スタックに供給される流体としての空気を圧縮する。
【0022】
<遠心圧縮機10の基本構成>
図1に示すように、遠心圧縮機10は、ハウジング11を備えている。ハウジング11は、金属材料製である。ハウジング11は、例えば、アルミニウム製である。ハウジング11は、モータハウジング12、コンプレッサハウジング13、タービンハウジング14、第1プレート15、第2プレート16、及び第3プレート17を有している。
【0023】
モータハウジング12は、端壁12aと、周壁12bと、を有している。端壁12aは、板状である。周壁12bは、端壁12aの外周部から筒状に延びている。第1プレート15は、モータハウジング12の周壁12bの開口側の端部に連結されている。第1プレート15は、モータハウジング12の周壁12bの開口を閉塞している。そして、モータハウジング12及び第1プレート15によってモータ室18が区画されている。したがって、ハウジング11は、モータ室18を区画する。
【0024】
第2プレート16は、モータハウジング12の端壁12aの外面に連結されている。第2プレート16は、第2プレート16の厚み方向がモータハウジング12の端壁12aの厚み方向に一致した状態で、モータハウジング12の端壁12aに取り付けられている。
【0025】
遠心圧縮機10は、モータ20を備えている。モータ20は、モータ室18に収容されている。したがって、モータ室18は、モータ20を収容する。モータハウジング12は、モータ20を取り囲んでいる。
【0026】
遠心圧縮機10は、第1軸受保持部21を備えている。第1軸受保持部21は、第1プレート15の中央部からモータ室18内に突出している。したがって、第1プレート15は、第1軸受保持部21を有している。第1軸受保持部21は、円筒状である。第1軸受保持部21の内側は、モータ室18内に連通している。
【0027】
第1プレート15は、室形成凹部22を有している。室形成凹部22は、第1プレート15におけるモータハウジング12とは反対側の端面に形成されている。室形成凹部22は、円孔状である。第1軸受保持部21の内側は、第1プレート15を貫通して室形成凹部22の底面に開口している。室形成凹部22の軸線と第1軸受保持部21の軸線とは一致している。
【0028】
第3プレート17は、第1プレート15におけるモータハウジング12とは反対側の端面に連結されている。第3プレート17は、第3プレート17の厚み方向が第1プレート15の厚み方向に一致した状態で、第1プレート15に取り付けられている。第3プレート17は、第1挿通孔23を有している。第1挿通孔23は、第3プレート17の中央部に形成されている。第1挿通孔23の軸線は、室形成凹部22の軸線、及び第1軸受保持部21の軸線と一致している。そして、室形成凹部22と第3プレート17とによって、スラスト軸受収容室24が区画されている。スラスト軸受収容室24は、第1軸受保持部21の内側に連通している。また、スラスト軸受収容室24は、第1挿通孔23に連通している。
【0029】
遠心圧縮機10は、第2軸受保持部25を備えている。第2軸受保持部25は、モータハウジング12の端壁12aの中央部からモータ室18内に突出している。したがって、モータハウジング12は、第2軸受保持部25を有している。第2軸受保持部25は、円筒状である。第2軸受保持部25の内側は、モータ室18内に連通している。
【0030】
ハウジング11は、第2挿通孔26を有している。第2挿通孔26は、モータハウジング12の端壁12aの中央部、及び第2プレート16の中央部を貫通している。第2挿通孔26は、第2軸受保持部25の内側に連通している。第2挿通孔26の軸線は、第2軸受保持部25の軸線と一致している。
【0031】
コンプレッサハウジング13は、空気が吸入される円孔状の吸入口27を有する筒状である。コンプレッサハウジング13は、吸入口27の軸線が、第1挿通孔23の軸線と一致した状態で第3プレート17における第1プレート15とは反対側の端面に連結されている。吸入口27は、コンプレッサハウジング13における第3プレート17とは反対側の端面に開口している。吸入口27には、図示しないエアクリーナによって清浄化された空気が流れる。
【0032】
遠心圧縮機10は、インペラ室28、吐出室29、及びディフューザ流路30を備えている。インペラ室28、吐出室29、及びディフューザ流路30は、コンプレッサハウジング13と第3プレート17との間に形成されている。したがって、ハウジング11は、インペラ室28、及び吐出室29を区画する。第1プレート15及び第3プレート17は、インペラ室28とモータ室18とを仕切る仕切壁を構成している。したがって、ハウジング11は、仕切壁を有している。インペラ室28は、吸入口27に連通している。吐出室29は、インペラ室28の周囲で吸入口27の軸線周りに延びている。ディフューザ流路30は、インペラ室28と吐出室29とを連通している。インペラ室28は、第1挿通孔23に連通している。
【0033】
遠心圧縮機10は、吐出通路31を有している。吐出通路31の第1端は、吐出室29に連通している。吐出通路31の第2端は、コンプレッサハウジング13の外周面に開口している。
【0034】
タービンハウジング14は、空気が吐出される円孔状の吐出口32を有する筒状である。タービンハウジング14は、吐出口32の軸線が、第2挿通孔26の軸線と一致した状態で第2プレート16におけるモータハウジング12とは反対側の端面に連結されている。吐出口32は、タービンハウジング14における第2プレート16とは反対側の端面に開口している。
【0035】
遠心圧縮機10は、タービン室33、タービンスクロール流路34、及び連通通路35を備えている。タービン室33、タービンスクロール流路34、及び連通通路35は、タービンハウジング14と第2プレート16との間に形成されている。モータハウジング12の端壁12a、及び第2プレート16は、タービン室33とモータ室18とを仕切っている。タービン室33は、吐出口32に連通している。タービンスクロール流路34は、タービン室33の周囲で吐出口32の軸線周りに延びている。連通通路35は、タービン室33とタービンスクロール流路34とを連通している。タービン室33は、第2挿通孔26に連通している。
【0036】
遠心圧縮機10は、吸入通路36を有している。吸入通路36の第1端は、タービンスクロール流路34に連通している。吸入通路36の第2端は、タービンハウジング14の外周面に開口している。
【0037】
遠心圧縮機10は、回転体40を備えている。回転体40は、回転軸41、インペラ42、タービンホイール43、及び支持部44を含む。したがって、遠心圧縮機10は、回転軸41と、インペラ42と、を備えている。回転軸41は、ハウジング11内に収容されている。
【0038】
回転軸41は、モータハウジング12の軸線に沿って延びた状態で、モータ室18を横切っている。回転軸41の軸方向は、モータハウジング12の軸方向に一致している。回転軸41の第1端部は、モータ室18から第1軸受保持部21の内側、スラスト軸受収容室24、及び第1挿通孔23を通過して、インペラ室28内に突出している。したがって、第1挿通孔23は、回転軸41が挿通される挿通孔である。このように、ハウジング11は、インペラ室28とモータ室18とを仕切るとともに回転軸41が挿通される第1挿通孔23が形成されている仕切壁を有している。回転軸41の第2端部は、モータ室18から第2軸受保持部25の内側、及び第2挿通孔26を通過して、タービン室33内に突出している。
【0039】
図2に示すように、インペラ42は、回転軸41の第1端に連結されている。インペラ42は、インペラ室28に収容されている。したがって、インペラ室28は、インペラ42を収容する。インペラ42は、回転軸41と一体的に回転することでインペラ室28に吸入された空気を圧縮する。
【0040】
インペラ42は、背面42aから先端に向かうに従って徐々に縮径した筒状である。インペラ42の背面42aは、第3プレート17に対向している。インペラ42は、貫通孔42hを有している。貫通孔42hの軸線は、インペラ42の回転軸線に一致している。なお、インペラ42の回転軸線は、回転軸41の軸線でもある。
【0041】
インペラ42は、円筒状のボス部42bを有している。ボス部42bは、インペラ42の背面42aの中央部から突出している。ボス部42bの内側は、貫通孔42hに連通している。回転軸41の第1端は、ボス部42bの内側及び貫通孔42hを通過している。ボス部42bは、第1挿通孔23に入り込んでいる。したがって、ボス部42bは、第1挿通孔23の内側に配置されている。ボス部42bは、回転体40における第1挿通孔23の内側に位置する部分である。インペラ42において、ボス部42bは、回転軸41の一部を構成しているとも言える。ボス部42bの外周面は、第1挿通孔23の内周面から離間している。
【0042】
図1に示すように、タービンホイール43は、回転軸41の第2端に連結されている。タービンホイール43は、タービン室33に収容されている。タービンホイール43は、回転軸41と一体的に回転する。
【0043】
支持部44は、回転軸41の外周面から環状に突出している。支持部44は、円板状である。支持部44は、回転軸41の外周面から径方向外側へ環状に突出した状態で、回転軸41の外周面に固定されている。したがって、支持部44は、回転軸41とは別体である。支持部44は、スラスト軸受収容室24内に配置されている。支持部44は、回転軸41と一体的に回転する。
【0044】
遠心圧縮機10は、シール部材45を備えている。シール部材45は、第2挿通孔26と回転軸41との間に設けられている。シール部材45は、タービン室33からモータ室18に向かう空気の洩れを抑制する。シール部材45は、例えば、シールリングである。
【0045】
モータ20は、筒状のロータ47と、筒状のステータ48と、を備えている。ロータ47は、回転軸41に固定されている。ステータ48は、ハウジング11に固定されている。ロータ47は、ステータ48の径方向内側に配置されている。ロータ47は、回転軸41と一体的に回転する。ロータ47は、回転軸41に固定された円筒状のロータコア49と、ロータコア49に設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。ステータ48は、ロータ47を取り囲んでいる。ステータ48は、円筒状のステータコア50と、コイル51と、を有している。ステータコア50は、モータハウジング12の内周面に固定されている。コイル51は、ステータコア50に巻回されている。
【0046】
回転軸41は、図示しないインバータを図示しないバッテリからコイル51に電流が流れるように制御することによって、ロータ47と一体的に回転する。したがって、モータ20は、回転軸41を回転させる。モータ20は、回転軸41の軸方向において、インペラ42とタービンホイール43との間に配置されている。
【0047】
遠心圧縮機10は、第1ラジアル軸受52を備えている。第1ラジアル軸受52は円筒状である。第1ラジアル軸受52は、第1軸受保持部21に保持されている。第1ラジアル軸受52は、回転軸41におけるモータ20よりも回転軸41の第1端部寄りに位置する部位を回転可能に支持する。
【0048】
遠心圧縮機10は、第2ラジアル軸受53を備えている。第2ラジアル軸受53は円筒状である。第2ラジアル軸受53は、第2軸受保持部25に保持されている。第2ラジアル軸受53は、回転軸41におけるモータ20よりも回転軸41の第2端部寄りに位置する部位を回転可能に支持する。
【0049】
第1ラジアル軸受52及び第2ラジアル軸受53は、モータ20を回転軸41の軸方向で挟んだ両側の位置で回転軸41をラジアル方向で回転可能に支持する。なお、「ラジアル方向」とは、回転軸41の軸方向に対して直交する方向である。
【0050】
遠心圧縮機10は、スラスト軸受54を備えている。スラスト軸受54は、スラスト軸受収容室24に収容されている。したがって、スラスト軸受収容室24は、スラスト軸受54を収容する。スラスト軸受54は、支持部44をスラスト方向で回転可能に支持する。したがって、スラスト軸受54は、支持部44を介して回転軸41を回転可能に支持する。なお、「スラスト方向」とは、回転軸41の軸線方向に対して平行な方向である。
【0051】
<燃料電池システム55>
上記構成の遠心圧縮機10は、燃料電池車に搭載された燃料電池システム55の一部を構成している。燃料電池システム55は、遠心圧縮機10の他に、燃料電池スタック56と、供給流路57と、排出流路58と、を備えている。燃料電池スタック56は、図示しない複数の電池セルから構成されている。供給流路57は、吐出通路31と燃料電池スタック56とを接続する。排出流路58は、燃料電池スタック56と吸入通路36とを接続する。
【0052】
インペラ42が回転すると、吸入口27からインペラ室28に空気が吸入される。インペラ室28に吸入された空気は、インペラ42の回転によって加速されながら、ディフューザ流路30に送り込まれて、ディフューザ流路30を通過することにより昇圧される。そして、ディフューザ流路30を通過した空気は、吐出室29に吐出される。したがって、吐出室29には、インペラ42によって圧縮された空気が吐出される。
【0053】
吐出室29に吐出された空気は、吐出通路31に吐出される。吐出通路31に吐出された空気は、供給流路57を介して燃料電池スタック56に供給される。燃料電池スタック56に供給された空気は、燃料電池スタック56を発電するために使用される。その後、燃料電池スタック56を通過する空気は、燃料電池スタック56の排気として排出流路58へ排出される。
【0054】
燃料電池スタック56の排気は、排出流路58及び吸入通路36を介してタービンスクロール流路34に吸入される。タービンスクロール流路34に吸入される燃料電池スタック56の排気は、連通通路35を通じてタービン室33に導入される。タービンホイール43は、タービン室33に導入された燃料電池スタック56の排気により回転する。回転軸41は、モータ20の駆動による回転に加え、燃料電池スタック56の排気により回転するタービンホイール43の回転によっても回転する。そして、燃料電池スタック56の排気によるタービンホイール43の回転により回転軸41の回転が補助される。タービン室33を通過した排気は、吐出口32から外部へ吐出される。
【0055】
<シール機構60>
図2に示すように、第1挿通孔23とボス部42bとの間には、シール機構60が設けられている。シール機構60は、回転軸41が挿通され、インペラ42の背面42aに洩れてきた洩れ流体である洩れ空気をシールする。インペラの背面42aに洩れてきた洩れ空気とは、インペラ42の背面42aと第3プレート17との間の空隙C1を介して第1挿通孔23に流れ込む空気のことである。なお、以下の説明では、「インペラ42の背面42aに洩れてきた洩れ空気」を単に「洩れ空気」と記載する場合もある。
【0056】
図3に示すように、シール機構60は、第1凹部61と、シールリング62と、バネ63と、第1対向面64と、一対の第2対向面65と、を有している。ボス部42bは、第2凹部66を有している。第2凹部66は、第1対向面64と一対の第2対向面65とを有している。第1対向面64は、第2対向面65から突出する円環状の凸部67の上面を構成している。したがって、第1対向面64は、ボス部42bに設けられている。
【0057】
第2凹部66は、低圧力用凹部68と高圧力用凹部69とを有している。低圧力用凹部68と高圧力用凹部69とは、回転軸41の軸方向に対して凸部67を間に挟んで並んでいる。一対の第2対向面65のうち、一方の第2対向面65は低圧力用凹部68の底面を構成している。一対の第2対向面65のうち、他方の第2対向面65は高圧力用凹部69の底面を構成している。したがって、一対の第2対向面65は、第1対向面64を間に挟んでモータ室18側及びインペラ室28側に設けられている。第1対向面64及び一対の第2対向面65は、ボス部42bの外周面に形成されている。第1対向面64は、環状である。一対の第2対向面65は、環状である。
【0058】
第1凹部61は、第1挿通孔23に設けられている。第1凹部61は、第1挿通孔23の内周面に形成されている。第1凹部61は、環状である。第1凹部61は、ボス部42bに向けて開口している。第1凹部61におけるインペラ室28側の端面である第1端面61aは、平坦面状である。第1凹部61におけるモータ室18側の端面である第2端面61bは、平坦面状である。第1凹部61の第1端面61aは、回転軸41の径方向で低圧力用凹部68と重なる位置に配置されている。第1凹部61の第2端面61bは、回転軸41の径方向でボス部42bの外周面における高圧力用凹部69よりもモータ室18寄りの部分と重なる位置に配置されている。
【0059】
シールリング62は、第1凹部61に設けられている。シールリング62は、環状である。シールリング62は、シールリング62の厚み方向が回転軸41の軸方向に一致した状態で、第1凹部61に設けられている。シールリング62の内周部は、第1凹部61からボス部42bに向けて突出している。シールリング62の内周部は、第1挿通孔23の内周面よりも低圧力用凹部68に向けて突出している。シールリング62の内周部は、第1挿通孔23の内周面よりも高圧力用凹部69に向けて突出している。シールリング62の内周部は、第1挿通孔23の内周面よりも凸部67の上面に向けて突出している。シールリング62の内周部は、第1挿通孔23の内周面よりも回転軸41に向けて環状に突出している。したがって、シールリング62は、ボス部42bに向けて第1凹部61の開口から突出する突出部62aを有している。シールリング62は、回転軸41の軸方向に移動可能に設けられている。
【0060】
バネ63は、第1凹部61に設けられている。また、第1凹部61には、バネ受け部材70が設けられている。バネ受け部材70は、第1凹部61の第2端面61bに設けられている。バネ受け部材70は、円環状である。バネ受け部材70は、板状である。バネ受け部材70は、第1凹部61の第2端面61bに取り付けられている。バネ受け部材70は、シールリング62に対して、回転軸41の軸方向で対向している。
【0061】
バネ63は、例えば、コイルばねである。バネ63は、シールリング62とバネ受け部材70との間に介在されている。バネ63の第1端は、シールリング62に支持されている。バネ63の第2端は、バネ受け部材70に支持されている。バネ63は、シールリング62を第1端面61aに向けて付勢している。したがって、バネ63は、シールリング62をモータ室18側からインペラ室28側に向けて回転軸41の軸方向に付勢する。
【0062】
バネ63は、シールリング62が第1凹部61の第1端面61aに当接するまでシールリング62を第1端面61aに向けて付勢することが可能になっている。シールリング62が第1端面61aに当接している状態では、シールリング62は、回転軸41の径方向で低圧力用凹部68と重なる位置に配置されている。また、バネ63は、回転軸41の径方向で高圧力用凹部69と重なる位置にシールリング62が配置されるまでシールリング62とバネ受け部材70との間で圧縮可能になっている。
【0063】
回転軸41の軸方向において、シールリング62の幅は、一対の第2対向面65の各々の幅よりも小さい。シール機構60は、シールリング62が、第1凹部61内において、バネ63の付勢力に抗する洩れ空気から受ける圧力に応じて回転軸41の軸方向に移動される。
【0064】
図3に示すように、例えば、シールリング62が第1端面61aに当接している状態では、シールリング62の突出部62aにおいて、インペラ室28側の面は洩れ空気の圧力を受ける。そして、洩れ空気の圧力によって、シールリング62が第2端面61bに向けて押圧される。洩れ空気によるシールリング62を第2端面61bに向けて押圧する力は、洩れ空気の圧力が大きくなるほど大きくなる。そして、洩れ空気の圧力によるシールリング62を第2端面61bに向けて押圧する力が、バネ63の付勢力に打ち勝つと、シールリング62が第1凹部61内を第2端面61bに向けて移動する。
【0065】
図4に示すように、シールリング62が第1凹部61内を第1端面61aから第2端面61bに向けて移動する途中で、シールリング62は、第1対向面64上を通過する。第1対向面64は、回転軸41の径方向においてシールリング62とのシール間隔が所定間隔となるように対向する。
図3に示すように、シールリング62が、回転軸41の径方向で低圧力用凹部68と重なる位置に配置されている場合、第2対向面65は、回転軸41の径方向においてシールリング62とのシール間隔が所定間隔よりも大きくなるように対向する。
図5に示すように、シールリング62が、回転軸41の径方向で高圧力用凹部69と重なる位置に配置されている場合、第2対向面65は、回転軸41の径方向においてシールリング62とのシール間隔が所定間隔よりも大きくなるように対向する。したがって、一対の第2対向面65は、回転軸41の径方向においてシールリング62とのシール間隔が所定間隔よりも大きくなるように対向する。よって、シール機構60は、回転軸41の径方向において第1対向面64又は第2対向面65に対向することで、回転軸41の径方向においてシールリング62とのシール間隔が変化される。
【0066】
<バネ63の付勢力>
遠心圧縮機10では、運転範囲が低負荷状態から高負荷状態になるほど、インペラ42によって圧縮される空気の流量である吐出流量が多くなる。吐出流量は、燃料電池スタック56に供給される空気の目標流量によって決まる。モータ20は、インペラ42によって圧縮される空気の流量が目標流量になるように回転軸41を回転させる。吐出流量が多くなるほど、洩れ空気の圧力も大きくなる。
【0067】
図3では、洩れ空気の圧力が第1所定圧力以下の状態で遠心圧縮機10が運転している状態を示している。
図3に示すように、バネ63の付勢力は、洩れ空気の圧力が第1所定圧力以下のときに回転軸41の径方向で低圧力用凹部68と重なる位置にシールリング62が配置されるように設定されている。よって、洩れ空気の圧力が比較的小さい状態で遠心圧縮機10が運転している場合、シールリング62は、一対の第2対向面65の一方に対向する。洩れ空気の圧力が第1所定圧力以下である場合、シールリング62は、バネ63の付勢力によって、第1凹部61の第1端面61aに当接した状態に維持されている。
【0068】
図5では、洩れ空気の圧力が第1所定圧力よりも大きい第2所定圧力以上の状態で遠心圧縮機10が運転している状態を示している。
図5に示すように、バネ63の付勢力は、洩れ空気の圧力が第2所定圧力以上のときに回転軸41の径方向で高圧力用凹部69と重なる位置にシールリング62が配置されるように設定されている。よって、洩れ空気の圧力が比較的大きい状態で遠心圧縮機10が運転している場合、シールリング62は、一対の第2対向面65の他方に対向する。洩れ空気の圧力が第2所定圧力以上である場合、洩れ空気の圧力によるシールリング62を第2端面61bに向けて押圧する力が、バネ63の付勢力に打ち勝つ。これにより、シールリング62が第1端面61aから離間する。そして、洩れ空気の圧力によるシールリング62を第2端面61bに向けて押圧する力とバネ63の付勢力とのバランスによって、シールリング62が、回転軸41の径方向で高圧力用凹部69と重なる位置に維持されている。
【0069】
図4では、洩れ空気の圧力が第1所定圧力よりも大きく、且つ、第2所定圧力よりも小さい第3所定圧力の状態で遠心圧縮機10が運転している状態を示している。
図4に示すように、バネ63の付勢力は、洩れ空気の圧力が第3所定圧力のときに第1挿通孔23とボス部42bとの間がシールリング62及び第1対向面64によってシールされるように設定されている。よって、洩れ空気の圧力が比較的小さくもなく、且つ、比較的大きくもない中間の圧力の状態で遠心圧縮機10が運転している場合、シールリング62は、第1対向面64に対向する。洩れ空気の圧力が第3所定圧力の場合、洩れ空気の圧力によるシールリング62を第2端面61bに向けて押圧する力が、バネ63の付勢力に打ち勝つ。これにより、シールリング62が第1端面61aから離間する。そして、洩れ空気の圧力によるシールリング62を第2端面61bに向けて押圧する力とバネ63の付勢力とのバランスによって、シールリング62が、第1対向面64上に維持されている。
【0070】
[実施形態の作用]
次に、本実施形態の作用について説明する。
図3に示すように、例えば、洩れ空気の圧力が第1所定圧力以下のとき、シールリング62が回転軸41の径方向で低圧力用凹部68と重なる位置に配置されている。したがって、洩れ空気の圧力が第1所定圧力以下のときに、シールリング62とボス部42bとの間で摺動抵抗が生じてしまうことが低減されている。このため、遠心圧縮機10の動力損失が生じてしまうことが抑制されている。洩れ空気の圧力が第1所定圧力以下の状態で遠心圧縮機10が運転しているときは、洩れ空気は、第1挿通孔23を通過してモータ室18に向かって流れる。
【0071】
図5に示すように、例えば、洩れ空気の圧力が第2所定圧力以上のとき、シールリング62が回転軸41の径方向で高圧力用凹部69と重なる位置に配置されている。したがって、洩れ空気の圧力が第2所定圧力以上のときに、シールリング62とボス部42bとの間で摺動抵抗が生じてしまうことが低減されている。このため、遠心圧縮機10の動力損失が生じてしまうことが抑制されている。洩れ空気の圧力が第2所定圧力以上の状態で遠心圧縮機10が運転しているときは、洩れ空気は、第1挿通孔23を通過してモータ室18に向かって流れる。
【0072】
図4に示すように、例えば、洩れ空気の圧力が第3所定圧力のとき、第1挿通孔23とボス部42bとの間がシールリング62及び第1対向面64によってシールされている。したがって、洩れ空気の圧力が第3所定圧力のときに、洩れ空気が第1挿通孔23を介してモータ室18内へ洩れてしまうことが抑制されている。
【0073】
[実施形態の効果]
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)例えば、第1挿通孔23とボス部42bとの間がシール機構60によってシールされていないとすると、洩れ空気が、第1挿通孔23を介してモータ室18内へ洩れてしまう。その結果、遠心圧縮機10において、空気の無駄な圧縮が増えることになるため、運転効率が低下する要因となる。
【0074】
一方で、回転軸41が回転することに伴い、シールリング62とボス部42bとの間では摺動抵抗が生じる。シールリング62とボス部42bとの間で生じる摺動抵抗は、遠心圧縮機10の動力損失となる。遠心圧縮機10の動力損失は、遠心圧縮機10の運転効率が低下する要因となる。
【0075】
例えば、洩れ空気の圧力が比較的小さい状態で遠心圧縮機10が運転している場合、第1挿通孔23を介してモータ室18内へ空気が洩れたとしても、遠心圧縮機10の運転効率はさほど低下しない。
【0076】
一方で、例えば、洩れ空気の圧力が比較的大きい状態で遠心圧縮機10が運転している場合、回転軸41の回転数が高いため、シールリング62とボス部42bとの間で生じる摺動抵抗が比較的高くなる。したがって、遠心圧縮機10の動力損失が比較的大きくなる。ここで、シールリング62とボス部42bとの間での摺動抵抗に伴う遠心圧縮機10の動力損失による運転効率の低下は、第1挿通孔23を介したモータ室18内への空気の洩れによる運転効率の低下に比較して影響が大きい。
【0077】
さらには、例えば、洩れ空気の圧力が比較的小さくもなく、且つ、比較的大きくもない中間の圧力の状態で遠心圧縮機10が運転している場合を考える。この場合、シールリング62とボス部42bとの間での摺動抵抗に伴う遠心圧縮機10の動力損失による運転効率の低下は、第1挿通孔23を介したモータ室18内への空気の洩れによる運転効率の低下に比較して影響が小さい。
【0078】
そこで、シールリング62が、第1凹部61内において、バネ63の付勢力に抗する洩れ空気から受ける圧力に応じて回転軸41の軸方向に移動し、回転軸41の径方向において第1対向面64又は第2対向面65に対向することで、シール間隔が変化する。したがって、例えば、洩れ空気の圧力が比較的小さい状態で遠心圧縮機10が運転している場合、シールリング62は、一対の第2対向面65の一方に対向する。よって、シールリング62と回転軸41との間で摺動抵抗が生じてしまうことが低減されるため、遠心圧縮機10の動力損失を抑制することができる。また、例えば、洩れ空気の圧力が比較的大きい状態で遠心圧縮機10が運転している場合、シールリング62は、一対の第2対向面65の他方に対向する。よって、シールリング62と回転軸41との間で摺動抵抗が生じてしまうことが低減されるため、遠心圧縮機10の動力損失を抑制することができる。さらに、例えば、洩れ空気の圧力が比較的小さくもなく、且つ、比較的大きくもない中間の圧力の状態で遠心圧縮機10が運転している場合、シールリング62は、第1対向面64に対向する。よって、洩れ空気が第1挿通孔23を介してモータ室18内へ洩れてしまうことが抑制される。以上により、広範囲の運転範囲において、遠心圧縮機10の運転効率の向上を図ることができる。
【0079】
(2)例えば、洩れ空気の圧力が第1所定圧力以下のとき、シールリング62が回転軸41の径方向で低圧力用凹部68と重なる位置に配置される。したがって、洩れ空気の圧力が第1所定圧力以下のときに、シールリング62とボス部42bとの間で摺動抵抗が生じてしまうことが低減されるため、遠心圧縮機10の動力損失を抑制することができる。
【0080】
また、例えば、洩れ空気の圧力が第2所定圧力以上のとき、シールリング62が回転軸41の径方向で高圧力用凹部69と重なる位置に配置される。したがって、洩れ空気の圧力が第2所定圧力以上のときに、シールリング62とボス部42bとの間で摺動抵抗が生じてしまうことが低減されるため、遠心圧縮機10の動力損失を抑制することができる。
【0081】
さらに、例えば、洩れ空気の圧力が第1所定圧力よりも大きく、且つ、第2所定圧力よりも小さい第3所定圧力のとき、第1挿通孔23とボス部42bとの間がシールリング62及び第1対向面64によってシールされるようになっている。したがって、洩れ空気の圧力が第1所定圧力よりも大きく、且つ、第2所定圧力よりも小さい第3所定圧力のときに、洩れ空気が第1挿通孔23を介してモータ室18内へ洩れてしまうことが抑制される。以上により、広範囲の運転範囲において、遠心圧縮機10の運転効率の向上を図ることができる。
【0082】
(3)第1対向面64及び一対の第2対向面65は、ボス部42bの外周面に形成されており、第1凹部61は、第1挿通孔23の内周面に形成されている。この構成は、シールリング62を第1凹部61内で回転軸41の軸方向で往復動可能とする構成として好適である。
【0083】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0084】
○
図6に示すように、第1挿通孔23の内周面に、第1対向面64と、一対の第2対向面65と、が設けられていてもよい。そして、ボス部42bの外周面に、第1凹部61が設けられていてもよい。この場合、シールリング62は、第1凹部61に設けられ、第1挿通孔23に向けて第1凹部61の開口から突出する突出部62aを有している。要は、第1凹部61は、回転軸41及び第1挿通孔23の一方に設けられるとともに他方に向けて開口する環状であればよい。そして、シールリング62は、第1凹部61に設けられ、回転軸41及び第1挿通孔23の他方に向けて第1凹部61の開口から突出する突出部62aを有していればよい。第1対向面64と、一対の第2対向面65とは、回転軸41及び第1挿通孔23の他方に設けられていればよい。
【0085】
○
図7に示すように、第2対向面65には、シールリング62に向けて回転軸41の径方向へ突出する突起71が形成されていてもよい。第2対向面65に対する突起71の突出高さは、第2対向面65に対する凸部67の突出高さよりも低い。これによれば、洩れ空気の一部が突起71によって遮られる。したがって、洩れ空気が第1挿通孔23を介してモータ室18内へ洩れてしまうことを抑制することができる。その結果、遠心圧縮機10の運転効率の向上をさらに図ることができる。
【0086】
○
図8に示すように、ボス部42bは、第2凹部66を有していなくてもよい。ボス部42bの外周面には第1挿通孔23の内周面に向けて突出する円環状の段差部72が設けられている。段差部72の外周面は、回転軸41の径方向においてシールリング62とのシール間隔が所定間隔となるように対向する環状の第1対向面64になっている。要は、ボス部42bには、回転軸41の径方向においてシールリング62とのシール間隔が所定間隔となるように対向する環状の第1対向面64が設けられていればよい。そして、ボス部42bには、第1対向面64を間に挟んでモータ室18側及びインペラ室28側に一対の第2対向面65が設けられていればよい。
【0087】
○ 実施形態において、第1挿通孔23の内側にボス部42bが入り込んでおらず、例えば、回転軸41のみが挿通されている構成であってもよい。この場合、回転軸41の外周面に、第2凹部66が形成されている。
【0088】
○ 実施形態において、遠心圧縮機10は、タービンホイール43を備えていない構成であってもよい。
○ 実施形態において、遠心圧縮機10は、タービンホイール43に代えて、インペラを備えている構成であってもよい。つまり、遠心圧縮機10は、回転軸41の両端にそれぞれにインペラが取り付けられており、一方のインペラによって圧縮された空気が、他方のインペラによって再び圧縮されるような構成であってもよい。
【0089】
○ 実施形態において、遠心圧縮機10は、燃料電池車に搭載されていなくてもよい。要は、遠心圧縮機10は、車両に搭載されるものに限定されるものではない。
○ 実施形態において、遠心圧縮機10は、燃料電池スタック56に供給される空気を圧縮するために用いられるものに限らない。要は、遠心圧縮機10は、流体を圧縮するものであればよい。
【符号の説明】
【0090】
10…遠心圧縮機、11…ハウジング、15…第1プレート(仕切壁)、17…第3プレート(仕切壁)、18…モータ室、20…モータ、23…挿通孔である第1挿通孔、28…インペラ室、29…吐出室、41…回転軸、42…インペラ、42a…背面、60…シール機構、61…第1凹部、62…シールリング、62a…突出部、63…バネ、64…第1対向面、65…第2対向面、66…第2凹部、67…凸部、68…低圧力用凹部、69…高圧力用凹部、71…突起。