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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090667
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】手摺設置箇所提案システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20240627BHJP
【FI】
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206707
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】片岡 夏海
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】手摺が必要な箇所について客観的な評価に基づいた提案を行うことができる手摺設置箇所提案システムを提供する。
【解決手段】住宅Hの手摺の設置箇所を提案するための手摺設置箇所提案システムであって、対象者Pの身体状態に関するデータを非接触で検出可能な天井センサ110・足元センサ120と、天井センサ110・足元センサ120の検出結果に基づいて、住宅Hにおける生活動線Lを移動する対象者Pの歩行状態を検出し、その検出結果に基づいて、手摺設置推奨箇所を検出するサーバ150と、を具備する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の手摺の設置箇所を提案するための手摺設置箇所提案システムであって、
対象者の身体状態に関するデータを非接触で検出可能な身体状態検出部と、
前記身体状態検出部の検出結果に基づいて、前記建物における動線を移動する前記対象者の歩行状態を検出する歩行状態検出部と、
前記歩行状態検出部の検出結果に基づいて、手摺設置推奨箇所を検出する手摺推奨箇所検出部と、
を具備する、
手摺設置箇所提案システム。
【請求項2】
前記身体状態検出部の検出結果に基づいて、前記建物における前記対象者の動線を検出する動線検出部を具備する、
請求項1に記載の手摺設置箇所提案システム。
【請求項3】
前記歩行状態検出部は、
前記対象者の歩行状態として、通常時及び非通常時の歩行状態を検出可能であり、
前記手摺設置推奨箇所は、
前記動線のうち前記対象者の歩行状態が非通常時である部分の近傍の壁又は家具に設定される、
請求項1に記載の手摺設置箇所提案システム。
【請求項4】
前記歩行状態検出部は、
前記非通常時の歩行状態として、伝い歩きを検出する、
請求項3に記載の手摺設置箇所提案システム。
【請求項5】
前記歩行状態検出部は、
所定方向からの投影面積の変化に応じて前記歩行状態を検出する、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の手摺設置箇所提案システム。
【請求項6】
前記所定方向からの投影面積には、水平投影面積が含まれる、
請求項5に記載の手摺設置箇所提案システム。
【請求項7】
前記身体状態検出部は、
ミリ波センサにより構成される、
請求項1に記載の手摺設置箇所提案システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の手摺の設置箇所を提案するための手摺設置箇所提案システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内において歩行者の歩行状態を検出する技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の発明は、建物内の床に設置された床荷重センサと、建物内の階段や廊下の手摺にその長さ方向に沿って配置された手摺荷重センサと、各センサから受信した検出結果に基づいて歩行者の歩行能力を判定するサーバーと、を具備する。これによれば、手摺の設置箇所における歩行者の歩行能力を測定できる。
【0004】
しかしながら、上記技術においては、手摺が必要な箇所について客観的に評価できない点で問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4862895号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、手摺が必要な箇所について客観的な評価に基づいた提案を行うことができる手摺設置箇所提案システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、建物の手摺の設置箇所を提案するための手摺設置箇所提案システムであって、対象者の身体状態に関するデータを非接触で検出可能な身体状態検出部と、前記身体状態検出部の検出結果に基づいて、前記建物における動線を移動する前記対象者の歩行状態を検出する歩行状態検出部と、前記歩行状態検出部の検出結果に基づいて、手摺設置推奨箇所を検出する手摺推奨箇所検出部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記身体状態検出部の検出結果に基づいて、前記建物における前記対象者の動線を検出する動線検出部を具備するものである。
【0010】
請求項3においては、前記歩行状態検出部は、前記対象者の歩行状態として、通常時及び非通常時の歩行状態を検出可能であり、前記手摺設置推奨箇所は、前記動線のうち前記対象者の歩行状態が非通常時である部分の近傍の壁又は家具に設定されるものである。
【0011】
請求項4においては、前記歩行状態検出部は、前記非通常時の歩行状態として、伝い歩きを検出するものである。
【0012】
請求項5においては、前記歩行状態検出部は、所定方向からの投影面積の変化に応じて前記歩行状態を検出するものである。
【0013】
請求項6においては、前記所定方向からの投影面積には、水平投影面積が含まれるものである。
【0014】
請求項7においては、前記身体状態検出部は、ミリ波センサにより構成されるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
本願発明においては、手摺が必要な箇所について客観的な評価に基づいた提案を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る手摺設置箇所提案システム及び当該手摺設置箇所提案システムが設けられた住宅の一例を示した間取り図。
図2】(a)通常時における天井センサ及び対象者を示した側方図。(b)図2(a)に示した状態において検出された水平投影面積の一例を示した図。
図3】(a)非通常時(家具へ寄りかかった場合)における天井センサ及び対象者を示した側方図。(b)図3(a)に示した状態において検出された水平投影面積の一例を示した図。
図4】(a)足元センサ及び対象者を示した側方図。(b)通常時において検出された対象者の足元の垂直投影面積の一例を示した図。(c)非通常時において検出された対象者の足元の垂直投影面積の一例を示した図。
図5】手摺設置箇所提案処理を示したフローチャート。
図6】(a)寝室のベッドから対象者が移動を開始した様子を示した平面模式図。(b)同じく、対象者が寝室から廊下へと移動する様子を示した平面模式図。
図7】(a)寝室の位置座標に関するデータに、対象者の位置をプロットしたイメージ図。(b)検出された生活動線を記載した間取り図。
図8】伝い歩き開始記録の処理を示したフローチャート。
図9】伝い歩き終了記録の処理を示したフローチャート。
図10】(a)生活動線上に伝い歩き区間が重ねられた間取り図。(b)図10(a)において手摺設置推奨箇所が重ねられた間取り図。
図11】(a)別実施形態において、空間に足元センサが複数設けられた状態を示したイメージ図。(b)図11(a)において対象者が移動する様子を示した図。
図12】同じく、足元センサ切り替え処理を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の一実施形態に係る手摺設置箇所提案システム100について説明する。
【0019】
手摺設置箇所提案システム100は、所定の建物において、当該建物の使用者の歩行を補助するための手摺が必要な箇所を提案するものである。本実施形態においては、前記所定の建物は、2階建ての一戸建て住宅(以下では「住宅H」と称する)であり、前記建物の使用者は、住宅Hの住人である高齢者(以下では「対象者P」と称する)であるものとする。手摺設置箇所提案システム100は、例えば対象者Pが加齢による身体能力の衰え等により、住宅Hに手摺を設置する必要が生じた場合に使用される。このように、手摺設置箇所提案システム100は、改修工事を行う場合等、既設の建物に対して適用可能である。
【0020】
まず以下では、図1を用いて、対象者Pの住宅Hについて簡単に説明する。
【0021】
なお以下では、対象者Pが日常生活を主に営んでいる住宅Hの2階部分に着目して説明を行うものとし、当該2階部分を単に住宅Hと称する場合がある。また各図面においては図中に記した矢印に従って、東西南北方向をそれぞれ定義する。
【0022】
住宅Hは、寝室1、廊下2、階段3及びトイレ4を具備する。
【0023】
寝室1は、住宅Hの西側部分において、南北方向に延びるように形成される。寝室1には、家具として、ベッド11、本棚12、タンス13及びドア14が設けられる。ベッド11は、寝室1の南西部分に配置される。本棚12は、ベッド11の東方において、東側の壁5に沿って配置される。タンス13は、寝室1の北側部分において、東西方向に亘るように配置される。ドア14は、東側の壁5において、本棚12とタンス13との間に配置される。
【0024】
廊下2は、寝室1の東側において、南北方向に延びるように形成される。廊下2の東側部分には、階段3と区画するための壁6が配置される。階段3は、廊下2の東側において、当該廊下2に沿って南北方向に延びるように形成される。トイレ4は、廊下2の南側の突き当たり部分に配置される。
【0025】
以下では、図1から図4を用いて、上述の如き住宅Hに設けられた手摺設置箇所提案システム100の構成について説明する。
【0026】
本実施形態では、寝室1のベッド11とトイレ4との間において、手摺の設置が検討されているものとする。従って、本実施形態に係る手摺設置箇所提案システム100は、寝室1のベッド11とトイレ4との間において手摺の設置箇所の提案を行うための構成を有する。図1に示すように、手摺設置箇所提案システム100は、主として天井センサ110、足元センサ120、通過センサ130、表示部140及びサーバ150を具備する。
【0027】
天井センサ110は、住宅Hの天井から下方を検出するように設置されるセンサである。天井センサ110は、非接触式のセンサにより構成され、対象者Pの身体状態に関するデータを検出する。天井センサ110は、対象者Pの身体状態に関するデータとして、主として上方から検出可能な情報を取得できる。具体的には、天井センサ110は、図2(b)に示すように、対象者Pの身体の位置及び身体の水平投影面積を取得できる。
【0028】
なお本実施形態において、対象者Pの身体の水平投影面積とは、厳密に水平面である必要はなく、水平面に対して傾斜した面に投影したときの面積を含む。また対象者Pの身体の水平投影面積(データ)には、対象者Pの身体の水平投影面積を規定する当該対象者Pの外形(データ)が含まれる。
【0029】
本実施形態では、天井センサ110として、ミリ波センサを用いている。天井センサ110は、ミリ波(波長が1~10mm、周波数が30~300GHzの電波)を対象物に照射し、反射された電波を観測することで、対象物の位置、面積、形状等を測定できる。天井センサ110は、複数のアンテナ(送信アンテナ及び受信アンテナ)を有しており、空間上の様々なポイントにおける情報(対象者Pの位置等)を点群データとして取得できる。
【0030】
なお本実施形態では天井センサ110としてミリ波センサを採用しているが、天井センサ110はミリ波センサに限るものではなく、その他のセンサ(例えば、ミリ波センサと同等以上の性能を有する種々の非接触式のセンサ)を用いることも可能である。例えば、ミリ波よりもさらに波長が短い電波を発するセンサを用いることも可能である。
【0031】
天井センサ110は、住宅Hのうち、手摺の設置を検討している空間(本実施形態においては寝室1及び廊下2)の天井に設置される。天井センサ110が各空間に設置される個数は特に限定されないが、本実施形態においては、寝室1及び廊下2にそれぞれ1個ずつ設置される。なお以下では、寝室1に設置される天井センサ110を「寝室天井センサ111」と称し、廊下2に設置される天井センサ110を「廊下天井センサ112」と称する場合がある。
【0032】
足元センサ120は、床面近傍において横方向を検出するように設置されるセンサである(図4参照)。足元センサ120は、非接触式のセンサにより構成され、対象者Pの身体状態に関するデータを検出する。足元センサ120は、対象者Pの身体状態に関するデータとして、主として対象者Pの足元における、横方向から検出可能な情報を取得できる。具体的には、足元センサ120は、図4に示すように、対象者Pの足元(例えば、床面から20cm程度(くるぶしぐらいまで)の間)の位置及び足元の垂直投影面積を取得できる。
【0033】
なお本実施形態において、対象者Pの足元の垂直投影面積とは、水平面に対する垂直面に投影したときの面積を指す。また対象者Pの足元の垂直投影面積とは、厳密に垂直面である必要はなく、垂直面に対して傾斜した面に投影したときの面積を含む。
【0034】
また本実施形態では足元センサ120として、天井センサ110と同様にミリ波センサを採用しているが、足元センサ120はミリ波センサに限るものではなく、その他のセンサを用いることも可能である。
【0035】
足元センサ120は、住宅Hのうち、手摺の設置を検討している空間(寝室1及び廊下2)の出入り口近傍に設置される。本実施形態では、足元センサ120は、寝室1及び廊下2のそれぞれにおいて、ドア14の近傍に設置される。なお足元センサ120が各空間に設置される個数は特に限定されないが、本実施形態においては、上述の如く寝室1及び廊下2にそれぞれ1個ずつ設置される。なお以下では、寝室1に設置される足元センサ120を「寝室足元センサ121」と称し、廊下2に設置される足元センサ120を「廊下足元センサ122」と称する場合がある。
【0036】
通過センサ130は、ドア14の開口部に設置される。通過センサ130は、例えば赤外線センサ等の任意のセンセが用いられ、対象者Pのドア14の通過を検出できる。すなわち、通過センサ130は、対象者Pの寝室1から廊下2への移動、及び、廊下2から寝室1への移動を検出できる。なお通過センサ130としては、例えば天井センサ110等と同様に、ミリ波センサを採用してもよい。
【0037】
表示部140は、任意の情報を表示するものである。表示部140としては、操作機能を有して携帯可能なタッチパネル等、種々のものが採用可能である。
【0038】
サーバ150は、種々の処理を実行するものである。サーバ150は、所定の演算処理装置等を有する。サーバ150は、所定の記憶領域に記憶しているプログラムや種々の情報を、前記演算処理装置で読み込んで処理できる。サーバ150は、住宅Hの任意の場所に設けられる。サーバ150は、クラウドサーバにより構成されてもよい。
【0039】
図1に示すように、サーバ150は、天井センサ110(寝室天井センサ111及び廊下天井センサ112)、足元センサ120(寝室足元センサ121及び廊下足元センサ122)及び通過センサ130と電気的に接続される。こうして、サーバ150は、天井センサ110及び足元センサ120との間で情報をやり取りできる。例えばサーバ150は、天井センサ110及び足元センサ120から得られたデータ(反射された電波に基づいて得られた点群データ)を取得して記憶する。またサーバ150は、天井センサ110及び足元センサ120に対して、検出の開始又は停止に関する指令を送信できる。またサーバ150は、通過センサ130の検出結果を取得できる。
【0040】
またサーバ150は、前記種々の情報として、住宅図面に関するデータを記憶している。住宅図面に関するデータには、住宅Hの間取り図に関するデータと、住宅Hの間取り図に対応するように規定された位置座標に関するデータと、が含まれる。また間取り図に関するデータには、各部屋に設置された家具に関するデータが含まれる。こうして、サーバ150は、各部屋における家具の配置や大きさ等が示された間取り図を、例えば表示部140に表示させることができる。
【0041】
またサーバ150は、前記種々の処理として、手摺が必要な箇所について提案するための処理(以下では「手摺設置箇所提案処理」と称する)を実行できる。サーバ150は、手摺設置箇所提案処理を所定期間(例えば1週間)に亘って実行することにより、住宅Hにおける対象者Pの生活動線を検出すると共に、当該検出した生活動線L上において、手摺が必要な箇所を提案できる。サーバ150は、提案内容を表示部140に表示させることができる。
【0042】
以下では、図5から図10を用いて、サーバ150により実行される手摺設置箇所提案処理について説明する。
【0043】
図5に示すように、手摺設置箇所提案処理においては、生活動線の検出・記録(ステップS1)、手摺設置推奨箇所判定(ステップS2)、図面への記録(ステップS3)という複数の処理が、サーバ150により順次実行される。
【0044】
まず、図5に示す生活動線の検出・記録(ステップS1)の処理について説明する。
【0045】
生活動線の検出・記録(ステップS1)の処理において、サーバ150は、寝室1のベッド11とトイレ4との間における対象者Pの生活動線を検出すると共に、検出した生活動線を記憶する。本実施形態において前記生活動線とは、日常生活において、対象者Pがベッド11とトイレ4との間を歩行する際に頻繁に使用するルート(主たるルート)である。
【0046】
サーバ150は、天井センサ110の検出結果を用いて生活動線を検出できる。具体的には、サーバ150は、天井センサ110から得られたデータに基づいて、対象者Pの動作状態を判定する。例えば、図6(a)及び(b)に示すように、寝室1の対象者Pが移動した場合には、サーバ150は、反射された電波に基づいて得られた点群データのうち、動きのあるデータが人(本実施形態では、対象者P)であると判断する。
【0047】
こうして、サーバ150は、動きのあるデータのみを抽出し、当該抽出したデータ及び寝室1の位置座標に関するデータに基づいて、当該寝室1内における対象者Pの位置を特定する。サーバ150は、図7(a)に示すように、例えば微小時間間隔ごとに対象者Pの位置を特定し、特定した複数の位置を時系列順に繋ぐことにより、寝室1における対象者Pの移動ルートを検出できる。
【0048】
またサーバ150は、寝室1だけでなく、廊下2における対象者Pの移動ルートを同様の処理により検出できる。また、サーバ150は、対象者Pが寝室1から廊下2(トイレ4)へ移動する場合だけでなく、トイレ4から寝室1へと移動する場合も、同様の処理により対象者Pの移動ルートを検出できる。
【0049】
ここで、サーバ150は、寝室1における対象者Pの動作状態は、寝室天井センサ111の検出結果を用いて判断する一方で、廊下2における対象者Pの動作状態は、廊下天井センサ112の検出結果を用いて判断する。すなわち、対象者Pが寝室1から廊下2へと移動する場合、サーバ150が用いるセンサが変更されることとなる。このような場合、対象者Pの移動は連続した一つの動作であるにもかかわらず、サーバ150が、対象者Pの寝室1の動作及び廊下2の動作を、別々の動作として取り扱う可能性がある。
【0050】
そこで、本実施形態に係る手摺設置箇所提案システム100においては、通過センサ130が設けられる。すなわち、サーバ150は、通過センサ130により対象者Pのドア14の通過が検出された場合には、当該検出の前後における寝室天井センサ111の検出結果と廊下天井センサ112の検出結果とが、対象者Pの連続した一つの動作であると判定する。すなわち、サーバ150は、当該検出の前後における寝室天井センサ111の検出結果と廊下天井センサ112の検出結果とが、対象者Pの一つの移動ルートを構成するものと判定する。こうして、対象者Pが異なる空間を跨いで移動した場合であっても、当該対象者Pの移動ルートを精度よく検出できる。
【0051】
また例えば、サーバ150は、寝室1や廊下2に対象者Pが不在の場合に、寝室天井センサ111や廊下天井センサ112を停止させることができる。こうして、サーバ150は、例えば対象者Pが寝室1にいる場合、寝室天井センサ111を稼動させると共に廊下天井センサ112を停止させ、その後に通過センサ130により対象者Pのドア14の通過が検出された場合には、寝室天井センサ111を停止させると共に廊下天井センサ112を稼動させる。このように、通過センサ130の検出結果に基づいて稼動するセンサを切り替えることにより、不要なデータの検出を抑制し、ひいては手摺設置箇所提案システム100の負荷の軽減を図ることができる。
【0052】
こうして、サーバ150は、1週間に亘って処理を実行することにより、対象者Pの移動ルートを複数回取得する。サーバ150は、複数回取得した移動ルートに基づいて、一つの対象者Pの生活動線を検出(推定)する。複数回取得した移動ルートに基づいて一つの生活動線を検出する手法としては、種々の手法を採用可能である。例えば、サーバ150は、任意の統計分析を用いて、複数回取得した移動ルートのうち一つの移動ルートを、生活動線として検出できる。また例えば、サーバ150は、複数回取得した移動ルートに基づいて、対象者Pが高頻度で位置した場所を繋いだ新たな移動ルートを作成し、この作成した移動ルートを生活動線として検出できる。
【0053】
サーバ150は、生活動線を検出すると、図7(b)に示すように、検出した生活動線(以下では「生活動線L」と称する)を住宅Hの間取り図に重ねて記憶する。なお以下では、生活動線Lが重ねられた間取り図を「間取り図M」と称する。こうして、間取り図Mによれば、生活動線Lを参照することにより、ベッド11とトイレ4との間を対象者Pが移動する場合、例えば寝室1において壁5や家具に対してどのような位置を頻繁に移動するのかを示すことができる。
【0054】
次に、図5に示す手摺設置推奨箇所判定(ステップS2)の処理について説明する。
【0055】
手摺設置推奨箇所判定(ステップS2)の処理において、サーバ150は、生活動線L上において、対象者Pが、壁5や家具等を手摺代わりに伝い歩きしている箇所(後述する伝い歩き区間S)を推定し、当該推定した箇所に基づいて手摺が必要な箇所(以下では「手摺設置推奨箇所T」と称する場合がある)を判定する。なお本実施形態において伝い歩きとは、上述の如く壁5や家具等につかまった状態で歩行する動作をいう。すなわち、対象者Pが移動する場合に、ある箇所において伝い歩きしている場合、当該箇所は対象者Pの移動において歩行状態が不安定となる箇所であると推測される。従って、サーバ150は、対象者Pが伝い歩きしている箇所の近傍が、手摺設置推奨箇所Tであると判断する。
【0056】
なお、本実施形態においてサーバ150が推定する伝い歩きは、対象者Pが厳密に壁5等につかまる必要はなく、壁5等につかまる必要がある程度にバランスを崩した(身体が斜めとなった)状態で歩行する動作を含むことができる。サーバ150は、生活動線Lを検出する際に記憶したデータに基づいて、生活動線L上で伝い歩きしている箇所を推定する。またサーバ150は、前記記憶したデータではなく、生活動線Lを検出した後において、新たに取得したデータに基づいて伝い歩きしている箇所を推定する。
【0057】
本実施形態において、サーバ150は、2種類の方法により、伝い歩きしている箇所を推定する。具体的には、サーバ150は、対象者Pの上半身に着目する方法と、対象者Pの足元に着目する方法と、の2種類の方法により、伝い歩きしている箇所を推定する。
【0058】
まず、図2及び図3を用いて、伝い歩きしている箇所を推定する2種類の方法のうち、対象者Pの上半身に着目する方法について説明する。
【0059】
図2(a)及び(b)に示すように、通常時(伝い歩きしていない場合)において、対象者Pの上半身の姿勢は、身体の左右方向において中心に位置すると想定される。このような場合、対象者Pの水平投影面積は比較的小さくなり、かつ、水平投影面積(水平投影面積を規定する外形)は左右対称であると推定される。
【0060】
これに対して、図3(a)及び(b)に示すように、非通常時(伝い歩きしている場合)において、対象者Pの上半身の姿勢は、身体の左右方向において左右何れか一方(すなわち、寄りかかった方向)に傾斜すると想定される。このような場合、対象者Pの水平投影面積は比較的大きくなり、かつ、水平投影面積を規定する外形は左右非対称であると推定される。
【0061】
そこで、サーバ150は、天井センサ110により取得され、生活動線L上に位置情報を有するデータを読み込んで、対象者Pの水平投影面積を取得する。そして、サーバ150は、生活動線L上の位置の変化に応じた生活動線L上の水平投影面積の変化等を取得することにより、対象者Pが伝い歩きしているかを判断する。なお生活動線L上に位置情報を有するデータとは、対象者Pの移動ルートの全てが生活動線Lに重複するデータだけでなく、一部だけが重複するデータも含む。
【0062】
具体的には、サーバ150は、伝い歩きしている箇所を記録する処理として、伝い歩き開始記録の処理(図8参照)、及び、伝い歩き終了記録の処理(図9参照)を実行する。伝い歩き開始記録の処理とは、対象者Pの生活動線L上の移動において、伝い歩きが開始された時点を特定し、記録する処理である。また伝い歩き終了記録の処理とは、上述の如く伝い歩きが開始された以降において、伝い歩きが終了した時点を特定し、記録する処理である。
【0063】
以下では、図8のフローチャートを用いて、サーバ150により実行される、伝い歩き開始記録の処理について説明する。
【0064】
ステップS11において、サーバ150は、読み込んだデータにおいて、対象者Pの移動が検知されたか否かを判断する。サーバ150は、対象者Pの移動が検知されない場合、移動が検知されるまで、この処理を繰り返す。一方、サーバ150は、対象者Pの移動が検知された場合、ステップS12へ移行する。
【0065】
ステップS12において、サーバ150は、天井センサ110の検出結果に基づいて、対象者Pの水平投影面積の計測を開始する。ステップS12の処理の後、サーバ150は、ステップS13へ移行する。
【0066】
ステップS13において、サーバ150は、対象者Pの生活動線L上の移動に伴って水平投影面積が増加したか否かを判断する。サーバ150は、所定の基準から所定の閾値を越えて対象者Pの水平投影面積が増加した場合に、水平投影面積が増加したと判断する。なお所定の基準としては、対象者Pの移動が開始された時点における水平投影面積や、移動途中において最小の水平投影面積を採用できる。
【0067】
サーバ150は、対象者Pの水平投影面積が増加しない場合、増加が検知されるまでこの処理を繰り返す。またサーバ150は、このデータにおいて、生活動線L上の移動が終了するまで対象者Pの水平投影面積が増加しない場合、このデータに基づく伝い歩き開始記録の処理を終了する。一方、サーバ150は、対象者Pの水平投影面積が増加した場合、ステップS14へ移行する。
【0068】
ステップS14において、サーバ150は、ステップS13で増加したと判断された水平投影面積が、家具等(家具や壁5等)の配置方向に増加したか否かを判断する。ここで、家具等の配置方向とは、例えば当該判断を行っている生活動線L上のある1点から、最も近くに設置された家具等を向く方向である。サーバ150は、当該判断における水平投影面積を分析し、通常時の水平投影面積との比較結果等に基づいて、水平投影面積の増加する方向を判断する。またサーバ150は、例えば図3(b)に示すように、水平投影面積を規定する外形において細長い形状(すなわち、対象者Pの腕に相当する部分)が飛び出している方向を、水平投影面積の増加する方向として判断してもよい。
【0069】
こうして、サーバ150は、水平投影面積が家具等の配置方向に増加していない場合、伝い歩き開始記録の処理を終了する。この場合、サーバ150は、再びステップS11の処理を実行してもよい。なお、この場合(ステップS14でNO)とは、例えば物を拾った等、家具等に寄りかかったこと以外の理由があると推測される。従って、この場合、サーバ150は、水平投影面積が増加しているものの、伝い歩きしているとは判断しない。一方、サーバ150は、水平投影面積が家具等の配置方向に増加している場合、ステップS15へ移行する。
【0070】
ステップS15において、サーバ150は、対象者Pの生活動線L上の移動が継続しているか否かを判断する。サーバ150は、対象者Pの移動が継続していない場合、伝い歩き開始記録の処理を終了する。この場合、サーバ150は、再びステップS11の処理を実行してもよい。なお、この場合(ステップS15でNO)とは、例えば家具の引出しを開けた等、伝い歩きすること以外の理由で家具等に寄りかかったと推測される。従って、この場合、サーバ150は、水平投影面積が家具等の配置方向に増加しているものの、伝い歩きしているとは判断しない。一方、サーバ150は、対象者Pの移動が継続している場合、ステップS16へ移行する。
【0071】
ステップS16において、サーバ150は、水平投影面積が家具等の配置方向に増加した地点が、対象者Pが伝い歩きを開始した地点であると判断する。サーバ150は、生活動線L上において、水平投影面積が家具等の配置方向に増加した地点(箇所)を、伝い歩き開始地点として記録する。ステップS16の処理の後、サーバ150は、伝い歩き開始記録の処理を終了する。
【0072】
以下では、図9のフローチャートを用いて、サーバ150により実行される、伝い歩き終了記録の処理について説明する。
【0073】
伝い歩き終了記録の処理は、例えば図8に示す伝い歩き開始記録の処理において、伝い歩き開始時点として記録が行われた場合(ステップS16参照)に、サーバ150が当該伝い歩きの終了を記録するために実行される。
【0074】
ステップS21において、サーバ150は、対象者Pの水平投影面積が減少したか否かを判断する。サーバ150は、所定の閾値を越えて対象者Pの水平投影面積が減少した場合に、水平投影面積が減少したと判断する。サーバ150は、対象者Pの水平投影面積が減少していない場合、減少が検知されるまでこの処理を繰り返す。一方、サーバ150は、対象者Pの水平投影面積が減少している場合、ステップS22へ移行する。
【0075】
ステップS22において、サーバ150は、ステップS21で減少したと判断された水平投影面積が、家具等(家具や壁5)の配置方向に減少した(すなわち、水平投影面積を規定する外形が左右対称となるように変形したか)か否かを判断する。サーバ150は、水平投影面積が家具等の配置方向に減少していない場合、再びステップS21の処理を実行する。一方、サーバ150は、水平投影面積が家具等の配置方向に減少している場合、ステップS23へ移行する。
【0076】
ステップS23において、サーバ150は、対象者Pの生活動線L上の移動が継続しているか否かを判断する。サーバ150は、対象者Pの移動が継続していない場合、伝い歩き終了記録の処理を終了する。この場合(ステップS23でNO)、対象者Pの伝い歩き終了以外の理由により、水平投影面積が家具等の配置方向に減少したと想定される。一方、サーバ150は、対象者Pの移動が継続している場合、ステップS24へ移行する。
【0077】
ステップS24において、サーバ150は、水平投影面積が家具等の配置方向に減少した地点が、対象者Pが伝い歩きを終了した地点であると判断する。サーバ150は、生活動線L上において、水平投影面積が家具等の配置方向に減少した地点(箇所)を、伝い歩き終了地点として記録する。ステップS24の処理の後、サーバ150は、伝い歩き終了記録の処理を終了する。
【0078】
このような、伝い歩き開始記録の処理、及び、伝い歩き終了記録の処理を実行することにより、サーバ150に記憶された生活動線L上のうち、伝い歩き開始地点から伝い歩き終了地点までの間が、対象者Pが伝い歩きしている部分(以下では「伝い歩き区間S」)として推定(検出)できる。サーバ150は、伝い歩き区間Sを検出すると、図10(a)に示すように、間取り図Mに当該伝い歩き区間Sを重ねて表示できる。
【0079】
例えば、図10(a)に示す一例においては、生活動線Lのうち、寝室1及び廊下2のそれぞれの一部分において伝い歩き区間Sが検出されている。こうして、図10(a)に示す間取り図Mによれば、対象者Pが寝室1のベッド11からトイレ4へと移動する場合、寝室1においてベッド11と本棚12との間を抜ける際に、歩行状態が不安定となることが示される。また図10(a)に示す間取り図Mによれば、対象者Pが廊下2においてドア14を通過して壁5と壁6との間に移動する際に、歩行状態が不安定となることが示される。サーバ150は、図10(a)に示す間取り図Mを表示部140に表示させることができる。
【0080】
次に、図4を用いて、伝い歩きしている箇所を推定する2種類の方法のうち、対象者Pの足元に着目する方法について説明する。
【0081】
図4(a)及び(b)に示すように、通常時(伝い歩きしていない場合)において、対象者Pの足元は、両足とも同様の動作が行われる(具体的には、歩行する際に足を上げる高さが互いに同一である)と想定される。このような場合、対象者Pが移動する際の、対象者Pの足元の垂直投影面積の変化は、左右で差が無いと推定される。
【0082】
これに対して、図4(c)に示すように、非通常時(伝い歩きしている場合)において、対象者Pの足元は、左右で互いに異なる動作が行われると想定される。具体的には、例えば図4(c)示すように、対象者Pが左側の家具に寄りかかって移動している場合、寄りかかる方の左足は右足よりも動きが少ないと想定される。この場合、対象者Pが移動する際の、対象者Pの足元(例えば、床面から20cm程度の間)の垂直投影面積の変化は、左足よりも右足の方が大きいと推定される。
【0083】
そこで、サーバ150は、生活動線L上に位置情報を有するデータを読み込んで、対象者Pの足元の垂直投影面積を取得する。そして、サーバ150は、対象者Pの上半身に着目する方法と同様に、生活動線L上の対象者Pの足元の垂直投影面積の変化等を取得することにより、対象者Pが伝い歩きしているかを判断する。
【0084】
サーバ150は、対象者Pの足元に着目する方法を、対象者Pの上半身に着目する方法に対して補助的に利用できる。例えばサーバ150は、伝い歩き開始記録の処理(図8参照)において、伝い歩きしていると判断されなかった場合であっても、生活動線L上の対象者Pの足元の垂直投影面積の変化が大きい場合に、伝い歩きしていると判断できる。これによれば、例えば対象者Pの水平投影面積の増加が所定の閾値以下であった場合(例えば、生活動線Lが家具等のすぐ横にあるため、伝い歩きしても対象者Pの身体がそれほど傾かなかった場合)等でも、サーバ150は、対象者Pの伝い歩きを検出できる。
【0085】
こうして、サーバ150は、伝い歩き区間Sを検出すると、当該伝い歩き区間Sに基づいて手摺設置推奨箇所Tを判定する。手摺設置推奨箇所Tは、上述の如く、伝い歩き区間Sの近傍に設定される。具体的には、サーバ150は、伝い歩き区間Sの開始地点(伝い歩き開始地点)から終了地点(伝い歩き終了地点)までに亘る各地点において、家具等の配置方向において最も近くの家具等に手摺設置推奨箇所Tを設定する。またサーバ150は、例えば天井センサ110等の検出結果に基づいて、対象者Pが実際につかまっている家具等の部分が特定できれば、当該部分を手摺設置推奨箇所Tとして設定することもできる。
【0086】
次に、図5に示す図面への記録(ステップS3)の処理について説明する。
【0087】
図面への記録(ステップS3)の処理において、ステップS2の処理にて判定された手摺設置推奨箇所Tを、間取り図Mに記録する。例えば、図10(b)に示す一例においては、2ヶ所の伝い歩き区間Sのうち、寝室1の伝い歩き区間Sに対応して、本棚12及び壁5に手摺設置推奨箇所Tが設定される。また、廊下2の伝い歩き区間Sに対応して、壁6に手摺設置推奨箇所Tが設定される。これによれば、生活動線Lを歩行する場合において、対象者Pの歩行状態が不安定になると想定される箇所において、手摺の設置が推奨されることとなる。またサーバ150は、図10(b)に示す間取り図Mを表示部140に表示させることもできる。こうして、手摺設置箇所提案システム100を用いることにより、手摺の設置に好適な箇所を対象者Pに提案できる。
【0088】
以上の如く、本発明の一実施形態に係る手摺設置箇所提案システム100は、
住宅H(建物)の手摺の設置箇所を提案するための手摺設置箇所提案システムであって、
対象者Pの身体状態に関するデータを非接触で検出可能な天井センサ110・足元センサ120(身体状態検出部)と、
前記天井センサ110・足元センサ120(身体状態検出部)の検出結果に基づいて、前記住宅H(建物)における生活動線Lを移動する前記対象者Pの歩行状態を検出するサーバ150(歩行状態検出部)と、
前記サーバ150(歩行状態検出部)の検出結果に基づいて、手摺設置推奨箇所を検出するサーバ150(手摺推奨箇所検出部)と、
を具備するものである。
【0089】
このような構成により、手摺が必要な箇所について、人の判断を介さずにサーバ150により判断できるため、客観的な評価に基づいた提案を行うことができる。
【0090】
また例えば人(提案者)が判断するような場合と比べて、当該提案者の負担を軽減できる。また非接触で検出可能なセンサを用いるため、対象者Pの身体・心理的負担を軽減できる。また本実施形態では、既設の住宅Hの天井に取り付けたミリ波センサ(天井センサ110)の検出結果に基づいて提案を行うことができるため、データを取得するために例えば圧縮センサを敷設する等の煩雑な作業を無くすことができる。またこれにり、短期のアセスメントで利用し易く構成される。また対象者Pの自宅内でセンシングすることとなるため、対象者Pの本来の動きに基づいて提案を行うことができる。
【0091】
また、手摺設置箇所提案システム100においては、
前記天井センサ110・足元センサ120(身体状態検出部)の検出結果に基づいて、前記住宅H(建物)における前記対象者Pの生活動線Lを検出するサーバ150(動線検出部)を具備するものである。
【0092】
このような構成により、生活動線Lについても、人の判断を介さずにサーバ150により判断できるため、客観的な評価に基づいた提案を効果的に行うことができる。
【0093】
また、手摺設置箇所提案システム100において、
前記サーバ150(歩行状態検出部)は、
前記対象者Pの歩行状態として、通常時及び非通常時の歩行状態を検出可能であり、
前記手摺設置推奨箇所は、
前記生活動線Lのうち前記対象者Pの歩行状態が非通常時である部分の近傍の壁又は家具に設定されるものである。
【0094】
このような構成により、対象者Pの歩行状態に応じて、手摺が必要な箇所について提案を行うことができる。
【0095】
また、手摺設置箇所提案システム100において、
前記サーバ150(歩行状態検出部)は、
前記非通常時の歩行状態として、伝い歩きを検出するものである。
【0096】
このような構成により、対象者Pの歩行状態が不安定であると推定可能な伝い歩きに基づいて、手摺が必要な箇所について提案を行うことができる。
【0097】
また、手摺設置箇所提案システム100において、
前記サーバ150(歩行状態検出部)は、
所定方向からの投影面積の変化に応じて前記歩行状態を検出するものである。
【0098】
このような構成により、比較的簡易な構成により手摺が必要な箇所について提案を行うことができる。
【0099】
また、手摺設置箇所提案システム100において、
前記所定方向からの投影面積には、水平投影面積が含まれるものである。
【0100】
このような構成により、比較的簡易な構成により、かつ、精度よく手摺が必要な箇所について提案を行うことができる。
【0101】
また、手摺設置箇所提案システム100において、
前記天井センサ110・足元センサ120(身体状態検出部)は、
ミリ波センサにより構成されるものである。
【0102】
このような構成により、対象者Pの身体状態を精度よく判定でき、ひいては手摺が必要な箇所について精度よく提案を行うことができる。
【0103】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0104】
例えば、本実施形態では、水平投影面積を検出するために、ミリ波センサを天井に設けたが、これに限定されない。すなわち、ミリ波センサは、天井ではなく、壁等に設けられてもよい。すなわち、ミリ波センサは、比較的高い位置に設置できれば、任意の場所に設けることができる。
【0105】
また本実施形態では、天井センサ110だけでなく、足元センサ120も使用したが、天井センサ110だけ使用してもよい。
【0106】
また本実施形態では、建物として住宅を例示したが、これに限定されない。すなわち建物としては、オフィスビル、商業施設、学校、病院等であってもよい。また同様に、対象者としても、住宅の住人に限定されず、建物を使用する者であれば対象者とすることができる。
【0107】
また本実施形態では、足元センサ120は、各空間(寝室1及び廊下2)に1つ設けられたが、これに限定されない。ここで、足元センサ120の検出結果(左右の足元の垂直投影面積)を精度よく取得するには、当該足元センサ120が対象者Pの正面(又は背面)側に位置することが望ましい。そこで、図11(a)に示すように、例えば空間内に出入り口が2ヶ所ある場合、それぞれ出入り口の近傍に、足元センサ120を設けることもできる。
【0108】
なお以下では、図示上側の出入り口を「第1出入り口510」と称し、図示右側の出入り口を「第2出入り口610」と称する。また第1出入り口510の近傍に設けられた足元センサ120を「第1足元センサ520」と称し、第2出入り口610の近傍に設けられた足元センサ120を「第2足元センサ620」と称する。
【0109】
このような構成によれば、例えば対象者Pが第1出入り口510から出入りする場合には第1足元センサ520を使用し、対象者Pが第2出入り口610から出入りする場合には第2足元センサ620を使用することにより、対象者Pの正面(又は背面)側から、足元の垂直投影面積を取得し易くなる。すなわち、上述の如き構成により、足元センサ120の検出結果(左右の足元の垂直投影面積)を精度よく取得できる。なお、第1足元センサ520及び第2足元センサ620の起動の切り替えは、サーバ150の処理(以下では「足元センサ切り替え処理」と称する)により実行できる。
【0110】
以下では、図11(b)及び図12のフローチャートを用いて、足元センサ切り替え処理について説明する。
【0111】
ステップS31において、例えば天井センサ110により取得されたデータを用いて、対象者Pの移動が検知されたか否かを判断する。サーバ150は、対象者Pの移動が検知されない場合、移動が検知されるまで、この処理を繰り返す。一方、サーバ150は、対象者Pの移動が検知された場合、ステップS32へ移行する。
【0112】
ステップS32において、サーバ150は、対象者Pの移動方向を検知する。具体的には、サーバ150は、対象者Pの移動軌跡を記憶する。ステップS32の処理の後、サーバ150は、ステップS33へ移行する。
【0113】
ステップS33において、サーバ150は、対象者Pの移動の変位量を比較する。具体的には、図11(b)に示すように、サーバ150は、ステップS32で記憶した移動軌跡において、所定の期間の経過前の地点と経過後の地点とを結ぶベクトル(すなわち、移動方向及び移動の変位量)を、第1足元センサ520側と第2足元センサ620側とに分解する。そして、サーバ150は、移動の変位量が、第1足元センサ520側と第2足元センサ620側とのいずれの側が大きいかを比較する。例えば、図11(b)に示す一例では、第1足元センサ520側の移動の変位量が、第2足元センサ620側の移動の変位量よりも大きい。ステップS33の処理の後、サーバ150は、ステップS34へ移行する。
【0114】
ステップS34において、サーバ150は、ステップ33において移動の変位量が大きいと判断されたセンサを、起動するセンサとして選択する。すなわち、図11(b)に示す一例では、サーバ150は、起動するセンサとして、第1足元センサ520を選択する。サーバ150は、ステップS34の処理の後、再びステップS31を実行する。
【0115】
このような構成によれば、複数のセンサのうち好適なセンサを選択し、起動させることができるため、足元センサ120の検出結果(左右の足元の垂直投影面積)を精度よく取得できる。なお上述の如き一例では、足元センサは2つとしたが、3つ以上設けることも可能である。
【符号の説明】
【0116】
100 手摺設置箇所提案システム
110 天井センサ
120 足元センサ
150 サーバ
L 生活動線
P 対象者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12