(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090677
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】レール削正車の削正条件決定装置、およびレール削正車の削正条件決定方法
(51)【国際特許分類】
E01B 35/00 20060101AFI20240627BHJP
E01B 31/17 20060101ALI20240627BHJP
G01M 17/08 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
E01B35/00
E01B31/17
G01M17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206721
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】辻江 正裕
(72)【発明者】
【氏名】幸野 真治
【テーマコード(参考)】
2D057
【Fターム(参考)】
2D057AB06
2D057BA24
2D057BA26
2D057BA32
(57)【要約】
【課題】曲線区間のレールに対してレール削正を適切に施工することができるレール削正車の削正条件決定装置、レール削正車の削正条件決定方法を提供することにある。
【解決手段】目標レール断面形状選定部32が、曲線区間の摩耗量最大レール断面形状に基づいて、目標レール断面形状を、複数の候補レール断面形状P1~P15の中から選定する。削正条件決定部33が、レールRを目標レール断面形状に削正するための削正条件を決定する。候補レール断面形状P1~P15は、曲線半径に対応するレールの摩耗形状の断面形状であり、レールの摩耗形状は、摩耗進展解析から算出されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール削正車により曲線区間のレールを削正する際の削正条件を決定するレール削正車の削正条件決定装置において、
前記曲線区間のレールにおいて、摩耗量が最大の摩耗量最大レール断面形状に最も近い、削り代を有する候補レール断面形状を選定する目標レール断面形状選定部と、
前記曲線区間のレールの断面形状を、目標レール断面形状に削正するための削正条件を決定する削正条件決定部と、
を備え、
前記候補レール断面形状は、前記曲線区間の曲線半径に対応するレールの摩耗形状の断面形状であり、
前記レールの摩耗形状は、
前記曲線区間のレール上を車両が走行した際の前記曲線区間のレールに作用する力を用いて算出された前記曲線区間のレールの摩耗の進展速度により予測された摩耗した前記曲線区間のレールの形状である
ことを特徴とするレール削正車の削正条件決定装置。
【請求項2】
前記目標レール断面形状選定部は、X-Y座標の前記摩耗量最大レール断面形状と前記候補レール断面形状との比較、若しくはレールの頭頂面の曲率の前記摩耗量最大レール断面形状と前記候補レール断面形状との比較、または両方に基づいて目標レール断面形状を選定する
ことを特徴とする請求項1に記載のレール削正車の削正条件決定装置。
【請求項3】
前記目標レール断面形状選定部は、前記曲線区間のレールの通過トン数から、前記曲線区間のレールに蓄積した疲労層の厚さや進展した微小亀裂の深さを推定し、少なくとも前記疲労層や前記微小亀裂を削正できる前記目標レール断面形状を選定する
ことを特徴とする請求項1に記載のレール削正車の削正条件決定装置。
【請求項4】
前記曲線区のレールの軌道情報に基づいて前記曲線区間のレールの削正の要否を判定するレール削正要否判定部をさらに備え、
前記レール削正要否判定部により前記曲線区間のレールの削正が不要であると判定した場合、その旨が外部に通知される
ことを特徴とする請求項1に記載のレール削正車の削正条件決定装置。
【請求項5】
前記レール削正要否判定部は、
前記曲線区間のレール上に傷がある場合、前記曲線区のレールの通過トン数が第1の値未満である場合、前記曲線区のレールの通過トン数が第2の値(前記第1の値より大きい所定の値)以上である場合、前記曲線区間のレールの削正が不要であると判定する
ことを特徴とする請求項4に記載のレール削正車の削正条件決定装置。
【請求項6】
前記曲線区間のレールにおいて、摩耗量が最小の摩耗量最小レール断面形状を選定する摩耗量最小レール断面形状選定部と、
前記目標レール断面形状と前記摩耗量最小レール断面形状に基づいて、前記曲線区間のレールにおける削正位置および削正深さを算出する削正位置・削正深さ算出部とをさらに備え、
前記削正条件決定部は、前記削正位置・削正深さ算出部により算出された削正位置および削正深さに基づく前記削正条件を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のレール削正車の削正条件決定装置。
【請求項7】
前記削正条件は、前記レール削正車のパスパターンであり、
前記パスパターンは、前記レール削正車が前記曲線区間のレール上を1回走行する際の、前記レール削正車の砥石の当接角度、押付力、削正範囲、削正深さを示す情報が含まれる
ことを特徴とする請求項1に記載のレール削正車の削正条件決定装置。
【請求項8】
前記パスパターンには、前記レール削正車が前記曲線区間のレール上を1回走行した際の前記曲線区間のレールの頭頂面の曲率の変化を示す情報がさらに含まれる
ことを特徴とする請求項7に記載のレール削正車の削正条件決定装置。
【請求項9】
レール削正車により曲線区間のレールを削正する際の削正条件を決定するレール削正車の削正条件決定方法において、
前記曲線区間のレールにおいて、摩耗量が最大の摩耗量最大レール断面形状に最も近い、削り代を有する候補レール断面形状を選定する目標レール断面形状選定ステップと、
前記曲線区間のレールの断面形状を、目標レール断面形状に削正するための削正条件を決定する削正条件決定ステップと、
を備え、
前記候補レール断面形状は、前記曲線区間の曲線半径に対応するレールの摩耗形状の断面形状であり、
前記レールの摩耗形状は、
前記曲線区間のレール上を車両が走行した際の前記曲線区間のレールに作用する力を用いて算出された前記曲線区間のレールの摩耗の進展速度により予測された摩耗した前記曲線区間のレールの形状である
ことを特徴とするレール削正車の削正条件決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レール削正車の削正条件決定装置、およびレール削正車の削正条件決定方法に関する。すなわち、この発明は、特に、曲線区間のレールにおける亀裂の発生を抑制するために施工するレール削正の削正条件を決定する装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両(列車など)が走行するレールには、車輪との転がり接触によって疲労損傷が発生する。直線区間のレールには、シェリングと称される疲労亀裂が発生する。このシェリングの深さは、通過トン数5000万トンに対して、約0.1mm未満である。このシェリングは、レール削正車(特許文献1)によりレール表面を削正することで取り除かれる。
【0003】
曲線区間のレールには、車輪との転がり接触によって、
図16に示すように、レールの軌間内側(ゲージコーナGC側)にゲージコーナ亀裂ときしみ割れと称される疲労亀裂が発生する。特に、ゲージコーナ亀裂は、その進展がシェリングに比べると速い。一作業日の施工でレール削正車によりレール表面を削ることができる深さは約0.3mm程度であることから、レール削正車によりレール表面を削り取ってもゲージコーナ亀裂を取り除くことができない。このため、曲線区間のレールに対しては、直線区間のレールのようなレール削正車による削正は行われず、ゲージコーナ亀裂が検査員による目視検査等で検出された場合は、亀裂の深さを管理し、一定の深さになったときレール自体が交換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に近年の労働者人口の減少、また人口減少による運輸収入の減少を見据え、鉄道用レールの延命化が強く求められている。
【0006】
しかしながら、上述したように、直線区間のレールについては、直線区間のレールに発生する疲労亀裂をレール削正車により取り除くことで延命することができるが、曲線区間のレールについては、従来の削正手法では、曲線区間のレールに発生する疲労亀裂は取り除くことができず、延命のための対策が確立されていない。
【0007】
またシェリングは直線区間でも必ず出るというわけではないが、ゲージコーナ亀裂はR600m~800mの曲線区間では群発して発生する。すなわちゲージコーナ亀裂の検査、管理について工数がかかり、作業ミスも発生しやすい。
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、これらの社会的背景を踏まえ、曲線区間のレールに対してレール削正を適切に施工することができるレール削正車の削正条件決定装置、およびレール削正車の削正条件決定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面のレール削正車の削正条件決定装置は、レール削正車により曲線区間のレールを削正する際の削正条件を決定するレール削正車の削正条件決定装置において、前記曲線区間のレールにおいて、摩耗量が最大の摩耗量最大レール断面形状に最も近い、削り代を有する候補レール断面形状を選定する目標レール断面形状選定部と、前記曲線区間のレールの断面形状を、前記目標レール断面形状に削正するための削正条件を決定する削正条件決定部と、を備え、前記候補レール断面形状は、前記曲線区間の曲線半径に対応するレールの摩耗形状の断面形状であり、前記レールの摩耗形状は、前記曲線区間のレール上を車両が走行した際の前記曲線区間のレールに作用する力を用いて算出された前記曲線区間のレールの摩耗の進展速度により予測された摩耗した前記曲線区間のレールの形状である、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の一側面のレール削正車の削正条件決定方法は、レール削正車により曲線区間のレールを削正する際の削正条件を決定するレール削正車の削正条件決定方法において、前記曲線区間のレールにおいて、摩耗量が最大の摩耗量最大レール断面形状に最も近い、削り代を有する候補レール断面形状を選定する目標レール断面形状選定ステップと、前記曲線区間のレールの断面形状を、前記目標レール断面形状に削正するための削正条件を決定する削正条件決定ステップと、を備え、前記候補レール断面形状は、前記曲線区間の曲線半径に対応するレールの摩耗形状の断面形状であり、前記レールの摩耗形状は、前記曲線区間のレール上を車両が走行した際の前記曲線区間のレールに作用する力を用いて算出された前記曲線区間のレールの摩耗の進展速度により予測された摩耗した前記曲線区間のレールの形状である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本技術の一側面によれば、曲線区間のレールに対してレール削正を適切に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の削正条件決定装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、レール削正施工対象の曲線区間のレールを示す図である。
【
図3】
図3は、車輪と曲線区間のレールとを示す図である。
【
図4】
図4は、設計形状と測定位置のレール断面形状を示す図である。
【
図5】
図5は、レールの断面形状情報のイメージを示す図である。
【
図7】
図7は、候補レール断面形状情報のイメージを示す図である。
【
図8】
図8は、目標レール断面形状と測定位置のレール断面形状を示す図である。
【
図10】
図10は、レール削正車の砥石による削正領域を示す図である。
【
図11】
図11は、レール削正車のパスパターン情報のイメージを示す図である。
【
図12】
図12は、削正条件決定装置における削正条件決定処理を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、レール削正要否判定部の判定処理を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、削正条件決定部の決定処理を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、レール摩耗形状を作成するレール摩耗形状作成装置の構成例を示す図である。
【
図16】
図16は、レールの軌間内側(ゲージコーナGC側)に発生したゲージコーナ亀裂ときしみ割れと称される疲労亀裂を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
車両(列車など)が走行するレールは、車輪との接触を繰り返して摩耗すると、車輪との接触が馴染み、車輪との接触面圧が下がる傾向がある。そのため車輪との接触を繰り返してレール表面が一定量摩耗している状態では疲労亀裂が発生し難いと考えられる。曲線区間のレールに生じるゲージコーナ亀裂についても、曲線区間のレールが車輪との接触を繰り返して一定量摩耗すると、発生しにくくなると考えられる。
【0014】
本出願人は、曲線区間のレール上を車両が走行した際のレールに作用する力を用いて算出されたレールの摩耗の進展速度により摩耗したレールと車輪の接触状態を計算し、接触状態からレールの摩耗量を計算して、当初の形状または予測した摩耗形状から差し引くことで摩耗形状の変化を予測する技術について特許第6861661号を有している。
【0015】
本発明の実施の形態である削正条件決定装置11は、レール削正施工対象の曲線区間のレール(以下、曲線区間のレールと称する)の形状を、特許第6861661号公報に開示されている技術を利用して予測された複数の摩耗形状のうち曲線区間のレールの現在の形状に合った予測摩耗形状に削正するための条件を決定する。そしてレール削正車12が削正条件決定装置11により決定された削正条件で曲線区間のレールを削正することで、曲線区間のレール上にゲージコーナ亀裂が発生するこが抑制される。
【0016】
(削正条件決定装置11の説明)
図1は、削正条件決定装置11の構成を示すブロック図である。削正条件決定装置11は、例えばパーソナルコンピュータであり、制御部21および記憶部22を有する。制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、記憶部位(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発メモリ等)を含む、その他の要素から構成される。記憶部22に記憶されている図示せぬ制御用プログラムが削正条件決定装置11の起動時に実行され、この制御用プログラムに基づいて、制御部21は記憶部22を含む削正条件決定装置11全体の制御を行うとともに、レール削正要否判定部31、目標レール断面形状選定部32、削正条件決定部33、および出力部34としての機能を実行する。これら各機能部の動作については後述する。
【0017】
記憶部22は、例えば、RAMやSSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)を有する。記憶部22には、上述した制御用プログラムが記憶されているとともに、曲線区間のレールの軌道情報51、曲線区間のレールの断面形状情報52、候補レール断面形状情報53、および削正車パスパターン情報54が記憶されている。これらデータの詳細については後述する。
【0018】
(レール削正要否判定部31の説明)
レール削正要否判定部31は、記憶部22に記憶されている曲線区間のレールの軌道情報51(以下、適宜、軌道情報51と称する)に基づいてレール削正の要否を判定する。レール削正要否判定部31におけるレール削正要否判定処理の詳細は
図13を参照して後述する。
【0019】
軌道情報51は、曲線区間のレールにおける軌道情報としての「レールの傷の有無」、「年間通過トン数」、「削正履歴」、「曲線半径」等の情報である。「レールの傷の有無」は、検査員による目視や探傷装置によるレール上の傷の検査結果である。「年間通過トン数」は、過去1年間に曲線区間のレールを走行した車両の累積トン数である。「削正履歴」は、曲線区間のレールに対して過去に行われたレール削正の、削正日、削正量等の情報である。「曲線半径」は、曲線区間のレールの曲線半径である。これらの情報は、ユーザによって削正条件決定装置11の図示せぬ入力部を介して入力され、記憶部22に記憶される。
【0020】
(目標レール断面形状選定部32の説明)
目標レール断面形状選定部32は、曲線区間のレールを削正する際の目標レール断面形状を決定する。具体的には目標レール断面形状選定部32は、曲線区間のレールの断面形状情報52(以下、適宜、断面形状情報52と称する)を参照し、曲線区間のレールのうち、設計形状と比較して摩耗量が最大のレールの断面形状(以下、摩耗量最大レール断面形状と称する)を選択する。曲線区間のレールであっても、場所毎に、レールの摩耗形状は、異なっている。そこでここでは摩耗が最も進んでいるレール部分の断面形状が基準断面形状となる。そして目標レール断面形状選定部32は、候補レール断面形状情報53を参照して、選択した摩耗量最大レール断面形状に最も近い、削り代を有する候補レール断面形状を選択し、目標レール断面形状とする。
【0021】
断面形状情報52について説明する。
図2は、レール削正施工対象の曲線区間のレールを示す。
図2に示すレールRo、Riは、例えば半径が600mから1000mで敷設されている。
図2において、車両の進行方向(
図2中の実線矢印が示す方向)に対して、左側のレールRoは、外側のレール(外側レール、外軌)であり、右側のレールRiは、内側のレール(内側レール、内軌)である。
【0022】
レールRo、Ri(以下、個々に区別する必要がない場合は、レールRと称する)は、
図3に示すように、共に、頭部1と、腹部2と、底部3とから構成されている。レールRの頭部1の頭頂面4およびゲージコーナ面5には、車輪Wの踏面6およびフランジ面7が接触している。なお、レールRの軌間内側は、ゲージコーナGC側と称し、レールRの軌間外側は、フィールドコーナFC側と称する。なお、レールRにおいて、ゲージコーナGC側の側面と、フィールドコーナFC側の側面との間は、約65mmである。
【0023】
レールRo、Riについて、
図2の例では、n(nは1以上の整数)個の測定位置T1,T2,T3,・・・TnのレールRの頭部1の1mmごとの65か所(以下、頭部ポイントと称する)のX-Y座標が、断面形状として作業員により計測される。断面形状を測定する装置としては、例えば、特開2012-117306号公報にも記載されているMinipRof(ミニプルーフ) Greenwood(グリーンウッド)社製やレーザ変位計(例えば、キーエンス社のLJシリーズ)などがある。
【0024】
図4Aには、レールRoの測定位置T1の断面形状の一部が、
図4Bには、レールRoの測定位置T2の断面形状の一部がそれぞれ実線で示されている。この実線部分のX-Y座標が計測される。
【0025】
このように計測された頭部1の断面形状と設計形状が比較され、頭部ポイントごとの差分が、設計形状からの摩耗量として算出される。
図4中の点線は設計形状である。計測された断面形状(
図4中実線)と設計情報(
図4中破線)の頭部ポイントごとの差分(
図4中の矢印)が算出される。なお頭部1の断面形状と設計形状の差分は、頭部1の側面など車輪が当たらず摩耗しない部分を基準に算出される。
【0026】
図5は、レールRoの断面形状情報52のイメージを示す図である。
図5中「CO」は頭部1(頭頂面4)の中心位置の頭部ポイントを示し、
図5中「FC1」は頭部1の中心位置からフィールドコーナFC側に1mm離れた位置の頭部ポイントを示す。
図5中「FC2」(図示せず)~「FC32」は、頭部1の中心位置からフィールドコーナFC側にそれぞれ2~32mmに、1mmずつ離れた位置の頭部ポイントを示す。
図5中「GC1」は頭部1の中心位置からゲージコーナFC側に1mm離れた位置の頭部ポイントを示す。
図5中「GC2」~「GC32」は、頭部1の中心位置からフィールドコーナFC側にそれぞれ2~32mmに、1mmずつ離れた位置の頭部ポイントを示す。
図5中「×××」はレールRoの測定位置T1~Tnの断面形状の頭部1の1mmごとの65か所の頭部ポイントCO,FC1~FC32,GC1~GC32での差分情報を示す。同様のレールRiの断面形状情報52も合わせて記憶部22に記憶される。
【0027】
次に、候補レール断面形状情報53について説明する。候補レール断面形状情報53は、曲線区間のレールRの削正目標としての目標レール断面形状となる候補レール断面形状のデータである。
【0028】
候補レール断面形状は、特許第6861661号公報に開示されている技術を利用して車両が曲線区間のレールRを走行した回数に応じて予測された曲線区間のレールRの摩耗形状である。
図6は、車両が曲線区間のレールR上を10000回、20000回、・・・150000回走行する場合の、10000回毎のレール摩耗形状P1~P15が示されている。これらのレール摩耗形状P1~P15が候補レール断面形状P1~P15とされ、その頭部ポイントのX-Y座標が候補レール断面形状情報53となる。
【0029】
図7は、候補レール断面形状情報53のイメージを示す図である。
図7中「CO」は頭部1(頭頂面4)の中心位置の頭部ポイントを示し、
図7中「FC1」は頭部1の中心位置からフィールドコーナFC側に1mm離れた位置の頭部ポイントを示す。
図7中「FC2」(図示せず)~「FC32」は、頭部の中心位置からフィールドコーナFC側にそれぞれ2~32mmに、1mmずつ離れた位置の頭部ポイントを示す。
図7中「GC1」は頭部の中心位置からゲージコーナGC側に1mm離れた位置の頭部ポイントを示す。
図7中「GC2」~「GC32」は、頭部1の中心位置からフィールドコーナFC側にそれぞれ2~32mmに、1mmずつ離れた位置の頭部ポイントを示す。
図7中「×××」はレール摩耗形状Pの頭部の1mmごとの65か所の頭部ポイントCO,FC1~FC32,GC1~GC32のX-Y座標である。
【0030】
レール摩耗形状を作成するレール摩耗形状作成装置については、
図15を参照して後述する。
【0031】
(削正条件決定部33の説明)
図1に戻り削正条件決定部33について説明する。削正条件決定部33は、例えば
図8に示すように、曲線区間のレールRの断面形状を目標レール断面形状に削正するための削正条件を決定する。削正条件決定部33は、摩耗量最小レール断面形状選定部41、削正位置・削正深さ算出部42、および削正車パスパターン選択部43を有する。
【0032】
摩耗量最小レール断面形状選定部41は、断面形状情報52(
図5)を参照し、曲線区間のレールRのうち、設計形状と比較して摩耗量が最小のレールの断面形状(以下、摩耗量最小レール断面形状と称する)を選択する。
【0033】
摩耗量最小レール断面形状は、目標レール断面形状に対して、最も深く削正する必要があるレール断面形状であることから、レール削正位置およびレール削正深さを算出するための基準断面形状となる。
【0034】
削正位置・削正深さ算出部42は、目標レール断面形状と摩耗量最小レール断面形状に基づいて、曲線区間のレールを削正する位置および削正する深さを算出する。
【0035】
削正車パスパターン選択部43は、削正車パスパターン情報54を参照して、削正位置・削正深さ算出部42により算出された、曲線区間のレールRを削正する位置および削正する深さに応じたレール削正車12のパスパターンを削正条件として選択する。すなわち摩耗量最小レール断面形状を目標レール断面形状に削正するパスパターンが選択される。
【0036】
削正車パスパターン情報54について説明するが、それに先立って、レール削正車12の削正機構について説明する。レール削正車12は、
図9に示すように、レール削正車12の進行方向に対して左側に配置されレールRoの頭部1を削正する第1削正ユニット71-2および第2削正ユニット72-1、並びに、右側に配置されレールRiの頭部1を削正する第1削正ユニット71-1および第2削正ユニット72-2を有する。
【0037】
左側の第1削正ユニット71-2、左側の第2削正ユニット72-1、右側の第1削正ユニット71-1および右側の第2削正ユニット72-2は、それぞれ、レール削正車12の進行方向に対して前後に2個の砥石81-3,81-4、砥石91-1,91-2、砥石81-1,81-2、砥石91-3,91-4を有する。この例の場合、それぞれ2個の砥石を有する4個の削正ユニットを備えるが、削正ユニットの数、砥石の数はこれに限定するものではない。
【0038】
第1削正ユニット71-1,71-2(以下、個々に区別する必要がない場合、第1削正ユニット71と称する。他の場合も同様である)は、ノーマルユニットと称され、それぞれの砥石81-1,81-2、および砥石81-3,81-4は、
図10中に示すノーマルユニット領域Wnを削正する。ノーマルユニット領域Wnは、レールRのフィールドコーナFCの曲線中心からの鉛直方向に対してフィールドコーナFC側に15°傾いた位置から、ゲージコーナGCの曲線中心からの鉛直方向に対してゲージコーナGC側に20°傾いた位置までの範囲である。すなわち第1削正ユニット71は、レールRの頭部1の頭頂面4(
図3)を削正するユニットである。
【0039】
第2削正ユニット72-1,72-2は、スペシャルユニットと称され、それぞれの砥石91-1,91-2、および砥石91-3,91-4は、
図10中に示すスペシャルユニット領域Wsを削正する。スペシャルユニット領域Wsは、レールRのゲージコーナGCの曲線中心からの鉛直方向に対してゲージコーナGC側に5°傾いた位置から、ゲージコーナGCの曲線中心からの鉛直方向に対してゲージコーナGC側に70°傾いた位置までの範囲である。すなわち第2削正ユニット72は、レールRの頭部1のゲージコーナ面5(
図3)を削正するユニットである。
【0040】
ノーマルユニットである第1削正ユニット71の砥石81、スペシャルユニットである第2削正ユニット72の砥石91を、それぞれ所定の位置等に設定することで、レール削正車12が1回、曲線区間のレールRを走行した際に削正できる削正位置および削正量が決められる。そこでレール削正車12の1回の走行で削正できる各削正ユニット71,72の砥石81,91の位置等の情報が、削正車パスパターン情報54となる。
【0041】
図11は、レール削正車12の削正車パスパターン情報54のイメージを示す図である。削正車パスパターン情報54は、ノーマルユニットである第1削正ユニット71-1,71-2と、スペシャルユニットである第2削正ユニット72-1,72-2ごとに、砥石81,91の「当接角度」、「押付力」、「削正範囲」、「削正深さ」のパスパターンが複数設けられている。
図11の例では、ノーマルユニットである第1削正ユニット71-1,71-2のM(Mは1以上の整数)個のパスパターンと、スペシャルユニットである第2削正ユニット72-1,72-2のM個のパスパターンがそれぞれ設けられている。
【0042】
「当接角度」は、砥石81,91の回転軸の、フィールドコーナFCの曲線中心およびゲージコーナGCの曲線中心からの鉛直方向に対する角度である。鉛直方向に対してフィールドコーナFC側に傾いている場合「+」とし、鉛直方向に対してゲージコーナGC側に傾いている場合「-」とする。「押付力」は砥石81,91の押付力に対応した電流値である。「削正範囲」は砥石81,91が削正する曲線区間のレールRの頭部1上の範囲であり、頭部ポイントで示されている。「削正深さ」はレール削正車12が1回曲線区間のレールR上を走行した際に削正できる深さである。
【0043】
なお、砥石81,91の「当接角度」、「押付力」、「削正範囲」、「削正深さ」の個々のパスパターンは、直線区間のレールの頭部の復元を目的としたレール削正により、得られるものを利用することができる。
【0044】
削正車パスパターン選択部43は、このような削正車パスパターン情報54から、少ないパス数で目標とする削正量を削正できるパスパターンを選択する。
【0045】
出力部34は、削正条件決定部33により選択されたパスパターンをレール削正車12に出力する。
【0046】
(削正条件決定処理)
次に、削正条件決定装置11における削正条件決定処理を、
図12のフローチャートを参照して説明する。
【0047】
ステップS1において、レール削正要否判定部31は、軌道情報51を参照して、曲線区間のレールRに対して削正が必要か否かを判定する。この処理の詳細を、
図13のフローチャートを参照して説明する。
【0048】
ステップS11において、レール削正要否判定部31は、軌道情報51の「レールの傷の有無」を参照して、曲線区間のレールRに傷があるか否かを判定し、傷があると判定した場合、ステップS12において、曲線区間のレールRに対して「レール削正不要」と判定する。レール削正車12によってレール表層を除去できる深さが約0.3mm程度であるが、すでに目視や探傷によって検知できる傷はそれ以上の深さがあることから、削正によって除去することができない。したがって、傷がある曲線区間のレールRは、レール削正しても傷を取り除くことができないため、「レール削正不要」とする。なお、傷のあるレールについては、亀裂の進展状況(深さや長さ)を経過観察するとともに、必要に応じてレール交換計画を立てることとなる。
【0049】
ステップS11で、曲線区間のレールRに傷がないと判定した場合、ステップS13において、レール削正要否判定部31は、軌道情報51の「年間通過トン数」および「削正履歴」を参照して、曲線区間のレールRの敷設されてからの通過トン数、または前回の削正後からの通過トン数が第1の閾値(この例では、2000万トン)未満であるか否かを判定し、その通過トン数が2000万トン未満である場合、ステップS14において、「レール削正不要」と判定する。レールが敷設されてからの通過トン数が少ないレール、または前回の削正後からの通過トン数が少ないレールについては、ゲージコーナ亀裂が形成されていない可能性が高いことから、積極的にレール削正を施工する必要がないと考え、「レール削正不要」と判定される。ただし、次回の削正の時期の通過トン数が、第1の閾値を大きく超える(後述する第2の閾値を超える)場合は、その通過トン数が、第1の閾値(この例では、2000万トン)未満であっても、「レール削正必要」と判定することができる。
【0050】
ステップS13で、曲線区間のレールRの通過トン数が第1の閾値(この例では、2000万トン)未満ではないと判定した場合、ステップS15において、レール削正要否判定部31は、軌道情報51の「年間通過トン数」および「削正履歴」を参照して、曲線区間のレールRの敷設されてからの通過トン数、または前回の削正後からの通過トン数が第2の閾値(この例の場合、1億トン)未満であるか否かを判定し、その通過トン数が1億トン未満である場合(すなわち通過トン数が2000万トン以上1億トン未満である場合)、ステップS16において、「レール削正必要」と判定する。
【0051】
ステップS15で、曲線区間のレールRの通過トン数が第2の閾値(この例では、1億トン)未満ではないと判定した場合、すなわち通過トン数が第2の閾値(この例では、1億トン)以上である場合、ステップS17において、レール削正要否判定部31は、「レール削正不要」と判定する。通過トン数が第2の閾値(この例では、1億トン)以上の場合は、レール削正から長くレール削正が施工されていなかった場合であって、曲線区間のレールRの頭頂面4およびゲージコーナ面5にゲージコーナ亀裂がすでに形成されている可能性が高い。ゲージコーナ亀裂は上述したようにその深さが約0.3mm以上あることから、レール削正では取り除くことができない。したがって、この場合、「レール削正不要」と判定される。
【0052】
ステップS12,S14,S17にて、「レール削正不要」と判定された場合、ステップS18において、出力部34は、その旨を、例えばレール削正車12に外部に出力する。その後、処理は終了する。「レール削正不要」がレール削正車12に通知されると、曲線区間のレールRの削正は行われない。ステップS16で「レール削正必要」と判定された場合、
図12のステップS2に進む。
【0053】
ステップS2において、目標レール断面形状選定部32は、断面形状情報52(
図5)を参照し、曲線区間のレールRのうち、設計形状と比較して摩耗量が最大のレールの摩耗量最大レール断面形状を選択する。そして目標レール断面形状選定部32は、候補レール断面形状情報53(
図7)を参照して、選択した量最大レール断面形状に最も近い、削り代を有する候補レール断面形状を選択し、目標レール断面形状とする。
【0054】
次に、ステップS3において、削正条件決定部33は、曲線区間のレールRの断面形状を目標レール断面形状に削正するための削正条件を決定する。この処理の詳細を、
図14のフローチャートを参照して説明する。
【0055】
ステップS21において、削正条件決定部33の摩耗量最小レール断面形状選定部41は、断面形状情報52(
図5)を参照し、曲線区間のレールRのうち、設計形状と比較して摩耗量が最小のレールの摩耗量最小レール断面形状を選択する。
【0056】
次にステップS22において、削正位置・削正深さ算出部42は、目標レール断面形状と摩耗量最小レール断面形状に基づいて、曲線区間のレールRを削正する位置および削正する深さを算出する。
【0057】
ステップS23において、削正車パスパターン選択部43は、削正車パスパターン情報54(
図11)から、少ないパス数で目標とする削正量を削正できるパスパターンを選択する。
【0058】
ステップS23にてパスパターンが選択されると、
図12のステップS4に進み、出力部34は、選択されたパスパターンを削正条件としてレール削正車12に出力する。その後、処理は終了する。レール削正車12は削正条件決定装置11の出力部34から出力されたパターンにて曲線区間のレールRを削正する。
【0059】
<曲率の利用>
以上においては、目標レール断面形状選定部32は、摩耗量最大レール断面形状と候補レール断面形状の頭部ポイントのX-Y座標を比較して、目標レール断面形状を選択し、削正条件決定部33は、「削正深さ」(X-Y座標に相当する)を参考にパスパターンを選択したが、頭頂面4の曲率を考慮して選択することもできる。
【0060】
断面形状情報52(
図5)に、曲線区間のレールRの各測定位置Tの断面形状の各頭部ポイントから算出された、それぞれのレールRの頭頂面4の曲率が含まれ、また候補レール断面形状情報53(
図7)には、候補レール断面形状としてのレール摩耗形状の頭頂面4の曲率が含まれるようにすることができる。この場合、目標レール断面形状選定部32は、曲率を考慮して目標レール断面形状を選択する。また削正車パスパターン情報54に、削正によるレールRの頭頂面の曲率の変化に関する情報が含まれるようにして、削正条件決定部33はその情報を考慮してパスパターンを選択することもできる。
【0061】
<頭頂面に蓄積した疲労層の削正>
通過トン数により曲線区間のレールRの頭頂面4に蓄積した疲労層の厚さや進展した微小亀裂の深さが推定される。このことから、軌道情報51の「前回の削正履歴」および「年間通過トン数」から曲線区間のレールRの頭頂面4に蓄積した疲労層の厚さや進展した微小亀裂の深さを推定し、少なくとも蓄積した疲労層の厚さや進展した微小亀裂の深さを削正できる候補レール断面形状を目標レール断面形状として選択することができる。
【0062】
<摩耗形状推定装置>
図15は、レール摩耗形状を作成するレール摩耗形状作成装置200の構成例を示す。レール摩耗形状作成装置200は、例えばパーソナルコンピュータ等であり、制御部201および記憶部202を有する。
【0063】
制御部201は、CPU等の演算素子を有する。記憶部202内に格納されている図示せぬ制御用プログラムがレール摩耗形状作成装置200の起動時に実行され、この制御用プログラムに基づいて、制御部201は記憶部202等を含むレール摩耗形状作成装置200全体の制御を行うとともに、車両運動解析部211および摩耗進展解析部212としての機能を実行する。
【0064】
記憶部202はハードディスクドライブ等の大容量記憶媒体、及びROM、RAM等の半導体記憶媒体を有する。この記憶部202には上述の制御用プログラムが格納されているとともに、制御部201の制御動作時に必要とされる各種データが一時的に格納される。
【0065】
この記憶部202には、車両モデルデータ221、レールデータ222、レール形状データ223、応力データ224、および摩耗量データ225が格納されている。これらデータのうち、応力データ224、摩耗量データ225については少なくとも一時的に記憶部202に格納されればよい。
【0066】
制御部201の車両運動解析部211は、記憶部202に格納された車両モデルデータ221及びレールデータ222を用いて、レールデータ222により設定された曲線区間のレールR上を、車両モデルデータ221により設定された曲線区間のレールRを走行する車両が走行した際の、曲線区間のレールRに作用する力を算出する。車両運動解析部211による算出処理は、SIMPACKやVAMPIRE(いずれも商品名)に代表されるマルチボディダイナミクス解析ソフトにより実施可能である。
【0067】
このマルチボディダイナミクス解析ソフトは、弾性体を含むマルチボディモデルの動的解析を効率よく行うためのツールである。より詳細には、マルチボディダイナミクス解析ソフトは、任意の車両モデルで、車輪やレールの実測形状を適用し、レール通過時の車両の挙動や車輪/レール間の接触を解析する。
【0068】
車両運動解析部211では、曲線区間のレールRの曲線半径や線形、レール形状等のレールデータ222及び車両諸元や列車速度等の曲線区間のレールRを走行する車両の車両モデルデータ221をマルチボディダイナミクス解析ソフトに入力し、走行シミュレーション結果から、レールデータ222により設定された曲線区間のレールR上を、同様に車両モデルデータ221により設定された車両が走行した際の、曲線区間のレールRに作用する力を算出する。車両運動解析部211の処理内容、さらにマルチボディダイナミクス解析ソフトそのものは既知のものであるから、本明細書ではこれ以上の詳細な説明は簡略化する。
【0069】
摩耗進展解析部212は、車両運動解析部211により算出された力を用いて曲線区間のレールRの摩耗の進展速度を算出する。摩耗進展解析部212は、レール接触解析部231、摩耗量算出部232及びレール摩耗形状生成部233を有する。
【0070】
レール接触解析部231は、車両運動解析部211により算出された力を用いて、曲線区間のレールRを走行する車両と曲線区間のレールRとの接触面内における接触応力を算出する。
【0071】
摩耗量算出部232は、レール接触解析部231により算出された接触応力に基づいて、曲線区間のレールRの摩耗の進展速度を算出する。
【0072】
レール摩耗形状生成部233は、摩耗量算出部232により算出された摩耗量に基づいて曲線区間のレールRのレール摩耗形状を生成し、レールデータ222を更新するとともに、レール摩耗形状データ226として記憶する。
【0073】
レール摩耗形状生成部233により生成されたレール摩耗形状によりレールデータ222が更新されるごとに、更新されたレールデータ222に基づいて車両運動解析部211および摩耗進展解析部212が上述した処理を繰り返す。その結果、車両が曲線区間のレールR上を走行する回数に応じた曲線区間のレールRの摩耗形状がレール摩耗形状データ226に記憶され、レール摩耗形状データ226の全部または一部が候補レール断面形状情報53として削正条件決定装置11の記憶部22に記憶される。
【0074】
(実施形態の効果のまとめ)
この実施形態にかかるレール削正車の削正条件決定装置11、レール削正車の削正条件決定方法は、以上のごとき構成、作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0075】
この実施形態にかかる削正条件決定装置11、レール削正車の削正条件決定方法は、目標レール断面形状選定部32により、曲線区間のレールにおいて、摩耗量が最大の摩耗量最大レール断面形状に最も近い、削り代を有する候補レール断面形状を目標レール断面形状として選定し、削正条件決定部33により、曲線区間のレールRの断面形状を、目標レール断面形状に削正するための削正条件を決定する、ものである。
【0076】
これにより、決定された削正条件に基づいて、曲線区間のレールRに対してレール削正を適切に施工することができ、曲線区間のレールRにおける亀裂の発生を抑制することができる。
【0077】
この実施形態にかかる削正条件決定装置11、レール削正車の削正条件決定方法において、候補レール断面形状P1~P15は、曲線区間の曲線半径に対応するレールの摩耗形状の断面形状であり、レールの摩耗形状は、曲線区間のレールR上を車両が走行した際の曲線区間のレールRに作用する力を用いて算出された曲線区間のレールRの摩耗の進展速度により予測された摩耗した曲線区間のレールの形状である。
【0078】
これにより、この実施形態にかかる削正条件決定装置11、レール削正車の削正条件決定方法は、曲線区間の曲線半径に対応するレールの摩耗形状の断面形状である候補レール断面形状P1~P15の中から目標レール断面形状を選定するものであるから、曲線半径が異なる幅広い曲線区間のレールRに対してレール削正を適切に施工することができる。
【0079】
この実施形態にかかる削正条件決定装置11、レール削正車の削正条件決定方法は、目標レール断面形状選定部32により、X-Y座標の摩耗量最大レール断面形状と候補レール断面形状P1~P15との比較に基づいて目標レール断面形状を選定する、ものである。
【0080】
これにより、この実施形態にかかる削正条件決定装置11、レール削正車の削正条件決定方法は、削り代を最小限にすることができるので、レール削正の施工時間を短縮することができ、レール削正を効率良く施工することができる。
【0081】
この実施形態にかかる削正条件決定装置11、レール削正車の削正条件決定方法は、目標レール断面形状選定部32により、曲線区間のレールRの通過トン数から、曲線区間のレールRに蓄積した疲労層の厚さや進展した微小亀裂の深さを推定し、少なくとも疲労層や微小亀裂を削正できる目標レール断面形状を選定する、ものである。
【0082】
これにより、この実施形態にかかる削正条件決定装置11、レール削正車の削正条件決定方法は、曲線区間のレールRに対して、少なくとも疲労層や微小亀裂を削正することができるので、曲線区間のレールRに対してレール削正を適切に施工することができる。
【0083】
この実施形態にかかる削正条件決定装置11、レール削正車の削正条件決定方法は、曲線区のレールRの軌道情報に基づいて曲線区間のレールRの削正の要否を判定するレール削正要否判定部31をさらに備え、レール削正要否判定部31により曲線区間のレールRの削正が不要であると判定した場合、その旨が外部に通知される、ものである。
【0084】
これにより、この実施形態にかかる削正条件決定装置11、レール削正車の削正条件決定方法は、削正が不要であると判定された場合には、レール削正の施工を中止することができるので、レール削正の施工を効率良く行うことができる。
【0085】
この実施形態にかかる削正条件決定装置11、レール削正車の削正条件決定方法は、レール削正要否判定部31により、曲線区間のレールR上に傷がある場合、曲線区のレールRの通過トン数が第1の値未満である場合、曲線区間のレールRの通過トン数が第2の値(第1の値より大きい所定の値)以上である場合、曲線区間のレールRの削正が不要であると判定する、ものである。
【0086】
これにより、この実施形態にかかる削正条件決定装置11、レール削正車の削正条件決定方法は、削正が不要であると言う判定を、曲線区間のレールRの通過トン数に見合って、行うことができるので、曲線区間のレールRの安全性を確保しつつ、レール削正の施工を効率良く行うことができる。
【0087】
この実施形態にかかる削正条件決定装置11、レール削正車の削正条件決定方法は、摩耗量最小レール断面形状選定部41により、曲線区間のレールRにおいて、摩耗量が最小の摩耗量最小レール断面形状を選定し、削正位置・削正深さ算出部42により、目標レール断面形状と摩耗量最小レール断面形状に基づいて、曲線区間のレールRにおける削正位置および削正深さを算出し、削正条件決定部33により、削正位置・削正深さ算出部42により算出された削正位置および削正深さに基づく削正条件を決定する、ものである。
【0088】
これにより、この実施形態にかかる削正条件決定装置11、レール削正車の削正条件決定方法は、レールRを位置と深さに基づいて削正するので、曲線区間のレールRに対してレール削正を適切に施工することができる。
【0089】
この実施形態にかかる削正条件決定装置11、レール削正車の削正条件決定方法において、削正条件は、レール削正車12のパスパターンであり、パスパターンは、レール削正車12が曲線区間のレールR上を1回走行する際の、レール削正車12の砥石81,91の当接角度、押付力、削正範囲、削正深さを示す情報が含まれる、ものである。
【0090】
これにより、この実施形態にかかる削正条件決定装置11、レール削正車の削正条件決定方法は、パスパターンに基づいて、レール削正車12により、曲線区間のレールRに対してレール削正を適正に施工することができる。
【0091】
この実施形態にかかる削正条件決定装置11、レール削正車の削正条件決定方法において、パスパターンには、レール削正車12が曲線区間のレールR上を1回走行した際の曲線区間のレールRの頭頂面4の曲率の変化を示す情報がさらに含まれる、ものである。
【0092】
これにより、この実施形態にかかる削正条件決定装置11、レール削正車の削正条件決定方法は、パスパターンのレールRの頭頂面4の曲率の情報により、レール削正車12の砥石81,91とレールRの頭頂面4およびゲージコーナ面5との接触が良好となり、車輪WとレールRとの接触が馴染み、曲線区間のレールRにおける亀裂の発生を抑制することができ、曲線区間のレールRに対してレール削正を適正に施工することができる。
【0093】
(実施形態以外の例の説明)
なお、この発明のレール削正車の削正条件決定装置、レール削正車の削正条件決定方法は、前記の実施形態により限定されるものではない。
【0094】
例えば、前記の実施形態における記憶部22は、削正条件決定装置11と一体に構成されているものである。しかしながら、この発明においては、記憶部22を削正条件決定装置11と別体に構成しても良い。
【0095】
また、前記の実施形態においては、削正条件決定装置11を動作させる制御用プログラムを記憶部22に格納するものである。しかしながら、この発明においては、不図示の光学ディスクドライブ等を用いて、制御用プログラムが格納されたDVD( Digital Versatile Disc)、USB外部記憶装置、メモリーカード等を接続し、このDVD等から制御用プログラムを削正条件決定装置11に読み込んで動作させても良い。さらに、インターネット上のサーバ装置内に制御用プログラムを格納しておき、削正条件決定装置11に通信部を設けて制御用プログラムを削正条件決定装置11読み込んで動作させても良い。
【0096】
さらにまた、前記の実施形態においては、削正条件決定装置11が複数のハードウェア要素により構成されているものである。しかしながら、この発明においては、ハードウェア要素の一部の動作を制御部21がプログラムの動作により実現することも可能である。
【0097】
さらにまた、前記の実施形態においては、目標レール断面形状選定部32により、X-Y座標の摩耗量最大レール断面形状と候補レール断面形状P1~P15との比較に基づいて目標レール断面形状を選定する、ものである。しかしながら、この発明においては、レールRの頭頂面4の曲率の摩耗量最大レール断面形状と候補レール断面形状P1~P15との比較に基づいて目標レール断面形状を選定しても良いし、また、前記の実施形態の選定と、この実施形態以外の選定との両方に基づいて目標レール断面形状を選定しても良い。
【符号の説明】
【0098】
1 頭部
2 腹部
3 底部
4 頭頂面
5 ゲージコーナ面
6 踏面
7 フランジ面
11 削正条件決定装置
12 レール削正車
21 制御部
22 記憶部
31 レール削正要否判定部
32 目標レール断面形状選定部
33 削正条件決定部
34 出力部
41 摩耗量最小レール断面形状選定部
42 削正位置・削正深さ算出部
43 削正車パスパターン選択部
51 曲線区間のレールの軌道情報
52 曲線区間のレールの断面形状情報
53 候補レール断面形状情報
54 削正車パスパターン情報
71-2 左側の第1削正ユニット
72-1 左側の第2削正ユニット
71-1 右側の第1削正ユニット
72-2 右側の第2削正ユニット
81-3,81-4 砥石
91-1,91-2 砥石
81-1,81-2 砥石
91-3,91-4 砥石
200 レール摩耗形状作成装置
201 制御部
202 記憶部
211 車両運動解析部
212 摩耗進展解析部
221 車両モデルデータ
222 レールデータ
223 レール形状データ
224 応力データ
225 摩耗量データ
226 レール摩耗形状データ
231 レール接触解析部
232 摩耗量算出部
233 レール摩耗形状生成部
FC フィールドコーナ
GC ゲージコーナ
P1~P15 候補レール断面形状(レール摩耗形状)
R レール
Ro 左側のレール
Ri 右側のレール
T1,T2,T3~Tn 測定位置
W 車輪
Wn ノーマルユニット領域
Ws スペシャルユニット領域