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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090689
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】レーザアニール装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20240627BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20240627BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20240627BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20240627BHJP
【FI】
H01L21/268 J
G02B6/42
H01L21/20
B23K26/064 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206738
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥野 武志
(72)【発明者】
【氏名】木下 理裕
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 瑞葵
(72)【発明者】
【氏名】楊 映保
(72)【発明者】
【氏名】針谷 香織
(72)【発明者】
【氏名】後藤 順
【テーマコード(参考)】
2H137
4E168
5F152
【Fターム(参考)】
2H137AA13
2H137AB06
2H137BA04
2H137BA15
2H137BB02
2H137BB17
2H137BC07
2H137CA13A
2H137CA25A
2H137CC21
2H137CC24
2H137DB01
4E168CB07
4E168DA26
4E168EA17
4E168JA12
5F152CC02
5F152CE05
5F152EE01
5F152EE10
5F152FF09
(57)【要約】
【課題】スペックパターンの発生を抑制でき、光ファイバの寿命を長くすることができるレーザアニール装置を提供すること。
【解決手段】レーザ光を出射する光源と、一端部から前記レーザが入射され前記レーザ光を伝送し他端部からレーザ光を出射するマルチモードの光ファイバと、を備えたレーザアニール装置であって、振動ヘッド部を有する振動源を備え、
前記振動ヘッド部の取り付け面に前記光ファイバが配置され、前記取り付け面に配置された前記光ファイバの領域を覆い、前記光ファイバを前記取り付け面に支持して押圧する支持部を備え、前記光ファイバと当該光ファイバに接触する前記支持部との振動伝達率が、前記取り付け面と前記光ファイバとの振動伝達率よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する光源と、一端部から前記レーザ光が入射され他端部から前記レーザ光を出射するマルチモードの光ファイバと、を備えたレーザアニール装置であって、
取り付け面を有する振動源を備え、
前記取り付け面に沿って前記光ファイバが配置され、
前記取り付け面に配置された領域の前記光ファイバは、剛性を有する保護層で覆われ、
前記保護層で覆われた前記光ファイバを前記取り付け面へ向けて押圧する支持部を備えることを特徴とするレーザアニール装置。
【請求項2】
前記保護層と前記支持部との振動伝達率が、前記取り付け面と前記保護層との振動伝達率よりも小さく設定されている
請求項1に記載されたレーザアニール装置。
【請求項3】
前記保護層は、金属または合成樹脂でなる筒体である
請求項1に記載されたレーザアニール装置。
【請求項4】
前記光ファイバは、前記保護層との間に樹脂材料が充填されている
請求項1に記載されたレーザアニール装置。
【請求項5】
前記支持部は、前記光ファイバに接触するゴム材料部と、当該ゴム材料部を前記光ファイバに押し付ける支持板と、を備える
請求項1に記載されたレーザアニール装置。
【請求項6】
前記支持部は、前記光ファイバに接触する樹脂材料部と、当該樹脂材料部を前記光ファイバに押し付ける支持板と、を備える
請求項1に記載されたレーザアニール装置。
【請求項7】
前記支持部は、前記光ファイバに接触する接着材料部と、当該接着材料部を前記光ファイバに押し付ける支持板と、を備える
請求項1に記載されたレーザアニール装置。
【請求項8】
前記支持部は、前記光ファイバに接触する磁気吸着材料部と、当該磁気吸着材料部を前記光ファイバに押し付ける支持板と、を備える
請求項1に記載されたレーザアニール装置。
【請求項9】
前記支持板は、金属板または合成樹脂板である
請求項5から請求項8のいずれかに記載されたレーザアニール装置。
【請求項10】
前記樹脂材料部は、樹脂テープである
請求項6に記載されたレーザアニール装置。
【請求項11】
前記支持部は、前記取り付け面と対向した状態で、前記支持部の輪郭内に前記取り付け面が収まるように設定されている
請求項1に記載されたレーザアニール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザアニール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを介してレーザ光を伝送するレーザビーム均一化システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このシステムは、光ファイバの先端からレーザ光を照射して薄膜を結晶化させるアニール技術に用いることが提案されている。この特許文献1には、光ファイバ光路内でのレーザ光の干渉によって発生するレーザ強度分布の変動によるレーザ光のビームスポットにおける模様(以下、スペックルパターンという)を平均化するため、光ファイバの出射端面側に回転する偏光解消板を配置する技術が開示されている。特許文献1には、スペックルパターンの平均化をさらに図るため、上記偏光解消板に加えて、光ファイバを機械的に振動させる手段を併用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-112953公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光ファイバを機械的に振動させると、光ファイバにおける、振動手段と接触する部分と振動手段と接触しない部分との境界が、短時間で破断されるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、スペックルパターンの発生を抑制でき、光ファイバの寿命を長くすることができるレーザアニール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様は、レーザ光を出射する光源と、一端部から前記レーザ光が入射され他端部から前記レーザ光を出射するマルチモードの光ファイバと、を備えたレーザアニール装置であって、取り付け面を有する振動源を備え、前記取り付け面に沿って前記光ファイバが配置され、前記取り付け面に配置された領域の前記光ファイバは、剛性を有する保護層で覆われ、前記保護層で覆われた前記光ファイバを前記取り付け面へ向けて押圧する支持部を備えることを特徴とする。
【0007】
上記態様としては、前記保護層と前記支持部との振動伝達率が、前記取り付け面と前記保護層との振動伝達率よりも小さく設定されていることが好ましい。
【0008】
上記態様としては、前記保護層は、金属または合成樹脂でなる筒体であることが好ましい。
【0009】
上記態様としては、前記光ファイバは、前記保護層との間に樹脂材料が充填されていることが好ましい。
【0010】
上記態様としては、前記支持部は、前記光ファイバに接触するゴム材料部と、当該ゴム材料部を前記光ファイバに押し付ける支持板と、を備えることが好ましい。
【0011】
上記態様としては、前記支持部は、前記光ファイバに接触する樹脂材料部と、当該樹脂材料部を前記光ファイバに押し付ける支持板と、を備えることが好ましい。
【0012】
上記態様としては、前記支持部は、前記光ファイバに接触する接着材料部と、当該接着材料部を前記光ファイバに押し付ける支持板と、を備えることが好ましい。
【0013】
上記態様としては、前記支持部は、前記光ファイバに接触する磁気吸着材料部と、当該磁気吸着材料部を前記光ファイバに押し付ける支持板と、を備えることが好ましい。
【0014】
上記態様としては、前記支持板は、金属板または合成樹脂板であることが好ましい。
【0015】
上記態様としては、前記樹脂材料部は、樹脂テープであることが好ましい。
【0016】
上記態様としては、前記支持部は、前記取り付け面と対向した状態で、前記支持部の輪郭内に前記取り付け面が収まるように設定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スペックルパターンの発生を抑制でき、光ファイバの寿命を長くすることができるレーザアニール装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るレーザアニール装置の概略構成図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係るレーザアニール装置における支持部を光ファイバに直交する方向に切断した状態を示す断面図である。
図3図3は、図2および図4のIII-III断面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係るレーザアニール装置における支持部の平面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係るレーザアニール装置における支持部で支持される部分の光ファイバの断面図である。
図6図6は、本発明の実施の形態に係るレーザアニール装置における支持部で支持される部分の光ファイバの変形例1を示す断面図である。
図7図7は、本実施の形態に係るレーザアニール装置における支持部に用いる樹脂材料部として樹脂テープを用いた変形例2を示す断面図である。
図8図8は、本実施の形態に係るレーザアニール装置における支持部に磁気吸着材料部を用いた変形例3を示す断面図である。
図9図9は、本実施の形態に係るレーザアニール装置における支持部に接着材料部を用いた変形例4を示す断面図である。
図10図10は、本実施の形態に係るレーザアニール装置において取り付け面の収納溝を大きく形成して収納溝内に光ファイバが埋没するように設定した変形例5を示す断面図である。
図11図11は、本実施の形態に係るレーザアニール装置において支持部を金属製のばね板のみで構成した変形例6を示す断面図である。
図12図12は、レーザアニール装置において、光ファイバを振動させない場合にアニール領域に表れる縦筋パターンが表れる比較例を示す図である。
図13図13は、レーザアニール装置において、保護層および支持部を備えない場合に光ファイバの破断が起こる比較例を示す図である。
図14図14は、本発明の実施の形態に係るレーザアニール装置の保護層の端部の位置を変更した例を示す断面図である。
図15図15は、本発明の本実施の形態に係るレーザアニール装置における支持部に接着材料部を用いた変形例7を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態に係るレーザアニール装置の詳細を図面に基づいて説明する。但し、図面は模式的なものであり、各部材の数、各部材の寸法、寸法の比率、形状などは現実のものと異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率や形状が異なる部分が含まれている。
【0020】
[実施の形態]
(レーザアニール装置の概略構成)
図1に示すように、本実施の形態に係るレーザアニール装置1は、光源としての半導体レーザLD(LD1~LD3)と、それぞれの半導体レーザLDに対応するカップリングレンズ2、3、4と、それぞれのカップリングレンズ2、3、4に対応する複数の光ファイバ10と、これら光ファイバ10の中間部に設けられた支持部20と、第1レンズ5と、第2レンズ6と、を備える。図2に示すように、レーザアニール装置1は、これら光ファイバ10に振動を伝える振動ヘッド(振動源)21を備える。なお、半導体レーザLD、カップリングレンズ2、3、4、および光ファイバ10の数は、任意であり、本実施の形態の数に限定されるものではない。また、本実施の形態では、光源として半導体レーザLDを用いるが、他のレーザ光源を用いても勿論よい。
【0021】
カップリングレンズ2、3、4は、それぞれの半導体レーザLDの出射側に接続されている。それぞれのカップリングレンズ2、3、4には、導波路としての光ファイバ10の一端部が接続されている。本実施の形態では、光ファイバ10は、マルチモードファイバを適用している。図2および図5に示すように、光ファイバ10は、コア層10Aと、コア層10Aの外側に形成されたクラッド層10Bと、で構成されている。
【0022】
第1レンズ5および第2レンズ6は、光ファイバ10から出射されたレーザ光で形成されたレーザビームLBを被処理用の基板7の表面にビームスポットとして結像させる結像光学系を構成している。
【0023】
本実施の形態に係るレーザアニール装置1は、図示しない基板搬送手段を備え、レーザアニール処理を施す基板7をスキャン方向へ任意の速度で搬送することが可能である。
【0024】
本実施の形態で用いる基板7は、例えば、ガラス基板の表面に非晶質シリコン膜が形成された構造を有するものを適用することができる。本実施の形態に係るレーザアニール装置1は、基板7の表面の非晶質シリコン膜にレーザビームLBを照射することにより、疑似単結晶シリコン膜を形成することを可能にする。
【0025】
なお、本実施の形態に係るレーザアニール装置1は、非晶質シリコン膜のアニールに限定されるものではなく、各種のアニール処理に適用可能である。
【0026】
(振動源)
図2および図3に示すように、本実施の形態に係るレーザアニール装置1では、振動源としての振動ヘッド21は、支持部20に対向するように設けられている。この振動ヘッド21は、図示しない超音波振動子に一体に設けられ、例えば、直方体形状の金属ブロックで構成されている。この超音波振動子は、図示しない発振器からの高周波電力を超音波振動に変換するもので、例えば電歪型の超音波振動子でなる。なお、本実施の形態に係るレーザアニール装置1では、この超音波振動子の周波数としては、任意の周波数を選択可能であり、例えば、30kHz~400kHzの範囲で使用が可能である。なお、本実施の形態においては、超音波振動子の振幅を調整することにより、光ファイバ10の寿命の改善を図ることが可能である。なお、振動源としては、上記の超音波振動子に限定されるものではない。
【0027】
図2に示すように、振動ヘッド21の先端面は、取り付け面22を構成している。この取り付け面22には、互いに平行をなすように、光ファイバ10を収納する収納溝23が等間隔に形成されている。この収納溝23は、断面形状がV字形状であり、光ファイバ10を収納することにより、光ファイバ10の位置決めができるようになっている。なお、収納溝23の内面は、光ファイバ10に接触して支持する面であり、取り付け面22の一部を構成している。
【0028】
図2に示すように、本実施の形態において、取り付け面22を構成する収納溝23の内面に配置される光ファイバ10は、内側から順次、合成樹脂層11、保護層12で覆われている。なお、本実施の形態では、保護層12がステンレス鋼(SUS)でなる金属パイプで構成されている。合成樹脂層11は、金属パイプである保護層12に挿入された光ファイバ10と保護層12との間に充填されて固化したものである。例えば、合成樹脂層11としては、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。保護層12は、金属パイプであるため、剛性を有する。また、この保護層12は、合成樹脂層11を介在したことによって光ファイバ10と一体的に設けられている。
【0029】
本実施の形態においては、合成樹脂層11および保護層12は、振動ヘッド21における、光ファイバ10の延在方向の両側の縁よりも側方に延びるように形成されている。図3は、保護層12が振動ヘッド21の両端の縁よりも側方に延びていることを示している。
【0030】
(支持部の構造)
図2から図4に示すように、支持部20は、振動ヘッド21における光ファイバ10の延在方向と直交する方向の両側に振動ヘッド21を挟むように配置された一対の縦板24と、これら縦板24の上端部に架設された支持板25と、シート状のゴム材料部26と、から構成されている。なお、支持板25は、縦板24の上端面に押さえねじ27で固定されている。支持板25としては、金属板や合成樹脂板を適用することができる。ゴム材料部26としては、例えばシリコーンゴム、ウレタンゴムなどの材料で形成されている。
【0031】
そして、ゴム材料部26は、所定の圧力で保護層12および合成樹脂層11を含めて光ファイバ10を収納溝23内の内壁に押し付けるように設定されている。ここで、所定の圧力が大き過ぎると、光ファイバが発熱したり、変形したりするおそれがある。光ファイバが発熱すると、断線の原因となってしまう。また、光ファイバが変形すると、光のパワーロスに繋がる。したがって、所定の圧力としては、超音波振動子のパワーロスが発生しない程度の圧力以下にすることが好ましい。
【0032】
図3に示すように、縦板24は、振動ヘッド21における光ファイバ10の延在方向において振動ヘッド21よりも長く設定され、光ファイバ10の延在方向において振動ヘッド21の両側方に延びるように配置されている。図4に示すように、本実施の形態おいて、支持板25は、振動ヘッド21の取り付け面22の全体と対向した状態で、この支持板25の輪郭内に取り付け面22が収まるように、取り付け面22よりも大きな長方形に設定されている。なお、本実施の形態では、図14に示すように、保護層12の厚みにより光ファイバ10が振動ヘッド21に直接触れない状況であれば保護層12の端部が振動ヘッド21や支持部20の端部よりも内側にあってもよい。
【0033】
上述の構造を有する支持部20においては、保護層12と、支持部20の一部であるゴム材料部26と、の間の振動伝達率が、振動ヘッド21の取り付け面 (収納溝23の内面を含む)22と、保護層12と、の間の振動伝達率よりも小さくなるように設定されている。ここで、振動伝達率とは、支持点の反力の大きさと、振動源側から入力される力の比で定義される。つまり、振動を受ける側の支持点に伝える振動の力をどのくらい低減できているかを表すパラメータである。
【0034】
(支持部における作用)
支持部20において支持された光ファイバ10は、光ファイバ10と一体に設けられた剛性を有する保護層12を備えるため、振動ヘッド21の振動により振動ヘッド21の縁の部分で光ファイバ10が破断することを防止する作用がある。なお、図13は、保護層12などを設けない光ファイバ10を振動ヘッド21に配置した比較例を示すものであり、振動ヘッド21の縁の部分で破断Bが発生した状態を示している。
【0035】
また、上述したように、光ファイバ10および合成樹脂層11に一体に設けられた保護層12と、支持部20の一部であるゴム材料部26との間の振動伝達率が、振動ヘッド21の取り付け面 (収納溝23の内面を含む)22と、保護層12との間の振動伝達率よりも小さくなるように設定したことにより、以下の作用を奏する。すなわち、光ファイバ10側へ振動ヘッド21側からの振動が確実に伝わるとともに、光ファイバ10側から支持部20側へは振動が伝わりにくくなり、光ファイバ10側は支持部20側からの反力が弱まる。
【0036】
したがって、本実施の形態においては、光ファイバ10へ振動を効率的に伝達できるため、光ファイバ光路内でのレーザ光の干渉によって発生するレーザ強度分布の変動によるレーザ光のビームスポットにおける模様(以下、スペックルパターンという)を効率的に平均化することができる。図12は、振動ヘッド21を備えないレーザアニール装置により、基板7の表面に形成した非晶質シリコン膜にアニール処理を行なった場合のアニール処理領域を示している。この図12において、二点鎖線で示すレーザビームLBは、基板7上に照射される細長いビームスポットを示す。矢印Sは、ビームスポットの相対的なスキャン方向を示す。図12に示すように、振動ヘッド21を備えない比較例では、スペックルパターンの均一化が行われないため、縦筋パターン32が発生するという課題が残る。
【0037】
また、本実施の形態に係るレーザアニール装置1では、光ファイバ10の振動に伴う支持部20側からの反力が弱まるため、保護層12での保護作用に加えて光ファイバ10側のうねり動作の発生を抑制でき、ダメージの発生を防止できる。
【0038】
(変形例1)
図6は、本実施の形態における変形例1を示している。この変形例1では、光ファイバ10において、上記の支持部20に対応する領域に、金属パイプでなる保護層12を設けずに、剛性を有する合成樹脂層11のみを設けた構成であり、他の構成は上記の実施の形態と同様である。この変形例1では、合成樹脂層11が剛性を有するため、上記の実施の形態と同様に光ファイバ10を保護する作用と、支持部20側からの反力を抑える作用を有し、同様の効果を得ることができる。
【0039】
(変形例2)
図7は、本実施の形態における変形例2を示している。この変形例2は、上記の実施の形態において用いたゴム材料部26を、樹脂材料部としての樹脂テープ28に替えた構成であり、他の構成は上記の実施の形態と同様である。樹脂テープ28の厚さなどを調整することにより、上記の実施の形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0040】
(変形例3)
図8は、本実施の形態における変形例3を示している。この変形例3は、上記の実施の形態において用いたゴム材料部26を、磁気吸着材料部29に替えた構成である。この磁気吸着材料部29の材料として、例えばゴム材料に磁石粉末を混ぜたゴム磁石であってもよい。なお、この変形例3においては、振動ヘッド21の取り付け面22に形成した収納溝23が、光ファイバ10を取り囲む保護層12の上端まで収納できる深さに設定され、保護層12の上端が磁気吸着材料部29の下面と接触するように設定されている。この変形例3においても、光ファイバ10を保護する作用と、支持部20側からの反力を抑える作用を有し、上記の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0041】
(変形例4)
図9は、本実施の形態における変形例4を示している。この変形例4は、振動ヘッド21の上に収納溝23を形成せずに、光ファイバ10を平行に並べ、これら光ファイバ10を接着材料部30で固定している。この変形例4における他の構成は、上記の実施の形態と同様である。
【0042】
(変形例5)
図10は、本実施の形態における変形例5を示している。この変形例5は、上記の実施の形態と同様にゴム材料部26を用いる。なお、この変形例5においては、振動ヘッド21の取り付け面22に形成した収納溝23が、光ファイバ10を取り囲む保護層12の上端まで収納できる深さに設定され、保護層12の上端がゴム材料部26の下面と接触するように設定されている。このような構成としても、光ファイバ10を保護する作用と、支持部20側からの反力を抑える作用を有し、上記の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
(変形例6)
図11は、本実施の形態における変形例6を示している。この変形例6は、上記の実施の形態におけるゴム材料部26を省略し、保護層12を有する光ファイバ10の上にばね板25Aを押し付けるように設け、このばね板25Aが上記の実施の形態における支持部20とゴム材料部26との機能を兼ね備える。すなわち、ばね板25Aは、保護層12に対して所定の圧力を加え、光ファイバ10側の振動に伴う反力を小さくするクッション材としての機能を有する。
【0044】
(変形例7)
図15は、本実施の形態における変形例7を示している。この変形例7は、振動ヘッド21の上に複数の収納溝23を平行に形成し、それぞれの収納溝23に光ファイバ10を配置して複数の光ファイバ10を平行に並べ、これら光ファイバ10を接着材料部30で固定している。この変形例7における他の構成は、上記の実施の形態と同様である。
【0045】
(その他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態について説明したが、実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。本発明は、付随する様々な実施例や代替手段を包含している。
【0046】
例えば、上記の実施の形態および変形例の多くは、振動ヘッド21の取り付け面22として断面がV字形状の収納溝23を形成する面(内面)としたが、取り付け面22で構成される断面がU字形状、矩形状などの他の形状としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
LD 半導体レーザ(光源)
1 レーザアニール装置
2,3,4 カップリングレンズ
5 第1レンズ
6 第2レンズ
7 基板
10 光ファイバ
10A コア層
10B クラッド層
11 合成樹脂層
12 保護層
20 支持部
21 振動ヘッド(振動源)
22 取り付け面
23 収納溝
24 縦板
25 支持板
25A ばね板
26 ゴム材料部
27 押さえねじ
28 樹脂テープ(樹脂材料部)
29 磁気吸着材料部
30 接着材料部
31 アニール領域
32 縦筋パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15