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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090694
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】プログラム及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   C10G 99/00 20060101AFI20240627BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20240627BHJP
【FI】
C10G99/00
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206743
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】森 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】前田 拓
(72)【発明者】
【氏名】岸田 遼
【テーマコード(参考)】
4H129
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA03
4H129CA08
4H129DA16
4H129LA14
4H129NA02
4H129NA42
4H129NA45
5L049CC60
5L050CC60
(57)【要約】
【課題】製油装置の適切な運転条件をユーザが検討することができる。
【解決手段】プログラムがコンピュータを、予定運転条件50Bと触媒劣化関数50Dと運転実績データ50Cとを取得する取得部52、指定された運転条件を指定運転条件として受け付ける受付部54、予定運転条件50Bと触媒劣化関数50Dと運転実績データ50Cとに基づき第1温度を予測し、且つ、触媒劣化関数50Dと運転実績データ50Cと指定運転条件とに基づき第2温度を予測する予測部56、として機能させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料油を触媒に通油して生成油を得る製油装置の運転を支援するプログラムであって、
コンピュータを、
予定されている前記製油装置の運転条件である予定運転条件と、前記触媒の触媒劣化関数と、前記製油装置に関する運転実績データと、を取得する取得部、
ユーザによる前記製油装置の運転条件の指定がある場合に、指定された運転条件を指定運転条件として受け付ける受付部、
前記触媒劣化関数と前記運転実績データと前記予定運転条件とに基づき、当該予定運転条件を満たすために必要な前記触媒の反応温度である第1温度を予測し、且つ、前記触媒劣化関数と前記運転実績データと前記指定運転条件とに基づき、当該指定運転条件を満たすために必要な前記触媒の反応温度である第2温度を予測する予測部、
として機能させるためのプログラム。
【請求項2】
前記予測部は、
前記触媒劣化関数と前記運転実績データとに基づき、前記製油装置固有の固有触媒劣化関数を算出する関数算出部と、
前記固有触媒劣化関数と前記予定運転条件とに基づき、前記触媒の第1劣化度を算出し、且つ、前記固有触媒劣化関数と前記指定運転条件とに基づき、前記触媒の第2劣化度を算出する劣化度算出部と、
を含み、
前記予測部は、前記第1劣化度に基づき前記第1温度を予測し、且つ、前記第2劣化度に基づき前記第2温度を予測する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記関数算出部は、予め定められたタイミングにて、前記固有触媒劣化関数を算出して記憶し、
前記受付部は、前記ユーザの予測指示を受け付け、
前記劣化度算出部は、前記受付部が前記ユーザの予測指示を受け付けた場合に、記憶されている前記固有触媒劣化関数と前記予定運転条件とに基づき、前記第1劣化度を算出し、且つ、記憶されている前記固有触媒劣化関数と前記指定運転条件とに基づき、前記第2劣化度を算出する、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記劣化度算出部は、前記固有触媒劣化関数と前記予定運転条件とに基づき、前記第1劣化度と時間との関係を表す第1劣化度変化データを生成し、且つ、前記固有触媒劣化関数と前記指定運転条件とに基づき、前記第2劣化度と時間との関係を表す第2劣化度変化データを生成し、
前記予測部は、前記第1劣化度変化データに基づき、前記第1温度と時間との関係を表す第1温度変化データを生成し、且つ、前記第2劣化度変化データに基づき、前記第2温度と時間との関係を表す第2温度変化データを生成する、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項5】
前記取得部は、前記製油装置に予め定められている上限温度を取得し、
前記予測部は、前記第1温度変化データにおいて前記第1温度が前記上限温度以上となる時間に基づき前記触媒の第1触媒寿命を予測し、前記第2温度変化データにおいて前記第2温度が前記上限温度以上となる時間に基づき前記触媒の第2触媒寿命を予測する、
請求項4に記載のプログラム。
【請求項6】
前記予測部は、前記第1温度変化データと、前記第2温度変化データと、を共通の表示軸上に表示したグラフを出力する、
請求項4に記載のプログラム。
【請求項7】
前記共通の表示軸は、前記触媒の要求温度と、前記製油装置の運転時間と、を含む、
請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記運転実績データは、前記製油装置の運転時間における前記触媒の要求温度を示す温度実績データを含み、
前記予測部は、前記温度実績データを前記グラフに表示する、
請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記予測部は、前記固有触媒劣化関数と前記予定運転条件とに基づき、前記温度実績データを補正して補正温度データを取得し、当該補正温度データを前記グラフに表示する、
請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
前記予測部は、前記固有触媒劣化関数と前記運転実績データに含まれる過去に使用された実績運転条件とに基づき、前記温度実績データに対応する過去の運転時間の温度を算出した算出温度データを取得し、当該算出温度データを前記グラフに表示する、
請求項8に記載のプログラム。
【請求項11】
前記関数算出部は、任意の運転期間においては、前記触媒劣化関数と前記任意の運転期間の前記運転実績データとに基づき、前記固有触媒劣化関数を算出する、
請求項2乃至10の何れか1項に記載のプログラム。
【請求項12】
前記任意の運転期間を前運転期間とし、前記任意の運転期間とは異なるとともに前記任意の運転期間が経過した後の運転期間を後運転期間としたとき、
前記関数算出部は、前記後運転期間においては、前記前運転期間に算出された前記固有触媒劣化関数と前記後運転期間の前記運転実績データとに基づき、前記後運転期間の前記固有触媒劣化関数を算出する、
請求項11に記載のプログラム。
【請求項13】
前記関数算出部は、
前記前運転期間における複数の任意の時刻に対して算出された複数の前記触媒の残活性割合の各々を、前記運転実績データに含まれる過去に使用された実績運転条件により補正し、
補正された複数の前記残活性割合に基づいて、前記前運転期間の前記固有触媒劣化関数を更新し、
更新された前記固有触媒劣化関数と前記後運転期間の前記運転実績データとに基づき、前記後運転期間の前記固有触媒劣化関数を算出する、
請求項12に記載のプログラム。
【請求項14】
前記関数算出部は、前記後運転期間の前記固有触媒劣化関数を算出してから所定期間が経過した後、当該固有触媒劣化関数と前記所定期間の間に更新された前記運転実績データとに基づき、前記固有触媒劣化関数を更新する、
請求項12に記載のプログラム。
【請求項15】
前記受付部は、複数の前記指定運転条件と、当該複数の指定運転条件の各々に対応する運転期間である複数の指定運転期間と、の指定を受け付け、
前記予測部は、前記複数の指定運転条件と前記複数の指定運転期間とに基づき、前記第2温度を予測する、
請求項1乃至10の何れか1項に記載のプログラム。
【請求項16】
前記予定運転条件は、
前記原料油の通油量に関する原料油通油量と、
前記原料油の蒸留性状に関する原料油蒸留性状と、
前記原料油の硫黄濃度に関する原料油硫黄濃度と、
前記生成油の性状に関する生成油性状と、
前記生成油の硫黄濃度に関する生成油硫黄濃度と、
のうち少なくとも1つを含む、
請求項1乃至10の何れか1項に記載のプログラム。
【請求項17】
前記指定運転条件は、
前記原料油の通油量に関する原料油通油量と、
前記原料油の蒸留性状に関する原料油蒸留性状と、
前記原料油の硫黄濃度に関する原料油硫黄濃度と、
前記生成油の性状に関する生成油性状と、
前記生成油の硫黄濃度に関する生成油硫黄濃度と、
のうち少なくとも1つを含む、
請求項1乃至10の何れか1項に記載のプログラム。
【請求項18】
原料油を触媒に通油して生成油を得る製油装置の運転を支援する情報処理装置であって、
ユーザによる前記製油装置の運転条件の指定を受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた運転条件を指定運転条件として取得するとともに、予定されている前記製油装置の運転条件である予定運転条件と、前記触媒の触媒劣化関数と、前記製油装置に関する運転実績データと、を取得する取得部と、
前記触媒劣化関数と前記運転実績データと前記予定運転条件とに基づき、当該予定運転条件を満たすために必要な前記触媒の反応温度である第1温度を予測し、且つ、前記触媒劣化関数と前記運転実績データと前記指定運転条件とに基づき、当該指定運転条件を満たすために必要な前記触媒の反応温度である第2温度を予測する予測部と、
を備える情報処理装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラム及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、原料油を触媒に通油して生成油を得る製油装置が知られている。この製油装置に使用される触媒は使用により劣化するため、製油装置の運転条件が変化してしまう。
【0003】
これに関して、特許文献1には、ユーザの予定している製油装置の運転条件である予定運転条件で製油装置を運転した場合よりも適切な運転条件を触媒劣化関数やプラント情報等に基づき算出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6441551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、触媒劣化関数やプラント情報によっては適切な運転条件を算出できない場合があった。
【0006】
本開示はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、製油装置の適切な運転条件をユーザが検討することができるプログラム及び情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある態様に係るプログラムは、原料油を触媒に通油して生成油を得る製油装置の運転を支援するプログラムであって、コンピュータを、予定されている前記製油装置の運転条件である予定運転条件と、前記触媒の触媒劣化関数と、前記製油装置に関する運転実績データと、を取得する取得部、ユーザによる前記製油装置の運転条件の指定がある場合に、指定された運転条件を指定運転条件として受け付ける受付部、前記触媒劣化関数と前記運転実績データと前記予定運転条件とに基づき、当該予定運転条件を満たすために必要な前記触媒の反応温度である第1温度を予測し、且つ、前記触媒劣化関数と前記運転実績データと前記指定運転条件とに基づき、当該指定運転条件を満たすために必要な前記触媒の反応温度である第2温度を予測する予測部、として機能させる。
【0008】
本開示の別の態様に係る情報処理装置は、原料油を触媒に通油して生成油を得る製油装置の運転を支援する情報処理装置であって、ユーザによる前記製油装置の運転条件の指定を受け付ける受付部と、前記受付部が受け付けた運転条件を指定運転条件として取得するとともに、予定されている前記製油装置の運転条件である予定運転条件と、前記触媒の触媒劣化関数と、前記製油装置に関する運転実績データと、を取得する取得部と、前記触媒劣化関数と前記運転実績データと前記予定運転条件とに基づき、当該予定運転条件を満たすために必要な前記触媒の反応温度である第1温度を予測し、且つ、前記触媒劣化関数と前記運転実績データと前記指定運転条件とに基づき、当該指定運転条件を満たすために必要な前記触媒の反応温度である第2温度を予測する予測部と、を備える。
【0009】
本開示は、プログラムの一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、情報処理装置として実現され得たり、情報処理装置を含むシステムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、製油装置の適切な運転条件をユーザが検討することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る支援システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係るサーバ装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係るサーバ装置の機能部構成の一例を示す図である。
図4】固有触媒劣化関数を算出する算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】触媒の要求温度を予測する予測処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】製油装置の選択画面の一例を示す図である。
図7】予定運転条件に基づく第1温度変化データの予測結果を示す二次元グラフの一例を示す図である。
図8】条件指定画面の一例を示す図である。
図9】指定運転条件に基づく第2温度変化データの予測結果を示す二次元グラフの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最初に、本開示のいくつかの態様について説明する。
本開示の第1態様に係るプログラムは、原料油を触媒に通油して生成油を得る製油装置の運転を支援するプログラムであって、コンピュータを、予定されている前記製油装置の運転条件である予定運転条件と、前記触媒の触媒劣化関数と、前記製油装置に関する運転実績データと、を取得する取得部、ユーザによる前記製油装置の運転条件の指定がある場合に、指定された運転条件を指定運転条件として受け付ける受付部、前記触媒劣化関数と前記運転実績データと前記予定運転条件とに基づき、当該予定運転条件を満たすために必要な前記触媒の反応温度である第1温度を予測し、且つ、前記触媒劣化関数と前記運転実績データと前記指定運転条件とに基づき、当該指定運転条件を満たすために必要な前記触媒の反応温度である第2温度を予測する予測部、として機能させる。
【0013】
本開示の第2態様に係るプログラムでは、第1態様において、前記予測部は、前記触媒劣化関数と前記運転実績データとに基づき、前記製油装置固有の固有触媒劣化関数を算出する関数算出部と、前記固有触媒劣化関数と前記予定運転条件とに基づき、前記触媒の第1劣化度を算出し、且つ、前記固有触媒劣化関数と前記指定運転条件とに基づき、前記触媒の第2劣化度を算出する劣化度算出部と、を含み、前記予測部は、前記第1劣化度に基づき前記第1温度を予測し、且つ、前記第2劣化度に基づき前記第2温度を予測する。
【0014】
本開示の第3態様に係るプログラムでは、第2態様において、前記関数算出部は、予め定められたタイミングにて、前記固有触媒劣化関数を算出して記憶し、前記受付部は、前記ユーザの予測指示を受け付け、前記劣化度算出部は、前記ユーザの予測指示を受け付けた場合に、記憶されている前記固有触媒劣化関数と前記予定運転条件とに基づき、前記第1劣化度を算出し、且つ、記憶されている前記固有触媒劣化関数と前記指定運転条件とに基づき、前記第2劣化度を算出する。
【0015】
本開示の第4態様に係るプログラムでは、第2態様において、前記劣化度算出部は、前記固有触媒劣化関数と前記予定運転条件とに基づき、前記第1劣化度と時間との関係を表す第1劣化度変化データを生成し、且つ、前記固有触媒劣化関数と前記指定運転条件とに基づき、前記第2劣化度と時間との関係を表す第2劣化度変化データを生成し、前記予測部は、前記第1劣化度変化データに基づき、前記第1温度と時間との関係を表す第1温度変化データを生成し、且つ、前記第2劣化度変化データに基づき、前記第2温度と時間との関係を表す第2温度変化データを生成する。
【0016】
本開示の第5態様に係るプログラムでは、第4態様において、前記取得部は、前記製油装置に予め定められている上限温度を取得し、前記予測部は、前記第1温度変化データにおいて前記第1温度が前記上限温度以上となる時間に基づき前記触媒の第1触媒寿命を予測し、前記第2温度変化データにおいて前記第2温度が前記上限温度以上となる時間に基づき前記触媒の第2触媒寿命を予測する。
【0017】
本開示の第6態様に係るプログラムでは、第4態様において、前記予測部は、前記第1温度変化データと、前記第2温度変化データと、を共通の表示軸上に表示したグラフを出力する。
【0018】
本開示の第7態様に係るプログラムでは、第6態様において、前記共通の表示軸は、前記触媒の要求温度と、前記製油装置の運転時間と、を含む。
【0019】
本開示の第8態様に係るプログラムでは、第7態様において、前記運転実績データは、前記製油装置の運転時間における前記触媒の要求温度を示す温度実績データを含み、前記予測部は、前記温度実績データを前記グラフに表示する。
【0020】
本開示の第9態様に係るプログラムでは、第8態様において、前記予測部は、前記固有触媒劣化関数と前記予定運転条件とに基づき、前記温度実績データを補正して補正温度データを取得し、当該補正温度データを前記グラフに表示する。
【0021】
本開示の第10態様に係るプログラムでは、第8態様において、前記予測部は、前記固有触媒劣化関数と前記運転実績データに含まれる過去に使用された実績運転条件とに基づき、前記温度実績データに対応する過去の運転時間の温度を算出した算出温度データを取得し、当該算出温度データを前記グラフに表示する。
【0022】
本開示の第11態様に係るプログラムでは、第2態様乃至第10態様の何れか1つの態様において、前記関数算出部は、任意の運転期間においては、前記触媒劣化関数と前記前運転期間の前記運転実績データとに基づき、前記固有触媒劣化関数を算出する。
【0023】
本開示の第12態様に係るプログラムでは、第11態様において、前記任意の運転期間を前運転期間とし、前記任意の運転期間とは異なるとともに前記任意の運転期間が経過した後の運転期間を後運転期間としたとき、前記関数算出部は、前記後運転期間においては、前記前運転期間に算出された前記固有触媒劣化関数と前記運転実績データとに基づき、前記後運転期間の前記固有触媒劣化関数を算出する。
【0024】
本開示の第13態様に係るプログラムでは、第12態様において、前記関数算出部は、前記前運転期間における複数の任意の時刻に対して算出された複数の前記触媒の残活性割合の各々を、前記運転実績データに含まれる過去に使用された実績運転条件により補正し、補正された複数の前記残活性割合に基づいて、前記前運転期間の前記固有触媒劣化関数を更新し、更新された前記固有触媒劣化関数と前記後運転期間の前記運転実績データとに基づき、前記後運転期間の前記固有触媒劣化関数を算出する。
【0025】
本開示の第14態様に係るプログラムでは、第12態様において、前記関数算出部は、前記後運転期間の前記固有触媒劣化関数を算出してから所定期間が経過した後、当該固有触媒劣化関数と前記所定期間の間に更新された前記運転実績データとに基づき、前記固有触媒劣化関数を更新する。
【0026】
本開示の第15態様に係るプログラムでは、第1態様乃至第10態様の何れか1つの態様において、前記受付部は、複数の前記指定運転条件と、当該複数の指定運転条件の各々に対応する運転期間である複数の指定運転期間と、の指定を受け付け、前記予測部は、前記複数の指定運転条件と前記複数の指定運転期間とに基づき、前記第2温度を予測する。
【0027】
本開示の第16態様に係るプログラムでは、第1態様乃至第10態様の何れか1つの態様において、前記予定運転条件は、前記原料油の通油量に関する原料油通油量と、前記原料油の蒸留性状に関する原料油蒸留性状と、前記原料油の硫黄濃度に関する原料油硫黄濃度と、前記生成油の性状に関する生成油性状と、前記生成油の硫黄濃度に関する生成油硫黄濃度と、のうち少なくとも1つを含む。
【0028】
本開示の第17態様に係るプログラムでは、第1態様乃至第10態様の何れか1つの態様において、前記指定運転条件は、前記原料油の通油量に関する原料油通油量と、前記原料油の蒸留性状に関する原料油蒸留性状と、前記原料油の硫黄濃度に関する原料油硫黄濃度と、前記生成油の性状に関する生成油性状と、前記生成油の硫黄濃度に関する生成油硫黄濃度と、のうち少なくとも1つを含む。
【0029】
本開示の第18態様に係る情報処理装置は、原料油を触媒に通油して生成油を得る製油装置の運転を支援する情報処理装置であって、ユーザによる前記製油装置の運転条件の指定を受け付ける受付部と、前記受付部が受け付けた運転条件を指定運転条件として取得するとともに、予定されている前記製油装置の運転条件である予定運転条件と、前記触媒の触媒劣化関数と、前記製油装置に関する運転実績データと、を取得する取得部と、前記触媒劣化関数と前記運転実績データと前記予定運転条件とに基づき、当該予定運転条件を満たすために必要な前記触媒の反応温度である第1温度を予測し、且つ、前記触媒劣化関数と前記運転実績データと前記指定運転条件とに基づき、当該指定運転条件を満たすために必要な前記触媒の反応温度である第2温度を予測する予測部と、を備える。
【0030】
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態(以下、適宜、「本実施形態」と称す。)について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素及びステップに対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限り、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
【0031】
<全体構成>
図1は、本実施形態に係る支援システム1の全体構成の一例を示すブロック図である。
【0032】
図1に示すように、支援システム1は、原料油を触媒に通油して生成油を得る製油装置Oの運転を支援するシステムである。この製油装置Oは、製油所Rに設置される。製油装置Oとしては、触媒を利用するものであれば特に限定されないが、硫黄などの不純物を含む石油留分を、触媒の存在下で水素と反応させる水素化脱硫方式を使って精製する水素化脱硫装置や、触媒粒子を固定充填して触媒反応を行う固定床式触媒反応器を用いた装置等が挙げられる。
【0033】
支援システム1は、サーバ装置10と、第一端末装置12と、第二端末装置14と、を備える。これらの装置は、イントラネットやインターネット、電話回線等の通信ネットワークNTを介して通信可能に接続されている。
【0034】
サーバ装置10は、製油装置Oの運転を支援するコンピュータの一例である。サーバ装置10は、触媒に将来要求される要求温度を予測し、予測結果を第二端末装置14に送信する。なお、触媒は、劣化するほど同じ性能を維持するために要求される反応温度が高くなる。すなわち、「要求温度」とは、同じ性能を維持するために必要な反応温度のことである。
【0035】
第一端末装置12は、製油所Rの担当者の操作により又は自動的に、製油装置Oに設置された計器から出力される製油装置Oの運転実績データをサーバ装置10に送信する。なお、運転実績データは、製油装置Oからサーバ装置10に直接されてもよい。
【0036】
第二端末装置14は、サーバ装置10から受信した予測結果を画面に出力する。なお、第二端末装置14は、以下では第一端末装置12と異なる装置として説明するが、第一端末装置12と同一の装置であってもよい。
【0037】
<ハードウェア構成>
図2は、本実施形態に係るサーバ装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0038】
図2に示すように、サーバ装置10は、プロセッサ20と、メモリ22と、入力装置24と、表示装置26と、記憶装置28と、通信装置30と、を備える。
【0039】
プロセッサ20は、各種データを演算処理したり、表示装置26等を制御処理したりする。
【0040】
メモリ22は、各種データを格納する。
【0041】
入力装置24は、ユーザの操作を受け付けて、当該操作をサーバ装置10に入力する。
【0042】
表示装置26は、文字や画像を出力する。
【0043】
記憶装置28は、非一時的コンピュータ可読命令記録媒体としてのハードディスクドライブやソリッドステートドライブ等で構成される。この記憶装置28は、本実施形態に係るプログラムを含む、サーバ装置10における処理の実行に必要な各種プログラムや各種の情報、及び処理結果の情報を記憶する。なお、非一時的コンピュータ可読命令記録媒体としては、他にも、磁気テープやフレキシブルディスク、光ディスク、デジタルバーサタイルディスク、ブルーレイディスク、光磁気ディスク、メモリーカード、USBメモリ等の可搬型記録媒体が挙げられる。
【0044】
通信装置30は、外部の装置と通信するための通信インターフェース等で構成される。通信装置30は、例えば、第二端末装置14との間で各種の情報を送受信する。
【0045】
なお、サーバ装置10は、専用又は汎用のサーバ・コンピュータなどの情報処理装置を用いて実現することができる。また、サーバ装置10は、単一の情報処理装置より構成されるものであっても、通信ネットワークNT上に分散した複数の情報処理装置より構成されるものであってもよい。また、図2は、サーバ装置10が有する主要なハードウェア構成の一部を示しているに過ぎず、サーバ装置10は、サーバが一般的に備える他の構成を備えることができる。また、第一端末装置12や第二端末装置14のハードウェア構成も、サーバ装置10と同様の構成を備えることができる。
【0046】
<機能部構成>
図3は、本実施形態に係るサーバ装置10の機能部構成の一例を示す図である。
【0047】
図3に示すように、サーバ装置10は、機能部構成として、記憶部50と、取得部52と、受付部54と、予測部56と、を備える。これらの機能部構成は、記憶装置28に格納されているプログラムをプロセッサ20がメモリ22に展開して実行することにより実現される。
【0048】
記憶部50には、装置データ50Aと、予定運転条件50Bと、運転実績データ50Cと、触媒劣化関数50Dと、固有触媒劣化関数50Eと、が記憶される。
【0049】
装置データ50Aは、製油装置Oの1回の運転で基本的に変更しないデータであり、例えば、製油装置Oの識別データ、製油装置Oの種類データ、触媒の種類データ、触媒の充填量データ、運転上限温度データ、目標運転期間データ、温度上限圧力データ、及び、運転上限処理量データ等が挙げられる。
【0050】
予定運転条件50Bは、製油装置Oの運転条件として予め定められた(予定された)条件である。この予定運転条件50Bは、原料油の通油量に関する原料油通油量と、原料油の蒸留性状に関する原料油蒸留性状と、原料油の硫黄濃度に関する原料油硫黄濃度と、生成油の性状に関する生成油性状と、生成油の硫黄濃度に関する生成油硫黄濃度データと、のうち少なくとも1つを含む。原料油の蒸留性状に関する原料油蒸留性状としては、未脱の軽油、すなわち直留軽油(R-LGO)の混合比率データ、製油装置Oの流動接触分解装置から留出する軽油留分、すなわち、接触分解軽油(LCO)の混合比率データ、製油装置Oの流動接触分解装置から留出する灯油~軽油留分(FCC-KERO)の混合比率データ等が挙げられる。なお、上述した予定運転条件50Bは、例えば、原料油の在庫状態に関する原料油在庫データと、生成油の在庫状態に関する生成油在庫データと、原料油に対して予測される供給量に関する原料油供給データと、生成油に対して予測される需要量に関する生成油需要データと、製油装置Oの生成油の生産能力と、のうち少なくとも1つに基づいて算出される。
【0051】
運転実績データ50Cは、第一端末装置12によって定期的に送信されることで更新される製油装置Oに関するデータである。製油装置Oに関するデータとは、製油装置Oそのもののデータであることを意味するとともに、製油装置Oそのもののデータではなく、製油装置Oの実験装置のデータであってもよいことを意味する。製油装置Oの実験装置とは、例えば、製油装置Oよりも比較的小規模な試験装置であり、ラボスケール、ベンチスケール、またはパイロットスケールで製油装置Oの運転に必要なデータを収集できる装置である。この運転実績データ50Cは、製油装置Oの運転時間における触媒の要求温度を示す温度実績データと、製油装置Oの運転時間における水素分圧を示す圧力実績データと、製油装置Oの運転時間における原料油の通油量を示す原料油通油量実績データと、のうち少なくとも1つを含む。また、運転実績データ50Cは、過去に製油装置Oに使用された実績運転条件を含んでもよい。
【0052】
触媒劣化関数50Dは、触媒の種類毎に記憶されている。この触媒劣化関数50Dは、膨大な情報から経験的に導いた関数である。触媒劣化関数50Dは、例えば、文献に記載されている理論式等の技術情報と、製油装置Oの使用を通じて得られた様々な運転条件における生成油の性状や触媒の劣化度合い等に関する知見と、製油装置Oの実験装置の使用を通じて得られた様々な運転条件における生成油の性状や触媒の劣化度合い等に関する知見と、製油装置Oと同等の機能を有する他の製油装置の使用を通じて得られた様々な運転条件における生成油の性状や触媒の劣化度合い等に関する知見と、の少なくとも1つを利用して導出される。なお、製油装置Oと同等の機能を有する他の製油装置とは、例えば、製油所Rに設置されている製油装置Oが水素化脱硫装置である場合は、製油所Rに設置されている他の水素化脱硫装置や製油所R以外に設置されている水素化脱硫装置等が挙げられる。この触媒劣化関数50Dは、例えば、運転日数の関数として表したものである。
【0053】
固有触媒劣化関数50Eは、製油装置O毎に算出されて記憶されている。ここで、触媒劣化関数50Dは、製油装置Oの仕様、原料油の性状、得ようとする生成油の性状などによって補正しなければ、正確に触媒の劣化度合いを表すことが難しい。そこで、サーバ装置10は、例えば定期的に、運転実績データ50C等に基づき触媒劣化関数50Dに適切な修正を施し、ユーザの製油装置Oに応じたユーザ固有の固有触媒劣化関数50Eを算出し、記憶部50に記憶する。
【0054】
取得部52は、予定運転条件50Bと、触媒劣化関数50D又は/及び固有触媒劣化関数50Eを含む触媒劣化関数と、運転実績データ50Cと、を取得する。また、取得部52は、製油装置Oに予め定められている上限温度データを含む装置データ50Aを取得してもよい。
【0055】
受付部54は、ユーザによる製油装置Oの運転条件の指定がある場合に、指定された運転条件を指定運転条件として受け付ける。また、受付部54は、ユーザの予測指示を受け付けてもよい。なお、指定運転条件は、予定運転条件50Bと同様の条件を含む。例えば、指定運転条件は、原料油の通油量に関する原料油通油量と、原料油の蒸留性状に関する原料油蒸留性状と、原料油の硫黄濃度に関する原料油硫黄濃度と、生成油の性状に関する生成油性状と、生成油の硫黄濃度に関する生成油硫黄濃度と、のうち少なくとも1つを含む。
【0056】
予測部56は、装置データ50Aと触媒劣化関数50D(又は固有触媒劣化関数50E)と運転実績データ50Cと予定運転条件50Bとに基づき、将来において当該予定運転条件50Bを満たすために必要な触媒の反応温度である第1温度を予測する。また、予測部56は、装置データ50Aと触媒劣化関数50D(又は固有触媒劣化関数50E)と運転実績データ50Cと指定運転条件とに基づき、将来において当該指定運転条件を満たすために必要な触媒の反応温度である第2温度を予測する。
【0057】
上記予測のために、予測部56は、関数算出部56Aと、劣化度算出部56Bと、を備える。
【0058】
関数算出部56Aは、予め定められたタイミングにて、触媒劣化関数50Dと運転実績データ50Cとに基づき、製油装置固有の固有触媒劣化関数50Eを算出し、記憶部50に記憶する。
【0059】
この関数算出部56Aは、任意の運転期間を前運転期間とし、任意の運転期間とは異なるとともに任意の運転期間が経過した後の運転期間を後運転期間としたとき、前運転期間においては、触媒劣化関数50Dと前運転期間の運転実績データ50Cとに基づき、固有触媒劣化関数50Eを算出する。前運転期間から後運転期間への切り替わりは、例えば、前運転期間において製油装置Oを目標運転期間(目標運転日数)まで運転した後に、製油装置Oに充填されていた触媒を新たな触媒に交換し、製油装置Oを運転し直したときにおきる。
また、関数算出部56Aは、後運転期間においては、前運転期間に算出された固有触媒劣化関数50Eと後運転期間の運転実績データ50Cとに基づき、後運転期間の固有触媒劣化関数50Eを算出する。この後運転期間の固有触媒劣化関数50Eを算出する際、関数算出部56Aは、前運転期間における複数の任意の時刻に対して算出された複数の触媒の残活性割合の各々を、運転実績データ50Cに含まれる過去に使用された実績運転条件により補正し、補正された複数の残活性割合に基づいて、前運転期間の固有触媒劣化関数50Eを更新し、更新された固有触媒劣化関数50Eと後運転期間の運転実績データ50Cとに基づき、後運転期間の固有触媒劣化関数50Eを算出してもよい。具体的には、関数算出部56Aは、前運転期間における複数の任意の時刻に対して算出された複数の触媒の残活性割合の各々を、運転実績データ50Cに含まれるとともに複数の残活性割合の各々に対応する当該任意の時刻における実績運転条件により補正してもよい。また、関数算出部56Aは、後運転期間の固有触媒劣化関数50Eを算出してから所定期間が経過した後、当該固有触媒劣化関数50Eと所定期間の間に更新された運転実績データ50Cとに基づき、固有触媒劣化関数50Eを更新してもよい。
【0060】
劣化度算出部56Bは、固有触媒劣化関数50Eと予定運転条件50Bとに基づき、触媒の第1劣化度を算出し、且つ、固有触媒劣化関数50Eと指定運転条件とに基づき、触媒の第2劣化度を算出する。
具体的には、劣化度算出部56Bは、受付部54がユーザの予測指示を受け付けた場合に、記憶部50に記憶されている固有触媒劣化関数50Eと予定運転条件50Bとに基づき、第1劣化度を算出し、且つ、記憶部50に記憶されている固有触媒劣化関数50Eと指定運転条件とに基づき、第2劣化度を算出する。より具体的には、劣化度算出部56Bは、記憶部50に記憶されている固有触媒劣化関数50Eと予定運転条件50Bとに基づき、第1劣化度と時間との関係を表す第1劣化度変化データを生成する。また、劣化度算出部56Bは、記憶部50に記憶されている固有触媒劣化関数50Eと指定運転条件とに基づき、第2劣化度と時間との関係を表す第2劣化度変化データを生成する。
【0061】
劣化度算出部56Bによる算出の後、予測部56は、第1劣化度に基づき第1温度を予測し、且つ、第2劣化度に基づき第2温度を予測する。具体的には、予測部56は、第1劣化度変化データに基づき、第1温度と時間との関係を表す第1温度変化データを生成し、且つ、第2劣化度変化データに基づき、第2温度と時間との関係を表す第2温度変化データを生成する。また、予測部56は、第1温度変化データにおいて第1温度が装置データ50Aの示す上限温度以上となる時間に基づき触媒の第1触媒寿命を予測し、第2温度変化データにおいて第2温度が上限温度以上となる時間に基づき触媒の第2触媒寿命を予測してもよい。
【0062】
予測部56は、第1温度変化データと、第2温度変化データと、を共通の表示軸上に表示したグラフを第二端末装置14に出力する。なお、このグラフは、第1温度変化データと第2温度変化データとが比較可能にユーザが視認可能であれば、二次元グラフであっても、三次元グラフであってもよい。この共通の表示軸は、触媒の要求温度と、製油装置Oの運転時間と、を含む。また、予測部56は、運転実績データ50Cに含まれる温度実績データをグラフに表示する。また、予測部56は、固有触媒劣化関数50Eと予定運転条件50Bとに基づき、温度実績データを補正して補正温度データを取得し、当該補正温度データをグラフに表示してもよい。また、予測部56は、固有触媒劣化関数50Eと運転実績データ50Cに含まれる過去に使用された実績運転条件とに基づき、温度実績データに対応する過去の運転時間の温度を算出した算出温度データを取得し、当該算出温度データをグラフに表示してもよい。
【0063】
<処理の流れ>
図4は、固有触媒劣化関数50Eを算出する算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。この算出処理は、例えば、サーバ装置10が起動されたときや所定時間毎に実行され、且つ、製油装置O毎に実行される。なお、以下の算出処理の内容及び処理の順番は適宜変更することができる。
【0064】
(ステップSP10)
関数算出部56Aは、例えば1週間や1ヵ月、6ヵ月等の所定期間が経過したか否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定された場合には処理はステップSP11の処理に移行し、当該判定が否定判定された場合には図4に示す一連の算出処理が終了する。
【0065】
(ステップSP11)
取得部52は、製油装置Oの装置データ50Aと運転実績データ50Cとを取得する。また、取得部52は、取得した装置データ50Aに含まれる触媒の種類に対応する触媒劣化関数50Dを取得する。また、取得部52は、製油装置Oの固有触媒劣化関数50Eがある場合には当該固有触媒劣化関数50Eも取得する。そして、処理は、ステップSP12の処理に移行する。
【0066】
(ステップSP12)
関数算出部56Aは、製油装置Oの今回の運転期間をN回目(Nラン)の運転期間としたとき、取得部52が取得したデータの中に、N-1ラン目の固有触媒劣化関数50Eが有るか否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定された場合には処理はステップSP14の処理に移行し、当該判定が否定判定された場合には処理はステップSP13の処理に移行する。
【0067】
(ステップSP13)
関数算出部56Aは、デフォルトの触媒劣化関数、すなわち、触媒劣化関数50Dと、運転実績データ50Cとに基づき、固有触媒劣化関数50Eを算出し、記憶部50に記憶する。具体的には、関数算出部56Aは、触媒劣化関数50Dに運転実績データ50Cの温度実績データを代入して、固有触媒劣化関数50Eの係数を算出することで、固有触媒劣化関数50Eを算出する。そして、図4に示す一連の算出処理が終了する。
【0068】
(ステップSP14)
関数算出部56Aは、取得部52が取得したデータの中に、Nラン目の固有触媒劣化関数50Eが有るか否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定された場合には処理はステップSP16の処理に移行し、当該判定が否定判定された場合には処理はステップSP15の処理に移行する。
【0069】
(ステップSP15)
関数算出部56Aは、直前のラン、すなわちN-1ラン目の固有触媒劣化関数50Eと、運転実績データ50Cとに基づき、Nラン目の固有触媒劣化関数50Eを算出し、記憶部50に記憶する。具体的には、関数算出部56Aは、N-1ラン目の固有触媒劣化関数50Eに運転実績データ50Cの温度実績データを代入して、Nラン目の固有触媒劣化関数50Eの係数を算出することで、Nラン目の固有触媒劣化関数50Eを算出する。
ここで、固有触媒劣化関数50Eには、触媒の残活性割合が含まれている。本実施形態では、触媒の残活性割合は、そのままの値を使用せずに、補正パラメータに基づき補正した値を使用してもよい。すなわち、補正した残活性割合を含むN-1ラン目の固有触媒劣化関数50Eに基づき、第N運転期間(Nラン目)の固有触媒劣化関数50Eを算出してもよい。補正パラメータとしては、水素分圧データと、水素油比データと、原料油組成データと、脱硫反応性データと、のうち少なくとも何れか1つが挙げられる。そして、図4に示す一連の算出処理が終了する。
【0070】
(ステップSP16)
関数算出部56Aは、Nラン目の固有触媒劣化関数50Eを算出してから所定期間が経過した後、当該固有触媒劣化関数50Eと所定期間の間に更新された運転実績データ50Cとに基づき、Nラン目の固有触媒劣化関数50Eを更新し、記憶部50に記憶する。具体的には、関数算出部56Aは、Nラン目の固有触媒劣化関数50Eに更新された運転実績データ50Cの温度実績データを代入して、Nラン目の固有触媒劣化関数50Eの係数を算出することで、Nラン目の固有触媒劣化関数50Eを算出(更新)する。そして、図4に示す一連の算出処理が終了する。
【0071】
図5は、触媒の要求温度を予測する予測処理の流れの一例を示すフローチャートである。この予測処理は、例えば、サーバ装置10にて所定のプログラムが実行されたときに行われる。なお、以下の予測処理の内容及び処理の順番は適宜変更することができる。
【0072】
(ステップSP20)
予測部56は、第二端末装置14の要求に応じて、製油所R、言い換えれば製油装置Oの選択画面を第二端末装置14に表示出力する。
【0073】
図6は、製油装置Oの選択画面100の一例を示す図である。
【0074】
図6に示すように、選択画面100は、選択欄102と、表示欄104と、条件指定ボタン106と、を含む。選択欄102は、ユーザによる製油装置Oの選択操作を受け付ける欄である。表示欄104は、選択欄102にて選択された製油装置Oの装置データ50Aや予定運転条件50B等の各種情報が表示されている。条件指定ボタン106は、運転条件を指定する場合にユーザにより押下されるボタンである。
【0075】
図5に戻って、処理は、ステップSP21の処理に移行する。
【0076】
(ステップSP21)
受付部54は、選択画面100にてユーザによる製油装置Oの選択がされたか否か、言い換えればユーザによる予測指示を受け付けたか否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定された場合には処理はステップSP22の処理に移行し、当該判定が否定判定された場合には図5に示す一連の予測処理が終了する。
【0077】
(ステップSP22)
取得部52は、予定運転条件50B等を取得する。具体的には、取得部52は、予定運転条件50Bと、装置データ50Aと、運転実績データ50Cと、固有触媒劣化関数50Eと、を取得する。そして、処理は、ステップSP23の処理に移行する。
【0078】
(ステップSP23)
取得部52は、ステップSP22にて取得したもののうち全部又は一部、例えば装置データ50Aや予定運転条件50B等を選択画面100の表示欄104に表示する。そして、処理は、ステップSP24の処理に移行する。
【0079】
(ステップSP24)
予測部56は、以下のステップSP24A~ステップSP24Cの処理を経て、予定運転条件50Bを満たすために必要な触媒の反応温度である第1温度と時間との関係を表す第1温度変化データを生成(予測)する。
【0080】
(ステップSP24A)
予測部56は、取得部52が取得した固有触媒劣化関数50Eと予定運転条件50Bとに基づき、取得部52が取得した運転実績データ50Cに含まれる温度実績データを補正して補正温度データを取得する。そして、処理は、ステップSP24Bの処理に移行する。
【0081】
(ステップSP24B)
劣化度算出部56Bは、固有触媒劣化関数50Eと予定運転条件50Bとに基づき、触媒の第1劣化度と時間との関係を表す第1劣化度変化データを生成する。そして、処理は、ステップSP24Cの処理に移行する。
【0082】
(ステップSP24C)
予測部56は、第1劣化度変化データに基づき、第1温度と時間(将来の時間を含む)との関係を表す第1温度変化データを生成(予測)する。そして、処理は、ステップSP25の処理に移行する。
【0083】
(ステップSP25)
予測部56は、第1温度変化データの予測結果を第二端末装置14に出力する。具体的には、予測部56は、第1温度変化データを表示した二次元グラフを出力する。
【0084】
図7は、予定運転条件50Bに基づく第1温度変化データの予測結果を示す二次元グラフ200の一例を示す図である。
【0085】
二次元グラフ200には、第1温度変化データ202が表示されている。また、二次元グラフ200には、温度実績データ204と、補正温度データ206と、上限温度208と、目標運転日数210と、が表示されている。なお、温度実績データ204は、運転実績データ50Cに含まれているデータである。補正温度データ206は、ステップSP24Aで取得されたデータである。上限温度208は、装置データ50Aの上限温度データが示す温度である。目標運転日数210は、装置データ50Aの目標運転期間データが示す日数であり、製油装置Oが目標とする日数である。
【0086】
図5に戻って、処理は、ステップSP26の処理に移行する。
【0087】
(ステップSP26)
受付部54は、選択画面100にて条件指定ボタン106が押下されたか否かを判定する。そして、当該判定が肯定判定された場合には処理はステップSP27の処理に移行し、当該判定が否定判定された場合には図5に示す一連の予測処理が終了する。
【0088】
(ステップSP27)
予測部56は、条件指定画面を第二端末装置14に表示出力する。この条件指定画面では、指定運転条件として、原料油の通油量に関する原料油通油量を指定したり、原料油の蒸留性状に関する原料油蒸留性状を指定したり、原料油の硫黄濃度に関する原料油硫黄濃度を指定したり、生成油の性状に関する生成油性状を指定したり、生成油の硫黄濃度に関する原料油硫黄濃度を指定したりすることができる。
【0089】
図8は、条件指定画面300の一例を示す図である。
【0090】
図8に示すように、条件指定画面300では、指定欄302と、指定欄304と、指定欄306と、指定欄308と、を含む。指定欄302では、直留軽油(R-LGO)の混合比率をユーザが指定することができる。指定欄304では、接触分解軽油(LCO)の混合比率をユーザが指定することができる。指定欄306では、灯油~軽油留分(FCC-KERO)の混合比率をユーザが指定することができる。
【0091】
図5に戻って、処理は、ステップSP28の処理に移行する。
【0092】
(ステップSP28)
受付部54は、条件指定画面300において、ユーザによる指定運転条件の指定を受け付ける。言い換えれば、受付部54は、指定運転条件に基づく予測の予測指示を受け付ける。そして、処理は、ステップSP29の処理に移行する。
【0093】
(ステップSP29)
予測部56は、以下のステップSP29A~ステップSP29Cの処理を経て、受付部54が受け付けた指定運転条件を満たすために必要な触媒の反応温度である第2温度と時間との関係を表す第2温度変化データを生成(予測)する。
【0094】
(ステップSP29A)
予測部56は、固有触媒劣化関数50Eと、運転実績データ50Cに含まれる過去に使用された実績運転条件とに基づき、温度実績データに対応する過去の運転時間における触媒の要求温度を示す算出温度データを算出する。そして、処理は、ステップSP29Bの処理に移行する。
【0095】
(ステップSP29B)
劣化度算出部56Bは、固有触媒劣化関数50Eと受付部54が受け付けた指定運転条件とに基づき、触媒の第2劣化度と時間との関係を表す第2劣化度変化データを生成する。そして、処理は、ステップSP29Cの処理に移行する。
【0096】
(ステップSP29C)
予測部56は、第2劣化度変化データに基づき、第2温度と時間(将来の時間を含む)との関係を表す第2温度変化データを生成(予測)する。そして、処理は、ステップSP30の処理に移行する。
【0097】
(ステップSP30)
予測部56は、第2温度変化データの予測結果を第二端末装置14に出力する。具体的には、予測部56は、第2温度変化データを表示した二次元グラフを出力する。
【0098】
図9は、指定運転条件に基づく第2温度変化データ402の予測結果を示す二次元グラフ400の一例を示す図である。
【0099】
二次元グラフ400には、第1温度変化データ202と、第2温度変化データ402と、が共通の表示軸上に表示されている。この共通の表示軸は、触媒の要求温度と、製油装置Oの運転時間と、を含む。また、二次元グラフ400には、運転実績データ50Cに含まれる温度実績データ204と、ステップSP24Aで取得された補正温度データ206と、上限温度208と、目標運転日数210と、ステップSP29Aで算出された算出温度データ404と、が表示されている。
【0100】
<効果>
以上、本実施形態では、プログラムが、コンピュータとしてのサーバ装置10を、予定運転条件50Bと、触媒劣化関数50D又は固有触媒劣化関数50Eと、製油装置Oに関する運転実績データ50Cと、を取得する取得部52、ユーザによる製油装置Oの運転条件の指定がある場合に、指定された運転条件を指定運転条件として受け付ける受付部54、として機能させる。そして、プログラムがサーバ装置10を更に、触媒劣化関数50Dと運転実績データ50Cと予定運転条件50Bとに基づき、当該予定運転条件50Bを満たすために必要な触媒の反応温度である第1温度を予測し、且つ、触媒劣化関数50Dと運転実績データ50Cと指定運転条件とに基づき、当該指定運転条件を満たすために必要な触媒の反応温度である第2温度を予測する予測部56、として機能させる。
この構成によれば、予定運転条件50Bに基づく第1温度と指定運転条件に基づく第2温度とを比較しながらユーザが指定運転条件の指定を繰り返して当該指定運転条件を調整することができる。これにより、第1温度よりも理想的な第2温度となるような製油装置Oの適切な運転条件をユーザが容易に検討(模索)することができる。また、この構成によれば、予定運転条件50Bを取得した後に、指定運転条件として受け付けるので、ユーザは予定運転条件50Bを参考にしながら運転条件を指定することができ、もって運転条件の指定が容易となる。
【0101】
また、本実施形態では、予測部56は、触媒劣化関数50Dと運転実績データ50Cとに基づき、固有触媒劣化関数50Eを算出する関数算出部56Aと、固有触媒劣化関数50Eと予定運転条件50Bとに基づき、触媒の第1劣化度を算出し、且つ、固有触媒劣化関数50Eと指定運転条件とに基づき、触媒の第2劣化度を算出する劣化度算出部56Bと、を含み、予測部56は、第1劣化度に基づき第1温度を予測し、且つ、第2劣化度に基づき第2温度を予測する。
この構成によれば、製油装置固有の固有触媒劣化関数50Eに基づき、第1温度や第2温度を予測するので、第1温度や第2温度の予測精度を向上することができる。
【0102】
また、関数算出部56Aは、予め定められたタイミングにて、固有触媒劣化関数50Eを算出して記憶し、受付部54は、ユーザの予測指示を受け付け、劣化度算出部56Bは、受付部54Aがユーザの予測指示を受け付けた場合に、記憶されている固有触媒劣化関数50Eと予定運転条件50Bとに基づき、第1劣化度を算出し、且つ、記憶されている固有触媒劣化関数50Eと指定運転条件とに基づき、第2劣化度を算出する。
この構成によれば、第1劣化度及び第2劣化度を算出する際は、固有触媒劣化関数50Eを算出する必要がないので、サーバ装置10の処理負荷を低減できる。また、サーバ装置10の第1劣化度及び第2劣化度の算出時間、ひいては、第1温度及び第2温度の予測時間を速くすることができる。
【0103】
また、本実施形態では、劣化度算出部56Bは、固有触媒劣化関数50Eと予定運転条件50Bとに基づき、第1劣化度変化データを生成し、且つ、固有触媒劣化関数50Eと指定運転条件とに基づき、第2劣化度変化データを生成し、予測部56は、第1劣化度変化データに基づき、第1温度変化データ202を生成し、且つ、第2劣化度変化データに基づき、第2温度変化データ402を生成する。
この構成によれば、ユーザは第1温度変化データ202と第2温度変化データ402とを比較しながら、指定運転条件の指定を繰り返す(調整する)ことができる。これにより、第1温度変化データ202よりも理想的な第2温度変化データ402となるような製油装置Oの適切な運転条件をユーザが検討することができる。
【0104】
また、本実施形態では、取得部52は、製油装置Oに予め定められている上限温度208を取得し、予測部56は、第1温度変化データ202において第1温度が上限温度208以上となる時間に基づき触媒の第1触媒寿命を予測し、第2温度変化データ402において第2温度が上限温度208以上となる時間に基づき触媒の第2触媒寿命を予測する。
この構成によれば、第1触媒寿命と第2触媒寿命とを比較しながら、指定運転条件を調整することができる。これにより、第1触媒寿命よりも理想的な第2触媒寿命となるような製油装置Oの適切な運転条件をユーザが検討することができる。具体的には、第1触媒寿命が目標運転日数210よりも小さい場合(目標とする期間よりも早く触媒寿命を迎える場合)、第2触媒寿命が目標運転日数210よりも大きくなるような指定運転条件を検討することができる。また、第1触媒寿命が目標運転日数210よりも大きい場合(触媒の活性/触媒寿命が余る場合)、第2触媒寿命が目標運転日数210よりも大きくなるとともに第2触媒寿命が第1触媒寿命よりも小さくなるような指定運転条件を検討することができる。すなわち、ユーザは、予定運転条件50Bから算出された第1触媒寿命を参考にしながら指定運転条件を模索することで、ユーザは、より触媒を使い切る(目標運転期間後にすぐ触媒寿命を迎える)ことができる製油装置Oの運転条件を模索できる。
【0105】
また、本実施形態では、予測部56は、第1温度変化データ202と、第2温度変化データ402と、を共通の表示軸上に表示したグラフを出力する。
この構成によれば、第1温度変化データ202と比較することで第2温度変化データ402の妥当性をユーザが検討し易くなる。
【0106】
また、本実施形態では、共通の表示軸は、触媒の要求温度と、製油装置Oの運転時間と、を含む。
この構成によれば、第1温度変化データ202と、第2温度変化データ402の温度が上限温度208以上となる運転時間をユーザがすぐに把握することができる。
【0107】
また、本実施形態では、運転実績データ50Cは、製油装置Oの運転時間における触媒の要求温度を示す温度実績データ204を含み、予測部56は、温度実績データ204をグラフに表示する。
この構成によれば、温度実績データ204を確認することで、触媒の要求温度の現状を把握することができるとともに、あとどれくらい運転を続けられるか、あとどの程度まで要求温度を高くする余裕があるか等を一目で把握することができる。
【0108】
また、本実施形態では、予測部56は、固有触媒劣化関数50Eと予定運転条件50Bとに基づき、温度実績データ204を補正して補正温度データを取得し、当該補正温度データ206をグラフに表示する。
この構成によれば、固有触媒劣化関数50Eに基づいた補正温度データ206を温度実績データ204と比較することで、固有触媒劣化関数50Eの妥当性をユーザが検討することができる。
【0109】
また、本実施形態では、予測部56は、固有触媒劣化関数50Eと運転実績データ50Cに含まれる過去に使用された実績運転条件とに基づき、温度実績データ204に対応する過去の運転時間の温度を予測した算出温度データ404を取得し、当該算出温度データ404をグラフに表示する。
この構成によれば、算出温度データ404を温度実績データ204と比較することで、固有触媒劣化関数50Eの妥当性をユーザが検討することができる。
【0110】
また、本実施形態では、製油装置Oの第1回目の運転期間を前運転期間、製油装置Oの第2回目の運転期間を後運転期間としたとき、関数算出部56Aは、前運転期間においては、触媒劣化関数50Dと前運転期間の運転実績データ50Cとに基づき、固有触媒劣化関数50Eを算出する。
この構成によれば、触媒劣化関数50Dから固有触媒劣化関数50Eを算出するので、触媒劣化関数50Dがない状態で固有触媒劣化関数50Eを算出する場合に比べて固有触媒劣化関数50Eの精度を向上することができる。
【0111】
また、本実施形態では、関数算出部56Aは、後運転期間においては、前運転期間に算出された固有触媒劣化関数50Eと後運転期間の運転実績データ50Cとに基づき、後運転期間の固有触媒劣化関数50Eを算出する。
この構成によれば、後運転期間における製油装置Oの状態を固有触媒劣化関数50Eに反映させることができ、後運転期間の固有触媒劣化関数50Eの精度を向上することができる。
【0112】
また、本実施形態では、関数算出部56Aは、前運転期間における複数の任意の時刻に対して算出された複数の前記触媒の残活性割合の各々を、運転実績データ50Cに含まれる過去に使用された実績運転条件により補正し、補正された複数の残活性割合に基づいて、前運転期間の固有触媒劣化関数50Eを更新し、更新された固有触媒劣化関数50Eと後運転期間の運転実績データ50Cとに基づき、後運転期間の固有触媒劣化関数50Eを算出する。
この構成によれば、後運転期間の固有触媒劣化関数50Eの精度を更に向上することができる。
【0113】
また、本実施形態では、関数算出部56Aは、後運転期間の固有触媒劣化関数50Eを算出してから所定期間が経過した後、当該固有触媒劣化関数50Eと所定期間の間に更新された運転実績データ50Cとに基づき、固有触媒劣化関数50Eを更新する。
この構成によれば、後運転期間における製油装置Oの状態を固有触媒劣化関数Eに更に反映させることができ、後運転期間の固有触媒劣化関数50Eの精度を更に向上することができる。
【0114】
また、本実施形態では、予定運転条件50Bは、原料油の通油量に関する原料油通油量と、原料油の蒸留性状に関する原料油蒸留性状と、原料油の硫黄濃度に関する原料油硫黄濃度と、生成油の性状に関する生成油性状と、生成油の硫黄濃度に関する生成油硫黄濃度と、のうち少なくとも1つを含む。
この構成によれば、原料油や生成油の情報を予定運転条件50Bに入れることで、原料油や生成油に適した第1温度変化データ202を生成することができる。
【0115】
また、本実施形態では、指定運転条件は、原料油の通油量に関する原料油通油量と、原料油の蒸留性状に関する原料油蒸留性状と、原料油の硫黄濃度に関する原料油硫黄濃度と、生成油の性状に関する生成油性状と、生成油の硫黄濃度に関する生成油硫黄濃度と、のうち少なくとも1つを含む。
この構成によれば、原料油や生成油の情報を指定運転条件に入れることで、原料油や生成油に適した第2温度変化データ402を生成することができる。
【0116】
<変形例>
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。また、上記実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本開示の特徴を含む限り本開示の範囲に包含される。
【0117】
例えば、上記実施形態では、受付部54は、ユーザにより指定された運転条件を指定運転条件として受け付ける場合を説明したが、この指定運転条件を受け付ける際に指定運転条件の運転開始時期や運転期間の指定を指定運転期間として受け付けてもよい。この時、指定運転期間を一つまたは複数設定し、その期間ごとに指定運転条件を設けてもよい。そして、予測部56は、指定運転期間毎の指定運転条件に基づき、第2温度を予測してもよい。言い換えれば、受付部54は、複数の指定運転条件と、当該複数の指定運転条件の各々に対応する運転期間である複数の指定運転期間と、の指定を受け付け、予測部56は、複数の指定運転条件と複数の指定運転期間とに基づき、第2温度を予測してもよい。製油装置Oが処理すべき原料油の性状、原料油の種類、原料油の配合比および原料油の通油量等は、例えば、製油所R全体の操業計画等の状況に応じて変動し得る。即ち、製油所R全体の操業計画等に応じて製油装置Oに期待される製油処理が途中で変更され、ユーザは、製油装置Oの運転条件を新たに期待される製油処理が実現可能な運転条件に変更する必要が生じ得る。上記変形例では、将来の任意の運転期間における製油装置Oの運転条件を検討することができるため、製油装置Oに期待される製油処理が途中で変更されることも考慮して、製油装置Oの運転計画を検討できる。よって、ユーザは、より適切な製油装置Oの運転計画を立案できる。また、予測部56は、受付部54がある指定運転期間の指定運転条件を受け付けると、当該指定運転期間と当該指定運転条件とに基づき当該指定運転期間と異なる他の期間の運転条件を算出してユーザに提案してもよい。指定運転期間の指定運転条件への変更は、他の期間の運転条件に影響を与え得るからである。
【0118】
また、受付部54は、一部の指定運転条件を受け付けた際、他の指定運転条件をユーザに提案してもよい。具体的には、受付部54は、一部の指定運転条件を受け付けた際、当該一部の指定運転条件に関連する他の指定運転条件を算出し、当該他の指定運転条件をユーザに提案してもよい。例えば、受付部54は、直留軽油(R-LGO)の混合比率データを受け付けると、当該混合比率データに基づき、接触分解軽油(LCO)の混合比率データや灯油~軽油留分(FCC-KERO)の混合比率データ等を自動的に算出して条件指定画面300に表示することで、ユーザに提案してもよい。
【0119】
また、予測部56は、特許文献1のように、装置データ50Aと予定運転条件50Bと固有触媒劣化関数50Eとに基づき、ユーザに推奨する推奨運転条件を算出してユーザに提案してもよい。例えば、予測部56は、図8に示す条件指定画面300にて、推奨運転条件を記述することが好ましい。これにより、予定運転条件50Bや推奨運転条件を参考にしながら、指定運転条件を指定することができる。また、予測部56は、触媒劣化関数50Dと運転実績データ50Cと推奨運転条件とに基づき、当該推奨運転条件を満たすために必要な触媒の反応温度である第3温度と時間との関係を表す第3温度変化データを生成してもよい。この場合、予測部56は、二次元グラフ400に、第1温度変化データ202や第2温度変化データ402だけでなく、第3温度変化データも表示してもよい。これにより、推奨運転条件に基づいた第3温度変化データを参考にしながら、推奨運転条件より適切な指定運転条件をユーザが検討することができる。
【0120】
また、上記実施形態では、関数算出部56Aは、触媒の要求温度を予測する予測処理の前に固有触媒劣化関数50Eを算出する場合を説明したが、当該予測処理の中、例えば図5に示すステップSP23とステップSP24との間で算出してもよい。これにより、予測部56は、最新の固有触媒劣化関数50Eを用いて触媒の要求温度を予測することができるので、予測精度を向上することができる。
【0121】
また、上記実施形態では、関数算出部56Aは、触媒劣化関数50Dと運転実績データ50Cとに基づき固有触媒劣化関数50Eを算出する場合を説明したが、触媒劣化関数50Dとは異なる予め定められた関数と運転実績データ50Cとに基づき、固有触媒劣化関数50Eを算出したり、運転実績データ50Cのみに基づき、固有触媒劣化関数50Eを算出したりしてもよい。
【0122】
また、上記実施形態では、関数算出部56Aは、ステップSP15においてN-1ラン目の固有触媒劣化関数50E、言い換えれば直前の固有触媒劣化関数50Eに基づき、最新の固有触媒劣化関数50Eを算出する場合を説明した。しかしながら、関数算出部56Aは、過去の複数の固有触媒劣化関数50Eの傾向等を分析し、最も適した過去の固有触媒劣化関数50Eを抽出し、最も適した過去の固有触媒劣化関数50Eに基づき、最新の固有触媒劣化関数50Eを算出してもよい。また、関数算出部56Aは、過去の複数の固有触媒劣化関数50Eを第二端末装置14に表示出力し、過去の複数の固有触媒劣化関数50Eのうちどの固有触媒劣化関数50Eを利用するか否かユーザによる選択を受け付け、受け付けた固有触媒劣化関数50Eに基づき、最新の固有触媒劣化関数50Eを算出してもよい。また、関数算出部56Aは、他の製油装置Oに用意されている固有触媒劣化関数50Eも第二端末装置14に表示出力し、当該固有触媒劣化関数50Eの選択も受け付けてもよい。
【0123】
また、上記実施形態では、関数算出部56Aは、ステップSP13において、デフォルトの触媒劣化関数50Dに基づき、固有触媒劣化関数50Eを算出する場合を説明したが、今回の製油装置Oの触媒と同じ触媒を利用する他の製油装置Oの固有触媒劣化関数50Eに基づき、今回の製油装置Oの固有触媒劣化関数50Eを算出してもよい。
【0124】
また、上記実施形態では、劣化度算出部56Bは、固有触媒劣化関数50Eに基づき、第1劣化度や第2劣化度を算出する場合を説明したが、触媒劣化関数50Dに基づき、第1劣化度や第2劣化度を算出してもよい。
【0125】
また、上記実施形態では、ステップSP24Aにおいて予測部56が補正温度データを取得する処理を説明したが、このステップは省略してもよい。同様に、ステップSP29Aにおいて予測部56が算出温度データを取得する処理を説明したが、このステップも省略してもよい。
【0126】
また、上記実施形態では、二次元グラフ200や二次元グラフ400の表示箇所について特に言及していなかったが、製油装置Oの選択画面100内や条件指定画面300内に表示されてもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、予定運転条件50Bが予め定められている場合を説明したが、受付部54は、ユーザの指示により又は所定のタイミングで自動的に、ユーザが過去に指定した指定運転条件を予定運転条件50Bに変更してもよい。
【符号の説明】
【0128】
10:サーバ装置(情報処理装置)、52:取得部、54:受付部、56:予測部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9