(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009070
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】積層スタックの製造方法、積層スタック、および電気機械
(51)【国際特許分類】
H01F 41/02 20060101AFI20240112BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20240112BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240112BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20240112BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240112BHJP
H01F 3/02 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H01F41/02 B
C09J163/00
C09J11/06
C09J5/00
H01L21/68 N
H01F3/02
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023193042
(22)【出願日】2023-11-13
(62)【分割の表示】P 2022557077の分割
【原出願日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】102020109985.1
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】514309479
【氏名又は名称】ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】THYSSENKRUPP STEEL EUROPE AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トバイアス レウィ
(72)【発明者】
【氏名】カルステン マシャリッツァ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ウィートホフ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ タイツ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルカー カーメン
(72)【発明者】
【氏名】アン ヘニッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ディルク シュライアー
(57)【要約】
【課題】生産環境において積層スタック(固定子パッケージ、回転子パッケージなど)を効率的に生産するための必要条件の提供。
【解決手段】本発明は、A)接着剤被膜を有する金属シート(1)を提供する工程;B)切断手段(4)、分離手段(6)および活性化手段(5、5a、5b)を含む直列型システム内に金属シートを搬送する工程;C)切断手段(4)で成形部品(2)を切断する工程;D)接着剤被膜を活性化する工程;E)成形部品(2)を分離する工程;F)成形部品(2)を配置する工程;およびG)工程C)から工程F)を繰り返す工程を含み、成形部品スタック(3,3’)を分離するための目標破断点を提供するために、いくつかの成形部品(8)の接着剤被膜に処理液を処理装置(9)で供給する、積層スタックを製造するための方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械用の積層スタックを製造する方法であって、積層スタックは、好ましくは固定子コアまたは回転子パッケージのいずれかであり、前記方法は、
A) 少なくとも部分的に硬化可能なポリマーベースの接着剤被膜を有する金属シート、あるいは、少なくとも部分的に硬化可能なポリマーベースの接着剤被膜を有する複数の金属シートを提供する工程と、
B) 金属シートを、直列型システム内へと搬送する工程であって、前記直列型システムは、少なくとも1つの切断手段と、分離手段と、接着剤被膜を活性化するための活性化手段とを含み、好ましくは、前記活性化手段は、少なくとも1つの切断手段と分離手段との間に配置される工程と、
C) 少なくとも1つの切断手段を用いて、工程Aで提供された金属シートから、好ましくは固定子ラメラまたは回転子ラメラとして設計された成形部品を切断する工程と、
D) 成形部品の接着剤被膜を活性化するための活性化手段を用いて、成形部品、好ましくは工程C)で形成された成形部品の接着剤被膜を活性化する工程と、
E) 分離手段を用いて成形部品を金属シートから分離する工程と、
F) 成形部品を、成形部品スタックを形成するための位置決め領域に配置する工程と、
G) 工程C)から工程F)を繰り返して、位置決め領域に成形部品を連続的に充填し、ここで、成形部品の予定数に達した後、次の成形部品に関して、工程F)を行う前に、処理装置を用いて、前記次の成形部品に対して処理液を少なくとも部分的に供給し、この後続成形部品の接着剤被膜の効果を低減し、効果が低減した接着剤被膜の結果として位置決め領域において、効果が低減された接着剤被膜の下のスタックセクションと効果が低減された接着剤被膜の上のスタックセクションとの分離性の向上をもたらす工程と
を含み、
接着剤被膜は、60重量部の固体樹脂の形態のエポキシ樹脂と、0.5~15重量部の潜在性硬化剤と、1~15重量部の潜在性促進剤とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
活性化手段が第1赤外線照射器を含み、接着剤被膜に赤外線を照射し、それによって接着剤被膜を活性化するか、あるいは活性化手段が誘導加熱器を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
- 処理液が分離流体であり、処理装置が、接着剤被膜の処理として分離流体を接着剤被膜に適用する塗布装置であること、または
- 処理流体が冷却流体であり、処理装置が、好ましくは冷却液の形態である冷却流体を、接着剤被膜の処理として接着剤被膜に適用する湿潤ユニットであること、または
- 処理流体が打ち抜きオイルの形態の分離液であること
を特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
スタックセクションを分離した後に、スタックセクションを、好ましくは端面上で一定である端面への圧力、すなわちラメラ表面に垂直な圧力を用いるプレスで後圧縮し、30℃と180℃との間の温度、より好ましくは40℃と120℃との間の温度、特に好ましくは50℃と100℃との間の温度において、圧力は、10,000N/(14,000mm2)と200,000N/(10,000mm2)との間、好ましくは50,000N/(14,000mm2)と150,000N/(10,000mm2)との間であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
接着剤被膜は、水性分散物として金属シートに適用され、および/または、接着剤被膜は、化学架橋の開始の直前に、少なくとも8Pa×s、好ましくは10Pa×sである複素粘度を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
接着剤被膜は、60重量部の固体樹脂の形態のエポキシ樹脂と、1~10重量部、好ましくは2~5重量部の潜在性硬化剤と、1~15重量部の潜在性促進剤とを含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程A)で提供される金属シートは、両面に接着剤被膜を有して提供されることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
潜在性促進剤は、ウレア誘導体を含有することを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ウレア誘導体は、非対称置換ウレアを含むか、または非対称置換ウレアからなることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ウレア誘導体は、N,N-ジメチルウレアまたはN,N’-ジメチルウレア、あるいは二官能性ウレア誘導体であることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
ウレア誘導体は、官能基として2つのウレア基を有するウレア誘導体であることを特徴とする、請求項8から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ウレア誘導体は、4,4’-メチレン-ビス-(フェニルジメチルウレア)であることを特徴とする、請求項8から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
接着剤に含有される潜在性促進剤は、好ましくは少なくとも50重量%の4,4’-メチレン-ビス-(フェニルジメチルウレア)からなり、より好ましくは少なくとも90重量%の4,4’-メチレン-ビス-(フェニルジメチルウレア)からなり、さらにより好ましくは少なくとも98重量%の4,4’-メチレン-ビス-(フェニルジメチルウレア)からなり、特に好ましくは完全に4,4’-メチレン-ビス-(フェニルジメチルウレア)からなることを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
潜在性促進剤は、
ウレア誘導体、
特に非対称置換ウレア、
好ましくは、N,N-ジメチルウレアまたはN,N’-ジメチルウレア、あるいは二官能性ウレア誘導体、
特に好ましくは官能基として2つのウレア基を有するウレア誘導体、および
具体的に特に好ましくは4,4’-メチレン-ビス-(フェニルジメチルウレア)
の複数種の混合物を含有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
ウレア誘導体は、下式の化合物
【化1】
(式中、Rは、水素または以下の式であり、
【化2】
n=0または1、好ましくは1であり、
X=OまたはS、好ましくはOであり、
R
1、R
2およびR
3は、それぞれ水素、ハロゲン、ニトロ基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルコキシル基、置換または非置換のアリール基、または置換または非置換のアリールオキシル基であり、
R
4は、任意選択的にハロゲン、ヒドロキシルまたはシアノで置換されてもよい、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アラルキル基であり、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチルであり、特に好ましくはメチルであり、
R
5はR
4と同一であるか、またはアルコキシル基であり、
任意選択的にR
5およびR
4は複素環を形成してもよい。)、
または、ウレア誘導体は、N,N-ジメチル-N’-(3,4-ジクロロフェニル)ウレア、N,N-ジメチル-N’-(3-クロロ-4-メチルフェニル)ウレア、N,N-ジメチル-N’-(3-クロロ-4-メトキシフェニル)ウレア、N,N-ジメチル-N’-(3-クロロ-4-エチルフェニル)ウレア、N,N-ジメチル-N’-(4-メチル-3-ニトロフェニル)ウレア、N-(N’-3,4-ジクロロフェニルカルバモイル)モルホリン、またはN,N-ジメチル-N’-(3-クロロ-4-メチルフェニル)チオウレアであり、
ウレア誘導体は、好ましくは4,4’-メチレン-ビス-(フェニルジメチルウレア)であり、
あるいは、ウレア誘導体は、前述の2種、3種またはそれ以上の混合物であって、好ましくは少なくとも10%、少なくとも25%、より好ましくは、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の4,4’-メチレン-ビス-(フェニルジメチルウレア)を含有する混合物である
ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
エポキシ樹脂は、2つ以上のエポキシ基を有する1種または複数種のエポキシ樹脂を含み、好ましくは少なくとも1種のエポキシ樹脂は50℃より高い軟化点を有することを特徴とする、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
エポキシ樹脂は、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、または芳香族エポキシ樹脂であるか、あるいは
エポキシ樹脂は、脂肪族基および少なくとも2つのエポキシ基を有する成分を含む脂肪族エポキシ樹脂であるか、あるいは、
エポキシ樹脂は、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジメチルペンタンジオキシド、ブタジエンジオキシド、およびジエチレングリコールジグリシジルエーテルから選択される脂肪族エポキシ樹脂であるか、あるいは、
エポキシ樹脂は、3-シクロヘキセニルメチル-3-シクロヘキシルカルボキシレートジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルアルキル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシ-o-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキサンジオキシド、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンジオキシド、および1,2-エポキシ-6-(2,3-エポキシプロポキシ)ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダンから選択される脂環式エポキシ樹脂であるか、あるいは、
エポキシ樹脂は、ビスフェノールAエポキシド樹脂、ビスフェノールFエポキシド樹脂、フェノールノボラックエポキシド樹脂、クレゾールノボラックエポキシド樹脂、ビフェニルエポキシド樹脂、ビフェノールエポキシド樹脂、4,4’-ビフェノリンエポキシド樹脂、ジビニルベンゼンジオキシド、2-グリシジルフェニルグリシジルエーテルおよびテトラグリシジルメチレンジアニリンから選択される芳香族エポキシ樹脂である
ことを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
エポキシ樹脂は、ビスフェノールAエポキシド樹脂であることを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
硬化剤は、ジシアンジイミド、イミダゾール、BF3アミン錯体、またはそれらの組みあわせを含有することを特徴とする請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
工程C)~工程F)を、少なくとも80/分、好ましくは120/分~300/分の増加速度で実施することを特徴とする、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
位置決め領域に成形部品を充填することによって形成された成形部品スタックから、効果が減少した接着剤被膜によって互いに分離されるスタックセクション、または、目標破断点を有して提供されるスタックセクションを、別個に取り出すことを特徴とする、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法を用いてスタックセクションとして製造され、特に固定子とまたは回転子として設計されていることを特徴とする、電気機械用の積層スタック。
【請求項23】
請求項22に記載の固定子および/または回転子を有し、特に電気モータであることを特徴とする電気機械。
【請求項24】
固定子と回転子とを含み、固定子は部分的または完全に請求項22に記載のスタックセクションであり、回転子は部分的または完全に打ち抜きスタッキングの手段により製造された部品であることを特徴とする、請求項23に記載の電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層スタックの製造方法に関する。また、本発明は、積層スタックのスタックセクションおよび電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の電気機械、特に電気モータの動作モードは、古くから知られている。「エレクトロモビリティ」という流行語でも言及される個人用の旅客輸送機における電気モータの使用が増加していることから、電気モータの重要性はますます高まっている。全ての電動モータの主要部品は固定子および回転子を含み、固定子はモータの固定部を意味し、回転子はモータの可動部を意味する。
【0003】
電気モータを提供する際の1つの課題は、経済的道理にかなう努力の一環として、電気モータの効率、たとえば、体積当たりの提供出力および/または効率を向上させることである。
【0004】
効率的な電気モータを提供するための1つの思想は、固定子および/または回転子の製造、あるいは、いわゆる固定子パッケージまたは回転子パッケージとしての固定子および/または回転子の部品の製造である。製造される他の構成要素は、極コアまたは極セグメントである。この場合、前述の構成部品は、個々のいわゆるラメラから、プレートスタックとも呼ばれる積層スタックとして組み立てられる。「ラメラ」という用語は、たとえばパンチングによって、電磁鋼シートまたは電磁鋼ストリップから取り出される成形部品を意味する。プレートスタックは、積み重ねられた多数の薄いラメラから構成され、それらラメラは、部分的にまたは好ましくは完全に、互いに電気的に絶縁されている。このような目的のために、たとえば、いわゆる絶縁クラスに分類される、いわゆる電気絶縁コーティングを使用することが、実際上、知られている。
【0005】
このような積層スタックの製造は、常に、ラメラを製造する工程と、ラメラを相互接続する工程とを含む。好ましくは、接続は、接続後に個々のラメラが部分的に好ましくは完全に電気的に絶縁されるような方法で達成される。これは、好ましくは、2つの隣接するラメラが直流電流的(galvanically)に相互接続されないことを意味する。
【0006】
個々のラメラは、たとえば、打ち抜きによって製造することができる。積層スタックを形成するための打ち抜かれたラメラの接続は、種々の既知の方法、たとえばボルト締め、クリップの適用、溶接、または打ち抜きスタッキングによって達成することができる。しかしながら、接続プロセス中に発生する機械的効果のために、当業者に知られているこれらの製造方法の各々において、接続後に優勢となる積層スタック完成品の電磁特性への負の影響が付随する。特に、先行技術にしたがって製造された接続において不可避の機械的応力は、少なくともある程度、積層スタック内の磁気特性および磁力線の形状に悪影響を及ぼす可能性がある。これは、たとえば、それから製造される電気モータの効率に直接的に悪影響を及ぼす。打ち抜きスタックまたは溶接などの接続プロセスで発生する、2つ以上のラメラ間の電気的接続は、さらなる損失をもたらす。
【0007】
機械的影響によるラメラへの悪影響を軽減し、同時にラメラ間の良好な絶縁を実現するための優れた選択肢は、接続手段として接着剤を使用することである。多くの場合、適切な接着剤システムは、電気絶縁被膜に類似した絶縁特性を有する。
【0008】
当業者に知られている手順は、いわゆる焼付塗料の使用である。たとえば、打ち抜かれた電磁鋼シートを接着するための焼付塗料の使用は、ドイツ登録特許第3829068号明細書に記載されている。焼付塗料を使用するための1つの手順は、金属シート(特に金属シートストリップ)の塗装、引き続く金属シートからの個々のラメラの打ち抜き、個々のラメラの位置合わせ、引き続いて、規定された期間および温度における、得られた積層スタックの熱処理である。多くの場合、ラメラは、熱処理中に互いに押圧される。たとえば、端面に対して、積層スタックの軸方向の力(好ましくは均一な面力)を印加し、その力を積層スタックの内部に向けることによって、押圧を実施する。典型的な反応温度は150℃~250℃であり、焼付塗料が反応するための典型的な時間は、引き続く冷却フェーズを伴って30分~150分である。しかしながら、たとえば、部品に設定されるコア温度は焼付塗装プロセスの経過に影響を及ぼすので、正確なパラメータは、本来的に、用いる具体的な焼付塗料および存在する具体的な幾何学的形状に依存する。固定子パッケージおよび/または回転子パッケージの優れた電磁特性は、一般的にこの手順で達成することができる。しかしながら、時間がかかる手順のため、焼付塗料の使用は、連続的な大量生産に適していない、または少なくとも最適でないことが直ちに明らかになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の集合体を背景として、本発明の目的は、生産環境において積層スタック、すなわち特に固定子パッケージまたは回転子パッケージを効率的に生産するための必要条件を創出することである。
【0010】
また、さらなる効率化の要望を背景とは別に、本発明の目的は、電磁エネルギーから機械エネルギーへの変換、またはその逆が改善された電磁部品および電気機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1に記載の方法、請求項16に記載の積層スタックのスタックセクション、および請求項17に記載の電気機械によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明にしたがう電気モータ用積層体の製造方法の第1の実施形態の例を示す図である。
【
図2a】室温保存時のせん断値試験の結果を示すグラフである。
【
図2b】40℃オーブン保存時のせん断値試験の結果を示すグラフである。
【
図3】接着剤の温度と複素粘度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
電気機械用の積層スタックを製造するための本発明の方法は、少なくとも以下の工程を含む。
A) 少なくとも部分的に硬化可能な接着剤被膜を伴う金属シートを提供する工程。これは、金属シートが、活性化(たとえば熱誘起活性化)後に硬化して接着特性を具現化する、接着剤被膜を有することを意味する。接着剤被膜は、ポリマーをベースとする接着剤被膜である。金属シートは、好ましくは、片側の表面全体、または、特に好ましくは、両側の表面全体のいずれかを、接着剤被膜で被覆される。金属シートは、電磁鋼ストリップであってもよく、金属シートストリップから切り出されたプレートであってもよい。
B) 金属シートを、直列型システムへと搬送する。直列型システムは、少なくとも、切断手段と、分離手段と、接着剤被膜を活性化するための活性化手段とを有する。好ましくは、活性化手段を、切断手段と分離手段との間に配置する。
【0014】
「直列型システム」という用語は、多数の処理ステーション、すなわち少なくとも上記の処理ステーションが予め定められた順序で配置されており、直列型システムに供給される金属シート(たとえば電磁鋼ストリップ)は、予め定められたステーションで自動的かつ順次的に処理されることを意味する。
【0015】
切断手段は、製造されるラメラの構造を形成するために使用される。これは、たとえば、1つの切断手段を有する複数の工程で行うこともできるし、異なる切断手段を有する複数の工程で行うこともできる。この場合、いずれの場合においても、ラメラの内側から外側へ多段構造化を行うことが好ましい。すなわち、複数の切断を必要とする多数の切断工程は、切断工程が最初にラメラの最内側の構造を形成してから、徐々にラメラの外側へと切断するように提供されることが好ましい。
【0016】
切断手段は、たとえば、打ち抜き機として設計することができる。この場合、工程C)の切断は打ち抜き工程となる。
【0017】
また、切断手段は、レーザーの形態とすることもできる。この場合、工程C)の切断は、レーザービーム切断工程となる。
【0018】
直列型システムは、複数の切断手段のシーケンスを有することもでき、たとえば、順次配置された複数の打ち抜きステージを有する打ち抜きツールとして設計することもでき、または打ち抜きツールとレーザーのシーケンスとして設計することもできる。好ましくは、少なくとも1つの切断手段は、ラメラの内部からラメラの外部に向かって、ラミナの予定の形状を電磁鋼ストリップに打ち抜く、順送り型として設計することができる。
【0019】
上記の文脈において、用語「ラメラ」は、金属シートから切り出すことによって得られる成形品、特に、打ち抜きによって得られる成形品を示す。
【0020】
接着剤被膜を活性化するための活性化剤は、接着剤被膜中に熱を導入することができ、原理的には、熱の入力を任意の方法で生成することが可能である。特に、活性化手段は、赤外線を放射する手段、たとえばNIR放射源、すなわちNIR波長スペクトル(すなわち400nmと10μmとの間の波長、好ましくは780nmと3μmとの間の波長)内の電磁放射線を放射するように設計された光源を有することができる。
【0021】
代替的または付加的に、活性化手段は、接着剤被膜を加熱するための誘導加熱を含むことができ、特に誘導コイルを含むことができる。
【0022】
さらに、前述のように、直列型システムは、分離手段を有する。この分離手段は、好ましくは、金属シートの表面に対して垂直な力を用いる切断ダイの形態であり、ラメラの外側を含む金属シートからラメラを切断することによってラメラを順次的に分離し、そして、好ましくは同一加工工程において、その中にラメラが収集され、かつ、金属シートの下に配置された受取装置に対して、ラメラを輸送する。切断ダイは、好ましくは、ラメラの外側の境界を金属シートから打ち抜く。打ち抜きおよび押し出しが高度に同期するとの利点を有するため、切断手段および分離手段が同一のプレスの一部であることが好ましい。
【0023】
C) 切断手段を用いて、1つまたは複数の工程において、工程Aで提供された金属シートから成形部品を切り出す。たとえば、成形部品は、回転子ラミナまたは固定子ラミナである。直列型システム内では、切断手段を用いて工程Aで提供された金属シートから、好ましくは外側輪郭が未だ形成されていない電気部品(特に固定子ラミナまたは回転子ラミナとして設計された成形部品)を切り出す。外形輪郭は、工程Eにおいてのみ形成されている。この場合、工程Cに続いて、成形部品は、その外側輪郭以外の全ての輪郭を有する。あるいはまた、成形品の切り出しが外側輪郭の切り出しも含む実施形態を提供することができる。
【0024】
D) 成形部品の接着剤被膜を活性化するための活性化剤による、接着剤被膜の活性化、好ましくは接着剤被膜の全領域の活性化。工程Cで形成された成形部品は、好ましくは活性化される。すなわち、工程Dの活性化は、工程Cの切断の後に行われる。熱入力によって接着剤被膜を活性化して、打ち抜かれた成形部品は接着結合を形成する(すなわち予備固定される)ことができる。予備固定という用語は、成形部品がさらなる加工に対して十分な弾力性があるが、積層スタック完成品の工業的使用に十分なほどには固定されていないということを意味する。接着結合は、少なくとも部分的に化学的に硬化され、工程の後半で圧力および/または温度下での後緻密化により、プロセスのより後期において、その最終強度を向上させることができる。
【0025】
特別な実施形態では、直列型システムにおける活性化温度を、30℃と180℃との間、好ましくは40℃と120℃との間、特に好ましくは50℃と100℃との間とすることができる。
【0026】
E) 分離手段を用いる成形部品の分離、および、工程Fとして、成形部品スタックを構築するための位置決め領域内での、好ましくはその外形形状を越えて案内する、成形部品の配置。位置決め領域は、位置決め領域に既に存在する他の成形部品上に、位置配向的および/または角度的に整列させた状態で成形部品を配置するのに役立つ。その結果、互いに位置合わせされ、活性化された接着剤を備えた成形部品スタックが、順次増加する方法で成形部品ごとに最終的に得られる。好ましくは打ち抜きとして行われる分離手段による金属シートからのラメラの分離は、好ましくは位置決め領域への成形部品の配置と同じプロセス工程で行われる、すなわち、工程Eの分離と、工程Fの配置(それぞれのラメラの、先行するラメラに対する好ましい接着を含む)とを、好ましくは同一のプロセス工程で実施する。これは、形成中の成形部品スタックの上への案内と、適切な場合には同スタックに対する分離手段による圧力印加を含む。
【0027】
位置決め領域は、たとえば、成形品の外形に適合した筒状管、たとえば、円に内接する成形品の場合には円筒管とすることができ、管は成形品の搬送面の下方に位置する。成形品の位置決めは位置決め領域を介して行われ、たとえば、成形品の断面に実質的に対応する横断面を有する筒状形の中空管として設計され、提供される位置決めにおいてそれに整列される。位置決め領域は、ラメラのイメージに対応することもでき、したがって、全表面領域にわたって位置決め領域と接触することができる。
【0028】
G) 工程C)から工程F)は、提供された順序で、たとえば、工程C)→工程D)→工程E)→工程F)の順序で、または工程C)→工程D)→工程E)および工程F)を一緒の順序で行われ、次いで繰り返して、成形部品スタックを連続的に積層する。すなわち成形部品が連続的に位置決め領域に配置される。このとき、位置決め領域が連続的に完全に満たされるように行うことが好ましい。
【0029】
全工程を多列化すること、すなわち、2つまたは2つ以上のラメラを電磁鋼ストリップから並列および/または連続的に打ち抜くこと(数、形状および配置に応じて、互いに対して斜めにオフセットされるか、または回転させられる)も可能である。
【0030】
成形部品が予定数に達したとき、次の成形部品を、処理装置を用いて少なくともいくつかの領域の処理液とともに提供し、接着剤被膜の効果(すなわち接着強度)を減少させる(すなわち、接着強度がより小さいか、もはや全くないようにする)。この位置での接着剤被膜は、効果が減少した接着剤被膜の下の積層部分と効果が減少した接着剤被膜の上の積層部分との改良された分離性を可能にする。この分離性は接着剤被膜に存在し、そのため、接着剤被膜は、接着剤被膜に直接隣接するラメラを互いに容易に分離できる目標破断点として提供される。
【0031】
言い換えれば、工程C)~工程F)を連続的に繰り返すことにより、処理装置を用いて選択された成形部品に少なくとも一部の領域に処理液を適用し、これら選択された成形部品の接着剤被膜の効果(すなわち接着強度)を低下させ、効果が低下した接着剤被膜の上のスタックセクションから、効果が低下した接着剤被膜の下のスタックセクションを、より容易に分離できる。成形部品を選択された成形部品として選択し、プロセスを連続的に継続しながら、得られるスタックセクション(所望の数の成形部品、したがって所望の成形部品高さを有する)が、位置決め装置の受容側の下方の位置決め装置から分離され得るように選択され、それによってスタックセクションを、積層スタックとして提供する。
【0032】
このように、成形部品スタックは連続的に形成され、スタックセクションに再分割され、それぞれの場合における1つのスタックセクションは、好ましくは連続的に、積層スタックとして成形部品スタックから分離される。
【0033】
たとえば、位置決め領域の頂部側の成形部品スタックに載置される成形部品ごとに、成形部品の厚み分だけ底部側を移動させる。そして、頂部側に連続的に補充が行われている間に、底部側に完全なスタックセクションが存在するやいなや、直ちに当該セクションを分離し、積層スタックとして準備することが可能である。
【0034】
処理液の使用に加えて、加熱、すなわち活性化剤は、処理液が適用される領域で、好ましくは選択された成形部品の取り扱い中のみに一時的に、不活性化することも可能である。
【0035】
成形部品の少なくとも一部の領域への処理液の塗布は、工程F)の前に行われるが、好ましくは工程E)の前に、また好ましくは工程C)の後に、特に好ましくは工程D)の後に、すなわち特に好ましくは工程D)と工程E)の間の追加の段階として行われる。
【0036】
好ましくは、成形部品は、その一方の表面の全面に処理液を供給される。あるいはまた、成形部品は、その両方の表面の全面に処理液を供給される。
【0037】
1つの変形例では、成形部品は、その一方の表面、すなわち分離手段とは反対側の表面に処理液が供給される。これにより、分離手段による後続の成形品への処理液の意図しない移行が回避されるという利点が得られる。
【0038】
到達する予定数は、複数の予定数を指定することもでき、効果の低減は、前記予定数の到達した後も達成され、1つまたは複数の仕様に応じて、成形部品の所望数に到達する前に効果の低減も複数回達成されるようにすることもできると、理解すべきである。これにより、少なくとも1つの目標破断点を有する成形部品スタック、または、複数の予定数が指定された場合には、複数の目標破断点を有する成形部品スタックが提供される。1つまたは複数の目標破断点において、成形部品スタックは2つ以上のスタックセクションに分割することができ、これは好ましくは進行中のプロセス中に連続的に行われる。積層スタックを分離する前の成形部品スタックの目標破断点の数は、スタックセクションの高さと、位置決め領域の高さとにのみ依存する。
【0039】
処理装置は、好ましくは、活性化手段の後方に配置され、すなわち、成形部品が最初に活性化手段を通過し、そこで接着剤被膜の処理が行われるように配置される。あるいはまた、処理装置は、切断手段の後、活性化手段の前に配置される。
【0040】
言い換えると、成形部品スタックは、意図された総高さまで位置決め領域において形成され、総高さに達したときに積層スタック(すなわち、1つの目標破断点または複数の目標破断点を有する所望の数の成形部品の積層スタック)として準備される。このような目標破断点は、隣接する2つの成形部品の接着力が、目標破断点以外で隣接する2つの成形部品の接着力より小さいことを特徴とする。目標破断点は、上記のようにして、所定数の成形品の後に、接着剤の効果(すなわちその可能な接着力)を低下させることによって形成される。また、位置決め領域に成形品積層体を形成する際に、これを複数回繰り返すことができる。たとえば、所望の数Nの成形部品を有する成形部品スタックは、それぞれN/n個の成形部品に達した後に目標破断点を有することができ、その効果は、N/n番目の成形部品ごとに接着剤被膜の効果が低下し、その結果、成形部品スタックは、(n-1)個の目標破断点を有して、n個のより小さいスタックセクションに分割できる。ここで、Nは自然数nで割り切れる自然数である。
【0041】
上記の例のように、所望の成形部品数に達するまで、到達した引き続く予定数の成形部品の全てが同一の間隔を有し、所望の数の成形部品が、目標破断点が等間隔に分布し、前記破断点において同一の高さを有するスタックセクションに分離できるようにすることができる。
【0042】
代替案として、所望数の成形部品が互いに異なる高さを有するスタックセクションに分離するための目標破断点を有する積層スタックを形成することが要求される場合、所望の数の成形部品に達するまで、連続する予定数の成形部品を互いに離隔することができる。
【0043】
スタックセクションは、成形部品スタックから別々に取り出される。スタックセクションは、2つのスタックセクション間に依然として作用する接着力に基づいて目標破断点として作用する効果低減した接着剤被膜において、たとえば手作業で分離される。次いで、個々のスタックセクションは、積層スタック完成品として、たとえば、固定子完成品として、回転子完成品として、または固定子セグメントもしくは回転子セグメントの完成品として利用可能である。
【0044】
全面に対して金属シートラミネートを結合した特別な実施形態は、一体型密閉冷却チャンネルを設けることができるという利点を有する。これは、複数の電気部品(たとえば、回転子および固定子)に異種または非互換性の冷却媒体を用いる場合に特に有利である。冷却チャネルは、ラメラに型押(stamp)することもできるし、積層スタックと隣接する部品(たとえばシャフトまたはハウジング)との間に設けることもできる。
【0045】
固定子、ならびに、おそらく回転子も、複数のセグメントで構成することができる。
【0046】
したがって、工程G)においては、目標破断点または複数の目標破断点が、位置決め領域全体に充填される成形部品スタックに組み込むことを提供し、目標破断点または目標破断点は、工程C)~工程F)の過程において目標破断点にある成形部品を追加工程にかけることによって生成される。この追加工程は、目標破断点に位置する成形部品に、この成形部品の接着剤被膜の効果を減少させるために、少なくとも部分的に、好ましくは全面に処理液を提供することからなる。
【0047】
1つの変形例では、処理液を塗布された成形部品は、一方の表面のみに処理液を有して提供することができる。この表面は、成形部品の目標破断面に位置する。
【0048】
代替の変形例では、処理液を塗布された成形部品は、両方の表面に処理液を有して提供することができる。この場合、成形部品は2つの予定破断面に位置し、成形部品はスタックセクションの一部ではない犠牲ラメラとして機能する。
【0049】
「金属シート」という用語は、一般に、金属材料からなる圧延製品を示し、ならびに、軽ゲージ金属シートまたは厚ゲージ金属シートに加えて、特に、当該シードは、金属ストリップ、たとえば軟磁性材料から作成される金属ストリップまたは金属シート、鋼ストリップまたは電磁鋼ストリップを示すこともできる。任意選択的に、金属シートの他の製造方法を用いることもできる。
【0050】
積層スタックは、好ましくは、固定子パッケージまたは回転子コアのいずれかである。接着剤に加えて、積層スタックは、いわゆるラメラからなり、そのため、積層スタックとも呼ばれ得る。
【0051】
前述の方法の有利な展開によれば、活性化手段は、第1赤外線照射器を有する。第1赤外線照射器を用いて、接着剤被膜に赤外線を照射し、それによる熱入力によって接着剤被膜を活性化する。
【0052】
言い換えると、活性化温度に到達するのに必要な発光出力において0.05秒間から1秒間との間の期間にわたって照射することで、金属シート中、特に接着剤中に、活性化に十分な温度がもたらされる。この温度は、接着剤の正確な選択および成形部品の特性(特に表面および材料)に明らかに依存し、本発明の実施を委託された当業者によって容易に決定することが可能である。
【0053】
特に好ましくは、活性化手段または複数の活性化手段は、切断手段と分離手段との間に配置され、第1の金属シート表面への打ち抜き方向に向けられる少なくとも1つの上部赤外線照射器を有する。あるいはまた、活性化手段は、切断手段が配置されている金属シートの側を過ぎた位置に配置され、打ち抜き方向と反対側に向けられる少なくとも1つの下部赤外線照射器を含む。あるいはまた、少なくとも1つの上部赤外線照射器と少なくとも1つの下部赤外線照射器との両方を設けることができる。ラメラ表面に対する赤外線照射器の配置は、必ずしも直角である必要はなく、異なる角度であってもよい。
【0054】
特に、上部および下部の赤外線照射器が存在する場合、使用される金属シートの両面に接着剤被膜が設けられていれば、第1の金属シート側および反対側の第2の金属シート側の両方で接着剤を特に好適な方法で活性化することができ、金属シート相互の優れた接着が期待できるという有利な結果が得られる。
【0055】
ある展開によれば、活性化手段は、第2赤外線照射器を有する。第1赤外線照射器および第2赤外線照射器は、異なる波長の赤外線を放射して、異なる活性化深度で接着剤被膜を活性化する。たとえば、第1赤外線照射器が780nmと1200nmとの間の波長の赤外線を放射し、および/または第2赤外線照射器が1200nmと3000nmとの間の波長の赤外線を放射するようにすることが可能である。このような配置により、波長に依存した異なる浸透深度のために、より均一な、特に深さに関してより連続的な、接着剤被膜の活性化を行うことが可能である。これは、特に良好な接着力および/または特に良好な力吸収能力という利点を伴う。
【0056】
このような配置は、二重活性化とも呼ばれることがある。繰り返しになるが、この二重活性化は片面または両面で行うことができる。
【0057】
代替的または追加的に、活性化手段は誘導加熱器を有することができ、金属シートが誘導加熱されるとき、接着剤被膜を有する金属シートの接着表面から始まって接着剤が活性化されるので、接着剤の良好な活性化およびその後の接着力が達成されるという利点がある。
【0058】
特別な展開として、たとえば誘導加熱によって、切断手段に入る前にストリップを予熱する。これには、プレス機内での活性化がより少ない熱で済むこと、あるいは導入される熱の総量が増加し、その結果、たとえば機械的特性に関して、接着剤がより高い要求を満たすことという利点がある。
【0059】
予熱のもう1つの利点は、押圧力の低減およびその結果としての周知の利点、ならびに、変形負荷の低減および内部応力の導入の低減である。この効果は、当業者にとって周知の切削工具のさらなる任意選択的な調整を追加的に行った場合に、特に良好に達成され得る。
【0060】
さらなる展開として、システム全体の内部に導入される熱をできる限り維持するために、工程B)~工程E)の一部または多く、好ましくは全てを、直列型システムのハウジング内で行うことは、プロセス全体のより高いエネルギー効率という利点も有する。
【0061】
さらに、ストリップの入口および後圧縮ステーションにおいて、直列型システムを部分的にまたは全体として積極的に加熱することができる。この目的のために、一般的に使用される圧縮フレームおよび工具ホルダーのオイル加熱は、たとえば、好ましくは向流の電気加熱カートリッジを備えた送風機による工具、後圧縮ステーションおよび/または内部の加熱を含むように拡張される。
【0062】
特別な実施形態では、直列型システムにおける活性化温度が30℃~180℃、好ましくは40℃~120℃、特に好ましくは50℃~100℃とすることができ、後圧縮ステーションにおいて、活性化温度よりも高い温度で後圧縮を実施することができる。さらなる展開において変形例が提供され、それによれば、処理装置は塗布ユニットを有し、塗布ユニットを用いて、接着剤被膜の処理として、成形部品に対して接着剤被膜に適用される処理液を少なくとも部分的に塗布する。処理液は、成形部品の数が予定数に達した後に、この目的のために選択された成形部品上の接着剤の効果を減少させるのに役立つ。よって、得られる成形部品スタックは、この時点で一種の目標破断点を有し、これにより、上下に配置されている2つのスタックセクションを分離できるようになる。塗布装置は、たとえば、塗布ローラ、または反対方向に回転する2つの塗布ローラからなるローラユニットとすることができ、ローラまたはローラユニットは、この目的のために選択された成形部品を塗布するために、直列型システムにおける成形部品の搬送方向と平行または垂直に走行する。
【0063】
選択された成形部品の片面または両面に処理液が塗布されるようにすることができる。成形品の両面に処理液を塗布した場合、成形部品は両面のそれぞれのスタックセクションから分離され、さらなる機能を有さないスクラップとして取り除くことができる。
【0064】
成形品は、その表面全体に処理液が塗布されていることが好ましい。
【0065】
好ましくは、処理液として、打ち抜きオイルを接着剤被膜に適用する。その利点は、入手が容易であることであり、また、いずれにしても打ち抜きオイルは工程で不可避的に用いられるので、別の種類の物質の使用による望ましくない反応が予期されないために好適であることである。打ち抜きオイルは、好ましくは自己蒸発型の打ち抜きオイルである。たとえば、非水溶性冷却潤滑剤、特に切削防止用の中粘度の金属加工油を、打ち抜きオイルとして用いることができる。
【0066】
たとえば、深絞り加工に適し、粘着性や濡れ性により均一な潤滑膜を確保できる、塩素およびバリウムのような重金属を含まないオイルを用いることができる。オイルは、80~110mm2/s、好ましくは90~100mm2/sの40℃における粘度を有し、150℃以上、好ましくは170℃以上の引火点を有することがより好ましい。特に、オイルは、フェノールおよびイソプロピル化リン酸を、好ましくは3:1の割合で含み、かつ任意選択的にリン酸トリフェニルを5重量%の比率で含むことが好ましい。たとえば、カストロール社から、本願出願日においてIloform FST 16という商品名で販売されているオイルを使用することができる。
【0067】
代替的または追加的に、接着剤被膜の処理として接着剤被膜を過露光させる照射器を使用することができる。たとえば、活性化に用いられる赤外線照射器は、たとえば制御システムを用いて、選択された成形部品に対する赤外線照射器の光束出力を単に増加させることにより、および/または成形部品の搬送を一時的に減速または停止させることにより赤外線照射器下での成形部品の滞留時間を増加させることにより、過露光に使用することができる。
【0068】
代替的または追加的に、接着剤被膜の処理として湿潤ユニットを用いて、冷却液(たとえば液体窒素)を接着剤被膜に適用することができる。
【0069】
工程F)において、成形部品は、本発明による方法で配置され、それらはまた、軸方向の力(すなわち平坦な表面に対しする垂直方向を指向する力)を用いて、たとえば押圧ラムによって、好ましくは各成形部品配置の後、または所定数の複数の成形部品の配置の後、または成形部品スタックの形成後のいずれかにおいて、圧縮される。軸方向の力は、成形部品の固有の重量から生じる力を支持するが、任意の後圧縮の間に印加される力よりも著しく低い。
【0070】
特に好ましくは、スタックセクションが分離された後、スタックセクションは、端面上の圧力(すなわち、ラメラ表面に垂直な圧力)により、好ましくは端面全体で均一な圧力により、プレス内で後圧縮される。これは、10000N/(14000mm2)と200000N/(10000mm2)との間、好ましくは50000N/(14000mm2)~150000N/(10000mm2)の間の圧力、ならびに、30℃と180℃との間、好ましくは40℃と120℃との間、特に好ましくは50℃と100℃との間の成形部品スタック温度で行われる。圧縮は、2段階のプロセスで行われ、第1段階は、工程F)における成形部品スタックの形成、または工程F)における成形部品スタックのスタックセクションの形成であり、第2段階は、後圧縮である。二段階成形は、接着力の大幅な増加をもたらすこと、すなわちスタックセクションを分離するための頂部引張(top-pull)試験で加えるべき力が約2倍となることが示されている。その測定例を、以下に示す。その他の証明された利点は、熱放散の改善、および複合材全体のせん断強度の5%以上の向上を含む。
【0071】
温度および圧力の正確なマッチングは、サイクル時間および経済的側面を考慮して、当業者によって実施されるべきである。また、マッチングは、金属シートの厚さに対する接着剤の厚さの比率および活性化手段の選択された構成に依存し得るが、特に、作成すべき部品の要件に依存することもできる。
【0072】
成形部品スタックの温度は、30℃と180℃との間、好ましくは40℃と120℃との間、特に好ましくは50℃と100℃との間である。当該温度は、熱を発生する照射器を用いる位置決め装置内の成形部品スタックの加熱によって達成することが好ましい。あるいはまた、照射器を分離手段内またはその次位に配置してもよく、および/または誘導装置を用いてもよい。加えて、この加熱から生じる余熱を、後圧縮のための前述の領域で利用することが好ましい。
【0073】
圧縮工程は、端面の均一な面圧により、積層スタックの軸方向に、すなわちラメラの表面に垂直な方向に、積層スタックを圧縮することによって実施される。この圧縮によって、個々の成形部品間にかなり良好な接着結合が生じ、これが積層スタックの長寿命化に寄与する。好ましくは、下流の圧縮工程は、プレスの外側の下流圧縮ステーションで行われる。
【0074】
さらなる展開において、力による制御の代わりに変位による制御で圧縮を行うこともできる。これは、たとえば、調整可能な停止装置によって実現できる。非常に正確な温度制御と組み合わせて、部品の軸方向の長さを非常に正確に調整することができる。しかしながら、代替的に、圧縮工程を、好ましくは部分的または完全に分離手段の圧力を用いて実施することもできる。
【0075】
接着および後圧縮によって達成される積層体の非常に良好な機械的強度は特に有利であり、その結果、たとえば、機械加工をより容易にかつ正確に行うことができる。よって、速度や半径方向の速度に伴って増大する要件も、より簡単に実行することができる。別の利点は、設計の自由度の高さである。
【0076】
個々のシート(またはサンドイッチ)の均一な加熱のために、より均質な加熱、およびそれに付随する利点(たとえば、より良い幾何学的特性、より低い内部応力に関する)が得られる。
【0077】
特に好ましくは、この方法は、接着剤塗料を水性分散物として金属シートに塗布した金属シートを用いて実施される。水性分散物の利点は、塗料系が有機溶媒を含まない(VOCフリー)ことである。
【0078】
また、被覆されたシートはほとんど不粘着性まで乾燥するため、個々の巻取物が互いに貼り付くことなくコイルに巻き取ることができるという利点もある。引き続く加圧および加温による化学架橋も可能である。溶媒ベースの溶解エポキシド樹脂系は、一般に、不粘着状態までの乾燥に十分な高分子量系ではなく、コイル内の個々の巻取物は、全くないとしても、困難性なしに巻き戻しできないという欠点があり、これにより後続の工程での使用が妨げられる。
【0079】
したがって、特に好ましい態様において、1つの実施形態は、塗布された接着剤被膜が有機溶媒に溶解した形態で存在しないことを提供する。
【0080】
接着剤塗料は、当業者に知られている市販の焼成樹脂系と比較して、同等の焼成条件下で著しく高い粘度、特に化学架橋の開始直前の著しく高い複素粘度を有する接着剤からなることが好ましく、これは以下に提供される試験結果によって例示される。この結果、本発明またはその展開にしたがう方法の過程で到達する温度では、接着剤は液化せず、せいぜい接着剤が可塑化すなわち軟化するに過ぎず、接着剤が成形部品スタック内に完全に留まるという利点がある。
【0081】
特に、ホットメルト接着剤ではない接着剤、すなわち、180℃までの前述の活性化温度で液状にならない接着剤を使用することが好ましいとされる。
【0082】
特に好ましくは、化学架橋の開始直前、すなわち、たとえば化学架橋の温度範囲に最も近い局所極小値の位置における「複素粘度(温度)」曲線において、8Pa×s以上、好ましくは10Pa×s以上の複素粘度を有する接着剤が使用される。本発明またはその開発による方法において、少なくとも化学架橋が始まる温度未満の温度で前述の複素粘度を下回らない接着剤は、接着剤が広い面積を覆う液状化をせず、使用温度(特に使用される活性化温度)で接着剤がせいぜいペースト状となることを意味する。このことは、優れた特性、特に幾何学的寸法の高い精度を有する積層スタックが得られることを意味する。このような積層スタックはまた、後圧縮工程を有する方法を実施するのに特に適しており、これはさらに幾何学的寸法の高い精度を促進する。
【0083】
接着剤は、好ましくは、60重量部の固形樹脂形態のエポキシド樹脂と、0.5~15重量部の潜在性硬化剤と、1~15重量部の潜在性促進剤とを含有する。
【0084】
接着剤は、好ましくは1~10重量部の潜在性硬化剤を有し、特に好ましくは2~5重量部の潜在性硬化剤を有する。
【0085】
「潜在性硬化剤」という用語は、エポキシド樹脂を硬化させるために使用されるが、硬化のために、特に化学エネルギーおよび/または熱エネルギーを供給することによって活性化されなければならない物質を表す。潜在性硬化剤は、たとえば、粉末状の固体として接着剤に添加される。
【0086】
「潜在性促進剤」という用語は、潜在性硬化剤によるエポキシド樹脂の硬化を促進する物質を意味する。促進剤に関連する「潜在性」という属性は、促進剤がその機能を果たすために化学エネルギーおよび/または熱エネルギーによって予め活性化される必要もあるという事実に関連する。潜在性促進剤は、たとえば、粉末形態の固体として接着剤に添加される。
【0087】
上記組成物は、接着剤混合物を形成するための、特定重量部の固体として存在する成分の混合物に関し、接着剤混合物は、適切な液体による分散および/または溶解により、接着剤被膜を形成することができる接着剤となる。使用可能な状態、すなわち塗布に適した形態において、特定成分を有する接着剤は、好ましくは、分散媒中の上記組成物の分散物、特に水性分散物として存在する。
【0088】
金属シートは熱活性化された接着剤からなる接着剤被膜を伴って提供されるので、接着剤を塗布された金属シートは、電磁部品(特に固定子パッケージまたは回転子パッケージ)の柔軟な適応性を有する製造工程の予備的製品として使用される。最初に接着剤を熱活性化しなければならないので、接着機能は、たとえば打ち抜きによって金属シートからラメラが分離された後、所望の時点または所望の方法手順で実行することができる。活性化後の短時間内の化学硬化反応中に接着するように、活性化後に(任意選択的に、好ましくは、プレスおよび/またはその後の圧縮工程で部分的または全体的に面圧の下で)、ラメラを一緒にしなければならない。これは、完璧で、剥離のない、幾何学的に正確で機械的に安定したスタックを作成する唯一の方法である。
【0089】
記載されている接着剤組成物と組み合わせて、金属シートは、たとえば0.05~1秒、好ましくは0.3~1秒の短い潜在的な活性化時間を有する表面を有する。これらの特性は、比較的高い温度耐性と、比較的高い絶縁能力および耐老化性とを両立させる。
【0090】
本発明にしたがって使用される接着剤中に存在するエポキシド樹脂は、1つまたは複数のエポキシド基を有する1種または複数種のエポキシド樹脂成分を含み、好ましくは、少なくとも1種のエポキシド樹脂が50℃より高い軟化点を有する。
【0091】
エポキシド樹脂は、脂肪族エポキシド樹脂、脂環式エポキシド樹脂、または芳香族エポキシド樹脂であることができる。脂肪族エポキシド樹脂は、脂肪族基と少なくとも2つのエポキシド樹脂基の両方を有する成分を含む。
【0092】
脂肪族エポキシド樹脂の例は、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジメチルペンタンジオキシド、ブタジエンジオキシド、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルなどであり得る。
【0093】
脂環式エポキシド樹脂は、たとえば、3-シクロヘキセニルメチル-3-シクロヘキシルカルボキシレートジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルアルキル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシ-o-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキサンジオキシド、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンジオキシド、および1,2-エポキシ-6-(2,3-エポキシプロポキシ)ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダンを含む。
【0094】
芳香族エポキシド樹脂は、たとえば、ビスフェノールAエポキシド樹脂、ビスフェノールFエポキシド樹脂、フェノールノボラックエポキシド樹脂、クレゾールノボラックエポキシド樹脂、ビフェニルエポキシド樹脂、ビフェノールエポキシド樹脂、4,4’-ビフェノリンエポキシド樹脂、ジビニルベンゼンジオキシド、2-グリシジルフェニルグリシジルエーテルおよびテトラグリシジルメチレンジアニリンを含む。
【0095】
本発明の好ましい実施形態において、エポキシド樹脂は、ビスフェノールAエポキシド樹脂である。
【0096】
使用される潜在性硬化剤は、好ましくは80℃から200℃の範囲の温度で接着剤のエポキシド樹脂との硬化反応を起こす物質または混合物である。
【0097】
硬化剤は、ジシアンジアミド、アジリジン誘導体、トリアジン誘導体、イミダゾリン類、イミダゾール類、o-トリルビグアニド、環状アミジン、有機ヘキサフルオロアンチモネートまたはヘキサフルオロリン酸化合物、またはBF3アミン錯体を含むことができる。これらの化合物は、単独または組み合わせにおいて使用することができる。
【0098】
たとえば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダホール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリミウムトリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-2,4-ジアミノ-6-[2”-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾ-ル、(1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジル)イミダゾリウムクロリド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン、2,4-ジアミノ-6-ビニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ビニル-1,3,5-トリアジンのイソシアン酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-1,3,5-トリアジンのイソシアン酸付加物、1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ノニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジメトキシ-6-メチル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジメトキシ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4,6-ジメチル-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4-ジメチルアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4-エトキシ-6-メチル-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4-エチル-6-メトキシ-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4-メトキシ-6-メチル-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4-メチル-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン、2-エチルアミノ-4-メトキシ-6-メチル-1,3,5-トリアジン、および1-o-トリルビグアニドを含む。
【0099】
本発明の好ましい実施形態では、促進剤は、ウレア誘導体および/またはイミダゾールを含む。
【0100】
また、本発明による接着剤組成物は、さらなる成分を含むことができる。
【0101】
硬化剤がジシアンジアミド、イミダゾール、BF3アミン錯体またはそれらの組合せを含むことが好ましい。
【0102】
1つの実施形態において、接着剤は、1~10重量部の潜在性促進剤、好ましくは1~5重量部の潜在性促進剤、特に好ましくは1~4重量部の潜在性促進剤を含むことができる。別の好ましい実施形態では、接着剤は、さらに、0.2~8重量部の染料、好ましくは0.2~5重量部の染料を有する。その結果、表面の視覚的外観をより好ましいものとすることができる。染料は、ランプブラック、酸化鉄黒色顔料、または水溶性染料からなる群から選択することができ、あるいは、前記の複数の混合物である。
【0103】
好ましくは、接着剤は、当業者に知られている絶縁添加剤の1つ以上を含む。「絶縁添加剤」という用語は、接着剤の電気抵抗を増加させるために特に提供される添加剤を指す。絶縁添加剤は、1~10重量部、好ましくは1~5重量部の量で接着剤に含有させることができる。
【0104】
接着剤は、好ましくは、当業者に知られている1種または複数種の防錆添加剤を含む。防錆添加剤は、1~10重量部、好ましくは1~5重量部の量で接着剤に含有させることができる。
【0105】
本方法の変形例では、潜在性促進剤はウレア誘導体を含む。
【0106】
接着剤に含まれる潜在性促進剤は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは完全にウレア誘導体からなる。
【0107】
特に好ましくは、ウレア誘導体は、N,N-ジメチルウレアまたはN,N’-ジメチルウレア、あるいは、好ましくは官能基として2つのウレア基を有する二官能性ウレア誘導体、非常に特に好ましくは4,4’-メチレンビス-(フェニルジメチルウレア)、またはこれらの複数種の混合物である。
【0108】
接着剤に含まれる潜在性促進剤は、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、さらに好ましくは少なくとも98重量%、特に好ましくは完全に4,4’-メチレン-ビス-(フェニルジメチルウレア)からなる。
【0109】
本方法の代替案では、ウレア誘導体として、非対称に置換されたウレアも、同様にまたは排他的に使用される。
【0110】
代替的な展開では、少なくとも1つ、好ましくは2つ、特に好ましくは3つの水素原子が、互いに独立して、アルキル基および/またはフェニル基によって置換されているウレア誘導体が、本発明にしたがって使用される。アルキル基およびフェニル基は、さらに置換されていてもよい。アルキル基は、好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはブチル、好ましくはメチル基であり;フェニル基は、フェニル、または、好ましくは4位における、また好ましくは前述のアルキル基のクール1としても見出される、深い置換体である。さらなる代替案では、本発明の意味において、二官能性ウレア誘導体は、2つの官能基を有する前述の誘導体として示される。官能基は、材料特性、特に化合物の反応挙動を有意に決定する原子団であり、特に、官能基は反応に関与する。さらに、使用するウレア誘導体は、無ハロゲンである。あるいはまた、使用するウレア誘導体は、官能基として2つのウレア誘導体を有する。その結果、有利なことには、架橋剤としてのジシアナミドの存在なしに、エポキシド樹脂を硬化させることができる。
【0111】
ウレア誘導体として提供することも可能な物質は、下式で表される化合物である。
【0112】
【0113】
(式中、Rは、水素または以下の式であり、
【0114】
【0115】
n=0または1、好ましくは1であり、
X=OまたはS、好ましくはOであり、
R1、R2およびR3は、それぞれ水素、ハロゲン、ニトロ基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルコキシル基、置換または非置換のアリール基、または置換または非置換のアリールオキシル基であり、
R4は、任意選択的にハロゲン、ヒドロキシルまたはシアノで置換されてもよい、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アラルキル基であり、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチルであり、特に好ましくはメチルであり、
R5はR4と同一であるか、またはアルコキシル基であり、
任意選択的に、R5はR4と複素環を形成してもよい。)
【0116】
または、ウレア誘導体として提供することも可能な物質は、N,N-ジメチル-N’-(3,4-ジクロロフェニル)ウレア、N,N-ジメチル-N’-(3-クロロ-4-メチルフェニル)ウレア、N,N-ジメチル-N’-(3-クロロ-4-メトキシフェニル)ウレア、N,N-ジメチル-N’-(3-クロロ-4-エチルフェニル)ウレア、N,N-ジメチル-N’-(4-メチル-3-ニトロフェニル)ウレア、N-(N’-3,4-ジクロロフェニルカルバモイル)モルホリン、またはN,N-ジメチル-N’-(3-クロロ-4-メチルフェニル)チオウレアである。
【0117】
ウレア誘導体は、好ましくは4,4’-メチレン-ビス-(フェニルジメチルウレア)、または前述の2種、3種またはそれ以上の混合物である。好ましくは、そのような混合物は、少なくとも10%、25%、好ましくは50%、60%、70%、80%または90%の4,4’-メチレン-ビス-(フェニルジメチルウレア)を含む。
【0118】
言及されたタイプのウレア誘導体の利点は、英国特許出願公開第1293142号明細書に見出すことができる。本発明者らは、そのような誘導体が、電磁部品の製造に優秀に使用できることを見出した。
【0119】
ウレア誘導体の平均粒径(算術平均)は、好ましくは1μmと30μmとの間である。
【0120】
接着剤塗料を、金属シートの片面または両面に塗布することができる。両面に接着性塗料を塗布する場合、被膜の厚さは同一であってもよいが、異なる厚さで提供することも可能である。
【0121】
接着剤被膜の好ましい厚さ、すなわち、片面接着の場合には片面の被膜の厚さ、両面接着の場合には両面の接着剤被膜の合計の厚さは、1μmと20μmとの間、好ましくは2μmと10μmとの間である。特に、合計厚さが4μmと8μmとの間であることが好ましい。
【0122】
片面に接着剤を塗布することは、装置の面でより簡単な生産に関連し、一方、両面に接着剤を塗布することは、金属シートから作製される個々のラメラを上下に配置するとき、接着剤表面が接着剤表面に接して配置され、試験で示されるように、接着性が向上し、よって電磁部品の高い機械的安定性が達成されるという利点と関連する。
【0123】
特に好ましくは、第1の金属シート表面の第1部分被膜と第2の金属シート表面の第2の厚さを有する第2部分被膜とは、第1の厚さが第2の厚さの少なくとも1.5倍、好ましくは2倍になるようにして、互いに適合させる。このような構成において、第1の厚さが優れた絶縁性を担うので、接着間隙の危険をほとんど無視でき、同時に、2つのうちの薄い方、すなわち第2の厚さで塗布された第2部分被膜は、実質的に、優れた接着性を生み出すのに役立つ。
【0124】
両被膜の合計厚さが4μmと6μmとの間である両面被覆が非常に特に好ましい。製造された例が示すように、このような薄い被膜厚さは、その高い反応性のために、本発明または本発明の展開にしたがって使用される接着剤で可能である。既知の焼付塗料接着剤は、通常、6μmを超える被膜厚さを必要とする(たとえば、両面の焼付被膜、各面において5μm)。これは、本発明またはその展開にしたがう金属シートから、焼付塗装法によって製造された部品よりも著しく高い鉄充填率を有する部品(特に固定子または回転子)を製造できるという利点をもたらす。この利点は、当該部品を有する電気機械のある程度高い効率である。しかしながら、合計で1μmと20μmとの間、好ましくは2μmと8μmとの間の接着剤被膜を提供することができる。
【0125】
さらなる代替案において、前処理剤、接着促進剤、リン酸化剤、および/または、絶縁体(たとえば絶縁樹脂コーティングの形態)を、金属シートと接着剤層との間に配置するか、および/または絶縁樹脂塗膜のみを接着剤層と反対側の金属シート上に配置するか、または表面が非被覆である。
【0126】
金属シートは、特に好ましくは、いわゆるNO電磁鋼とも呼ばれる無方向性電磁鋼として設計されるか、またはそれらから分離される。無方向性電磁鋼ストリップは、Feおよび不可避的不純物に加えて、以下の元素:0.1~3.50のSi、0.01~1.60のAl、0.07~0.65のMn、任意選択的に0.25までのPを含む(数字はすべて重量%である)。もちろん、全ての合金成分と不純物の合計が100重量%になることは言うまでもない。
【0127】
特に以下の条件が好ましい:2.3~3.40のSi、0.3~1.1のAl,0.07~0.250のMn,任意選択的に0.030までのP、および残余は、Feおよび不可避的不純物である(単位はすべて重量%)。もちろん、全ての合金成分と不純物の合計が100重量%になることは言うまでもない。
【0128】
無方向性電磁鋼ストリップまたは無方向性金属シートは、好ましくは、DIN EN ISO 6892-1に準拠して測定される、190MPaから610MPaの標準的な通常条件下での長手方向の降伏強さと、310MPaから740MPaの最大引張強度と、6%から48%の最小破断伸びA80と、100~250のHv5硬度とを有する。
【0129】
特に好ましい実施形態において、材料は、DIN EN ISO 6892-1に準拠して測定される、310MPaから600MPaの室温での長手方向の降伏強さ、400MPaから640MPaの最大引張強度、および7%から32%の最小破断伸びA80、ならびに、130~250のHv5硬度を有する。この材料は、好ましくは、P1.0;400Hzにおいて、5%~17%の範囲の異方性を示す。
【0130】
0.05mmと2.5mmとの間の厚さを有するシート金属(特に電磁鋼ストリップ)が適切かつ好適に用いられ、0.1mmと1.0mmとの間の厚さが好ましい。特に0.15~0.4mmの厚みが好ましい。
【0131】
あるいはまた、金属シートは、たとえば前述の電磁鋼ストリップの1種から作製される金属シート層と、1つまたは複数の追加層(たとえば、音響減衰機能層(たとえばボンダルE)を有する)からなる多層複合構造(サンドイッチ)であってもよい。さらに、金属シートは、音響減衰機能層(たとえばセミボンダルE)を片面または両面に塗布することもでき、それにより、説明した接着剤系を、音響減衰機能層(たとえばアクリレート化学ベース)に直接連結することができる。エポキシド樹脂系が良好な相溶性を有することは、当該技術において知られている。
【0132】
あるいはまた、金属シートは、一方の面に音響減衰機能層を有し、金属シートの反対面に本発明にしたがって使用される接着剤層を有することができる。
【0133】
有利な展開では、本発明による方法の工程C)~工程F)は、少なくとも80/分、好ましくは120/分と300/分との間の増加速度(rise rate)で実施される。接着接続またはより小さな電気部品の要件がより低い場合、300/分を十分に超える増加速度を達成することも可能である。
【0134】
本発明の1つの思想は、電気機械用の積層スタックまたは積層スタックのスタックセクションに関し、スタックは、導入部またはその展開の1つに記載された種類の方法を用いて製造される。特に、積層スタックまたはスタックセクションは、固定子として、または回転子として設計される。
【0135】
本発明はまた、電気機械、特に電気モータを含み、この電気機械は、本発明またはその開発の1つによる方法を用いて製造された固定子および/または回転子を有する。
【0136】
1つの展開において、電気機械は固定子と回転子を有し、固定子は、部分的または完全に、本発明またはその展開の1つによる方法を用いて製造される積層スタックであり、回転子は、部分的または完全に、当業者に知られている打ち抜きスタック法によって製造される構成要素である。電磁効率の点で特に要求の厳しい固定子は、それによって優れた電磁特性を提供され、一方、多くの用途においてその電磁特性に関する要求の低い回転子は、非常にコスト効率の高い慣用の打ち抜きスタック法を用いて製造される。その結果、良好な電磁特性とコスト効率の良い製造との間の良好なトレードオフを提供する電気機械が提供される。
【0137】
本発明の内容のさらなる詳細、特徴、および利点は、本発明の実施形態を例示的に示す図面と関連した以下の説明から得られる。
【0138】
上述および後述の特徴は、示された組み合わせだけでなく、他の組み合わせでも、または単独でも使用できることは言うまでもない。
【実施例0139】
本発明にしたがう電気モータ用積層体の製造方法の第1の実施形態の例を
図1に示す。接着剤を既に塗布した金属シート、すなわち、本発明にしたがって提供される種類の接着剤を塗布された無方向性電磁鋼ストリップ1を提供する。このストリップを、直列型システム中へと搬送する。最初のステーションでは、多数の打ち抜き機4が、回転子ラメラまたは固定子ラメラとして設計されている成形部品2を切り出す。後続のステーションにおいて、赤外線を出力するためのNIR放射源として設計された手段5を用いて成形部品に照射し、得られる加熱によって成形部品の接着剤被膜を活性化する。活性化手段5は、第1赤外線照射器5aと第2赤外線照射器5bとを有する。照射器5aは、780nmおよび1200nmの波長の放射線を照射し、第2照射器は、1200nmおよび3000nmの波長の放射線を照射する。異なる波長を照射することにより、シート表面に垂直な方向において、接着剤被膜のより均一な活性化を達成し、接着剤被膜の活性化に要する時間が短くなるため、より高い効率はより高い増加速度を可能にする。
【0140】
特定のラメラは、後続の成形部品スタックにおける個々の積層スタック間の目標破断点として機能させるために、塗布ローラとして設計された処理装置9を使用して被覆される。成形部品の規定数に達したときはいつでも、紙面内に示される表現において、塗布ローラ9は金属シートに向かって移動し、接着剤被膜の効果を低減または完全に除去するために、達した規定数の後の次の成形部品を被覆する。被覆された成形部品は、その後、成形部品スタックをスタックセクションに分離することができる目標破断点を有し、好ましくは連続運転プロセスにおいて、スタックセクションの各々は積層スタック完成品を表す。成形部品スタックの製造において、ラメラ8は、達成した成形部品の予定数に対応するラメラであった。このため、処理装置として適応された塗布ローラ9を用いて打ち抜きオイルを塗布し、それにより接着強度を低下させたものである。
【0141】
次に、成形部品は、切断ダイとして設計された分離手段6を用いて押し出され、位置決め領域に収集されて予備固定され、位置決めおよび/または角度的に整列した状態でスタック3を形成する。すなわち、活性化した接着剤被膜を有するラメラは、単にそれ自体の重量によって互いに接着する。
【0142】
取り出しの状態において、積層スタックは、目標破断点8で取り出され、ラミナ8上の接着剤塗布効果が低下した、成形部品スタック中のスタックセクションである。スタックセクションは、自重で取り出すか、装置または手作業の支援によって成形部品スタックから分離させることができる。本実施例では、圧縮ステーション7中のスタックセクション3’として、後続工程で後圧縮される2つの別々のスタックセクションが存在する。
【0143】
最後に、圧縮ステーションにおいて、接着剤が硬化して完成した積層スタックを取り出すことができるまで、圧縮ラム7による圧縮を行う。
【0144】
本発明による金属シートの例および本発明による方法のためのその有利な挙動は、実施された試験で与えられる。
【0145】
以下のサンプルを製作した。
材料コード1.0816(EN10027-2による)の電磁鋼ストリップM800-50A(EN10027-1による)から、厚さ0.5mm、長さ×幅:200×150mmのシートを作製した。
【0146】
サンプル0、1、2、3を用意した。サンプル0、1、2は比較サンプルであり、それらは本発明によらない接着剤を塗布されている。サンプル3は、有利なサンプルである。
【0147】
用意したサンプルは、以下のパラメータにしたがって塗布ローラを使用して接着剤を塗布された上記のタイプのシートである。
【0148】
【0149】
層厚
サンプル0: 第1面 6μm、第2面 0μm。
サンプル1: 第1面 6μm、第2面 0μm。
サンプル2: 第1面 4μm、第2面 2μm。
サンプル3: 第1面 4μm、第2面 2μm。
【0150】
各々のサンプルタイプについて、複数個の試料を用意した。長期安定性を試験するために、それぞれ、同一試料を2個ずつ用いて、18個のサンドイッチ構造体を作成した。
【0151】
板面積200mm×200mmの板状プレス機を用いて、面圧3N/mm
2の面圧により、同種の試料2枚を接着し、オーブン中で120℃に加熱して120℃で30分間保持して、接着剤を活性化させた。その後、8個の試料をオーブンに入れ、40℃で保存した。1週間ごとにサンプルを採取し、せん断値試験(DIN EN 1465に基づく)を実施した。さらに、室温で保管した試料についても、1週間ごとにせん断値試験を実施した。その試験結果を
図2aおよび
図2bに示す。
【0152】
この結果から、室温において、本発明にしたがって使用される組成物は、参考サンプル0、サンプル1およびサンプル2よりも良好なせん断値を有することが分かる。6週間後に試験したサンプル0は、著しく低下したせん断値を有した;8週間後、サンプル0は、せん断値が0であった。
【0153】
40℃での保存では、遅くとも1週間後には参考サンプル0のせん断値は0となった。すなわち、このサンプルは40℃での保存安定性を有さないことがわかる。2週間後のサンプル1およびサンプル2は、7.0N/mm2以上のほぼ不変の良好なせん断値を示したが、3週間にわたる保存の後に顕著に劣化し始める。
【0154】
いずれの場合も、両面をコーティングしたサンプル2のせん断値は、片面をコーティングしたサンプル1のせん断値より高い。これは、金属板の両面にコーティングを施した場合に関する特に有利な効果の証明である。
【0155】
特に、サンプル3は、40℃保存で4週間経過しても、良好なせん断値がほとんど変化せず、保存安定性が最も優れていることがわかる。唯一得られたサンプルは、40℃保存4週間後でも、良好なせん断値が変化していないサンドイッチシートであった。出願時点では、この試験はまだ継続中である。
【0156】
さらに、サンドイッチ完成品を試験温度まで加熱し、短時間加熱保持した後、せん断値試験も行った。
【0157】
【0158】
その結果、サンプル2およびサンプル3ともに、200℃までの高温に一定期間耐えることができ、機械的安定性が損なわれていないことがわかる。特に、サンプル3のせん断値は、比較サンプル2のせん断値よりも著しく高いことがわかる。
【0159】
参考として、サンプル0を温度試験にかけたところ、150℃に加熱した後に約0.90N/mm2のせん断値が得られることが示された。サンプル3に基づいて、既知の金属シートと比較して、本発明による金属シートは、より温度安定性の高い積層スタックの製造に適していることが判明した。
【0160】
図3において、サンプル3で使用されたものと同じ組成を有する有利な接着剤は、100℃の領域の温度においてさえ、市販の焼付け塗装よりも著しく高い複素粘度を有することが、実施された試験から分かる。特に、架橋反応直前の10.74Pa×sという値の複素粘度は、慣用の焼付け塗装で得られる値よりも著しく高い値である。このことは、接着剤が液化せず、せいぜいペースト状の挙動への移行が起こるため、このような接着剤被膜を有する金属シートは、後圧縮を提供する本発明による方法、特にその展開にも有利に使用できるという事実を支持する。その結果、積層スタックからの接着剤の顕著な流動は観察されず、対応する利点、特に、たとえばトッププル試験で検証可能な良好な接着性が得られる。
【0161】
70日間の長期試験における他の試験(不図示)、サンプル3は、耐油性に関してサンプル0~サンプル2のそれぞれと質的に同等であること、すなわち、せん断値試験において、150℃の油中に70日間保存してもラメラ相互の接着力が低下しないことが確認された。