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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090702
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】監視装置及びクレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/88 20060101AFI20240627BHJP
   B66C 13/00 20060101ALI20240627BHJP
   B66C 23/74 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B66C23/88 D
B66C13/00 D
B66C23/74 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206762
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】山本 一徳
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA07
3F205CA01
3F205GA01
3F205GA07
(57)【要約】
【課題】監視できない死角を小さくできる監視装置を提供する。
【解決手段】監視装置10は、上部旋回体102と、前記上部旋回体102の後部に着脱可能に取り付けられるカウンターウェイト106と、を備える移動式クレーンに用いられる。監視装置10は、周辺情報を取得する周囲情報センサとしてのカメラ70と、前記上部旋回体102の後部のフレーム102bに取り付けられ、前記周囲情報センサを前後方向に移動させる移動機構20と、を有する。前記移動機構20は、前記フレーム102bに近位の第1位置P1と、前記フレーム102bから後方へ遠位の第2位置P2との間で前記周囲情報センサを前後方向に移動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部旋回体と、前記上部旋回体の後部に着脱可能に取り付けられるカウンターウェイトと、を備えるクレーンに用いられる監視装置であって、
周囲情報を取得する周囲情報センサと、
前記上部旋回体の後部のフレームに取り付けられ、前記周囲情報センサを前後方向に移動させる移動機構と、を有し、
前記移動機構は、第1位置と、前記フレームに対して前記第1位置よりも後方に位置する第2位置との間で前記周囲情報センサを前後方向に移動させる
監視装置。
【請求項2】
前記第2位置は、上下または左右方向に見て前記カウンターウェイトと重なる位置、又は前記カウンターウェイトの後端よりも後方の位置である
請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記カウンターウェイトはその左右方向における中央部が凹んでスペースが設けられた形状であり、前記移動機構が前記スペースに配置されている
請求項2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記第1位置は、前記上部旋回体の後端よりも前の位置である
請求項1から3の何れか一項に記載の監視装置。
【請求項5】
前記移動機構が、
前記第2位置に位置する前記周囲情報センサを制振する制振部
を有する
請求項1から3の何れか一項に記載の監視装置。
【請求項6】
前記移動機構は、が、
前後方向に延びるシャフトと、
前記上部旋回体の後部に取り付けられ、前記シャフトのラジアル荷重を受け、前記シャフトを前後方向に移動可能に支持する支持部材と、
を有し、
前記周囲情報センサが前記シャフトの後端側に取り付けられ、
前記制振部が前記支持部材である
請求項5に記載の監視装置。
【請求項7】
前記移動機構が、
前後方向に延びるシャフトと、
前記上部旋回体の後部に取り付けられ、前記シャフトのラジアル荷重を受け、前記シャフトを前後方向に移動可能に支持する支持部材と、
前記シャフトの後端に取り付けられ、作業員によって掴まれるハンドルと、
を有し、
前記周囲情報センサが前記シャフトの後端側に取り付けられ、
前記ハンドルが操作されることで、前記シャフトが前後方向に移動して前記周囲情報センサが移動することが可能である
請求項1から3の何れか一項に記載の監視装置。
【請求項8】
前記移動機構が、
前後方向に延びるシャフトと、
前記上部旋回体の後部に取り付けられ、前記シャフトのラジアル荷重を受け、前記シャフトを前後方向に移動可能に支持する支持部材と、
を有し、
前記周囲情報センサが前記シャフトの中心軸よりも下側に取り付けられる
請求項1から3の何れか一項に記載の監視装置。
【請求項9】
請求項1に記載の監視装置を有し、上部旋回体と、前記上部旋回体の後部に着脱可能に取り付けられるカウンターウェイトとを備えるクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は監視装置及びクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ホイールクレーンを開示する。そのホイールクレーンの旋回体の後部には、カメラがチルト機構を介して取り付けられており、そのチルト機構は、カウンターウェイトを旋回体の後部に留める爪付きリンクに連動する。爪付きリンクが油圧シリンダーによって駆動されることによってカウンターウェイトを留めると、チルト機構が爪付きリンクに連動して、カメラを後ろに向けて振り上げる。爪付きリンクが油圧シリンダーによって駆動されることによってカウンターウェイトを解放すると、チルト機構が爪付きリンクに連動して、カメラを振り下げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-41373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、カメラがカウンターウェイトのやや前に配置されているため、カメラがチルト機構によって振り上げられても、カウンターウェイト106の後方には、カメラにより監視できない死角が存在する。
【0005】
本発明は、監視できない死角をより小さくできる監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
上部旋回体と、前記上部旋回体の後部に着脱可能に取り付けられるカウンターウェイトと、を備えるクレーンに用いられる監視装置であって、
周囲情報を取得する周囲情報センサと、
前記上部旋回体の後部のフレームに取り付けられ、前記周囲情報センサを前後方向に移動させる移動機構と、を有し、
前記移動機構は、第1位置と、前記フレームに対して前記第1位置よりも後方に位置する第2位置との間で前記周囲情報センサを前後方向に移動させる
監視装置
である。
【0007】
本発明の一態様は、前記監視装置を有し、上部旋回体と、前記上部旋回体の後部に着脱可能に取り付けられるカウンターウェイトとを備えるクレーン
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第2位置に位置する周囲情報センサがカウンターウェイトによって遮られることなく広範に周囲情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】移動式クレーンの右側面図である。
図2】移動式クレーンの後部の斜視図である。
図3】移動式クレーンの上部旋回体の後部、カウンターウェイト及び監視装置の上面図である。
図4】監視装置の斜視図である。
図5】監視装置の斜視図である。
図6】監視装置の斜視図である。
図7】監視装置のベース部材の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、1つ以上の実施形態について説明し、実施形態の特徴および技術的な効果が以下の詳細な説明および図面から理解される。ただし、本発明の範囲は、以下に開示された実施形態に限定されない。図面は例示のみのために提供されるため、本発明の範囲は図面の例示に限定されない。
【0011】
<1. クレーン>
図1は、クレーン100の右側面図である。図2は、クレーン100の後部の斜視図である。図2に示す状態では、カウンターウェイト106が地面等に降ろされている。
【0012】
クレーン100は、移動式クレーンであり、より具体的にはクローラクレーンである。
クレーン100は、下部走行体101、上部旋回体102、キャブ103、ブーム104、ハウス105、カウンターウェイト106及び監視装置10を備える。
【0013】
下部走行体101は、自走可能なクローラである。
上部旋回体102は、下部走行体101の上に搭載されているとともに、下部走行体101に対して旋回する。上部旋回体102の旋回軸は上下方向を定義し、その旋回軸に沿った軸方向が上下方向に対して平行である。
【0014】
キャブ103は、上部旋回体102の前部に搭載されている。
ブーム104の下端がキャブ103の左の側方において上部旋回体102の前部に連結されており、ブーム104がその下端の起伏軸の回りに起伏する。ブーム104の起伏軸は左右方向を定義し、その起伏軸に沿った軸方向が左右方向に対して平行である。左右方向を幅方向ということもある。また、上部旋回体102における前後方向とは、下部走行体101の前進方向及び後進方向によって定義されるものではなく、上部旋回体102の旋回軸及びブームの起伏軸に対して直交する方向をいう。図1の側面図では、上部旋回体102を横から見て、キャブ103からハウス105への向きが後ろ方向であり、ハウス105からキャブ103への方向が前方向である。また、ブーム104が倒れた状態において、上部旋回体102の旋回体からブームの先端への向きが前方向である。
【0015】
ハウス105は、キャブ103の後方において、左右方向に互いに間隔を置いて上部旋回体102に搭載されている。ハウス105には、原動機、油圧機器及び電装品等が収容されている。
【0016】
カウンターウェイト106は、上部旋回体102の後部に取り付けられている。カウンターウェイト106は、ブーム104及び吊り荷と重量バランスを取る。
【0017】
カウンターウェイト106は、後ろから見て、U字状に設けられている。カウンターウェイト106は、左右方向に長尺なベースウェイト106aと、ベースウェイト106aの右部の上に積み重ねられた右ウェイト106bと、ベースウェイト106aの左部の上に積み重ねられた左ウェイト106cと、を有する。右ウェイト106bと左ウェイト106cが左右に離れており、ウェイト106b,106cの間にスペース106dが形成されている。作業員は、スペース106dにおいてベースウェイト106aの上に乗ることができる。
【0018】
カウンターウェイト106は、油圧シリンダ106eによって上部旋回体102の後部のフレーム102aに連結され、上部旋回体102に対して着脱可能である。ここで、油圧シリンダ106eの上端が上部旋回体102の後部のフレーム102aに着脱可能に連結され、油圧シリンダ106eがフレーム102aからカウンターウェイト106のベースウェイト106aまで垂下して、油圧シリンダ106eの下端がカウンターウェイト106のベースウェイト106aに連結されている。油圧シリンダ106eが伸長することによって、カウンターウェイト106が地面等に下ろされ、カウンターウェイト106が上部旋回体102から取り外される。油圧シリンダ106eが収縮することによって、カウンターウェイト106が地面等から持ち上げられて、カウンターウェイト106が上部旋回体102に取り付けられる。
【0019】
<2. 監視装置>
図3は、監視装置10を上から見た上面図である。図4は、監視装置10を後方、右方及び上方から見て示した斜視図である。図5は、監視装置10を後方、左方及び上方から見て示した斜視図である。図6は、監視装置10を後方、右方及び下方から見て示した斜視図である。
【0020】
監視装置10は、スペース106dにおいて、上部旋回体102の後部に取り付けられている。監視装置10は、主にカウンターウェイト106の後ろを監視する。監視装置10は、上部旋回体102の後部の機器を監視してもよい。
監視装置10は、移動機構20、ハンドル50、チルト機構60、カメラ70及びホースホルダ80を備える。
【0021】
移動機構20は、スペース106dにおいて上部旋回体102の後部に取り付けられている。移動機構20は、カメラ70を前後方向に直線的に(まっすぐに)に移動させる直動機構により構成され、特に、カメラ70を前後方向に直線的に(まっすぐに)案内するリニアガイド機構によって構成される。具体的には、ハンドル50、チルト機構60及びカメラ70が移動機構20に組み付けられており、移動機構20が前後方向に伸縮することによって、ハンドル50、チルト機構60及びカメラ70が一体的に移動機構20によって前後方向に直線的に案内される。ここでいう「直線的に」とは、移動機構20がカメラ70を完全な直線に沿って完全にまっすぐに移動させることのみならず、完全な直線に近似した直線に沿ってまっすぐに移動させることも含む意である。つまり、例えば、カメラ70が回動(チルト)するだけのものは「直線的な移動」に含まれないが、カメラ70の移動が完全な直線に沿った完全直線移動成分と回動成分(回動成分の曲率は小さいことが好ましい。)とを合成したものであっても、そのカメラ70の移動は「直線的な移動」に含まれる。移動機構20は、原動機等によって自動的にカメラ70を移動させるものではなく、作業員によってハンドル50を通じて動力を受けて手動的にカメラ70を移動させる。移動機構20は、ベース部材21、スライドシャフト25、支持部材31,35及び留め具41,46を有する。
【0022】
ベース部材21は、上部旋回体102のフレーム102bの間に配置されている。ベース部材21は、ボルト等によって上部旋回体102の後部のフレーム102b上に固定されている。ベース部材21は、フレーム102bの後端から後方に張り出していて、フレーム102bに片持ち梁状に支持されている。なお、フレーム102bは、フレーム102aの間に架設されるよう、フレーム102aに固定されている。
【0023】
スライドシャフト25は、前後方向に延びているとともに、直線的に前後動可能にベース部材21に支持されている。スライドシャフト25は、後ろの上下一対の支持部材31と、前の上下一対の支持部材35とによって前後方向に案内される。図7を参照して、ベース部材21へのスライドシャフト25の支持について具体的に説明する。図7は、図4に示す矢印D1のように、ベース部材21の後端を後方から見て示した背面図である。
【0024】
支持部材31は、ベース部材21を介して上部旋回体102の後部、より具体的には上部旋回体102のフレーム102bに取り付けられている。支持部材31がベース部材21の後端と支持板32との間に挟まれて、支持板32及び支持部材31がボルトナット締結部33によってベース部材21の後端に固定されている。上の支持部材31はその下縁に半円形のノッチを有し、下の支持部材31はその上縁に半円形状のノッチを有し、上下の支持部材31が組み合わせられることによって支持部材31のノッチが円形状の貫通孔を成している。スライドシャフト25が、その貫通孔に嵌入されて、上下の支持部材31によって上下に挟まれている。スライドシャフト25のラジアル荷重が支持部材31に受けられて、スライドシャフト25が支持部材31に対して前後に摺動可能となっている。支持部材31は樹脂からなり、より具体的には所謂ナイロンと呼ばれるポリアミド系合成樹脂からなる。支持部材31に対するスライドシャフト25の摩擦係数は支持板32及びベース部材21に対するスライドシャフト25の摩擦係数よりも小さく、スライドシャフト25が支持部材31に対して滑りやすい。
【0025】
スライドシャフト25が支持部材31によって前後動可能にベース部材21に支持されるのと同様に、図3図6に示すように、支持部材31の前方において、スライドシャフト25が支持部材35によって前後動可能にベース部材21に支持される。前の支持部材35の素材は、後ろの支持部材31の素材と同じである。
【0026】
以上のように、スライドシャフト25が、後ろの支持部材31と前の支持部材35の2点で、直線的に前後移動可能にベース部材21に支持されている。そのため、スライドシャフト25の上下方向及び左右方向の振動が抑制される。支持部材31,35が金属よりも弾性係数が低く且つ金属よりも粘性が高い樹脂からなるため、スライドシャフト25の振動エネルギーが支持部材31,35によって減衰されやすく、スライドシャフト25の振動が抑制される。
スライドシャフト25がベース部材21に直線的に前後移動可能に支持されることによって、移動機構20が前後方向に伸縮可能となっている。つまり、スライドシャフト25がベース部材21に対して相対的に後ろに移動することによって、移動機構20が伸長し、スライドシャフト25がベース部材21に対して相対的に前に移動することによって、移動機構20が収縮する。
【0027】
スライドシャフト25が上述のように前後動可能であるところ、スライドシャフト25を留めるための留め具41,46が移動機構20に設けられている。留め具41,46について詳細に説明する。
【0028】
留め具41は、スライドシャフト25の前後方向のストロークのうち後端にスライドシャフト25を留めるものである。留め具41は挿入ピン42及び被挿入部43を有する。挿入ピン42は、スライドシャフト25の中心軸線よりも上において、スライドシャフト25の前端に固定されている。挿入ピン42は、前方に向けて突出している。被挿入部43は、挿入ピン42の後方においてベース部材21の上端に取り付けられている。被挿入部43は、穴を有した板状部材である。スライドシャフト25が後方に移動されると、図3に示すように、挿入ピン42が被挿入部43に挿入され、これによりスライドシャフト25はその中心軸回りの回転が留められる。固定ピンが挿入ピン42に対して直交するよう挿入ピン42に留められ、これによりスライドシャフト25はその前後動が留められる。固定ピンが挿入ピン42から外されると、被挿入部43から挿入ピン42の抜けが可能となる。挿入ピン42に対する固定ピンの挿抜は手動であるが、自動であってもよい。
【0029】
挿入ピン42及び被挿入部43がスライドシャフト25の中心軸よりも上に配置され、被挿入部43がベース部材21の後端の上端よりも上方に張り出しており、挿入ピン42がスライドシャフト25の後端に固定されている。そのため,作業員が挿入ピン42を被挿入部43に挿入する作業や、挿入ピン47に固定ピンを固定する作業を手動で行う際に、後述のカメラ70が邪魔になりにくい。
【0030】
留め具46は、スライドシャフト25の前後方向のストロークのうち前端にスライドシャフト25を留めるものである。留め具46は挿入ピン47及び被挿入部48を有する。挿入ピン47は、スライドシャフト25の中心軸線よりも下において、ベース部材21の後端に固定されている。挿入ピン47は、後方に向けて突出している。被挿入部48は、挿入ピン47の後方においてスライドシャフト25の後端に取り付けられている。スライドシャフト25が前方に移動されると、図5及び図6に示すように、挿入ピン47が被挿入部48に挿入され、これによりスライドシャフト25はその中心軸回りの回転が留められる。固定ピンが挿入ピン47に対して直交するよう挿入ピン47に留められ、これによりスライドシャフト25はその前後動が留められる。固定ピンが挿入ピン47から外されると、被挿入部48から挿入ピン47の抜けが可能となる。挿入ピン47に対する固定ピンの挿抜は手動であるが、自動であってもよい。
【0031】
挿入ピン47及び被挿入部48がスライドシャフト25の中心軸よりも下に配置されている上、挿入ピン47がベース部材21の後端に固定されている。そのため、例えば作業員がスペース106dにおいてベースウェイト106aの上に乗って手を上げた姿勢であっても、挿入ピン47を被挿入部48に挿入する作業や、挿入ピン47に固定ピンを固定する作業を容易に行える。
【0032】
ハンドル50は、スライドシャフト25の後端に取り付けられている。ハンドル50は、スライドシャフト25の後端から後方に張り出すように設けられている。ハンドル50は、上又は下から見て、U字型に成している。作業員がハンドル50を掴んで、スライドシャフト25を前後に移動させることができる。ハンドル50がスライドシャフト25の後端から後方に張り出しているため、作業員がスペース106dにおいてベースウェイト106aに乗ってハンドル50を掴みやすい。
【0033】
チルト機構60は、スライドシャフト25の後端に取り付けられている。カメラ70は、チルト機構60を介してスライドシャフト25の後端に取り付けられている。カメラ70は、チルト機構60によって、左右方向に延びた傾動軸61の回りにチルト可能にスライドシャフト25に支持されている。チルト機構60がロック機構を有しており、カメラ70のチルトがロック機構によって留められる。ロック機構のロック及びその解除は手動であるが、自動であってもよい。なお、カメラ70がチルト機構60を介してのみならず、更にパン機構若しくはロール機構又はこれらの両方を介してスライドシャフト25の後端に取り付けられてもよい。また、カメラ70はチルト機構60、パン機構及びロール機構の代わりにボールジョイント機構又はユニバーサルジョイント機構を介してスライドシャフト25の後端に取り付けられてもよい。パン機構は、上下方向に延びた軸の回りにカメラ70をパンさせる。ロール機構は、カメラ70の視線方向に延びた軸の回りにカメラ70をパンさせる。ボールジョイント機構又はユニバーサルジョイント機構は、カメラ70をパン及びチルトさせる。
【0034】
作業員がチルト機構60を調整することによって、カメラ70の視線を下に向けたり、後ろ斜め下に向けたり、後方に向けたりすることができる。なお、チルト機構60の可動範囲は限定するものではなく、チルト機構60の可動範囲が更に広いことによって、カメラ70の視線が後ろ斜め上に向けられてもよいし、上方に向けられてもよいし、前斜め上に向けられてもよいし、前斜め下に向けられてもよい。
【0035】
挿入ピン42が被挿入部43に挿入された状態と、挿入ピン47が被挿入部48に操縦された状態との何れにおいても、チルト機構60の重心はスライドシャフト25の中心軸線よりも下方に配置され、チルト機構60の傾動軸61はスライドシャフト25の中心軸線よりも下方に配置されている。同様に、カメラ70の一部又は全体がスライドシャフト25の中心軸線よりも下方に配置されており、カメラ70の重心がスライドシャフト25の中心軸線よりも下方に配置されている。たとえカメラ70が最も振り上げられた状態でロック機構によりロックされていたとしても、カメラ70の重心がスライドシャフト25の中心軸線よりも下方に配置されている。そのため、作業員が挿入ピン42,47を被挿入部43,48から抜いた状態でスライドシャフト25を前後方向に移動させる際に、カメラ70及びチルト機構60の重量は、スライドシャフト25の中心軸回りの回転を発生させ難い。それゆえ、挿入ピン42,47が被挿入部43,48から周方向に位置ずれせず、作業員が挿入ピン42,47を被挿入部43,48に挿入しやすい。
【0036】
カメラ70は、その視線方向にある被検体を光学的に監視する。カメラ70は、その視線方向の周囲情報を映像として取得する周囲情報センサである。映像信号ケーブル75がカメラ70からスライドシャフト25の後端を経由して、映像機器まで配索され、カメラ70によって撮影された映像の信号が映像信号ケーブルによりカメラ70から映像機器へ伝送される。映像機器は、例えばディスプレイデバイス、ビデオレコーダー又は映像処理装置(具体的には、コンピューター)である。
【0037】
映像信号ケーブル75の中途部がフック又はクリップ等によってスライドシャフト25の後端に固定されている。そのため、作業員がスライドシャフト25を前後にスライドさせる際に、映像信号ケーブル75がスライドシャフト25及びベース部材21に絡みにくい。
【0038】
図3に示すように、スライドシャフト25がその前後方向のストロークのうち前端に位置した場合のカメラ70の位置を第1位置P1という。スライドシャフト25がその前後方向のストロークのうち後端に位置した場合のカメラ70の位置を第2位置P2(又は第2位置P2’)という。第1位置P1は、上部旋回体102のフレーム102bに近位である。第2位置P2(又は第2位置P2’)は、第1位置P1よりも、上部旋回体102のフレーム102bから後方へ遠位である。第1位置P1は、上部旋回体102の後端102dよりも前にある。上部旋回体102の後端102dは、上部旋回体102のフレーム102aの後端でもある。上部旋回体102の後端102dとは、上部旋回体102の中で最も後ろにある部分をいう。第2位置P2は、上下方向に見て、カウンターウェイト106の後端106fにおいてカウンターウェイト106に重なる位置である。なお、第2位置P2’は、カウンターウェイト106の後端106fよりも後方であってもよい。
【0039】
カメラ70が第2位置P2(又は第2位置P2‘)に位置する状態で、カメラ70の視線が下又は後ろ斜め下に向けられていると、カウンターウェイト106の後ろ周辺の地面がカメラ70によって監視される。そのため、作業員が上部旋回体102を旋回させるよう操縦する際にカメラ70の映像を見れば、カウンターウェイト106の周囲の障害物へのカウンターウェイト106の衝突を回避できる。なお、カメラ70による監視対象はカウンターウェイト106の周囲の障害物に限るものではなく、例えばクレーン100の後部に設置される各種の機器(例えば、起伏ウィンチ、巻き取りウィンチ)であってもよい。必要に応じて、チルト機構60を調整することによって、カメラ70による監視対象にカメラ70の視線を向ける。また、必要に応じて、移動機構20を調整することによって、カメラ70を第1位置P1又は第2位置P2(又は第2位置P2’)に位置させる。
【0040】
クレーン100から上部旋回体102を分解して、上部旋回体102を輸送する際には、移動機構20を調整することによって、カメラ70を第1位置P1に位置させる。その場合、カメラ70、チルト機構60及びハンドル50が上部旋回体102の後端102dよりも前に位置するため、スライドシャフト25の後端も上部旋回体102の後端102dよりも前に位置する。そのため、上部旋回体102を貨物自動車で輸送する際に、カメラ70、チルト機構60、ハンドル50及びスライドシャフト25が法定上の車長制限又は車幅制限に影響しない。
なお、クレーン100によって吊り荷作業を行う際に、カメラ70を第1位置P1に位置させてもよい。この場合、カメラ70の監視対象はクレーン100の後部に設置される各種の機器(例えば、起伏ウィンチ、巻き取りウィンチ)であってもよい。
【0041】
カメラ70が第2位置P2に位置する状態では、スライドシャフト25がベース部材21の後端から後方へ延び出ていることから、スライドシャフト25及びカメラ70が振動しやすい。そうであっても、スライドシャフト25が支持部材31,35によって確りベース部材21に支持されているため、スライドシャフト25がベース部材21に対して相対的に振動しにくく、カメラ70の振動が起こりにくい。特に、支持部材31,35が金属よりも弾性係数が低く、且つ金属よりも粘性が高い樹脂からなるため、スライドシャフト25及びカメラ70の振動エネルギーが支持部材31,35によって減衰されやすい。つまり、支持部材31,35は、スライドシャフト25及びカメラ70を制振する制振部である。
【0042】
ホースホルダ80は、ベース部材21の下部の後端に取り付けられている。ホースホルダ80は、主に、カウンターウェイト106が上部旋回体102から取り外された際、特に上部旋回体102を輸送する際に、利用される。その際、油圧回路から油圧シリンダ106eに配索されるオイルホースが油圧シリンダ106eから取り外され、そのオイルホースの端部のカプラーがホースホルダ80に保持される。
【0043】
<3. 有利な効果>
以上に説明したように、移動機構20がカメラ70を前後方向に直線的に案内するため、監視対象物の種類及び状況に応じて、前後方向におけるカメラ70の位置を調整することができる。
【0044】
移動機構20がカメラ70を前後方向に直線的に案内するため、カメラ70の移動ストロークが前後に広い。そのため、監視装置10による監視の適用範囲が広い。
【0045】
第2位置P2は、上下方向に見て、カウンターウェイト106の後端106fにおいてカウンターウェイト106に重なる位置である。そのため、カメラ70が移動機構20の留め具41によって第2位置P2に留められたら、カメラ70の視界がカウンターウェイト106によって遮られにくく、カウンターウェイト106の後方が広範囲にわたってカメラ70によって観察される。
【0046】
第2位置P2’は、カウンターウェイト106の後端106fよりも後方である。そのため、カメラ70が移動機構20の留め具41によって第2位置P2’に留められたら、カメラ70の視界がカウンターウェイト106によって遮られることなく、カウンターウェイト106の後方が広範囲にわたってカメラ70によって観察される。
【0047】
カウンターウェイト106が中央部にスペース106dを有するため、監視装置10がスペース106d内に設置されているため、カウンターウェイト106が邪魔にならずに監視装置10によって監視することができる。をカウンターウェイト106の上端よりも下に設置することができる。
【0048】
カウンターウェイト106が中央部にスペース106dを有するため、監視装置10をカウンターウェイト106の上端よりも下に設置することができる。そのため、監視装置10の下にいる作業員は監視装置10、特にハンドル50に手が届きやすく、カメラ70を容易に前後動させることができる。また、カメラ70が第2位置P2(又は第2位置P2’)において下又は後ろ斜め下に向けられた場合、カメラ70の下方の被写体が大きく写る。
【0049】
カメラ70がチルト機構60を介してスライドシャフト25の後端に取り付けられているため、カメラ70のチルト角がチルト機構60によって調整される。
【0050】
カウンターウェイト106が中央部にスペース106dを有するため、作業員がスペース106dに入って、前後方向におけるカメラ70の位置を調整することができる。また、作業員の手が監視装置10のハンドル50に届きやすく、カメラ70の位置及びチルト角を容易に調整できる。
【0051】
ハンドル50がスライドシャフト25の後端に取り付けられているため、作業員がハンドル50を掴んで、カメラ70の位置及びチルト角を調整することができる。
【0052】
カメラ70がスライドシャフト25の中心軸よりも下においてスライドシャフト25の後端に取り付けられているため、カメラ70及びスライドシャフト25がスライドシャフト25の中心軸回りに回転しづらい。よって、挿入ピン42,47が被挿入部43,48から周方向に位置ずれせず、挿入ピン42,47を被挿入部43,48に挿入することが作業員にとって用意である。
【0053】
スライドシャフト25を後方に引き出した状態において、支持部材31,35がスライドシャフト25及びカメラ70を制振するため、被写体がぶれることなくカメラ70によって撮影される。
【0054】
上部旋回体102を輸送する際には、スライドシャフト25を前方に引き込ませた状態にする。そのため、スライドシャフト25がベース部材21に対して相対的に振動しずらい。また、支持部材31,35がスライドシャフト25及びカメラ70を制振する。これらのことから、スライドシャフト25からラトル音が発生しにくい。
【0055】
スライドシャフト25が樹脂製の支持部材31,35に支持されているため、スライドシャフト25の損傷、塗装剥離及び錆付きを防止できる。
【0056】
<4. 作業機械の変形例>
前述の実施形態では、スライドシャフト25の後端に取り付けられる周囲情報センサがカメラ70である。それに対して、周囲情報センサは、周囲情報を取得するものであれば、カメラ70に限るものではない。例えば、カメラ70の代わりに三次元測距センサが採用されてもよい。三次元測距センサは、レーザー光、電磁波、赤外線又は超音波等のウエイブを照射することによって、三次元測距センサからその周辺の監視対象物(例えば障害物)までの距離及び方角を周期的に測定する。三次元測距センサは、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)又は三次元スキャナを採用したものでもよい。
【0057】
前述の実施形態では、監視装置10のベース部材21が直接的に上部旋回体102の後部に取り付けられているが、間接的に上部旋回体102の後部に取り付けられてもよい。例えば、ベース部材21がボルト等によってハウス105の後部の上面に直接固定され、これにより、ベース部材21がハウス105を介して上部旋回体102の後部に取り付けられてもよい。また、ベース部材21がカウンターウェイト106の上面にボルト等によって直接固定され、ベース部材21がカウンターウェイト106を介して上部旋回体102の後部に取り付けられてもよい。
【0058】
支持部材31,35がゴム製であってもよい。ゴムの場合でも、支持部材31,35の弾性係数は金属の弾性係数よりも低く、支持部材31,35の粘性が金属の粘性よりも高いため、支持部材31,35がスライドシャフト25及びカメラ70を制振する。
【0059】
前述の実施形態では、移動機構20は、リニアガイド機構であって、より具体的にはスライドシャフト25のスライドを利用したスライド機構である。それに対して、移動機構20は、手動によりカメラ70を前後方向に直線的に移動させるものであれば、リニアガイド機構に限るものではない。例えば、移動機構20は、後方に伸びるよう展開するとともに前方に縮むよう折り畳まれる機構、例えば蛇腹機構又はリンク機構であってもよい。また、移動機構20は、作業員によって手動的に与えられる回転運動をカメラ70の直線運動に変換する伝動機構、例えばピニオンラック機構、巻掛伝導機構又はボールネジ伝動機構であってもよい。
【0060】
前述の実施形態では、カメラ70を第1位置P1及び第2位置P2(第2位置P2’)の二箇所に留めることができる。カメラ70を留める位置は2箇所に限らず、3箇所以上であってもよい。例えば、カメラ70を第1位置P1、第2位置P2及び第3位置(第3位置は第2位置P2’と同じ位置であるか、第1位置P1よりも前の位置である。)に留められるようにしてもよい。また、カメラ70が第1位置P1と第2位置P2の間に位置に留められるようにしてもよい。
【0061】
前述の実施形態では、カウンターウエイト106は、それ全体で油圧シリンダ106eによって昇降されることによって着脱可能に構成されている。それに対して、カウンターウエイト106が、上部旋回体102の後部のフレームに固定されたベースに積み重ねられるスタック型のウエイトであってもよい。この場合、上述のように、カメラ70が第1位置P1、第2位置P2及び第3位置に留められるように構成され、第1位置P1に留められたカメラ70が起伏ウインチを監視してもよい。
【0062】
前述の実施形態では、監視装置10が、クレーン式のアタッチメントを設けたクローラクレーン100の上部旋回体102の後部に取り付けられている。それに対して、監視装置10は、タワー式のアタッチメントを設けたタワー式クローラクレーンの上部旋回体の後部に取り付けられてもよい。また、監視装置10は、クローラークレーンに限らず、例えば、トラッククレーン、オールテレーンクレーン、ラフテレーンクレーンなどような他の形態のクレーンに設置されてもよい。他の形態のクレーンであっても、そのクレーンは、下部構造体(下部構造体は、クローラーでもよいし、クローラー以外の走行体でもよいし、固定されたものでもよい。)、その下部構造体上に搭載されるととともに旋回可能な上部旋回体と、上部旋回体の後部に後部に着脱可能に取り付けられるカウンターウェイトと、を備える。監視装置10は、そのクレーンの上部走行体の後部に取り付けられる。
【符号の説明】
【0063】
10 監視装置
20 移動機構
21 ベース部材
31 支持部材
35 支持部材
50 ハンドル
60 チルト機構
70 カメラ(周囲情報センサ)
100 クレーン
102 上部旋回体
102b フレーム
106 カウンターウェイト
106d スペース
P1 第1位置
P2 第2位置
P2’ 第2位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7