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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090703
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】クリーナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20240627BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G03G15/02 103
G03G21/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206766
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 琢也
【テーマコード(参考)】
2H134
2H200
【Fターム(参考)】
2H134GA02
2H134GB02
2H134GB05
2H134HA01
2H134HA04
2H134HA17
2H134KD04
2H134KE01
2H134KG01
2H134KH01
2H200FA16
2H200GA23
2H200GA34
2H200HA01
2H200HB12
2H200HB22
2H200JA02
2H200LB02
2H200LB08
2H200LB09
2H200LB15
2H200LB35
2H200LB37
2H200LC04
2H200LC09
2H200MA04
2H200MA08
2H200MA20
2H200MC01
2H200MC02
2H200MC03
2H200MC11
2H200MC20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】十分な耐摩耗性を有するクリーナーを提供する。
【解決手段】クリーナー30は、画像形成装置の像担持体の表面を帯電させる帯電材料を備える被清掃部材に回転しながら接触して、被清掃部材に付着した異物を除去する異物除去部34を有する。異物除去部34は、連続気泡構造の連続気泡フォームと、連続気泡フォームのセル骨格を被覆する樹脂被覆膜36と、を備える。樹脂被覆膜36は、連続気泡フォームにエマルジョン樹脂を含浸させて形成される。エマルジョン樹脂から得られる樹脂フィルムの100%モジュラスが20MPa以下である、及び/又は、エマルジョン樹脂から得られる樹脂フィルムの伸びが200%以上である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置の像担持体の表面を帯電させる帯電材料を備える被清掃部材に回転しながら接触して、前記被清掃部材に付着した異物を除去する異物除去部を有するクリーナーであって、
前記異物除去部は、
連続気泡構造の連続気泡フォームと、
前記連続気泡フォームのセル骨格を被覆する樹脂被覆膜と、を備え、
前記樹脂被覆膜は、前記連続気泡フォームにエマルジョン樹脂を含浸させて形成され、
前記エマルジョン樹脂から得られる樹脂フィルムの100%モジュラスが20MPa以下である、及び/又は、前記エマルジョン樹脂から得られる樹脂フィルムの伸びが200%以上である、クリーナー。
【請求項2】
前記異物除去部はシャフトの外側に螺旋状に配置されている請求項1に記載のクリーナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クリーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、異物除去部を有するクリーナーが記載されている。この異物除去部は、連続気泡フォームの連続気泡の内壁面に樹脂コーティング層が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-167294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のクリーナーは、耐摩耗性が必ずしも十分でなかった。本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、十分な耐摩耗性を有するクリーナーを提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1] 画像形成装置の像担持体の表面を帯電させる帯電材料を備える被清掃部材に回転しながら接触して、前記被清掃部材に付着した異物を除去する異物除去部を有するクリーナーであって、
前記異物除去部は、
連続気泡構造の連続気泡フォームと、
前記連続気泡フォームのセル骨格を被覆する樹脂被覆膜と、を備え、
前記樹脂被覆膜は、前記連続気泡フォームにエマルジョン樹脂を含浸させて形成され、
前記エマルジョン樹脂から得られる樹脂フィルムの100%モジュラスが20MPa以下である、及び/又は、前記エマルジョン樹脂から得られる樹脂フィルムの伸びが200%以上である、クリーナー。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、十分な耐摩耗性を有するクリーナーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係るクリーナーが配設された画像形成装置の要部を示す概略構成図である。
図2】クリーナーの部分斜視図である。
図3】(a)は、シート状の連続気泡フォームの斜視図である。(b)は、エマルジョン樹脂の含浸工程を示す説明図である。(c)は、樹脂量の調整工程、乾燥工程、被覆膜付きフォームの加工工程の説明図である。
図4】シャフトに取り付ける前の異物除去部を中間省略して示す斜視図である。
図5】異物除去部の取付工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
[2] 前記異物除去部はシャフトの外側に螺旋状に配置されている[1]に記載のクリーナー。
【0009】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0010】
1.クリーナー30
本実施形態のクリーナー30は、画像形成装置1の感光体ドラム10の表面10aを帯電させる帯電材料を備える帯電ローラ18に回転しながら接触して、帯電ローラ18に付着した異物を除去する異物除去部34を有する。なお、感光体ドラム10は像担持体の一例である。帯電ローラ18は被清掃部材の一例である。図1においては、クリーナー30を概略的に描いている。
【0011】
画像形成装置1としては、コピー機、プリンタ、ファクシミリおよびこれらの複合機のように、電子写真方式を用いた画像形成装置等が挙げられる。図1は、画像形成装置1としてのレーザプリンタの要部を示す概略図である。このレーザプリンタは、感光体ドラム10、現像ローラ12、転写ローラ14、定着ローラ16、帯電ローラ(チャージローラ)18、クリーナー30等を備えている。この種のレーザプリンタは、帯電ローラ18により感光体ドラム10の表面10aを均一に帯電させ、帯電した感光体ドラム10の表面10aにレーザ光で印刷データのパターンを照射して、表面10aに潜在画像を形成する。そして、現像ローラ12によりトナーを潜在画像に付着させ、印刷用紙の裏側に位置する転写ローラ14により感光体ドラム10の表面10a上のトナーを該印刷用紙に転写した後、定着ローラ16によりトナーを印刷用紙に定着させる。
【0012】
帯電ローラ18は、その外周面18aを感光体ドラム10の表面10aに接触させた状態で、該感光体ドラム10の回転に同期して回転する。このため、帯電ローラ18の外周面18aには、感光体ドラム10の表面10aに残留したトナーや印刷用紙から発生した紙粉等(以下「異物」という)が付着することがある。クリーナー30は、帯電ローラ18の外周面18aに付着した異物を除去するために設けられている。
【0013】
図2に示すように、本実施形態のクリーナー30は、シャフト32と、シャフト32の外側に設けられた異物除去部34とを有して構成されている。シャフト32は、例えば、断面略円形をなす、棒状部材である。シャフト32の材質は特に限定されない。シャフト32は、金属であってもよく、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、炭素繊維等の繊維材と樹脂との複合材等であってもよい。
【0014】
クリーナー30は、異物除去部34の接触面34bを帯電ローラ18の外周面18aに接触させた状態で、シャフト32を軸として回転する。クリーナー30は、異物除去部34が帯電ローラ18に接触した状態において、異物除去部34が弾性変形し得る。クリーナー30は、帯電ローラ18と共に回転して、帯電ローラ18の外周面18aに付着した異物を異物除去部34によって拭き取る。クリーナー30は、帯電ローラ18と連れ回り回転する構成であってもよい。
【0015】
(1)異物除去部34
異物除去部34は、シャフト32の外側に配置されている。本実施形態の異物除去部34はシャフト32の外側に螺旋状に配置されている。なお、異物除去部の配置態様は、上記の態様に限定されない。異物除去部は、螺旋状に配置される形態に限定されず、円筒状に配置される形態等であってもよい。異物除去部が円筒状に配置される形態において、異物除去部は、シート状の弾性材をシャフトの外面に巻き付けて設けられてもよく、シャフトを挿入可能な円筒状の弾性材として設けられてもよい。
【0016】
具体的には、図2の異物除去部34は、一方向に長い弾性材を、シャフト32の外面に螺旋状に巻き付けて設けられている。異物除去部34は、シャフト32に巻き付けられる前の状態において、断面略矩形状をなす。異物除去部34は、取付面34aと、取付面34aの反対側において帯電ローラ18の外周面18aに接触する接触面34bと、取付面34aおよび接触面34bの間に位置する第1側面34c及び第2側面34dとを有している。
【0017】
異物除去部34は、連続気泡構造の連続気泡フォーム20と、連続気泡フォーム20のセル骨格を被覆する樹脂被覆膜36と、を備える。樹脂被覆膜36は、連続気泡フォーム20にエマルジョン樹脂を含浸させて形成されている。
【0018】
(1.1)連続気泡フォーム20
連続気泡フォーム20としては、ポリウレタンフォーム、ポリオレフィンフォーム、アクリルフォーム等が挙げられる。ポリウレタンフォームは、ポリエーテル系のポリウレタンフォームであってもよく、ポリエステル系のポリウレタンフォームであってもよい。ポリウレタンフォームは、加水分解性、巻き易さ等の観点から、ポリエーテル系のポリウレタンフォームであることが好ましい。
【0019】
連続気泡フォーム20の密度(JIS K7222:2005準拠)は特に限定されない。連続気泡フォーム20の密度は、クリーニング性の観点から、好ましくは40kg/m以上であり、より好ましくは55kg/m以上であり、更に好ましくは65kg/m以上である。連続気泡フォーム20の密度は、巻き易さの観点から、好ましくは110kg/m以下であり、より好ましくは95kg/m以下であり、更に好ましくは85kg/m以下である。これらの観点から、連続気泡フォーム20の密度は、好ましくは40kg/m以上110kg/m以下であり、より好ましくは55kg/m以上95kg/m以下であり、更に好ましくは65kg/m以上85kg/m以下である。
【0020】
連続気泡フォーム20の25%圧縮硬さ(JIS K6400-2:2012 D法準拠)は特に限定されない。連続気泡フォーム20の25%圧縮硬さは、耐久性の観点から、好ましくは4kPa以上であり、より好ましくは6kPa以上であり、更に好ましくは8kPa以上である。連続気泡フォーム20の25%圧縮硬さは、柔軟性の観点から、好ましくは20kPa以下であり、より好ましくは15kPa以下であり、更に好ましくは12kPa以下である。これらの観点から、連続気泡フォーム20の25%圧縮硬さは、好ましくは4kPa以上20kPa以下であり、より好ましくは6kPa以上15kPa以下であり、更に好ましくは8kPa以上12kPa以下である。
【0021】
連続気泡フォーム20の引張強さ(JIS K6400-5:2012準拠)は特に限定されない。連続気泡フォーム20の引張強さは、耐久性の観点から、好ましくは70kPa以上であり、より好ましくは85kPa以上であり、更に好ましくは100kPa以上である。連続気泡フォーム20の引張強さは、柔軟性を確保する点から、好ましくは250kPa以下であり、より好ましくは220kPa以下であり、更に好ましくは200kPa以下である。これらの観点から、連続気泡フォーム20の引張強さは、好ましくは70kPa以上250kPa以下であり、より好ましくは85kPa以上220kPa以下であり、更に好ましくは100kPa以上220kPa以下である。
【0022】
連続気泡フォーム20の伸び(JIS K6400-2:2012準拠)は特に限定されない。連続気泡フォーム20の伸びは、巻き易さの観点から、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上であり、更に好ましくは80%以上である。連続気泡フォーム20の伸びは、剥がれ抑制の観点から、好ましくは300%以下であり、より好ましくは270%以下であり、更に好ましくは240%以下である。これらの観点から、連続気泡フォーム20の伸びは、好ましくは60%以上300%以下であり、より好ましくは70%以上270%以下であり、更に好ましくは80%以上240%以下である。
【0023】
連続気泡フォーム20の引裂強さ(JIS K6400-5:2012準拠)は特に限定されない。連続気泡フォーム20の引裂強さは、耐久性の観点から、好ましくは4N/cm以上であり、より好ましくは5N/cm以上であり、更に好ましくは6N/cm以上である。連続気泡フォーム20の引裂強さは、柔軟性を確保する点から、好ましくは12N/cm以下であり、より好ましくは10N/cm以下であり、更に好ましくは8N/cm以下である。これらの観点から、連続気泡フォーム20の引裂強さは、好ましくは4N/cm以上12N/cm以下であり、より好ましくは5N/cm以上10N/cm以下であり、更に好ましくは6N/cm以上8N/cm以下である。
【0024】
連続気泡フォーム20の繰り返し圧縮残留ひずみ試験(JIS K6400-4:2005 B法準拠)による厚さ低下率は特に限定されない。連続気泡フォーム20の厚さ低下率は、周方向の均一なクリーニング性能確保の観点から、好ましくは5%以下であり、より好ましくは2%以下であり、更に好ましくは1%以下である。連続気泡フォーム20の厚さ低下率は、通常0%以上である。
なお、厚さ低下率(%)は、初めの試験片の厚さ(mm)と、試験後の試験片の厚さ(mm)から、以下の式により算出される。
厚さ低下率
=((初めの試験片の厚さ-試験後の試験片の厚さ)/初めの試験片の厚さ)×100
【0025】
連続気泡フォーム20の繰り返し圧縮残留ひずみ試験(JIS K6400-4:2005 B法準拠)による25%圧縮硬さの低下率は特に限定されない。連続気泡フォーム20の硬さ低下率は、耐久性の観点から、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下であり、更に好ましくは30%以下である。連続気泡フォーム20の硬さ低下率は、通常0%以上であり、10%以上、15%以上であってもよい。
なお、25%圧縮硬さ(以下、25%CLDともいう)は、JIS K6400-2:2012 D法準拠して測定される。硬さ低下率(%)は、初めの25%CLD(kPa)と、試験後の25%CLD(kPa)から、以下の式により算出される。
硬さ低下率
=((初めの25%CLD-試験後の25%CLD)/初めの25%CLD)×100
【0026】
(1.2)樹脂被覆膜36
樹脂被覆膜36は、連続気泡フォーム20のセル骨格を被覆する。セル骨格は、連続気泡フォーム20の気泡を画成する部位である。樹脂被覆膜36は、連続気泡フォーム20にエマルジョン樹脂を含浸させて形成されている。樹脂被覆膜36は、気泡の壁面に付着したエマルジョン樹脂を、乾燥して造膜される。
【0027】
本実施形態では、樹脂被覆膜36は、異物除去部34の接触面34bを被覆する。換言すれば、異物除去部34の接触面34bは、連続気泡フォーム20の断面が外部に露出せず、セル骨格と共に樹脂被覆膜36によって被覆された状態となっている。他方、異物除去部34の第1側面34c及び第2側面34dは、連続気泡フォーム20の断面が外部に露出している。なお、本開示の樹脂被覆膜は、少なくとも連続気泡フォーム20のセル骨格を被覆していれば、異物除去部34の接触面34bを被覆していなくてもよい。
【0028】
エマルジョン樹脂は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂からなる群より選ばれる樹脂を含むエマルジョン樹脂が挙げられる。これらの中でも、耐摩耗性の観点から、エマルジョン樹脂は、ウレタン樹脂を含むエマルジョン樹脂が好ましく、ポリエステル系のウレタン樹脂を含むエマルジョン樹脂がより好ましい。
【0029】
エマルジョン樹脂の分散媒(溶剤)は、水を含む分散媒が好ましい。エマルジョン樹脂の分散媒は、例えば、水であってもよく、水とN-メチルピロリドン等の極性溶媒との混合物であってもよい。エマルジョン樹脂は、浸透剤、消泡剤等の添加剤を含んでいてもよい。浸透剤は、連続気泡フォーム20の連通気泡内へエマルジョン樹脂が浸入するのを助ける。浸透剤としては、例えば、ジオクチルスルホンコハク酸ナトリウム等が挙げられる。消泡剤は、エマルジョン樹脂の泡立ちを防ぎ、ポリウレタンフォームの連通気泡内への濡れ性を高める。
【0030】
本開示のエマルジョン樹脂は、エマルジョン樹脂から得られる樹脂フィルム(以下、単に樹脂フィルムともいう)の100%モジュラスが20MPa以下である、及び/又は、エマルジョン樹脂から得られる樹脂フィルムの伸びが200%以上である。すなわち、エマルジョン樹脂は、樹脂フィルムの100%モジュラスが20MPa以下であればよい。また、エマルジョン樹脂は、樹脂フィルムの伸びが200%以上であってもよい。さらに、エマルジョン樹脂は、樹脂フィルムの100%モジュラスが20MPa以下であり、かつ、樹脂フィルムの伸びが200%以上であってもよい。
【0031】
樹脂フィルムの100%モジュラスは、耐摩耗性の観点から、好ましくは18MPa以下であり、より好ましくは15MPa以下であり、更に好ましくは10MPa以下であり、8MPa以下、6MPa以下、4MPa以下であってもよい。樹脂フィルムの100%モジュラスの下限値は特に限定されず、例えば、0.5MPa以上、1MPa以上、1.5MPa以上であってもよい。樹脂フィルムの100%モジュラスは、上記の上限値及び下限値を適宜組み合わせた範囲とすることができる。
【0032】
樹脂フィルムの100%モジュラスは、以下のようにして測定できる。
ポリウレタン樹脂エマルジョンを乾燥して厚さ200±20μmのフィルムを作製し、これを110℃にて90分間、オーブンで加熱する。次に、得られた皮膜を4cm×0.5cmの長方形の試験片とし、この試験片を引張試験機オートグラフAG-1(島津製作所製)を用いて試験速度300mm/分にて引張特性試験を行い、元のチャック間隔を基準として100%まで伸長させた時の引張応力(MPa)を測定する。なお、記載した条件以外はJIS K7161に準じて測定を行う。
【0033】
樹脂フィルムの伸びは、耐摩耗性の観点から、好ましくは250%以上であり、より好ましくは300%以上であり、更に好ましくは400%以上であり、500%以上、600%以上であってもよい。樹脂フィルムの伸びの上限値は特に限定されず、例えば、1000%以下、900%以下、800%以下であってもよい。樹脂フィルムの伸びは、上記の上限値及び下限値を適宜組み合わせた範囲とすることができる。
【0034】
樹脂フィルムの伸びは、以下のようにして測定できる。
ポリウレタン樹脂エマルジョンを乾燥して厚さ200±20μmのフィルムを作製し、これを110℃にて90分間、オーブンで加熱する。次に、得られた皮膜を4cm×0.5cmの長方形の試験片とし、この試験片を引張試験機オートグラフAG-1(島津製作所製)を用いて試験速度300mm/分にて引張特性試験を行い、試験片が切断したときの伸び(%)を測定する。なお、記載した条件以外はJIS K7161に準じて測定を行う。
【0035】
樹脂フィルムの引張強度は、耐久性の観点から、好ましくは10MPa以上であり、より好ましくは15MPa以上であり、更に好ましくは20MPa以上である。樹脂フィルムの引張強度の上限値は特に限定されず、例えば、60MPa以下であってもよい。樹脂フィルムの引張強度は、上記の上限値及び下限値を適宜組み合わせた範囲とすることができる。
樹脂フィルムの引張強度は、以下のようにして測定できる。
ポリウレタン樹脂エマルジョンを乾燥して厚さ200±20μmのフィルムを作製し、これを110℃にて90分間、オーブンで加熱する。次に、得られた皮膜を4cm×0.5cmの長方形の試験片とし、この試験片を引張試験機オートグラフAG-1(島津製作所製)を用いて試験速度300mm/分にて引張特性試験を行い測定する。なお、記載した条件以外はJIS K7161に準じて測定を行う。
【0036】
(1.3)異物除去部34の物性
以下、樹脂被覆膜36が形成された連続気泡フォーム20を、被覆膜付きフォーム38ともいう。本実施形態において、異物除去部34を構成する一方向に長い弾性材は、シート状の被覆膜付きフォーム38を、帯状に切断して得る。異物除去部34の物性は、シート状の被覆膜付きフォーム38の物性として評価できる。
【0037】
異物除去部34の密度(JIS K7222:2005準拠)は特に限定されない。異物除去部34の密度は、クリーニング性の観点から、好ましくは50kg/m以上であり、より好ましくは65kg/m以上であり、更に好ましくは75kg/m以上である。異物除去部34の密度は、巻き易さの観点から、好ましくは130kg/m以下であり、より好ましくは115kg/m以下であり、更に好ましくは105kg/m以下である。これらの観点から、異物除去部34の密度は、好ましくは50kg/m以上130kg/m以下であり、より好ましくは65kg/m以上115kg/m以下であり、更に好ましくは75kg/m以上105kg/m以下である。
【0038】
連続気泡フォーム20の密度に対する異物除去部34の密度の増加率は、耐摩耗性向上の観点から、好ましくは5%以上であり、より好ましくは10%以上であり、更に好ましくは20%以上であり、23%以上、25%以上、27%以上であってもよい。上記の密度の増加率は、歪特性を良好に保つ観点から、好ましくは60%以下であり、より好ましくは50%以下であり、更に好ましくは40%以下であり、30%以下であってもよい。これらの観点から、上記の密度の増加率は、好ましくは5%以上60%以下であり、より好ましくは10%以上50%以下であり、更に好ましくは20%以上40%以下である。
なお、連続気泡フォームの密度に対する異物除去部の密度の増加率ΔDは、以下の式により算出される。
ΔD=((D2-D1)/D1)×100
D1:連続気泡フォームの密度(kg/m
D2:異物除去部の密度(kg/m
【0039】
異物除去部34の25%圧縮硬さ(JIS K6400-2:2012 D法準拠)は特に限定されない。異物除去部34の25%圧縮硬さは、耐久性の観点から、好ましくは8kPa以上であり、より好ましくは10kPa以上であり、更に好ましくは12kPa以上である。異物除去部34の25%圧縮硬さは、柔軟性の観点から、好ましくは40kPa以下であり、より好ましくは35kPa以下であり、更に好ましくは32kPa以下である。これらの観点から、異物除去部34の25%圧縮硬さは、好ましくは8kPa以上40kPa以下であり、より好ましくは10kPa以上35kPa以下であり、更に好ましくは12kPa以上32kPa以下である。
【0040】
連続気泡フォーム20の25%圧縮硬さに対する異物除去部34の25%圧縮硬さの増加率は、耐久性向上の観点から、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上であり、更に好ましくは40%以上であり、50%以上、60%以上であってもよい。上記の25%圧縮硬さの増加率は、柔軟性を保つ観点から、好ましくは250%以下であり、より好ましくは150%以下であり、更に好ましくは100%以下であり、85%以下、70%以下であってもよい。これらの観点から、上記の25%圧縮硬さの増加率は、好ましくは20%以上250%以下であり、より好ましくは30%以上150%以下であり、更に好ましくは40%以上100%以下である。
なお、連続気泡フォームの25%圧縮硬さに対する異物除去部の25%圧縮硬さの増加率ΔLは、以下の式により算出される。
ΔL=((L2-L1)/L1)×100
L1:連続気泡フォームの25%圧縮硬さ(kPa)
L2:異物除去部の25%圧縮硬さ(kPa)
【0041】
異物除去部34の引張強さ(JIS K6400-5:2012準拠)は特に限定されない。異物除去部34の引張強さは、耐久性の観点から、好ましくは120kPa以上であり、より好ましくは135kPa以上であり、更に好ましくは150kPa以上である。異物除去部34の引張強さは、柔軟性を確保する点から、好ましくは330kPa以下であり、より好ましくは300kPa以下であり、更に好ましくは280kPa以下である。これらの観点から、異物除去部34の引張強さは、好ましくは120kPa以上330kPa以下であり、より好ましくは135kPa以上300kPa以下であり、更に好ましくは150kPa以上300kPa以下である。
【0042】
連続気泡フォーム20の引張強さに対する異物除去部34の引張強さの増加率は、耐久性向上の観点から、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上であり、更に好ましくは25%以上であり、30%以上、35%以上であってもよい。上記の引張強さの増加率は、柔軟性を保つ観点から、好ましくは60%以下であり、より好ましくは55%以下であり、更に好ましくは50%以下であり、45%以下、40%以下であってもよい。これらの観点から、上記の引張強さの増加率は、好ましくは10%以上60%以下であり、より好ましくは20%以上55%以下であり、更に好ましくは25%以上50%以下である。
なお、連続気泡フォームの引張強さに対する異物除去部の引張強さの増加率ΔStensileは、以下の式により算出される。
ΔStensile=((Stensile2-Stensile1)/Stensile1)×100
tensile1:連続気泡フォームの引張強さ(kPa)
tensile2:異物除去部の引張強さ(kPa)
【0043】
異物除去部34の伸び(JIS K6400-2:2012準拠)は特に限定されない。異物除去部34の伸びは、巻き易さの観点から、好ましくは55%以上であり、より好ましくは65%以上であり、更に好ましくは75%以上である。異物除去部34の伸びは、剥がれの観点から、好ましくは340%以下であり、より好ましくは310%以下であり、更に好ましくは280%以下である。これらの観点から、異物除去部34の伸びは、好ましくは55%以上340%以下であり、より好ましくは65%以上310%以下であり、更に好ましくは75%以上310%以下である。
【0044】
連続気泡フォーム20の伸びに対する異物除去部34の伸びの増加率は、耐久性向上の観点から、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上であり、更に好ましくは25%以上であり、30%以上、35%以上であってもよい。上記の伸びの増加率は、柔軟性を保つ観点から、好ましくは60%以下であり、より好ましくは55%以下であり、更に好ましくは50%以下であり、45%以下、40%以下であってもよい。これらの観点から、上記の伸びの増加率は、好ましくは10%以上60%以下であり、より好ましくは20%以上55%以下であり、更に好ましくは25%以上50%以下である。
なお、連続気泡フォームの伸びに対する異物除去部の伸びの増加率ΔEは、以下の式により算出される。
ΔE=((E2-E1)/E1)×100
E1:連続気泡フォームの伸び(%)
E2:異物除去部の伸び(%)
【0045】
異物除去部34の引裂強さは、耐久性の観点から、好ましくは6N/cm以上であり、より好ましくは7N/cm以上であり、更に好ましくは8N/cm以上である。異物除去部34の引裂強さは、柔軟性を確保する点から、好ましくは17N/cm以下であり、より好ましくは15N/cm以下であり、更に好ましくは13N/cm以下である。これらの観点から、異物除去部34の引裂強さは、好ましくは6N/cm以上17N/cm以下であり、より好ましくは7N/cm以上15N/cm以下であり、更に好ましくは8N/cm以上13N/cm以下である。
【0046】
連続気泡フォーム20の引裂強さに対する異物除去部34の引裂強さの増加率は、耐久性向上の観点から、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上であり、更に好ましくは25%以上であり、30%以上、35%以上であってもよい。上記の引裂強さの増加率は、柔軟性を保つ観点から、好ましくは80%以下であり、より好ましくは60%以下であり、更に好ましくは50%以下であり、45%以下、40%以下であってもよい。これらの観点から、上記の引裂強さの増加率は、好ましくは10%以上80%以下であり、より好ましくは20%以上60%以下であり、更に好ましくは25%以上50%以下である。
なお、連続気泡フォームの引裂強さに対する異物除去部の引裂強さの増加率ΔStearは、以下の式により算出される。
ΔStear=((Stear2-Stear1)/Stear1)×100
tear1:連続気泡フォームの引裂強さ(%)
tear2:異物除去部の引裂強さ(%)
【0047】
異物除去部34の繰り返し圧縮残留ひずみ試験(JIS K6400-4:2005 B法準拠)による厚さ低下率は特に限定されない。異物除去部34の厚さ低下率は、耐久性の観点から、好ましくは6%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは2%以下である。異物除去部34の厚さ低下率は、通常0%以上である。
なお、異物除去部の厚さ低下率は、連続気泡フォームの厚さ低下率と同様に算出される。
【0048】
異物除去部34の繰り返し圧縮残留ひずみ試験(JIS K6400-4:2005 B法準拠)による25%圧縮硬さの低下率は特に限定されない。異物除去部34の硬さ低下率は、耐久性の観点から、好ましくは70%以下であり、より好ましくは60%以下であり、更に好ましくは55%以下である。異物除去部34の硬さ低下率は、通常0%以上であり、10%以上、20%以上であってもよい。
なお、異物除去部の硬さ低下率は、連続気泡フォームの硬さ低下率と同様に算出される。
【0049】
2.クリーナー30の製造方法
本実施形態のクリーナー30は、例えば、連続気泡フォーム20の準備工程、エマルジョン樹脂EMの含浸工程、樹脂量の調整工程、乾燥工程、被覆膜付きフォーム38の加工工程、異物除去部34の取付工程を備えている。各工程について、図3から図5を参照しつつ説明する。
【0050】
(1)連続気泡フォーム20の準備工程
連続気泡フォーム20の準備工程では、図示しないポリウレタンフォームのブロック体から、シート状の連続気泡フォーム20を切り出す。シート状の連続気泡フォーム20の厚みは、異物除去部34の高さHと同じである。
【0051】
(2)エマルジョン樹脂EMの含浸工程
エマルジョン樹脂EMの含浸工程では、連続気泡フォーム20を、貯留槽42内に貯留されたエマルジョン樹脂EM内に浸漬させて、エマルジョン樹脂EMを連続気泡フォーム20に含浸させる。
【0052】
(3)樹脂量の調整工程
樹脂量の調整工程では、エマルジョン樹脂EMに含まれる樹脂の量を調整する。樹脂量の調整は、例えば、連続気泡フォーム20に含浸させたエマルジョン樹脂EMの余剰分を連続気泡フォーム20から絞り出して行うことができる。具体的には、図3(c)に示すように、エマルジョン樹脂EMが含浸した連続気泡フォーム20を、連続気泡フォーム20の厚みより狭い所要間隔に位置調整された調整ローラ44,44間に通過させる。調整ローラ44,44間を通過する過程で、エマルジョン樹脂EMが絞り出され、通過後の連続気泡フォーム20に所定量のエマルジョン樹脂EMが含浸された状態となる。連続気泡フォーム20を調整ローラ44,44間に通過させることで、シート状の連続気泡フォーム20の外表面および連通気泡の内壁面に、エマルジョン樹脂EMを行き渡らせ得る。
【0053】
なお、樹脂量の調整は、エマルジョン樹脂EMの余剰分を連続気泡フォーム20から絞り出すことに替えて、或いは、エマルジョン樹脂EMの余剰分を連続気泡フォーム20から絞り出すことと併用して、例えば、エマルジョン樹脂EM自体の固形分量や、粘度を調整して行ってもよい。
【0054】
(4)乾燥工程
乾燥工程では、エマルジョン樹脂EMに含まれた溶剤を蒸発させる。例えば、図3(c)に示すように、所定量のエマルジョン樹脂EMが含浸された連続気泡フォーム20を、恒温手段46内に保持して、所定温度(例えば、100℃-130℃)、所定時間(例えば、1時間-5時間)加熱して、溶剤を蒸発させる。エマルジョン樹脂EMの溶剤が蒸発すると、連続気泡フォーム20のセル骨格を被覆する樹脂被覆膜36が形成される。以上のようにして、被覆膜付きフォーム38が得られる。
【0055】
(5)被覆膜付きフォーム38の加工工程
被覆膜付きフォーム38の加工工程では、例えば、図3(c)に示すように、シート状の被覆膜付きフォーム38の一方の面に両面テープ37を貼り付ける。両面テープ37が貼り付けられた被覆膜付きフォーム38を、第1カッタ48及び第2カッタ50により、異物除去部34の幅W、長さLに切断する。以上により、図4に示すような、一方向に長い弾性材(被覆膜付きフォーム38)としての異物除去部34が得られる。
【0056】
(6)異物除去部34の取付工程
異物除去部34の取付工程では、例えば、図5に示すように、一方向に長い弾性材を、所定のピッチPで螺旋状に巻きながら、両面テープ37によってシャフト32の外面に接着する。以上のようにして、異物除去部34を有するクリーナー30が得られる。
【実施例0057】
以下、実施例により本開示を具体的に説明する。
1.クリーナーの作製
(1)参考例1-3、実施例1-11
シート状の連続気泡フォームを準備した。連続気泡フォームの詳細は以下の通りである。
連続気泡フォーム:ポリエーテル系のポリウレタンフォーム、品番 EP-70S、イノアックコーポレーション社製
【0058】
エマルジョン樹脂を準備した。エマルジョン樹脂の詳細は、以下の通りである。
ウレタン樹脂1:ポリエステル系のウレタン樹脂を含むエマルジョン樹脂、溶剤 水、固形分 45%、品番 ハイドランHW-311、DIC社製
ウレタン樹脂2:ポリエステル系のウレタン樹脂を含むエマルジョン樹脂、溶剤 水とN-メチルピロリドンの混合物、固形分 40%、品番 ハイドランHW-333、DIC社製
ウレタン樹脂3:ポリエステル系のウレタン樹脂を含むエマルジョン樹脂、溶剤 水、固形分 45%、品番 ハイドランAPX-101H、DIC社製
アクリル樹脂:アクリル樹脂を含むエマルジョン樹脂、溶剤 水、固形分 45%、品番 ニッポールLX852、日本ゼオン社製
【0059】
各エマルジョン樹脂の物性を表1に示す。なお、表1に記載の100%モジュラス、伸び、引張強度は、製造元により実施形態に記載の方法で測定された「エマルジョン樹脂から得られる樹脂フィルムの100%モジュラス」、「エマルジョン樹脂から得られる樹脂フィルムの伸び」、「エマルジョン樹脂から得られる樹脂フィルムの引張強度」を表す。粘度、ガラス転移点(Tg)、最低造膜温度(MFT)、流動点は、製造元によるカタログ値を表す。
【0060】
【表1】
【0061】
連続気泡フォームに、表1に記載のエマルジョン樹脂を含浸させて樹脂被覆膜を形成し、参考例1-3、実施例1-11の被覆膜付きフォームを得た。具体的には、連続気泡フォームにエマルジョン樹脂を含浸させ、所定の密度となるように樹脂量を調整した。その後に、110℃で、2時間乾燥させ、樹脂被覆膜を形成した。
【0062】
得られた被覆膜付きフォームを実施形態に記載の方法で加工して、異物除去部を得た。得られた異物除去部を実施形態に記載の方法でシャフトに取り付けて、参考例1-3、実施例1-11のクリーナーを得た。
【0063】
(2)比較例
樹脂被覆膜を形成しない連続気泡フォーム自体を参考例1-3、実施例1-11の被覆膜付きフォームと同様に加工して、比較例のクリーナーを製造した。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
2.評価方法
比較例、参考例1-3、実施例1-11の異物除去部について、実施形態に記載の方法により、密度、25%圧縮硬さ(25%CLD)、引張強さ、伸び、引裂強さ、繰り返し圧縮残留ひずみ試験による厚さ低下率(繰り返し圧縮歪)、繰り返し圧縮残留ひずみ試験による25%圧縮硬さの低下率(繰り返し圧縮後25%CLD低下率)を測定した。また、参考例1-3、実施例1-11の異物除去部の密度、25%圧縮硬さ(25%CLD)、引張強さ、伸び、引裂強さについて、実施形態に記載の方法で、連続気泡フォーム(比較例)に対する増加率ΔD、ΔL、ΔStensile、ΔE、ΔStearを算出した。
【0067】
また、連続気泡フォーム、参考例1-3、実施例1-11の被覆膜付きフォームについて、以下の摩擦試験を行って摩擦係数を算出した。
シート状の連続気泡フォーム、参考例1-3、実施例1-11の被覆膜付きフォームを試験片とした。平板上に試験片を置き、その上に測定標準紙を置き、その上にφ70の円柱状の300gの真鍮製の重りを圧接させた。紙の先端をプッシュプルゲージで接続し、一定の速度で引っ張り摩擦力Fを測定した。測定した摩擦力Fと鉛直荷重W(=300gf)とから、以下の式に摩擦係数μを算出した。
μ=F/W
【0068】
比較例、参考例1-3、実施例1-11のクリーナーについて、以下の耐摩耗性試験を行って耐摩耗性を評価した。
クリーナーを、モーターと直結したφ30のSUSパイプにセットした。この際、クリーナーの両端部の軸ジャーナル部に、1000gfの荷重を均等にかけ、クリーナーをSUSパイプに接触させた。SUSパイプを100rpmの速さで48時間連続回転させ、連続回転後にクリーナーの質量(摩耗後質量)を秤量した。連続回転前に秤量しておいたクリーナーの初めの質量(g)から摩耗後質量(g)を引いて、摩耗量(g)を算出した。表3における耐摩耗性の値は、摩耗量の逆数において比較例の値を1とした際の相対値である。なお、数値が大きいほど摩耗量が少なく耐摩耗性が良好である。
【0069】
3.結果
評価結果を、表2,3に併記する。
実施例1-11のクリーナーは、下記要件(a)-(d)を全て満たしている。これに対して、比較例のクリーナーは、下記要件(a)-(d)を満たしていない。
・要件(a):異物除去部は、連続気泡構造の連続気泡フォームと、連続気泡フォームのセル骨格を被覆する樹脂被覆膜と、を備える。
・要件(b):樹脂被覆膜は、連続気泡フォームにエマルジョン樹脂を含浸させて形成される。
・要件(c):エマルジョン樹脂から得られる樹脂フィルムの100%モジュラスが20MPa以下である。
・要件(d):エマルジョン樹脂から得られる樹脂フィルムの伸びが200%以上である。
【0070】
実施例1-11のクリーナーは、比較例のクリーナーよりも耐摩耗性が高かった。よって、要件(a),(b)とともに、要件(c)及び要件(d)の少なくとも一方を満たすことで、クリーナーの耐摩耗性が向上することが示唆された。
また、実施例1-11のクリーナーは、実用に適した密度、25%CLD、引張強さ、伸び、引裂強さ、繰り返し圧縮歪、繰り返し圧縮後25%CLD低下率、摩擦係数であった。よって、実施例1-11のクリーナーは、クリーナーとして有用であること分かった。
【0071】
実施例1-11のうち、実施例1-5は要件(a)-(d)に加えて、下記要件(e),(f)を満たしている。
・要件(e):エマルジョン樹脂から得られる樹脂フィルムの100%モジュラスが6MPa以下である。
・要件(f):エマルジョン樹脂から得られる樹脂フィルムの伸びが500%以上である。
【0072】
実施例1-5のクリーナーは、実施例6-11のクリーナーよりも耐摩耗性がより一層高かった。よって、要件(a)-(d)に加えて、要件(e)及び要件(f)の少なくとも一方を満たすことで、クリーナーの耐摩耗性がより一層向上することが示唆された。
【0073】
実施例1-5のうち、実施例3-5は要件(a)-(f)に加えて、下記要件(g)を満たしている。
・要件(g):連続気泡フォームの密度に対する異物除去部の密度の増加率は、24%以上である。
【0074】
実施例3-5のクリーナーは、実施例1-5のクリーナーの中でも耐摩耗性が特に高かった。よって、要件(a)-(d)に加えて、要件(e)-(g)を満たすことで、クリーナーの耐摩耗性が特に向上することが示唆された。
【0075】
続いて、実施例1-11のクリーナーと参考例1-3のクリーナーを比較する。実施例1-11は、ウレタン樹脂を含むエマルジョン樹脂を用いている。参考例1-3は、アクリル樹脂を含むエマルジョン樹脂を用いている。実施例1-11は、参考例1-3よりも25%CLDが大きかった。実施例1-11のうち実施例1-5,7-11は、参考例1-3よりも引張強さが大きかった。よって、ウレタン樹脂を含むエマルジョン樹脂を用いることで、好適にクリーナーの耐久性を向上できることが示唆された。
【0076】
以上の実施例によれば、十分な耐摩耗性を有するクリーナーを提供できた。
【0077】
本開示は上記で詳述した実施例に限定されず、本開示の範囲で様々な変形又は変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5