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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090708
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/06 20090101AFI20240627BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20240627BHJP
【FI】
H04W4/06 130
H04W84/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206779
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】笹嶋 康孝
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】複数の基地局を用いて、マルチキャスト方式で、多数の端末にデータを送信する場合でも、複数の基地局間で電波干渉が発生するのを抑制することができる制御装置及び制御方法を提供する。
【解決手段】制御装置10は、送信部15、受信部17、及び制御部19を備える。送信部15は、送信期間TP1に、マルチキャスト方式で基地局20a~20cに音声パケットVP1を送信する。受信部17は、基地局20b,20cから、送信部15から送信された音声パケットVP1の受信タイミングと、基準基地局である基地局20aから無線送信された音声パケットVP1の受信タイミングとに基づいて算出された差分時間Td1,Td2を受信する。制御部19は、送信期間TP1よりも後の送信期間TPn(n>1)に、差分時間Td1,Td2に基づいて、基地局20b,20cに音声パケットVPnを送信する送信タイミングを制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の送信期間に、マルチキャスト方式で複数の基地局に第1のデータを送信する送信部と、
前記複数の基地局のうちの1つの基地局である基準基地局以外の各基地局から、各基地局における、前記送信部から送信された前記第1のデータを受信したタイミングと、前記基準基地局からマルチキャスト方式で無線送信される前記第1のデータを受信したタイミングとに基づいて算出された差分時間を受信する受信部と、
前記第1の送信期間より後の第2の送信期間に、前記受信部が受信した前記差分時間に基づいて、各基地局に第2のデータを送信する送信タイミングを制御する制御部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記基準基地局からマルチキャスト方式で無線送信される前記第1のデータの送信時間から前記差分時間を減算した値だけ、各基地局に第2のデータを送信する送信タイミングを遅らせる請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記受信部が各基地局から前記差分時間を受信した順番を識別し、
前記制御部は、前記基準基地局からマルチキャスト方式で無線送信される前記第1のデータの送信時間に前記順番の数を乗じた値から、前記差分時間を減算した値だけ、各基地局に第2のデータを送信する送信タイミングを遅らせる請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
第1の送信期間に、マルチキャスト方式で複数の基地局に第1のデータを送信する送信ステップと、
前記複数の基地局のうちの1つの基地局である基準基地局以外の各基地局から、各基地局における、前記送信ステップで送信された前記第1のデータを受信したタイミングと、前記基準基地局からマルチキャスト方式で無線送信される前記第1のデータを受信したタイミングとに基づいて算出された差分時間を受信する受信ステップと、
前記第1の送信期間より後の第2の送信期間に、前記受信ステップで受信した前記差分時間に基づいて、各基地局に第2のデータを送信する送信タイミングを制御する制御ステップと、
を備える制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線LAN(Local Area Network)を用いた無線会議システムが知られている(特許文献1参照)。無線会議システムでは、議場、会議室などで、多数の端末を使用する場合、1つの基地局に同時接続できる端末の数は限られているため、複数の基地局を用いて、多数の端末に対処している。
【0003】
制御装置は、多数の端末に向けて、音声などのデータを同時送信する場合、マルチキャスト方式で、複数の基地局にデータを送信する。各基地局は、制御装置からデータを受信すると、当該基地局に同時接続している複数の端末に向けて、マルチキャスト方式で、受信したデータを送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-173162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線会議システムでは、複数の基地局は、議場、会議室などの限られた空間に設けられるため、互いに近い距離に配置されている。このため、複数の基地局間で電波干渉が発生して、データを受信する端末側で、データのエラー率が高くなる可能性がある。マルチキャスト方式では、データの再送は行われないため、端末側でデータのエラー率が高くなると、音声が途切れる可能性がある。
【0006】
このため、複数の基地局間で電波干渉が発生するのを抑制することが求められている。本発明は、複数の基地局を用いて、マルチキャスト方式で、多数の端末にデータを送信する場合でも、複数の基地局間で電波干渉が発生するのを抑制することができる制御装置及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の送信期間に、マルチキャスト方式で複数の基地局に第1のデータを送信する送信部と、前記複数の基地局のうちの1つの基地局である基準基地局以外の各基地局から、各基地局における、前記送信部から送信された前記第1のデータを受信したタイミングと、前記基準基地局からマルチキャスト方式で無線送信される前記第1のデータを受信したタイミングとに基づいて算出された差分時間を受信する受信部と、前記第1の送信期間より後の第2の送信期間に、前記受信部が受信した前記差分時間に基づいて、各基地局に第2のデータを送信する送信タイミングを制御する制御部と、を備える制御装置を提供する。
【0008】
本発明は、第1の送信期間に、マルチキャスト方式で複数の基地局に第1のデータを送信する送信ステップと、前記複数の基地局のうちの1つの基地局である基準基地局以外の各基地局から、各基地局における、前記送信ステップで送信された前記第1のデータを受信したタイミングと、前記基準基地局からマルチキャスト方式で無線送信される前記第1のデータを受信したタイミングとに基づいて算出された差分時間を受信する受信ステップと、前記第1の送信期間より後の第2の送信期間に、前記受信ステップで受信した前記差分時間に基づいて、各基地局に第2のデータを送信する送信タイミングを制御する制御ステップと、を備える制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の制御装置及び制御方法によれば、複数の基地局を用いて、マルチキャスト方式で、多数の端末にデータを送信する場合でも、複数の基地局間で電波干渉が発生するのを抑制することができるため、音声が途切れるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る無線会議システムを示すブロック図である。
図2】基地局間での電波干渉の発生を説明する図である。
図3】第1実施形態に係る制御装置を示すブロック図である。
図4】第1実施形態に係る制御方法を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態に係る音声パケット送信の遅延時間を設定する前におけるパケット送信のタイミングチャートである。
図6】第1実施形態に係る音声パケット送信の遅延時間を設定した後におけるパケット送信のタイミングチャートである。
図7】第2実施形態に係る無線会議システムを示すブロック図である。
図8】第2実施形態に係る基地局を示すブロック図である。
図9】第2実施形態に係る制御方法を示すフローチャートである。
図10】第2実施形態に係る無線パケット送信のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、第1実施形態及び第2実施形態に係る無線会議システムについて、添付図面を参照して説明する。なお、同一の機能や構成には、同一又は類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態では、無線会議システムにおいて、複数の基地局間で電波干渉が発生するのを抑制するために、制御装置側で送信タイミングの制御を行う。
【0013】
最初に、無線会議システム1の構成を説明する。図1に示すように、無線会議システム1は、制御装置10、基地局20a~20c、複数の端末30a、複数の端末30b、及び複数の端末30cを備える。制御装置10は、通信端子40a~40cを有する。制御装置10は、例えば、無線会議システム1のメインコントローラである。通信端子40a~40cは、例えば、RJ45などのイーサネット端子である。なお、通信端子の数は、3つに限定されない。
【0014】
基地局20a~20cは、それぞれ、通信ケーブル50a~50cを介して、通信端子40a~40cに接続されている。通信ケーブル50a~50cは、例えば、イーサネットケーブルである。このように、無線会議システム1では、基地局20a~20cは、制御装置10を中心としたスター型に配置されている。基地局20aには、複数の端末30aが同時接続されている。基地局20bには、複数の端末30bが同時接続されている。基地局20cには、複数の端末30cが同時接続されている。基地局20a~20cは、例えば、無線LANのアクセスポイントである。なお、基地局の数は、3つに限定されない。
【0015】
基地局20a~20cのうちの1つの基地局は、基準基地局として予め設定されている。本実施形態では、基地局20aは、基準基地局として設定されるため、基準基地局20aとも呼称される。
【0016】
制御装置10は、複数の端末30a、複数の端末30b、及び複数の端末30cに向けて、音声データを同時送信するために、音声データを複数の音声パケットに変換して、マルチキャスト方式で、各音声パケットを基地局20a~20cに送信する。
【0017】
なお、音声データは、音声データ生成部(図示略)によって、無線会議システム1における各端末から送信される音声データに基づいて、会議音声として生成される。音声データ生成部は、無線会議システム1内に別の装置として設けられてもよく、制御装置10内に設けられてもよい。制御装置10における、後述する主制御部11に音声データ生成部の機能を設けてもよい。
【0018】
基地局20a~20cは、制御装置10から音声パケットを受信すると、受信した音声パケットに無線用ヘッダを追加して、無線パケットを生成する。基地局20a~20cは、それぞれ、マルチキャスト方式で、複数の端末30a、複数の端末30b、及び複数の端末30cに、生成した無線パケットを送信する。なお、音声パケットは、単にデータとも呼称される。
【0019】
図2は、基地局間での電波干渉の発生を説明する図である。図2に示すように、基地局20a~20cは、それぞれ、無線チャネル21a~21cで動作し、電波到達範囲23a~23cを有する。複数の端末30aは、電波到達範囲23a内に配置されて、無線チャネル21aを用いて、基地局20aと無線通信を行う。複数の端末30bは、電波到達範囲23b内に配置されて、無線チャネル21bを用いて、基地局20bと無線通信を行う。複数の端末30cは、電波到達範囲23c内に配置されて、無線チャネル21cを用いて、基地局20cと無線通信を行う。
【0020】
基地局20a~20cは、議場、会議室などの限られた空間に設けられるため、互いに近い距離に配置されている。このため、基地局20aの電波到達範囲23a及び基地局20bの電波到達範囲23bは、互いに重なる重複領域25aを有する。また、基地局20aの電波到達範囲23a及び基地局20cの電波到達範囲23cは、互いに重なる重複領域25bを有する。なお、図2には示していないが、基地局20bの電波到達範囲23b及び基地局20cの電波到達範囲23cも同様に、互いに重なる重複領域を有する場合がある。
【0021】
制御装置10が、音声パケットを基地局20a,20bに同時送信する場合、基地局20a,20bは、同じ送信タイミングで、無線パケットを電波到達範囲23a,23bに送信する。このため、例えば、重複領域25aに配置された端末30bは、自機が使用する無線チャネル21bで送信された無線パケットと、自機が使用しない無線チャネル21aで送信された無線パケットとを同時に受信する。このため、基地局20a,20b間の重複領域25aで、電波干渉が発生する。
【0022】
同様に、制御装置10が、音声パケットを基地局20a,20cに同時送信する場合、基地局20a,20cは、同じ送信タイミングで、無線パケットを電波到達範囲23a,23cに送信する。このため、例えば、重複領域25bに配置された端末30cは、自機が使用する無線チャネル21cで送信された無線パケットと、自機が使用しない無線チャネル21aで送信された無線パケットとを同時に受信する。このため、基地局20a,20c間の重複領域25bで、電波干渉が発生する。
【0023】
次に、制御装置10の構成を説明する。図3に示すように、制御装置10は、主制御部11、記憶部13、送信部15、受信部17、制御部19、通信端子40a~40c、送信線41a~41c、及び受信線42a~42cを備える。制御装置10は、通信端子40a~40cを除いて、プロセッサ及びメモリを含むコンピュータで構成することができる。また、制御装置10は、通信端子40a~40cのうちの1つ、又は通信端子40a~40cとは別に設けられた通信部(図示略)を介して、基地局20a~20c以外のネットワークに接続可能である。
【0024】
主制御部11は、制御装置10全体の動作を制御する。主制御部11は、基地局20a~20cと同期動作を行う。主制御部11は、音声パケットを送信する送信間隔を設定する。送信間隔は、例えば、4msであり、送信期間とも呼称される。なお、送信間隔の設定は、送信部15で行われてもよい。
【0025】
記憶部13は、マルチキャスト送信用のアドレス、基準基地局の情報、後述する音声パケットの送信時間VPL及び無線パケットの送信時間PLなどを記憶する。音声パケットの送信時間は、音声パケットの時間長とも呼称される。無線パケットの送信時間は、無線パケットの時間長とも呼称される。なお、記憶部13は、後述する差分時間Td1,Td2及び音声パケット送信の遅延時間VTb,Vtcを記憶してもよい。
【0026】
送信部15は、送信線41a~41cを介して、通信端子40a~40cに接続される。送信部15は、制御装置10が音声データを取得すると、音声データを複数のデータに分割する。送信部15は、各データに対して、マルチキャスト送信用のアドレスを付加して、音声パケットを生成する。送信部15は、設定された送信間隔毎に、音声パケットを送信線41a~41cに出力して、マルチキャスト方式で、基地局20a~20cに音声パケットを送信する。なお、送信部15は、音声データを複数のデータに分割する際に、各データを圧縮して、データサイズを小さくしてもよい。
【0027】
受信部17は、受信線42a~42cを介して、通信端子40a~40cに接続される。受信部17は、受信線42b,42cを介して、基地局20b,20cから、差分時間Td1,Td2を受信する。
【0028】
制御部19は、遅延回路19b,19cを有しており、差分時間Td1,Td2に基づいて、基地局20b,20cに音声パケットを送信する送信タイミングを制御する。制御部19は、受信部17が基地局20b,20cから差分時間Td1,Td2を受信した順番を識別する。制御部19は、差分時間Td1と、無線パケットの送信時間PLとに基づいて、送信線41bにおける音声パケット送信の遅延時間VTbを設定する。制御部19は、差分時間Td2と、無線パケットの送信時間PLとに基づいて、送信線41cにおける音声パケット送信の遅延時間VTcを設定する。なお、音声パケット送信の遅延時間は、遅延回路の設定時間とも呼称される。
【0029】
遅延回路19bは、送信線41bに設けられる。遅延回路19bは、設定された遅延時間VTb分だけ遅らせて、送信部15から受信した音声パケットを通信端子40bに出力する。
【0030】
遅延回路19cは、送信線41cに設けられる。遅延回路19cは、設定された遅延時間VTc分だけ遅らせて、送信部15から受信した音声パケットを通信端子40cに出力する。
【0031】
通信端子40aには、送信線41a及び受信線42aが接続されている。通信端子40bには、送信線41b及び受信線42bが接続されている。通信端子40cには、送信線41c及び受信線42cが接続されている。
【0032】
次に、図4に示すフローチャート、及び図5に示すタイミングチャートを用いて、制御装置10が、基地局間で電波干渉が発生するのを回避するために、各基地局に音声パケットを送信する送信タイミングを制御する方法を説明する。なお、図5は、送信期間TP1における各基地局の送信タイミング及び受信タイミングを示している。本実施形態では、上述したように、基地局20aが基準基地局として予め設定されている。
【0033】
図4に示すように、制御装置10が送信タイミングの制御を開始する場合、ステップS1にて、制御装置10の送信部15は、送信期間TP1内で、マルチキャスト方式で、基地局20a~20cに音声パケットVP1を送信する(図5のA参照)。ステップS1では、遅延回路19b,19cには、音声パケット送信の遅延時間VTb,VTcは設定されていない。なお、送信期間TP1は、第1の送信期間とも呼称される。
【0034】
基地局20aは、送信期間TP1で、通信ケーブル50aを介して、音声パケットVP1を有線受信する(図5のB参照)。制御装置10から基地局20aまでの通信ケーブル50a上の音声パケットVP1の伝送時間はTaである。
【0035】
基地局20bは、送信期間TP1内で、通信ケーブル50bを介して、音声パケットVP1を有線受信する(図5のD参照)。制御装置10から基地局20bまでの通信ケーブル50b上の音声パケットVP1の伝送時間はTbである。
【0036】
基地局20cは、送信期間TP1内で、通信ケーブル50cを介して、音声パケットVP1を有線受信する(図5のE参照)。制御装置10から基地局20cまでの通信ケーブル50c上の音声パケットVP1の伝送時間はTcである。
【0037】
ステップS2にて、基地局20aは、送信期間TP1内で、有線受信した音声パケットVP1を含む無線パケットWP1を生成して、マルチキャスト方式で、無線パケットWP1を無線送信する(図5のC参照)。ステップS3にて、基地局20bは、自機が使用する無線チャネル21bを一時的に無線チャネル21aに切り替えて、送信期間TP1内で、基地局20aからマルチキャスト方式で無線送信された無線パケットWP1を、無線受信する。本実施形態では、基地局20aは、音声パケットVP1を有線受信すると、時間を空けずに、無線パケットWP1を無線送信する。また、基地局20bは、基地局20aが無線パケットWP1を無線送信すると、時間を空けずに、無線パケットWP1を無線受信する。
【0038】
基地局20bは、無線パケットWP1を無線受信すると、他の妨害波と区別するために、基地局20aから無線受信した無線パケットWP1に含まれる音声パケットVP1が、制御装置10から有線受信した音声パケットVP1と同じであるか否かを判定する。具体的には、基地局20bは、有線受信した音声パケットVP1に含まれるデータの内容(例えば、識別情報)が、無線受信した無線パケットWP1内の音声パケットVP1に含まれるデータの内容(例えば、識別情報)と同じであるか否かを判定する。基地局20bは、両方のデータ内容が同じである場合、無線受信した無線パケットWP1に含まれる音声パケットVP1は、有線受信した音声パケットVP1と同じであると判定する。なお、上述した識別情報は、音声パケットVP1のヘッダ部分及び無線パケットWP1のヘッダ部分に含まれてもよい。
【0039】
基地局20bは、データの内容に基づいて、上述した判定を行う代わりに、音声パケットVP1を有線受信した送信期間が、無線パケットWP1を無線受信した送信期間と同じであるか否かを判定してもよい。この場合、基地局20bは、両方の送信期間が同じである場合、無線受信した無線パケットWP1に含まれる音声パケットVP1は、有線受信した音声パケットVP1と同じであると判定する。また、基地局20bは、データの内容及び送信期間に基づいて、上述した判定を行ってもよい。
【0040】
本実施形態では、基地局20bは、制御装置10から音声パケットVP1を有線受信した後に、基地局20aから無線パケットWP1を無線受信する。なお、基地局20bは、伝送時間Ta,Tbの長さによっては、基地局20aから無線パケットWP1を無線受信した後に、制御装置10から音声パケットVP1を有線受信する場合もある。
【0041】
基地局20bは、無線受信した無線パケットWP1に含まれる音声パケットVP1が、有線受信した音声パケットVP1と同じであると判定すると、ステップS4を実行する。ステップS4にて、基地局20bは、基準基地局である基地局20aから無線パケットWP1を無線受信したタイミングと、制御装置10から音声パケットVP1を有線受信したタイミングとに基づいて、差分時間Td1(=Tb-Ta)を算出する。
【0042】
具体的には、基地局20aから無線パケットWP1を無線受信したタイミングは、伝送時間Taと、音声パケットVP1の送信時間VPLと、無線パケットWP1の送信時間PLとを加算したタイミングに等しい。ここで、音声パケットVP1の送信時間VPL、及び無線パケットWP1の送信時間PLは既知であるため、基地局20bは、基準基地局である基地局20aから無線パケットWP1を無線受信したタイミングから、音声パケットVP1の送信時間VPLと、無線パケットWP1の送信時間PLとを減算した値を取得して、制御装置10から音声パケットVP1を有線受信したタイミングから、取得した値を
減算することで、差分時間Td1(=Tb-Ta)を算出することができる。なお、基地局20bが、基地局20aから無線パケットWP1を無線受信した後に、制御装置10から音声パケットVP1を有線受信する場合でも、上述した方法により、差分時間Td1を算出することができる。
【0043】
上述したように、無線パケットWP1には、音声パケットVP1が含まれるため、「基地局20aから無線パケットWP1を無線受信したタイミング」という表現は、「基地局20aからマルチキャスト方式で無線送信された音声パケットVP1を受信したタイミング」と言い換えることができる。
【0044】
差分時間Td1は、伝送時間Tbが伝送時間Taよりも長い場合には、正の値をとり、伝送時間Tbが伝送時間Taよりも短い場合には、負の値をとる。基地局20bは、差分時間Td1を算出すると、送信期間TP1、又は送信期間TP1よりも後の送信期間TPn(n>1)内の音声パケット通信が行われていない期間に、算出した差分時間Td1を、ユニキャスト送信で制御装置10に通知する。
【0045】
制御装置10の受信部17が、基地局20bから差分時間Td1を受信すると、ステップS5にて、制御装置10の制御部19は、差分時間Td1と、無線パケットWP1の送信時間PLとに基づいて、音声パケット送信の遅延時間VTbを算出する。具体的には、制御部19は、受信部17が基地局20bから差分時間Td1を1番目に受信したため、無線パケットWP1の送信時間PLに1を乗じた値から、差分時間Td1を減算した値を算出して、算出した値(=PL-Td1)を音声パケット送信の遅延時間VTbとする。なお、制御部19は、算出した値にジッタ成分を加算して、音声パケット送信の遅延時間VTbを設定してもよい。
【0046】
制御部19は、受信部17が受信線42bを介して差分時間Td1を受信したことを識別して、送信線41b上の遅延回路19bに遅延時間VTbを設定する。これにより、遅延回路19bは、送信期間TP1よりも後の送信期間TPn(n>1)にて、設定された遅延時間VTb分だけ遅らせて、送信部15から受信した音声パケットを通信端子40bに出力する。
【0047】
なお、上述したように、無線パケットWP1には、音声パケットVP1が含まれるため、「無線パケットWP1の送信時間」という表現は、「基地局20aからマルチキャスト方式で無線送信される音声パケットVP1の送信時間」と言い換えることができる。
【0048】
ステップS6にて、基地局20cは、自機が使用する無線チャネル21cを一時的に無線チャネル21aに切り替えて、送信期間TP1内で、基地局20aからマルチキャスト方式で無線送信された無線パケットWP1を、無線受信する。本実施形態では、基地局20cは、基地局20bと同様に、基地局20aが無線パケットWP1を無線送信すると、時間を空けずに、無線パケットWP1を無線受信する。
【0049】
基地局20cは、無線パケットWP1を無線受信すると、他の妨害波と区別するために、基地局20aから無線受信した無線パケットWP1に含まれる音声パケットVP1が、制御装置10から有線受信した音声パケットVP1と同じであるか否かを判定する。
【0050】
本実施形態では、基地局20cは、制御装置10から音声パケットVP1を有線受信した後に、基地局20aから無線パケットWP1を無線受信する。なお、基地局20cは、伝送時間Ta,Tcの長さによっては、基地局20aから無線パケットWP1を無線受信した後に、制御装置10から音声パケットVP1を有線受信する場合もある。
【0051】
基地局20cは、無線受信した無線パケットWP1に含まれる音声パケットVP1が、有線受信した音声パケットVP1と同じであると判定すると、ステップS7を実行する。ステップS7にて、基地局20cは、基準基地局である基地局20aから無線パケットWP1を無線受信したタイミングと、制御装置10から音声パケットVP1を有線受信したタイミングとに基づいて、差分時間Td2(=Tc-Ta)を算出する。
【0052】
差分時間Td2は、伝送時間Tcが伝送時間Taよりも長い場合には、正の値をとり、伝送時間Tcが伝送時間Taよりも短い場合には、負の値をとる。基地局20cは、差分時間Td2を算出すると、送信期間TP1、又は送信期間TP1よりも後の送信期間TPn(n>1)内の音声パケット通信が行われていない期間に、算出した差分時間Td2を、ユニキャスト送信で制御装置10に通知する。
【0053】
制御装置10の受信部17が、基地局20cから差分時間Td2を受信すると、ステップS8にて、制御装置10の制御部19は、差分時間Td2と、無線パケットWP1の送信時間PLとに基づいて、音声パケット送信の遅延時間VTcを算出する。具体的には、制御部19は、受信部17が基地局20cから差分時間Td2を2番目に受信したため、無線パケットWP1の送信時間PLに2を乗じた値から差分時間Td2を減算した値を算出して、算出した値(=2×PL-Td2)を音声パケット送信の遅延時間VTcとする。なお、制御部19は、算出した値にジッタ成分を加算して、音声パケット送信の遅延時間VTcを設定してもよい。
【0054】
制御部19は、受信部17が受信線42cを介して差分時間Td2を受信したことを識別して、送信線41c上の遅延回路19cに遅延時間VTcを設定する。これにより、遅延回路19cは、送信期間TP1よりも後の送信期間TPn(n>1)にて、設定された遅延時間VTc分だけ遅らせて、送信部15から受信した音声パケットを通信端子40cに出力する。
【0055】
なお、本実施形態では、伝送時間Tcは伝送時間Tbよりも長いため、ステップS2,S4,S5の処理は、ステップS6~S8の処理よりも前に行われるが、伝送時間Tcが伝送時間Tbよりも短い場合には、ステップS2,S4,S5の処理は、ステップS6~S8の処理よりも後に行われる。
【0056】
また、基地局20b,20cの各々が、基地局20aから無線パケットWP1を無線受信した後に、極端に遅れて、制御装置10から音声パケットVP1を有線受信する場合には、各基地局が無線パケットWP1を送信するタイミングは、基地局20aが無線パケットWP1を送信するタイミングから十分にずれている。この場合、各基地局は、遅延回路に、音声パケット送信の遅延時間を設定しなくてもよい。例えば、遅延時間VTbが負の値になる場合には、基地局20bは、遅延回路19bに遅延時間Vtbを設定しなくてもよい。同様に、遅延時間VTcが負の値になる場合には、基地局20cは、遅延回路19cに遅延時間Vtcを設定しなくてもよい。
【0057】
上述した送信タイミングの制御は、制御装置10の起動時の初期化処理で行われる。この場合、音声パケットVP1の送信時間(時間長)は、無線会議が行われている最中に、制御装置10からマルチキャスト方式で送信される音声パケットの送信時間(時間長)と同じである。また、音声パケットVP1内のデータ部分には、音声データは含まれていない。なお、上述した送信タイミングの制御は、制御装置10の起動時の初期化処理に限定されず、無線会議が行われている最中に、基地局の接続が一時的に切断されて復帰する場合、又は新たな基地局を追加する場合にも行われてもよい。
【0058】
次に、図6のタイミングチャートを用いて、遅延回路19b,19cに、音声パケット送信の遅延時間VTb,VTcを設定したことにより、基地局間での電波干渉の発生が回避されることを説明する。
【0059】
制御装置10は、送信期間TPn(n>1)にて、基地局20aに音声パケットVP1を送信する(図6のA参照)。基地局20aは、伝送時間Ta後に、音声パケットVP1を有線受信すると(図6のB参照)、マルチキャスト方式で、音声パケットVPnを含む無線パケットWPnを無線送信する(図6のC参照)。なお、送信期間TPnは、第2の送信期間とも呼称される。
【0060】
制御装置10は、送信期間TPnにて、遅延時間VTb(=PL-Td1)分だけ遅らせて、基地局20bに音声パケットVPnを送信する(図6のD参照)。基地局20bは、伝送時間Tb後に、音声パケットVPnを有線受信すると(図6のE参照)、音声パケットVPnを含む無線パケットWPnを生成して、マルチキャスト方式で、無線パケットWPnを無線送信する(図6のF参照)。
【0061】
基地局20bは、基地局20aが無線パケットWPnを送信し始める時点から、無線パケット送信の遅延時間WTb分だけ遅れて、無線パケットWPnを送信する。遅延時間WTbは、音声パケット送信の遅延時間VTbに伝送時間Tb及び音声パケットVPnの送信時間VPLを加えた値(=PL-Td1+Tb+VPL)から、伝送時間Ta及び音声パケットVPnの送信時間VPLを減算した値(=PL-Td1+Tb+VPL-Ta-VPL=PL―(Tb-Ta)+(Tb-Ta)=PL)に等しい。
【0062】
このように、基地局20bは、基地局20aが無線パケットWPnを送信し始める時点から、無線パケットWPnの送信時間(時間長)分だけ遅れて、無線パケットWPnを送信する。これにより、基地局20a,20b間で電波干渉が発生するのを回避することができる。なお、遅延時間VTbは、送信期間TPn以降の送信期間でも固定される。
【0063】
制御装置10は、送信期間TPnにて、遅延時間VTc(=2×PL-Td2)分だけ遅らせて、基地局20cに音声パケットVPnを送信する(図6のG参照)。基地局20cは、伝送時間Tc後に、音声パケットVPnを有線受信すると(図6のH参照)、音声パケットVPnを含む無線パケットWPnを生成して、マルチキャスト方式で、無線パケットWPnを無線送信する(図6のI参照)。
【0064】
基地局20cは、基地局20aが無線パケットWPnを送信し始める時点から、無線パケット送信の遅延時間WTc分だけ遅れて、無線パケットWPnを送信する。遅延時間WTcは、音声パケット送信の遅延時間VTcに伝送時間Tc及び音声パケットVPnの送信時間VPLを加えた値(=2×PL-Td2+Tc+VPL)から、伝送時間Ta及び音声パケットVPnの送信時間VPLを減算した値(=2×PL-Td1+Tc+VPL-Ta-VPL=2×PL―(Tc-Ta)+(Tc-Ta)=2×PL)に等しい。
【0065】
このように、基地局20cは、基地局20aが無線パケットWPnを送信し始める地点から、無線パケットWPnの送信時間(時間長)の2倍の時間分だけ遅れて、無線パケットWPnを送信する。同様に、基地局20cは、基地局20bが無線パケットWPnを送信し始める時点から、無線パケットWPnの送信時間(時間長)分だけ遅れて、無線パケットWPnを送信する。これにより、基地局20a,20c間、及び基地局20b,20c間で電波干渉が発生するのを回避することができる。なお、遅延時間VTcは、送信期間TPn以降の送信期間でも固定される。
【0066】
本実施形態によれば、制御装置10は、送信部15、受信部17、及び制御部19を備える。送信部15は、送信期間TP1に、マルチキャスト方式で、基地局20a~20cに音声パケットVP1を送信する。受信部17は、基地局20a~20cのうちの1つの基地局である基準基地局20a以外の基地局20b,20cから、基地局20b,20cにおける、送信部15から送信された音声パケットVP1を受信したタイミングと、基準基地局20aからマルチキャスト方式で無線送信される音声パケットVP1を受信したタイミングとに基づいて算出された差分時間Td1,Td2を受信する。制御部19は、送信期間TP1よりも後の送信期間TPn(n>1)に、受信部17が受信した差分時間Td1,Td2に基づいて、基地局20b,20cに音声パケットVPnを送信する送信タイミングを制御する。
【0067】
このような構成により、制御装置10は、送信期間TP1よりも後の送信期間TPn(n>1)内で、基地局20a~20cから無線送信される音声パケットの送信時間が重ならないように、音声パケットを無線送信する送信タイミングをずらすことができる。このため、複数の基地局を用いて、マルチキャスト方式で、多数の端末にデータを送信する場合でも、複数の基地局間で電波干渉が発生するのを抑制することができ、音声が途切れるのを回避することができる。
【0068】
特に、基地局20b,20cは、伝送時間Ta~Tcが不明であっても、差分時間Td1,Td2を検出することができる。このため、制御装置10は、送信タイミングをずらす時間量を正確に設定することができる。
【0069】
本実施形態によれば、制御部19は、基準基地局20aからマルチキャスト方式で無線送信される音声パケットVP1の送信時間PLから、差分時間Td1を減算した値だけ、基地局20bに音声パケットVPnを送信する送信タイミングを遅らせる。
【0070】
このような構成により、基地局20bは、基地局20aが音声パケットを無線送信し終えた直後に、音声パケットを無線送信し始めることができる。このため、基地局20bは、音声パケットの無線送信を早期に行うことができる。また、送信期間内で、基地局20a,20bが無線パケット送信を行わない期間を最大にすることができ、より多くの他の基地局が、無線パケットを送信する機会を得ることができる。
【0071】
本実施形態によれば、制御部19は、受信部17が、基地局20b,20cから差分時間Td1,Td2を受信した順番を識別する。制御部19は、差分時間Td1を受信した順番が1番目である場合、基準基地局20aからマルチキャスト方式で無線送信される音声パケットVP1の送信時間PLに1を乗じた値から、差分時間Td1を減算した値だけ、基地局20bに音声パケットVPnを送信する送信タイミングを遅らせる。制御部19は、差分時間Td2を受信した順番が2番目である場合、基準基地局20aからマルチキャスト方式で無線送信される音声パケットVP1の送信時間PLに2を乗じた値から、差分時間Td2を減算した値だけ、基地局20cに音声パケットVPnを送信する送信タイミングを遅らせる。
【0072】
このような構成により、基地局20bは、基地局20aが音声パケットを無線送信し終えた直後に、音声パケットを無線送信し始め、かつ、基地局20cは、基地局20bが音声パケットを無線送信し終えた直後に、音声パケットを無線送信し始める。このため、基地局20cは、音声パケットの無線送信を早期に行うことができる。また、送信期間内で、基地局20a~20cが無線パケット送信を行わない期間を最大にすることができ、より多くの他の基地局が、無線パケットを送信する機会を得ることができる。
【0073】
(第2実施形態)
本実施形態では、無線会議システムにおいて、複数の基地局間で電波干渉が発生するのを抑制するために、基地局側で送信タイミングの制御を行う。
【0074】
最初に、無線会議システム1aの構成を説明する。図7に示すように、無線会議システム1aは、制御装置110、基地局120a~120c、複数の端末30a、複数の端末30b、複数の端末30c、及びスイッチ160a~160cを備える。制御装置110は、通信端子140を有する。制御装置110は、例えば、無線会議システム1aのメインコントローラである。通信端子140は、例えば、RJ45などのイーサネット端子である。
【0075】
スイッチ160aは、通信ケーブル150aを介して、通信端子140に接続されている。スイッチ160bは、通信ケーブル150bを介して、スイッチ160aに接続されている。スイッチ160cは、通信ケーブル150cを介して、スイッチ160bに接続されている。スイッチ160a~160cは、例えば、イーサネット用のスイッチングハブである。なお、スイッチの数は、3つに限定されない。
【0076】
基地局120a~120cは、それぞれ、通信ケーブル150d~150fを介して、スイッチ160a~160cに接続されている。通信ケーブル150a~150fは、例えば、イーサネットケーブルである。基地局120aには、複数の端末30aが同時接続されている。基地局120bには、複数の端末30bが同時接続されている。基地局120cには、複数の端末30cが同時接続されている。基地局120a~120cは、それぞれ、無線チャネル21a~21cで動作し、電波到達範囲23a~23cを有する(図2参照)。基地局120a~120cは、例えば、無線LANのアクセスポイントである。なお、基地局の数は、3つに限定されない。
【0077】
なお、スイッチ160a~160cは、制御装置110内に設けられてもよい。この場合、基地局20a~20cは、制御装置10を中心としたスター型に配置される。また、スイッチ160a~160cは、それぞれ、基地局120a~120c内に設けられてもよい。
【0078】
制御装置110は、複数の端末30a、複数の端末30b、及び複数の端末30cに向けて、音声データを送信するために、音声データを複数の音声パケットに変換して、マルチキャスト方式で、各音声パケットをスイッチ160aに出力する。
【0079】
スイッチ160aは、通信ケーブル150aを介して、制御装置110から音声パケットが入力されると、一定時間だけ遅らせて、入力された音声パケットを基地局120a及びスイッチ160bに出力する。スイッチ160bは、通信ケーブル150bを介して、スイッチ160bから音声パケットが入力されると、一定時間だけ遅らせて、入力された音声パケットを基地局120b及びスイッチ160cに出力する。スイッチ160cは、通信ケーブル150cを介して、スイッチ160bから音声パケットが入力されると、一定時間だけ遅らせて、入力された音声パケットを基地局120cに出力する。
【0080】
基地局120a~120cは、スイッチ160a~160cから音声パケットを受信すると、受信した音声パケットに無線用ヘッダを追加して、無線パケットを生成する。基地局120a~120cは、それぞれ、マルチキャスト方式で、複数の端末30a、複数の端末30b、及び複数の端末30cに、生成した無線パケットを送信する。なお、音声パケットは、単にデータとも呼称される。
【0081】
次に、制御装置110の構成を説明する。図7に示すように、制御装置110は、送信部111を備える。送信部111は、送信線141を介して、通信端子140に接続される。送信部111は、制御装置110が音声データを取得すると、音声データを複数のデータに分割して音声パケットを生成する。送信部111は、設定された送信間隔毎に、音声パケットを送信線141に出力して、マルチキャスト方式で、スイッチ160aに音声パケットを送信する。送信部111は、例えば、イーサネットコントローラである。制御装置110は、通信端子140、又は通信端子140とは別に設けられた通信部(図示略)を介して、基地局120a~120c以外のネットワークに接続可能である。
【0082】
なお、音声データは、音声データ生成部(図示略)によって、無線会議システム1aにおける各端末から送信される音声データに基づいて、会議音声として生成される。音声データ生成部は、無線会議システム1a内に別の装置として設けられてもよく、制御装置110内に設けられてもよい。
【0083】
次に、基地局120a,120b,120cの構成を説明する。なお、基地局120a,120b,120cは、同様の構成をとるため、基地局120a,120bの説明は省略する。図8に示すように、基地局120cは、第1受信部121、第2受信部123、送信部125、制御部127、記憶部129、及びタイミング調整部131を備える。基地局120cは、プロセッサ及びメモリを含むコンピュータで構成することができる。
【0084】
第1受信部121は、通信ケーブル150fを介して、スイッチ160cに接続されている。第1受信部121は、スイッチ160a~160cを介して、制御装置110から送信された音声パケットを有線受信する。
【0085】
第2受信部123は、自機が使用する無線チャネル21cを、無線会議システム1aで使用可能な全ての無線チャネルに順次に切り替えて、アンテナANTを介して、基地局120a,120bからマルチキャスト方式で無線送信された無線パケットを無線受信する。
【0086】
送信部125は、タイミング調整部131から音声パケットが出力されると、当該音声パケットに無線用ヘッダを追加して、無線パケットを生成する。送信部125は、自機が使用する無線チャネル21cを用いて、アンテナANTを介して、マルチキャスト方式で、複数の端末30cに無線パケットを送信する。
【0087】
制御部127は、基地局120a全体の動作を制御する。制御部127は、第1受信部121が音声パケットを有線受信したタイミングと、第2受信部123が無線パケットを無線受信したタイミングとに基づいて、第1受信部121が有線受信した音声パケットを、無線パケットとして無線送信する送信タイミングを制御する。具体的には、制御部127は、第1受信部121が音声パケットを有線受信したタイミングと、第2受信部123が無線パケットを無線受信したタイミングとに基づいて、タイミング調整部131が音声パケットを保持する保持時間を設定する。制御部127は、保持時間を設定すると、当該保持時間をタイミング調整部131に出力する。なお、保持時間は、遅延時間とも呼称される。
【0088】
記憶部129は、無線用ヘッダの情報、保持時間、無線会議システム1aで使用可能な全ての無線チャネルの情報、後述する無線チャネル21cの情報などを記憶する。
【0089】
タイミング調整部131は、第1受信部121が有線受信した音声パケットを一時的に保持する。タイミング調整部131は、制御部127で設定された保持時間だけ、音声パケットを保持すると、当該音声パケットを送信部125に出力する。
【0090】
次に、図9に示すフローチャート、及び図10に示すタイミングチャートを用いて、基地局が、基地局間で電波干渉が発生するのを回避するために、複数の端末に無線パケットを送信する送信タイミングを制御する方法を説明する。なお、図9及び図10は、基地局120a,120bが無線パケットを既に無線送信している状態で、基地局120cが、無線パケットの送信タイミングを制御する場合における、フローチャート及びタイミングチャートを示している。基地局120cは、タイミング調整部131が、送信期間TP1内で、第1受信部121が有線受信した音声パケットを一時的に保持すると、送信タイミングの制御を開始する。
【0091】
図9に示すように、基地局120cが送信タイミングの制御を開始する場合、ステップS21にて、基地局120cの第2受信部123は、送信期間TP1内で、自機が使用する無線チャネル21cを、無線会議システム1aで使用可能な全ての無線チャネルに順次に切り替えて、アンテナANTを介して、基地局120a,120bからマルチキャスト方式で無線送信された無線パケットWP1を無線受信する(図10の(A)及び(B)参照)。
【0092】
なお、上述したように、無線パケットには、音声パケットが含まれるため、「マルチキャスト方式で無線送信された無線パケット」という表現は、「マルチキャスト方式で無線送信された音声パケット」と言い換えることができる。
【0093】
ステップS22にて、基地局120cの制御部127は、他の妨害波と区別するために、第2受信部123が無線受信した無線パケットWP1に含まれる音声パケットが、第1受信部121が有線受信した音声パケットと同じであるか否かを判定する。具体的には、制御部127は、第1実施形態で説明したように、データ内容、送信期間、又はデータ内容及び送信期間に基づいて、上述した判定を行う。
【0094】
ステップS22にて、制御部127は、第2受信部123が無線受信した無線パケットWP1に含まれる音声パケットが、第1受信部121が有線受信した音声パケットと同じではないと判定する場合、ステップS25の処理を行う。ステップS22にて、制御部127は、第2受信部123が無線受信した無線パケットWP1に含まれる音声パケットが、第1受信部121が有線受信した音声パケットと同じであると判定する場合、ステップS23の処理を行う。
【0095】
ステップS23にて、制御部127は、送信期間TP1内で、第2受信部123が無線パケットWP1を無線受信したタイミングに基づいて、送信期間TP1内にて、他の基地局が無線パケット通信を行わない期間を検出する(図10の(C)参照)。なお、他の基地局が無線パケット通信を行わない期間は、他の基地局の無線パケットと衝突しない期間とも呼称される。
【0096】
制御部127は、送信期間TP1内で、他の基地局が無線パケット通信を行わない期間を検出すると、第1受信部121が音声パケットを有線受信したタイミングと、他の基地局が無線パケット通信を行わない期間が始まるタイミングとの間の時間を算出して、タイミング調整部131が音声パケットを保持する保持時間として、算出した時間を設定する。これにより、制御部127は、基地局20a,20bの無線パケットWP1の送信タイミングと重ならない送信タイミングを設定することができる。
【0097】
ステップS24にて、制御部127は、基地局120cが使用する無線チャネル21cとして、第2受信部123が無線パケットWP1を無線受信した際に切り替えた無線チャネル以外の他の無線チャネルを設定する。これにより、制御部127は、基地局120cが使用する無線チャネル21cとして、基地局120a,120bが使用する無線チャネル21a,21bとは異なる無線チャネルを設定することができる。
【0098】
なお、制御部127は、基地局120cが使用する無線チャネル21cとして、第2受信部123が無線パケットWP1を無線受信した際に切り替えた無線チャネルを設定してもよい。この場合、制御部127は、基地局120cが使用する無線チャネル21cとして、基地局120a,120bが使用する無線チャネル21a,21bのうちの1つと同じ無線チャネルを設定する。制御部127は、設定した無線チャネル21cの情報を送信部125に送信する。
【0099】
ステップS25にて、制御部127は、送信期間TP1内でタイミング調整部131に保持された音声パケットを、無線パケットWP1として送信するために、出力指示をタイミング調整部131に出力する。タイミング調整部131は、出力指示が入力されると、送信期間TP1内で保持した音声パケットを送信部125に出力する。送信部125は、タイミング調整部131から音声パケットが出力されると、当該音声パケットを無線パケットWP1に変換して、設定された無線チャネル21cを用いて、マルチキャスト方式で、複数の端末30cに無線パケットを送信する(図10の(C)参照)。これにより、送信部125は、送信期間TP1内で、他の基地局が無線パケット通信を行わない期間に、無線パケットWP1を送信することができる。
【0100】
制御部127は、ステップS25で出力指示を送信すると、ステップS23で設定した保持時間をタイミング調整部131に出力する。これにより、タイミング調整部131は、送信期間TP1よりも後の送信期間TPn(n>1)にて、第1受信部121が有線受信した音声パケットを保持時間だけ保持すると、当該音声パケットを送信部125に出力する。このため、送信部125は、送信期間TP1よりも後の送信期間TPnでも、他の基地局が無線パケット通信を行わない期間に、無線パケットを送信することができる。例えば、図10に示すように、基地局120cは、送信期間TP2内で、他の基地局が無線パケット通信を行わない期間に、無線パケットWP2を送信する。
【0101】
このように、本実施形態では、無線パケットの送信は、送信タイミングの制御を早く実行した基地局の順番で行われる。このため、各基地局は、制御装置110との同期動作、及び他の基地局との同期動作を行う必要がない。また、他の基地局が無線パケット通信を行わない期間の値から、あと何台の基地局を配置することができるか予測することができるため、基地局の最大設置台数を指定することができる。
【0102】
各基地局において、各送信期間内で、第1受信部121が、音声パケットを有線受信するタイミング、及びタイミング調整部131が、音声パケットを一時的に保持する時間は固定されているため、無線パケットの送信タイミングを固定することができる。
【0103】
なお、ステップS21の処理と、ステップS22,S23の処理とを異なる送信期間で行ってもよい。
【0104】
上述した送信タイミングの制御は、各基地局の起動時の初期化処理で行われる。この場合、無線パケットの送信時間(時間長)は、無線会議が行われている最中に、各基地局からマルチキャスト方式で送信される無線パケットの送信時間(時間長)と同じである。また、無線パケット内のデータ部分には、音声データは含まれていない。なお、上述した送信タイミングの制御は、各基地局の起動時の初期化処理に限定されず、無線会議が行われている最中に、各基地局の接続が一時的に切断されて復帰する場合、又は新たな基地局を追加する場合にも行われてもよい。
【0105】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0106】
10 制御装置
15 送信部
17 受信部
19 制御部
20a~20c 基地局
VP1,VPn 音声パケット
TP1,TPn 送信期間
Td1,Td2 差分時間
PL 送信時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10