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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024090710
(43)【公開日】2024-07-04
(54)【発明の名称】浴室システム
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/00 20060101AFI20240627BHJP
   F24H 15/196 20220101ALI20240627BHJP
   F24H 15/14 20220101ALI20240627BHJP
   F24H 15/269 20220101ALI20240627BHJP
   F24H 15/30 20220101ALI20240627BHJP
【FI】
A47K3/00 Q
F24H15/196 301L
F24H15/14
F24H15/269
F24H15/30
A47K3/00 M
A47K3/00 N
A47K3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206782
(22)【出願日】2022-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】市丸 秀仁
【テーマコード(参考)】
3L024
【Fターム(参考)】
3L024CC03
3L024DD22
3L024DD27
3L024DD35
3L024EE03
(57)【要約】
【課題】所定の浴槽洗浄運転、殺菌水吐水運転、および配管洗浄運転を、効率良く適切に行なうことが可能な浴室システムを提供する。
【解決手段】浴室システムSYは、浴槽10に洗浄水を噴射する浴槽洗浄運転が可能な浴槽洗浄装置Aと、浴槽10への湯張り動作および配管部5の管内洗浄を目的として配管部5に湯水を流す配管洗浄運転が可能な給湯装置WHと、殺菌水吐水運転を可能とする殺菌水生成装置4と、を備えており、前記浴槽洗浄運転が開始される場合には、これに先立ち、前記配管洗浄運転が行なわれ、かつこの配管洗浄運転を終了した後に前記浴槽洗浄運転が開始されるとともに、この浴槽洗浄運転の終了時から第1の所定時間以上が経過した時点で、前記殺菌水吐水運転が行なわれる特定動作制御が実行可能である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室に設置された浴槽に洗浄水を噴射する浴槽洗浄運転が可能な浴槽洗浄装置と、
前記浴槽に配管部を介して接続され、かつ前記浴槽への湯張り動作、および前記配管部の管内洗浄を目的として前記配管部に湯水を流す配管洗浄運転が可能な給湯装置と、
殺菌水を前記給湯装置から前記配管部を介して前記浴槽に供給して吐水させる殺菌水吐水運転を可能とする殺菌水生成装置と、
を備えており、
前記浴槽洗浄運転が開始される場合には、これに先立ち、前記配管洗浄運転が行なわれ、かつこの配管洗浄運転を終了した後に前記浴槽洗浄運転が開始されるとともに、この浴槽洗浄運転の終了時から第1の所定時間以上が経過した時点で、前記殺菌水吐水運転が行なわれる特定動作制御が実行可能な構成とされていることを特徴とする、浴室システム。
【請求項2】
請求項1に記載の浴室システムであって、
この浴室システムの設定モードとして、
前記浴槽洗浄運転が行なわれる場合に、前記特定動作制御が無条件で実行される第1のモードと、
この第1のモードとは異なり、所定の条件が満たされた場合に限り前記特定動作制御が実行される第2のモードと、
前記特定動作制御は実行されることなく前記浴槽洗浄運転が行なわれる第3のモードと、
の計3種類のモードのうち、少なくとも2種類のモードのいずれかを任意に選択設定可能とされている、浴室システム。
【請求項3】
請求項1に記載の浴室システムであって、
前記浴槽洗浄運転、前記配管洗浄運転、および前記殺菌水吐水運転が行なわれるときには開状態とされ、かつ前記浴槽への湯張り時には閉状態とされる前記浴槽の排水栓と、
この排水栓の開状態が第2の所定時間以上継続した場合にその旨を判断可能な制御部と、
をさらに備えており、
前記特定動作制御は、前記浴槽洗浄運転が開始される場合に、前記排水栓の開状態が前記第2の所定時間以上継続していると前記制御部において判断されることを条件として、実行されるように構成されている、浴室システム。
【請求項4】
請求項1に記載の浴室システムであって、
前記特定動作制御は、前記浴槽洗浄運転の終了後の第3の所定時間内に前記給湯装置による前記浴槽への湯張り動作が予定されていることを条件として、実行されるように構成されている、浴室システム。
【請求項5】
請求項1に記載の浴室システムであって、
前記特定動作制御が実行されている際に、前記浴槽洗浄運転が途中終了となった場合には、前記浴槽洗浄運転に引き続いて前記殺菌水吐水運転がその後に行なわれることは回避されるように構成されている、浴室システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室システムの具体例として、特許文献1~3に記載のものがある。
特許文献1,2に記載の浴室システムにおいては、浴室に設置された浴槽に洗浄水を噴射する浴槽洗浄運転が可能な浴槽洗浄装置と、給湯装置から浴槽にオゾン水などの殺菌水を吐水させる殺菌水吐水運転を可能とする殺菌水生成装置と、が具備されている。このような構成によれば、浴槽の洗浄、および殺菌水による殺菌作用により、ヌメリ防止効果などが得られ、衛生的な浴室システムを構築する上で好ましい。
特許文献3に記載の浴室システムにおいては、給湯装置として、この給湯装置と浴槽とを接続する配管部の管内洗浄を目的とし、前記配管部に湯水を流す配管洗浄運転が可能な給湯装置が具備されている。このような構成によれば、配管部の管内を衛生的な状態にすることが可能である。
【0003】
浴室システムをより衛生的なものとする上では、たとえば前記した浴槽洗浄装置、殺菌水生成装置、および配管洗浄運転が可能な給湯装置の三者を全て具備したシステム構成とすることが考えられる。
しかしながら、前記三者を具備していたとしても、それらによる浴槽洗浄運転、殺菌水吐水運転、および配管洗浄運転が非効率的な状態で行なわれる場合がある。たとえば、浴槽の湯水を排水させた後に、配管洗浄運転が行なわれてから、その終了後に殺菌水吐水運転が開始された場合において、この殺菌水吐水運転中に浴槽洗浄運転が開始されてしまうと、殺菌水が、浴槽洗浄用の洗浄水と混ざって希釈され、殺菌効果が低くなる。また、浴槽に吐水される殺菌水が、浴槽洗浄ノズルから浴槽に向けて洗浄水が噴射されることを妨げるなどの不具合が発生する虞もある。
このようなことは、適切に解消されることが要請される。ところが、従来においては、そのような要請に的確に対応し得る手段は提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4822127号公報
【特許文献2】特開2009-172079号公報
【特許文献3】特開2022-81810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、所定の浴槽洗浄運転、殺菌水吐水運転、および配管洗浄運転を、効率良く適切に行なうことが可能な浴室システムを提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本発明により提供される浴室システムは、浴室に設置された浴槽に洗浄水を噴射する浴槽洗浄運転が可能な浴槽洗浄装置と、前記浴槽に配管部を介して接続され、かつ前記浴槽への湯張り動作、および前記配管部の管内洗浄を目的として前記配管部に湯水を流す配管洗浄運転が可能な給湯装置と、殺菌水を前記給湯装置から前記配管部を介して前記浴槽に
供給して吐水させる殺菌水吐水運転を可能とする殺菌水生成装置と、を備えており、前記浴槽洗浄運転が開始される場合には、これに先立ち、前記配管洗浄運転が行なわれ、かつこの配管洗浄運転を終了した後に前記浴槽洗浄運転が開始されるとともに、この浴槽洗浄運転の終了時から第1の所定時間以上が経過した時点で、前記殺菌水吐水運転が行なわれる特定動作制御が実行可能な構成とされていることを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、浴槽洗浄運転が開始される場合には、これに先立ち、配管洗浄運転が行なわれるため、配管部内を衛生的な状態にできることは勿論のこと、浴槽洗浄後に配管部内の汚れが浴槽に流れ込むことはなく、浴槽洗浄運転の終了後において、浴槽内を衛生的な状態に維持することができる。浴槽洗浄運転中に、殺菌水吐水運転が開始されることはないため、浴槽への洗浄水の噴射が、浴槽への殺菌水の吐水によって妨げられるといった不具合もない。
さらに、浴槽洗浄運転の終了後には、殺菌水吐水運転が行なわれるため、殺菌水の作用により、配管部内、浴槽の底部などが適切に殺菌され、さらには浴槽の排水口に配管接続されている排水トラップなどにも殺菌水が流れ込み、この部分の殺菌も行なわれる。本発明とは異なり、殺菌水吐水運転が浴槽洗浄運転の前に行なわれたのでは、浴槽に吐水された殺菌水がその後洗浄水によって希釈され、殺菌作用が低くなる虞があるが、本発明によれば、そのような虞はない。また、排水トラップには、殺菌水が希釈されていない状態で溜められることとなる。したがって、排水トラップに対するヌメリ防止効果などを高め、排水トラップから異臭が発生するといったことも適切に防止することが可能である。さらに、殺菌水吐水運転は、浴槽洗浄運転の終了後に即座には実行されず、第1の所定時間以上が経過した時点で開始されるため、この第1の所定時間内において浴槽に残存している洗浄水を浴槽外に排水させた状態で殺菌水吐水運転を開始させることができ、殺菌水が洗浄水によって希釈されることは、より徹底して防止される。
このように、本発明によれば、浴槽洗浄運転が行なわれる場合に、これに付随して配管洗浄運転や殺菌水吐水運転が所定の順序で効率良く合理的に行なわれており、浴室システムを衛生的なものとする上で好ましい。
【0009】
本発明において、好ましくは、この浴室システムの設定モードとして、前記浴槽洗浄運転が行なわれる場合に、前記特定動作制御が無条件で実行される第1のモードと、この第1のモードとは異なり、所定の条件が満たされた場合に限り前記特定動作制御が実行される第2のモードと、前記特定動作制御は実行されることなく前記浴槽洗浄運転が行なわれる第3のモードと、の計3種類のモードのうち、少なくとも2種類のモードのいずれかを任意に選択設定可能とされている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、浴槽洗浄運転が開始される場合に、たとえばユーザが前記特定動作制御が無条件で実行されることを望まず、浴槽洗浄運転のみを単独で行なわせたい場合がある。このような場合には、第1のモードに代えて、第2または第3のモードのいずれかを予め選択設定しておくことにより、所定の条件が満たされた場合のみ前記特定動作制御が実行され、あるいは特定動作制御が実行されることなく浴槽洗浄運転が行なわれるといった実施態様が可能となる。前記構成によれば、ユーザの要望に応じて前記特定動作制御が実行される場合と、そうでない場合とに切り替えることが可能であるため、より合理的であり、ユーザにとって便利である。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記浴槽洗浄運転、前記配管洗浄運転、および前記殺菌水吐水運転が行なわれるときには開状態とされ、かつ前記浴槽への湯張り時には閉状態とされる前記浴槽の排水栓と、この排水栓の開状態が第2の所定時間以上継続した場合にその旨を判断可能な制御部と、をさらに備えており、前記特定動作制御は、前記浴槽洗浄運
転が開始される場合に、前記排水栓の開状態が前記第2の所定時間以上継続していると前記制御部において判断されることを条件として、実行されるように構成されている。
【0012】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、浴槽の排水栓が開閉されず、ある程度長い時間(第2の所定時間)以上にわたって開状態のままである場合、それと同等程度の長い時間にわたって浴槽への湯張りが行なわれておらず、配管部や浴槽の汚れの度合いが高いと考えられる。このような場合、浴槽洗浄運転が単独で行なわれるのではなく、前記特定動作制御が実行される。したがって、浴室の汚れ度合いに応じた洗浄を効果的に行なう上で一層好ましい。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記特定動作制御は、前記浴槽洗浄運転の終了後の第3の所定時間内に前記給湯装置による前記浴槽への湯張り動作が予定されていることを条件として、実行されるように構成されている。
【0014】
このような構成によれば、浴槽への湯張り動作が終了し、ユーザが入浴する段階においては、前記特定動作制御により、配管洗浄運転、浴槽洗浄運転、および殺菌水吐水運転の全てが完了しているため、衛生的な状況下でユーザは入浴を開始することが可能である。既述したように、浴槽の排水トラップには、殺菌水を溜めておくことができるため、浴室に排水トラップからの異臭が籠もらないようにし、ユーザが快適に入浴を開始するのに役立つ。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記特定動作制御が実行されている際に、前記浴槽洗浄運転が途中終了となった場合には、前記浴槽洗浄運転に引き続いて前記殺菌水吐水運転がその後に行なわれることは回避されるように構成されている。
【0016】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、浴槽洗浄運転が途中終了になった際には、たとえば洗浄水が泡などの状態で浴槽に付着した状態にある。このような状態において、殺菌水吐水運転が開始されると、殺菌水が洗浄水と混ざり、希釈され、殺菌作用は大幅に低下する。前記構成によれば、そのような無駄を回避することが可能である。
【0017】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る浴室システムの一例を示す概略説明図である。
図2図1に示す浴室システムにおいて実行される動作制御手順の例を示すフローチャートである。
図3図1に示す浴室システムにおいて実行される動作制御手順の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
図1に示す浴室システムSYは、浴室1の浴槽10に外部配管部5a,5bを介して配管接続された給湯装置WH、この給湯装置WHに設けられた殺菌水生成装置4、および浴室1の下部に設けられた浴槽洗浄装置Aを具備している。
浴槽10には、浴槽洗浄装置Aの制御部3によって浴槽10の排水口11aを開閉可能な排水栓11が設けられている。この排水栓11が開状態とされることにより、浴槽10の水は浴室1の床下に設置されている排水トラップ12およびこの排水トラップ12に接
続された排水管13を介して外部に排水される。浴室1の出入り口1aと浴槽10との間には、洗い場14および排水口11bがあり、洗い場14の湯水は排水口11bから排水トラップ12に流れ込む。
【0021】
給湯装置WHは、たとえば瞬間式ガス給湯装置であり、各部の動作制御やデータ処理を実行する制御部7を備えており、浴槽10への湯張り機能、風呂追い焚き機能、給湯栓29への一般給湯機能、および浴槽洗浄装置Aへの給湯機能を有している。また、後述する配管洗浄運転、および殺菌水吐水運転が可能である。図1において、符号90は、給湯装置WHの外装ケースである。
【0022】
給湯装置WHにおける一般給湯は、入水口20aから入水路2aに流入した湯水が熱交換器25aに送られてバーナ26aにより加熱され、かつこの加熱された湯水は内部出湯路2bおよび外部出湯路2cを流通して給湯栓29に供給される態様で行なわれる。
浴槽10への湯張り動作は、風呂用出湯路50に設けられた開閉弁V1が開状態とされ、熱交換器25aを通過して加熱された湯水が風呂用出湯路50から湯水循環配管部5に流れ込む態様で行なわれる。湯水循環配管部5は、浴槽10のアダプタ10aに接続された外部配管部5a,5b、およびこれらに接続された給湯装置WHの内部配管部5c,5dを備え、かつ内部配管部5c,5dには風呂追い焚き用の熱交換器25bが接続された構成である。風呂用出湯路5から湯水循環配管部5に流れ込んだ湯水は、内部配管部5c,5dおよび外部配管部5b側と、外部配管部5a側とに分岐し、いわゆる両搬送で浴槽10に流れ込む。
風呂追い焚き動作は、循環ポンプP1が駆動オンとされ、浴槽10の湯水が湯水循環配管部5を介して熱交換器25bに送り込まれてバーナ26bにより加熱されてから浴槽10に戻される態様で行なわれる。
【0023】
給湯装置WHの配管洗浄運転は、主に湯水循環配管部5の管内洗浄を目的として行なわれるものであり、湯水循環配管部5は、本発明でいう「配管部」の具体例に相当する。この配管洗浄運転は、浴槽10への湯張り動作と同様に、開閉弁V1が開状態とされることにより行なわれ、熱交換器25aを通過して加熱された湯水が、風呂用出湯路50および湯水循環配管部5を通過して浴槽10に流れ込む。この配管洗浄運転中は、浴槽10の排水栓11は開状態にある。配管洗浄運転は、所定時間行なわれた時点、あるいは浴槽10への湯水供給量が所定量に達した時点で終了する。
【0024】
給湯装置WHの殺菌水吐水運転は、殺菌水生成装置4を利用して成形された殺菌水を、風呂用出湯路50および湯水循環配管部5を介して浴槽10に供給し、吐水させるものである。殺菌水の作用により、ヌメリなどの微生物汚れの発生を抑制することが可能である。殺菌水生成装置4は、たとえばオゾン水生成装置であり、風呂用出湯路50の途中箇所に設けられており、三方弁V2を切り替えることにより、殺菌水生成装置4を通過する経路と通過しない経路とに切替え可能である。
オゾン水生成装置としては、従来既知の構成のものを用いることが可能であり、たとえば電極を利用した水の電解により生成する方式のもの、あるいは空気からオゾンガスを生成し、かつこれを水に溶解させる方式のものなどがあるが、いずれの方式であってもよい。殺菌水生成装置4がオンにされるとともに、開閉弁V1および三方弁V2が切替えられることにより、殺菌水(オゾン水)が湯水循環配管部5に供給され、浴槽10において吐水される。この殺菌水吐水運転時においても、浴槽10の排水栓11は開状態にある。また、殺菌水吐水運転は、所定時間行なわれた時点、あるいは浴槽10への殺菌水供給量が所定量に達した時点で終了する。
【0025】
浴槽洗浄装置Aは、浴槽10に洗浄水を噴射する浴槽洗浄運転が可能な装置であり、その基本的なハード構成自体は、従来既知のものと同様である。具体的には、この浴槽洗浄
装置Aは、浴槽10の底部に取付けられた洗浄ノズル60、およびこの洗浄ノズル60に終端が繋がった湯水流路6を備えている。湯水流路6の始端の入水口6aには、給湯装置WHに設けられた出湯口20bから湯水供給が可能である。また、浴槽洗浄装置Aは、湯水流路6に設けられ、かつ洗浄ノズル60への湯水供給のオン・オフ切り替えを行なうための注湯バルブVa、湯水流路6の途中に具備されたベンチュリ部61、洗剤タンク62からベンチュリ部61に洗剤を供給するための洗剤供給路63、この洗剤供給路63に設けられ、かつベンチュリ部61への洗剤供給のオン・オフ切り替えを行なうための洗剤バルブVb、および洗剤バルブVbや注湯バルブVaの開閉制御を実行する制御部3を備えている。
【0026】
ベンチュリ部61の詳細については省略するが、このベンチュリ部61は、湯水流路6の一部を構成する絞り部を備えており、この絞り部を湯水が高速で流れることによりその付近に負圧が発生する。この負圧に基づいて洗剤供給路63からベンチュリ部61内、ひいては湯水流路6内に洗剤が円滑に流入し、洗剤と湯水とが混合した洗剤液を生成可能である。前記洗剤液、および洗剤を含まないすすぎ用の湯水は、ともに本発明でいう洗浄水に相当する。
浴槽洗浄運転の動作手順の例としては、洗剤を含まないすすぎ用の湯水を所定時間にわたって浴槽10に散布する予備すすぎ、浴槽10への所定時間にわたる洗剤液散布を、所定のインターバル時間で複数回にわたって繰り返す本洗浄、および所定時間にわたってすすぎ用の湯水を浴槽10に散布する本すすぎをこれらの順で行なう動作手順が挙げられる。それら一連の動作が完了した時点で、浴槽洗浄運転は終了する。
【0027】
給湯装置WHおよび浴槽洗浄装置Aの制御部7,3は、いずれもマイクロコンピュータなどを用いて構成されており、これらの相互間において有線または無線でのデータ通信が可能である。これらは、互いに協働して浴室システムSYの全体の動作を制御可能である。制御の具体例としては、浴槽洗浄運転が開始される場合に、配管洗浄運転や殺菌水吐水運転も所定のタイミングで行なわれる特定動作制御があるが、その詳細については後述する。
【0028】
なお、給湯装置WHの制御部7には、浴室用および台所用のリモコン7A,7Bが通信接続されている。これらのリモコン7A,7Bには、複数の操作スイッチ72や、画像表示が可能な表示部73などが設けられている。
好ましくは、浴槽洗浄装置Aの制御部3には、操作部30が付属して設けられており、後述する3種類のモード(第1ないし第3のモード)のうちのいずれかを、操作部30の操作により、任意に選択設定可能とされている。ただし、このようなモードの選択設定は、たとえばリモコン7A,7Bなどの他の機器を利用して行なうことが可能な構成とすることもできる。
【0029】
次に、前記した浴室システムSYの作用について説明する。併せて、浴室システムSYにおける動作処理手順の一例について、図2に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0030】
まず、リモコン7A,7Bの操作部72、または浴槽洗浄装置Aの操作部30が用いられることにより、浴槽洗浄運転を開始する旨のスイッチ操作がなされると、浴室システムSYの設定モードとして、予めどのようなモードが設定されているのかが判断され(S1:YES,S2)、そのモードに応じて次の動作制御の内容が相違する。
【0031】
浴室システムSYの設定モードとしては、第1ないし第3のモードがあり、これらの個々の詳細については後述するが、浴槽洗浄運転を開始する際に、第1のモードが設定されている場合には、特定動作制御が無条件で実行される(S2:YES,S3~S6)。
【0032】
ここで、前記特定動作制御は、ステップS3~S6の一連の動作が相当し、浴槽洗浄運転に先立ち、配管洗浄運転が行なわれ、かつこの配管洗浄運転を終了した後に浴槽洗浄運転が開始されるとともに、この浴槽洗浄運転の終了時から第1の所定時間以上が経過した時点で、殺菌水吐水運転が行なわれる制御である。
前記特定動作制御の終了後において、浴槽10への湯張り動作を指令するスイッチ操作などがあれば、通常どおりに、浴槽10への湯張りが行なわれる(S7:YES,S8)。この湯張り時には、排水栓11は閉状態に設定される。
【0033】
前記特定動作制御によれば、配管洗浄運転、浴槽洗浄運転、および殺菌水吐水運転が順次行なわれる結果、湯水循環配管部5や浴槽10の洗浄および殺菌処理が図られ、これらを衛生的な状態にすることが可能である。浴槽10の洗浄後に湯水循環配管部5内の汚れが浴槽10に流れ込むような不具合はない。また、浴槽洗浄運転中に、殺菌水吐水運転が行なわれることはないため、洗浄ノズル60から浴槽10への洗浄水の噴射が、浴槽10への殺菌水の吐水によって妨げられる不具合はない。さらに、殺菌水吐水運転が浴槽洗浄運転の前に行なわれたのでは、浴槽10に吐水された殺菌水がその後に洗浄水によって希釈され、殺菌作用が失われる虞があるが、本実施形態によれば、そのような虞もない。殺菌水吐水運転が終了し、前記特定動作制御が完了した段階では、殺菌水の作用により、湯水循環配管部5内や浴槽10の底部などが適切に殺菌され、さらには浴槽10の排水口11aに配管接続されている排水トラップ12などにも殺菌水が流れ込み、この部分の殺菌も行なわれる。したがって、排水トラップに対するヌメリ防止効果などを高め、排水トラップから異臭が発生するといったことも適切に防止することが可能である。
さらに、殺菌水吐水運転は、浴槽洗浄運転の終了後に即座には実行されず、第1の所定時間以上が経過した時点で開始されるため、この第1の所定時間内において浴槽10に残存している洗浄水を浴槽10の外部に排水させた状態で、殺菌水吐水運転を開始させることが可能である。したがって、殺菌水が洗浄水によって希釈されることは、より徹底して防止される。
【0034】
前記とは異なり、浴槽洗浄運転が開始される際に、浴室システムSYの設定モードが第2のモードに設定されている場合には(S2:NO,S9:YES)、次に述べるような動作制御が行なわれる。なお、第2のモードは、所定の条件が満たされた場合に限り、前記特定動作制御が実行されるモードである。
【0035】
第2のモードが設定されている場合、浴槽洗浄運転に引き続いて、浴槽10への湯張りが予定されているか否かが判断され、予定されていれば、前記特定動作制御を実行する旨の決定がなされる(S10:YES,S12)。この場合には、前記特定動作制御がその後に実行され、先に述べたステップS3~S8と同様な制御が実行される。
ユーザとしては、浴槽洗浄運転の後に浴槽10への湯張りを行なって入浴する際に、前記特定動作制御が自動的に実行されるようにしたい場合がある。前記した制御は、そのような要望に合致する。
【0036】
一方、第2のモードが設定されている条件下において、浴槽洗浄運転に引き続いて、浴槽10への湯張りが予定されていない場合には、浴槽10の排水栓11の状況が判断される(S10:NO,S11)。この判断において、排水栓11が開状態にあり、かつこの開状態が第2の所定時間以上継続していると結論付けられた場合には、浴槽10への湯張りが予定されている場合と同様に、前記特定動作制御を実行する旨の決定がなされる(S11:YES,S12)。その後に前記特定動作制御が実行され、先に述べたステップS3~S8と同様な制御が実行される。
排水栓11が第2の所定時間以上継続して開状態にある場合、浴槽10への湯張りが比較的長い時間にわたって行なわれておらず、湯水循環配管部5や浴槽10の汚れ度合いが
高いと考えられる。前記制御によれば、そのような場合には、浴槽洗浄運転のみが行なわれるのではなく、前記特定動作制御が適切に実行されることとなり、好ましい。
【0037】
浴槽洗浄運転が開始される際に、浴室システムSYの設定モードが第3のモードに設定されている場合には(S2:NO,S9:NO)、次に述べるような動作制御が行なわれる。この第3のモードにおいては、前記特定動作制御が実行されず、浴槽洗浄運転が単独で、かつ通常どおりの手順で実行される(S13)。
ユーザとしては、なんらかの事情により、前記特定動作制御を避けた上で、浴槽洗浄運転のみを行なわせたい場合があり得るが、前記制御はそのような要望に合致する。
【0038】
前記した一連の動作制御においては、浴室システムSYの設定モードとして、第1ないし第3のモードを設け、かつこれらのうちのいずれかを任意に選択設定可能としているため、前記特定動作制御が実行されるか否かなどを、ユーザの要望に応じたものとすることができる。したがって、ユーザにとって一層便利である。
ただし、本発明においては、第1ないし第3のモードのうちのいずれかを任意に選択設定可能な構成とすることに代えて、たとえば前記3種類のモードのうち、少なくとも2種類のモードのいずれかを任意に選択設定可能な構成とすることも可能である。勿論、モードの選択設定を行なうことができず、前記特定動作制御が無条件で実行される構成とすることもできる。
【0039】
前記した浴室システムSYにおいては、前記特定動作制御が実行される場合に、図3に示すような動作制御を行なわせることも可能である。
すなわち、前記特定動作制御が開始され、配管洗浄運転が終了して浴槽洗浄運転が開始された場合において、この浴槽洗浄運転がそのまま適切に完了した場合には、その後に殺菌水吐水運転が行なわれる(S21:YES,S22,S23,S24:YES,S25)。これに対し、浴槽洗浄運転中に、スイッチ操作などがなされ、この浴槽洗浄運転が強制的に途中で終了されると、殺菌水吐水運転は行なわれることなく、前記特定動作制御の実行は終了する(S24:NO、S26:YES)。
【0040】
このような制御によれば、浴槽洗浄運転が途中終了となり、たとえば洗浄水が泡などの状態で浴槽10に付着した状態にある場合に、殺菌水吐水運転が開始されることは適切に防止される。前記した洗浄水に殺菌水が混ざると、殺菌水が希釈され、殺菌作用は大幅に低下する。前記した制御によれば、そのような無駄を回避することが可能である。
【0041】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る浴室システムの各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0042】
配管洗浄運転、浴槽洗浄運転、殺菌水吐水運転のそれぞれの具体的な内容は、上述した実施形態に限定されない。配管洗浄運転の具体的な時間あるいは配管洗浄に利用される湯水の具体的な供給量、温度などは限定されない。浴槽洗浄運転は洗浄水を浴槽に噴射して浴槽を洗浄する内容であればよく、洗浄水の種類なども限定されない。殺菌水吐水運転で用いられる殺菌水は、要は、殺菌作用を有する湯水であればよく、オゾン水に限らず、遊離塩素、抗菌性金属を含む液体、有機塩素系、有機リン酸系、その他のアルコール系消毒液などを用いることも可能である。したがって、殺菌水生成装置は、オゾン水生成装置に限定されない。
殺菌水生成装置は、殺菌水を給湯装置から前記配管部を介して前記浴槽に供給して吐水させる殺菌水吐水運転を可能とすればよく、給湯装置とは別個に(分離して)設けられた構成とすることも可能である。
【0043】
本発明でいう第1~第3の所定時間などの具体的な値も限定されない。また、これらの
時間は、一定の時間に固定されていなくてもよく、たとえばユーザがスイッチ操作するなどして、適宜に増減変更できるように構成することも可能である。
給湯装置としては、ガス給湯装置などの瞬間式給湯装置に代えて、たとえば貯湯式給湯装置を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0044】
SY 浴室システム
A 浴槽洗浄装置
WH 給湯装置
1 浴室
10 浴槽
11 排水栓
12 排水トラップ
3,7 制御部
4 殺菌水生成装置
5 湯水循環配管部(配管部)
図1
図2
図3